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でも、あの時は其れが最善だと思いました。
だから――――謝りません。
後悔は、飲み込んで糧にし。
強く、前を見据え。
犠牲を生かさんと――――… 先に、進むことが。
遺志継いで生き残った私たちにとって
大事なことだと、思いますから。
違いない。
[年季。その言葉に頷いて、笑う。
ほんとうに、素直でなく生きてきたものだ。
そんな感慨の前に、ひと房の髪束が差し出された。]
あいつ、変なとこ鋭かったからなぁ。
見えてたんだろうな。
俺と、君の、足りないところ。
[声の調子は落ちはしたが、昏く沈むものではない。]
あいつの命を奪ったのが君なら、
あいつを死地に送り込んだのが俺だ。
でも、その道を選んだのは、あいつだから。
その選択はあいつ自身の、あいつだけのものだ。
俺たちがそれを侵すことなんて、できないんだ。
……キールは、強いな。
[謝らないと言う彼女を、眩しげに見やる。
その、前を向く眼差しの強さを。]
俺は駄目だったよ。
全部抱え込んで、俺のせいだって言って、
どうしようもなく落ち込んでた。
クレメンスのおっちゃんに言われなかったら、
ずっとあのまんまだったろうな。
ここに来るまでに何人も死なせたし、
何人も殺してきた。
バウマン先生、マッキントッシュ先生、
フィオンに、…ユレ先生も。
彼らの死が必要なものだったと強弁するつもりはない。
ただ、俺は、この戦いを起こした責を持つ人間として、
彼らの生き様を刻み、共に先へ進みたいと思っている。
……、ふふ。
[なんだか可笑しくなって、笑った。
変な笑いが、込み上げた]
ねえ、ロイ兄様。
学館で議論した時のこと――覚えていますか?
ほら、
私の目論見――――…当たっていました。
[議論を言い負かしたかのような。
やっと、兄に追いついたような。
そんな心地が、なんだか可笑しくて、嬉しくて]
ふふ、…… は、 っ、
[いろいろ。回り道をしたり、
多くの犠牲を生んでしまったり、
もっとこうすれば良かったとか
ああすれば良かったとか、 沢山たくさん あるけれど。
それでも――――…
やっと。報われた心地が、雫になって頬を濡らした]
此のナミュールの為に。
私たちの愛しい祖国の為に。
壊さず。護り。
新たな変化の風を得て、
四季世豊かな未来へ繋ぐ 其の為に。
だから、――――…支えてください。
皆が笑顔になれる
私の隣で、紡いでください。
クロード・ジェフロイ…、 ロイ兄様。
[あたかも姫に添う騎士のように、伸ばされた手に。
深い想いを篭めて、手を重ね合わせた*]
巫女姫 シルキーが「時間を進める」を選択しました
でも、多分。
これで良かったんですよね―――… アレクシス。
[貴方が今、傍にいないこと。
それが心辛くは、あるけれど]
ふふ。 どうか、見ていてくださいね?
黄昏のように金に輝く明日を、皆と共に、紡いで。
ナミュールの黎明を、迎えてみせます――――。必ず。
もちろん、覚えてる─── ……?
[5年前の議論に触れて笑う彼女に、つられて笑う。
そうだ。自分も、他の皆も、ナミュールのたくさんの人が、巫女姫を信じている。]
こいつは、してやられたなぁ。
[これは負けを認めざるを得ない。
でもそれは、すがすがしい心地のする負けだ。]
[彼女の頬を濡らした雫に指を伸ばし、拭い取る。
涙を握りこんだ拳を胸に当てて、彼女の決意を聞いた。]
きみのとなりで つむぐねがい
[紡がれる唄に声を合わせ、
重ねられた手を、しっかりと握る。]
君にはしてやられたけれども、
俺の思いはあのころと少しも変っていない。
君だけに全てを背負わせたりしないと約束するよ。
共に行こう。
豊かで美しい、俺たちのナミュールのために。
クロード・ジェフロイは、
シルキー・カノエ・ナミュール陛下の御為に。
ロイ兄さんは
気が強くてお転婆だったキールのために。
力を尽くすことを、誓おう。
[格式ばった口調はすぐに消え、悪戯な笑みを浮かべる。
でも、誓いの言葉だけは、掛け値なしの本心だった。**]
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