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[ふと気がつくと、私は展望室の中空に浮かんでいた。
浮かんで、いた?]
…って、何で浮かんでんのさ。
重力発生装置でも壊れた?
[あり得ないことを、口に出す。それなら固定されていない、例えばあそこのドロイドなども浮かんでいるはずだ。
そこまで考えて、異変に気づく。
いつもは静かに動いているドロイドが、動きを止めているのだ。]
えーっと…何で、こんなことになったのかねえ。
[記憶を辿る。
部屋に戻って、ドロイドに料理を注文し、仕事を進めていた。]
うん、それで…。
[すこしそうしていた所に、ノックの音が響いた。
てっきりドロイドが料理を持って来たのだと思って、確認することもなく、
無用心に、
ドアを、 開けて ]
[…そこから先の、記憶がない。
そのドアの向こうには、何が、誰がいたのか。
思いだそうと、試みる間に、メリーのアナウンス>>#0が聞こえ、次の瞬間、
その声が、俄に緊急事態を告げる>>#1。]
ひ、避難…!?
[この状態で、避難もなにもあるのか、と思ったが、とっさに出入口へ向けて身体が動く。…浮遊しながら。
どうやらこの状態でも、動くことは出来るようだ。]
──── ??? ────
[夢を、見ていた。
10年前のあの日の事。
怖い怖い、夜の事。
狂った男の人と
私と
大勢の警察と
────その中でたった1人
私に銃口を向ていた警官の話。]
─────── 回想 10年前 ───────
[その日、私は11歳で、今のお父さんとお母さんに出会ってから8年が過ぎようとしていた。]
行ってきまーす!!
[見送る2人に笑顔で手を振って、玄関の扉を勢いよく開ける。
向かう場所は近くの公園。
友達と遊ぶ約束をしていたのだ。
外に出ると両手を突き上げて大きく伸びをした。]
ん〜〜〜〜っ!!!
やっぱり外は気持ち〜!!
[とにかく外が大好きで、友達と遊ぶ時は決まって公園。
家の中で遊んだ事など、殆どなかった。
暗い表情も見せた事がない、誰が見ても"活発で明るい子"。
────それはきっと、子供ながらの気遣い。
私が暗い顔をすれば、両親は私を心配する。
本当の両親を知らない、自分の素性を知らない"可哀想な子"だから。
自分ではそこまで重大だと感じていなくても、彼らにとっては何より大切な事なのだろう。
私は、今の両親が大好きなのに。
だから彼らに心配されないよう、陽気に振舞って2人の目の届かないところに行って。
勿論、友達と遊ぶのは楽しかったけれど。]
ふんふふんふふーん♪〜〜〜〜♪〜〜
[鼻歌交じりにスキップし仲間ら公園に向かった。]
[公園の入り口で中にいる友達を見つけ、大声で"お待たせ〜!"と言いながら駆け寄る。
私が一番最後だった。
公園には私達以外にも人がいた。
ベビーカーを押す女の人。
砂場で山を作っている少年。
その少年の傍にしゃがんでいる女の人。
ベンチに座っている男の人。
────あ、あの人かっこいい。
年齢はいくつくらいだろうか。
わからないけど、私よりも10歳以上上なのだと思う。
気がつくと私はその人をじっと見つめていて、相手もこちらに気づいたようだった。
目があって、瞬きをせずに5秒間。
周りの音がシャットアウトされ、背景は白色。
まるでどこか違う空間に2人飛ばされたような感覚。
そうして私は微笑んだ。
コレガ全テノ始マリ。]
──── 現在:自室 ────
[どのくらい経った頃だろうか。
気がつくとそこは自分の部屋だった。
────アレは……夢…?
"アレ"とはこうなる前の事。
展望ラウンジで起こった、10年前の再現のような。
自分の体を調べてみるが、傷はないようだ。]
あぁ……なんかリアルな夢だったなぁ……
[呟き、ベッドから降りようとしてはたと気づく。
ここはベッドじゃない。私は床に垂直である、と。
おまけに、船酔いとは違う浮遊感があった。
先程までとは体の重さが全く違う。
今の私は驚くほど身が軽かった。]
[自分の足元に目線を向ける。
案の定、私の足は床についていなかった。]
え……?浮いてる……?
なんで?船酔いの進化バージョンかな?
[パニックに陥りそうな思考を必死に制御し考える。
────そうだ。何かの本で読んだ、"幽体離脱"に似ている。
ならば、と部屋の扉の方へ進む。
足を使わない、平行移動。
それは扉が近付いても止まる事はなく、次の瞬間には扉をすり抜け廊下にフワフワと浮いていた。]
こ、怖かったぁ……
でも凄いや……私、凄いことしてる!
[興奮した様子で自室と廊下を何回か行き来した。
………そして気づく。
向こう側が騒がしいという事に。]
なんだろう…銃声………?
怖い……けど、逃げちゃダメだ……
[なぜだか行かなくてはいけないような気がして、右手をぎゅっと握りしめると音のする方へフワフワと移動していった。]**
[ともかく、避難しようと出入口の方へと進む。
その時、出入口のそばに備え付けられていた船内の情報掲示板>>4に目が留まる。
普段は部屋の雰囲気を出す為か、雄大な銀河の映像などを流していただけであった掲示板に、彼女にとっては耳慣れた、しかし圧倒的に不吉な単語がちらつく。]
ぼ、防疫!?どういうこと、まさかテロ!?
それも、BC兵器を使うようなーー
[掲示板の簡潔な情報のみでは、何が起きているのかわからない。だが、何らかの危険な微生物が艦内に侵入したであろうことは、容易に想像がつく。
それも、おそらくは何者かの手でーーーー]
[そこまで考えて、自分の掲示板に伸ばした手が透けていることに気づく。
この尋常ではない事態、宙に浮く身体、半透明の手。
一つの言葉が、脳裏をよぎる。]
臨死、体験……!?
[そう、人が死ぬ間際に見るとされるビジョン。
よく言われる花畑や、トンネルをくぐる感覚、そして、]
意識が、身体を離れて、どこかへ飛んでいくような感覚……
[今の状況は、これなのだろうか。
そうだとしたら、]
自分が死んだ原因ぐらい、知りたいよね…!
そうやすやすと、死んでたまるかッ!
[そう、決意を固め、とりあえずは第一エリアへと向かおうとしたが、
宇宙船全体を、亜空間に突入したことを示す、独特の振動が揺るがす。
それは、浮いている…にも、容赦なく襲いかかる。]
きゃあッ!
[その身体は空中で一回転し、半ば地面にめり込んだような状態で止まる。
自分の身体が物質を通り抜けることにすこし驚くも、次の瞬間、さらに大きな驚きが襲う。
目前の巨大な天井の向こうの星空、それが、亜空間に突入したことを示す歪んだ暗黒に、変わっていたのだ。]**
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