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埋もれし一葉 は 流離の勝負師 ディーク に投票した
魔王 カナン は 流離の勝負師 ディーク に投票した
亡国の将軍 ヨセフ は 流離の勝負師 ディーク に投票した
銀月牙 アイリ は 流離の勝負師 ディーク に投票した
魔将 シメオン は 流離の勝負師 ディーク に投票した
破光装置 クレステッド は 流離の勝負師 ディーク に投票した
流離の勝負師 ディーク は 流離の勝負師 ディーク に投票した
長耳双子 ローレル は 流離の勝負師 ディーク に投票した
流離の勝負師 ディーク は高貴な身分の生まれの為、一度だけ処刑を免れた。
魔将 シメオン は、皇子 ロー・シェン を命を引き換えに復活させた。
皇子 ロー・シェン は死の淵から蘇った。
今日は犠牲者がいないようだ。人狼は襲撃に失敗したのだろうか?
現在の生存者は、埋もれし一葉 、魔王 カナン、皇子 ロー・シェン、亡国の将軍 ヨセフ、銀月牙 アイリ、破光装置 クレステッド、流離の勝負師 ディーク、長耳双子 ローレルの8名。
世界には奇跡がある、と信じたのはその時でした。
我々の
再び、先頭に立って、我々を導いてくださるのだと。
あの御方を目の当たりにして、輝かしき声を耳にして、初めて実感したのです。
諦めない限り、希望は潰えない。
強く思い、未来を信じ、絶望に抗い続ける限り、
いつか、未来は開けるのだと。
─── 追想録集・あの日見た光
魔界の生物というものは概して粗野で愚鈍、もしくは狡猾で卑屈というものに分かれているわけですが、能力の高いものほど知能も高く、中には高尚な遊興や風雅などにも興味を持つものが現れます。
一部の高位魔族であれば、自身の趣味に打ち込むことこそが生きがい、存在の目的というものもおりますようで、中には芸術や学問など、定命の者には到達しえない域にまで極めるものもおります。
無論、人間の美意識や倫理観とはかけ離れたものばかりではありますが、彼らが純粋に自身の求めるものへ打ち込んだ結果の産物は、正邪を越えて我々の魂を引き込むような力を持つものも多く───
─── 或る魔界研究者の遺稿
/*
おっはかだーー、るんるん。
昨日のロシェ見に行っちゃおう〜〜 えっへへ
でもこいつ、墓で呟くことないんだよねえ。
あーーーー!!!メモにアイリへのお礼書き忘れてきたんじゃない!???アイリちょうありがとう……引っ張りまわしまくりんぐですまねかった……(ここで言う)
流離の勝負師 ディークは、長耳双子 ローレル を投票先に選びました。
皇子 ロー・シェンは、長耳双子 ローレル を投票先に選びました。
破光装置 クレステッドは、長耳双子 ローレル を投票先に選びました。
魔王 カナンは、長耳双子 ローレル を投票先に選びました。
銀月牙 アイリは、長耳双子 ローレル を投票先に選びました。
亡国の将軍 ヨセフは、長耳双子 ローレル を投票先に選びました。
[馬防柵の並んでいた地点。
バリスタの射程外へと退いていく移動城砦の足元で、また幾つかの亜人らを踏み潰した]
『もっと沢山殺せばよかろう』
[死をくべられて放つ光。
傷ついた射出翼を小さく畳みながら、ロー・シェンの置かれた寝椅子をガタガタ揺らした]
『下?ああ…鼠の回し車を試みたのだ
なかなか面白くはならないものだな』
[城壁に開けた穴は適当に自己修復しておいた。
問題ない、という響きで問い>>3:262には返す]
― 回想 ―
[ 軍学校に入学した当初は、出来るだけ目立たぬようにしようと、思っていた。
しかし、そんな思惑は、自身の性格と外見を顧みれば、最初から無理な話で、おかげで友人と呼べる相手も出来たが、同時に上級生にも目をつけられる羽目になった ]
(10対1か、さすがに双方無傷で全員躱すのは無理だなあ...)
[ そもそもこうなると判っていて、呼び出しに応じた自分が悪いというのは知っている。しかし、他を巻き込まずに話を終わらせようとすると、これしか手が思いつかなかったのだ ]
いいですけ...ど?!
[ 仕方ない、と腹を括って、身構えようとした時、横合いから、上級生にぶっかけられた水に、目を瞬いた ]
ディーク?
[ 何故ここに?と、問う前に、宣戦布告めいた言葉が上級生に投げられる。その手には何故かモップとバケツが握られていて ]
どうしてモップとバケツ?
[ 笑いたくてたまらなかった。声をあげて、なんなら、相手の肩を叩いて、そんな気分で、当然の疑問を口にしたら、返ってきたのは、「占いの結果」という台詞 ]
そーか、占いなら仕方ないな。
[ 押し付けられたモップを受け取りながら、うん、と頷き、にやりと笑う。槍術や棒術は得意科目だったから、実際良い選択だ。
バケツ術というのは無い筈だが、ディークならなんとかするだろう ]
それじゃ、御相手願いますよ、先輩方!
[ 二人同時に飛び出して、ぶん、とモップを振り回した ]
ありがとな、ディーク。
[ 結局、相手の方が怪我が重くて、隠し切れずに全員みっちり教官に怒られて、上級生は反省室入り、一応情状酌量された、ディークと自分は、二日間の掃除当番ということとなった。
立ち回りに使ったモップを本来の使用法に従って使いながら、ディークにまだ言っていなかった礼を告げたら「占いだから仕方ない」と返されて、またひとしきり笑い転げたのだった** ]
[そして]
『ん… 満ちた』
[砦の方で咲いた大輪の死>>268
薄れ拡散するはずのエネルギーは、核に吸い寄せられてヒトガタの方へ流れていく]
[ 沈む ]
[ 揺れる ]
[ 浮かぶ ]
...クッ!
[ 不意なる急上昇は、まるで、魂が引き裂かれるような痛みを伴って ]
なに?
[なにかを思案していた魔王は、揺れる波動に軽く目を瞠った。
鼠の回し車がどうの、と言う話ではない。それは些末事だ。
……別のことに気を取られなければ、そちらの話も突っ込んで聞いていたかもしれないが。]
…………。
[亜麻色が瞬く。
呆然とした様相は、先ほどまでの魔戦士のそれとはまるで異なるもので]
…………やだ。
[ぽつ、と零れ落ちたのは小さなちいさな拒絶の言葉。
何に対して落ちたものか──それを考える余裕は、なかった]
[手強い魔だった。
相手を翻弄する話術、数多のアンデッドを使役する潤沢なる魔力。
彼により死して尚戦線へと送り出された者はどれだけ居ただろう。
こうして男が魔を倒せたのは幸運にすぎない。
男が気付くことは出来ないが、彼の魔を真に打ち倒したのは、何事も諦めなかったこの地の太陽なのだ]
……っ!!!!
[何の前触れもなく、喉元に熱が生じる。
思わぬ衝撃に息が詰まり、その場に膝をついた。
無意識、当てた手の中で何かが砕けるのがわかる。
7年間、あらゆる意味で繋がれていた軛が外れた、との認識は未だ、ない。*]
[ふ、とどうにか呼吸を整え、男は周囲へと視線を走らせる]
早急にアンデッドの対処を完了させよ!
上空からも魔軍が仕掛けてきているようだ!
対処完了後、即時迎撃へと入れ!
[鋭い声での指示が砦へと広まり行く*]
/*
投票セットする必要もなくデフォだったんですがね(
めざせお墓!
あと2日がんばるがんばる。
拾えてないとこ何とかしたい。
[少なくとも、巨大な魔力が弾けたことは確か。
王の反応に戸惑うように波動は揺らぐ]
あれの語るような"死"の概念はわからぬが
私は、喰らった
[通常、それは死を意味するとしか知らない]
ディークッ...!
[ 未だ、意識も覚醒の途中...けれど、呼ぶコエは、必死さを帯びて...同時に、ヨセフや闇の双子にも、男自身の覚醒を報せただろう ]
───そうか。シメオンの奴め、死んだか。
多少は使える奴かと思っていたが、
人間ごときに殺されたか。くだらぬ。
[視線を落とせば、ツィーアに踏み砕かれずに残っていたゴーレムどもが自壊を始めている。
真底冷えた眼差しで、それを見下ろした。]
……ああ。
だが、ツィーアを満たす役には立ってくれたようだな。
ふふ。どれほどの無能にも、多少の使い道はあったということか。
───そうだ。
シメオンが死んだとなれば、あいつは我の好きにして良いか。
[良いことを思い出した、という顔で長椅子を振りかえる。
その時まさに、皇子が息を吹き返していた。]*
― 防衛戦 ―
[移動要塞が迫る度に城壁に詰める兵達の緊張感が増す。
あの悪夢が再臨するのかと覚悟を決めた者も居たが、齎された結果は異なるものだった]
「門が…!!」
[動いたのは射出翼ではなく、魔王の愛騎である漆黒の竜。
その口から放たれたのは、辺りを侵し尽くす汚毒の霧だった。
吹き付けられた偽りの門はその形を崩し、奥にある本来の西門の姿を曝け出す。
出丸の傍にいた兵達にも霧は降り注ぎ、骸残さず溶けてしまった]
「うわああああ!なんだあれ!」
「きもちわr……おえっ」
[アンデッドですら嫌悪を抱くというのに、人がそのまま溶けてしまう様を見てしまった兵は慄き、一部の者達は戦線離脱を余儀なくされてしまう]
[その光景を見ていなかった者達は幸運とでも言えようか。
バリスタ部隊は出丸を溶かした漆黒竜に狙いを定め、極太の矢を見事に命中させた。
続けざまに移動要塞へもバリスタの矢を放つ。
命中する度に射手達が歓声をあげ、兵の意気も上がっていった。
竜が下がるのを見れば、狙いは自然と移動要塞へと集中する。
それも下がり射程から外れると、バリスタもまた沈黙へと移った*]
[ やがて、魔王のすぐ傍らで、瞼がゆっくりと開き、閉ざされていた金が顕われる。
死の闇から戻ったばかりの身体は、まだ唐突な生に馴染まず、緩慢に動いた右手が左手首のカーネリアンを緩く握った //]
"死"は死だ。ツィーア。
あるいは残滓が力を得て再び蘇ることもあるかもしれんが
……どうなるかは我にもわからん。
なにしろ、死んだことはないからな。
[ツィーアの戸惑いの理由は別のことだろうとも推察はしつつ、死について口にする。]
[けれどもやはり思考は巡り]
───しかし、シメオンめ。
それなりに気に入っていたというに。我を裏切るとはな。
……仕方あるまい。
餞のひとつくらいはしてやろうか。
[小さく呟いて]
/*
そういえばアイリと双子って面識あるのかな…(決めてなかった)
でもあったら、裏切り者だって即バレするよね。
まあいいか。流れで(てきとう)
とにかく、上への対処へは兵を向かわせる。
君達は戻れそうなら砦の中へ───
[そう双子に指示を出した時、響いたコエに男は息を呑んだ]
[魔法兵器の輪郭が膨らむような、拍動]
――
[一度は畳まれた射出翼が再び広げられる。
青白い光を帯びた12対が、毒霧の残滓に澱む空気を軋ませた]
おまえを"殺した"シメオンは死んだ。
見えるか?
ほら。おまえたちの砦だ。
あそこでどうやら、シメオンは死んだようだな。
[笑み。真底楽しげな。]
...ヨセフ?...無事ですか?ディークは、どこに?
[ 返ったコエに、安堵を感じたのは、男も同じ。未だ充分に動かぬ身体は、魔王の傍らに有り、とても楽観視できる状況ではないにも関わらず、闇の底で聞いた
魔将が、そこに向かった筈です...リーと一緒に......
[ 時間の経過は混乱している。ただ、彼等が砦へと向かったのは知っていたから、そう問いを重ねた。ヨセフが娘の呼び名を知らぬことには、まだ思い至らない ]
下等生物の分際で、我ほどではないとはいえ魔を殺すとは見事。
だから、褒美をくれてやろう。
ツィーア。
あの砦におまえの光をくれてやれ。
さぞ美しく消えてくれるだろうよ。
[砦を指す魔王を、青白い死の光が照らし出していた。]*
―演習場へ向かう途中―
[砦内の混乱に乗じ、双子は小柄な身を生かして素早く移動する。
目指すは演習場だ。
が、軽快に動いていた脚が急停止した。
裡に響いたコエを幻と疑うかのように、ぱちぱちと大きく瞬きする]
『なにが…起きてるの…?』
ヘンだよ。それに、近くにあったおっきな魔力が――… 消えてる?
[その疑問の答えは、ほどなくもたらされた]
……
[思考が回路をめぐる。
死するということ
喰らったもの
焦がれる相手
幻想
裏切り、と紡ぐ王の声が、ツィーアのどこかへ沈み沁みていった]
ああ、そうだな。
[双子に返す声は、いっそ機嫌がいい。]
我の目の前で、今目を覚ましたところだ。
これはいいな。実に佳い顔をしてくれそうだ。
───ああ、そうだ。
おまえたち。死にたくなければ砦から離れるといい。
直に、ツィーアが破光を放つ。
きっと、美しいぞ。
[思い出した、というようにそう付け加えた。]
― モーザック砦・演習場 ―
……やだ。
やだやだ、やだ。
[膝を突く姿勢から座り込む態になり、口にするのは拒絶の言葉。
支配の術を受けた時に生じた歪みは、記憶に霞をかけていた。
けれど、実際にはそれだけではなく。
心の内、本質とも言える部分を、その時のままに留めていた。
術を受けてから殆ど動く事のなかった感情、心の機微は15の時のまま。
ある意味では無垢なままの感性は、7年間の積み重ね──血を流し続けた記憶を受け止めきれず。
それに対する拒絶が、一番単純な言葉となって零れ落ちていた。
副官が声をかけた>>22のは、そんな混乱の真っただ中]
は......
[ じっと、金は、魔王の顔を見つめる。未だ、声も十分には出ぬ様子で、浅い息を繰り返しながら、しかし、その瞳に浮かぶ色は驚愕でも、恐怖でもない事に、魔王は気付くだろうか? ]
……っ!
[びく、と華奢な身体が大きく震える。
傍らに落ちた大鎌を掴んだのは、半ば条件反射。
とはいえそれを構える事は無く、その場から飛びずさった娘は大鎌を抱え込んでその場に座り込む]
………………。
[喉元を襲った痛みは落ち着いているが、声が出ない。
座り込む様子は途方に暮れた仔犬の如き態。
実際のところ、どうすればいいか、という点で途方に暮れているのは、間違いないのだが。*]
『望むままに』
[魔力の波動が、玉座の間に音を響かせる。
死の光を掲げる翼が燦と煌めき、
魔法兵器の咆哮は平原を薙ぎ、山を響かせ海へと走った]*
…、えっ。
『倒したの…?』
[魔軍でアンデットを操る魔はひとりしかいない。
あの魔将がニンゲンに遅れをとるなんて正直信じがたいが…
膨大な魔力が消えて、ヨセフが生きている此の状態が、事実だと肯定していた]
す、ごいな。ヨセフは。
『とっても強いのね、びっくりしたわ』
は...あ...
[ 苦しい息を、戻そうとする仕草で、喉元に手を動かす、その実、手は、恐らく魔将シメオンが、些細な事と放置していた魔石の入った小袋を探していた ]
― モーザック砦・演習場 ―
[兵への指示を終えると、男は大剣を鞘に納めある場所へと近付いて行く]
……ヴェルザンディ……
[魔の力が切れ、骸と化した男の妻。
倒れ伏すその身体を両手で支えながら起こし上げ、己の胸へと抱き寄せた]
すまない……護ってやれなくて
[零れる雫が妻の頬を濡らす。
アンデッドとなった家族を斬る覚悟をした男だったが、最愛の妻だけは、どうしても斬ることが出来なかった。
見目がそのままであったことが一番の要因だろう]
― モーザック南西 ―
なにをする気だ
[壊された組織を再生させながら、ヒトガタは呟いた]
戻れと…
また、焼くのか
[紫毒の短剣を腰へ戻し、今まさに力尽きたエルフの遺体へ黙礼をして、馬を呼ぶ。
城砦の方では、マルサンヌと同じことが起こるかと察知した魔物の生き残りが我れ先と逃れようとしていた]**
[続いた宣言に、ぎょっと双子の心臓が跳ねた]
『はわ』
えええっ。 ―――あ、はいっ
[こういう時は可及的速やかに行動するべきだということを、双子はこれまでの経験で、身に染みて理解していた。
魔王様の麗しい気紛れは絶対なのだ]
砦の地下に...武器庫があります。動けぬ者はそこへ...馬で逃れられる者は馬で...全員は無理でも、一人でも多く...
リーは...アイリは俺の妹です...魔将の支配を受けていた...敵、ですが......出来るなら...共に避難を......お願いします。
[ アイリについては、願うしか無い。それを命として告げられる程、彼女の齎した死が軽いとは、男も思ってはいなかった ]
お前達...魔、は......哀れな存在だ...
死を知らぬ故に......生も知らない......
ほんとう、の...喜びも......幸福も...
[ 探し出した石を砕く力は戻っていない、だから、それを、己の口へと素早く放り込んで、噛み砕いた// ]
[人間の心の機微など気に掛けたこともなかったが、目の前の金が怯えも恐れもしていないことには気が付いた。
人形のような従順さが足りない。
もっと慄く顔が見たい。
やはり、我が手になる人形は素晴らしいなと思う。]
哀れと言ったか?
人間が、我を哀れむか。ほう。
[不快が、ちりと言葉を焦がす。
人間に限らず、あらゆる生き物に恐怖され畏怖されたことはあっても、哀れまれたことなどない。]
やはりおまえは疾く殺すべきだな。
ツィーアの餌にくれてやろう。
[不機嫌を隠すことなく吐き捨てて、金の頭に手を伸ばす。
獲物の些末な動きなど、それこそ気にも留めなかった。]**
― 防衛戦 ―
[砦の城壁で様子を窺っていた兵や騎士は戦慄した。
下がった移動要塞が射出翼を再び展開し、臨戦態勢へと入ったためだ]
「しょっ、将軍に、報告っ…!」
[果たして間に合うか。
そう考えた騎士は逡巡の後に声を張り上げる]
「総員、退避ーー!」
[独断を咎められても構わない、と。
その一言で城壁に詰めていた兵達は次々と避難を開始した]
[一方で、男もまた移動要塞再動の情報をコエにより聞く]
拙い……。
バルタザール、この娘を連れて地下へ。
動けぬ者達も皆、地下の武器庫へ避難させろ。
動けるものは急ぎ馬で砦から退避。
例の攻城兵器が動く、迅速に行動せよ!
[その号により砦の内部は再び慌しさを増した]
Fiat lux
[ 砕いたのは希少な天青石。
そこに込められたのは、古来から、舞姫達が神に捧げ続けた舞により受けた祝福の光。
聖なる光は、肉持つ身である、男自身にも、苛烈な浄化の痛みを与えるが、同時に、男の意志を吸い込んで、爆発的な光の奔流を、その場に出現させる++ ]
……シェン、おにぃ……が?
[とっさ、口をついたのはずっと使わなかった呼び名。
とはいえ、無意識の内に呼んだ事に気づく余裕はなかったが]
……どうして……。
[思わず零れた疑問に答えはあったか、否か。
何れにしろ、身動きの取れない状況、運ばれるならば抗う事はできぬのだが。**]
う...おおおっ!!
[ 光は光、武器に纏わせたなら魔王を倒す神器ともなろうが、恐らくはそれのみでは、足りない。
それでも、一瞬でも隙が作れたなら、男は魔王の前から身を翻す。
今、殲滅兵器の前に曝されている砦に...仲間の元へと還るために** ]
/*
まあ、砦は消されてもいいんだけど、全滅しないようにしないとなのよね。
やー、パワーバランス難しいわ...王都まで押し込まれるかな、これ。
はい、頼みます、ヨセフ。
[ 返す声は、既に平静だ。自ら喚んだ光が身を灼いていても、それを表に出すことはなく。
アイリをどう扱うかについても、全てヨセフに託す覚悟は出来ていた。
恐らく、彼は願いを聞いてくれるだろうという...甘えに近い期待が奥底にあったのは確かだけれど。
男自身が、いつ戻るかを、告げる事はしない。必ず帰るという誓いは、今も同じだが...この場を逃れられるかは定かではない。
そして、もう一つ、コエに答えの返らぬディークが気にかかってもいた** ]
理由を聞きたければ生きて彼に会えば良い。
[疑問にはそれだけを答えて、後のことを副官に任せた。
副官はアイリを連れ、地下の武器庫へと避難する]
[男もまた妻の亡骸を護るために地下へ避難することにする。
愛馬は兵に頼み、南へと逃がしてもらうことにした。
移動の途中、ローレル達双子を探し出すことは出来たかどうか。
砦内に走る指示は彼らにも伝わっていようから、避難することは可能なはずだ]
[地下へと避難する者達は移動距離が短いために、攻城兵器の発動までには間に合うことだろう。
ただし、地下への避難は人数が限られている。
それ以外の大多数は馬や徒歩での避難となった。
避難が間に合うかはその者達次第。
ただ、王都アルテス側へと逃げた場合は、余波に巻き込まれる可能性が高いことだろう。
攻城兵器を前に、王国軍は戦々恐々とした時を過ごす**]
/*
おはよーございます。未だ生還出来るのか怪しいロードです。
昨夜のログ読み返したら、ディークの声を聞くタイミングがものすごくずれてますね。
まあ...あれだ、コエじゃないから、タイムラグがあったとか、生者と死者(死んでない)の間には時間経過の差があるとか、時空の狭間から聞こえたとかなんとか、こう適当に解釈して頂けると...(ごめん)
だって、どうしても反応したかったんだもんよっ!!(本音)
/*
あ、あと三日目の自分ログ見えてます。
これ最初見えてて修正された気がするんだけど、仕様変更再びなのか、謎だな?
