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[彼が勇者の血を引く自分の血筋に誇りを持ち、それに見合った努力を重ねている事は尊敬していた。
初対面の時に性別を取り違えて接したのは、彼の年が片手を超えるか否かという頃だったろうか。
あの頃は互いにまだ幼かったからか感情を抑える事が難しく、泣き顔を晒してしまった事は今も記憶に残っている。]
[そんな事を思い出していた所為か、レオに向けた視線や、言い淀む様子には気付かずに。
彼とレオが話すは邪魔しないようにして、トオルがその場にいれば何か不自由はないかと尋ねただろう。
耳に入ったレオが自分の事を評する言葉には、喜色を隠せていなかった。
アイリルートの町に出るのには誰かを…という言葉には、]
…わ、私だってお金の使い方もちゃんと覚えましたし、此処なら大通りでは迷いません…もの。
[実際、何度かやらかしているので不安を誘うような事しか言えず、耳は僅かにへたれた。
レオと顔を合わせた初日には、大通りを行って帰るに留めたので迷う事はなかっただろう。
しかしそれ以降脇道に入れば迷ったり迷いかけた事はあるかもしれない。
少女は道を尋ねるのに抵抗がないので、一応無事には帰れるのだが。*]
―回想:『精霊節』までの間・ステファンと―
まぁ、どうもありがとうございます。
[>>141異界の言葉の意味を教われば、少女は淡藤色の瞳を細めておっとりと笑ってみせる。
精霊の血を引いている所為か、容姿を褒められる事は多い。
謙遜ではなく感謝の言葉で応じるのは、御魂の多くが住まう国よりは彼の生まれ育った国に近いかもしれない。
呼び名について訂正を加えられれば]
ステファン…ですか。
私、身内以外の男性の方の事を呼び捨てにするのは初めてですわ。
[仲良くなる切欠になればと少女は頷いて求めに応じたが、レオはどうしたのだったか。*]
―現在―
[>>222レオの言葉に耳を傾ける。
危険な役なら自分が、と思っていたが、彼女も自らが囮になるのを提案する。]
……上手く当たれば可能だと思います。
二回機会があれば、かなり弱らせる事は可能だと。
でも、レオ。
囮は危険なのですわよ?
[彼女が覚えた魔法の性質は知っている心算だ。
少女は発見した巨大な蛇の姿を思い浮かべる。
槍の一撃では仕留めるのは難しいかもしれない。自分の魔法である程度弱らせてしまえば、敵うかもしれないが。]
[そも、本来魔法の使い手は前に出るべきではない。未熟であれば尚更だ。
それ故に少女が提案した内容は奇策に分類されるかもしれない。
――それにこれからの事を思えば、レオにとっても自分にとっても、得意分野に合った戦いを経験した方がいいのではないかと。
少女は迷い、淡藤色の瞳を揺らす。]
[思い出したのは、神殿でレオと交わした言葉。
自分にも誰かを護れるかと、彼女は言った。]
強い魔法を使うには、先刻のようにはいきません。
呪文の詠唱にも時間がかかるのですわ…。
それでも、大丈夫ですか?
[レオの意志を問うようにじっと見つめる**]
[>>253此方を見つめ返してくる視線は揺れる。
それはレオの中にもまた葛藤がある事を感じさせた。
けれど、その真意を聞いていられる暇はない。]
…レオ。
[獲物を握る手の震えは気付かなかったが、笑顔は何処かぎこちないもののように感じた。]
――ぁ、
[>>256そうして彼女は返事を言う間もなく行ってしまった。
自分は間違った選択をしてしまったのではないか。
少女は細い肩を震わせ、唇を噛みしめる。]
――…必ず、成功させてみせますわ。
ですから、どうかご無事で。
[贈ったタリスマンに彼女の身を守ってくれるように願う。
やがて少女は表情を引き締めると扇に触れた。
普通のものよりも二回り程大きいそれは、やはり精霊の秘術で作られている。]
レオが時間を稼いでいる間に、向かわねば。
[上方を確保する為に少女は木を登り始める。
途中、蛇の咆哮が聞こえたが、後ろ髪を引かれるのを振り切って必死で上っていく。
焦った所為か、少し掌を蔦で擦って出血したが、痛みは感じなかった。]
…は、…っ…
[やがて高台に位置する幹が絡み合って台座のようになった場所に上がる事が出来れば、少女は深呼吸をして乱れた息を整える。
それからレオ達の居場所を探し始めた。]
――あそこ、ですわね。
[葉の間から見えたのは、鉄の大蛇と対峙するレオ。
実戦は初めてだろうに、 さぞや怖い思いをしているだろうに。
――すぐにでも駆けつけたくなるのを堪え、腰に提げていた扇を外す。
閉じたままのそれを振るうと邪魔な葉を払い、膝をついて。]
この霧は私に味方してくれるでしょうか。
…いいえ、霧さえも味方につけてみせますわ。
[指を滑らせて扇を素早く開けば、黒い骨の間に張られた布地が露わになる。
濃い瑠璃色の地には水の精霊を表す細やかな紋章が白く染め抜かれていた。]
――…
[少女は深く息を吸い、虹色の輝きも鈍い領巾を纏わせた左手を伸ばす。
そうして右手で持つ扇の上に翳してその上を二度、三度往復させ始めた。
扇に触れた領巾はその度にきらりと星の瞬くように輝いて、大気から、大樹を覆う霧から水の気を呼び起こす。]
…蒼き命よ。
清漣なる魂よ。
我が求めに応じ給え…。
[少女は水の精霊に助力を求める言葉を紡いでいく。]
[濃縮された濃い水の気が少女の周囲に集まる。
練り上げられた魔力は収束して一つの魔法になろうとしていた。
金属を貫通する程に高められた、空色をした小石程の大きさをした4(3x2)個の珠。]
我に仇なす敵を射抜け!
