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もうわかってた……
僕はまだ自分で気付いてなかっただけだ
こんなに意地でトオルと戦うくらい…
友人と思えたやつを危険に晒せられないくらい…
[アイルリートが意識を無くすとき トオルに流れ込んだ。
その時ふと思い出してしまった もう六年も前の記憶を ]
『 …… なぜ だめなのだ? クレメンス』
[冷えて乾いた様な子供の声 遠くで弔鐘の音色が鳴っていた]
『はやく治してやらねば だめではないか』
『…… ……』
『父様も母様も このままではくるしそうではないか』
『…… ……』
『無礼者め なぜみんな俯いてるだけでわからんのだ』
『…… ……』
『……アイルリート様……』
[ひとりごと染みた子供の言葉をただ聴いていた
その子供の部下と思しき男の声が、厳かにも沈痛にも映る声で小さく
教会で響く、弔鐘がとおくからよく聞こえる、そんな場所で]
『…… 御亡骸には ……
回復魔法は 効きません …… 』
[アイルリートに それをおしえた]
[それが何よりも大きな理由。
防御魔法に治癒魔法
『人を死なせない為の力』だけを高め続けてきた
アイルリートの、誰にも云うつもりのなかった記憶>>2:56。
気を失くして傾ぐその瞳に ずいぶんと零した覚えのない雫が浮かんだ**]
……やっと、か。
[無意識のものであろう声が、精霊の回路を経て伝わる。
苛立ちや安堵ではなく、ただそこまで意地を張ったアイリの思いを、重く受け止める]
お前は本当に、優しい奴だよ。
辛くても諦めるなって言ってきた、俺よりもずっとな。
[自分だけでなく、他の勇者候補たちの身すら案じていたと知れば、眉が下がる。
互いに仲間を思っていたことは同じで、要は体現してきたものの違い。
気付いていなかった訳ではないが、精霊の力を通した心の声で、ようやく認められた]
え? お前今――
[友人、と。
ごく自然に紡がれた言葉に内心驚くのも束の間。
アイリの抱えていたものが、こちらの心中へも流れ込む]
[流れ込む記憶]
[どこか聞き覚えのある、冷たく乾いた子供の声]
[遠くから、哀しげな鐘の音が響いている]
――お前……。
[便利で少し狡い魔法だと思っていたけれど。
それを極めた理由の奥底は、権力欲ですらなく、大事な人をなくした心の痛み]
大丈夫だ。
もう、誰もお前を置いてなんかいかねえ。
……俺も、他のみんなもだ。
[聞こえているかもわからないけれど、腕に抱えた相手の意識へ、ゆっくりと語り掛ける。
彼がひっそりと浮かべた涙は、この姿勢では見えないけれど、ただ一度だけぎゅっと抱える腕の力を強くして]
[結局 欲しかったのは信頼できる確信とその言葉
大丈夫、置いては行かない、その言葉だけでなく
確かに認めざるを得ないだけの力だけでなく
確かにどちらともあわせたその言葉と腕の力はじんわり届いて]
…… ……あのマント……何時か進化したら儲け物だな。
[大地の領域から世界樹の場所へ帰還した後、ふとそんな事を呟いた]
……ん? なんだトオル、よく考えてみろ。
あそこは歴代の血族や王族でも生涯に入れたら幸運なほどの聖域なのだぞ。
ただの感情や思う所だけで捨てたとおもったか?
あんな大地の魔力が充満した場所に数百年数千年晒してみろ。
遠い将来、あの領域に訪れる大地の勇者が回収する頃には
繊維の隅まで大地の精霊が染みこんだ伝説級の霊具に進化してるかもしれないのだぞ。
ははははは。折角あんな聖域に入る機会を賜れたのだ。
未来の勇者への先行投資は必要ではないか。
[そんな少し残念さを感じないでもない会話をはさみながらだが、さて
将来的に実際に、あのマントがどうなっているかは遠すぎる未来の話だろう]
進化?
[唐突に思えるアイリの言葉に聞き返すと、彼から解説が返ってくる]
そりゃまた……気の長い話だな。
[確かに、自分でもわかるほど濃密な、あの場の魔力を受け続ければ――
何だろう、漬物とかの残念な例えしか出て来ないが、何か特別な効果は得られそうな気がした]
でも、お前は良かったのか?
[未来、というのがいつの話かはわからないが、今戦いに赴くアイリ自身はと。
随分すっきりしたシルエットになった彼へ、視線を送る]
なんだかおまえもおまえで残念な例えを考えてそうだが……
……いいんだよ。
アレは僕の身体には少しブカブカだからな。
[背中に感じる布地の重みが消えるだけで、随分スッキリした]
大体、あんな布切れいちまいを捨てたところで。
最後まで勝てるに決まってるだろう?
僕たちならそれで当然だ。
[トオルの前を歩きながら、そう、肩越しにそう瞳を向けて]
……そうか。
[確かに、彼の身には少し大きいとは思っていたけれど]
そうだな。今のお前の方が――
なんつーか、らしい、気がするよ。
[体躯に見合わぬ威厳や迫力が、嘘だとは思わないけれど。
今の、ひとりの少年らしいアイリの姿の方が、好ましく見えていた]
うん?
[さらり、と言われた、『僕たち』という言葉。
そこに感慨のようなものは浮かぶけれど、特にそれを指摘はしないで]
ああ、そうだな!
[肩越しに向けられた瞳へ、同意を返す]
レオ、呪文が使える相手に口を動かす余地を与えてはいけませんわ。
[呪文を唱えながら、自分を抑え込む相棒に優しく語り掛ける聲。]
魔力がある限り、この口が動く限り。
私は絶対に諦めたり致しません――
この魔法に私の全てを賭けましょう。
私に勝つ心算なら、乗り越えて下さいませ。
…… ……い、いっておくが!
[ふとトオルと視線が重なれば突然、声を開いて]
僕が本気で勝つ事だけ考えたら!
トオルなんてまだまだなんだからな!
お前の体力が尽きるまで、遠距離で戦えば確実に勝つのは僕なんだ!
まだまだ耐久力は到底勝てないんだからな!
[そんな弁明という名前のいいわけを勝手にしていた]
[ふと視線があった所で、精霊の力越しに声が飛んでくる]
あー。……そうかもな。
[早口な弁明に対し、こちらの反応は素直なもの]
負けてないよ。お前は。
[結果がどうあれ、男は心底からそう思っていた]
[実際の所では一番よく理解していたのは自分自身だ]
…… …… ……ふん。
[負けて悔しいと感じながらも、認めるしかない。
そんな少し複雑な感情を抱くのは、勝負に対してではない。
その頑固な位の意志が、確かに自分のそれを上回った事に。
なのに何とか勝てた、なんて事でも考えていそうな、妙な所で自信のあるかないかわからない、トオルの姿に、ふ、と笑いに近い息がもれていた]
[玲緒を打ち倒す為の呪文を紡ぎながらも、優しく諭す聲に応える]
……そうだよね。
本気で戦ってって、お願いしたのは私の方。
だから、私が終わらせないといけないんだ。
ありがとう。――いくよ。
(これで勉強ができるなんて。
酷い詐欺があったもんだ……)
[もし余裕があれば一度、どこぞの王立学院の試験問題でも遊びでぶつけてみようか?
そんな事を考えながら、傾ける飲み物は、まあ確かに美味しかったのだが]
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