一人無双だったので、他の人の墓ログも見えるのかは不明。あと今日の墓は見えてません。
[ 報告的に残しておく ]
/*
あ、今気付いたが砦が吹っ飛ぶと、ねーちゃんの手紙と形見も吹っ飛ぶな...あー、やっぱり先にディークに渡しとくべきだったか...
んー、でもまあ、吹っ飛んじゃったって伝えるのもありっちゃあり...
ごめんねあねうえ。
/*
はっ!?そういえば従者のナイジェルくんが居た!
剣とか皇子の大事なお手紙とかは持って逃げてくれてそう?(とりゃーず剣は確実に要る)
/*
思い立って見に行ったら、昨日の墓用メモは今は見えない。前はそこも見えてた気がするから、やっぱり自ログだけ見えるように修正された気がするな。
― 城付近 ―
[城壁の穴から、投げ出されるもの。
魔軍の攻撃にしては、砦と方向が異なり、なおかつ、小さい。
せいぜいが人間サイズで──
やがて引力に引かれて落ち、地面に叩きつけられた。]
[頽れうずくまる塊から、ゆっくりと、一対の旗めいたものが伸び上がる。
それは、痛ましいほどに傷ついて不揃いながら、純白の煌めきを零す翼だ。
羽化したてのような緩慢とした動きで空を仰ぐ額には、青き第三の眼が開く。
はるか昔に、人間に知恵を授け、しかして後、空の彼方の故郷に帰っていったという伝説の
[飛び方を思い出せないように、翼持つひとは、昏い地上を歩き出す。
そうして、蔓延する死と恐怖と絶望を見届けた。
魔王のまとう光とは似て非なるいろが残す光跡を辿り、あるいは動くものの在処を嗅ぎつけて屍兵が音もなく寄って来る。
が、腐りかけた手が触れるや否や、屍兵は灰となって崩れ去った。
鋼の槍に貫かれ、死にかけていた王国兵が「天使だ」と喘ぐ。
手を差し伸べ、泥に汚れた輪郭を撫でた。
兵士は幸せそうに微笑み、息絶える。
そっと瞼を閉ざしてやりながら、以前、どこかで同じことをしたのを思い出す。あれは──]
― 思い出 ―
[ 会いたいなら会いにいけばいい、そう何度も姉に促されて、それでも一人前の騎士になるまでは、と、思い決めて数年...男にとっては唐突に、その報せはもたらされた ]
リーが...?
[ 母を亡くして、1人になったアイリが、ローグの民の元を離れて旅立った、と、そう伝えられて、メッセンジャーの役を担っただけの相手に思わず詰め寄った ]
1人でって、どうして?何のためだ?!
[ 元々、同じローグの民とはいえ、別の一団、アイリを直接に知るわけでもない相手は、困った顔で知らないと告げる ]
そうか...そうだな、すまない。ありがとう。...知らせをくれた長老にも礼を伝えてくれ。
[ 無茶を言ったとは、すぐに気付いたから、頭が冷えると、そう謝罪と礼を伝えて......その後数日、どっぷりと落ち込んだ ]
[その時、城の頂で光が弾けた。>>46
この身の一部とすらいえる天空の波動に宿る力が呼ぶ。
想いが突き破る。
それは、再びの覚醒だった。]
ロー シェン …っ
[ひとつの名をきっかけに、感情が、記憶が溢れ出す。
地上に生まれた
姉上のおっしゃった通り...会いに行けば良かった。
[ 姉姫に面会した時にも、落ち込みから回復できておらず、思わずそう零したら、手招きされて、ぽふと頭を撫でられた ]
...っ!あねうえっ!俺は、もうそんな子供では...
『あら、でも、子供みたいに拗ねているんですもの』
拗ね...て、なんか。
[ 身も蓋も無い指摘に、反論しようとした声は小さくなる ]
『可愛い妹が、何も言わずに旅立ってしまって、拗ねているんでしょう?』
[ ふわりと微笑んだユーリエ姫は、でもね、と、澄んだ声で言葉を繋いだ ]
『待っているだけ、というのは、辛いものよ。あなたは、アイリさんを護ってあげたかったのでしょうけど、ただ護られるために待ち続けるなんて...寂しいわ』
姉上...
[ 寂しいと言うその声音に、はっとした。病弱のため、王宮から殆ど出る事もなく育ち、兄や弟の訪れを唯一の楽しみとするしかなかったこの姉の、本当の寂しさを、その言葉の中に垣間見る思いで ]
『今度は貴方が待つ番ね、ロシェ』
[ 次の瞬間には優しい笑みに戻った姉の言葉に、男は、素直に頷くしかなかった。
そうして、待ち望んでいた再会が、苦痛に満ちたものになるとは、思いもせずに** ]
[疾く帰天せよと、しかして地の表を浄化すべしと、魂の糸を引くものがある。
だが、]
面倒くさいな…!
[一蹴して翼を広げ、風をつかまえ、舞い上がる。
ロー・シェンをこの手に取り戻すべく、空へ。*]
/*
うわー、どんな顔して会えば.........いや、このこのことだから、ふつーに喜ぶな。
[ 光の速さで自己解決 ]
/*
脱出は地道に、ダンジョンアタックかと思ってましたが、どうやらショートカット出来そうな予感......
[ ありがたい...事前に拝んでおこう(=人=) ]
な…
[伸ばした手の先から、光が溢れた。
殆ど物理的なまでの圧力を持つ光の爆発に押されて、半歩仰け反る。
じりり、と焼ける臭いが立ち込めた。
光が収まったとき、目の前の長椅子には何者もいなかった。]
……。
[ぽたり、と水滴の落ちる音がする。
ぽたり、と落ちる音の後には、ジュウと立ち昇るものがある。
空気が灼け、土や岩や金属が溶ける臭いが立つ。]
……なるほど。
[低く、低い笑いが響いた。
命あるものを全て凍りつかせるような笑いが。]
良いだろう。
今は、逃げるがいい。
[顔を上げた魔王の瞳が、灼熱の色に輝く。
大地の奥深くに眠る劫炎の色。
魔界を照らし焦がす太陽の色。
その烈光を飾る秀麗な相貌は、今は半ば焼け崩れている。
剥ぎ取られた肌の下から覗くのは、溶岩の大地さながらに罅割れ赤く明滅する異相。
焼け爛れ捻じれた右腕から滴る雫は、空気を焦がし魔法兵器の外装までをも溶かす。]
いずれこの地を焦土に変えた暁に、
この手でおまえのはらわたを引きずり出し、
バラバラに切り刻んでやろうではないか。
ロー・シェン……!
[ぐつぐつと煮え滾るような哄笑が、砦へ向けて響き渡った。]*
/*
こわい魔王様、ものすごくかっこいいよね!
[ 多分、ロードがファンクラブ最筆頭である(しかしライバルは多そう) ]
[ 自ら喚んだ聖なる光は、男の胸に残る魔の痕跡をも灼き尽くし、浄化しようとする ]
ぐ、あ...っ!
[ その痛みが、神経を覚醒させ、萎えていた手足に逆に力を与えたのは皮肉と言えようか。
魔王の姿が光に飲まれ、見えなくなった瞬間に、男は全力で駆け出した ]
[ 同時、外に出る手段は無いか、と辺りを見回す。
重そうな燭台の一つも見つければ、それを使って、壁そのものを力任せに破壊しようという勢いだ// ]
[ヒトガタが城砦の元まで戻った時、塔の頂で光が弾けるのを見た。
魔界の太陽とは異なるいろ]
……
[胸の中心から魔法兵器へ、集めた触媒の奔流が流れていく。
浄化の力によって一部を欠けさせながら、兵器の魔導が破滅の光を撚り集めていく。
割れた射出翼が震え、禍々しい唸りと共に臨界へ高まっていく。
それら全てを意識していないかのように、ヒトガタは天を仰ぎ、顔の前に手を翳した。
眩しげに銀を細める]
― モーザック砦・地下 ―
[移動した先はどうやら、負傷者や避難してきた民が多く集まっているようだった。
そこかしこで上がるのは、痛みに苦しむ声と、突然の出来事への不安の声。
そして、それらを宥め、励ます声。
声が多く入り混じっていてはっきりとはわからないが、希望を唱える者の多くは皇子、という言葉を口にしていた。
それが示すものは──彼が人の心の拠り所になっている、という事実は明確で]
…………冗談みたいだな。
もしかして、ほんとに変わってないのか?
[ぽつり、と呟きが落ちる。
記憶の霞は、完全に晴れたわけではないけれど。
見えなくなっていた部分──幼い頃の思い出は断片的に浮かんでいるから。
ああ、厄介だ面倒だ、という思いが声音に滲んでいた]
[ともあれ、今は大人しくしておくか、と。
そう割り切った直後、すぐ近くが騒がしくなった]
……なんだ?
[ひとつ瞬き、亜麻色を向ける。
どうやら負傷者の一人の容態が悪化しているらしい。
ああ、これは助からないな、と冷静に判じる事ができるのは、どうすれば人が死ぬかを理解しているが故。
それでも諦めたくないのだろう、治療を求める声は上がるがすぐに手は回らないらしい]
……騒々しいな、もう。
[思わずもれた声音は、相当に不機嫌なもので。
自然、視線はこちらに集まった]
……騒いだって、傷は塞がらないだろう。
まったく……。
ほら、ちょっとそこ、どけ。
[呆れを隠さぬ口調で言いながら、負傷者の横を強引に開けさせて膝を突く。
何事か、と周囲がざわめくのは完全に無視して。
その場にあった、治療道具の一つらしい小さなナイフで自分の指先を傷つけ、滲んだ紅を負傷者の胸元に押し当てた]
……血のしずく、命のかけら。
……二つは等価、故に、変ずるは叶うもの。
……命の力の輪、我のしずくを持って廻れ。
……損なわれし、あるべき容取り戻すため。
[小声で紡がれる呪に応じ、薄紅色の光がふわりと散る。
それが消え失せた頃には、負傷者の呼吸はだいぶ落ちついていた。
それを確かめた娘は元に位置に戻って座り込む]
……うるさい。
[今何をしたのか、とか、どうして、とか。
向けられる問いは、短い言葉で一蹴した]
あたしは、疲れてるんだ。
他の連中だってそうだろ。
騒いだって消耗するだけなんだ、静かにしろ。
[素気なく言い放った後、そのまま黙り込む。
やや伏した顔には先ほどまでとは違う疲労の色が滲んでいる事に、気付くものはあったか。
娘は左手首の虎目石を握って、一つ、息を吐いた。*]
─ 破光 ─
[灼ける。
ツィーアを灼くものがある。
ヒトの造物が刻んだ金属などではなく]
『 あまい』
[我が王から滴るものがツィーアを灼く。
魔導炉が沸き立った。煮え滾る劫炎。
破滅の光が、アーティファクトへ収束する──]
[それは、鷲掴みにするような衝撃を与えたろう。
移動城砦の内壁は痙攣し、触手を巻きつけて体内のそれをぐちゃりとからめ取り。
塔に不意に開いた裂け目から、人間>>65を東の空、砦の方向へ"嘔吐"した]
[逃げるがいい、との王の言葉に従ったまで。
バリスタなどよりも強い初速で撃ち出したロー・シェンの体が描くだろう軌跡と、
シメオンを殺したモーザックの砦と、
更にはその東の山脈へ。
すべてを飲み込み無へと帰すべき光が、
東の空を焼いた]
― モーザック砦 ―
[攻城兵器から逃れるために兵達は上を下への大騒ぎだ。
パニックに陥り終末思想に囚われる者すらいた。
砦上部から数体、四つんばいのアンデッドが降りてくるのを見て絶叫する者もいる。
魔は倒されたはずなのに何故、と。
混乱はどんどん色を濃くしていく。
正常な判断を奪う混迷は逃げ遅れを生んだ]
アンデッドに構うな!
砦を出ることを優先しろ!
[男はギリギリまで兵達に指示を出した。
声に正気を戻すものは一握りだったが、それらが他を叱咤し砦の外へと促す]
……なるべく離れてくれ。
[後は彼らの行動力に任せるしかない。
未だ騒ぎの濃い砦を肌で感じながら、男は地下の武器庫へと潜り込んだ]
― モーザック砦・地下 ―
[武器庫では不安を紡ぐ声や、それを励ます声など、様々な音がざわめいていた。
その中で男は入口付近に陣取り、妻の亡骸を横たえさせる。
耳を澄ませ、外の異変を窺っていると、副官がそっと声をかけてきた]
…なに? 彼女が負傷者を助けた?
[容態が悪化した負傷者をアイリが助けた>>72との報告。
敵意が減じていたのは先の会話で把握していたが、その話には男も少し驚いた]
そうか…操られていたというのは、事実のようだな。
[ぽつ、と零した声に副官は「えっ」と声を零していた。
それに男は一つ頷くだけにし、一度アイリへと視線をやる。
態度は相変わらずのようだが、どこか疲れたように見える>>73のは気のせいだろうか。
様子を確認するだけにし、男は再び外へと意識を向けた*]
[マルサンヌの時と異なる結果を呼んだのは、幾つかの不具合。
練られた魔導の集中を、浄化の光が乱し欠けさせたこと。
兵器中枢の魔導炉へ連なる経絡に傷をつけた者がいたこと。
射出翼に割れがあったこと。
だが破光は美しくあった。
威力が下がったことをツィーアは気にしなかった。そもそもが、本来の威力よりも小さく弱く制御されていたのだから]
/*
そういえば、敢えて表には出してないんだけど。
わんこの治療は、魔法とは違うんだよね、実は。
広義で言えば、魔法の分類に入るかな、と思うんだけど。
生命力触媒にした治癒術、という位置づけになってるけど。
ようするに自分の生命力を付与しているというあれでそれ。
だから、施術後に疲れるし、あんまり使うな、とも言われているという。
[やや上方へ傾いて放射された光は、モーザック砦の二階以上の構造をほぼ消滅させ、それ以外を爆風で瓦礫へと変えた。
そしてアルテス北の山地に深い谷を刻む。
やがて、一帯の傷跡へは瘴気の雨が降るだろう]**
[何も訓練せずとも魔法のカードを扱えたように、背中の翼も滑らかに動く。
両者は同じものだと、ふと気づいた。
魔導炉からの脱出に多くのカードを費やした今、翼もまたボロボロで、スピードは望めない。
それでも、裡なる力を引き出して、空を駆ける。]
[呼ぶ声がした。耳と魂とに響く音。
心の闇の中で求めていたその人の。
まだ夜で周囲は暗い。
だが、天眼は、人の視力とはまた異なる知覚で、窓の奥のロー・シェンの姿を判別した。>>64]
私はお前のものだと言うてきたが
どうやら、お前もまた私のものだと思う
[言語というツールを手の中で弄び、触れる]
お前は私の悦び
私がお前の
お前は私の最初にして最後のものだ
[痛手を感じさせない足取りで玉座に戻り、腰を下ろす。
右手を置いた肘掛けがどろりと曲がって溶けた。
焼けた顔はじわりじわりと白い肌が覆い隠していく。
右手の傷はさすがにすぐには癒えないが、いずれ戻るだろう。
頭上を飛ぶ光を一瞥して、魔王は視線を前へ戻した。
あんなものよりも面白いショーがすぐに始まる。
魔導炉の唸りは臨界へ向けて高まり、人の耳には聞こえぬ域へ達していた。]
[空を貫くひかりは、美しかった。
なにもかもをも飲み込み消滅させる破壊の光。
この光の中では、すべてが等しく美しい。
幻想。
この光が、世界すべてを飲み込む、その時]
[永遠の一瞬を刻む静けさの後、轟音と爆風が玉座にまで届く。
損なわれていない左手を掲げて、埃交じりの風を左右に割った。
細かな土ぼこりが晴れたあと、目の前に現れたのはずいぶんと見通しが良くなった谷だ。]
雑兵どもを差し向けて、残党を狩り出しておけ。
[命じたのち、己はツィーアの内部へ降りる。
治癒のための時が必要だった。
やがて、瘴気の雨降る瓦礫の間へ、闇の亜人たちが近づいていく。]*
[ 頭上まで駆け上がった翼が、小さく畳まれ、獲物を狙う猛禽の如き鋭い軌跡を描いて、滑空してくる ]
[ 呼ぶコエが、心に響いた ]
うあああっ!
[ 経験したこともない速度で男の身体は宙に放たれる。上も下も判らず、周囲を知覚することも叶わない...が ]
く...そおおおっ!
[ 金の瞳を見開き、空中で身を捻る...探すのは、ただひとつ ]
[先刻の自分同様、城の外へと投げ出される身体を宙で受け止める。
伸ばされた手の強さ、確とした質量、そして温もり。
両手に抱いて、少しずつ高度を下げながら滑空する。
すぐ後ろを、すさまじい破壊の力をもつ灼熱の束が突き抜けていった。
時ならぬ朝焼けに、鳥たちの群れが一斉に羽搏く。
白い翼は、その中に包み隠された。]
死ぬにも生き返るにも、無茶しやがって。
[よく戻った、嬉しい、と相変わらず素直に言えないままに、抱擁に力をこめる。]
どこへでも好きなところへ連れていってやる──と言いたいところだが、そろそろ限界だ。
城で体力を削られ過ぎた。
知ってるか? あの城、しゃべるぞ。
[着地できそうな場所を探し、羽根を広げてブレーキをかけた。
ロー・シェンともども、草の上に倒れ込む。]
ようこそ、レオヴィルへ。
ここは、皇太子ロー・シェンが護る、人間が自由でいられる最後の場所だ。
[ツィーアの体内、床から天井までを満たす半液体の中に、魔王は目を閉ざし浮かぶ。
眠ることはないが、瞑想に近い状態にあった。
雑念を落とし、純化されていく精神の中に、波動が響く。]
─── 我が、おまえのものか。
[言葉を繰り返し、薄く目を開く。]
最後に共に立つものだ。
そうなのだろう。
[幻想の先の光景。
破光の輝きが、それを鮮やかに呼び覚ます。]
我の望みにおまえは欠かせぬ。
おまえにとっては我が全てだ。
分かちがたきもの、ではあろうな。
[砦戦の状況はまったくわかっていなかったが、ヨセフがロー・シェンの欠けた穴を埋めようと全力を尽くしたことは、微塵も疑っていない。]
殿下、
あんたの信念が正しかった証拠がここにいるぞ。
[本当ならば、ヨセフもこの場にいたかっただろう。
そう思いやるくらいには、彼らの絆を理解していたから、真っ先に彼に知らせた。]
無事で良かったよ...コエが聞こえるまで、気が気じゃなかった。
[ 素直じゃない物言いに、お返しとばかりに返るのは、素直すぎる本音だ ]
喋る、のか?そういえば、ずっと見られてた気がするな。
[ 城が喋るという話には、さっきは思い切り吐き出された気もする、と、口にして... ]
ヨセフ...生きてますか?
[ 地上からは、地下まではやられていないように見える。けれど、魔の瘴気が届いていれば、地下も無事では済まないだろうと、コエは緊張を孕んで投げかけられる ]
帰らないと。
[ 疲れ果てた身体に鞭打つように、立ち上がる。
服の上からは判らぬ場所にある魔印の焼けただれた痕が、ずきずきと痛むが、構ってはいられなかった ]
魔軍の追撃が来る...負傷者や、女子供は一人でも多く、王都へ逃がす。
[ 護りの要であった砦を魔兵器に灼かれた......それは、隣国が魔王によって滅ぼされた、その手順の再現めいている。
これが伝われば恐らく、王都は、程なくして、恐慌のるつぼに陥るだろうと思われた ]
― モーザック砦 ―
[やがてその時は訪れた]
───── !!!
[魔法に長けたものであればその前触れも感じ取れたかもしれない。
男には前触れなくその衝撃が襲ったように感じた。
地下にありながら、大地そのものが鳴動するような震動が身体を襲う。
周囲では悲鳴が上がり、皆身を護るように身体を縮こませていた。
次いで、ガラガラと何かが崩れる音が響き、轟音が長く続いた後に静寂が訪れる]
────………
[誰も声を発せない中、男は辺りを窺うように顔を上げた。
地下である武器庫内には震動により舞い落ちた塵芥が漂っている。
天井や壁の一部が剥がれ落ちたりする箇所はあったが、概ね皆無事のようだ。
遅れて顔を上げた副官と目が合う]
…外を確認してくる。
皆はまだ動かずここに居てくれ。
[地下の護りは共にここへ避難した数名の騎士や兵士に任せ、男は副官を連れ出入口へと向かう。
何かが崩れる音がした。
出入口が塞がれていないか確認しなければならない*]
[ 砦から逃げおおせた兵は、全体の半分程、残りは砦と共にか、離れきる前に、魔の光に灼かれて跡形もなく消滅した。
戦士長をヒトガタに倒されたエルフの戦士の中には、大鹿の脚力を生かして崖を越え、生き延びた者もあるが、もともと寡兵であったものが、既に残りは10名を切る ]
― モーザック砦 ―
[治癒を用いた反動からの疲労。
それが齎した微睡みに落ちかけていた時に、それは伝わってきた]
……っ!