ヴァッサー・クーゲル!!
[少女の言葉で水珠は空を切り裂き、鉄の鱗持つ蛇に襲い掛かる。
聲と共にレオの周囲に漂っていた泡玉がぱちんと弾け、事前に魔法の完成を告げるだろう。]
レオ、魔法を放ちます!
巻き込まれないように距離を取って!
[そんな声が、泡玉が弾けるとともに彼女の耳に届いたか。]
[水珠は蛇の纏う鉄の鱗を穿つ。
尾に一つ、長い胴体に二つ、そして右目に一つ。
鱗が堅い所為か、勢いは殺されて貫通はしない。
けれど蛇は突如襲った激痛に牙の生えた口から泡を吹いてもがくだろう。*]
レオ、大丈夫ですか?!
[魔法は無事に射抜いたように思えるが、彼女は無事だろうか。
焦った雰囲気が声から伝わるだろうか。]
私、は、大丈夫――。
だか、ら……次の魔法の準備、を。
[焦りを纏うベルティルデの声に、
痛みに耐えながら、止めの魔法の準備をするよう要請する]
[上方から窺い知る事が出来るのは、まだ蛇を仕留めきれていない事。
少女の視界からは相棒の姿は見えない。
レオの傍にまだ残る泡玉を使って状況を見るだけの余裕はなかった。
少女は聞こえてきた聲に顔を顰めるが、それでも扇根を握り締めて次の魔法の準備に取り掛かる。]
…っ、待っていて下さいね。
[歯を食いしばり、立ち上がった少女は根で出来た床をブーツの底で強く叩く。]
[右、左、右、 左、右、左、 小休止。
三拍子、 三拍子、 小休止。
リズムを刻みながら扇を下から上へ向かって半円を描くように動かすその姿は舞を踊る姿に似る。
それはまだ周辺に漂う水の気を、水の精霊を鼓舞するもの。
そうして場の空気を清める効果を持つ。]
蒼き魂よ、その荒ぶる力を以て、
悪しき魂を在るべき場所へと誘い給え――
奏上するは、清らの調べ
誇り高き精霊よ、我の声に応えよ。
[上から下へと扇を持った手を動かしながら同じリズムを刻んだ後、小休止のところでくるりと一回転する。
領布の先がその動きに合わせてふわりと浮いた。
舞踊は少女の趣味でもあり、力を高める為に利用する事もある。
四畳程の広さの高台で、少女は危なげなくターンを決め、またリズムを刻む。]
其は清浄なる力。
汝の力を持って、迷える魂を浄化せよ!
ライニグング・シュプリューデル!!
[力を振り絞って放ったその魔法は、きらきらと輝く月白色の泡となって蛇の頭上に降り、全身を覆い尽くした。
浄化の力を持った泡は鉄の鱗を溶かし、モーインは首を逸らす。
やがて断末魔と共にもがく蛇を大地へと還すと、その泡は空気に溶けるように消えていった。*]
…っ…。
[少女は脱力し、すとんとその場に座り込む。
一度に二つの自分の中でも大技ともいえる魔法を使ったのはこれが初めてだ。
そうして暫く呼吸を整えていたが――]
レオ…!
[少女は弾かれたように台座から飛び降りる。
落下していく少女の身体をふわりと包んだのは、神殿に来た時と同じ水球。
目指すのは、モーインと彼女が戦っていた場所。]
レオ、お怪我は…?!
[目的の場所へと降り立てば、水球は弾けて消える。
少女は一目散にレオの元へと向かっていた。]
[>>351駆け寄ると、膝から崩れ落ちたレオに近付く。
傷を負っているかは詳しく見ていないので分からないが、相棒の姿を見て少女は顔をくしゃくしゃにしてレオの傍に膝をつく。]
はい、はい…っ。
時間を稼いで下さってありがとうございました。
レオのお蔭ですわ!
[緊張の糸が解け、目がじわりと滲むのを感じながら、少女は泣き笑いの表情を浮かべた。]
[やがて少し感情が落ち着いてくれば、少女はレオを真っ直ぐに見つめる。
囮役を務めている間の彼女の様子は知らない故に。]
――レオ、先程は少し辛そうでしたけど…
お怪我があるのなら私の魔法で癒させて下さいな。
[そう言って、治療の申し出をした。]
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