――……。[一瞬、見とれた。男の彩度の低い視界にも、鮮やかに咲く赤に。自然、立ち尽くした男の視界のに、先行していた狼が、その赤い人へと歩みより、咥えてきた軍帽を渡すのが映り込んだ。ちらり、と、もう一人の姿へと目をやってから、再度男の視線は赤へと返されて。数瞬の後、ようやく足を踏み出す。]