[くる、と。
そう思った直後に駆け抜けたのは衝撃。
大きな力が解放された事と、それがなんであるかは、問うまでもなく理解ができた]
大きな力が解放された……となれば。
[上には未だ、その余波が残るはず、と。
そう、思うから]
……心配するな、逃げはしない。
どうせ、逃げるあてなどないしな。
[己を縛していた者は既にない。
その状況で、行き場などはあるはずもないから]
……どうにも信頼できんなら、監視をつければいいが。
父たる魔戦士の名にかけ、謀りはしないと約す。
[それでどうだ、と首を傾げる。
どうしても動くな、と言われるなら、従う意思はあるのだが。*]
外には、瘴気が迫っています。出るなら聖結界術を使える者と一緒に。
[ 外へ出るという言葉に、そう忠告を渡す。皇子の従者は火傷で負傷者扱いとなっていたため、地下にそのまま避難していた。
律儀に皇太子の残した武具や、私物を抱えて逃げてきたのは、褒められるべきか、呆れられるべきか微妙なところだ ]
― モーザック砦 ―
[移動を呼び止める声>>103に振り返る。
その言葉にマルサンヌ砦の惨状が頭を過ぎった。
自分が行くと言うアイリの言葉に、彼女がどんな存在かを知る兵達は色めき立つ。
何か言おうとする彼らを手だけで制し、男はアイリへと向き直った]
だとしても、ここを脱出するための道を探さねばならない。
君はこの砦に詳しくもないだろう。
だがそうだな…瘴気の中でも動ける人材は貴重だ。
[逃げはしない、と宣する>>104のを聞き、少しばかり悩む態。
彼女が逃げるとは思ってはいない。
だが兵達の手前、易々と諾を返すわけにはいかないのだ]
君が抱く誇りは本物だ、それは私が認める。
その約、私が同行することで受けよう。
[男が同行し、何事もなければ今後彼女が面倒な言われをされることもあるまい。
何かあっても男ならば、と兵に思わせることが出来ればこの場は納得させることも出来よう。
男を案ずる声もあったが、概ね男の目論見通りにアイリの行動は認められることになった]
バルタザール、皇太子の従者を探しておいてくれ。
ここを出る際に彼の力が必要だ。
[コエにより得た情報を副官へと告げ、男はアイリを伴い外の確認へ行く//]
......
[ 外の様子を確かめて動くというヨセフからのコエに、返答を返し、アイリの無事を確かめようかと考えて、躊躇う。
今更ながら、彼にとって、アイリはただ、親友の仇だ。彼女の事であまり頼り切るのは、その傷に触れる気がした ]
...これはこれで、呆れられそうだけど。
[ ぼそりと呟いて、胸の小袋から翠玉を取り出す。
この魔石を使える条件は二つ。一つはコエを繋ぎたい相手を目の前にして使うこと。もう一つは、今の姿形と名を正確に思い描いて使う事。二番目の使い方なら、距離が開いていても精霊の道は開かれる ]
(……しかし、あたしがこう、という事は)
[それと共に過る懸念もあるのだが。
推測の域を出ないそれを口にする事はしない。
さすがに、ここで言うべきではないだろう、という自制は働いた。
ともあれ、その事は横に置き、外の確認へと向かう]
[進む道順に関しては、共に進む男を頼る他ない。
いずれにせよ、外が近づくにつれて、空を灼いた光の残したものが感じ取れた]
……加護があれば、動けなくはない……かもな。
[感じるそれに、ぽつり、と呟く。
対策が講じられていることは現状、知る術もない。//]
[ 小石を拾って、翠玉を砕く、彼女の居場所が知れない間は、出来なかった術 ]
[ アイリが、それをどう受け止めるかは判らないが// ]
リー...
[ そっと、名を呼ぶ。彼女の記憶がどうなっているのか、判らないままだから、それはどこかまだ、躊躇うような声音だった ]
/*
赤窓もったいないし、この調子だと会ってからじゃ、ますます繫ぎにくくなりそうだから強行しました。
[ わがまま皇子である ]
リー、良かった。思い出したんだな。
[ 懐かしい呼び名、それが聞こえたことに安堵する ]
覚えてないか?ローグに伝わる精霊の道だ。俺の他にも繋がってるから、俺とだけ話したい時は、名と顔を思い浮かべればいい。
……精霊の道。
[そう言われれば、思い当たるものはある。
故に、突然の声の理由は腑に落ちた。
他にも繋がっている、という事は今行動を共にする人物辺りとも共有しているのか、とそこまで思考を巡らせて]
……そこまでしなくとも。
今更、逃げるつもりはないぞ。
[それから、返したのはこんな一言。
安堵の響きから、そういう意図が主ではないとは思うけれど。
距離を容易く詰めるつもりはないから、自然、物言いは素っ気なくなっていた]
別に監視のために繋いだわけじゃないって。
[ 素っ気ない物言いにも、男がめげる様子は無い ]
元気そうだな、安心した。
怪我は無いか?
[ 口調に滲むのは純粋にその身を案じていたという気持ちだけで、まるで、これまでの死闘と呼んで良いもの全て、どこかえ置き忘れてきたかのようにも聞こえただろうか ]
― モーザック砦 ―
[遭遇当初のアイリへの静かな激昂を知る副官は、男が彼女を保護したり自由を許すことに疑問を抱いていたが、男が決めたことならばと指示通りにロー・シェンの従者を探す。
彼は火傷を負い負傷者として収容されていたため、この地下に避難していた。
外が瘴気に侵されている可能性を伝えると、従者は心得たように頷く。
副官はここから移動する旨を居る者に伝えておき、男らの帰還を待った]
[男が仇敵でもあるアイリを排せず、便宜を図るのはロー・シェンの縁者であること、彼がアイリを案じていることが大きな理由だ。
一番複雑な想いをしているのはロー・シェンなのだとも思っている。
このことは男だけで処理できる範疇を超えていた]
これは……
[階段を上り、地下から1階へと出る際、男は辺りに広がる光景に絶句した。
ところどころ天井が抜け、砦を作っていた壁や天井が瓦礫となり転がっている。
地下からの出口が塞がれていなかったのは幸運と言って良いだろう。
吹き抜けとは行かない分、瘴気はまだ外で燻っているようだが、中へ充満するのも時間の問題だろう]
[男はアイリを伴い進めそうな道を選び、外を目指す。
天井が崩れそうな箇所はなるべく避け、アルテス側に抜けられそうな壁の穴を見つけた。
本来の門へ向かうよりは距離が近い]
ここから出るとしよう。
加護か……結界と、聖水で何とか対処するしかないな。
少なくとも、瘴気を吸い込むことは避けねば。
結界ならば治癒師を含め数名扱えるものがいる。
彼らには負傷者達に添ってもらおう。
何度か往復することになるかもしれないが…致し方あるまい。
自ら動ける者、軽傷の者は聖水を浸した布で口元を覆い出る。
[ただ、聖水の残りも多くない。
男が持つ分を含めても、数本と言ったところだろう]
………いや、何でもない。
[言いかけて、首を横に振り言葉を途切れさせた。
魔軍を敵に回す気はあるか、など。
何を聞こうとしているのかと自問する。
魔軍からの追撃があるだろうことは容易に推測出来ること。
それを食い止める手が必要だった]
戻ろう、脱出せねば。
[その任には己が立てば良いと考え直し、男は踵を返した//]
[再会を喜ぶロー・シェンの率直な言葉に、脈がやけに早くなった。
もっと聞いていたいと望みながら、もういい、わかってる、と引き取ってしまう不器用さで、身体を起こす。
つい呻いてしまうほど、身体が重かった。
休みなく酷使し、ロー・シェンに負けず劣らずの満身創痍だからというのもあるだろう。
だが、一番の理由は、受肉する前の記憶を取り戻したせいだとわかっている。
立ち上がるのに、ロー・シェンの手を借りながら、ディークは苦笑した。]
俺が人でなくても、おまえは平気なんだな。
まるで、知ってたみたいだ。
[外見のせいで、とかく陰口に晒されてきたロー・シェンだから、あえて口にしなかったのかもしれない。
それでも、その変わらぬ態度が救いだった。]
これは、おまえの側にいたくて、俺が一度は捨てた姿と力だ。
この地上では、目立ちすぎるし、息切れ、する な。
[そう云う端から、背中の翼は萎れ、残った羽根はカードに変じてハラハラと散ってゆく。
額の目も眠るごとくに閉じ、肌の透けるような蛍火もまた薄れていった。
後に残るのは、人間の姿だ。]
今までどおり── こんな俺のままで、おまえの側にいていいか。
─ ツィーア ─
[ヒトガタは下層域から、城の奥を歩いていく。
右手で胸をおさえた。少し気配が遠く、軽く感じるのは核が魔法を発動したばかりだからか。
城内には静けさが漂っていた]
…汚れてしまったな
[服も髪も、浴びた死で赤黒く汚れている。
流動鉱石にも、再生しきれない傷が多かった。ロー・シェンが放った浄化の矢ほどではなくとも、歴戦のエルフ達もまた破邪の術でヒトガタを損なった。
魔軍の損害は大きい。
魔法兵器の一撃から逃げ遅れた者達は勿論、右翼にあった軍勢は強襲によってほぼ壊滅状態に近かった]
[核が沈黙しているから、ヒトガタは自律機能によって自ら洗浄と治療を選ぶ。
沐浴槽まで歩き、服に指をかけた]
…ん
[その奥、王の為の領域が開かれている。
魔王が瞑想に入っている>>86から、ツィーアが大人しいのだと気付いた]*
[やがて、
床から天井までを満たす沐浴槽の前に人形は立った]
……
[半液体に浮かぶ魔王を銀の瞳が映すと、ごく微かに胸の奥で核が鳴る。
いつもは感じないツィーアの情動が、今はヒトガタの記憶へも響いてくるかのようだった。
魔王の姿を見上げるまま立ち尽くした]
お前、俺の生まれ忘れてるだろ?ローグは精霊と共に生きる一族だぞ?
そりゃ、いきなり羽根が生えてるのには驚いたけどな。
[ ついでに額にも何か生えてるな、ちょっと触らせろとばかりに、羽根や天青石に、ぺたぺたと手を触れて笑う ]
良かった、触れるな。
お前が精霊や天使の類だって、お前自身なら、そりゃ、俺は構わないけど、触れないのはちょっと寂しいからな。
[ 触れてみて改めて感じたのは強い聖性だ。魔の楔に貫かれ、祝福の光に灼かれた傷が、更に疼く程の。けれど、耐えきれないほどではない。
痛みよりもずっと、安堵の方が強かった ]
俺の傍にいたくて?
[ どこかあっけらかんとしたその調子も、その姿を自分のために捨てたという言葉を聞くと、不思議そうなものに変わる、どういう意味かと尋ねる前に、ディークはその姿を再び変じていく。
元の、見慣れた友の姿に ]
ん、本来の姿の方が負荷がかかるってことか...ああ。
[ 息切れする、という言葉に、ふと周囲を見渡す。瘴気と死の臭いが満ちる大地......ここで聖なる存在が息をするのは、確かに苦しそうだと思い至った ]
さっきの羽根も綺麗だったけどな。
[ 今まで通り、そう問う言葉に笑って、片腕で友の肩をがしりと抱いた ]
一緒に居てくれと頼んだのは俺の方だ。今もその気持ちは変わらない。
お前が何者でも、どんな姿でも。俺は...お前を求め続ける。
[ 笑いながら、けれどどこか厳かに響く、静かな声音で紡がれる宣... ]
お前の方こそ、世話がかかって嫌になったと言い出さないでくれよ?ディーク。
[ 最後に付け加えたのは、真面目に世話をかけたという自覚は、きっぱりとあるからだった// ]
はは、そうだな。リーは、強いからな。
[ 返った答えに、笑い声を返す。そして、僅かに声の調子を落として ]
リー...俺もお前も、以前とは立場が変わってしまったのかもしれない。
でも、俺は、今でもお前を大事な妹だと思ってる。
それだけは、覚えておいてくれ。
[ 告げた言葉は、決して彼女の心を楽にするものではないのかもしれない。
けれど、男にとっては、どうしても告げなければいけない言葉だった ]
― モーザック砦 ―
[幾度となく対峙した相手、それが己に抱く思いが快いものではないだろう、という自覚はある。
それだけに、今の扱いについては少なからぬ困惑があったが、それは一時飲み込んだ]
……よくもまあ。
これだけ、残ったな。
[跡形もなく消し飛んでいても不思議はなかったのに、と。
そんな、いささかズレた感慨を抱きながら一階の様子を見回した。
瘴気が入り込んでくるのも時間の問題か、と思いつつ、抜け出せそうな道を探し歩いて]
そうだな。
聖別されたものの守りがあれば、抜けるまでは持つだろう。
[対処方へは短く諾を返し]
……あとは、瘴気自体を高めぬように。
悪い方向に考えさせないのも手だ。
心の澱みは瘴気を強く寄せる、気を強く持たせるといい。
[そう付け加えてから、言いかけられた言葉に亜麻色を瞬いた]
……戦い手がいるなら、いると言え。
[踵返す背に向けて、言い放つ声は低い]
経緯はともかく、あたしはお前に命を救われた。
命の礼には、命を持って返す。
父様も、かつてそうした。
だから、あたしもそれに倣う。
[宣する声にも、亜麻色の瞳にも。
迷いや揺らぎは、欠片もない。//]
/*
リー落ちるまでに全力で泣かしにかかります(キリ
出来れば、死亡フラグへし折りたいところだけど、まあ、これは本人次第だからにゃー
[液面に生じた微かな波紋が広がっていく。
肌に触れる細やかな振動に、魔王は薄く目を開いた。]
… どうした。
───… 酷い有様だな。
[視線を転じて人形の姿を捉え、その姿を一瞥して笑う。
己の右腕も、まあひどい有様だが。]**
……怪我。
してるだろ。
[ぽつ、と落とすのは先ほど過った懸念]
隠すなよ。
……いや、他の連中には隠してもいいけど、隠すな。
やったら……怒るからな。
[念入りに打ち込まれていた魔の楔。
それが何も残していないはずはない。
だから、と告げた言葉は幼い頃にも良く向けたそれに、少しだけ似ていた]
― モーザック砦 ―
[砦の様子を見たアイリの感想>>125には同意を向ける。
マルサンヌ砦は跡形もなく消えた。
これだけ残っているのは奇跡と言えよう。
あるいは攻城兵器に何かしらの異変があったか]
気を強く、か……。
周知しよう。
[アイリからアドバイス>>126を受け、重要なことだと心に留める。
言いかけたことに対し背から低い声>>127を向けられると、振り向かないままに]
…私が命ずることではあるまい。
君が、君の心がそうしたいと思ったなら、心のままに動くと良い。
[向けられる言葉は意思強き誇りあるもの。
それ故に男はアイリの自主性を重んじた。
手を貸さずとも咎めはせぬ、この娘は縛られる存在であってはならないと、そう男は思っていた]
[武器庫へと戻り、脱出方法を伝え、慌しくその準備が為される]
砦を出た後はアルテスを目指せ。
先に脱出した者と合流出来たなら伝えて伴ってもらえ。
心を強く持て。
諦めてはいない。
[こうして負傷者を優先に、砦からの脱出が始まった*]
[あっけらかんとしたロー・シェンの声に、遠慮なく触れてくる手に、ちょっと寂しいと笑う表情に、失くした翼がざわざわする。
この天然め。]
おまえが綺麗だというなら、悪くない。
[目を逸らして、嘯いた。]
[天界の気をひいて介入をされたくはないから、本来の力は封印しておくつもりだ。
けれど、ロー・シェンの進む道は険しい。
終わりが近づくのを覚悟で、翼を広げる時はきっと訪れてしまうだろう。
思い出さなければ悩むことなく、思い出さねば護れぬ皮肉。]
[肩を抱いて未来を紡ぐ友に、しばし、頭を預ける。]
またおまえに背負わせるものが増えた。
[彼は負担だとは言うまい。
それでも、人間世界の存続は、この男にかかっている。]
[嫌になったと言い出さないでくれよ、とくすぐるようなロー・シェンの言葉に、こちらも薄く笑いながら、片目をつぶる。]
ああ、 もう「面倒くさい」は卒業かな。
[人が笑って暮らせる場所を取り戻すため、腹を括る。
まずは軍勢を立て直さんと、瓦礫を乗り越え、砦へ向った。]
[魔王の目が開いた瞬間、震えた指先が新たな波紋を作る。
手を離すことはしなかった]
お前が させたことだ
[痛みを堪えるように表情が曇る]
もう、罪を得る前に消えたいとは、願えない
だから自分で……治すから
[壊されたくないと告げることがどういう結果をもたらすかわからない。
ヒトガタは言葉を途切れさせ]
触れ ても
いいだろうか
[半液体との境界面に触れた手が僅かに沈み込む。
一度溶けかけて輪郭の滲んだ指が、また形を成した]
/*
やっぱりか...<人間世界の存続とか
もう盛るだけ盛られた感...
おかしい、この後、本物の英雄が出て来るはずじゃなかった??
歴史に埋もれた英雄とかかな?俺。
[ 隠すな、隠したら怒る、と重ねられるアイリの言葉に、過去の記憶が色々と蘇ったのは仕方が無い ]
う......わかったよ。でも、手当は自分で、ちゃんとするからな?!
[ 聖光に灼かれた火傷の治療法なんて知らないが、とりあえず、そう主張しておいた* ]
[ 背負わせるものが増えた、とディークは言う>>132それが彼しか知らない何かなのだろうとは、薄々感じたが、追及はしなかった。男に何かを意識して背負っているという気持ちは無い。
ただ、自身の願いの為に、力と心を尽くすだけだ。
ローグの心は自由だから、友を護り、家族を護り、国を護り、大地を護り、皆が笑える明日を求める。それもまた、男が自由に願ったこと。
心を知らぬ魔に、その自由を奪われるわけにはいかない ]
よし、行こう。
[ 面倒くさいは卒業と、言葉にしたディークに笑いかけ、砦を目指す。
聖なる光を充分すぎる程に浴びた身は、瘴気をものともせず、やがて、地下室から少しずつ脱出を始めた人々の元へと、辿りついた>>129 ]
/*
早々にバレいたww
二人共すまんのぅ(いつものパターン
そしてメモwwwww
あかん、気が抜けて中身が出てるwwww>俺
皆、無事か?!
[ 男は、瓦礫を昇り、わざと一際高い位置に身を曝す ]
遅くなってすまない。
魔導兵器を使わせる前に、魔王を倒せなかったのは、俺の力不足だ。
だが、皆、よく生き延びてくれた。
[ 瘴気の中、まっすぐに顔をあげ、朗々と言葉を紡ぐ。金の瞳は、笑みをたたえて兵や、民を見渡した ]
生きる者こそ希望、諦めずに進め!
[ 王都への退却の道を、指差しながら、男は「進め!」と声を張る。
まるで、それが、新たな進軍の始まりであるかのように ]
[ 怪我人や、女子供もいる避難民の足は遅い。彼等を無事に逃がすためには、無事な兵が追撃の魔軍の足止めをする必要があった ]
...出来れば、足止め以上を、だな。
[ 王都での決戦、それは、王都の滅びを意味することになるかもしれない。叶うならば、その前に、と、指揮官達を集め、口にする ]
魔王を、討つ。
[ 男は、本当に、欠片たりとも、諦めてはいなかった ]
― モーザック砦・地下 ―
[避難した者達が続々と地上へ脱出を図る中、男は一人、地下の武器庫に残っていた]
───…… すまないな。
[武器庫の奥に移された妻の亡骸。
男は彼女をここに残して行くことを決意した。
未だ戦いが続く中、男だけが妻の亡骸を運び行くわけにはいかない。
──時には切り捨てる覚悟も持たねばならない──
兄の言葉を胸に抱く]
[運悪く、この場で命を落とした重傷者もおり、彼らもここに安置していくことになった。
男は妻の手を胸の上で組ませ、胸に下がるカメオを握らせる。
一度彼女の頬を撫でた後、武器庫にあった布を彼らに被せ、僅かに残った聖水をその上に振りかけた。
いずれ立ち込めるであろう瘴気から、彼らが護られるように]
[人形の言葉と反応に、ひとつ、目を瞬かせる。]
ツィーア 、ではないな。
おまえは。
[人形だ。
ツィーアの核を運ぶためだけに作り上げた木偶。
気に入った人間の命を摘み取り、記憶と容貌を写し取った玩具。
弄べば怯え、儚い抵抗で楽しませてくれもしたが、こんな要求をしてきたことなどついぞ無い。───触れたい、などと。]
[武器庫を後にし、地上へと戻るとそこには高い位置に立つロー・シェンの姿>>136があった。
合流し、今後のことを話し合う>>137]
アルテスまで進ませるわけにもいかないしな。
[防衛よりも打って出る方が、とは男も思うところ。
ロー・シェンの案に同意を向けた]
だがここに陣を敷くのは難しい。
瘴気が立ち込めると碌に身動きが取れなくなるぞ。
聖別したものや結界で身を護るにも、限度がある。
陣を敷くなら、少し下がった峡谷はどうだろうか。
[そちらなら砦傍よりも瘴気は薄かろうと。
打って出るにせよ待ち構えるにせよ、瘴気の只中と言うのは難しいと考え、提案する*]
人間は、面白いな。
[本来持っていた気質なのか。ツィーアの影響が弱まって発現した性質なのか。再生成されるたびに見られる個体差なのか。あるいは、注いだ記憶が元の素体に影響を与えたのか。
いずれにせよ、願う言葉は甘く、心地いい。]
[姿勢を変え、半液体の中を滑るように動き、波紋の中心から顔を出す。
液面に触れていた人形の手首を掴んで引き寄せた。]
おまえは、我の最高の傑作だ。
未だ改良の余地はあるが
今のおまえは存分に我を喜ばせる。
[握った手首を導いて、人形の指に己の顔を触れさせる。]
我に触れて、なんとするのだ? おまえは。
[もっと楽しませて見せるのかと、試すように。]
[は、と息を吐いて、喉元に手を当てる。
7年間そこにあったものがなくなって。
解放された、と安堵してもいいはずなのに、そんな気分にはなれなかった]
……いやになる、な。
[ぽつり、と零れ落ちるのはそんな呟き。*]
ヨセフ...
