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埋もれし一葉 は 皇子 ロー・シェン に投票した
魔王 カナン は 皇子 ロー・シェン に投票した
皇子 ロー・シェン は 皇子 ロー・シェン に投票した
亡国の将軍 ヨセフ は 皇子 ロー・シェン に投票した
銀月牙 アイリ は 皇子 ロー・シェン に投票した
魔将 シメオン は 皇子 ロー・シェン に投票した
破光装置 クレステッド は 皇子 ロー・シェン に投票した
流離の勝負師 ディーク は 皇子 ロー・シェン に投票した
長耳双子 ローレル は 皇子 ロー・シェン に投票した
皇子 ロー・シェン は村人の手により処刑された。
今日は犠牲者がいないようだ。人狼は襲撃に失敗したのだろうか?
現在の生存者は、埋もれし一葉 、魔王 カナン、亡国の将軍 ヨセフ、銀月牙 アイリ、魔将 シメオン、破光装置 クレステッド、流離の勝負師 ディーク、長耳双子 ローレルの8名。
もう終わりだね。終わりかな。
種は死なない。眠るだけ。蛹はいつか目を覚ます。
冬の寒さに凍らなければ。春の日差しを吸い込んだなら。
焼けた大地に芽吹いたら?
大きく育って、最初の緑になるでしょう
枯れ果てた森で羽化したら?
飛び立って、新しい森を見つけるでしょう。
世界全部が腐っていたら?
それは駄目かもしれないね。
どちらかな。どちらだろう。
楽しみだね。楽しみだね。
─── 森の端で詩人が書き留めたメモ
魔将 シメオンは、流離の勝負師 ディーク を投票先に選びました。
魔将 シメオンは、皇子 ロー・シェン を能力(復活)の対象に選びました。
流離の勝負師 ディークは、流離の勝負師 ディーク を投票先に選びました。
[魔王の背だけを見て、離されないように歩いていたヒトガタの視界にも、狩りを行う竜の姿が映る]
…
[獲物を爪に掴んだ竜がこちらへ来れば。
魔王に寄り添うように侍り、背後を振り返ろうとする代わり、騎士の顔を一度見た]
長耳双子 ローレルは、流離の勝負師 ディーク を投票先に選びました。
破光装置 クレステッドは、流離の勝負師 ディーク を投票先に選びました。
/*
でふぉはヒトガタさんでありました。
さて、襲撃されるのだね……。
とりま、今日はにんげんしないとまずいんで、マスターにお返事して寝よう、うん。
亡国の将軍 ヨセフは、流離の勝負師 ディーク を投票先に選びました。
[無限にループする廊下をひたすら歩いている己の姿を想像して、あまりの馬鹿馬鹿しさに声を上げて笑った。]
それではまるで、鼠のようではないか。
奴らを車輪の中に入れると、永遠に回し続けるというぞ。
[鼠と言っても頭の中にあるのはコボルトどもが飼っている巨大なものだし、それにしたってよくは知らない。]
第一、同じ場所を歩いていては飽きるだろう。
……ふ。
歩いているよりおまえやナールの上にいる方が、見えるものも面白いのは確かだな。
魔王 カナンは、流離の勝負師 ディーク を投票先に選びました。
埋もれし一葉 は、銀月牙 アイリ を能力(襲う)の対象に選びました。
銀月牙 アイリは、流離の勝負師 ディーク を投票先に選びました。
[色めき立つ騎士たちを無視して、魔王は人形と共に黒竜の背に戻る。
残された騎士たちは、すぐに使命を思い出して守るべきもののところへ走るだろう。
炎揺らした苦鳴は、彼らも聞いていたはずだが。
いずれにせよ魔王は気に留めることもなく、己の城へと帰還した。]
これ。を狙ったか?
[ゆらと腕を動かせば、闇の中に魔の後背を狙ったカードが浮かび上がる。魔は嘲笑うように唇の端を上げ、ディークめがけて腕を振り払った。]
狙いは悪くない。
……が、足りないな。そら、
[笑み含んだ口調とは裏腹に、闇にとらわれたカードは鋭くその主へと飛翔する。]
/*
Σあ。
阿呆はボクであった。
焦ってログ読んで空目してたああああああああ。
>>2:*55と>>2:*56が混ざってしまって、全部ヨセフ宛に見えちゃってたorz
なのになんでディーク聞こえてるのかな、って
そこから混乱に…。
はわわわ、すまないすまない。頭が寝てるな…寝よう。
……
[疑問系の間が空く。
鼠と豚の見分けもつかないなりに、大きな車輪の中で夢魔を侍らせ、優美に紅のグラスを傾けながら車輪を回し続ける王の姿を想像した]
…見たい
見飽きる気がせぬ
[絶対面白い奴ではないか]
…そうか、私がナールに乗るのは初めてだ
お前と同じ視点を得られるのは喜び
[ツィーアに飛行機能がついたなら。いやそれ以前に、ツィーア本体に視覚があれば、また世界の色づきは違ったものへと変ずるだろう。
ナールの背、人形の眼で夜の大地を見下ろせば、感じ入るように声を響かせた]
[赤紅よりも更に奥。
ロー・シェンが居るだろう場所に目を凝らす。
倒れる彼を運ばんとする魔と、いつの間にかやってきたディークの姿が見えた。
気付けば上空でグリフォンが男を呼ばうように鳴いている]
、 諦めては いない
諦めない
[確かめるように呟く。
まだ誰も、諦めてなどいない]
ディーク・オラクル
[硬い呼び方で呼びかける]
ロシェを、
[取り戻さなければ、と続けようとして、左肩の痛みに向けようとした言葉が途切れた]
…届くか?
[痛みを堪えながら、自分よりもロー・シェンの近くに居るディークへと問いかける]
[俺に会えて悦んでいるような。
シメオンの声に、眉間にしわが寄る。
ディークが飛ばした2枚のカードは防がれて、あまつさえ、シメオンはその一枚を打ち返してきた。
カードはディークの前で急上昇した後、その掌に戻ってくる。
と、深紅がポタリと滴った。
バンダナが切れて落ちる。]
──…っ、
[夜風に晒された額中央の青痣は鮮やかさを増して、いまにも本当に視力を得そうなほどだった。]
[ 沈んだ青い闇の先、男の魂を、捉え、縛り付けようとする鎖 ]
[ けれど、淡く輝く真珠色の月光がその鎖を阻む ]
うん?
そうか?
さして面白くはないと思うがな。
[ツィーアが考えたことなど、想像の埒外だ。
もし知ったなら、暫くは唖然とするだろう。
その後、大笑いするか怒り出すかは、その時次第だ。]
諦めないって、何をだよ。
[声を届けてきたヨセフに、反射的に返すのは、倒れたロー・シェンへの問いだ。
12のときに出会ってから──
自分でもしかと把握できないほど、ロー・シェンを深く求めていたゆえに、目に見えぬ傷は深い。]
[人形の目を通した光景に、ツィーアが感嘆を表す。
その喜びを好しとして頷いた。]
いずれは、おまえだけが我と同じ光景を見ることになる。
[どこまでも、どこまでも無が広がる光景を。]
―
[移動城塞へ戻った魔王は、すぐさま人形の改良に取り掛かった。
大抵のことはすぐに飽きる魔王だったが、ツィーアを調整し、改良する作業だけは飽きたことが無い。
例えて言うならば、機械弄りが趣味、というところか。
ナールが獲ってきた騎士は既に絶命していたが、さして問題はなかった。
魔力を以て体に残る記憶を分離し、流動鉱石に染み込ませる。
以前は姿形も記憶させたが、今回は運動能力に関する部分だけだ。
選択的に記憶を抜き出す作業に、やや手間取る。
己にとっても、これは初めての試みだった。]
― 魔法兵器 ―
[核と、我が王を迎えて城は滲む魔導の光を金へと変えた。
顎を開くように竜を迎え入れれば、一層塔の高みは威容を強くする。
再び王の居城へ復帰した魔法兵器は、低く咆哮に似た駆動音を鳴らした**]
[シメオンのように屍術に精通しているわけでもなく、
かといってゴーレムや魔導機械を得手としているわけでもない。
この魔王が持っているのは、膨大な魔力を道具として、己が望むものを望む形に変える才だ。
だからこそ、強大かつ複雑すぎて誰も手を付けなかった魔法兵器を制御できる形にまで変えてみせたし、今までなにものも思いつかなかった方法で人間の姿と記憶を留めた人形を造り出すことに成功している。
理論はない。ゆえに、魔王自身以外には再現できぬ。
まさに天賦の、否、悪魔の才であった。]
ロシェは戻って来る。
必ずだ。
彼がそう言った。
[ディークから返された言葉を受けて、男は彼に断言する。
正しくは途切れていたが、男にはそう言っていたようにしか思えなかった]
あの状況で尚、ロシェは諦めていない。
何と言うわけではない。
失いかけているもの全てをだ。
[奪われんとしたその命でさえも]
あの魔は確かに死者を操る者だが、ロシェが死んだとはまだ決まってはいない。
お前は確かめもせず諦めるのか?
何もせず失うことを是とするのか?
[男は挑発するようにディークに問う]
お前───
次に会ったら、いい「材料」にしてやろうよ。
仲間とも会えるかも知れないな、楽しみにしておいで。
[ひょっとしたら、元仲間はもう人間どもに切られたか潰されたかしているのかも知れないが、そんなことはこちらの知ったことじゃない。
ヨセフに対したときと同じく、魔は魔の論理での”親切”を笑顔で口にした。]
「なにを、するんだ」
[魔王が気に入った人間の男の声で、強張ってなお整った顔で、ヒトガタは囁くように呟いた。
騎士の屍骸から何かを取り出すおぞましい作業を、その場に留められて銀瞳に映す。
新しい記憶を刷り込ませる"改良"の作業に至ったならば、ヒトガタの記憶は明らかな拒絶の反応を示し、儚くも頑迷な抵抗を試みてみせただろう**]
[ コエが届く...それは、ここが「別の場所」であるからか...元の場所では聞こえなかった筈の、二人の間で交わされるコエ ]
ディーク...
[ どこか傷ついて聞こえる、友のコエに、眉を寄せ ]
ヨセフ...
[ 己の想いを、汲み取らんとしてくれる兄同然の騎士のコエに、安堵の息を零した ]
[耳障りな哄笑が響く。
魔が消える前にも間に合わなかった男は強く表情を歪めた]
取り戻さねば…!
[戻るとすれば魔軍の陣か。
ともすればこのまま向かわんとする男を騎士の一人が押し留める]
「将軍、治療が先です!」
[その言葉でディークにも男が負傷したことは伝わろう。
騎士の一人から出血を止めるだけの魔法を施された後、男は短く息を吐いた]
[ローレルからの報告により砦への移動は順調に行われていることが分かっている。
後方はひとまず何とかなると考えて良いだろう]
…ディーク・オラクル
[硬い呼び方でディークを呼ばう。
如何にする、とは見遣る視線が問うていた**]
[シメオンが闇の中に消えてゆく。>>15
彼の身から噴き出していた瘴気が薄れて、息ができるようになる。
ディークが殺されずに済んだのは──ひとえに、シメオンが、手に入れたロー・シェンに夢中だったからに過ぎない。
ディークに"親切"を宣うほど、ご機嫌だった。]
畜生…!
[吼えた。]
皆が笑って暮らせるように、って、それが望みだったろう。
…だけど、おまえが居ない世界じゃ、俺は笑えない。
[応えの返らないコエは虚しく響く。
世界がまた一段と昏くなる。]
[そこへ、騎士たちを引き連れてヨセフが到着した。
その身もまた、満身創痍の態だ。
彼らにも、ディークがシメオンに攻撃をしかけた場面は見えたらしい。
でなければ、ロー・シェンをシメオンに差し出したと受け取られてもおかしくはないところだった。
もはやコエには頼らず、直に視線をあわせる。]
一番、抜かれちゃならないところを抜かれるとはな!
[こんな言い方は、酷だ。
ヨセフが戦線を維持するために奮闘したことはわかっている。
それでも、感情を剥き出しにした。]
まだ死んだと決まったわけではないと?
[シメオンが施した魔石片の魔法陣を蹴り飛ばす。]
は! あのシメオンって男は、人体実験マニアでネクロマンサーだ。
あいつの手にかかって、無事だったやつなんていない。
[言ってどうなるものでもないのに、止められない。
ああ、俺は、怖いんだと── 止まらない震えに、ようやく気づいた。]
[ヨセフに名を呼ばれた。>>18
向けられた強い眼差しに、硬質な声に、彼の不屈を感じ取る。
彼とて、ロー・シェンを奪われて平気なはずはない。
だが、ディークとは背負うものが違う。]
──…、 ああ、失念していたよ。
[深呼吸をひとつして、ヨセフの前に進み出た。]
[努めて丁重で現実的な言葉を選んで告げる。]
僭越ながら、ご指摘申し上げます。
現況を鑑みるに、ヨセフ・トネール・ド・モンテリー殿下、あなたが対魔連合軍の指揮を執らねばなりません。
砦へ戻り、敵の再来に備えていただきたい。
[少し離れたところにグリフォンが待機している。
ヨセフにはそちらを示し、自らは踵を返して、北へ向いた。*]
─ 魔都シラー ─
[峻険な岩山、その間を埋めるように作られた質実剛健の都は堅牢にして秀麗
嶺の遥かより射す朝陽を浴び耀くシラー城は、その威容を詩人の朗唱にも讃えられたもの
それはもはや、かつて、の冠を頂く
あの日、夜空に魔王の姿が浮かび上がった陥落の日以来]
[ もしも。
声に出したことはない。
確りと、そうだと思考したこともない。
己自身でさえ意識しないほどの淡い想像がある。 ]
[ ── もしも。
世界を無に帰す夢想に浸ったあと。
意識及ばぬ思考の端で、もう一つの夢想が揺らめく。
……もしも。自分が死んだなら。]
[世界を無に帰す前に、自分の存在が消えるなら。
その時は、己の死を糧にして、
破滅の環の最初の火を放たせよう。
枷を解く鍵は、 ただ、ひとこと [ ]───]
["改良"の作業を傍で見る人形の嫌悪は、忌避は、困難な作業に没頭する魔王に楽しみをもたらした。
この素体の本質が"改良"によって損なわれては面白くない。
記憶を抽出し、選別する作業にも熱が入る。]
[作業の途中、魔王はあることに気づいて手を止めた。
人間の騎士という連中は、
大なり小なり、今の素体と同じ気質を持っているのではないか。
護るための剣、などという戯言を真面目に口にするような。
素体の壊れやすさの原因が非好戦性にあるのなら、この騎士の記憶のみを増やしても、戦闘技能の向上には役に立てども問題の解決にはつながらない。
ならば、と思い立った魔王は作業を中断して外へ出る。]
[かつて、王都シラーの西広場と呼ばれた高台からは、モンテリー北方山地と、護りの要衝マルサンヌの壁が見晴らせた。
今の西広場から見えるのは、山脈の形さえ損なうほどの大きな傷跡を晒す谷。
攻城兵器の閃光が全てを消し飛ばした後、マルサンヌ周辺には深い瘴気が立ち込めたままだった。
けれど恐怖と共に西の地を眺める余裕のある住人すら、もはやこの街にはいなかった。
疲れ果てた表情の奴隷たちはひしめくように立たされ、広場の中央を見ている。
物々しい監視塔の管理下、広場中央に高く設けられてあるのは奇怪な処刑台だった]
「…抵抗運動と …」 「可哀想に」
「ほんとうに…?」
「ああ」 「蜂起を企んだとか ……」
「まだこども … 」
[ささめくような噂話。
反乱分子や"犯罪者"の拷問、処刑を娯楽と受け取り歓呼するのは、この街に流入した闇の亜人達ばかり。
人間の家畜や奴隷にとっては、苦難の日々に重たい無力感を重ねるだけの見せしめが連日のように行われていた]
「聞いたか、レオヴィルの…」
「善戦 …らしい」
「殿下が」 「王弟殿下 …」
「セミ …川」 「勝 、と」
[ひそひそと交わされる噂。
真偽もわからない、水底に沈みながら掴む藁のような話。
けれどまだ、精強な軍と質実剛健、不撓不屈の精神で知られたモンテリーの民は、
恐ろしく暗い闇の中で微かほどにも見えない希望を、忘れ捨ててはいなかった。
やがて西広場に、名もなき誰かの断末魔の叫びと血臭が迸った]**
あ、大丈夫。さすがに全部毟るとは言わないからさ。
『そんなことしたら殺されちゃいそうだもの』
ひと房でいいんだ。綺麗だからちょこっとね。
『シメオンのおじちゃんの髪を飾りにするのよ』
[双子は既に両手をわきわきしている。
シメオンの反応はさてどうだったか。ともあれ最終的には銀の髪がひと房、双子の手に齎された。
それを房ごと縛って、飾り紐に結んで腰のポーチに引っ掛けた。
仄かな魔力が揺れてきらきらと美しい。双子は御満悦だ]
そうそう、そのお土産ね。
『どこかでヨセフに会わせることが出来たら嬉しいわ』
シメオンのおじちゃんなら
姿カタチ残したままアレコレするの得意だろう?
