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[ のそのそと赤土の上を歩いていた兎は、やがて草の生える場所に辿り着く。ふんふんと鼻を蠢かせるのは、兎の身に染み付いた習性の再現だ ]
(ぴょん)
[ 若草の香りを感じた兎は、そちらに向けて跳ね、すぐに驚いたように止まった。初めての視点の変化に戸惑ったのだ。天の花は、未だ風にそよぐ以外の変化を知らずにいた故に ]
(ぴょん、ぴょん)
[ 戸惑いながらも、兎の身に刷り込まれた本能に従って、続けて跳ねる、足元に柔らかな草の感触を感じれば、その動きは滑らかに、楽しげにも見えるものに変わった ]
[ ぴょんぴょんと軽快に跳ねていく兎の目前に大きな倒木が道を塞ぐ ]
………
[ 飛びこすには力が足らず、立ち止まって小首を傾げた兎は、倒木の影に眠る獣の姿を見つけると、恐れげもなく、ぴょんぴょんと近づいていく ]
[ 玄武神の結界の内に籠る気によって眠るのは、一頭の雄鹿。その角に兎が擦り寄ると、ふいに鹿は身動いで、栗毛の姿が緑がかった白に変わる ]
[ ぱちりと瞳を開き、ぶるりと体を震わせた、今は白い姿となった雄鹿は、蹄を鳴らして、倒木を乗り越え、木々の緑の中へと進む ]
[ 後に残された兎はというと、未だ天の気を身内に残しているためか、まだ白い姿のままで、もふもふと倒木の周囲の下草を無心に喰んでいた** ]
― 森林地帯 ―
[ 拠点へと向かうクリフとウルズの頭上を、小さな羽虫の群れのようなものが飛んでいく。東南の方角へと向かうその群れは、無論生き物ではあり得ず、小さな魑魅の群れだった ]
[ 目をこらせば、その群れの行く先、遠い木々の間に、ちらりと白い影が過るのが見える* ]
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