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[だが気付いたのは混沌の王の狙いが後方に定められていたこと。
魔法の反動か体制を整え損ね、吹き飛ばされたベルティルデとステフへ動きだした]
早く体勢を整えろ! 二人とも!
……このっ。
僕を無視してどこにいくつもりだっ!!
[然し巨神の足は、倍ほどの図体にも関わらずアイルリートより早い。
衝撃波のみならず、直接銀杖で叩こうとしている狙いがとれた。
だけどそんな事させるものか]
[大地の魔力が奔り、地面に黄色い光が鋭く宿る。
ぐぐ、と飛び出す射出体勢をとるアイルリートは次の瞬間に…]
抜かせないと……
いっただろう!!
[足元の大地が、槍を突き出した様な隆起を起こし、走るよりも尚早い矢の様にアイルリートが飛び出した。
向かう先は、巨神が狙う後方のふたりを護る射線上]
[混沌の巨神が、銀杖を振るおうとした次に、影が飛び込んで。
防護の障壁は再び、巨神の銀杖を確実に阻んだ]
…… ……大丈夫だな?ベルティルデ。ステフ。
……よかった。
[振り返らずに、だけど確かに安堵を混ぜた声を滲ませて。
大きく障壁と拳甲で、巨神の銀杖をはじき、攻撃の手を赦さずに戦いだした。
恐らくは無事に皆立て直せるだろう**]
[巨神の攻撃をひきつけ、その銀杖を防ぎながら声を張る]
まだこれだけでコイツは終わらないぞ!
全員、引き締めていこう
[流石は混沌の王と呼ぶべきか、その攻撃のひとつひとつが命を危うくする死神の手を想起させずにはいられない。
それでも尚、最前線でアイルリートはセイジと呼吸を合わせつつその拳を振るう>>+131。
嘗て、精霊節前に、アイルリートと話した際のメレディスが感じた感覚は今、正しく機能している>>1:213。
人を率いる立場、独善志向、協調性に難あるアイルリートは確かにまだ、人を使う立場の方が合って移る]
[だがやはり大地の守護者の本質とは大地だ。
そこに逆境を破壊する攻撃の力が無いとしても、仲間達を支えて助ける、人々が走る足場を確かに形作る、調整者]
...Orationem Terr!
セイジっ!
[果敢に巨神の真正面からその胸元を、顔面すらも跳躍して殴ろうとする傍ら、振るわれる銀杖と障壁魔法は激突して、硝子の音色を歌わせながら身体は反動に跳ぶ。
巨神も攻撃の手札を増やしてきている。
セイジの攻撃とあわせて再びアイルリートが飛びで、巨神の足元を殴ろうとすると、巨神は地面へ固く戒めた銀杖を支えに、アイルリートを、セイジの腰から下を刈り取らんばかりに、重くも鋭い回転蹴りを放ちだした。
然しそれも風を止ませ大地を揺るがすには至らない。地と空で重ね合わさる、大地と疾風の協奏は、堅くも激しく、巨神と抗い続ける>>+131]
[次なる攻撃の手に臨む、守護者達へ向けて、拳甲が強く打ち払われる]
…緑も育み世界を支える大地の礎
…硬く頑強に誇りを詠う生命の加護
…いけっ!!
[詠唱を省かれて、拳甲から放たれた魔力が、勇者達に大地の加護を与える。
生命の力を強め、身体を頑強にする強化魔法。
セイジが施す疾風の加護とあわせて先程の様にはなるまい。
巨神を囲み四方に散る形となり、双方から火と水の詠唱が紡ぐ音色]
[万の軍勢を思わせる氷刃と共に、翼を広げる不死鳥が激突する。
更にそれを見届ける視線の先からは風の力が高まりを見せていく]
何か来る……また新しい攻撃か!
[混沌の王も、ここに来て更に本気を見せ始めたのか、攻撃法が一気に増え始めた。
これまで圧倒的な力を以って殴る行為しかしてこなかった巨神の銀杖に、澱んだ魔力が集まる。いや、巨神に集められた魔力が澱んでいく。
黒く邪悪な色に燃える火炎。
濁り澱んで生命を呑む流水。
雷も纏い暴力的に荒ぶ疾風。
地を割り破壊に雄叫ぶ大地。
何れも混沌として歪められた魔力を放つ、歪な魔力をしている]
[ここに来て巨神がこれほどの手札を見せてきたという事は
いよいよ戦いも大詰めである事は理解している。
大地に息吹が宿り魔力が流れる、正常な流れへ調整しようと]
……んっ……!?
[然しその時、真正面で混沌の王と依然戦闘を続けていたアイルリートが、ふと顔をあげた時。
アイルリートはその時確かに、魔力の高まりを感じると同時に]
うわっ!?