『期待してるの』
[だから持ってきたのだと言うだけいって、
ばいばいと双子は賑やかに去っていった*]
[そろりそろり…と双子は物陰から姿を現した]
ごめんね。やっぱり気になっちゃって。
『途中で戻ってきちゃったの』
[ヨセフに怒られる前に先手を打って謝っておく。
周りに気づかれないように引き上げる手もあったけれど、
この緊迫した空気の中で下手に動くと、かえって目立つし怪しい。
それならば堂々と姿を見せた方が怪しまれないだろうという判断である]
/*
ローレルの連投を待ちつつ
そういや今日ね、夢の中で「すごい眠い…」ってうとうとしてる夢を見まして()、挙句こんな灰を白に誤爆したァ!!!!って夢を見てねww
うわ…と思って起きちゃったので、うわ…
きちんと睡眠はとりましょうねww
― 魔軍陣営 ―
[獲物を手に帰還した魔は、実のところ少々疲れていた。
それはそうだろう、滅多にやらぬ立ち回りを演じた挙句に(僕をして珍しい。と思わせたほどだ。)、膨大な魔力を消費したのだ。
ある程度までは自ら望んで溢れさせた魔力であったが、それにしても、この獲物───ロー・シェンがつけてくれた傷は、中々のモノだった。これも精霊の加護の賜物か。微妙に塞がりきらぬ傷のあとから、今も僅かに魔力を染み出させ、魔は僅かに肩を竦めた。
時間がたてば収まる。
ただ、少しばかりの時間は必要となるだろう。]
ふふ。ふふふ…
[それでも魔はご機嫌だった。
言うまでもなく、特上の獲物を得たが為である。
さてこれをどうするか、すぐに殺して蘇生を試してみても構いはしないが、出来れば多少の準備がしたかった。
失敗は許されない。同じ素体は二度とないのだ。]
どうだい、アイリ?
”これ”はお前もお気に入りだろう。
そうだなあ、お前はどうしたらいいと思う?
これと一緒に戦いたいかい?
いっそこのまま、これにも首輪をつけてしまおうか。
あのヨセフとやらの顔が見物だろうなあ。
[これまでにない機嫌の良さで、珍しく僕にまでこんなことを聞いた。別段意見を求めているわけでもなければ、意見したところで聞くかどうかも気分次第といったところであるが。]
[ともあれ獲物は横たえられ、天幕の中に安置されていた。
酷く目立った傷はなく、血が流れ汚れているわけでもない。
多少衣服や肌が汚れているようではあるが、これはむしろあの場で戦いを演じたにしては軽微と言っていいだろう。
ただ。その胸元には、漆黒の楔が打たれてあった。
紫じみた暗い魔力を帯びた楔だ。
人の手の触れられるものではなく、人の手で抜けるものでもない。
僕の首元の石にも似てやや異なるその魔石の塊こそが、ロー・シェンを沈黙の檻に捕らえ続ける楔であった。
楔は僕の首の石同様、シメオンの意思によらずに外れるということはない。魔将の魔力続く限りそこにあり続けるのだ。
───つまり、永劫に。]
… そうだ、ヨセフだ。
[ぽん。と思いついた様子で魔は顔を上げる。
殆ど独り言のようにして勢いよく言葉を続ける。]
ヨセフがいいな。
やはりあれを獲って来て、先に使おう。
やっぱり実験には万全を期さないと。
あのカード使いも悪くはないな。あれも居たら獲ってしまおう。
[勝手な計画を立てて、一人頷く。]
そうそう。ヨセフには女も会わせてやらないとねえ。
だってあんなに会いたがっているんだし。
[双子の願いだし、と言いはしない。あれはついでだ。
あの狂った魔王の拾い子たちが、何を思ってああ言った>>33やら、シメオンは知りもしない。
笑って見遣る視線の方向に、一人の青ざめた女がいる。
魔の言葉に反応したように「ヨセフさま…」と唇を動かした。
血は流れてはいない。腐ってもいない。
ただ心臓は鼓動を打たずに、唇は息をしていない。
心臓の代わりに胸に埋まるのは、例の黒い魔石だ。
意思はなく、ただ壊れた人形のようにみっつの言葉のみを繰り返す。
ヨセフと、ロヴィンと、ベルティスと、大切なみっつの名前を。]
……やれやれ。
どうしたらあのお方は、ああも見事に記憶を拾い上げるのか…。
記憶と意識と肉体と。
人間というのは下等なくせに、難しくて面白いものだ。
[なかなか死人形の再現に至らぬ屍術遣いの魔は、そこだけ心底人間というものに感心した様子で息を吐き、僕へと目を向けた。]
お前はもう行けるかい?アイリ。
少し休んで準備を整えておいで。
人間どもも混乱しているだろう、間を置かず出る。
お前も、いつでも出られるように整えておおき。
[気遣う言葉は、この便利な僕が充分に働けるようにと考えてのことである。あまり疲れさせては、効率が落ちる。
そうして魔は、目を閉ざす獲物に再び振り返ってその額を撫でた。
肌は、少しひんやりとした死に近い*心地がした*]
[魔王様やシメオンがニンゲンの素体を好むのは、
その煌いた魂の価値の高さゆえかもしれない。
双子はやっとそれを知った。
…そういった感慨を口にすることは勿論ないけれど、でも]
あのさ、皇子サマは――すごく強いヒトだね。
最後まで、あんなに…。
『もっと、おしゃべりしてみたかったわ』
[しんみりヨセフに呟いた*]
― 回想 ―
[軍学校の寮では、野営の訓練も兼ねて、生徒自身が食事を作る期間があった。
家では母親に任せきりだった、とか、料理人を抱えている良家の坊ちゃんの料理はさんざんだったりする。
そんな中で、ロー・シェンとディークの料理は、すこぶる評判が良かった。
スパイスを効かせた保存食中心のローグ料理と、新鮮な野菜がメインの教会料理を、ブレンドしてみようか、と誘ってきたのはロー・シェンの方だったと思う。
今でも、後輩たちにそのレシピは引き継がれているはずだ。
もっとも、オリジナルにはとうてい敵わないだろうけど。
国を出て、残念だったことのひとつは、ロー・シェンの手料理を食べられくなったことだった。
旅の途中で、ローグの民と会って食事を相伴して、懐かしさに泣きそうになったこともある。
ユーリエ姫には「スパイスの塊を噛んだ」と言ったのだけど、静かな微笑を浮かべた彼女は見抜いていたのかもしれない。
余談だが、双子は手持ちの品とスパイスを物々交換していた。
翌朝、宿で飲んだ茶にディークは激しく咳き込んだ。*]
― 移動城塞
[再び己の居城に戻った魔王は、ツィーアに進むを命じた。
燃え落ちた野営地を眼下に望む位置まで動かしたところで、移動が止まる。
当初の攻略目標が既に燃えて無くなったと知った魔軍も、三々五々周囲に集まり始めた。
楽しい"作業"を中断して魔王が玉座に姿を現した頃には、すでに殆どの軍が集結している。
見渡す魔王の眉間に、不快と喜悦がともに漂った。]
そこの。
他の者はどうした。
直答を許す。
[声を掛けたのは、紫毒の戦士にだった。
大蜘蛛だけを連れてただ一匹で戦列の端にいる。
彼が怯えながら奏上するを聞けば、紫毒の戦士は彼を除いてすべて死んだらしい。
エルフが、という言葉に魔王の眼差しに稲妻が走る。
だがすぐに怒りを見せることはしなかった。]
[狡猾で卑怯で臆病なゴブリンが、殆どの仲間を失ってなお魔王の前に姿を見せたのは、全員が現れなければ逃げたとみなされ、魔王の不興を買って一族すべて殲滅されることを恐れたのか。
あるいは、そんな利他の意志など無く、唯一生き残った強者にはなにか褒美があるとでも期待してのことか。]
なるほど。
ならばおまえは、直接我が使ってやろう。
[笑みとともに告げれば、ゴブリンは歓喜を見せる。
近衛に取り立てられるとでも思ったか。
魔王の前に引き立てられる頃には、考えも変わるだろうが。]
[次いで見たのは、狼牙の一族だった。
こちらも数は減らしているが、まだ部隊としての形は残っている。]
逃げた、と聞いた。
[魔王の一言に、空気が凍り付く。]
[氏族の長が、赫然として抗弁した。
逃げたのではなく、戦っても無駄な相手を避けただけだと。
彼らはオークではあっても、戦闘と殺戮の才に関しては誇りらしきものを持っている。
それを傷つけられて憤激する族長を冷ややかに見下ろし、つ、と指を向けた。]
ならばおまえにしよう。
おまえの命を以て一族の失態は不問にしてやる。
───次は無い。
[狼牙の長が捕えられるさまを見ることはなく、魔王は居城の中へと戻る。
素材が運ばれてくるのが、楽しみだ。]
[このとき魔王が鉄底族に手を出さなかったのは、魔王にとってもこの岩妖精たちが少しばかり扱いに注意を要するものであったからに過ぎない。
魔の間で生きるため魔の倫理に染まったとはいえ、姿形が変わるほどには歪んでいない。
鉄底族のドワーフは狼牙族に輪をかけて頑迷で誇り高く、族長たる偉大なる鷲髭のゴルバは一族に向けられた侮辱を決して許さず、氏族の結束も固い。
今は自分たちの王国を得るという一族の悲願達成のために魔王に従っているが、魔王と言えど彼らを恣に扱うには氏族すべてを殺しつくすしかない。
その気になればこともなく彼らを滅ぼすだろうが、今のところは必要もなかった。]
[エルフの戦士が現れた。
そう耳にしたとき、魔王の怒りは他へ向いていた。]
おまえたち。
エルフどもは、どうしたのだったか?
[問いではない。糾弾でもない。
声が示すのは、冷ややかなる不興だ。]
/*
わかめ……
そしてディークめ、ぐっさり刺してきおってww
シラーまで手が回らずすまない。
[ありがたすぎて移動要塞を拝んでいる]
[魔王の前に引き立てられたオークとゴブリンは、騎士と同じく死体へと変えられ、記憶の欠片に分解された。
狼牙の狂猛。紫毒の狡知。
これらが持つ卑しく愚かしい性質までは注がぬように。
素体が持つ高潔で慈悲深い、魔が愛する玩具としての気質が歪まぬように。
取り出し分解し組み立てた魂のパーツを、人形へ流し込んでいく。]**
………あぁ、彼は 強い。
強くなった。
[5年前のあの日から、格段に]
話してみたかった、か…。
───必ず叶えてみせよう。
[ロー・シェンの言葉を信ずる男は、しんみりと呟くローレル達に誓うように紡いだ*]
─ セミヨン南〜野営地痕 ─
[再び王の城となった魔法兵器は、ゆると進む。
転がる馬の骸、バラバラになったアンデッドの肉塊、それら戦火の残滓を踏み砕きながら。
やがて、人間の陣が敷かれていた付近まで進み、仄かに光る煙を天へと吐き出した。
最後まで撤退せずにいた人間達も既に砦へと逃れていたか、平原に集まるのは魔の軍勢>>44]
[玉座を仰ぎ見る魔の者共は、世界すら統べんとする王の姿をその眼に見。
その冷酷と寛大さを改めて魂に刻むだろう。
玉座の近くに、ヒトガタの姿はなかった]
[やがて愚かなゴブリンが一匹と、狼牙の長であったオークがツィーアの足元へ引き立てられると、重低の唸りをあげて門を開く。
跳ね扉のような動きで開いたツィーアの口へ、闇の亜人2体が押し込まれると、その奥の闇に青白い光が灯った。
素材と選ばれたそれらは、モンテリー王達のように残り滓を排出されることもなく。すなわち永遠に戻ることはなかった]*
[人の上に立つ者の声で、ヨセフが同道を求めた。>>53
足を止めはしたが、ディークは首を横に振る。]
しばらくひとりにしてくれないか。
本当に、ロー・シェンが死んだか確かめに行くだけだ。
言っておく義理もないが──
ロー・シェンが死んでいたら、俺はもう戻らない。
[その場に現われた双子とヨセフが顔見知りな様子を見て、子供たちの交遊範囲の広さに驚くと同時に──わずかに、チリリと灼けるような直感に目を細めた。**]
『えっ、あの……せん せ、』
エルフの森の聖樹は、枯れさせたよ…っ
『だから残ったエルフたちだって、もう長くは…』
[いやちがう。知っている。魔王様が言いたいのはそんなことではない。
自分たちに課されたのは森のエルフたちを片付けること。
なのに――…おそらくしぶといエルフの残党が“邪魔をした”のだ。
双子の完全なる失態である。]
ご、ごめんなさい先生!
『ごめんなさい…っ…』
ちゃんと、ぜんぶ、壊しておけばよかった。
『足りなかった…足りなかったの…』
[ぷるぷると小刻みに震えながら、
聞き届けてもらえるとは思えない謝罪の言葉を繰り返す]
/*
今日死んでてほんとに良かった。(死んでません)
まあ、週末こうなるのは目に見えてたよね。(残業でした)
ディークwwまた盛ってきやがったなwwこの食いしん坊さんめ!>>*7
わかったよ!復活したら料理作ろうな!
[弱々しくも頑迷な拒否の言葉。
ヒトガタの抵抗は王にとっては児戯にも等しいだろう。
圧倒的な力で組み敷かれ、流し込まれる何かに紛い物の自我が焼け付く感覚、
啜り泣くように 「それだけは」 と喋った]
「ガ……っ ぐ、う ルル
ぎ 」
[本来混じり合うことない魂のパーツ、それこそ拒絶しあう反発で記憶が壊れ砕けるのが当然の荒業。
誰にもなし得ぬ不可能を可能にするのは、魔王の膨大な魔力と、ずば抜けた才気のなせることだった]
面白そうだ、ラーグ
……むぅ
[高負荷に耐えかねて悶え苦しむヒトガタの裡で、チリンと核が鳴った。
どうやら、五感に直接働きかけがある類の"仕置"の方がこれより楽しい、と気づいて。
ヒトガタを改良するためだ、と納得はしているが]
触れられたい、もっと
私にもわかるよう
[もがき伸びた流動鉱石製の腕が、王に縋り付くように指を曲げた]**
/*
ただいまー、ああ、魔軍の陣営ね、確かに謎だと思ってた。魔王様砦の真ん前なんだけど、シメオンどこに帰ったの?
[ というか、俺の身体はどこだ? ]
/*
んああああ。
可愛いだろ。ほんと可愛すぎだろう。
あああもうう、双子の子らとかもっとちゃんといじめたいし、じっくりたっぷり陰険にねちねちやってもいいんだけどそれじゃ先生の威厳無くなっちゃうから突き放してみたらぷるぷる震えちゃったりしてほんと可愛いなあおい。
今から飛んで行ってよしよししたいようう!!!