[ 彼の妻が動く死体としてシメオンに利用された事は、戻ってすぐに、先に顔を合わせた兵が報告してくれた。遺体は置いていくことにして、今は弔いの最中だとも ]
心配をかけました。魔将を倒してくれたのは、貴方だと...俺が戻れたのは、貴方のおかげです、ヨセフ。
[ 自分が魔に捕らわれていたことは、ヨセフの機転で出来る限り伏せられていた。だから、そのことに関する礼は、コエの方に乗せるしかない ]
…そうか、あの魔を倒したからか。
私は、君を助けることが出来たのだな。
[倒せたのは魔が力を減じていたためだったが、その結果ロー・シェンは戻ることが出来た。
それを聞いて男は安堵し、少しだけ誇らしく思えた。
離れていても、彼を護ることが出来たのだと]
(俺は貴方に、甘えるばかりで、何も返せてはいない...)
[ 胸に浮かぶ思いは口にもコエにも乗せられない。ヨセフに言えば、彼は当然の事をしているまで、と答えるだろう。だから ]
俺も、信じていました。あなたはきっと、俺を信じて待っていてくれると。
[ その想いもまた、死の闇から生還できた力の一つだったとは、せめて伝わるだろうか ]
― モーザック砦 ―
[巨大な鉈でも振るわれたかのように、砦の上半分がすっぱり無くなっていた。
空には妖気漂う暗雲が立ちこめて、重たい。
破壊砲の威力はシラーの牢獄で体験していた──そして、間接的には脱獄に役立った──が、やはり凄まじい威力だ。]
それでも、シラーの時よりちょっと出力落ちてる?
[魔導炉であれこれやらかした自覚はある。
その情報は、ロー・シェンとヨセフに知らせておく。]
/*
今気付いたんですけど、このこ、なんでディークとの親密度上げだけは赤使ってないのか?
いや、お互い過去エピの爆撃には使ってますけども。
...まあ、天使設定特殊だから、魔王側にも報せとかなきゃってのは、あるっちゃあったかな。
[ しかし今考えると、結構羞恥ぷれいだった気がすr ]
[ロー・シェンが演説を行う頃には、何食わぬ顔で聴衆に混じっていたが、
アイリが陣中にいて、縛られてもいないのを見れば、目を瞬いた。]
…なんで?
[防衛戦の指揮を執っていたヨセフの側でしっかり情報を得ていそうな副官を捕まえ、事情を聞き出す。
副官は、シメオンの死と、その後のアイリの言動を簡潔に教えてくれた。]
あ、道理で、アンデッドの気配がしないと思った。
わからない
[わからない。
怒り、嘆き、絶望と恐れを記憶は繰り返してきた。
憤激はしても憎悪はなく、抵抗はしても反逆は出来ない、紛い物の人格が何かを真に感じたり出来るのか]
俺は まだ、人間のふりをできているのか…?
[右の手首を掴まれて体を強張らせる反応は、ヒトガタが幾度も再演してきたもの。
けれど引き寄せられれば、恭順の発露ではなく自らも手を伸ばした。
白皙の頬へ触れると、
チリン
微かに甘やかな音が鳴る]
わからない
傷ついた貴方を見たら、溜飲が下がるのかと思っていた
[頬の感触は、人間とは懸け離れた滑らかさと繊細さを伝えてきた。
左の手も持ち上げ、液面へ伸ばす。
半液体に入り込んだ指は、焼け爛れて捩れた魔王の右腕近くまで伸びて、
ためらいがちに漂った]
触れて…かまわない、か
後は───
[少しばかり思案した後、男はロー・シェンに眼差しを向ける]
例の剣を、
[取りに行こうと思うがどうか、と。
視線だけで問いかけた//]
─ ツィーア内部 ─
[半液状の沐浴槽へ腕が浸かる。
ヒトガタの体は、死の瞬間のクレステッド皇太子自身の記憶を参照したもの。
剣を握るよりは書物やペンを持ち慣れた腕だった。佇まいの美しい締まった体躯は、膂力よりも細やかでしなやかな器用さに勝る。
鍛錬不足を魔法で補うよう、左の指は自在に動いて複雑な印を無数に描いてきた──当時の記憶のまま。
その左腕をも染めていた血の穢れが拡散し薄れていく。
エルフの短刀が裂いた切創、その輪郭が滲み、流動鉱石が活性化して少しずつ再生を始めていた]**
えーと、久しぶり、お嬢ちゃん。
俺のこと、覚えてる?
[アイリのところへ行って、挨拶した。
鎌の柄の間合いから、きっちり離れているのはいつぞやの学習効果である。]
いや、随分と様子が変わったんで、驚いた。
ほらあれだ、女の子は恋すると──ってヤツなのか。
[揶揄い目的ではなく、もっと柔らかな声で言った。
歓迎していることは気づいてもらえるだろうか。]
[十分に離れたところで、双子は背後を振り返った。
ヒトが、馬が、慌てて逃げ惑う姿は、
眼前にそびえる魔王の城の偉大さを彩る装飾のようだ。
弓矢を引き絞る射手のように、ツィーアが魔道の光を収縮させている。
大きな力が放たれる直前の立ち姿。美しいと思う]
間近で見たらもっと綺麗なんだろうなあ。
『死ぬけどね』
そうなんだよね。アイツいっつも危険だからなあ。
[初めてツィーアと出会った時、好奇心旺盛な双子は勿論近寄ろうとしたのだが――歓迎の尾>>2:206がぶおんと振ってきたので慌てて逃げた。
機械モノは男の夢。少年はほんとはもっと観察したり、内部探検したりしたかったのだけど、断固拒否の少女に根負けした。あげく、魔王様からもからかい混じりに、近づいたら食べられるなどと言われてしまったら、近寄る選択肢はゼロになった]
[互いの想いを確認して、男は笑う気配をコエに乗せる]
当然だろう。
[疑う余地などない、と言わんばかりのコエだった]
―回想―
[幼い頃から育ててくれたのは蠍の一族だけれど。
それとは別に、時折自分たちの様子を見にきてくれる“魔”があった。
あのひとはだれ?――と蠍に問うと、
「あの御方と言え」とだけ返された。
チチ、とも違う。
ハハ、とも違う。
自分たちのように耳は長くなかったし、
そもそも―――…存在の圧が違った。
敵わないと感じていた蠍の一族ですら、そのひとの前ではちっぽけに見えた。
そんなすごい“魔”が、
なぜか、自分たちを気にかけてくれる――!!]
『ねえ、どうしてかしら。ローレル』
リユーなんていいよ。ジジツはかわらないんだし。
[余計なことを聞いて機嫌を損ねたくはなかった。
自分たちが蠍とも…他の亜人とも違う種族なのは感じている。
だから此処にいるのは何か理由があるんだろうけれど、そんなのどうでもよかった。
自分たちは今、ここで、シアワセなのだ。満たされているんだ]
『でも、…アノオカタってよびづらいわ』
うーん。それにはボクもドウカンだよローズマリー。
『なにかべつの、ないかしら』
べつのかい?
『うん。せっかくならワタシたちのトクベツがいいわ』
トクベツか。いいねいいね!
[顔を見合わせ、腕組して考えることしばし]
シメオンの屍鬼隊を失い、ポータルで亜人たちもだいぶ減ったらしいけど、魔王は進軍を止めないだろう。
だからこそ──ここでヨセフ殿下にはシラー解放に向ってもらってはどうかと思う。
[西の橋からミュスカの森を経由して北へ抜けるルートを示した。
古き神殿を抱く森。]
シラーにどれだけの人が残されているかわからないけれど、解放に成功すれば、後々、魔王軍を背後から突くこともできるかもしれない。
この状況で兵を分けるのは大変だと思うけれど、試す価値はあると思う。
…あっ。 “先生” なんてどうだい?
『せんせい?』
そうだよ。エライひとのよびかただって、ホンにあったんだ。
[少年は得意げな顔で、同じつくりの少女に説明する]
いろんなことおしえてくれるヒトのことも、そういうんだって。
『あら。ならぴったりね。だって、』
ボクらがここにいるイミはあのひとだからね。
『いきるイミをおしえてくれた』
ほめられるよろこびも、シツボウさせるこわさも、
『あのひとがぜんぶ…くれたもの』
[急に双子から
「「あのね、きょうから“先生”とよぶことにしました!」」
と言われて魔がどう思ったかは定かではないが。
拒否はされなかったので、以降、双子の中ではその呼び名で定着した。
お仕事がこなせるくらい成長して。
そのひとが魔王と呼ばれる偉大なひとだと知ってからも双子の態度は変わらない。
いや…変わりたくなかったからそのままでいた。
ちいさな我儘を無邪気さに包み込んで――――*]
[久しぶり、と呼びかける声。>>149
緩く瞬き振り返った先にあったのは、覚えのある姿で]
……生きてたのか。
[最初の一言がそれと言うのもどうなのか。
様子が変わった、という言葉にはふ、と小さく息を吐いて]
……まあ、な。
束縛がなくなった分、軽くなったのはあるかも知れない。
[言いながら触れる喉元に、かつて煌めいていた黒き魔石はない。
その消滅と、束縛がなくなった、という言葉が結び付いたなら、今の状況は察しもつくだろう。
柔らかい声音に、忌避されているわけではない、というのは感じていたから、こちらの声音も落ちついていたのだが]
人間どもはおまえを人間とは認めないだろうが、
我にとっては同じだ。
いや。ある意味では人間以上に人間らしい。
愛しき生き物よ。
[被造物への賛辞は惜しみない。
己を喜ばせる、最高の───]
思っていた、なら、どう思っているのだ。
おまえも、我を哀れなどと言うか?
[笑う声に毒は無いが、激情の片鱗が一瞬浮かんで消えた。
人形に触れられるのは、なかなか新鮮な感触だった。
夢魔の朧な指ではなく、魔女らの淫蕩な手でもなく、ただ触れるだけの圧を感じる。]
焼けるぞ。
[ためらうように伸びる手を揶揄するような言葉は、許可の意でもあった。
魔王の肌の下には、溶けたマグマのような熱が秘められている。少しずつ癒えて肌が再生しつつあると言っても、未だ右腕の周りではふつふつと細かな泡が生じていた。]
南下する軍が峡谷に布陣することには、俺も賛成。
高さと狭さを活かした戦いができるのは確かだ。
その上で、もうひとつ。
鉄底族に一騎打ち──正確にはタッグマッチだけど──を挑むことを提案する。
闇ドワーフとも呼ばれる鉄底族は、戦闘に長け、誇り高い部族だ。
魔王に従っているのだって、魔王の力に従ったからであって、心まで闇に染まったわけじゃない。
敵将から決闘を申し込まれて拒否するとは思えないし、
ロー・シェン、おまえが武技をもって彼らを感服させ、その領土を安堵してやることができるなら、彼らを魔王軍から離すことも可能だと、俺は思う。
ただ、あそこは族長と副族長の家系が対立してる。
族長を負かしても、副長がすぐに指揮権を引き継いで敵対されると面倒だから、向こうには族長と副長、両方出せと要請するんだ。
こっちからも、大将と副将を出すからって。
[大将と副将──というその指先は、ロー・シェンとアイリに向けられていた。*]
―回想/砦が襲撃される前―
[ユーリエ姫との旅のことを話してほしい…というヨセフの要望>>3:*20に、]
…いいけど、ずいぶん唐突だね。
『何か気になることでもあったのかしら?』
[ヨセフとディークの間のイザコザまでは知らぬため、不思議そうに首を傾げる。
とはいえ望むならば、ユーリエ姫がディークと楽しそうに旅を満喫していた様子を――途中で止めないとおしゃべりに火がついてしまってひたすら延々と――話しただろう。
別にディークに罪を擦り付けたい訳ではないので、ここで嘘をつく理由などない。
頭脳派揃いの魔軍の中にあって、双子はいたって単純派だった*]
[聞かされたのはシラー解放の案。
確かに魔王がこちらへと出向いているのであれば、あちらは臣下の誰かが治めているか、捨て置かれている可能性が高い]
兵を分けて、か…。
あちらの戦力が見えないが、入ってしまえば地の利はある。
[問題は、兵を分けたことで魔軍を迎撃が困難になるのでは、と言うこと。
その点に関してもディークは抜かりなく案を出していた>>157 >>158。
正面からぶつかることに変わりは無いが、その上でぶつかる兵力を最小限に抑える策。
腕が立つ者がいるからこそ可能なもの]
……手ではあるな。
[ロー・シェンとアイリの腕を疑うべくもない。
ディークの案を否定はせず、ロー・シェンの意見を聞く*]
ディーク......お前な、闇ドワーフと盗賊の親分を一括りにしたようなことを......
[ 続いたタッグマッチの提案には、思わずこめかみを抑えた。
...というか、何故こんなに闇ドワーフ事情にまで詳しいんだこいつ、確か、あいつらが合流する前にこっちに放火に来たはずだろう?とか、色々頭を過ったが ]
鉄底族の最大の悲願は、一族の国を再興することだと聞いたことがある。
恐らく魔王は、それを連中に約束してる。
彼等を引き込むつもりなら、その約束が反故になる可能性を示すか...もっと楽にその目標を果たせると示してやらないと無理じゃないか?
[ 魔王が約束を護る保証は無い、或いは護ったとしてもあとで邪魔者として消しにかかるという可能性は、結構強いとは思ったが ]
哀れ?何故だ
[何故だ、という抑揚はツィーアの波動が紡ぐ単語とよく似ていた]
ただ、触れてみたいと思っただけ
― 回想/砦襲撃前 ―
…ユーリエ姫からは何も聞くことが出来なかったからな。
[そう理由をつけて、延々と伝えられる旅の話を聞いた。
話を聞く限りはユーリエもディークも、彼ら双子も旅を楽しんでいたようで、そこにディークがユーリエを手にかける理由など見当たらない。
ディーク本人から聞いた場合は疑いの目を向けながらとなるため、容易に受け入れることは出来なかっただろうけれど。
第三者である双子からの話であるため、その内容を疑うまでは至らない]
[それ故に男の中に疑念が生まれる]
[ならば何故ユーリエは殺されねばならなかったのか、と。
疑いが僅かに揺らぎ始めた瞬間だった**]
[半液体の中で再生を始めていた腕は、不安定に漂うのをやめて、密やかに沸騰する灼熱へ触れようとする。
焼けるぞ、と聞いて、すこし口元を緩めた]
俺はまだ
痛みを感じられる
……っ、
[低い苦痛の呻きと、流動鉱石が焼ける音。
辛うじて溶け崩れることはない掌は、赤く明滅する劫炎の肉に押し当てられて撫でるように滑った]
あの魔兵器の威力を見た後で、魔王軍につくより、人間につく方が分があると、その可能性を考慮させるだけでも並大抵じゃないぞ。
[ つまりそもそも、タッグマッチに持ち込むだけの説得が出来るか、そこが問題だ、と、ディークに視線を向ける ]
出来るんだな?
[ 確認するような言葉を使ったのは、周囲にもそれを納得させなければいけないからだ。
男自身は、答えを待つまでもない、と確信していた// ]
― 魔軍 ―
[モーザック砦を半ば消滅せしめたところで、魔軍の動きは一度止まった。
命令を受けた亜人たちは人間の残党を探しに、そしてなにか良いものは無いかと漁りに砦の跡地に散らばっていったが、魔王もその居城も沈黙を保っている。
幾重にも仕掛けられた罠と、屍術を操るシメオンの死で、雑兵たちもかなり数を減らしていた。
その後に続いた魔法兵器の移動と、エルフたちの横撃、さらには破光の一撃でさらに被害は拡大している。]
[有力な氏族のうち、狼牙の一族は人間の罠にも魔法兵器にも巻き込まれはしなかったが、功に焦りエルフの戦士たちに戦いを挑んだことで、大きく数を減らしていた。もはや、部隊としての体は為せまい。
鉄底族もまた罠からは程遠く、彼らの盾や鎧はエルフの攻撃にもびくともしなかったが、その隊列はいくらか削れている。
ツィーアの突進に巻き込まれたせいだ。
足の遅い彼らは城塞の急激な移動に対応できず、逃げ切れなかったものがいくらか引き潰された。
刃も魔法も通さぬ彼らの盾も、圧倒的な質量の前にはなすすべもなかったのだ。
偉大なる鷲髭のゴルバはいくらか魔王に恨みを抱いているが、魔軍の戦いはそういうものだと知ってもいる。
敵であれ味方であれ、弱いものが死ぬのは当然───死んだのは弱いからだ、というのが魔の論理だった。]
[策は列挙したが、採択はロー・シェンに任せて見守っている。
なお、ディークの鉄底族に関する情報はユーリエと旅した頃に聞いたものがベースであり、現状とは異なる可能性があるが、いろいろカタい一族だから、内部事情もそうそう変わらないだろうと計算していた。
ロー・シェンから声をかけられ、ん、と顔を上げる。>>163]
御意。
[周囲に聞かせるべく答え、どこかから拾ってきた布を新たなバンダナにして巻きつける。]
/*
半液体=スライム的な何か。
床から天井までみっちりぷるるんな、形は変わらないけれど中に入るととろとろ柔らかいなにかをご想像ください。
[わからない。
人形は、なぜ触れたいなどと言い出したのか。
なぜ、苦痛をわかっていて、それを選ぶのか。]
嬉しいのか? それは。
[焼けた右腕に、一瞬の冷感が押し当てられる。
肌の無い肉に触れられるのは、今までにない感覚だった。]
[左手を伸ばして人形の髪に触れる。
指を髪の中に潜り込ませて、軽く掴む、
右腕を動かして、人形の胸に触れた。
流動鉱石を焦がして焼き印のように跡を付けていく。
修復されれば残りはしないだろうけれど。]
苦痛を喜ぶように作った覚えはないが、
自己調節したか?
我がおまえに与えるのは、それだけだからな。
[魔王は戦いの後、暫く姿を見せなかった。
瘴気の雨が降り注ぐ中、魔軍は野営の準備を始める。
砦の跡地は、亜人たちにとって人気の宿になった。
地下なら天幕を張らずに済むし、雨も当たらない。
なにより地下は彼らにとって落ち着く場所だ。]
[ロー・シェンとアイリが知己らしいのを見て取り、おや、と思う。]
えーと、もしかして、彼女がおまえが寝言で呼んでた「リー」か?
[唐突に暴露。]
嬉しいわけない
ただ、確かめたくて、 …
[何を言っているのか理解できない、と感情を表出した顔は、髪に触れられればやはり怯えたように硬くなる]
…っぐ、ァ
[傷ついた腕に触れていた左手は液中に浮く。
爛れた流動鉱石が修復するよりも早い速度で、胸の組織が灼熱に焦げていった]
お前は、何も
わかっていない
[ チリン、
魔王の頬へ触れていた指が離れる]
ゆうべの自分から今の自分がかけ離れていく
次の瞬間にはもう、今の自分すらいないかも知れない
こわい
これが人間らしさだというのか──?
痛みを喜ぶようになれば、俺は本当の人形になるのか
[魔王の右腕を胸へ抱き込むように両腕を回した。じゅう、と表層の鉱石の組成がほどけていく]
― 回想 ―
[魔に染まったエルフを作ってみるのも一興だろう、と蠍の一族に預けた双子だったが、これが存外に面白いものに育っていった。
細く穢れのない指で毒を操り、無垢な笑顔で人間の首を掻き切る。
そのさまは見ていて楽しく、飽きないものだった。
そんな双子は、時に突飛なことを言った。
あの時も、そうだ。
『きょうから“先生”とよぶことにしました!』なんて声を揃えて言われた時には、さすがに少し面喰った。]
これだけの兵力では心許ないかもしれませんが...もし、無理だと感じたら迷わず撤退を。
それとグリフォンを、騎手と一緒にお貸しします。もし、例の剣が本当にあったら、この騎手に持たせて届けてください。
[ ヨセフにそう伝えて、もうひとつ、一枚の美しい文様の描かれたスカーフを手渡す ]
もし、行く先のどこかで、このスカーフと同じものを持っている一団を見つけたら、それはローグの民です。俺の名と、このスカーフを見せてみてください。
彼等が俺の伝令を受け取ってくれていたら、加勢してくれるはずです。
[ ローグの民は、皆、実のところは、魔物や野獣と素手でも渡り合う程の戦士であり、精霊と親しく語り合う精霊魔法の使い手も多い。彼等の加勢が得られたなら、万の兵を得たに等しい筈、と、そう告げた// ]
ほう。
なるほど?
我のことを、先生と呼ぶのか。
[不快ではなかったし、むしろ少し新鮮でもあった。
背後で蠍の一族が狼狽えているのも好い。]
好きにしろ。
……だが「先生」は、悪い子供に仕置をするぞ?