[混沌の王の瞳が、目が合う瞬間に怪しくも暗い輝きを放ち…]
[アイルリートの周囲に、突然黒い霧が吹き荒れた。
黒い霧は抵抗もできずに瞬く間にアイルリートの姿をかき消す]
こ、この霧は……っ
[外傷はない、強い魔力を感じるが、直接的な害は現れない。
然しアイルリートの瞳の裏に、混沌の王の暗く光る瞳が焼きついた様に映り続けていて。
時間にしてはほんの数秒だろう間、意識が暗転する*]
― ??? ―
[黒霧に呑まれたアイルリートの意識が覚醒した時。
目の前に広がるのは、全滅の光景]
――――っ!? おい、皆!?
ウェル!なんでここで……
と、トオル!?
[仲間の勇者達が、神殿の騎士達、癒者達。
枝の側にいるはずの仲間達もそこで倒れていた。
アイルリートの知る限りの人達が、全滅している光景に、受け入れられない動揺と共に声を荒げてしまう]
[トオルがやられた?その信じ難い事実に顔が深く蒼褪める自分を制御できない]
なっ……何をしているんだ、トオル……
こんなところで倒れている場合では……ないだろ……
最後までやり通すのが、トオルではないのか……?
僕をひとりにしないとかのたまったのは誰だ……っ
[現実的に何故トオルがここに居るのかと考えるとありえない光景にも関わらず。
受け入れられないその凄烈な光景に声は震えている]
[凄烈なといえば、アイルリートの心を抉る光景に思わず駆け出す]
なっ……何故近づけない!
おい、起きろ!
レントナー! セイジ! ベルティルデ!
誰か…誰か起きないのか!?
[然し倒れ伏す人達の手前で、無色の硝子に遮られた様に身体が進まなくなる。
伸ばす手が動かない。倒れ伏す仲間達の身体も動かない。
目に見える景色が、そこで一気に暗転する]
[次の光景をみたとき、アイルリートの息が詰まるもの。
フラクシヌスが滅んでいく姿がみえた。
フラクシヌスの空まで高く聳える世界樹は黒く干乾びた様に朽ち果てて。
大地の、疾風の、火炎の、流水の、すべての精霊が死に絶えて混沌へ回帰していく世界で。
至る所の人々が魔物や混沌に襲われ死に絶えていく世界の光景。
そしてアイルリートは何も手を出す事もできない。
誰を護る事もできず、ただその光景を見る事だけしか赦されていない]
[その光景は、アイルリートには何を差し引いても許容できる物じゃない。
人を死なせない為に力をつけた。
人を守りたいが為に大地の勇者であろうとした。
そんな自分が、仲間を守る事も人々を助ける事もできず
ただ世界が滅んでいく光景をみせられる。
例えそれが、白昼夢の様な幻覚と理解していても。
その光景は、アイルリートの根幹にある弱い部分を揺さぶる景色だった]
『所詮はそれがヒトの限界だ』
[何処かで妙に聴きなれた声が聞こえた]
『神にヒトは逆らえない
なのにヒトは愚かに神に逆らう』
[それは他でもないアイルリートの声をしていた]
『身の丈をこえてでも
なんでも守ろうと欲張ってしまう』
『すべてのヒトを守るなんて不可能だ』
『仲間と力をあわせるなんて
お前には無理だ』
『盾の後ろを越えて隣や前にくるヒトを
どうして守れるというんだ?』
『お前も覚悟しているだろう?