/*
ツィーアはな!ツィーアはな!!
あと30回くらい壊してもいいですか!!!!
その!指とか!!!ずるいぞお前!!!!
このまま押し倒してハアハアしてもいいですか!!!?
あああもう。ここが大人にゃ村ならひたすら桃色に引きこもってあれやそれやしてるところだよ!!!
[帰還した軍にはエルフの戦士達も合流していた。
大鹿が馬と共に休息を取り、人の集団からは離れた位置にエルフの戦士達が集う]
助力感謝します。
話はお聞きしました。
[砦へと戻った男はエルフの戦士長へと声をかけた。
エルフ達が王国軍へ加勢してくれる理由は、先に彼らと合流した副官から聞いた。
それについての詳細を聞く]
なんと、貴方方以外は皆……。
私には森の民の友がいます。
その子らは運良く難を逃れたのですが…。
森を侵されたことを他人事には出来ません。
必要な物資があれば遠慮なく仰ってください。
共に魔軍を討ち果たしましょう。
[指揮官としてよりは、友の友、と言った思いでエルフ達を受け入れた]
ローレル、ローズマリー。
……ミュスカの森のエルフの郷が、壊滅したそうだ。
[そ、と双子にコエを送る。
彼らが為したこととは知らず、案ずるように]
[男は長らく黙って夜闇を見ていたが、徐に拳を握り締めた]
────っ!!
[ダンッ!と、ずっと仕舞いこんでいた感情を城壁にぶつける。
5年前親友を失った。
1年前ユーリエが殺された。
今、目の前でロー・シェンが連れ去られた。
国を失い、兄を、家族を喪い、己だけが残されている]
[込み上げる悔しさを城壁への一撃に込めて、必死に己を律した]
[ディークの差配は手際よく、分かりやすく兵達に伝えられたため、程なく砦の防衛準備は完了する。
時が来るまで、または出陣が決まるまで、兵達は束の間の休息を取った。
砦での主力は弓兵や歩兵となろう。
騎兵も砦では歩兵として戦いに参加する予定だ。
チリとした緊張感が砦を包む]
[男はロー・シェンが連れ去られたことを知る者に緘口令を敷いた。
魔軍に連れ去られたことが広まれば、軍全体の士気が落ちるのは必死。
不在の理由は自ら斥候に出ているとした。
以前より己が目で見に行くことが多かった彼のこと、一時的には納得を得られるだろう。
だが長くは持たないことは明らかだった]
[夜明け前の空は最も暗い]
[その暗闇の中、男は
……戦士としての技量は、十分すぎる。
[そんな言葉が口をついたのは、あの、舞うが如き動きを思い返したが故]
それを生かす術があるならば、どうなっても面白い……というか。
マスターの益になるとは思う。
[そしてどうなっても、あの黒き将の心を波立てるのは間違いないだろう、とは思うがそちらは口にせず。
勢いよく綴られる主の言葉を聞きつつ。
無意識、左手首を飾る虎目石を握り締めながら、横たえられた金を見つめていた]
/*
むしろ、遠い方が楽しい事ができるかも知れない!
なんて考えていたいきものがおります。
……術解けただけじゃおちないよねー、ってのがね、うん。
いつぞのにゃんこよりも面倒かもしんないし、そうじゃないかもしんないわ、このわんこw
[ 胸に穿たれた魔の楔は、男の命を光と闇、生と死の狭間に繋いでいる ]
[ 最後に男の瞳に映ったのは、魔の紅い瞳のいろ.........そして耳に届いたのは睦言のように「おやすみ」と囁かれた声.........美しく歪んだその笑みに、足掻き疲れた心は呑み込まれそうになる ]
[ ...けれど ]
ディーク...
[ 闇に沈みそうになる魂を引き戻すのは、魔の楔にも断ち切れぬ絆。
友の呼ぶコエに、言葉を返せぬことに、強い痛みを感じる ]
聞こえてる、まだ、俺は、お前の声を...聞いてる...
ディーク、お前も、諦めるな...
[ 人を、生を、世界を ]
[ 彼の孤独を知っている。孤独故の意地と、孤独故の優しさと......孤独故の怖れと......
今のディークは、兄を喪ったときの自分と同じだ。
大切なものを護れず、失ったという想いに、何よりもきっと、自身の無力を嘆いている ]
『大丈夫よ...』
[ 違うのだ、と、伝えたくとも伝えられない悔しさに焦れている男の耳に、優しく懐かしい声が届いた ]
あね、うえ?
[ 辺りを見回せば、上も下も、右も左も無い青い闇の中、ふわりと花のような香りが男を包んだ ]
『大丈夫、あのひとは、優しくて強いひとだから。あのひと自身が思っているよりずっと』
『あなたが言っていたとおりに...あなたと同じように...』
姉上...
[ 姿は見えない、けれど、これは確かに姉の声だと、男は感じた ]
『大丈夫よ、ロシェ。だから、あなたも諦めてはダメ。私も、兄さまも、あなたを、あなた達を...信じているから』
兄上、も?
[ 男は、はっと、目を見張る。淡く銀色に輝く光が二つ、確かに遠く揺れていた ]
『あのひとに、伝えて、ロシェ...』
[ 遠く花の面影が揺れる ]
[しばしの間を挟み、ヨセフはディークの独断を認める言葉を発する。>>58
本当は、彼自身が行きたかったであろう。
だが、それを許される立場ではないことを自負した男の判断だった。
心の中で、ひとつ、借りておく。
そして、「もう戻らない」との宣言に、「砦で待っている」との答え。]
面倒くさいな。
[あまり褒められたものではない口癖と共に背を向けたが、ヨセフの真意を正確に汲んだ証であった。]
[モーザック砦で指示してきたあれこれは、心配していなかった。
ヨセフならば活用できると思う。
気になることがあるとすれば──今しがた現われた双子のことだ。]
単刀直入に聞く。
そのエルフの双子は、モンテリー王国の密偵か。
/*
ログ書こうとして読み返して、また悶えるやつだね、これは。
たまらぬ。
役得。
というか役得。
桃と紫は我だけのものだもんねー!!
/*
ヒトガタさんから天幕どこと聞かれて、どこ……
魔軍の陣営がそもそもドコよってなった人。どこ…
わからんwww
と、とりあえず南のあの辺にふわっといるのじゃないの!?違うの!??教えて魔軍のひと!!!!!(
あ、先生っ。
『モーザック砦の前に門が置かれてるけど』
それはトラップだって。
『そうお話ししてるのを聞いたのよ』
[先程の尾を引きずったまま
おずおずと、手にした情報を口にする]
/*
まーあ、要塞の移動経路をあけたどっかその周辺に皆さん陣取られているのでは……たぶん……
その中にほんのりと紛れ込んでいるのだよ。
― 思い出 ―
『ロー・シェン?...ロシェ、ね』
[ そう呼んでいいでしょう?と、小首を傾げた美しい姉の笑顔に、少年は、僅かに頬を染めて頷いた。
物馴れぬ王宮の中で、どこか腫れ物のように、誰からも遠巻きにされて、ここに来たのは間違いだったのではないか?と、そろそろ疑い始めていた少年にとって、姉の素直な優しさは救いだった ]
『色々なところを旅してきたんでしょう?話を聞かせて、ロシェ』
[ 請われるままに話したのは、ローグの旅の話、祭りの華やかさ、美しい景色や、厳しい自然、市井に生きる人々の暮らし...そして、妹のように思っていた、少女の話も ]
[身を清める、と言っても現状では限りがある。
桶に湯を用意させて、それで身体を拭くのがせいぜいだ]
……ん。
動くな。
[纏わりついた紅を拭い取り、腕の傷を確かめる。
痛みは既になく、傷も塞がりつつある。
再生が早いのは、半魔の特性の賜物だ。
父である魔戦士は、倒した相手の生命力を奪い取って傷を癒し戦い続けたというがそこまでの力は娘にはない。
それでも、人に比べれば遥かに早い回復は、ある種の脅威と言えるだろうが]
[腕が大事ない、と確かめると、それ以外の部分も手早く拭ってゆく。
手にする銀月の鋭さとは対照的な柔らかさを備えた身体には、前線で戦い続けているにも関わらず、傷跡らしきものはない]
……こちらは、どうしようもない、な。
[赤紅の装束を、更に深く染めたいろ。
そちらにまでは手を回せない。
戦士として、戦場での在り方を第一とするとはいえ、そんな所はやはり、気にかかる。
好んで己を飾り立てるような気質でないのは昔から──というのは、知る者は限られるのだが]
[せめて、と花の香のする香油を肌にすり込んで、血の香りを紛らわせる。
それの作り方をだれから教わったのか、もまた、記憶の霞の向こう。
一先ず、支度が整ったなら娘は一つ息を吐いて目を閉じる。
銀月の牙が必要とされる時に、疾く、駆けてゆけるように。
今はしばしの休息へ。*]
『ロシェは、その子が、とても大切なのね。どうして、一緒に連れて来なかったの?お母様と一緒にだって、構わなかったのに』
[ 無邪気に問われて、自分が王の子と認められるか判らなかったし、何より彼女に王都の暮らしは似合わない、と答えると、やはり不思議そうに ]
『でも、会いたいのでしょう?』
[ そう、首を傾げられて言葉に詰まった ]
い、一人前の騎士になったら、会いに行きます!
[ 何故だか焦った気持ちで、必死に言葉を返すと、姉ばかりか、周りの侍女達にまで、くすくすと、微笑ましげに笑われて、所在無い思いをしたのだった** ]
/*
人間陣地読んでくるう……
一々正面突破する暇とかないし、ゲリラしたらダメかな。
正面攻撃は魔王様にぶん投げられねえかな((
[抵抗するを組み敷く快。
新たな作品を組み上げる興奮。
耳に心地好い苦悶の声。
繊細な作業を勘と力業でこなしながら、
縋りつく指の力とツィーアの言葉に笑った。]
私の手で、直接中に注がれる方がいいか?
[縋りつくを引きはがして押さえこみ、掌を胸に当てる。
ず、と溶けた胸の中に手が沈み込んだ。]
[最後の、なかなかはまらないパーツを直接触れて押し込むように、内側から魔力を注ぎ込んで融合を促す。]
これで、完成だ。
[納得いくまで調整してから、手を引き抜いた。
仕上がりを確認し、立て、と命じる。
人形が立ち上がったなら、ふと手を伸ばして空中より剣を呼び出し、人形へ向かって振り下ろした。]
― 元王国軍宿営地 ―
[かつて人間たちが陣を置いていた焼け跡の手前に、今は
その周囲に終結したまま、魔物の軍勢は丸1日ほど停滞した。
魔王からの号令が何もなかったのが原因だ。
人間の軍を率いていたものを獲ったのだから、即座に攻勢を強めるのが兵の常道。
だが魔王はそんなセオリーなど顧みもしない。
お気に入りの玩具を改造するのに夢中だった。]
[ツィーアの人形を改良したついで、思い出したことを片付ける。
魔王の前に引き出されてきたのは、まだ小さな人間の子供。]
ロヴィン、と言ったか?
元気そうでなによりだ。
[双子が連れてきた当初よりずいぶんやつれていたが、魔王はそんな些細なことなど気にしない。
「おまえなんか父さんがやっつけてくれる!」と威勢よく噛みついて来る語勢には、一見微笑ましげに唇を上げた。]
元気なのはいいことだ。
───が、少しうるさすぎるな。
[手を伸ばし、ロヴィンの頭を掴む。
ぎちり、と骨の軋む音が聞こえたところで、思い出したように手を離した。]
おっと。壊すと戻らないんだった。
さあ、こっちに来い。
おまえに良いものを用意してある。
[何事もなかったかのように身を翻し、ツィーアの奥の部屋へ向かう。
その後ろを、少年が引きずられていった]*
[双子は息子の友人、と語るヨセフの声に隠し事の気配はない。]
そうか。
密偵であったなら、いろいろ視界が開けるような気はしたんだが。
彼らは、俺とユーリエ姫の旅の道連れでもあった。
あの時、何があったのか聞ければ、あるいは──…
[いささか歯切れ悪く言葉を泳がせた。]
ともかく、二人してどこにでも顔を突っ込みたがる。
目を離さないことだ。
[双子との繋がりを完全に閉ざしていたわけではなかったから、呼びかける声は届いていた。
謝罪などに応える必要はなかったから放置しておいたが、おずおずと差し出された情報には耳を傾ける。]
なるほど。
[感心したような声一つ。]
なにをすれば我を喜ばせられるか、
おまえたちはちゃんと知っているな?
[具体的な指図は無い。
ただ、優し気な声を響かせる。]
我も、おまえたちをもっと褒めてやりたいのだ。
わかるだろう?
そうだね。
戦士としては最高級であろうなあ。
そうか、お前が見てもそうか。
… そうだ、いいことを思いついた!!
お前とこれを、今度かけ合わせてしまおうか。
いいモノが出来るだろうなあ。ふ、ふふふ。
掛け合わせとの掛け合わせなんて面白いじゃないか。なあ?
[またとんでもないことを言い出す。
どこまで本気か、魔は僕の様子にも気づくことはなかった。
まして彼らの手首に巻かれた、ささやかな守りの石にも。]
[僕を天幕より見送ってから暫く、ツィーアにて、魔王が魔の者どもに処分を下した話>>44は、シメオンの耳にも入っていた。その場に魔将はいない。特に必要がないのだからいいだろう。
ロー・シェンの件を報告するにはまだ早い。
手に入れたことは既に知っている、その許可も先に得たのだ。
ならば「完成品」を見せる時こそ、報告に行くべきだろう。
それまでを、魔はこれまでと同じ自由さで過ごしていた。
どうやら、遊びに興じていたのは魔王もまた同じだったらしい。とは、やはり配下の者から聞いて知ること。どのみちこちらはこちらで、獲物をどう料理するかで楽しんでいたわけだから、戦いそっちのけという点に於いては大差ないのかも知れなかった。]
さて、どうしようかな。
[そんな魔が軽い口調で思考するのは、先に思いついた次の”素材狩り”の話だ。正面から魔軍を動かし、すり潰してしまえば人間どもは押し殺せようが、それでは狙った獲物を捕らえるのも難しくなる。
今回は、そんなものが欲しいわけじゃない。
欲しいのはただ、一人…二人、それだけなのだ。]
ふむ…。なあお前たち。
手柄を立てる機会をくれてやろうか。
[思考した挙句に天幕を出て、声を掛けに向かったのはゴブリンやら亜人やらの群れどもである。
魔王配下の有力氏族らはいないが、ともあれ魔軍に集いやって来た闇の者どもだ。シラーからお零れを狙ってきた者らもいる。
それらも先の魔王の叱責を聞いたらしく、些か委縮しながら停滞した陣でだらだらと過ごしている様子であった。]
そうそう。頑張れば我も褒美を弾んでやろう。
美味い人間どもなり奴隷なり、好きにくれてやろうよ。
[単純なものだ。褒美と聞けば、委縮していた者らも興味を示した顔になる。それを軽く嗤いながら、あくまでにこやかに魔は続けた。]
目標はそう、あの砦だ。
あれを落とし、もっとも身分高い人間を獲った者は部隊長にも取り立ててくれようよ。そら、お行き。ぼやぼやしてると、手柄は別の者のものだよ。
[ごく単純な煽りで、魔の者どもは再び意気を盛り返した。
魔は少し笑い、これで良しと再び戻る。
件の屍兵も補充を済ませておいたし、今回はきちんとゴーレムも作り直した。これだけの規模で正面から攻め込めば、それなりに人間も応戦することだろう。]
確かに彼らは行動力もあり、機転も利くが…。
密偵をさせるとは考えてもいなかった。
[それは偏に男にとって彼らが保護の対象であるからだろう]
……旅の道連れ?
