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…そっか。
[ベリアンからの報せに返せたのはその一言だけで]
うん、緊急時にこそ身体を休めるのは、重要だと思います。マルグリットも、休ませてあげてください。
[通信を切った]
…役に立てたかというと自信はないけど…
[困ったように笑った]
うん、誰かに傍にいて欲しい、今は。
疲れたね、今日は。
[リールと手を繋いで彼女の部屋へ。
解いた髪は邪魔にならないようにひとつにまとめた。
いつもは一人だけで眠る自分のベッドと同じ広さのそこに、寄り添うように横になる]
誰かと一緒に眠るなんて、久しぶり。
前がいつだったか思い出せないくらいに。
リールの吐息と心臓の音と声を聞いてると、…すごく安心する。
[目を閉じると耳から入る音だけが総てで]
[ゆっくりと眠りへと誘われていく]
おやすみ、リール。
[そう言ったつもりだけど、寝ぼけてむにゃむにゃとしか聞こえなかったかも知れない**]
[ふたりでベッドにもぐりこむ。少しせまいが、お互いのぬくもりが伝わって……
それが不安を最小限のものにしてくれる気がする]
あのね、チェリー。私もちゃんと両親や兄弟と呼べるひとは、いないんだ。
でも2人だけ、家族がいたの。
リーラと、リーリっていう、家族。でも遺伝子的には姉妹じゃなくて、同じなの。
元になった細胞が同じなんだよ。
チェリーは、キチェ・サージャリアンって知ってる?
額に赤い四つ葉の痣(キチェ)を持ったサージャリムの御使いって呼ばれてるひとたち。
キチェスは1億分の1の確率で、完全な突然変異で生まれるとても貴重な存在なんだけど、
ひとりだけ、キチェス同士の両親から生まれた初めてのケースの人がいてね…
そこで初めて国は「人工的にキチェスを増やせるのでは」と研究に力をいれたの。
私は、そのキチェスから採取されたDNAをもとに作り上げられた、
──クローンなんだ──
[その語り口は、まるでおとぎ話を語るかのようだった。チェリーはどう反応しただろう。
もしかしたら、途中で寝入っていたかもしれない。それでもかまわなかった。
もう居ない家族のことを、確認するように語り続ける]
リーラとリーリは、その同じ遺伝子を持った家族。
キチェスをね、人工的に作り出そうとして生まれたのが私たちなんだけど、皮肉だよね。
クローンはキチェを持って生まれなかった。きっと、サージャリムには神の子だと
認められてないということなんだって私たちは思ってた。
最初にリーラが生まれて、キチェがないからもう一度再生したのがリーリ。
リーリにもキチェがなくて──最後に再生されたのが私。
キチェがないのに3人ともキチェスになるための勉強をさせられてね、主に聖歌(キサナド)を覚えるんだけど、私それが大嫌いだった。
そんなある日、リーラとリーリの二人が高熱を出して倒れて…額にキチェが現れたの。
周囲は大喜びだったわ、「研究の成果だ」って。
私たち、人間じゃないの。「研究の成果」なんだよ。
作り上げられた生命、後天的に現れた「神の印」。
サージャリムの御使いなんて大嘘だよ。
でもね……ニセモノの生命でも、不完全な神の子でも、リーラとリーリは
アタシの、唯一の家族だったの……二人の元に帰れるって、カケラも疑ってなかったのに。
二人がもういないなんて ……信じられない……リーラ、リーリ……!
これは、サージャリムからの天罰なのかな──
[涙が溢れ出して止まることはなかった。やがて泣きつかれて眠るまで**]
医師 テオドールが「時間を進める」を選択しました。
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