[なんて言って脅かして、結局はそのまま呼び名が定着した。]
[実を言うと、「仕置」をしたことはない。
双子が失敗した瞬間に、切り捨てるようにして突き放すことが常だったから。
己を崇拝し、求めてやまない双子には、
それがなによりも効果的な「罰」であると、理解していた。]*
[光を放ってから沈黙を保つ、魔法兵器の中]
朝になったら…出てもいいか
[魔王の前に侍るヒトガタは、
核の納まる中心を視線で示し、淡々と呟いた]
"これ"はあまり、世界を知らないだろう
雑兵達の死で稼ぐのも時間がかかる
何かあっても俺が十分戦えるようになったことは、示した通りだ
[壊されたがるような愚行はしない、と]*
[方針が纏まり、男はシラー解放へ向かうこととなる]
問題無い。
必ずやシラーを解放してみせよう。
[ロー・シェンの言葉>>174に口端を持ち上げてみせて、グリフォンについても是を返した。
渡された美しい紋様のスカーフを受け取ると、まじまじと見詰めた後]
ローグの民…このスカーフを身につけた者は幾度か見たことがあるな。
承知した、その時は助力を願うとしよう。
[放浪の民かと思えば、その実、かなりの実力者揃いらしい。
願ったりと言う様子で話を聞き、丁寧にスカーフを畳み仕舞い込んだ]
[その後、作戦会議の終わり際に為されたディーク>>172とロー・シェン>>175のやり取りには、男も思わず笑みを零したという*]
…………。
[突っ込むべきか否か、の思考が廻る。
いや、それよりも追求しないとならないものがあるだろう、と。
取りあえず、その場はなにも言わずにおいた。*]
ヨセフ、ディーク出立前に、話がしたい
[ シラー解放...ひいてはモンテリー王国解放を目指す軍を率いて、ヨセフが旅立つ前に、男は、二人にコエを送る ]
姉上の事で。
[ それは、この日まで、彼等の間で棚上げされていた問題だった ]
聞こえるか?
無事でいるか?
[モーザック砦が消滅したあと、双子に声を投げる。
確認せずとも、糸を手繰れば双子がまだ生きているのはわかっていた。]
わかっていると思うが、
ロー・シェンなる人間が生きて戻った。
あまつさえ、我を侮辱して逃げた。
あれを殺せ、とは言わない。
あれは、我がこの手で引き裂こう。
おまえたちは、あれを苦しめてやれ。
毒を盛って苦悶にのたうたせるのでもいい。
奴が大切にしている人間を殺すのでもいい。
方法はおまえたちに任せる。
[指示の声は普段と変わらぬ滑らかさだったが]
我は、あれを苦痛と悲嘆の沼に突き落とし、
生きていることを後悔するほどに痛めつけてから
時間をかけて、ゆっくりと奴を殺してやりたいのだ。
我が受けた屈辱と痛みは、そうでなくては収まらない。
おまえたちなら、分かってくれるな?
[低く甘く付け加えられた言葉には、ぞっとするような怒りと愉悦が混ざり合っていた。]
[自然が為した山は二つに割れ、
ニンゲンが造った砦は残骸だけが残った。
破光の一閃によって変じた風景を眺めながら、双子は、すん…と鼻を鳴らす。澱んだ大気が抉れた大地に溜まっている]
瘴気が濃いね。
『ふふ、気持ちいいわ』
普通のエルフはこの良さが分からないんだよね。もったいないなあ。
『その“フリ”をするワタシたちの身にもなってほしいわ』
まったくだよ。
[それにしても意外と壊れなかったな、なんて思う。
あれじゃあ、砦の地下に逃げたニンゲンたちはまだ生きてる]
任せろ、ネタは他にもある。
[ロー・シェンに答えれば、次の作戦を受けて緊張していた兵らの間で、ちょっとした笑いが伝播して、空気が和む。>>175
これでアイリへの目も優しくなって、少しは居心地良くなってくれるといい。
皇太子が相手では、アイリに下世話な誘いをかける者もいなくなるだろう。
それは良いことだ。
だって、怪我人を増やしたくないしね?
そんなとこまで策士であった。]
[と。不意に…
双子の片割れは、腰のポーチの縁に指を這わした。
ついこの間まで魔力を孕んだ銀糸が揺らいでいた場所だ]
『そういえば――… シメオンのおじちゃん、もういないのよね』
そうだね…殺しても死なないタイプに見えてたんだけど。
[シメオンを倒したというヨセフは、コエで、ロー・シェンに助けられたと言っていた。
それはニンゲンひとりひとりの力は脆弱だけれど、力を合わせれば強いのだ――と、暗に語っているようでもあった]
― モーザック砦南 ―
[シラー解放に向かうこととなり、男が率いる隊はミュスカ森林を通るべく、モーザック砦の南へと一時集結した。
魔軍に気付かれぬよう山岳地帯に紛れるように移動したが、悟られたかどうか]
強行軍になる。
皆、準備は怠るな。
[ここから森を抜けてシラーまで向かうとなると、馬での行軍でも急いで3日はかかるだろう]
私はグリフォンで先行し、森の遺跡に立ち寄る。
皆はそのまま行軍し、シラー付近の山間で待機していてくれ。
[男はそう指示を出し、シラーに向けて出発した]
『ニンゲンに負けちゃって……馬鹿みたい』
遊びすぎたんだよ、――きっと。
『本人も、操っていたアンデットみたく
ばーんと戻ってこればいいのに』
あはっ。無茶をいうねローズマリー。
[ちなみに何故シメオンをおじちゃんと呼んでいるかと言えば、見た目の割りに落ち着き払ってえらく老成している風だったので――実年齢を魔物に聞くのはヤボだから本当のところは知らない――冗談混じりに遊んで呼びかけたのがはじまりだ]
だいたいさ、詰めが甘いよ。
あの皇子サマだって、仕留めず逃がしちゃってさ。
『…ほんとよ。死んでサボらないで欲しいわ』
[文句の止まらない少女に、少年はただ笑って、]
……だけどさ。
ボクは、少しだけ… ほんのすこぅしだけ、
怖くなるときがあるよ。
[『ローレル?』と、少女は不思議そうに隣を見つめる]
[今度の言葉も、魔王の意表をついた。
これほどに雄弁に、これほどに切として不安を訴えてこようとは。
どこまでこの人形は己を驚かせ、楽しませてくれるのだろう。]
只の人形であれば、こわい、などと言い出さぬ。
そのままでいろ。
そうして苦悩しもがくさまは、
我が好ましく思い、欲した人間そのものだ。
我が愛しき人形よ。
"人間"でありつづけるを望むなら、その悩みを捨てるな。
人でなくなる恐れを抱きながら、あがけ。
そうしていればいつかは、記憶ではない思考を手に入れるかもしれんな。
[そうなればいい、と思う。
もしそれが実現するならば、この手で"人間"を造り出したとも言えるだろう。
その想像は、なかなかに興奮するものだった。]
死んだと思っていたヤツが生き返ったり、
仲間の生存を諦めず力を尽くしたり、
それで強力な魔を倒しちゃったり――…
ニンゲンってやつはさ、時々、ボクらの予想を裏切るだろ?
[それが怖くなるよ、と少年は東の空を仰ぐ]
もうすぐレオヴィルの王都だ。
ニンゲンの拠点は残りあとちょっとだ。
でもさ。…こんなに追い詰めているのに、
相手の“頭”はまた二つになってさ。
なんだかまだ何か――― …
ぅ、?
[少女のひとさし指が少年の唇に伸びた。
ぎゅっと押し付けられた其れは、強引に話の続きを止めさせる]
『ダメ』
…?
『“頭”が増えたって、ワタシたちで潰せばいいわ』
…うん。
『それに先生が負けるなんてありえない』
…、…うん。
――――ごめんよローズマリー。
ボク、ちょっと弱気になってた。
…あれだよ。きっとシメオンのおじちゃんのせいだよ。
『シメオンがわるいのね』
そうそうそう。
[欠席裁判で全部擦り付けて、少年は大きく伸びをひとつ]
さって、そろそろ動かないと怒られちゃうかな。
『そうね。まずはヨセフと合流しないと』
どこだろうねヨセフ。
この近くにはいなさそうだけど…。
『砦の地下かしら?』
ああなるほど。負傷者を見捨てないタイプだしね。
[既に皇子御一行も合流済みとは露知らず…
双子は“お仕事”を果たそうと気合を入れ直した*]
/*
魔軍の追悼なかなか難しい…と思って書いていたら
なんだか会話がわからん こと に。
とりあえずシメオンのせいって言っておけばいいんじゃないかn
──ローレル、ローズマリー。
今どこにいる?
[シラーへと向かう前、男は姿が見えない双子にそっとコエを送る。
単純にその身を案じてのこと。
コエにも案ずる色が乗る]
[魔は、消えた。消えた…というのが概ね正しいだろう。
永い眠りについたと言ってもいいが、さてその「永さ」がどれ程の意味を持とうか。
人間界から崩れたのみならず、”死”を、
生を構成していた魔力そのものを魔兵器に喰らわれたのだ。
文字通り、塵ほどの欠片も残らず魔将と称していた魔は消滅した。
とはいえ、もし魔シメオンに意識が残っていたとして、
魔はそれを不満にも不快にも思いなどしないであろう。
力こそが、魔にとっての最上の価値。
となれば、己が傲慢と過失が重なり招いたとはいえ、
人風情に後れを取った魔など、新たな力の糧となり当然なのだ。
ただ───…、面白かった。
人が、人というか弱き存在が強大な魔を打ち倒すという奇跡が。]
[ 砦から、数キロばかり王都アルテスに寄った両側を谷に挟まれた隘路、そこに王国軍は新たな陣を敷く。
陣は、街道上ばかりではなく、切り立った崖の上にも置かれた ]
[ 魔王軍のような大軍が、ここを通るには、縦に長い縦列を作るしかない。ここなら、崖上から石を落とすだけでも投石器並みの効果がある筈だ ]
[ 油や、ニカワなどが、かき集められて崖の上に運ばれ、大鍋でぐらぐらと煮詰められる。石と一緒に崖上からそれが降り注げば、防ぐ手段を持たない者達は纏わり付く高熱に悩まされることになるだろう** ]
[魔とは、
人に似せてありながらも、人に非ざるモノ
人の心を知らぬモノ
人の世の温かみを知らぬモノ
優しさや幸福を知らぬモノ
…… では、人間は ?
それでは人間とは、いかなるモノなのだろう……?]
[人は───…
人とは、
暖かさを知るモノ
優しさを知るモノ
幸福を知るモノ
裏切るモノ
己の利で動くモノ
嘆き絶望するモノ
誇りを知るモノ
誇りを裏切るモノ
諦めぬ者 ───… ]
ヨセフ...?
[ ディークからは、すぐに返答が返ったが、ヨセフのコエには、迷うような間が空いた ]
すみません、忙しい時なのは判っているんですが...貴方にもきちんと納得しておいてもらいたいと思って。
[献策めいたことを言い出す人形を、魔王は面白いものを見る目で眺めていた。
このところ、ツィーアと人形の意志が遊離しているように思える。
人形の自我が強くなった、と言うべきか。]
いいだろう。
おまえが世界を見て、感じるならばツィーアにもいい経験になる。
おまえの眼がなければ、我の姿を映せないと嘆くかもしれないがな。
[ツィーアに、ではなく人形に向けて言う。
これもまた、面白い]
/*
ロシェのお土産へのお返しおーわり。
なんだって感じだけども!!!なんかです!!!!
地上がんばれー、みんながんばれー。
ローレルふぁいふぁい。
[軍が進発する前、ディークは演習場の一角にいた。]
自分はきっちり死ねたんだ?
[シメオンが死んだという辺りに立って囁く。]
この手で親分さんの仇をとってやれなくて悔しいぜ。
ロー・シェンの胸の傷だって、あんたの仕業だし。
あんた、人使いも死体使いも荒かったけど、支払いだけはホント良かったよ。
財宝に興味がないとか、欲に目の眩んだ人間を釣りやすいとかあるんだろうけど、
明日があるとは限らない、って心底、思ってたんだろうな。
[焦げた端切で作った黒いてるてる坊主──シメオンに似せたつもりだ──をポンと置く。]
明日も信じてないあんたには余計なことかもしれないけど、
来世では、もっといい関係であれたらと祈っておくよ。
じゃ、親分さんと酌み交わしたら、俺、出かけるから。
[あの混乱の中でも、後輩が確保しておいてくれたワインを掲げてみせる。
墓標もなき者たちへ捧げん。**]
……少し、いいか。
[そんなわけで。
諸々の準備が進む合間を縫ってロー・シェンの元を訪れた時の表情は、お世辞にも柔らかいとは言えないものだった]
ま、ダメと言われても、要件は果たすが。
……覚悟しておけ、と言ったのは、忘れてないだろうな?
[それだけ聞くと何しに来たんだ、と突っ込まれそうな物言いだが。
声音と表情とは裏腹、亜麻色の瞳には案ずる色が覗いていた。*]
/*
マジ優しさ………
wwwww
wwwwwwwwwwてるてる坊主優しすぎでは!??
いいんだよ、こいつ断然人間の敵ですからね!!!
情とかなくていいんだよ!??ありがとうwwww
はい、無事です先生。
[魔王様からの声が届くや、条件反射で背筋をピンと伸ばした]
『先生を…? なんてヤツ…!』
まったく不届きものだね。
[生きていたまでは知っていたが、まさかそこまで…と色めく]
…はい、はい。勿論です!
『アイツが苦しみでのたうつように』
アイツが先生に楯突いたことを後悔するように。
『―――全力を、尽くします…っ』
[怒りの矛先はこちらではない。
…分かっているのに、それでも相手の声の端々に滲んでいる感情が、あまりに闇深くて…息苦しくて。
冷水をぶっかけたかのように、双子の背筋をさあっと冷やしていった]
……
[長い沈黙の後、
は、と。ため息のような動きを見せた]
希望をもたせるのも手管のうちかな…
そうするしかない
俺はお前を楽しませる人形で、苦しんでいるところを見て喜ぶようだから
[胸に抱いた灼熱を撫でるようにして、痛みに微笑んだ。
溶けた魔法鉱石は溶岩の如き熱に焼きついて、仮の皮膚のように魔王の腕を覆っていく]
『なんだ、どこへ行くのだ』
[ぼんやりしている間に勝手に進んで行く話>>193に、慌てたような波動が降る]
『外遊びはいいが、寂しいのではないか?
すぐに戻るのか?
私が見たくなったら玩具は連れ帰るぞよいな』
[実際、破光を撃ったばかりの兵器は、さらに破損の修復にも魔力を食われている。
移動城砦としての身動きなるまでもまだ、時がかかりそうではあった]
[ ヨセフからも諾を貰い、男はほっと息をつく。これもまた、男にとっては、決して放置できない問題のひとつだった ]
まず、一点、はっきり言っておきます。
俺はディークが姉上を殺害したとは、全く考えていない。
[ それは、これまでの態度からも察することが出来ただろうけれど、改めてそう宣言する ]
姉上は、自ら望んでディークに着いて行った。それも確かです。
俺の所に、一度だけ、姉上から手紙が来ました。ディークに感謝するという内容の。
[ 詳細は姉のために伏せつつも、事実だけを伝えていく ]
[魔王の腕から離れ、下がろうとしたヒトガタの動きが突然止まる。
虚をつかれたように眼を見開くと]
…っぁ!
[不自然に跳ねて、液体の中に全身で飛び込んだ。
ビシャ、と粘つく音を立てて我が王に抱き着く──というかぶら下がるというか]
……
[拗ねたような波動は、ヒトガタの喉を借りて音を紡いだ]
『私は触れていたい。
これを介して見る痛みも、全て喜びだ』
[朝になったら遊びに出る、ならば、それまでに触り溜めをしておくのが当然、の気持ち]**
/*
その不意打ちでめちゃくちゃ可愛いのやめろよもうぅぅ!
ツィーアか。そうか可愛いのツィーアか。
人形も可愛いけど、おまえ滅茶苦茶可愛いな。破壊的可愛さだな。
ぶら下がるなこら。頭わしゃわしゃ撫でまわしたくなるだろ。
俺は、ディークの事も知っている。
ディークは、人を裏切りません。決して。
魔軍に属していたのも、あの盗賊の親分に、牢の中で助けられた、その恩のため...そうだろう?
[ 確認する言葉はディークに向けたもの。魔の群れの中に、あの盗賊達を置いて逃げれば、彼等は、もっと短い命だったろう ]
それに何より...
[ ふ、と、そこで笑う気配が浮かんだ ]
ディークが、証拠を残して犯罪を犯すなんてドジを踏むのは有り得ない。
[ それはもう、きっぱりと、疑いの余地など欠片もないと言いたげに、男は断言してみせた// ]
[ロー・シェンから紡がれる言葉>>*64はディークを擁護するもの。
彼がそう思っていることは以前からの態度で知れていたが、はっきりと聞いたのはこれが初めてだ]
……自ら望んでついていっただと?
[双子の話から楽しそうに旅をしていたとは聞いていたが、発端までもが間違った情報であることを初めて知る。
根底が覆された想いだ]
[ディークについても断言する言葉>>*66>>*67は、彼を信頼していることが窺える。
証拠を残すドジはしない、と言う話は、ディークと合流してからの彼の言動を照らし合わせるに、男も同意出来る部分があった]
………だとしたら、誰がユーリエを殺したと言うんだ。
[帰結する疑問。
揺らいだディークへの疑念は完全には消え去らないものの、彼が犯人であると頑なに主張することはない。
けれど、彼が犯人でないとすれば、男にしてみれば冤罪を被せてしまったことになる。
真実を見出さなければ、謝罪も出来ない立場に男はいる//]
[ だとしたら誰が、という、ヨセフの言葉は、既に彼がディークを「犯人」と断定した目で見てはいないことを示している。それにいくらか安堵しながら、男は深く息をついた ]
...少なくともディークと姉上を知っている相手でしょうね。だけど、俺にはその見当はつかない。
[ 男はまだ、双子のエルフの存在すら知らない** ]
― ツィーア内部 ―
[モーザック砦を陥落せしめたのち、魔王が居城から姿を現さなかったのは、聖光による痛手を癒していたから、というばかりではない。
この砦攻めで配下の軍がずいぶんと目減りしたのは理解していた。
最終的には己のみあれば人間の都一つ程度落とせるが、いちいち手を下すのも面倒だ。
ツィーアの破光で都を海の藻屑にするにも、餌が足りていない。
面倒といえば、この地にあるという祓魔剣も気にかかるものだった。
モンテリーの王族を捕えた折、王家に伝わるその剣の伝承も得た。>>1:68>>1:87>>1:154
王族の女が零したのを耳ざとく聞いた紫毒のものが、毒と苦痛で引き出した情報だ。
嬉々としてその伝承を伝えてきた紫毒の若者には褒美をくれてやったが、それももう死んでいる。]
― 伝承の剣 ―
[祓魔剣とやらを恐れるわけではないが、それが実在して、人間どもの手に渡るとなれば面倒が増える。
こちらに関して、魔王は既に手を一つ打ってあった。
呪術を得手とするゴブリンの氏族───戦場向きではないため戦列には参加していない───にあるものを持たせて、ミュスカの森に向かわせていた。
それは、
[ミュスカ森林の奥、忘れ去られた遺跡に到達したゴブリンたちは、伝えられた伝承と彼ら自身の奇怪な儀式による神託を元に、修道院>>1:283として作られたらしき建物の奥に隠された扉を発見する。
その扉に彫られた文字はゴブリンたちの知識にあるものではなかったが、モンテリー王家の紋章は読み取れた。
早速ゴブリンの呪術師たちは香を焚き、鼓を叩き、踊りと呪文を繰り返しながら革袋の血を扉にぶちまけ塗り付けた。
無論、正しい呪文ではなかったが、触媒の量は十分だったのだろう。
扉はポータルへと姿を変え、ゴブリンたちは嬉々として中へと飛び込んだ。]
[ポータルを抜けたゴブリンたちは、ショックで半数が死んだ。
それほどに、聖性に満ちた空間だった。
中央の祭壇に安置された剣は、見目も神々しく、淡い光さえ放っているようだった。
触れようとしたゴブリンが一匹、灰になって死んだ。
これは持ち帰れないと判断したゴブリンの呪術師は、死んだ仲間の血を使って魔法円を描き、彼らの暗黒の神に加護を祈りながら祓魔剣に呪いをかけた。
この剣を手にして振おうとしたものに、狂気が降りかかるように。
狂い果ててすべての愛する者をこの剣で切り殺した後に、自害するように。
聖なる剣は、邪悪なる術に抵抗する力を持つ。
だがあるいは、なにがしかの影響も残ったかもしれない。]
[ともあれゴブリンたちは儀式の跡と仲間の死体を片付け、修道院には来た時と変わらぬ風景が見えるように幻術を掛けて、遺跡を立ち去った。
唯一彼らが見落としていたのは、秘密の扉の前に落ちた血染めの布のみ。特徴的な房飾りのあるその布は、血袋の中に紛れ込んでいたのだろう。
一応の成果を魔王に報告した彼らは、祓魔の剣を発見したことに対して褒美を与えられ、持って帰らなかったことで死を賜った。
結局放置となった剣に対して、次の手はまだ打っていない。]**
[男の軍は先ずシャスラ村に向けて行軍を始めた。
セミヨン川を渡った先にある、森に囲まれたその村から避難した者も多く、滞在者はほぼいないかに思われたのだが]
「こんなところにも!?」
[1隊ほどいる魔の軍勢に、隊を率いていた副官は驚いた。
何のためにいるかは知らないが、裏をかけるほどの規模ではない。
最初こそそれなりの規模がいたようだが、エルフの戦士達がここを通過する際に邪魔をする者達を蹴散らして行ったらしい。
蹴散らされた残党が村に残り、好き勝手に飲み食いしたりしていたようだった]
「大した数ではないが…あちらに向かわれても面倒だな」
[こちらが通過した後に後背を突かれるのもまた面倒、と。
シャスラ村に巣食う魔共を排したために行軍は僅か遅れることとなった]
― ミュスカ森林 ―
[その一方で、グリフォンに乗り空を駆けた男はミュスカ森林へと辿り着く]
ここで待機していてもらえるか。
隊が到着したら私の馬を受け取っておいてもらいたい。
[森林内でシラー方面へと抜ける道と、そこから左に逸れる道が交差する辺りで男はグリフォンを降りた。
隊が通過するであろう場所にグリフォンと騎手を待機させ、その先へは一人で向かう。
目の前には鬱蒼とした森が広がっていた。
その森に分け入り、男は最深部の遺跡を目指す**]
……ほら、見せる。
いいから見せる!