[歯切れ悪いディークの言葉のうち、引っ掛かりを覚えた単語を繰り返す。
彼とローレル達の間に繋がりがあったことも驚きだが、ユーリエを攫ったはずの男が”旅の道連れ”と何気なく言ったことが男の中で強く引っ掛かった。
ディークの手腕や彼のロー・シェンへの想いは認めつつあるが、ユーリエの件はまだ許してはいない]
[けれど彼の忠告は尤もだとも思う。
何せローレル達は砦に撤退せず戻って来ていたのだ。
心配だからとは言われたが、今後も似たようなことが無いとも限らない]
…承知した。
常に傍に、とは行かないが、なるべく目を離さないようにしよう。
[世話や護衛名目で兵を傍につけるという手もある。
男の縁者だと言えば、多少の無理も通ろう。
そう考え、ディークの忠告には是を返した]
[押さえ込まれた仰臥の背が浮き上がるほど、ヒトガタの体躯が反った。
喉の構造を痙攣させるだけの悲鳴が、長く細く続く]
ああ、これならば快い
お前を感じるのはいつも私の喜びだ、忘れてくれるな
[素体の記憶が融合していく様を、核は知覚はしない。
魔力注ぐべく胸の中をかき回す感触だけを愛おしく把握しながら、調整が済むを行儀よく待った]
「う…、 」
[床を転がり、胸を押さえ蹲ったヒトガタの下、涙と混じり、唇からも粘液が床へ伝う。
立て、と命じられれば緩慢に頭を揺らし、
やがて、立ち上がった]
「………」
[苦痛の余韻に染められたままの銀の瞳が瞬き、振り下ろされる剣の軌跡を追視する。
飛び退り距離をとる回避行動の代わり──発現する狂猛]
[つんのめるように前方へ身を投げ出し、刃の下を潜る。
床についた片手を前肢の蹴りのごとく弾かせ、跳ねた。
生き物ならば須らく急所である、王の顎を目掛けて掌底を突き上げるまでの獰猛な一連*]
[振り下ろした剣は、空気のみを裂いた。
目覚めたばかりの鈍い動きから一転、人形の身体が獣のように跳ねる。]
好い。
[突き上げられた手を直前でつかみ、軽く上体をひねって人形をそのまま背後に投げ飛ばす。]
好いぞ。素晴らしい。
これで、簡単には壊れなくなるな。
[発現した資質に、まずは満足を示した。]
― 魔軍が目覚める夜 ―
[レオヴィルの皇子が魔の手に落ちた夜の後、
日が上り、沈み、もう一度日が上った。
魔王が動かない間に軍は休息をとり、次の戦いに備える。
それは人間たちにも迎え撃つ準備をする時間を与えるということだったが、なにしろ絶対者が動かない以上は軍も動きようがなかったのだ。
そして、上がった日が傾き始めるころ。
ついにツィーアの玉座に魔王が姿を現した。]
[ヨセフが、ディークの発言の中の何かにひっかかった様子を見せた。
意識していない部分だったから、少し身構えてしまう。
ユーリエの名が両者の間に苦いものを蘇らせたのはしょうがなかった。]
あの双子の見張りをきっちりできるヤツがいたら、それこそ密偵に抜擢してやるといい。
[自分から求めておいて、小憎らしい口を叩くのは相変わらずだ。
警告を入れてもらえて嬉しいものを。*]
[ヨセフら対魔連合軍から離れて、単身、北へ向う。
魔王の侵攻を止めるには、別のところへ関心を向けさせるが手と考えていたが、期せずして実現していたようだ。
来たときと同じように、無秩序を生み出しながら、魔軍は王国軍の追撃を止めていた。
シメオンが、ロー・シェンを捕えたことを報告したのかとも思ったが、どうも違和感がある。
少なくとも、勝利の雄叫びめいたものは聞こえてこなかった。
それでも、不用意な遭遇戦を避けて迂回するように北へ向う。
夜も充分に遅く、灯りは遠かった。
疲労が蓄積して集中力を欠いてきたのを自覚し、灌木に覆われた岩の隙間を見つけて踞る。
警報機代わりにカードを一枚、胸の上に乗せると目を閉じた。]
− 夢 −
[その光景は、幾度か夢で見たように思う。
目が覚めている間は、思い出せないのだったが──
明るい場所だ。
屋内で、どこに光源があるというのでもなく、ただただ白く明るい。
その中にいて、自分は焦燥を強くしている。]
/*
絶妙にツンデレってるディークvsなんでもまともに受け止めるヨセフとか。
なんて楽しい。
[ にこにこしながら、桟敷席にちょこなん ]
[白く艶やかな扉の向こうから、声が洩れてきていた。
「身の程しらずの驕りは目に余る──」
「魔物と取り引きする輩もいるとか」
「我らが保護するに値せず」
「一度、滅ぼすべきかと存ずる」
語気は鋭いものの、諍う調子ではなかった。
むしろ、慈愛すら感じさせる響きだ。 だが、]
賛成いたしかねます!
[扉を押し開けて声を放つと、幾百もの端正な顔が、
その額に煌めく天青石がいっせいにこちらを見た。*]
[高いところから落ちる感触に、ハッとして目を覚ます。
だがそこは、元のままの岩陰だった。
薄明の頃合い。]
腹へったな。
[そういえば、まだひとつあった、と双子からもらった飴の残りひとつを口にして── >>1:102]
あ゛ん゛の゛カ゛キ と゛も゛
[夢の残滓は霧散した。**]
所詮、数だけの目くらましだけどね。
[あっさりと言い放って、何でもない様子で天幕の外へ目を向けた。
あの程度の者らに落とされるなら、人間どもも大したことはない。
とはいえ数はそれなりに揃っているから、まあ手間はきっと手間ではあろう。
どのみち程なく、魔軍全てもまた動くのだ。]
[宙を飛んだ人形は壁の魔導管に衝突して床へ落ちる。
弱き人間の記憶だけを参照するならば、背部への強打で咳き込みもしたところ。
ヒトガタはすぐさま立ち上がり、オークのそれを思わせる低い姿勢で身構え、]
「……く、そ」
[眉を顰めて片手で顔を覆った]
/*
PC=神様はダメってなってるけど、転生とかは有りな気がするし、まあ、他の高位種の可能性もあるが...当然、痣にはなんかあると思ってましたけどね。
まあ、なんにせよ楽しみだ。
[ ←ノープランのまま、精霊の加護がどうこう言い出した子はこちら ]
成功か?
壊れずに餌を集め来やるか
新しい遊びも出来ようか──
[弾む波動、我が王が示す満足にこそ、ツィーアの喜びは募る]
『───魔王様。』
[この出発に少し先立って、魔王の元にはメッセージが届けられている。黒い翼に乗せたそれは、受け取られれば羽根舞う間に魔の声を、かの絶対者へと届けるだろう。
ふわり、と。恭しく礼をすると同じ程の間を置いて声が響く。]
『件の王族、ありがたく頂戴いたしました。』
『じきに雑兵どもを進軍させますが、───我はモーザックへ。』
『良い素材を見つけましたので。またお目にかけましょう。』
[お楽しみに、と。自由気ままに言い放ち、いつぞやグラスを重ね笑ったと同じ響きを残して、声は消え失せる。メッセージが届けられるのは、魔王が”趣味”より戻る後のこと、恐らくは魔王の楽しみを邪魔しない配慮だろうと思われた。]
だから、我とお前は先回りしよう。
[そうしておいて、魔は再び向かうのだ。自らの楽しみへと。
示したのは西のシャスラから延びる街道側、南西から砦に入る出入り口。そこもそれなりに警戒はされていようが、北西側程厳重な警戒はないだろうと思われた。そこへ、]
行くのは我と、お前とこれだけだよ。
他を連れていっちゃ、人じゃないとすぐバレるだろう?
[堂々と遊びを思いついた顔でそんなことをいう。
魔単独であれば、空から砦に至る程度容易いことだ。
だが、僕を連れていてはそうもいかぬ。そんな不便があっても僕を伴わんとするのは、魔がそれなりに僕を評価している証ではあった。]
あちらへは転移を使う。…途中までね。
”これ”もまあ、どうにか動くだろうし、
[と、顔を向けるのは今は沈黙を保つ死した女へとだ。
運動機能はあまり損なわれていないはずだから、人間程度の動きは期待出来るだろう…多分。]
潜りこんでやったら、が面白そうだと思わないかい?
[結局はそれに尽きるとばかり、悪戯を仕掛ける表情で魔は笑った*]
― モーザック砦 ―
[時が来るまで、男も一時休息を取る。
止血のみとなっていた銀月の傷や、囲まれた時に負った傷を治療師の魔法により和らげてもらった。
安静にするように、と願われて、男は苦笑しながら是を返す]
[斥候の結果、魔軍は王国軍が野営していた辺りに陣を敷いたようだ。
その後、定期的に斥候を放ち様子を窺うが、あちらも休息を選んだのか動く気配が無い。
王国軍の御旗を手に入れたのだから直ぐにでも仕掛けて来るかと思ったのだが、予想を裏切られた気分だ。
だがお陰でこちらも十分な休息を得ることが出来る。
連戦続きで兵達の疲弊も相当なものだった]
[魔軍が動かない間に、男は部隊長やエルフの戦士長を集め作戦の確認をする]
炎を立てる位置は把握しているな?
最初はある程度引きつけてからで良い。
一度燃やした後は火を絶やすな。
[設置された馬防柵の最終地点を示し、担当の部隊長へと指示を出した。
工作兵と彼らを護衛する歩兵で構成される1隊。
指示を受け、部隊長が是と共に首肯する]
ポータルのある出丸も含め、門には重歩兵を2隊ずつ配置する。
難しい箇所となるが、巻き込まれぬよう用心してくれ。
[兵を配置しない選択肢もあったが、そこが重要地点であると思わせるために男は兵の配置を決定する。
出丸に配置の命を受けた部隊長達は緊張した面持ちをしていたが、重要な役目であると頷いてくれた]
貴方方には遊撃隊として動いて頂きたい。
[エルフの戦士長には地図を指し示しながら遊撃隊となるよう願う]
魔軍は今、この辺りに陣を敷いています。
進軍して来るとすれば真っ直ぐ砦を目指すルートでしょう。
貴方方には今のうちに砦を離れ、南の山間に潜んで頂きたい。
魔軍が動き、砦へと到達した辺りに横合いから魔軍に仕掛けて欲しいのです。
騎兵隊と斥候隊を同行させます。
貴方方の指示に従うよう、伝えておきますので。
[こうしてエルフの戦士達と騎兵のいくらかは砦南の山間に潜むことに。
尚、彼らに同行する斥候の中に、西の森で助けられた投石兵が居たことは余談である]
― 防衛戦 ―
[魔軍が動き出したのは砦に到着してから丸一日以上経過した後。
斥候隊が魔軍の動きを察知したのは、日暮の最中のことだった]
この様子だと、到達するのは闇に包まれてから、か。
[魔の時間が再びやってくる]
篝火を焚け。
[月明かり、星明かりでは足りぬ分を松明で補う。
砦の外や城壁の上に煌々とした灯りが灯った。
その中で兵達は各自の配置に付く。
城壁に備えられたバリスタやクロスボウも、直ぐに使える状態に。
砦の中腹に並ぶ小窓には弓兵が配置され、その時を待っていた*]
[ユーリエの件は、今はそれ以上言わないことにした。
今やるべきは別にある]
……違いない。
[双子の見張りについてを言われて思わず納得するコエを零す。
少しだけ、笑う気配が乗ったのは至極納得したことの現われだった*]
……行く……マスター自ら、前線に立たれるのか?
[軽い口調の言葉>>78に、最初に浮かんだ疑問をそのまま投げかける。
続いた言葉に、そうではない、というのはすぐに理解できたけれど]
……先回り……か。
他とは異なる道を進んで、潜り込む……。
[言いながら、伴われたものをちら、と見る。
フードを被せられたそれが何かは、察しがついた]
面白いかどうかはわからないが、マスターが望まれるなら、あたしはそれに従う。
……ソレを連れて行くという事は、狙いはあの黒いのなんだろう?
先回りをしても近づくには障害も多い。
なら、あたしはそれを斬り払う。
[彼の黒き将と戦士として相対したい、というのも少なからずあるが。
主が望むなら、というのが、僕としては第一だった。*]
[投げ飛ばされたあとの人形の動きも、直後の嘆きも、どちらも満足いくものだった。]
これは好い。
完璧ではないか。
おまえは、我の望み通りに仕上がった。
[手を伸ばし、人形の頬に触れ、愛でる。]
成功だとも。
これがあれば、おまえは好きな餌を取りにいけるぞ。
そうだな。新しい遊びもできるだろう。
おまえの"手"で、命を刈り取る楽しみもな。
おまえを早く戦わせてみたくてならない。
[興奮した面持ちで言葉を綴る。
早く次の戦場へ行こう、と心が弾んだ。]
[魔軍の先頭を行くのは、シメオンに煽られた亜人たちだった。
本隊の出立より先に動き出した彼らの後に、ゴーレムや屍兵らが続いている。
本隊の最前部もまた、残りの雑兵たちが占めている。
やや後方に鉄底族があり、その横をゆっくりと狼牙族が並んでいた。
狼牙族は魔王に粛清された族長の代わりに、新たな長が立っている。
砦攻めは彼らの強みを生かせる戦場ではなかったが、それでも戦功を立てねば後がない。
進んでいく魔軍を追い立てるように、魔王を乗せた魔法兵器も砦へと向かう。
後には、踏み砕かれた街道が残った。]
[人間の斥候などは気にしなかった。
手の届くところにあれば殺すが、積極的に追うこともない。
此方から斥候を出すこともしていない。
出さずとも、人間は前にいる。]**
ああ、そんな名前だった。
カードを使うのは、ディーク、だろう。
[こちらは幾度かやり取りをした事もあるから、名前は覚えていた。
とはいえ、名前などは些末事なのだろうと思うからそこには拘らず]
わかっている。
加減などしては、こちらが刈られる。
あれは……そういうものだ。
[声にのせられる色に、ほんの少し表情を険しくするも、それは一瞬。
すぐにいつもの調子に戻ってこう返す。
彼の将を強者と認めるが故に、手を抜く心算などは最初からなかった。*]
― 回想 ―
情けをかけたか?愚かなことを。
[笑う声が、魔戦士の上を滑って落ちた。
既に仕置きはされてある。
いかに治りが早いとはいえ、痛みを感じぬわけもなかろう。
そんな魔戦士の背に、今は大きな傷が刻まれていた。
つい先ほど、闇が切り裂いたばかりの傷だ。]
……愚かな。
[魔戦士が戦士の誇りをもって人の戦士と交わした約束は、別の魔の配下によって無残にも破られていた。ある小さな村を守っていた戦士であった。魔戦士───レオンハルトとどのように刃交わし、どのように心通わせたのかは分からない。
ただ、自らの命と引き換えに小さな者らはせめて見逃してやってくれと、その願いを聞き遂げて目を瞑らんとした魔戦士の背後で、その小さな者らは全て無残に殺された。]
我に逆らうか?…憎く、思うか?
[歩み寄り、魔戦士を笑って見下ろし問えば、あれはどうしたのだったか。
もう古い記憶は曖昧だが、それでも闇の戦士にしては珍しいほどの知性と、携えていたアヴァーンガルデと称する大鎌と、その二つは珍しいものとして魔の記憶に残っている。
もっとも、その娘と偶然邂逅するまで、忘却の底深く沈んでいたほどの記憶だったが。]
[…7年前。似てはいないな。と、最初思った。
ただ面白いと、好奇が勝った。
魔鎌アヴァーンガルデを携える、半魔の娘。
戯れに支配をし、戯れに連れ帰って僕とした。
半ば魔とはいえ半ばは人間、すぐに死ぬかと思いきや、意外としぶとく戦い生き延びる様が思いのほか気に入った。
元より気の強い娘のようで、たまには自ら意思まで見せる。
それが中々面白く、これは安易に殺さなくて良かったと、思っているのは魔にもついぞ知らぬことだ*]
[近づく手へ瞼震わせて怯えを滲ませる表情、
顔を歪めながらも、触れられるに従順であろうと努める葛藤も、最初の素体の特性が色濃いもの]
…ゆこう
私が私の餌を獲れば、私もお前も嬉しいな?
