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それと、もう一つ白状しなければならない。
この手紙に添えられているのは通信石だ。
もう一つはリエヴルのところにあるが、
彼の声を聴きたいと一瞬でも思ってしまったことが
ものすごく罪に思えて。
彼に別れを告げて、それ以降は通信をしていない。
それを信じるかどうかはお前に任せる――。
お前の友人
トルステン・フォン・ラウツェニング
[ 額に汗が滲む。
今、出れば。あの金髪兵の刃が、
カサンドラの白い喉を切り裂くかもしれない。
タイミングを誤ってはいけない――。
それとももう、この状況は――
――その時、どこからか。
勢いよく馬が、躍り出てきた。>>695 ]
― 学校跡地・公国側橋付近 ―
[カレルの死亡と騎兵隊の再編、最高指揮権を持つリエヴルの出陣…続く戦の音。
士官学校跡地は、行き来する伝令や兵士の移動が重なり騒然となっていた。]
…先ほど、裏手を守護していた斥候隊からの伝令が入った。
味方からの信号弾を確認>>563>>543
騎馬と思われる一団が、帝国側より侵入を試みていると。
――向こうの守備状況はどうなっている。
敵をおびき寄せたとしても、叩くことができなかったらどうにもならないぞ。
准将の本隊…は、今外に出ているな。
できるなら、騎兵隊が再編出来次第再び交代。お戻り頂いて指示を…
――――ッ…
[目の前に矢が飛び込み、慌てて振り払う。
眉を寄せて橋の向こうの戦場を睨み付けた]
…ここで技官をを放して、
連れて帰らせるってんなら―――
[>>695従うと、口にするのと
蹄の音が聞こえるのにはどれくらいの間があったか。]
……毎度、申し訳ありません。
副寮長もお疲れでしょうに。
[なんとか寝かせると、恐縮したように頭を下げる。
最高学年である8年生は、それなりに授業のカリキュラムも詰まっている。
役職づきであれば余計に多忙だろう。
ダーフィトとディークは親しい仲だ。そのような関係も交流の一環であったのだろうが、ルームメイトの自分は、なんとなく、申し訳ないような気がしてならなかった]
[自身もまた電撃を浴び。
身体は、既に言うことをきかない。
……もっとも。
それ以前に、満足に動けるほどの血液すら、残ってはいなかったかもしれないけど。
――――――…それでも。
最後の力を振り絞って、トールの元へと向かおうとして――…。]
[初めて訪れた厨房は、綺麗に片付けられていたが、何もないわけではない。
作業台の上にはまな板や包丁、ボウル、計量器具などの道具が整理された状態で残っていて。
受付カウンター近くには、ティーセットやコーヒーメーカーなども残っていた。
まるでスパイとして潜入したどこかの執務室で機密書類を探るかのように。
手際よくあちこちの引き出しや戸棚などを物色すれば、小麦粉に砂糖、ベーキングパウダーなどの材料のほかにも、紅茶やコーヒー、ココアなどもそろっていた]
………永久水晶まで残ってんのか。
[金属製の大きな戸棚を開けば。
その中には、各種果物や野菜、牛乳、ジャム、バターなどが、よく冷えた状態で入っていた]
[ガクリ――…身体が、崩れ落ちる。
だが、そこには先にトールが倒れ伏していて。]
…………――ん、ぱ……、
[既に言葉にならぬままに、彼の上へと覆い被さり。
――――静かに、唇を重ね合わせた。]
[そのまま、少しずつ意識が遠のいていく。
ただ、最後に彼に触れられた為か。
その面には、不思議と、穏やかだった――…。]
……ああ、そうだ。これを。
副寮長も、菓子は好きでしたよね?
[思いついて、部屋の隅からとっておきの菓子をいれている箱をあける。
ひんやりと永久水晶に冷やされたそこから、きれいにラッピングされた小瓶を取り出した]
黒スグリのジャムです。
焼き菓子にほんの少しつけたり、トーストに塗ると甘酸っぱくてとても美味いですよ。試してください。
疲れを取る効果もあるらしいです。
[一つかぶりを振り、状況を把握しようと。
フレデリカがカサンドラを人質のように拘束しているのは見える。
間近に帝国兵が居れば、通信機も使えまい。
何を話しているのか?]
……おい。クロイツ中尉にも状況の報告を。
…音を立てるなよ。
[クロイツからの伝令はあっただろうか。
念のため深部に入り込んだこと、接敵位置を知らせるために単騎を彼の元へ送らせた。
目標周辺で切り結ぶには、彼の力も必要だ―――]
[たわいない礼だが、彼は、少しは喜んでくれたのだろうか。
扉を閉める瞬間にふと思い出し、唇を自嘲に歪める。
――今は二人の間にいたダーフィトは此処にいない。
いや、……あの頃の自分も、いない。
だから、彼に渡せるものは、そっけない、気遣いの言葉だけだった*]
>>695
[ 唐突に迫ってくる蹄の音に振り返る。 ]
別働隊……? いや単騎か?
[ 距離を測るが部下の投擲武器も弓矢も届く範囲ではない。そして徒歩では到底、敵わない速度で馬上の影はカサンドラとフレデリカに向かって突進している。 ]
[いつでも飛び出し切りかかれるよう柄頭に手をかけるが、内心は気が気ではない。
本来ならば、敵の武器がカサンドラに届く位置まで近づくよりも早く合流し掃討に向かうべきであったが、帝国側の配備に梃子摺り少し遅れた。
その上、「取引」がどうのと聞こえる。
少し前、通信機に乗せられた囁きからも、こちらが到着するまでの時間稼ぎというわけではないだろう。]
……、フレデリカ …?
[フレデリカの目的が、未だ見えずに。]
[ディークが卒業し、ベリアンが西寮を去り。
ソマリもまた東寮に引っ越したことで、
この緩やかな隣人たちの夜の時間は幕引きとなった。
その代わり――…]
お。いたいた、ベリアーーン。
美味しい珈琲豆の店、教えてくれるんだァろ。
[翌年。市街地に出たベリアンの元を
稀に訪れる金髪の姿があった]
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