どこで誰が死んでも不思議ではないと』
『だけどお前ひとりで守り続けた方が
誰も傷つかなくて心は安らぐ』
『誰かといたいのにひとりでいたい』
『ひとりでいなきゃ守れないからひとりでいる』
『仲間が隣にきたら
もう守りきれないかもしれない』
『力が足りなければ誰も守りきれない』
『また皆 両親の様に死んでしまう』
『 だが 僕は違う 』
[その時天井を見上げると
夜空とも呼べない暗い虚空の中で、アイルリートと全く瓜二つの何かが此方を見下ろしていた。
その背に大地のマントを羽織り、彼は何でもひとりでできそうだった。
人々を守る事も、敵をなぎ払う事も、世界を思い通りにする事さえ]
『 僕を崇めろ 僕に委ねろ 』
『 たったひとりで何でも出来る力がある 』
『 "僕"がいままでずっと欲しがってきた力だ 』
『 僕だけが"僕"の望みを叶えてやる事ができる 』
『 "僕"の安息できる居場所は この手をとればある 』
『 失くした人々をとりもどす力も 』
『 どうせ最後にはいなくなってしまうのを知って 』
『 友人でありたいとおもったやつらも 』
『 すべて "僕"の望みどおりにできる 』
『 望みも安息も居場所も すべて"僕"の願うままに… 』
『 さあ 大地の勇者 』
[天上からまるで蜘蛛の糸を齎す様にして
アイルリートへ向けて、アイルリートの姿をした『混沌の王』が、その手を差し延べていた]
…… …… 僕は …… …… ……っ。
[言葉を失くしてその手を見つめて立ち尽くしていた様に見えた
アイルリートは確かに… 笑みを浮かべて]
[…… ……黒い霧に包まれたアイルリートが見たのは滅びの光景。
仲間が倒れ、世界が滅び、混沌に回帰されていく光景。
何も守れずにただその光景を見せられたアイルリートに声が聞こえた。
混沌の王が、アイルリートのその心に干渉する。
ひとりですべてを守れる力も
世界をのぞむ様に操る魔力も
すべてが思い通りになるその誘いで]
[ 崇めろ 委ねろ
何でも守れる力を手に入れれば
はじめて安らげる居場所はつかめる
そんな混沌の王の誘い、やつの声に。
アイルリートが立ち尽くして長い沈黙の間を挟んだ後に。
くす、と笑みを浮かべた瞬間、黒い霧は霧散する]
[セイジが>>+168、ベルティルデが>>+174、巨神に攻撃するのと同時。
黒い霧が効力をなしていたのは、唯その程度の時間でしかなかった]
…… …… ……そんなもの……
僕のなかには とっくにあるんだよ ばーか。
[澱みを見せる大地の魔力が、急速に生命を取り戻していく。
罅割れて枯れていく大地が息吹を取り戻す。
疾風が、流水が、火炎が、混沌の王が齎した澱んだ魔力を相殺していく最後に。
生命を溢れる大地の祈りが、最後の四つ目の澱んだ魔力を相殺した。
その癒えていく大地の中央に、アイルリートが穏やかに笑みも浮かべて]
[大地の魔力がアイルリートに激しく収束していく。
拳甲に備わる大地の魔石も、その魔力の残る全てをかき集める様に、大地の力があたりに満ち溢れていく]
大地よ……誇りの中に歌え。
その息吹を鳴らし緑を支える力は強く、硬く、優しく。
生命を育み闇よりすべてを守る……祈りの盾。
[大地が走る、世界樹の根が育ち、守りの障壁が励起する。
先程よりも大きく、精霊達の力により織り成される
すべてを支える大地を起点とする、封印術式が混沌の王を覆いだしていた]
[世界樹の根が急激に伸び、巨神の足に、腕に絡みつきだした。
大地を支えに成長する世界樹の根は、まるで大地の楔の様に巨神を戒めはじめる]
ステフ! セイジ! ベルティルデ!!
残る魔力を全部つかうから!
後の攻撃は……信じているぞ!!
オルキスの聖樹の元に励起しろ、ガイアの封印!
[次の瞬間、大地から競りあがる石槍が、守りの障壁が、巨神を囲みだす。
魔力を湯水の様に扱う風にして、巨神の行動を封じ、仲間達の全力を出させる為にその全霊を傾けだした]
[大地の楔に巨神の現身は固く戒められ
疾風の清涼とした流れが澱みを打ち払う]
――…… いけっ !!!
[業火の槍が巨神の半身を撃ち貫いた時
遂に巨神の銀杖がその手から弾き飛ばされて、融け消えた。
そして混沌の王へ最後の一撃を加える。
流水のによる聖乙女の槍が、混沌の王に突き刺さり……]
[大地を揺るがす重低音の断末魔が、根の領域に響き渡り。
『混沌の王』は、再び出現した虚無の渦に呑まれ、このフラクシヌスではない何処かへと再び放逐されたのだ>>95]
…… …… ……ああっ……
おわった……んだな……。
[役目を終えたと、ナックルが精霊石へと戻り、足元に転がる。
全身の魔力を絞りつくした身体が、勢いよく地面へとぶっ倒れる。
同時に世界樹の根もまた、元の均衡取れた姿へと戻って云った]
も……もう二度とごめんだぞあの様な相手……
何が悲しくて封印術式の三重励起などやらねばならんのだ……
ああ……
僕はもう動けん、死んでも動かんぞ……
誰か菓子でももってないか……粉砂糖ふんだんのべたっべたに甘い菓子だ……
[貴族や勇者という肩書きにはとても似つかわしく無い様に。
年相応の少年みたいに、地面に頬をはりつけながらそうぼやいたアイルリートの声は。
今度こそ、本当に終わったことを実感できるものだった]
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