[興奮は兵器にも伝播する。
科された枷を甘く鳴らし、魔導の波がうねった]
― 天幕/現在 ―
ディークか、ふむ。
[あの髪の長いカード遣いの名前だ。人間どもの傭兵ときたら、マーティンくらいしか名など覚えてはいなかったから、一応は覚えておこうと口にした。……些細なことゆえ、また忘れるかも知れないが。]
あれも面白い術を使うようだねえ。
あれは…、なんだったかな。
[奇妙な印が額にあった。僅か思索の色が乗る、少しの間。]
……く、くく。
そんなところはやはり似てるな。
じゃあアイリ、行こうか。
案ずるな、───闇は我の領域ぞ。
[一瞬の険しい表情を、古き魔戦士の面影に重ねて笑い。
この転移に僕を伴ったことはない。それ故の言葉をかけて、魔はその場に濃い闇を広げた。幾つか魔石の弾ける音が微かに響く。
浮遊感。そうして次第に闇が晴れれば、魔と半魔と死人の奇妙な一行は、モーザックを北東に望む道の傍らに*佇んでいた*]
─ 目覚め、進軍 ─
[玉座にある魔王は光り輝く黄金。
人間の砦へ──
此度の軍勢の侵攻には、聳え立つ城砦も速度を合わせよう。
破光の魔法を満たすまで、杯に注がれるべき触媒はあと少し]
[軍勢が砦へ到達するよりも少し前。
移動を続ける地這竜のごとき城砦の口が開き、木偶人形が一体外へ出た。
魔王が気に入った人間の男を模った、魔法鉱石のヒトガタ。
様子を違えているのは、纏う衣装のみだった。
先日までの軍服と同じ型と仕立てながら、色は薄青と銀糸の2色。レオヴィル王族であることを示す紋章は再現されず、そこにはただ金で縁取られた黒の空白だけ]
…お前が俺の馬か?
[ゴブリンが曳いてきた馬型の魔物を見上げ、無表情をわずかに緩めた。
青肌の馬魔の首を撫で手綱をとる]
術も珍しいし、頭も切れる。
……黒いのとは違う意味で、警戒が必要だとは思う。
[主に、何をやらかすかわからない、という意味でだが、その意味は伝わるか。
伝わろうと伝わるまいと、『警戒が必要なくらい良いもの』という評価は変わらないのだが。
間が開く様子には僅かに首を傾ぐものの、その意を問う事はしない。
唐突に思索に耽ったかと思えば動き出す──そんな流れにも慣れたといえば慣れている]
……似ている?
[戦士としての表情が想起させたものは知らず。
笑う様子に亜麻色を瞬いたのは僅かな時間。
出発を促されれば頷きを返し──唐突な言葉に困惑したように瞬きを重ねて]
……え……?
[広がる闇、何かの弾ける音。
それに続く浮遊感は未体験のもの。
それでも落ち着きを完全に失する事がなかったのは、案ずるな、という前置きのおかげか。
ともあれ、闇が晴れるのと同時、感じたのはそれまでとは違う風で]
― 砦近辺 ―
……ここは……。
[ぐるり、周囲を見回す。
まず目に入るのは、聳え立つ砦。
僅かな時間での移動に、改めて主の力を感じつつ、娘はひとつ、息を吐く]
……前に、人の気配がある。
恐らくは、砦の兵だろうな。
……知らされると厄介だから、先に刈り取る。
[戦えぬものをひとつ連れている以上、ぎりぎりまで敵に囲まれるような大立回りは避けたい、と。
そう伝えると、返事も待たずに走り出す。
目指すはすぐ近くにいる兵たち──恐らくは、警戒のために配備された者たちだろうが]
足手まといがいるんでな。
……疾く、刈らせてもらう。
……往くぞ、アヴァーンガルデ!
[抑えた宣に応じて現れ、振るわれしは銀月の牙。
それは容赦なく兵の命を刈り取り、その場を朱で飾り立てた。**]
[率いるのは、有力氏族でもない低級の魔物。
平地の地中を好むワームと、頭数だけのゴブリン達。いずれも、全滅させて良い"餌"だった]
攻城よりも功ある任が与えられた、聞け。
…既知の通り、ミュスカの森のエルフ達が来ている。
既に聖樹を毒に侵された死に損ないだが、手負い故に死に物狂いで我が王を狙うだろう。
[凛と響く声は、どこか平坦に]
あれらは足が売りの少部族だ、人間の籠城には加わるまい。
エルフが現れたなら殺す──それが俺と其方らの仕事だ、良いな。失態は許されない。
奴らの足を止め、その枯れ弓をへし折り、命を捧げよ。
首級を獲った者には、応じた褒美が与えられるだろう。
…城と移動天幕の周りへ散り、待機。いけ!
[知能の高くない者達へどれほど通じたものか、頓着せず馬の蹄を鳴らした]**
...いや、させてたまるか。
[ 魔の楔に貫かれた瞬間の、ヨセフの呼び声を覚えている。彼がこれまでに、男以上に多くの大切な者達を喪ってきたことも ]
支えられ続けた挙げ句に...更に苦しめて...
[ もう充分以上に、彼には傷を追わせただろう、と、男は自覚している。だから、これ以上は決して、まして己の存在によってなど ]
[ 魔の力に現実に縛されている状態では、それはただの強がりとも言えるだろう。けれど、必ず戻るという、揺るがぬ決意と同じく、男は魔の傀儡とは決してならないと、心に刻む ]
人の心の強さを...お前に見せてやるさ、魔将...
[ 永遠に逆らい続けることは出来ないだろう...けれど、叶う限りの力で抗うと決める。例え動けずとも、時を稼ぐことさえ出来れば、必ず... ]
(嗚呼...)
[ その時、ふいに、男は悟った。胸を貫かれ魔の力に捕らわれかけた、あの瞬間、ヨセフとディークに、退いてくれ、と願った、その本当の意味を ]
俺は...待っているのか。
[ 全てを背負わねばならないと思っていた。支えを得たとしても、最後には1人で立たなければいけないと考え続けていた...だが、そんな表層の強がりとは別の、深い深い部分で ]
待っている...ヨセフ...ディーク...きっと、俺を引き戻すのは、お前達だ。
[ だから、彼等が無事である限り必ず戻れる、と。そう、信じている** ]
リー...
[ 魔将の傍に、その気配があることも、男は感じていた ]
お前も、捕らわれているのか?
[ この青い闇の中に、彼女の気配はない。だからやはり、彼女は生きている筈なのだけれど ]
それとも......本当に、俺を恨んでいるのか?
[ それもまた、心の奥底に沈んでいた怖れ。
アイリを置いて、遠く離れて、彼女が母を喪った時にも、傍には居てやれなかった......恨まれても仕方がない、と、だから、彼女は魔に心を奪われ、己を忘れたのではないか、と ]
許せ、とは、言えないか...
[ 寂寥に胸が塞ぐ心地の中で、左の手首がわずかに熱を帯びた気がした。
恐らく魂だけの存在となった、この闇の中でも、消えずに在る、カーネリアン...そこに伝わる熱が、アイリが対とも呼べる虎目石を握りしめている、その事によって齎されたものだとは、知らなかったが ]
...それでも、俺は諦めないぞ、リー...お前の事も、決して。
[ アイリの腕にもまだ、ミサンガは残っていたから ]
お前を取り戻すまで...そして、お前の笑顔を見るまで......決して。
[ それは、もうひとつの誓い** ]
/*
おにーちゃん関連も何か残すかと開始前は思ってたんだけど、上でヒトガタさんがめっちゃおにいちゃんしてくれてるので、今更ここで書かんでもな感じがあってだな。矛盾しても困るしな。
いやほんと、おにーちゃん渡しておいて良かったわ。眼福至福とはこのこと(酷い
― (魔王軍進発前日) ―
[岩陰から這い出した先で、巨大な城塞が焼け跡にそびえたっているのを見つければ、小さく呻いた。
蔓草の若い茎を噛んで水気を啜り、口の中の痛みを和らげるも、眉間のしわはしばらく残る。
魔王の居城の後ろは、魔物の闊歩する地。
また少し、人間の世界が狭くなった。]
/*
飴効果で、オオヨシキリのように口の中が赤い、と書こうとしたんだけど、
馬とか竜とか鳥とかのカテゴリーならまだしも、オオヨシキリとまで書くと、ファンタジー世界観薄れるなあと思って、灰に格納。
口の中赤いよ (あーん
ロー・シェンは、城内か?
[シメオンの実験室──天幕が別にあることは知っているが、今回はあれだけの大物だ、魔王に報告なしということはないだろうと推論する。
魔軍にいた時分、あの"動く城"に入った人間は出てこないという噂は、まことしやかに囁かれていた。
だが、ロー・シェンがいる可能性が高いのなら、あの中へ入り込む方法を必ず、見つけだしてみせる。
そう誓って、]
― 回想 ―
[軍学校に入って間もなくの頃だ。
上級生たちがロー・シェンを学舎の裏手に呼びつけた。
”菓子代”を貢がないのが気に食わぬ。皆と異なるその肌の色が目につく。人気があるのが許せない──
ともかく目障りだというので、ヤキをいれておく目的である。
「特別に課外訓練をしてやる。10対1だが、実戦ではそんなことはいくらでもあるからな」
威圧的な笑みを浮かべて包囲を狭めるリーダー格の上級生の顔に、
横合いからバケツ一杯の水がぶっかけられた。]
10対1の状況にしてしまうのは、基本的に指揮官の怠慢というものだけども、
今回の場合、愚行をおかしたのは先輩たちですよ。
とりあえず、10対2に訂正してもらいましょう。
[空になったバケツとモップを携えて歩み寄ったディークに、ロー・シェンは屈託のない眼差しを向ける。
「どうしてモップとバケツ?」と笑い出しそうなロー・シェンに、
間に合うように一生懸命走ってきたのだとか、途中でそれしか入手できなかったのだとか、おまえが心配だったとか、言えるわけないだろ ]
[城に“見られた”気がする。]
──… なんだ ?!
[足元に寄ってきた命があればじゃれかかる癖のある城なんて、触手の生えてる城なんて、前代未聞だ。*]
/*
ディークの赤爆撃(もう爆撃としか言えん)に、めっちゃお返ししたいんだけど、青で返すと、シメオンにはディークのが見えなくて、ディークとヨセフには俺のが見えないので、どうしようね?と思う日々。
いやまあ...エピまで、全容は独り占めでもいいんですけどね。
しかしテンション的には赤で返したいかなあ。
とりあえず後でポチポチはしようね。
― モーザック砦 ―
[慌しい砦の中で、男は双子を探し出す]
ローレル、ローズマリー。
これから外は戦場となる。
君達は夜目が利くな?
見張りと共に外を窺って欲しい。
[ディークから目を離すな、とは言われたが、男が常に傍に居るわけにはいかない。
そのため役目を与えると同時、兵と共に居させることで護衛も兼ねることにした。
見張りを担当する兵を紹介し、彼らと共に砦最上階にある見張り台へ向かうよう頼む]
「てっ…──」
[声をあげ仲間に知らせようとしたが、それよりも銀月が喉を斬り裂く方が早い。
辺りが朱に染まるまでに、そう時間はかからなかった]
[砦上部の見張りが南門の異変に気付いたのは、闇が砦の中に紛れ込んでからのこと*]
─ 進軍前夜 ─
[焼け跡の近く、沈黙する城砦]
[暇を持て余した無智の亜人が時にツィーアの足元に遊ぶ。
兵器はその気配を感じると足をあげ、あるいは触腕を蠢かせて、文字通りに取って食おうとする。
犬類が手元のボールを齧るのと同じで、害意でもなくじゃれかかるだけの狩りは]
──
[その小さな気配>>121がもう少し近づいて来ないかと期待して、地面に近い増幅筒に光を灯らせた]
[長耳双子に嫌われて落ち込んで以来、ちょこまか逃げる動きの早そうな気配とはどうやって遊ぼうか、兵器は学習の途中。
その小さいのが足近くまで来るのならば、単純に踏み潰そうとする代わりに跳ね扉のような"口"を腹に開け、興味を惹こうと彼是光や音で誘ってみるのだった]
[魔軍の進軍が始まる前、砦での指示が一段落した頃。
男はあることを確かめるため、ローレル達へとコエを向ける]
…ローレル、ローズマリー。
君達は、ディーク・オラクルと…ユーリエ姫と共に旅をしていたと言うのは、本当か?
もし本当であるならば……
彼が、ユーリエ姫が、どんな様子で旅をしていたのか、教えてはくれまいか。
[ディークは双子も旅の道連れだったと言った。
それならば旅の様子も知っているだろうと。
それを教えて欲しいと男は願う*]
[光が城壁で明滅し、空気の噴き出すような音もする。
そこに入り口があるのかと、距離を詰める。
見けた。>>127
危険の香りとあいまって、心惹かれるものがある。
噂よりも自身の勘を信じるディークは、魔窟に踏み入らんと試みた。]
― 回想 ―
[何度か双子を屋敷へと招くようになった頃。
ローズマリーは妻と、ローレルは男と長男と共に時間を過ごすようになることが度々あった。
ある時、普段は服の中に隠してあるカメオが襟元から零れてしまい、ローレルや長男から、なんだなんだ、と覗き込まれたことがある>>1:117]
ヴェルザンディを象ったカメオだよ。
私は度々屋敷を留守にすることがある。
それが長期に渡ることも少なくない。
だから、彼女と結婚する時に互いのカメオを作ったんだ。
いつでも共に在るという誓いを形にするために。
離れることが寂しくないわけではないが…彼女が待っていると思えば私も頑張れる気がしてね。
……なんだか恥ずかしいな。
[照れながらも話す男の表情には柔らかい笑み。
惚気と言われてもおかしくない姿だった]
今はロヴィンも居るし、君達も居る。
ヴェルザンディも寂しくはないだろう。
[感謝している、と双子に告げる。
以前よりは安心して屋敷を空けることが出来ている、と。
双子に信頼を置く言葉をローレルへと向けた]
ここを君達の家だと思ってくれて構わない。
私達は君達を歓迎する。
[双子らは時折姿を消すことがある。
それは彼らの自由、止めることはしない。
けれど戻って来た時にはいつでも訪れてくれと、そんな想いを告げた**]
/*
なんかやっておきたくてカメオから繋げてみる。
補完の心算なのでお返事なくて良いんだけど…。
なんかあれだな、相変わらず過去捏造が出来ない子だ背後。
[魔王が玩具の改良を楽しんでいる頃、ということはツィーアもまたそれを喜んで上機嫌であるということだった。
そもそも、この兵器の不機嫌とは拗ねたり退屈したりという程度]
──
[小さな獲物が腹の中に入ると>>128
凶悪な牙の並ぶ口を思い切りよく閉じた。
どぅん、と振動が広がった後、拍動するような明滅は金から青へと弾むように色を変える。
奥に続くのは一見して単純な廊下、魔的な装飾や魔導の経絡が波打ち彩っている以外は]
[あるいはうまく噛み千切れるかという試み──が外れると、また外へ繋がる扉を開いてみる。
もう一度顎の間に来たら今度こそ挟めるか。
戯れの延長、そも闖入者を脅威と感じて排泄するような意志はない]
― 古き出来事 ―
[彼の内に最初にあったのは、狂気のみ。
戦い続ける事を是とする異界より招かれし魔戦士。
魔鎌を手に、常に強者を求めて戦う様は敵味方を問わず畏怖を振りまくものだった。
向けられる恐れ、それすら取り込み己が狂気の焔の糧となす。
そんな魔戦士にとって、その時相対した戦士は、それまでとは全く違う──初めて接するものだった]
「正直に言うが、お前は怖い」
「許されるなら今すぐ逃げだしたい」
[魔戦士に相対した時、その戦士はそう言った。
強者を自称する多くの者が、恐れなどないと震えていたのとは、まるで違っていた]
「なら、何故逃げぬ」
[対し、魔戦士が向けたのは、当然の問いかけ]
「逃げる後ろがないし、ここで引けぬ理由がある」
「何より……戦士として、お前さんと立ち合ってみたい」
[そう言って、不敵に笑う様を見て。
魔戦士の中で、それまではなかった何かが動き出した]
[戦い自体は魔戦士の勝利に終わり、戦士は倒れるものの。
刃を交わした事で生じた何かは、これまでのように力なき命を蹂躙するを良しとはせず。
戦士が護りたいと願ったものに、手出しせぬと約を交わした。
生まれし世界と種を異にする者同士の、生死を挟んだ奇妙な友誼は一時、か弱きものたちの命を繋いだかに思えたが]
― 砦到達より少し前 ―
[進軍する魔物たちより後方、全てを見渡せる位置で玉座に寛いでいた魔王は、人形が出ていくのに目を止めた。]
ツィーア。
餌を取りに行くのはいいが、砦の前の門には近づくな。
罠だ、と双子が言って寄越した。
[罠など正面から潰すまでだが、人形が変な壊れ方をしても困る。
そんな程度の軽い注意だった。]*
― 砦南の山間 ―
[先んじて砦を出、砦南の山間に身を隠したエルフの部隊は斥候の情報を元にその機を窺っていた。
時が来れば南西の街道側を大きく迂回する形で魔軍の側面から仕掛ける心算だ。
最初は先行部隊と本体との分断を狙う突撃を行うことになるだろう。
その後は有象無象を蹴散らし撹乱しながら、魔王を目指すことになる*]
[城壁にできた入り口をくぐった瞬間、凶悪な牙の並ぶ口がガチリと噛み合う。
用心していたから傷を負うことはなかったもののの、]
どういう機構してんだっ!