[問答無用、とばかりに言い募る。
拒否権行使をさせるつもりがないのは態度からも明らか。
実力行使か向こうの根負けか、ともあれ、傷の具合を見る事が叶ったならはあ、と大きく息を吐き]
……治すぞ。
[素っ気なく告げて用意していたナイフで指先に血を滲ませ、治癒を促す呪を紡ぐ。
思っていたよりも酷い事になっている傷の様子に、癒しきれぬ可能性もあるな、と思いながらの施療の効果はどれほどか。
いずれにしても、薄紅が散った後に落ちるのは、重いため息]
……ほん、とに。
こういう所まで変わってないのは、どうなんだ。
やる事が多いんだから、使えるものは使っておけ。
[呆れたように紡ぐ姿にあるのは疲労──というよりは消耗と言えそうないろ。
その理由を問われても、返すのは『触媒の都合』とういう短い言葉だけで。
消費されているのが何か、の説明はされない──できない]
ま、そうは言っても、あたしの術はこれで打ち止めだ。
……これ以上は、使えない。
だから、あんまり無理するなよ?
要件は、それだけだ。
……それじゃ、あたしもやす……。
[休むから、と。
そう言って立ち上がろうとしたら、足元がふらついた。
あ、これはまずい、と思った時には遅いもので。
なんとかここから移動を、と思うよりも先、ふつ、と意識が途切れていた。**]
[ユーリエについて話したい、と告げたロー・シェンのコエに対するヨセフの反応には、いつもの彼らしくない揺らぎが感じられた。
妻を弔ったばかり、という話は耳にしていたが、何か琴線に触れるものがあったか。
思索するほどの間もなく、ロー・シェンが持論を展開する。
被害者の親族である彼の話を、容疑者であるディークは黙って聞いていた。]
[ロー・シェンから犯人視されていないことはわかっていた。
だが、それが心証的なものに留まらず、ディークの性質を加味してのものと提示されれば、理解されているという喜びと感謝が、氷を割る水のように溢れる。
ロー・シェンはまさに、結果ではなく、”人”を見ていた。
そして、それを理として説明できる芯がある。
人を掌握する英雄とはかくあるものかと、目の当りにして改めて感銘を受けた。]
[「だとしたら、誰が」と呻くように口にしたヨセフの苦悩を思う。
犯人がモンテリーの関係者であれば、ディークを捕まえた時点で、自白がとれたと宣言して処刑してしまえば済むのだから、彼が真犯人を庇っているというのでもあるまい。
彼自身の正義感の強さと誠実さゆえに、現状に苛まれていそうだ。]
俺の無実を確信できるのは真犯人だけだ。
[ロー・シェンでさえ、「犯人ではない」と断言はしなかった。]
[ヨセフの口から、双子の名が出れば、彼らとの関わりを、ロー・シェンにも簡潔に話しておく。]
ん、 アイツらにも”コエ”が届くのか?
ならば、どこまで姫と一緒だったか聞くことが──
[言いかけたとき、別の大きな声が割り込む。>>*73]
アイリにも届くワケね。
[案外と手が早いな? ロー・シェン。なんて。*]
おまえがもしも、
[もしも、だ。
あるいは、それを追求するのも面白いかもしれない。]
…もしも、我と同じ高みに立ちえたのなら、
最後の光景の先に、行けるやもしれんな。
[人形はツィーアと同じ幻想を共有しているのか。
知りはしない。が、どちらでも構わない。]
全てを滅ぼしつくした後、
無にも飽いたら、新しく世界を作るのも悪くない。
その地に満ちるのは、おまえの子供たちとなるだろう。
[そうして再び猥雑に拡がった世界を、ツィーアの光で塗りつぶす。
営々と繰り返す営みは、永劫の無聊を慰めるに足るだろう。]
[遙かな未来を幻視していたら、離れかけた人形が不意に抱き着いてきた。
半液体を揺らす波動が、人形の喉を通して声となる。]
ツィーア。可愛らしいことを言うものだ。
そんなに我が欲しいか。
仕方のない奴だ。
[どのみち、己も人形も治癒の時間が必要だ。
ならばと暫し、遊ぶことにした。
結局、朝の前には、人形は己が力を使って癒さねばならないだろうけれど。]
[人形との会話の上にツィーアの波動が降ってくる。
慌てた響きは笑みを誘った。]
ツィーア。
ここにいては餌も足りない。
雑兵どももずいぶんと減ったから、おまえに喰らわせてやるわけにもいかないからな。
おまえが早く動けるようにならねば、我も動けぬ。
[了承しろと言う声には、どうにも笑みがまとわりついていた。]**
/*
ああああもう。
魔王様もっと殺伐する予定だったのに、ツィーアが可愛すぎるせいで!
愛とかLOVEとか無縁にする予定だったのに、下の方に「愛し合っています」とか出てるせいで!
あー。崩れるわー。キャラ崩れるわー。
でれっでれ魔王になるわこれー。
/*
ひたすらツィーア愛でていいよって言われたら、ポイント枯渇させる自信あるわ。
拗ねるな。ぶら下がるな。可愛すぎるからほんと。
あー、愛でたいなあ。ひたすら愛でまくりたいなあ。
今から18禁にならないですか?ならない?
ウスイホンー!
[任された任務にも手をつけておく。
まずは、ロー・シェンと相談だ。]
セミヨン川下流の岩山地帯を、鉄底族の自治区として提供する気はあるか。
サンソー村近辺の鉱山という手もあるが、あそこはすでに人がいるからな。
その点、アルテス西南の岩山は手つかずだ。
人間には堅過ぎて手が出せない岩盤でも、ドワーフの技術ならば掘削できるだろう。**
/*
手が早いwwwww
魔王様の拾いっぷりに手を合わせるしか出来ない…。
妻の亡骸が無事なのに泣きそう。
あとヨセフそろそろSUN値ヤバイんじゃないか?(
ふむふむ。峡谷の方かあ。
『――皇子サマはそっちにいるのね』
今の場所は……うーん。流石に安全とは言えないかなあ。
『ただの野ッ原だものね。見晴らしスースー』
野宿したら風邪引いちゃいそうだよ。
『魔軍の残りものがいつ来るか分からないし』
ごはんもないしね。
『お腹すいちゃうわ』
[いつもの調子で、ひとしきり…やかましく奏でてから]
『でも…ヨセフは別のお仕事なのよね』
会えなくて寂しいなあ。
『お仕事がんばってね、ヨセフ』
ボクら応援しているよ。
[なんのお仕事かは知らないが……自分たちが命じられたのは彼の足止めではない。
ついさっきまでヨセフを殺そうと思っていたことなどすっかり棚上げして、双子は能天気に偽りの励ましを口にした*]
(となると…あとは皇子サマとディーク?)
(『ディークはお姫サマ一筋じゃなきゃだめ』)
(じゃあ皇子サマのアイジンかな)
(『そうね、そういうことにしときましょ』)
[ひそひそとそんな推論を繰り広げていた*]
最後の光景…?
[見上げた薄蒼の瞳に映るのは終末の光ではなく、魔王の白皙。
語られる"最後の先"はまるで創世の神話のようだった]
今の俺には
あまりに 遠すぎる 話
[声に乗るのは不安や困惑ではなく、何か畏れのようなもの]
……子供たち …
[そこに行けるかもしれないと言う魔王の真意は。
遥か未来の幻視を見定めようと寄せられていた人形の眉は、
別の意志によって体の主権を奪われるに至って、不意の恐慌に染まる]
な…待、 『欲しい』
い 『分かち難きものだろう?』 や
[触感として知覚する彼の存在、チリンと核が澄んだ音を立てた]*
─ モーザック崩壊翌日 ─
[拗ねるツィーアを宥めるのはヒトガタに負える仕事ではなかった。
この核を乗せた人形以外にも、魔王を鑑賞して楽しむための専用の目玉を城に作ってやればいいのではとも、言えず]
……
[とはいえ翌朝、魔法兵器の腹から出てきたツィーアは上機嫌にチリンと鳴る。
退屈嫌いは、自由に出歩くヒトガタでの散歩にも、それなりに魅力を感じているようだった]**
―峡谷の陣―
[レオヴォル御一行がアルテス寄りの峡谷に陣を張り終えた頃。
警戒なく軽快に近づく小柄な人影がふたつあった]
ええっと。たのもー。
『ワタシたち怪しいものじゃないわ』
それだと逆に怪しくないかい?ローズマリー。
『そういうものなの?ローレル』
[すっかり呆れていそうな見張り兵に、長い耳を揺らしてアピールする]
ほらほら、ヨセフのおともだち!
『こっちに来るといい、って言われたの』
皇子サマに会いたいな。
『おエライさんへのごあいさつって礼儀だから』
[砦でもやかましかったからか、兵らは有難いことに双子のことを覚えていてくれた。ひとまず中に――と勧められたので、双子は悠々と陣の内部に潜入した*]
―回想/5年前―
[初めてヒトガタに会ったのは…
それがツィーアの一部だと知らなかった時のこと]
うっわ、なにこれ。ニンゲン??
『もしかして……これが噂の、』
あ。先生の新しいお気に入り―――…
[先の戦いで獲ったレオヴィルの皇子を魔王様が玩具にした…という噂は聞いていたが、実物を見るのは初めてだった。ましてやあの巨大なツィーアの一部だなんて当然予想もしていない。
双子はヒトガタを取り囲み、しげしげと物珍しそうに観察した]
しゃべるのかな。
『動くのかしら』
触っていいのかな。
『髪さらっさらだわ』
[好奇心をそそるものの…
魔王様の持ち物に勝手に手出しをする訳にはいかない。
伸ばそうとした指先をぐぐっと堪えて引き戻し、
しぶしぶ見るに留めている]
でもさあ、…羨ましいんだけどコイツ。
『そうね。ずっと先生のお傍にいられるなんて』
贅沢だよね。
『恵まれすぎだわ』
ボクらなんて、ちょいちょいお仕事で出張だもん。
『しばらく先生のお顔を拝見できないなんてざらなのに』
[ぶう。と不貞腐れた表情のまま、足先をスイングさせてヒトガタを蹴る素振りをする。もちろん、実際にはやらない]
ふん。でもいいんだー。
『ワタシたち、先生とのトクベツな繋がりを持っているもの』
へっへーんだ!
[双子は揃って、どうだとばかりに胸を張った。
……後日。
ヒトガタとツィーアと魔王様の深い繋がりを知り、めらめら嫉妬を燃やしてヤケジュースを飲んだのは此処だけの話*]
/*
めらめら嫉妬の双子がまた可愛くてどうしようかと言うレベルだよほんとうに。
落ちちゃうのかー。
……落ちちゃうのかー…
─ 5年前 ─
[ツィーアの核を運ばせるために作り上げられたヒトガタは、人間そのもののような出来栄えで魔王を満足させ、魔将シメオンを驚かせたが。
この頃はまだ長時間意識を保てず、ひどく消耗しては1日の殆どを眠ったように過ごしていた。
故に]
『……』
[ヒトガタを取り囲む双子が胸を張った直後>>220
ぱちりと眼を開けたのは、人形が覚醒したのではなくツィーアが手動で動かしたもの]
/*
ちょっとふてくされてみたりとか、自慢してみたりとか、いちいち魔王様のツボを突いてくるね、君らは。
もっとなにか投げようか。そうしようか。
心置きなく可愛がりたいよううわぁん。
[さて、それがいけなかった。
クレステッドの記憶がまだ魔法鉱石の体に馴染みきれていない、よりもはるかにずっと、ツィーアはこれの動かし方をわかっておらず。
ついでに言うと密かに気に入っていたのに遊べなかった長耳双子を見つけて、テンションも上がっていたせいもあった]
『ケケケケケかかケケケ!』
[ことほどさように、
物凄い勢いで両手を真上に万歳し、そのまま足を揃えたややブリッジ紛いの海老反り姿勢でジャンプして近づこうとする──という恐ろしい怪奇現象を巻き起こしたのだった]
[……後日。
双子を見かけると核がソワソワするので、ヒトガタは彼らに友好的に接しようと試みるようにはなっていた。
彼らの反応がどうだったかについては、燃え上がる嫉妬の炎とかその他もろもろ]
…また逃げられたな
[しばらくするとツィーアもある程度──当時よりは、自然に操ることが出来るようになったが。
大雑把な指令程度で、普段の行動をヒトガタの自律機能に任せっぱなしで黙っているのは、やはり自分で動かすのがなんか難しいから、らしい]*
/*
wwwwwwwwwww
まって。
さすがに、
これは、
芝を吐かざるを得ない。
wwwwwwwwwwwwwwwwwww
うっかりリアタイで覗いていた私の腹筋を返せ
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
― モーザック崩壊翌日 ―
[狂騒と破壊の夜が明けて、日が昇っても魔王は姿を現さなかった。
もっとも魔界の住人であれば太陽がある間は行動しないのはよくあること。
魔軍はモーザック砦の跡地に駐留しつつ、「残党狩り」という名目で南の峡谷あたりまでちらほらと足を延ばすものもいた。
少数でばらばらと動くため、人間のまとまった陣営が見えれば踵を返して逃げ出すものが大半である。
だが無謀なものたちは意気揚々と攻めかかり、そのまま帰ってこなかった。]
[夜になれば、もっと大きな集団が動き出す。
相変わらず魔王は外に出てこなかったが、残党を狩り出せという最後の命令は生きていたから、亜人たちは逃げた人間を狩るべく徒党を組んで南へ向かった。
夜盗と変わらない雑な進軍だったが、頭数はそれなりにいる。
渓谷に陣を張る人間たちを見つければ、喊声を上げて突撃していった。]
[この集団の中に、鉄底のドワーフは加わっていない。
彼らは魔王の直接の命令なくば動かぬとばかり、野営地に彼ららしい堅固な宿舎を設営し、携帯の炉まで持ち出して武具の手入れにいそしんでいる。]*
─ モーザック砦跡 ─
[最初にヒトガタが向かったのは、瘴気の雨降る地だった。
亡きクレステッド皇太子が何度も訪れた場所、迷うことなく歩き回り、瓦礫を越えて地下へも入った]
…魔王カナン・ディ=ラーグは何故、このモーザックでお前を使ったのだろう
[問いかけるような声に、近くにいたコボルトが反応したが、それが独語だとわかると興味を失ったようだった。
雨を遮るフードを上げ、構造が保たれた地下階を歩いていく]
……
お前は、俺に話しかけてはこないな
話し相手は他にいる、か
[ぽつ、ぽつと呟きながら、やがて武器庫に入り込んだ。
軽量で目ぼしいものは既に持ち出されている──脱出した人間か、あるいは亜人達の収奪によって]
魔王が怪我をしたのはわかっていたのに、
実際にこの眼が見た時、お前は動揺しただろう
何故だ?
[足元に、小さな笛が落ちていた。
楽器というよりは子供用の素朴な玩具、誰か兵のひとりがポケットにでも忍ばせていたのか]
……これはこうやって、
[穴を指差し、唇にあてる。
吹き込むと ふぃ、と掠れた音がした。
チリン。 ]
[武器庫の奥、布を被せられた幾つかの遺骸を見つける。
彼らがアンデッドとして起き上がることはもうないから、焼いて破壊したりせずに置いていったのだろうと思う。
傍に片膝をつき、伸ばした手は一度聖水の加護に弾かれたが、ヒトガタを壊すほどではなかった。
布をめくり、その下を見る]
ヴェ、
[兵士ではありえない、記憶にある顔。
暖かな邸宅、星降る夜──一人息子を抱いて微笑んでいた彼女]
……そうか
こんなところで──
『誰だ?』
[独り言に、重なる別の独語]
なんだ、話しかけてくるのか?
……彼女は、クレステッドの知り合い
もう死んでいるから美味くはない
[ならばここにもう用はない、とツィーアの核は判じたらしい。
それ以上親友の妻には触れず、聖別された布を元に戻してヒトガタは立ち上がる。
去り際、武器庫全体に弱い隠匿結界をかけた。
入りたいという意志のないものから軽く注意を逸らし阻害するだけの魔法。強制力はないが、対象は虫や鼠から瘴気や湿気のような非生物にも及ぶだろう]**
[……後日。]
『うううう、まだトラウマよう…』
でもさ…アレが先生のお気に入りなんだろ…?
『理解できないわ…』
ボクらにオトナの味が分からないのと一緒だよ、きっと。
[という訳で双子は一度だけ、魔王様の前で両手を真上に万歳し、「ケケケケケ!」『かか!』とアレの態度を真似てみたりもした。
結果は――――絶対零度のような冷ややかな目。
双子は心底震え上がって脱兎のごとく逃げ出した]
[以降、ヒトガタがいくら近づいても]
ばーかばーか!
『怖いしライバルだしウソつきだからきらい』
[一向に懐こうとしない双子の姿があった*]
/*
ヒトガタさんはちゃんとシリアスもしているのに
この双子はシリアスさんが息してない…。
完全シリアスブレイカーである。
― 回想 ―
[双子は魔のことを"先生"と呼んだが、魔にとっても双子は新しい物事を持ち込んでくる存在だった。
誕生日>>1!9、という概念を教えたのもこの双子だ。]
おまえたちが生まれた日?
───なぜそれを聞く?
[曰く、誕生日には美味しいものを食べてお祝いするんだとか、プレゼントたくさんもらえるんだとか、どこぞの本で読んだのだろうことを口々に言ってきゃあきゃあと騒ぐ。
くだらないとは思ったが、双子が飛びあがるほどに喜ぶさまはなかなか面白かったので、毎年の、夜が最も長くなる日を誕生日と決めて、些細なものをくれてやっていた。]
[先生の誕生日は、と聞かれたこともある。
己が世に存在を始めた瞬間など、今まで気にしたことは一度もなかった。
在ったから在った。
それ以上のことは、魔にとって無意味であったが、]
我は、世界が始まったときに在ったのだ。
[そんな風に、適当に答えておいたものだ。]*
― 回想/5年前 ―
[一度だけ───でもないが、一度、双子がとびっきりの奇行をしたことがあった。
両手を真上にあげ、奇声を発しながら跳ねつつ近づいてくるという、まったく意味の分からないものだった。
新たな儀式魔術か暗殺術かと思いながら観察していると、だんだんと双子の態度が萎れていく。]
………なんなのだ、それは。
[声を掛けた瞬間に、ごめんなさいと叫んで行ってしまった。]
[不快だったかと言えば、どちらかというとあっけに取られていたのである。
そして魔王があっけに取られることなど、ごくごく稀なことなのだった。]*
/*
鉄底族の基本スタンス
・強い奴偉い
・部族一番
・王国建てたい
一騎打ちしかけられたら?→断るなど恥
セミヨン川下流の岩山を打診されたら?→まだちょっといい鉱脈あるか確認してないんでなんとも
シラーの東にある大洞窟の話
・本来、豊かな鉱脈が広がっていて、王国を再建するにも十分な空間があるのだけれど、あそこには今、ラスト(錆)ドラゴンという、あらゆる金属を錆びさせる竜が住み着いていて、非常に相性が悪い。
あれを何とかする策があればとかなんとか。
もう少し考える。
/*
一騎打ちならNPCだけどこちらが動かしてお相手するのだけれども、タッグマッチは面倒なのでお任せしたいの心。
一騎打ちで良くない?どうかな?
副長とやらをどうにかしちゃえばいい??
/*
エルフさんの生き残り(虫の息)に罵られようかと思ったけど、上手く纏められないなぁ。
むしろサクッと剣取りに行って、SAN値減らして乗っ取られかける方が良いかしらん(
そういえばさっきの独り言、SUN値になってたな。
太陽ちゃうわ(
[ヨセフの静かな、だが真摯な声が割り込んでくる。>>*85
ユーリエと最後に別れた場面が蘇って、ディークの声も神妙になった。]
ああ、あのひとは、王都へ戻りたがっていた。
家族に最後の別れを告げるんだ、と。
[それを、阻止するなど。]
俺はもうレオヴィルに帰れる義理はないと考えていたし、姫も無理強いはしなかった。
その方が、自由でいられるなら、と言ってくれた。
[「でも、帰ってきたくなったら、過去にこだわらないで」──そんな言葉までくれた。]
だから、ロー・シェン。
あのひとの魂は王都に行っていると思う。
[そう続けたのは感傷だけれど、]
彼はアルテスを守り抜いて、あのひとの好きだった花でいっぱいにしてみせる。
──命をかけて惜しくない夢、だ。
/*
ただいま。まだ落ち着けないけど、順に片づけないと......