[跳ね上げ扉じゃなかったのかよ、と文句を言う相手も見当たらず。
衛兵が駆けつけてくる様子もない。
再び牙が上下に戻ってゆくのを見て首を振り、視線を奥へ続く通路に向ける。]
[指の間にカードを挟んで弾くと、少し離れて宙に留まったそれは白い焔をまとい、松明代わりとなる。
燃え尽きるまで、しばらくは保つだろう。]
招かれた、ととっていいかね。
[歪んだ美しさをもつ装飾の施された廊下は、観賞対象ではなく、警戒すべきもの。
それでも、つ、と指先で撫でるように触れてから、先へと進んだ。]
― モーザック砦 ―
[門の前にいやらしい置き土産をして、闇は砦へと潜りこんだ。
フードを被った者が二人、若い女戦士が一人。奇妙な一行だ。
近隣からの避難民とでも見えようか…気紛れに人のフリをすることにしてみたが、演技する気などさらさらない魔将は、面白がる風で辺りを見回した。
目指す獲物は、上か。*]
あれは、今度はなにを見つけたのやら。
あのモンテリーの生き残りであれば、またおまえの餌が減ってしまうなぁ。
[惜しいというような調子では言ったものの、どうしても欲しいというほどの獲物でもない。
あれを遣らずとも遠からずツィーアは満ち足りようし、シメオンが新しい素材でなにを披露してくるのかも興味はある。
他の『良い素材』については覚えはなかった。
一介の傭兵の配下にすぎない人間のことなど、魔王の視界の片隅にも入っていない。]
[そういえば、と魔王の興味は他へ移る。]
シメオンは、あの王族に何をしたのだろうかな。
[あの王族に研究とやらを試して、すぐに披露するかと思えばそうでもなかった。
時間がかかるのか、と思えど、一度気になってしまえば自制は無い。]
どれ。
誰ぞ、シメオンの天幕に行って、あの王族がどうなっているか見てこい。
……そうだ。
動かせるようならここまで連れてこい。
[直接行くほどではないが、直接見られるならそれに越したことはない。とばかりに留守の天幕へ使者を差し向けた。]
おまえの愛する国が蹂躙されゆくさまを見せてやろうよ。
[生を封じられた人間が周囲を知覚するのか、知らないし興味もない。
魔王の気まぐれを満たすためだけに、皇子の身体は玉座の隣に設えた寝椅子のようなものに横たえられた。
上半身を起こして外が見えるようにしてやったのは、魔王の心遣いだ。]*
― モーザック砦 ―
[待て、という命>>140には素直に応じ、主が術を施すのを見る。
動き出した屍兵がこれからどうなるかなどは、娘にとっても興味はない。
故に、主の用事が済めば、気づかれる前にと砦の中へ入り込む。
こちらも下手な演技などはする気もない──というか、できない]
……獲物がどこにいるか、わからないな。
どうするんだ、マスター。
[そんなわけで、常と変わらぬ調子で問いかける]
あたしの事を見知っているのがいれば、すぐにばれるぞ。
そうなったら、斬り払っていくだけだが。
[幾度となく食い破らんとした陣だけに、知っている者もいるだろうから。
一応の警戒だけはしているが。*]
― 回想 ―
髪を?
[確かに褒美をやろうとは言った。
それきり、どちらかといえば双子より双子の取ってきた”土産”に向いていた意識は、その言葉で再び双子へと引き戻された。
鏡写しのようににこにこと、同じ顔が満面の笑みを湛えている。
二人が魔を(正確には髪を)指差し、あまつさえ切り取りに来ようかとする姿勢を見せるのに、魔は珍しく辟易とした顔をした。]
馬鹿げたことを。
[先の上機嫌とは打って変わり眉を寄せるが、土産に褒美をくれてやろうと言ったのは確かに己だ。気難しい顔のまま、魔は己の髪をひと房手に掴んだ。
さくりと見えぬ刃に切り取られたそれを、双子へとくれてやる。]
[本質は居城ではなく呪具であり魔導の機構であるゆえにその構造も複雑極まるもの。
異様な浮遊物を抱いた転化槽が無数に並ぶ部屋や、煌めく光が複雑怪奇な回路を走る高天井が連なっていた。
逃げ場の少ない内部を動く、人間の気配や小さな焔。小さな気配が何かに触れる>>139と、深く響く波動が楽しげにささめく。
拒絶や排泄の意志を見せないかわり、殺意の篭るじゃれつきもしばしば降り注いだ]
──
[廊下の半ばに転移魔法がかけられて無限ループを演出したり、なぜか人間が入るサイズの回し車がいきなり置かれていたりもした。
探索者はなにか期待をこめた眼差しのようなものを感じたかもしれない]
/*
ツィーア!!!!!
そこで!!!それを出すか!!!!!
待って。それで腹筋にダメージ受けるの、今のところ我だけなんだけどwwwww
回し車キタコレwwwwww
[結果]
「アンデッド!?」
「何でこんなところに!」
[変わり果てた姿の仲間が兵達に襲い掛かる。
混乱に陥る兵達だったが、門扉の外に元兵アンデッドを追いやることで一時難を逃れた]
「将軍に報告しろ!」
[指示を受けた兵の一人が大慌てで砦の中を駆け出す。
残る兵達は門扉を殴りつけてくるアンデッドを侵入させないためにその場に留まり、増援を待つことに]
― モーザック砦 ―
[魔軍の襲撃に備え、緊張感に包まれるモーザック砦の内部が俄かに騒がしくなる。
何事か、と男が気付いた次の瞬間、副官が男の下へと駆け込んできた]
「将軍! 砦の中に敵が侵入したもようです!」
なんだと!?
[南門の異変と漣のように広がっていった敵襲の話が副官の下に舞い込んだのはほぼ同時。
急ぎ報告にやってきた副官の顔にも焦りの色が出ていた]
「南門に配置した兵がアンデッドへと変わり果てて居ました。
現在魔法兵を向かわせ聖水と炎での対処を行っています。
それから砦の中で例の紅い装束の娘を見た、と…」
…あの魔か!
[ロー・シェンを連れ去った元凶。
進軍してくる軍団を指揮しているかと思いきや、裏をかいて砦へと侵入してきたらしい。
あの2人相手では門兵も為すすべなく倒されてしまったのだと悟る。
してやられた、と男は拳を強く握った]
「敵は3人とのこと。
如何しますか」
3人? ならばもう一人は…。
無闇に手は出すな、倒されてしまえば敵の手駒が増えてしまう。
私が向おう。
可能ならば広い場所に誘導してくれ。
[主従以外にも一人いると知り、何者かと思案する時間は短い。
それよりもと、避難民に被害が出ず、男がクレイモアを振り回せる場所へ誘導して欲しいと指示を出す。
誘導場所として選ばれたのは、砦内にある演習場。
男も愛剣を携えその場所へと向かう*]
[複雑怪奇な意匠の回廊が、部屋が、行手に現れる。
値のつけられないようなものも多いのだろう。
その場にあるものを使って、切り抜けるのが基本姿勢のディークだが、魔王城のものを持ち帰りたいという誘惑は欠片も感じなかった。
額の痣が痛む。
衛兵らしき者の姿はまったく見かけなかったが、時折、視線や呼吸に似たものを感じることはあった。
不意に出現するトラップや、体力を消耗しそうな仕掛けに威勢良く毒づく。
見張りに発見されることを怖れていたらできないはずだが、素直に吐き出していいと感じてしまうのは、遊ばれている自覚があるから。]
[勘の赴くままに進路を選び、上を目指す。
偉いヤツが高いところを好むのは本能のようなものだから、ロー・シェンもきっと上に連れてゆかれているはずだと。]
みてろ よっ
[果ての見えない螺旋階段…なのか回し車なのか?──の途中で、壁に背を預けて息を整える。
と、不意に壁が抜けて、後ろに転がり落ちた。]
ぅおあ…!
― モーザック砦 ―
その辺の雑兵を捕えて聞き出しても構わないけど、
[よく考えるまでもなく、潜入には不向きな面子だ。]
…お前にも何か被せておくべきだったねえ。
[フード3人組というわけである。
危惧の通りに一人の兵士がアイリを見止めた>>155のは、そんな現実的やら暢気やら分からぬ返答を僕>>149に返した直後であった。蒼白になった兵士の叫びは途中で無残にも断ち切られるが。]
あれのことだ。
騒ぎを知れば出て来ようよ。
[探すより呼びつけるのが早いと。
兵らを見殺しにする者ではあるまいと魔は笑って、人ごっこをやめた魔は、闇の刃を辺りに散らした。]
[魔が高みを悦ぶというのも稚気であると思う。
いかに高い塔をたてたところで、天の世界には届かぬものを。]
「かほどに人間に肩入れするならば、地上へ赴き、人の間で暮らしてみるがよかろう」
「人間に失望したら、ここへ帰っておいで」
「その時は、おまえも人間の”浄化”に賛同してくれるはずだ」
― モーザック砦北西 ―
[街道を堂々と進んできた魔軍は、夜が空を覆う頃にモーザック砦の前に到達する。
最初に篝火の明かりに照らされたのは、屍兵とゴーレム、亜人たちの混成部隊だった。
誰かが指揮するわけでもない。
功に逸った雑兵どもと、創造主の言い置いた命をただ愚直に忠実に実行せんと進む死者と土塊の群れ。
その進軍は歪でちぐはぐで無秩序だった。
ただ、数ばかりは多い。
それぞれが緩やかにまとまりつつもバラバラに進む先行部隊の前に、林立する柵と、聳え立つ立派な門が現れた。奥にあるはずの砦の姿は、まだ見えない。]
[目的地へ到達するなり、亜人たちは喊声を上げて突撃した。
複雑に立てられた馬防柵の間を右往左往する間に、突撃の勢いは薄れる。
しかし、目先にぶら下げられた褒美に目がくらんでいる亜人たちは、めげずに突破を試みた。
右へ行き、左へ行き、時にはぐるりと回りながら、柵を壊す手間をかけるよりはと道なりに出口を目指す。
「隊長!火を放ちましょう!」
ゴブリンどもの一団が刻一刻と迫ってくる中、火計を任された工作隊の隊長は、泣きつくような顔の部下に、頑として首を盾に振らなかった。
「俺達が燃やすのは、ゴブリンどもじゃねえ。あの腐れ野郎どもだ」
のたりのたり進む屍兵の一団は、まだ馬防柵の内側に入りきっていない。今火を付ければ避けられて、討ち漏らす可能性があった。]
[いよいよ亜人の先頭が柵の終端に近づき、護衛の歩兵たちは一戦交える覚悟を決める。
だが柵の間を抜けてきたゴブリンたちは、すぐ側にいる人間たちなど見向きもせずに、立派な建物を目指して駆けていった。
彼らにぶら下がっている餌は、『もっとも身分の高い人間』だ。
そういう連中は、立派な建物の中にいるものだと思っている。
その建物が、半ば幻影だと気づく知能も無い。
駆け抜ける亜人たちの後ろで、横で、前で、柵があかあかと燃え上がった。
遂に屍兵を顎へ捕らえ、罠が牙を剥いたのだった。]
[複雑な通路の中で炎に巻かれた屍兵たちは、次々と黒く身を焦がし、活動を止めて崩れ落ちる。
中には燃えたまま暫く歩くものもあったが、出口にはたどり着かずに燃え尽きた。
屍兵と共に進み、炎をものともせぬゴーレムたちは、その強靭な体と膂力を揮って目の前を塞ぐ炎の柵を破壊しにかかる。
屍兵を救おうというのではない。
そもそも彼らにそんな知性は無い。
直進するに邪魔な障害物を排除しようというだけだ。
執拗なゴーレムの殴打により柵が崩れた箇所は火勢が弱まり、いくらかの屍兵が燃えずに残ることもあった。]
[先を進む亜人たちには、屍兵の窮状に構うつもりも余裕もない。
不幸な連中は屍兵と共に炎に巻かれて悲鳴を上げたが、先を行く者達は真っ直ぐ先を目指した。
褒美という餌に釣られ、炎に追い立てれらた亜人たちはたとえ上から射かけられようとも向こうに重歩兵の列が見えようとも、先を争って門へ殺到する。
奥で待ち構える重歩兵に斬りかからんと勇んで飛び込んだ先頭の一匹は、門をくぐった途端にふつりと掻き消えた。
続々と飛び込む仲間たちが消えていくのを目の当たりにして、ようやく亜人たちも何かがおかしいと勘づく。
だが、なおも背後から来る味方に押され、矢や炎に追い立てられ、じわりと横に広がりつつも門へ飛び込んで消える者は後を絶たなかった。]*
─ 出立の前・玉座 ─
[シメオンの穫ってきた王族が運ばれてきた時、ヒトガタは離れた位置に控えていた>>147]
…。
[昏色に沈んだ瞳に、薄く光が乗って濡れる。
魔王が弟の体に触れて何か言い、それに対してツィーアが魔力の波動を用いて話しかけている。
『斯様なところに置くか…喰らいたくて困る』などと]
……
[俯くかに顎を引き、そのまま。
命があるのは、やがて移動する兵器がモーザック砦に近づいた頃。
改良した玩具の働きぶりを試したい、とツィーアはヒトガタを立ち上がらせ、外へと出した]
『双子? ああ…あれか』
[罠を避けろと王から声をかけられ、ツィーアはそわそわと煙を吐いた>>135]
『闇双子… ああ
では
そう、砦へ行かせず長耳共の死を刈るか
あれらは人間などよりもよほど美味かろうな』
[そして、ヒトガタは砦攻めではなく、ミュスカの森のエルフを殲滅するために、残ることとなった>>117>>118]**
[当初、襲撃者たちを押しとどめんとした兵らは果敢に襲撃者らへと立ち向かい、その果敢な無謀さのツケを己の命で贖った。赤紅が舞う、それに漏れた兵らは魔が自ら闇を振るって刈り取った。
その傍ら、フードを被った女は夢の中にあるかの如く佇んでいる。]
確かにここでは、あまり面白くもない。
[そう返したのは、廊下などという狭苦しい空間が、魔の美意識をあまり良い方向に刺激しなかったためである。結局のところ、三者三様の意図が合致する形となった。
足元に死体が転がれば、それは魔の手によって屍兵とされる。
つい先ほどまでの人間がアンデッドとなり、次は己もそうされるのやも知れないのだ。その脅威というより不気味さに少し兵が引く。
いや、それもまた計算の裡だったか。
戦いの場は次第に演習場へと向かっていた。]
─ ツィーア下層 ─
[階段構造から転落した小さな気配>>160
その下は、破光兵器の魔導炉が息衝く空間だった。
全ての経絡の中心、祭壇のような装置の中心には拳ほどの窪みが]
『…お前?』
[思い出した、というように、不意に波動が空気を震わせた。
その波長を汲み取れるものならば、城が囁く音声として聞こえるだろうもの]
『覚えている、その妙な命
人形と話していたな』
[お前の死を貰い受けるとヒトガタに言わせた相手だ。
ではそうしようか、と喉を鳴らすように]*
― 魔軍本隊 ―
[先に行ったものたちから遅れること暫く。
本隊が砦の前に到達するころには、炎があかあかと夜空を焦がしていた。]
は。
無様だな。
[炎の中に蠢くものを見、重なる悲鳴を聞いて魔王は吐き捨てる。
罠を知りながら対処しなかったことは、完全に棚に上げていた。]
― モーザック砦・演習場 ―
[演習場へと入れば、”目当て”が現れるのも時間の問題か。
無論現れずば、死体と屍兵が増えていくばかりである。]
「ひ…!やめろ!!」
[事実、幾つかの場所では「出来立て」の屍兵と兵の無残な戦いが起きていた。砦には聖水の用意もある>>157
故に被害が広がりすぎるということはなかったが、それでも砦の外の魔軍の侵攻まで始まってきてしまえば、未だ砦に戦火至らずとはいえ、兵らの浮足立つも無理はなかった。]
──── 飽きたな。
[いい加減、雑魚で遊ぶのも飽きた。
魔は手近な負傷兵へと手を伸ばす。
逃げようと足掻いた兵は、空しく魔の手に捕らえられた。]
ヨセフはどこだい?連れておいでよ。
それとも…お前も屍兵になって案内するかい?
[多少手間だが精神支配でもしてやろうか。やっぱり手軽な屍兵では知性が失われて仕方がない。
そこまで小物を手に思考してると、兵が狂った。恐怖のあまりに意味の分からないことを叫び散らし、遂には白目を剥いた兵を興味なさげに放り出しながら、魔は些か不機嫌に*口を結んだ*]
[長く長く落下した先。(その感覚は過去にどこかで知っている)
祭壇めいた魔導炉が息づく。(天の正反対にある、決して相容れぬ力)
ディークはカードで自分をバウンドさせて落下の衝撃を相殺し、魔導炉を踏まないよう、宙に浮かせたカードの
上に立って、その光景を見下ろした。
あまり近づくと、魂が染まってしまうような──危機感が脈搏つ。]
しゃべった…?!
[空間に波動が反響して肌を揺らす。 それを声として認識する。]
人形遊びの趣味はないぞ。
[意気がってみせるのはいつものことと、減らず口を返したが、”人形”が何を指すかはすぐさま理解した。]
貸しがあるってか?
[傷を癒してもらった。
一緒にその恩恵を受けた傭兵隊の連中は、すでに命を落し、いまや残るは自分だけだろうという、あまり思い出したくない認識も一緒に戻ってくる。]
/*
一時帰宅(何
魔王さまに愛でられちゃったの把握(語弊
そして、ディーク...おま...それは、あれか、俺がお前を失望させると人類ごと滅びるとか、そーゆー...
/*
ああ、しかしあれか、ディークは落胤のシークエンスをRPで成立させようとしてるんだな、多分。そーすっと俺はとりあえず自力でディークと合流する努力はしないとか。
......魔王様から逃げるの??(わあ
[ 只人にしては、身体能力が高過ぎた娘...お互い父が傍にいなかったから、それは自然と不可触の話題となっていたけれど、父親の事は、全く知らないのだ、と、聞いたことはあって、少し不自然を感じてはいたのだ ]
...半魔...
[ 実はそういった存在を、人の側が作ろうと試みた事がある、という古書を読んだ事がある。それが成功したのか失敗したのかは、既に滅び去った国の事故に記録されていなかったが ]
リー...お前もきっと、知らなかったんだな。
[ アイリの母親も、彼等の隠れ住んでいた村の人々も、恐らくはそれを知っていたから、アイリを隠し、魔の触手から護ろうとした。
しかし、結局、魔将の手に捕らわれて、彼女は死を刈る銀月の戦士とされた ]
リー...すまない。
[ 彼女が何者であろうと、男の中では何ひとつ変わりはしない。この世でたった一人の、大切な妹 ]
俺がお前を、護らなければいけなかったのに...
[ 悔いる声は、彼女の元には届かない** ]
― モーザック砦 ―
砦内のアンデッドは聖水か聖別した武器で対処を。
火はなるべく使うな。
[炎で燃やす場合は燃え尽きるまでに時間がかかるため、他の騒ぎが起きかねない。
アンデッド兵の対処の指示を出しながら、男は演習場へと急いだ。
侵入者が通った通路を中心にアンデッド騒ぎは広まりつつある。
外では魔軍が迫っており、砦内は慌しさが加速していた]
外は手筈通りに。
エルフの戦士達が魔軍を突くまで耐え凌げ。
[男は副官を伴い、他の騎士に現場指揮を任せる。
やがて、演習場に辿り着いた先で、侵入者の姿を見つけた]
……まさか忍び込んでくるとは思っていなかったぞ。
[どう見ても目立つ赤紅を伴っての潜入。
余程の腕と度胸がなければ為し得ない]
目的は……と聞くのは愚問か。
[す、とクレイモアを抜き放ちながらの言葉。
傍らでは副官がロングスピアを構えている]
ここで討ち取ってくれる。
[そう宣して魔と赤紅を見遣った。
その近く、フードを被る人物が視界に入ると、男はの瞳が僅かに揺らいだ。
あの立ち姿には見覚えがある*]
─ ツィーア下層 ─
『何故だ?人形遊びは面白い』
[疑問系ではあるけれど、会話の体をなすことない波動。
耳目のない兵器は、感じ取る気配を目標として捉え、]
『お前も少し楽しい。好きだ』
[空気が帯電し、白い光が鋭く渡った。
魔の雷は焔まとったカードの一枚を貫く。
苛烈さを増した戯れは、カードと人間の区別つかずに断続的に弾けた。
往生際の悪いという獲物、いずれにせよ体力という概念は考慮されない。
延々と続く放電の攻撃は、飽きるか、逃げられるか、遊び以外に興味を覚えるまで]**
/*
赤の双子関係は聞こえてない方がいいだろうなと思うので...ていうか、あれだな、自分が気にしてる部分だけ聞こえる的な御都合主義にしとこうね。
『悔いるのはまだ早いわ、ロー』
[ 再び沈みかける魂を引き上げるかのような艶やかな声が響く ]
母さん...?!
[ シャン、と答えるように、鈴の音が鳴った。ローグ随一の舞姫と謳われた母が、足に飾っていたアンクレットの鳴るその音は、男にとって子守唄のように懐かしい音だ ]
『忘れてはダメ。人は笑うために生きるの。あなたも、そう誓ったばかりでしょう?』
......ああ、判ってる、母さん。諦めたりしないよ。俺は、リーを取り戻す。
あの子の笑顔を、必ず。
『いい子ね、ローは、とても、いい子』
[ シャンシャンシャン、と、軽やかに鈴は鳴る。
楽しげに、誇らかに ]
― 思い出 ―
[ 母は、明るく強いひとだった。それは、死の、その瞬間まで変わることなく ]
『泣いてもいいけど、泣き続けてはダメよ...』
[ 子供達を庇って魔物に受けた傷は、治癒の術も及ばぬ程に深く、最早死が目前に迫ると判っていても、美しい微笑みを浮かべたままで ]
『可愛い私の息子...どうか...笑っていて......ずっと、見ているから......』
[ 美しく舞う母の姿が好きだった。その笑顔が好きだった......彼女が魔に命を奪われた時、男の中で、何かが変わったのは確かなことだ ]
母さん......母さんっ!
[ 母の遺した言葉通りに、少年だった男は泣いて、泣いて...そうして立ち上がった。
魔の闇に覆われようとする世界、その世界で笑って生きるためには、その闇に負けぬ強さを、と... ]
[ 魔とは、なんなのか...? ]
[ 取り残された青い闇の中、男は思う ]
[ あの魔将は、人のように笑うけれど、それはどこか、空虚な笑みだ。
そこに、本当の喜びは無く、人の感じるような幸福の暖かさは無い......男にはそう見えた ]
[ 人を下等なものと呼び、家畜や奴隷として扱いながら...彼等は、人を模したかの姿をして、人を真似るかのように笑い、楽しんでいるかに見える ]
[ けれど... ]
[ あの禍々しく美しい魔将は、人の心を欠片も理解はしていなかった...本当に、何ひとつ ]
[ 魔王は楽しい悪戯を思いついたかのように、男の身体を脇に置き「見せてやろう」と言葉にした。
魔によって閉ざされた闇の檻の一部が、更に強大な力を持つ魔王の言霊によって、意図することなく開かれて、男の魂は「視界」を得る ]
ヨセフ...皆......
[ 蹂躙される様を、と、魔王は言った。けれど]
信じている...から。
[ 押し寄せる魔の軍勢、その圧倒的な行軍の前に、儚くも揺れる篝火...手を伸ばそうとしても、声を届けようとしても、決して届かない。
その無力感に苛まれつつもなお
男の心は、絶望からは遠い** ]
やっと出てきたか。
もう飽きて全部壊そうかと思い始めていたところだよ。
[あながち冗談でもない風で、魔は漸く姿を現したヨセフに笑顔を見せた。
そのついでに、何を勘違いしたのだか、勇敢にも飛び掛かって来た兵士の亡骸をぽいと別の兵士めがけて投げ捨てる。屍はうぞりと起き上がる風を見せたが、それはすぐに聖別された剣を持った別の兵士によって鎮められた。
嫌悪と怒りの視線を事も無げに受け、魔は獲物へと笑う。]
目的?ふ、ふふふ。
ロー・シェンの出来を披露しに!……なんてね?
まあ、まだ連れてきてはいないんだけど。
あれはやっぱり、素晴らしい素材だよ。
仕上がったら是非とも諸君にお目にかけよう。
お前たちもどうだい?
頭と仰いだ人間が、お前たちを殺しに来るなんて素敵だろう?
その時はきちんとお前たちにも見せてやろうねえ。
[言葉の後半は砦の兵士に向けてだ。
わざとらしく嫌味たらしく、魔は兵たちを見回した。]
今日はちょっと材料が足りなくなって、その補充にね。
そりゃあ、お前たちの皇子さまだ。
あんまり不細工な加工をするわけにはいかないだろう?
… ああ、ヨセフ。これが気になるかい?
そうそう、───ほら。
行っておいで。
お前が会いたがっていた”ヨセフ様”だよ。
[ヨセフの視線の先を追って、魔はフードを被った女へと顔を向けた。そのフードを手で取り払ってやる。
その下から出てくるのは、青褪めた女の顔、ただ他のアンデッドよりは美しい──…温かみさえあれば生きているかと思わせられる、死人形である。
ただ、その肌は冷たく血の色はない。死人の色だ。]
[女は、放たれればふらりと夢遊病患者の如くに歩き始めた。
足取りはふわりふわりと、ただそれはこれまでのアンデッドとはやや様子が異なる様子で、何か呟きながらヨセフへと向かう。
傍に寄れば彼は聞くだろう。家族の名を呼ぶ、妻の声を。]
どうだい?
”そのままの形で会えるように”と願われたんだ、
それをきちんと叶えてやったんだ。優しいだろう?
[それが誰の願いかは言わず]
こないだのアレは気に入って貰えなかったようだからねえ。
受け取っておくれ───、君の妻だ。
[女は、ゆっくりと歩みながら抱擁を求めるように支えを求めるように、両の腕を彼へ差し伸べている。
彼か彼の傍らの副官がそれを脅威と見做せば、女はあっさりと斬られるだろう。ただ、女はその手に何も持ってはいない。
魔は、今はもう心底楽しそうな表情で親切めかした口をきき、死した女とヨセフとを眺めていた。*]
[波動が肌に魔導炉の意識を伝える。>>186
同時に、容赦のない電撃が左手から入って、灼熱に痙攣させた。]
…っう ぐぁ!
は…あ、 効くねえ!
[灼かれたカードが毟られた羽のように散り、骨が軋んで、引き攣った笑みを乗せながら、ディークは首を振ってみせる。]
お気に召していただき、恐悦至極──って言うと思うか、雷電君。
楽しみは、分かち合うと倍になるってよ!
[その意のままに、陣を離れたカードが翻り、魔導炉の経絡に斬りつける。
それは、雷雲と戯れる竜巻にも似て。
力を見せびらかして面倒事に巻き込まれるのは面倒くさい、という主義のディークが、このように全力でカードを展開するのは、極めて稀といえた。
それだけ、ここはコアだと直感で掴んでいる。
自らはカードを踏んで位置を変え、追いかけっこを誘うように走り出す。]
こういうの好きか、おまえ。
遊んでやるのはやぶさかじゃないが──しゃべれるなら教えてくれ。
ロー・シェンを知っているな? 食ったか?
[関心を自分から逸らすのが目的ではなく、一番、知りたい相手のことを率直に訊いた。]
― 魔軍本隊 ―
[前線へ到着した魔軍の本隊を迎えたのは、燃え盛る炎の回廊だった。
数多の屍兵を焼き、未だ火勢衰えぬのは工作兵らの尽力の賜物。
恐るべき炎の中を突っ切って進軍しようという無謀は、さすがに愚鈍な亜人たちの中にもいない。
意を決した狼牙の一匹が、燃える柵を避けて砦へ近づこうと試み、複雑に配置された策の内側へいつしか誘導されて炎に巻かれ、絶命する。
それを目の当たりにしたものたちは、いっそう慄いて立ち尽くした。
この炎の猛威の前では狼牙の俊足も、鉄底の堅牢も役には立たない。
停滞する進軍を、苦く見下ろすものがいる。]
なにをしているのだ。
[玉座から腰を浮かせて、魔王は苛立ちの声を上げた。
たかが炎。たかが人間の作った罠である。
この程度、なぜ踏み潰せぬのかと。]
やはり雑兵どもなど当てにならないな。
[忌々しく呟く視線の先には、先行のゴブリンどもの姿がある。
柱と蔦でできた紛い物の城門に突撃しては消えていく無能ども。
魔王の目に、凡百の術士が掛けた幻術など映らない。
仕掛けられた時空の穴に飛び込んでいく愚物が見えるのみだ。]
ツィーア。進め。
[苛立つ魔王は、ついに己の城へ命を下す。
核が離れ、動きが鈍くなっているのを知りながら。]
あの小賢しい代物を薙ぎ払え。
[燃え上がる柵と、一夜にして建った幻の城と、罠に嵌った見苦しいものどもを踏み砕けと。]*
[ 圧倒的かと思われた魔王軍は、しかし、幻影の城の罠に飲まれ、炎の柵に阻まれて、砦の壁にもとりつけぬうちに、停滞の憂き目を見ていた ]
は...はは...!
[ 男の顔に、この闇に沈んでから初めて、明るい笑みが浮かんだ ]
ディーク、お前の作戦だろう?やっぱり凄いよ、お前は。
[ コエが届かないのが、とてつもなく残念だった ]
─ 魔軍本体 ─
[ツィーアは怪訝そうに塔を揺らした。
夜空を焦がす炎]
『消えた。あれは好かぬ罠だ』
[魔の軍勢に含まれる亜人達が罠なり反撃で死ねば、兵器にとっては触媒を得る食餌の時となるはずだった。
しかし、命の気配は知覚範囲から減っていくのに、立ち上る死のエネルギーが足りていない。
不満げな唸りと共に尾を打ち振れば、魔法兵器の後方で不運なゴブリンが数体、死の花を咲かせる]
[ しかし、苛立ちを露わにした魔王が「城」へと進軍を命ずる声が届く ]
...動くか!?