しかしあれだよ、魔王軍は「魔王と愉快な仲間達」とかに改名すべき。若しくは村名自体を「魔王と可愛い仲間達」に...(黙れ)
―回想―
[“誕生日”はトクベツの日なのだと本で読んだ。
生まれたことを祝う日。素敵なモノがもらえる日。
けれど蠍の一族は誰ひとり誕生日など気にしていなかった。
…魔物は、そういうものだと言われた。
誰かの生誕を祝う習慣なんて無い。死を悼む習慣もない。
ただ存在し、偉大なる魔のために生き、やがて消える…]
…――そんなの、つまらないな。
『先生のために生きるのはいいの』
でもせっかく生きるなら楽しみたいし。
『美味しいものも食べたいわ』
[そう口答えすると、異端だと罵倒された。
やはり光側の…エルフの子だからか――――と。]
[エルフだからなんなのだろう。
魔物だって、ニンゲンだって、生まれた時から何もかも決まっている訳ではないと思う]
そりゃあ周りの影響は避けられないけどさ。
『でも、少なくともワタシたちは“選んだ”つもりだわ』
そうそう。先生のお役に立ちたいってね。
[小生意気ではあっただろう。
けれど躾をするほど蠍の一族は親身ではなかったし、魔は寧ろその生意気さを面白がっている風だったから、双子の性格はそのままだった]
[だが一拍置いて今度は腕組し、ううーんと悩み顔になる]
…だけど困ったな。
『先生の誕生日もお祝いしたかったのに』
世界が始まった日っていつだろう。
『本にも書いてなかったわ』
なら――…
あのっ、
…ボクらと一緒の夜が最も長くなる日でもいいですか?
『わあ。先生と一緒の誕生日なんて素敵だわ』
[魔の誕生日を祝おうなどと、それこそ愚かな話だったかもしれないけれど。
それでも双子は、魔にもお返ししたいと真剣だった。
双子が用意できるものなどたかが知れている。
それこそ魔にとってはガラクタだろうが、双子は自分たちなりに珍しいものや楽しいものを探してきては、年に一度お披露目した*]
― ミュスカ森林 ―
[深い森を彷徨い行くと、時折息絶えたエルフの姿を見つけた]
…毒を撒かれたと言っていたか。
[聖樹はエルフ達の象徴であり守護樹。
彼らの住処を護る聖樹が侵されたことで、離れていた戦士達以外の住まうエルフ達は同時に毒を受けてしまったのだろう。
苦悶の表情で倒れるエルフの身体を整えてやり、冥福を祈る]
───………
[森がざわついている気がした。
護りを失くし、森自体が枯れ行かんとしているかのよう]
…急がねば。
[その様子を国と重ねてしまった男は、頭を振り、滅亡を防ぐために先を急いだ]
― 遺跡 ―
[遺跡へと辿り着いた男は伝承を思い起こしながら道を辿る。
かつては歴代のモンテリー王家の御霊が安寧を得られるよう、祈りを捧げられていた場所。
そして、魔を祓う剣を治めた地を護るために造られた場所]
……誰も訪れてはいないようだな。
[魔法の素質無く、幻術を破る術を持たない男はそう判断して先へと進む。
けれどそれが間違いであることは、最奥へ辿り着いた時に発覚した]
───道が開いている!?
[男が開かなければ開かないはずのポータルが起動している。
大きく放たれた扉の先からは強い神聖性を孕む波動が流れ込んでいた]
どう言うことだ…今となっては私でなければ開けないはず…。
[混乱と動揺が男を襲う。
何者が開いたのか気になりはしたが、それよりも先に確認すべきことがあった。
焦りが扉の前に残された血染めの布を見落とし、男の足は扉の先へと進む]
[扉を抜けた先は神殿のような造りをしていた。
神々しささえ漂う室内は白で統一され、ところどころに黄金の装飾が飾られている。
広い部屋の中央を見遣れば、祭壇に一振りの剣が安置されていた。
聖性の象徴のような作りでありながら、実用性も兼ね備えたもの。
本来であれば淡い光を放っているはずのそれは、その光を弱めている。
けれど、本来の姿を知らぬ男はそれに気付けない]
あった───
[男の口から安堵の息が零れる。
やや警戒気味に剣へと手を伸ばしてみると、拒絶されること無く剣は男の手に収まった。
それにまた男は安堵を覚える]
よし。
急ぎロシェに届けねば。
[鞘に収められた祓魔剣を手に、男はポータルである扉へと戻り行く。
扉を越えようとして足元を見た時、先程は気付かなかった物が男の目に飛び込んできた]
っ─── これ は、
[目に留まった血塗れの布。
それに付随した房飾りには見覚えがあった。
男の表情が急速に蒼褪めていく]
まさか ロヴィン、
この扉を開いたのは ───
[男の頭に最悪の想像が過ぎった]
[長男にはまだこの遺跡についてを教えてはいない。
直系ではないため、男が王になることが無い限りは秘されることになるからだ。
故に長男自身がここへ来て開いたとは考え難い。
考えられるのは、強要されたか、あるいは────]
っ、 く、
[どちらにせよ、呪具無く、呪文も知らぬ者がここを開いたとすれば、触媒である血を大量に使用することになったはずだ。
そう思考が廻り、男は苦悶の呻きを零し、よろつきながら布の傍に片膝を突いた]
[目の前にある血染めの布を右手で握り締める]
なぜだ、 皆、私を残して……
[母と兄を失ったのであれば、人の手が必要な次男も恐らく生きてはいまい。
こんなことならば、無理にでも屋敷へ迎えに行くべきだった、と。
後悔が男の中で渦巻いた。
それに呼応するように、左手に握った祓魔剣が一度だけ昏く明滅する]
このままでは 皆失われてしまう…
私の大切な者達が…
[立て続けに家族を失った男の精神は密やかに疲弊を続けていた。
上に立つが故に表に出さず、年上であるが故に心配をかけぬようにと隠してしまう。
己を律さんとするが故に、男自身を欺いて。
削れに削れた精神に、呪われた祓魔剣の力が作用した]
これ以上、 奪われないように────
[光を宿していた黒い瞳が闇に翳る*]
なぜ…、 …、…を……て
このまま…… 皆……れてしま……
私………な者…が…
[遺跡での呟きは同時にコエとなり無作為に届く。
ノイズがかかったように途切れた声には絶望めいた色が乗っていた*]
―峡谷の陣―
[某情報によると気さくだという皇子サマは、おそらく多忙だろうが双子と会ってくれるらしい。まあ駄目だと言われても無邪気パワーで押し掛けていたけれど]
こんにちは皇子サマ。ボクはローレルだよ。
『ワタシはローズマリー』
ヨセフのおともだち… っていうのは伝わっているかな?
『根性ある皇子サマに会ってみたくて来たの』
そうそう。魔軍に捕まったのに逃げれちゃうなんてスゴいよね。
[相手の容姿をしげしげと観察しながら、双子はにこやかに挨拶する**]
─ めぐり ─
[日中、ヒトガタは馬を駆って西へ向かった。
エルフの戦士達がまだ森から来るかもしれないという期待は多少あったがそれらに出会うことはなく、
また戦線が川を挟んでいた頃は橋に駐留していたレオヴィル王国軍も既に退却済みだった。
途中で花摘みをしたり兎を追いかけたりと、およそ魔軍配下らしからぬ寄り道を繰り返した末]
…帰るのか
[ヒトガタはため息を吐いた]
[シャスラ村近くまで行っていれば、シラー解放軍と魔物の残党が戦っていること>>206に気づいたはずだから、かの村はツィーアの餌場になったのだろう。
衝突が避けられたのは、魔法兵器の実質的な本体である核が、移動城砦がいる位置から離れすぎることを嫌ったため。
ヒトガタは、山地に潜んでいた難民──シャスラ村からアルテスを目指したものの、身動きをとれなくなっていた人間達──の死だけを刈り取って、モーザック跡地へ帰還することにした]*
― ヨセフ出立前 ―
[ 響き渡ったコエに、男は、思わず逃げ場を探して視線を彷徨わせたが、当然、そんなものはどこにも無い ]
待て、リー、ちょっーっと待て!
俺は、だいじょう...
[ 問答無用とばかりに迫ってくるアイリの勢いに、遂には壁際に追い詰められて降参する羽目になる。
昔と違って涙目でこそなかったものの、アイリの顔に浮かぶ表情は、男から抵抗の気力を喪わせるには充分だった>>209 ]
王都に戻れば、神殿の治癒術師にも頼めるから...て、おい、リー!
[ 不承不承、胸元を開いて火傷を見せると、人の話を全く聞かず、紅い雫が傷の上に落とされる ]
う...!
[ 呪が紡がれると同時に、じわりとした熱が傷の内側に集まって、徐々に痛みが引き、爛れていた表皮も滑らかに再生していく。
一番深く...魔の楔の切っ先が届いていた場所にだけは、痛みの欠片が残りはしたが、表面から見れば、痕跡を残すだけにまで回復していた。
元は黒く残されていた刻印も、今は紅色に変わっている ]
...そう言われてもな、変われと言われて変われるものじゃないだろ。
そもそもお前だって、そういうところは全然変わってないぞ。
[ 呆れた調子で紡がれる言葉に、なんとかそう反論を返しながらも、気になるのはアイリの疲れた様子だ>>210 ]
無理をしてるのは、お前の方じゃ...
[ 打ち止め、という言葉にもひっかかりを覚えつつ、立ち去ろうとするアイリを引き止めようと、腕を伸ばした時 ]
あ。ヨセフといえばさ…
『そういえばロヴィンって結局どうなったのかしら』
[魔王様に献上した以上、彼がどうなろうが別にいいのだが。
ふっと思い出されたので、返事を期待せずに名を口にしてみた*]
お前......一体何を代償にして、俺を癒した?
[ 大きな溜め息と共に、漏れる声は低い。魔法に使われる触媒は、形あるものとは限らない。男は、魔法は不得手ではあったが、役に立つものなら身につけたいと、それなりの勉強はしてきたから、その事も知っていた ]
大馬鹿は、お互い様だぞ。
[ 問うても、彼女は決して答えないだろう。そしてやめろと言っても、聞きはしない。アイリの身体を抱えたまま、男は床へと座り込み、亜麻色の髪をそっと撫でて囁きを落とす ]
ありがとう、リー...
[ その後、結局その体勢のままで、自分も居眠りしてしまい、男に抱きすくめられる形で目覚めたアイリには...お約束通り、また怒鳴られた** ]
エルフの双子?
[ ヨセフの縁者だというその双子に、ヨセフは魔石を使ったという。彼がそこまでするというのは、余程親しくする相手なのだろうか、と、思った所へ、ディークも、その双子なら事情を知っているかもしれないと言う ]
確かに...一度、話を聞いてみるべきですね。
[ そう結論づける間に、アイリにも魔石を使ったのが思わぬ形で暴露されたりとかしたわけだが ]
心配だったんだよ!
[ 何か言いたそうなディークには、ヤケクソのようにそんな言葉を投げたとか ]
[ 峡谷のレオヴィル軍は、崖に挟まれた狭い本陣の前に、まず深い空堀を掘った。堀の底には鋭く尖った木の杭が多数突き立ち、谷を抜けるための最初の関門となる筈だ。
即席の橋や梯子を使い、あるいは膂力でもって堀を越える者がいれば、その空堀には、崖上から油が投げ込まれ、元々油を染み込ませてある木の杭と一緒に火を放って、炎の勢いで敵の足を止める計画となっている ]
[ 堀を作る間にも、散発的に魔軍のゲリラ襲撃はやってきた。
大抵がまとまりに欠ける、いわば雑兵の一団で、王国側の人的被害も、最小限に押さえられてはいる。
しかし、夜陰に紛れて襲って来る敵を警戒しながら、昼夜兼行の迎撃準備を進める事によって生じる精神的肉体的負担は、徐々に王国軍の兵達を疲弊させていっていた** ]
[双子の声が届いたとき、魔王は浅い眠りのような状態にあった。
睡眠の類は必要としないが、深い瞑想の結果、似たような状態になることがある。
だから、双子への反応は、少し遅れた。]
─── …。
…ああ。おまえたちか。
[意識呼び覚ますための一拍を置いて、声を返す。]
ヨセフ……
モンテリーの生き残りか。
[名前を思い出すのに時間がかかったのは、別に寝ぼけているわけでもなく、人間の名を覚える習慣など無いためだ。]
なるほど。峡谷か。
人間どもはつくづく狭いところが好きだな。
そのヨセフは、逃げ出したわけではないのだろうな。
なにをしようと構うまいが……… 祓魔剣か…。
[あれが動く先など対して思いつかなかった。
先日、確保しそびれた聖剣を思い出して、わずかに不機嫌を漏らす。]
───?
ロヴィン…ああ。ヨセフの息子だったな。
あれなら、そう。まだ生きている。
近いうちに、ヨセフに会わせてやりたいものだがな。
[こちらも名前を聞いて己の企みを思い出し、愉しげに笑った。]
― レオヴィル軍陣営 ―
[ ディークの持ち出した、鉄底族との交渉材料に>>213男は、ん?と首を傾げ、傍らに居た従者に視線を向けた ]
アルテス西南てのは、確か...
「...そうですね、皇太子の所領です」
やっぱりか、よし、それなら問題ない。
王や諸侯に伺いを立てるまでもなく、俺の一存で、自治領として認める。
確か、あそこには、岩盤深く掘ればミスリル銀の鉱脈が通ってる可能性があると、聞いたぞ。
[ 手つかずの...というか、手をつけることが難しかった、しかし、大きな財を隠し持っているかもしれない土地。それは、取引の有利な材料の一つになるかもしれないと、男は笑った*]
[アルテス西南の皇太子領について打診すれば、ロー・シェンは惜しむことなく認可をくれた。>>256]
その決断力、頼もしいな。
おまえの名で誓約書を書いてほしい。
俺はそれを持って、鉄底族のところへ行ってくる。
最初に切るカードは、「決闘の申込み」だ。
これは実力主義の鉄底族が拒むことはないと思ってる。
だが、「こちらが勝ったら、味方についてもらいたい」という条件には、難色を示すだろう。
ドワーフの眷属は魔王の領地で奴隷階級だという話だ。女子供を人質をとられているようなものだからな。
その不安を取り除くために、この時点で避難場所──自治区の用意を示す必要がある。
ま、流れはそうなんだが、代表戦に勝たなければ、御破算だ。
おまえとアイリとで、しっかり頼むぞ。
― モーザック砦跡 ―
[散発的な昼の襲撃と、ある程度まとまった夜の襲撃は飽きることなく繰り返されていたが、魔王の沈黙は数日間にも及んだ。
中には、モーザック砦を落とした日に玉座の上を飛んでいた光を思い出して不安がるものもいたが、そんな臆病者は周囲から叩きのめされて沈黙する。
それでも不安を口にするものが増えてきた頃、ようやく魔王がその姿を玉座の前に現した。]
進軍する。
人間どもの最後の拠り所を叩き潰すぞ。
隊を整えよ。
[ついに下った命に、亜人たちは雄叫びを上げて進軍の準備を始める。
出立は、いつものように夕方頃となるだろう。]*
[ 挨拶を交わし、笑みを見せるエルフの双子に邪気は無い。けれど、その言葉の端が、男の心にひっかかった ]
(...魔軍に捕まったのに?)
[ それは、ヨセフが、広まらぬようにと手を尽くした筈の事情だ。まして、この双子は、今まで陣営を離れて逃げていたのではなかったか? ]
[ついでとばかりに、ロー・シェンがローグのスカーフをヨセフに渡したのを思い出し、ひとつ助言を置いておく。>>174]
ロー・シェン、
予備があるならおまえもそれ、首に巻いとけ。
あと、可能なら兵たちにもだ。
毒吹き矢で攻撃してきた敵もいるって話を聞いてる。
布一枚でも、違うから。
[俺もつけとく、と首筋を撫でた。*]
[ 魔将と対峙した刹那にも、男自身はヨセフとディーク以外にコエを送った覚えはなく、その場に双子が居た事も聞いていなかったから、それは、僅かな疑念の警戒の種となった ]
― 魔都シラー ―
[かつてはモンテリーの王都であり、今は魔物が闊歩する地となったシラーは、ある意味では活気に溢れる街となっていた。
そこかしこで建物を壊し立て直す槌の音が響き、通りでは奴隷や家畜を売り買いする声が交わされる。
高台の広場では処刑のショーに歓声が上がり、日々どこかで反抗勢力との小競り合いが起きていた。
北部山脈の外側からは瘴気の谷を渡って亜人たちが次々と入ってきており、その多くはそのままシラーを通り過ぎて魔王の軍に加わるべく南下していく。
戦いに加わる前に一つ景気付けようという連中が、通りをうろついていた。]
[シラーを纏めているのは魔王の直属であるオークの一部隊だが、それほど数は多くない。
ただ、いずれもが屈強なる戦士であった。
街にいる亜人たちは多いが、大半は戦士ではなく食料や人間や怪しげな薬などを売り買いしている連中である。
シラーは急速に、魔の都としての体裁を整えつつあった。]
[シラーが魔都へ変貌していくことは、取り残された人間たちにとっては苦難が増すということでもある。
それでも、シラーの人間の心は絶望に染まりきってはいなかった。
日々の厳しい労働の中で、あてがわれた粗末な寝床の中で、あるいは繋がれた小さな柵の中で、誰かが小さくモンテリーの国歌を歌う。
それは隣の人に引き継がれ、さらにその隣の人へと伝わっていく。
シラーの各所で、そんな小さな歌声が囁くように繋がっていた。]
[アイリを見つけて声をかける。]
アイリ、
鉄底族とのタッグマッチでは、ロー・シェンと息のあったところを見せてくれると期待してるぞ。
それに、おまえが副将を務めていること自体が、ロー・シェンの元では、かつて魔軍にいた者でも、栄誉ある役目を与えられて活躍できるのだという証になる。
おまえの戦場だ。存分に腕をふるえ。
ただ──、
おまえがこちらについたということも、魔軍に知れ渡るから、今後、賞金首として狙われる危険も高くなるだろう。
面倒をかける。
― ミュスカ森林 ―
[男が遺跡を出てきたのはシラー解放軍がグリフォン係留地を過ぎて少ししてからのこと。
グリフォンの騎手の傍には男の愛馬が木に繋がれていた。
思った以上に戻るのが遅い男を案じていた騎手は、その姿を見て安堵する。
けれど顔色の悪い様子に、遠慮がちに声をかけた]
………──── 行かねばならん
[ただそれだけを紡ぎ、男はグリフォンに跨り飛び立つ。
それに驚いたのはグリフォンの騎手。
置き去りにされることもそうだが、騎手なしで飛ぶことの危険性も知っていたからだ]
「将軍、お待ちください!」
[叫ぶように呼ぶ騎手を余所に、男は強引にグリフォンを操作し、レオヴィル国へと進路を向ける。
様子がおかしいと見た騎手だが徒歩で追いつけるはずもない。
幸い、主の異変を察した男の愛馬が騎手に乗れと促し走り出したために完全に置き去りにされるというのは回避出来た。
けれど馬とグリフォンでは速度が異なる。
追いつくのは難しそうだ*]
[ そして、勝つのが前提と、改めて示す言葉には、不敵な笑みを浮かべてみせた ]
まあ見てろ、俺とリーが組んだら無敵だ。
[ どこか楽しげに響く声は、幼い日のままだ、と、知るのはアイリだけだろう// ]
[魔軍の支配下で苦難にある者、すべての解放を、告げるロー・シェンを見つめる。>>267]
皆が笑って暮らせるように──だな。
ああ、微笑みを奪われている者たちを救おう。
[かくして、ロー・シェンの親書を携えたディークは、シラーへ向うヨセフや峡谷に陣を張るロー・シェンらと別れて、北へ向う。*]
― 閑話休題 ―
[魔王の居城であるツィーアの頂、玉座のある場所の壁に、小さなくぼみがある。
ちょうど握りこぶし一つ分ほどの窪みは、もともとが何のための空間であったかはわからないが、何か置くのに具合がいい場所であり、現に小さな茶色いものが置かれていた。
森の中でよく見るような団栗である。
ただ、ふたつの実が根元で一つに融合してしまったような形の、珍しいものである。
実の側面から小さな突起が伸びていて、全体としては急いで走っている生物に見えなくもない。]
[魔王がその団栗について言及したことはないが、何かの折にツィーアに言ったことはある。]
我の誕生日とやらは、夜が最も長い日になったらしいぞ。
[それ以上のことは、魔王は特に何も言わなかった。]*
[ ヨセフに投げたコエに返事が返らない。そればかりか、彼とは思えぬような、殺意か呪いに捕らわれたコエが、意味為さぬ体で響く ]
ヨセフ...!
[ 兄と慕う将の、明らかな異常事態に、男は心をかき乱され、声にしてその名を呼んだ ]
― 北へ ―
[途中、まだ新しそうな泉を見つけた。
先日の大破壊で水脈が変わったものかもしれない。
いい機会だと沐浴することにした。]
うう、身が締まるぜ。
…にしても、ここまで地形が変わるってのは凄いな。
[破壊の光が抉った新たな谷を眺めて、感嘆する。]
…………????
[目が覚めた時に最初に感じたのは違和感だった。
自分がどうなっているかわからなくて、きょろりと周囲を見回して。
状況を把握した瞬間、亜麻色はぱちくり、と瞬き、それから]
なん、っで……!
[抱えられている現所に至った過程は見事にすっ飛んでるから、先に立つのは困惑。
しかし、そこでしおらしくならないのは生来気質で]
このっ、ばかっ!
うたた寝するならちゃんと寝とけ!
[ある意味滑った方向の突っ込みと共に腕からすり抜け。
走り出そうとして、ぴた、と止まった]
そのうち、あの谷にも新しい名前がつけられるんだろうな。
創造主?のアイツの名前、訊いておけばよかったか。
対話できるくらいだ、名前もありそうなもんだと思うんだが。
それとも、ヒトガタと同じで、名前ないのか?
[魔王を倒すということは、あれとも決着をつけることだ。
そこまで考えて、パシャリと冷たい清水を顔にかけた。*]
……でも……ありがと、だ。
物凄く久しぶりに……安心して眠れた、気がする。
[魔に縛されてからの眠りは、どこか落ち着かないものだった。
ここなら大丈夫、と。
そう、思える場所で眠れたのも、久しぶりだったから。
最後にそう告げて、今度こそその場から駆けだした。**]
/*
@2時間。
ロー・シェンに攻撃して返り討ちされて、死亡ロールまわして…
駆け足でやれば、なんとか…??
バトルロール薄いかもだがっ。この村のメインのひとつだというのにすまないな!
[双子はニンゲン社会に紛れてお仕事をすることが多いので、逆に名前呼びに慣れてしまっていた。その癖が抜けず、しばしば標的を名前で指し示してしまう。
祓魔剣という聞き慣れない言葉には長耳を傾げたが、説明されないので知らなくていいモノだろうと結論づける]
あはっ。会えたらヨセフも喜ぶと思うよ。
『息子にとっても会いたがっていたもの』
先生もなんだかご機嫌。
『ワタシたちも嬉しくなっちゃうわ』
[先刻の怖い雰囲気はひとまず引っ込んだようだ。
勿論まだ怒りは静まっていないだろうけれど――愉しげな様子に、双子はほっと胸を撫で下ろした]
[夜は渓谷の近くまで出かけ、人間の張った陣で死んでいく魔物達の死を集める>>225
日中の行動は様々だった。彼方此方へふらりと出かけ、あるいは野営地で過ごし、または城砦に篭って出てこない]
─ モーザック砦跡地では ─
素晴らしい槌捌きだ
いつまでも聞いていたくなる
[鉄底族の宿舎はツィーアが気に入った。
何が楽しいかわからないが、武具の手入れをする闇ドワーフ達に興味を抱いたらしい。
向こうにしてみれば蟠りのある相手だったが、ヒトガタは、素体の育ちの良さと礼儀正しさ(と腕相撲)を最大限利用して、彼らの矜持を傷つけずに見物の許しを得たのだった*]
/*
そして、どうしても風呂ーるしたかったのだねディークww
王都決戦になれば出来るとは思ったんだけどねえ。この進み具合だと、ここが決戦の地になりそうではある。
言われるまでもない。
戦いは、戦士たる者の本領……まして、あたしの戦場だというなら、後れを取る気はない。
[声をかけてきたディーク>>266に、返すのは不敵な笑み。
魔将の縛を解かれた事で陰りは消えたが、好戦的なのは根っからなのでそこは変わってはいない]
ふ……それこそ、気にするな。
元より、あたしは魔軍から逸れた者の娘。
いうなれば、親子二代のはぐれ魔族だ。
今更、奴らに追われる事など、どうという事もない。
[さらりと告げたのは自らの出自。
その辺りを他者に告げるのは、実は初めての事なのだが。
その血に対する誇りがあるから、告げる様子に陰りはなかった。*]
[正式な使者であることを示す銀の枝は携えていたものの、フードを深くかぶって瘴気の雨をやりすごし、獲物目当ての魔軍の遊撃隊に見つからないよう、身を隠しながら移動した。
いくつか夜を越したが、狩り?をするヒトガタとは、幸い遭遇することがなかった。>>282
たとえ、いくらか延期されたに過ぎずとも。
そうして、魔軍の野営地で次の出撃に備える鉄底族へと接近し、「果たし状」を託されてきたと、族長への取り次ぎを頼む。]
[ロー・シェンには言ってこなかったが、交渉が成ったならば、自分は保証人として鉄底族の監視下に留まり、ロー・シェンが約定を違えたら殺されても文句はない、と提案するつもりだ。
鉄底族のような者たちには、言葉を重ねるよりも、体を張った実を見せる方が有効だと思っている。]
こういう時、事後承諾を要請できるコエは便利だよな。
[策士の笑み。]
[そのコエが、ヨセフの虚ろな呟きを伝えてくる。>>*90>>*96]
おい、 殿下の様子がおかしい。
どこにいる? シラーか?
─ 閑話休題 ─
[くぼみに置かれた、ごく軽い感触が何なのかはツィーアにはわからなかった]
誕生日?
[我が王がそれ以上は何も言わなかったので、夜が長い日の謎もそのままになる]
私はいつ生まれたのだったか──
[気がつけばただ退屈だった。
アーティファクトに意志が宿った明確な瞬間などなかったのかもしれない]
お前が現れる前の世界など数えようもない
……お前は?
私を見出すより前はどう過ごしていたのだ
[ツィーアが未来ではなく過去へ関心を向けることはほとんどなかったから、これは珍しい部類の問いだった]
/*
>>282
ヒトガタここにいるのかよwww
タッグマッチの間、敵陣で、のほほんとしようと思ってたのにw (←
― 上空 ―
[森を囲む山岳さえも飛び越えて、蛇行しながら飛ぶグリフォンを男は騎馬を駆る時と同じようにバランスを取り大空を舞った。
意識を囚われているが、身体が覚えたものはその動きを援ける]
ロー レル
ローズ マリー
ロ シェ
[大切なものを奪われる前に]
[己が手で、刈り取らねば]
[やがて、グリフォンは川を越えレオヴィル王国へと入り、3人がいる峡谷を目指した]
……懇意に?
[どこかで見た気がする。
ここに来る前、未だ魔将の僕であった頃に。
魔将を元気よく訪ねてきた子供たちがいたような──と、記憶を巡らせて]
……どういう事だ?
[記憶違いならいい。
だが、人違いというには、特徴がある。
これは、確かめなくてはならないか、と。
踏みだした足が、一度、止まった]
ディーク!
[ 焦りだけを募らせていた中、聞こえた友のコエに、我に返る ]
ヨセフは...恐らく今は、1人でミュスカの森かフェール湿地に居たんじゃないかと思う。
[ グリフォンの速度を考えれば、その筈と伝え ]
ディーク、そこから...
[ ヨセフの後が追えないか、と尋ねようとした言葉は途切れた。
彼も又、重要な交渉を担って敵陣に在る。それを半ばで放り出せとは言えない ]
あ、そうだ。
『皇子サマにアイジンっているの?』
さっき女のヒトのコエが聞こえたから。
『ちょっぴり、そうなのかなって』
[否定されたらされたで、なーんだ、と残念そうに舌打ちする。
なお…一応、皇子サマの大切なひとチェックという“お仕事”を兼ねてはいたのだ。好奇心だけではない…断じて。]
[ ヨセフのコエは段々と近付いているように聞こえた。自分と、双子のエルフの名らしきものを虚ろに繰り返すコエは、不吉な予感を抱かせた ]
ヨセフ...一体何が?
[ すぐにも探しに飛び出したいという気持ちを、懸命に抑え ]
斥候を出せ!崖上から、グリフォンか将軍の馬が戻らないか見張らせろ!
[ 従者に命じて伝令を走らせる ]
[明日があるとは限らない。
そう考えていた…───それは少しだけ、違う。
とても良く似ているけれども、少しだけ違う。
魔は、明日などどうでも良かったのだ。
強大な魔の者に寿命などない。
飽きるまで、斃れるまで生き続けているだけだ。
そんな生を続ける者に、明日など何の価値があろう。
だからこそ、明日などどうでも良かったのだ。
更に言えば、人間世界もどうでも良かった。
魔将は実のところ、人間など滅ぼうが生きようが良かったのだ。
魔王とは違う。魔王は未だに人間を生かそうとしている。
奴隷として…家畜としての生ではあろうが。]
― 少し前 ―
さすがに自分の名前は間違えないな。ああ、呼びやすい方で呼んでいい。
[ 物怖じしない双子に、男も自然に言葉を返す。浮かんだ疑念を覆い隠すような無邪気な双子の笑顔に、少し、眉が下がった ]
─ 宿営地南 ─
[渓谷地帯よりも西、モーザック砦よりも南の平原地帯には、野生の馬が群れを作って住んでいた。
が、だから何、ということもなかった。
動物とて死ねば多少の触媒になるが、然程美味しいものでもないようで]
…帰るのか?
[呟いたヒトガタは、土がむき出しのなだらかな丘を選んで、転移の為の陣を描き始めた]
[その足元を影が走る。
西から東へ、太陽を横切り陽を遮った何か。顔をあげて目を細めた]
俺は今、鉄… 森エルフの村を訪っているところだ、 届かない。
[素早く言い換えたのは、瞬間、網を仕掛けてみようかと気持ちが働いたためだ。>>*100
コエを傍受できる魔軍側の術者がいるのか否か。]
呼んでいる名からして、向っているのはそっちだ。
なんとか身柄を確保して、縛っとけ!
ともかく、普通じゃない。
アイジン??
[ コエとして投げられた意味不明の単語は、どうやら先程のアイリの声を指しているらしい ]
ああ、リーは、俺の妹だ。愛人じゃない。
[ アイリと呼べば、双子にも或いは、その素性が判ったかもしれない。だが、男の呼び方はコエを通じても一貫している ]
「なにをしに来た、人間。」
[偉大なる鷲髭のゴルバは、鎧を身に着けた姿で使者の前に現れた。
もっとも他のドワーフたちも、よほど休息をとっているときか鎚を揮っているときでなければ鎧を身に着けている。
ゴルバは警戒を露わにしていたが、正式に接見を求めてきたものを即座に切り捨てるようなことはしなかった。]
[それともこれは、ディークという人間の男の意思なのか。
どちらでも面白い…人としての意思なら、より面白い。
馬鹿げたことを。と、やはり気配は少し笑い、
─────── ふ、と。
風が砂を散らして、それも*消えた。*]
[流れるような自然な仕草で
音もなく懐から毒の短剣を抜き出し、]
…――――。
[地を蹴り素早く距離を詰める。
翠と桃の二閃の凶器が、左右から、
息を合わせて皇子サマの首筋を狙って振り下ろされた*]
森エルフ?
[ ディークの返事に、首を傾げる。が、何か考えがあるように思えて、そこには言及せず ]
ああ、今斥候を出した。
そうだな...見つけたらすぐに拘束するしかないか...
[ あまり気の進まない手段だが、やむを得ない ]
……何が起きてる。
[どうやら離れた所で何事かあったらしいが、ここからでは手の出しようがない]
取りあえず、近場から当たるか。
[懸念がただの懸念ならいいがそうでなかったら、という思いがあるから。
一度止めた足を動かし、双子がどこへ向かったかを確かめ。
行く先を突き止めた途端、駆け足になっていた。*]
― 閑話休題 ―
おまえがいつ生まれたかは、さすがに知らないぞ。
だが今のおまえが生まれたのは、我がおまえを目覚めさせた時だ。
それは間違いない。
[興味を持ったらしきツィーアに、そう言う。
こちらに向いてきた問いには、小さく首をひねった。]
さあ。何をしていたと言うのかな。
物見遊山かなにか。
気が向けば人でも魔でも狩って好きに過ごしていたが。
[道楽であった。
生まれ持った力を背景に、思いつくままに生きる日々。]
[なお…短剣に塗られた毒は双子が育てられた蠍の一族謹製の配合なので、魔法ならともかく一般の解毒薬ではさっぱり効果がないだろう。
掠った箇所から、すぐさま肌が紫に変色していく猛毒だ。]
― 鉄底族の宿営地 ―
[槌の音響く中へ通される。
現われた鉄底族の長・偉大なる鷲髭のゴルバは、背は低くとも存在感のある勇士だった。>>297]
貴殿の炉の炎の絶えざることを。
俺は、ディーク・オラクル。
人間の王の息子にして、軍の総指揮であるロー・シェン・アウルム・ド・レオヴィルの使者として参りました。
ロー・シェンは、鉄底族の堅牢な誇りと武勇の噂を聞き、自ら仕合いたいと望んでいます。
[それぞれ2名の代表を出しての形式であることを簡潔に説明した。]
[男は祓魔剣を抜き放ち、
ヒトガタの傍で手綱を強く引き急上昇の動きを取りながら、右手で握った祓魔剣をV字の軌道で振り抜いた//]
[ 伝令のため、従者は傍を離れ、護衛の兵も他には連れていない、だから、双子が近付くのは、然程難しい事ではなかった筈だ。
しかし、すっかりヨセフの異常に気を取られてはいても、間近に迫った殺気には、男の武人としての神経が、意志によらず反応する ]
っ!
[ 左右から振り下ろされる短剣、その切っ先が、ディークの忠告に従って首に巻いていたスカーフに触れたぎりぎりの刹那に、後ろに飛び下がって、避ける ]
お前達...!
[ 同時に腰のクレイモアを抜き放ち、双子を睨んだ ]
魔王軍の、密偵なのか?!
[ 兵士ではない、そして、ディークやユーリエに近付き、ヨセフの懐に入り込んだ双子 ]
...まさか、姉上を殺したのも...お前達か?
[ 元々疑いを生じていたせいもあったろう。そこに思い至るのは、早かった ]
─ 鉄底族宿舎・使者訪れた頃 ─
決闘
[鷲髭のゴルバの元に人間が来た、と聞いてヒトガタは眉を寄せた]
…なるほど
[族長へ正式に接見を求めたならば、横から手出しするのは彼らの面子を軽んじたことになる。
そちらの方へ顔を向け、ヒトガタは少し思案した]
受けるかどうかも彼の裁量か
もし約定を交わし決闘を執り行うに立会人を求めるなら、俺が務めようと伝えてくださるか
[認められるかどうかはともかくとして]*
─────……テディ、
そうだ、 テディも
私が 私の手で
奪い返さねば ころさなければ
[新たなるコエ、新たなる名。
抱く目的がコエとして零れ行く]
だとしたら、逃がすわけにはいかん...
[ 剣を構え、双子を睨む、決して逃がさないという強い意志は、彼等にも伝わる筈だ* ]
/*
剣奪って殴るのが一番の近道なんだけど。
コエだと落としどころ難しいのだよな…。
テディ関連でこう、意識殴るような衝撃が与えられれば戻りそうなんだけど。
― 鉄底族の宿営地 ―
[使者の口上を聞いて、ゴルバはふん、とふいごのような鼻息を吹いた。]
「鉄底族が人間の挑戦を受けて怯むことなどない。
だが、
そのロー・シェン・アウルム・ド・レオヴィルは、ここに来るのか?
でなければ、全ては戦場で語れと伝えおけ」
[鉄底族は魔王の命令なくばこの場を動くことはない。
それは律であり縛である。
とまでは、語られぬこと。]
[ 届くコエを、今は敢えて意識に入れず、目の前の敵に集中する ]
(ヨセフ...)
[ けれど、胸の内側...魔将の残した傷の最後の名残とも言える楔の先端がきりきりと、刺すような痛みを、男に伝え続けている* ]
─ 平原 ─
[大きな鳥翼、あるいは黒竜が舞ったかと思った影は、
ヒトガタへ向けて飛翔の先を変えた>>302]
なんだ…?
[逆光、
いや、それすら凌駕する光る剣。
降り注ぐ殺気と捉えたヒトガタはその場で腰を落として身構えた]
……!
[急降下した獣の影が、眼前で鋭く動きを変える。
大きく飛び退ることはせず最小限の距離で躱そうとした胸の布地を浅く白刃が裂いた]
──っ
[間合いをとり身を守るよりも、狂猛に傾いて植えつけられた戦闘記憶が即座に反応する。
引いた足を軸に回転をかけて、人間離れした軌道で跳躍した。
急上昇するグリフォンを片手で掴み、地上を離れようとする加速度に逆らって騎手である男の背へ蹴りを放つ]
あはっ。だったらどうするんだい?
[矢継ぎ早の質問には、無邪気さとは異なる冷たい笑みを返し。
相手がクレイモアを抜く間に、双子も呪具の本を取り出し開いた]
…… 星は我らの
…… 『天は我らの遊び場』
いでよ流星!
『こわれちゃえー』
[途端、皇子サマの周囲を巻き込んで天から流星が降り注ぐ。
相手は間違いなく手練だろう。その相手に、体格の劣る自分たちが武器のみで渡り合う理由は無かった]
テディ……
[改めて相手へと向き直り、剣を構える。
普段愛用するクレイモアと異なり、この祓魔剣はロングソード程度の長さだ。
右手だけで握り、ヒトガタへと切先を向ける]
…奪われる前に、
[闇に翳る黒い瞳を向け、男は操られるかのようにヒトガタの胸へ突きを繰り出した//]
物見遊山…それは楽しかったか
[問いのようで問いでない波動]
つまりお前が私を見出した時に、私と共にあるお前も生まれたのだな?ならば好い
お前が変容させた私は、私の誇りだ
私はお前のためにあろう
お前の死を得る時までは
[永遠を誓う宣を告げる波は、嬉しげに揺らいでいた]
[挑まれて拒む鉄底族ではない、という読みは正しく、ゴルバは鼻息も荒く受諾した。
ただし、ロー・シェンの方から出向いて来いと。]
委細承知。
[コエで確認するまでもなく、ディークは応えた。
峡谷にはいろいろトラップが準備されているが、ロー・シェンも果たし合いにそれを用いようとは思うまい。]
戦場は族長がお選びください。
族長のおられる場所まで、ロー・シェンと副将は艱難を突破して参りましょう。
ロー・シェンは、鉄底族の武と誇りをこのまま魔軍に汚させておくのは忍びない、
彼が勝った暁には、是非、味方になってもらいたい、と申しております。
[一族もろとも受け入れる準備がある、と宣誓書を示してみせた。]
負けるわけがないのであれば、これを受けても害はないはず。
ロー・シェンからの表敬をいれると思って、諾とお答えください。
[ それでも、この瞬間、男は彼等に殺意は抱いていない。
捕らえて、姉姫殺害の真実を聞き出すことを優先と考えてもいたからだ ]
[ 駆けた先、双子に向けた刃は、呪具を持つ腕を狙って揮われる// ]
……っ!
[天から不意に星が降る。
それが行こうとしていた先に落ちるのを見て、息を飲み]
おにぃ、無事っ!?
[最後の一駆けと共に上げた声は、呼び方共々完全に素だった。*]
[落獣した男に続いてグリフォンから飛び降りれば、獣は鳴きながら上空へ一度離れていく]
…ヨシュか?
[片手剣を抜いたヒトガタは、ぽつと呟いた。
体を傷つけなかったはずの胸で、しゅうしゅうと薄い煙を吐いて魔法鉱石が表面を溶かしていた]
[男が口にする名>>314は、彼が親友を呼ぶ時に用いたもの。
相手を眺め、切っ先の軌跡を追う]
……うばわれるまえに
[突きの動きで迫るそれをまともに受ければ、どうやらこの体は容易く破壊されるよう。
だが、相手の動きには記憶にある彼の剣技の鮮やかな精彩──怜悧さが足りないと見えた。
突きを躱すのはやはり紙一重。体のどこかに熱が走る。
踏み込み、すれ違う動きで胴へ向け剣を振るった。
黒のプレートメイルへのそれは斬撃というより力任せの打撃に近くなる]
[避けられないと悟り、双子は呪具を持つ腕を見捨てた。
どちらのか、それとも両方か、クレイモアで抉られてごとりと片腕が地に落ちる。
ひかりのイキモノらしい赤い血を撒き散らしながら、
痛みも、我が身を顧みず皇子に肉薄して、]
――今度は外さない。
『苦しんで』
[毒の短剣を、今度は至近距離で振るった]
[委細承知と発する人間を、ゴルバは髭を撫でながら睨む]
誇り高き鉄底の一族は、常に最も激しい戦場にいる。
いつでも来るがいい。
[これで接見は終わりだとばかり、族長は人間に背を向けた。
その後で氏族の若者が念のためと果たし状を受け取った。
そのまま、宿舎の出口まで案内する。
拒まなければ、そのまま魔軍宿営地の端まで共に行っただろう。
鉄底族にちょっかいを掛けようという亜人は、そうそう多くは無い。]
[狙いなどつけられなかったから、結果がどうだったかは分からない。
でも相手の刃が襲ってきたから、
ああ、……失敗したのかな、なんて、*思った*]
……、…ねえ、先生。
『…お願いがあるの』
次の誕生日の…おくりもの、
『おねだり――してもいいですか…』
[途切れ途切れになりながらも、繋がりたくて…声を、紡ぐ]
あのね、…このお仕事を終えたら、
『先生のお傍に…もどったら、』
ボクと…ローズマリーの……頭を
『……なでなでして、ほしいな――』
[それはニンゲンの…ヨセフの家で見た光景だった。
ヨセフが、ヴェルザンディが、息子二人の頭をいとおしそうに優しく撫でている風景――。
なぜか、それがずっと心の底に残っていた]
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