[ この城が前に出る時、恐らくそれが、恐るべき殲滅兵器の本領を発揮する時だろう、と、ヨセフに、その予測を語ったのも記憶に新しい。
冷たい予感に、男は仲間の居る砦を凝視した ]
ヨセフ...逃げて下さい...。
[ 祈りはやはり届かず、そして視線の先、砦の内で、魔将とアイリが、そのヨセフと対峙している事も、男は知らない ]
[やがて砦が近づけば、炎の回廊と幻術の落穴が魔軍を挫き、減らしていると知れた。
我が王の苛立ちはツィーアの苛立ち。
下された命>>199に従い、城砦は大地を引き裂くが如き咆哮をあげた]
[攻城兵器は翼を外へ露出させる。
マルサンヌの生き残りならば決して忘れないだろう、災厄の光を放った射出翼。
人為的に短く切り落とされた翼は12対、臨戦を示して共鳴する魔導の波動は、衝撃波となって張り子の城へと吹き付けた。
まだ触媒は足りない。
ギシ、ビシと火花を散らしながらツィーアは前方へ進む]
[馬防柵を前に停滞していた魔軍が混乱と恐慌と共に、左右へと割れ別れていく。
逃れそびれた魔物達を踏み潰しなぎ払いながら、攻城兵器は炎の回廊を目指す。
計らずも、それは魔軍の分断と撹乱を狙ったエルフ戦士団の助けともなった。
南からの現れた大鹿と騎馬の戦士達は、乱れた魔軍の右翼を強襲し食い破り、新たな悲鳴と怒号が草原に広がっていく]*
/*
起きては寝てを繰り返して、なんとか体調持ち直してきた。
とりあえずヨセフを拝んでおこう。
ほんと色々ありがたい…。
あと魔王様、囁き薄くてごめんね…!!!
[男の視線に気付き、魔がフードの人物へと手を伸ばした。
取り払われたフードの下から現れたのは]
──── ヴェル ザンディ、
[変わり果てた最愛の妻。
その姿を見て男は息を呑む。
兄の時とは異なり肉が腐り落ちることは無く、姿形自体は以前の美しい姿のまま。
だが肌の色は死者であることを示している。
妻は虚ろな表情のまま、ふらりと歩を進めてきた。
他のアンデッドよりは人らしい歩き方]
[やがて、男の左手に温もりのない右手が添えられた]
「ヨセフさま……」
ヴェルザンディ……
[名を呼ぶ妻を引き寄せ、左腕だけで一瞬の抱擁]
すまない、
[涙しながら耳元で謝罪を囁く]
─ ツィーア下層 ─
[斬り裂かれた魔導の経絡>>196はエネルギーを振り零す。高密度の死は魔導炉に注がれ、あるいは床へ落ちて瘴気を撒き散らした。
機敏に動き始めた気配を追って、雷撃が幾度も閃いた。
あるいは壁の装飾が崩れ、物理的にも襲う]
『ロー・シェン?』
[なんだそれは、という反応の暫く後、
竜巻のように舞うカードへ火花を叩きつけながら音声は続いた]
『レオヴィルの王族か。あれは美味そうなのに。
だがお前も、美味そうだぞ?
シメオンになどに獲られてくれるな』
[フォローのような響きを帯びさせつつ]
…… へえ?
[女が、そのままヨセフのところへ行くのに、魔は少しばかり驚いたような顔をした。あのまま男の首でも締めるのだろうと思っていたのに、まさか抱き寄せられようとは。]
思ったより悪くない出来だったかな?
[そんな独り言を落とし、首傾ける。
もっとも、そんな暇はなかったわけだが。]
先生を失望させてごめんなさい!
『次は、次こそはちゃんとやります…!』
[王国軍の柱となる頭は、あの皇子サマだった。
けれどそれはシメオンが獲った。
ならば……次の頭を狙わなければ。
彼らの様子を見ていれば
次に信頼が集まっている先は赤子でもわかる]
おっと。気の短い男だな。
もう立ち直ったのかい?
[ふざけたような口調のまま、男の剣をかわさんと身を翻す。
時同じくして殺到して来る刃は、僕がここには至らせまい。]
お前も同じく並べてやろうというのに。
[やはり勝手を並べて返す手には、先日と同じく漆黒の刃が握られている。それを刃合わせて切り返すようにして振り抜いた。
大きく動けば、ざわと背後から微かに魔力が零れ落ちる。
やはり塞がるには少しばかり時がかかる。構わず笑った。//]
― 防衛戦 ―
[炎の回廊と強制転移は目的通りの効果を発揮した。
アンデッドは大半が崩れ去り、亜人達が押し出されるように出丸の門へと飛び込んでいく。
自分達に目もくれず先へ向かおうとする亜人達の行動に疑問を抱く工作兵達だったが、自ら飛び込んでくれるならば是非も無い。
指示された通りに火を絶やすことなく後続を抑えるために尽力を続けた]
[それが魔王の機嫌を損ねる結果となるとは露ほども知らぬ。
やがて、移動要塞が動き出すのに気付けば、表情を変えるのはこちらの番だった]
「拙い、攻城兵器が来るぞ!」
[モンテリー騎士の一人が移動要塞が露出させた翼>>201を見て声を上げる。
ビリビリと空気を伝う衝撃波が出丸を揺らした。
魔物達を踏み潰しながら進む移動要塞を止める術は持ち得ぬ。
エルフ戦士団の強襲が始まったようだが、誰も楽観することは出来ずに居た*]
[ 力をもって蹂躙せんと、魔の城が揺れる。
魔導の共鳴を示す波動は、男の魂にまで届いて、びりびりと、痺れるような感覚を齎した ]
く...う...!
[ 死と破壊を望む、衝動の音叉...その波に半ば翻弄されながら、男は先の疑念を無意識に蘇らせる ]
[ 魔とは...... ]
[ 力のみを求め...弱きを蹂躙することを楽しむという、魔とは...... ]
[ 他を圧する力を持つ、魔王とは... ]
[ .........如何なる、存在なのか? ]
/*
うん、時間あったら首締めされるつもりだったんだけどね…。
自分の遅筆と相談した結果、落ちの人のための時間を自分に使うのはやめなさい、と窘められました(誰に
/*
シメオンとヨセフのところが、奥さん絡みで
とっても楽しそうになっていて幸いです…ふふ。
そういや、ディークは飴両方とも使ってくれてありがとうね。
サービス精神旺盛なディーク好きだよw
─ 平原の戦場 ─
[森の賢者エルフの生き残りは、寡兵ながら一人が十騎にも百騎にも及ぶ戦士であり、
また強大な精霊魔法の使い手もあった。
吹き荒ぶ風、歪みに敵を飲み込む地裂。
疾駆する大鹿の動きすら捉えきれぬまま、魔軍本体の右翼は大きく削られていく。
彼らの狙いは移動城砦が戴く魔王、その人。
だがツィーアに顔があったとしてもそちらを一顧だにすることはなく、ただモーザックの前に張られた罠を薙ぎはらうべく進むのみだった]
来たか
[馬上、魔軍本体のやや後方にあったヒトガタは南へと馬の鼻を向けた。
強襲者を強靭な城砦へ十分に引きつけ、その機動性の利を抑えて攻勢を防ぐべき。人間の記憶はそう判じたが]
……刈り取ればいいのだろう
行くぞ、敵遊撃隊を殺せ!
[号令と共に馬魔へ拍車をかけ、ヒトガタは狂乱する戦場へ突っ込んでいった]*
[足元で魔法兵器が鳴動し、歯車の唸りと魔導の波が大気を揺らす。
火花散らし伸びる射出翼の光が、玉座の上も淡く照らした。]
好い。
好いぞ、ツィーア。
[あらゆるものを踏み砕き進む城塞の上で、魔王は快哉を上げる。
全てを越えてゆくシンプルで美しい力の発露こそ、魔王がなにより好むものだった。]
/*
時間結構無いよねー、がんばれ、魔将殿!がんばれヨセフ!
そして、俺も、この状況下で目覚めたらどうすりゃいいのか、いまいち不明だ。
[ 今、思いついてる事は、大概自殺行為臭い ]
物語の要請上ってことで、反則技使うしかないかもね。
[ 胸の小袋ごそごそ ]
― モーザック砦・演習場 ―
[横薙ぎに振るった大鎌で近づく兵を薙ぎ払い、次の構えに移行しようとした所に、槍の穂先が繰り出されてくる]
……っ!
[とっさに横へと飛び退く事で鋭い一閃を避けた娘は、鋭い亜麻色を槍手へ向けた]
お前……邪魔だ。
[低い呟きと共に、そちらへ向けて身構える。
黒き将程ではないが、こちらも相応できるらしい。
ならば獲るのみ、と、思考はそちらへ自然に流れていた。*]
[前触れなき城塞の吶喊に、魔軍は大いに混乱し、割れた。
進みゆく魔法兵器の足に、燃え上がる柵が、焼け残った屍兵が、ゴーレムが、本隊前面に展開していた亜人たちや鉄底族の一部までもが踏み砕かれる。
混乱した魔軍は、それでも王の進軍に遅れまじと後に続いたが、そこにエルフらによる強襲遊撃隊の攻撃が加えられた。
更なる混乱の中、応戦することもままならずに魔の軍勢は次々と数を打ち減らされていく。
それを魔王が顧みることはない。
王に追従できぬ者達が悪いのだと言わんばかりに。]
― モンテリー砦・演習場 ―
増えやしないよ。お前が大人しく来るならね。
約束したっていいよ?
[からかう口調で続ける。魔は、息を切らすことがない。だから動きながらも舌は止まらない。
弾いた刃は、そのまま回転するようにして戻って来た。
驚くべき力、そして技量の高さだ。面白そうにそれを観察していたが、その速度に避けきれぬと知ると、魔はやはりそれを受け止めんとする挙に出た。今度は腕ではない。刃に闇を凝らせ、大剣をその場に留めようというのだ。]
お前にまで──…
使いたくはなかったが。
[そうして、少し動きが止まればその場に放り投げられるのは黒い魔石。ロー・シェンの時と同じく、術を仕掛けて捕らえんというのだ。]
…… 闇に蠢く 歪なる者どもよ
[詠唱に入れば刃を振るうまでの暇はない。
これを使いたくなかったのは本心から、流石に今、この大規模な術を連続して行使するのは魔将の身にも負担が大きいのだ。
それでも敢えて手を打つのは、それだけ目前の獲物を認めた証。
ざわりと魔の気配が濃くなる。それを、ただ人の子なれば魔の術の為にと思うであろう。光の子の裂いた傷跡の、そこより漏れる魔の命と知らずに*]
わあ、いっぱいいるなあ。
『ワタシたちだけでも、がんばれるのにね』
[護衛を兼ねているという感覚はゼロのまま、
見張りの兵らに対してそんな感想を零し。
そのまま双子はおとなしく言いつけに従って見張り台に登った*]
[双子たちの声が聞こえてくる。
それは純粋でいとけなく、愛すべき無垢なる狂信。]
期待していよう。
おまえたちは、本当は良くできる子だからな。
きっと我を喜ばせてくれるだろう?
[約束だ、と囁いて、胸の印に指で触れるような圧を一瞬残した。]
― モンテリー砦・演習場 ―
そのような戯言、信じられるものか。
[約束すると、揶揄う口調の魔>>220へ返す言葉は拒絶。
魔と異なり、こちらは息継ぎをしながらでなければ言葉を発し辛い。
故に返す言葉は徐々に端的になり行く。
回転の勢いを乗せ振り抜かんとした一閃は、再び魔が繰る漆黒刃が阻んだ。
けれど先程とは異なり、大剣は弾かれること無く漆黒刃に絡め取られる]
なっ!?
[驚愕と共に大剣を引き剥がそうと力を込めるのは反射に近い。
しかし絡め取られた大剣は男の力を持ってしてもびくともしなかった。
放り投げられる魔石と紡がれる呪>>221。
ロー・シェンが捕らえられた時をはっきりとは見ていないが、何かを仕掛けようとしているのは明らかだった]
[目の前の魔の気配が濃くなった。
術に禍々しさを感じる]
させ…るか!
[留められた大剣を動かすのは諦め、男は、ひゅ、と息を吸い止めたところで右足を軸としたミドルキックを魔へと放つ。
戦い方を拘っている場合ではないという判断。
術の阻止を優先とした//]
[洪水のような瘴気が立ちこめ、電撃によって剥がれ落ちた壁が降り注ぐ。
その様相はさながら、ミニチュア再現された魔界にも似ているだろうか。
一瞬一瞬が命がけの綱渡りだ。
避け切れなかったエッジの切り裂いた肌から滴る血が床に触れる前に蒸発する。
その間隙、鞭のように愛撫のように、”城の核”の声が届く。>>208]
そこまで言われると、靡きたくもなるが。
ああ、俺も、シメオンは丁重にお断りする。
[その点では、合意がなった。]
俺を獲ったら、シメオンに自慢していいぜ。
[だいぶ削られて寂しいカードを手元に寄せ集め、目の前に反射鏡めいた盾を作る。
そうして、狙い澄ました攻撃を誘った。
攻撃が放たれれば、バク宙をきめて避け、背後の壁に穴を穿たせるべく。]
あいにくと、俺は煮ても食えない男だそうな。
[ここが退き時、と勘が告げていた。
収穫はあった、またいずれな、と穴から外通路に抜け出す算段。*]
[やがて、魔法兵器の先端が人間どもの一夜城へ届こうかという時に、魔王は我が城塞の足を止めさせた。
まさかあの小さな転移門ごときにツィーアが影響を受けるとは思わないが、妙な魔法の干渉が起きても困る。]
ナール。
やれ。
[魔王の言葉を受けて、定位置の塔に止まっていた黒竜は身震いして翼を膨らませた。
体いっぱいに息を吸い込み、牙の並ぶ顎を大きく開く。
喉の奥から噴き出したのは、炎ではなかった。]
[それは生き物を殺し草木を枯らせ大地を腐らせる汚毒の霧。
竜の鱗よりもなお昏い霧が吹きつけられれば、植物でできた仮初の門は黒く萎びて崩れ落ちていく。
不運にも霧に触れるものがあれば、同じように崩れ溶けていった。
一夜城を黒い汚泥へと変えたナールは、誇らしげに翼を広げて咆哮を上げる。
その勝利の雄叫びが、不意に悲鳴へと変わった。]
[広げられた黒竜の翼を、巨大な矢が貫いていた。
砦の上部に設えられたバリスタが、ついにその威力を発揮したのだ。
止まった的であれば当てるのも容易い。
バリスタの強靭な矢は竜の鱗を貫通し、かの強大な幻獣にも痛手を与えた。
それだけではない。矢のいくたりかは魔法兵器にも当たる。
なにしろ、的は巨大だ。]
ナール。
下がっていろ。
[クロスボウなどは脅威とはならないが、バリスタの攻撃にさらされ続けていれば黒竜といえども危ういだろう。
珍しくも魔王は乗騎に下がるを許した。
飛び立った黒竜は、バリスタの矢の届かぬ場所まで舞い上がる。]*
─ ツィーア下層 ─
[気に入りの黒竜へ向けるよりも、攻撃は苛烈だった。>>228
人間が逃げるばかりでなく反撃してくるのが面白かったようで。
この城が我が王以外へ言葉を向けるのは殆ど初めてでもあった]
『自慢?』
[問い返す音声の波動は楽しげなもの、カードが集まればこれまで散漫だった気配の集簇として知覚する。
そこを目掛け、雷撃を練った]
『そのシメオンはお前たちの砦へ向かったのだ。
完成したロー・シェンに会いたいならば、
もう暫し長生きせねばなるまいよ』
[それは魔軍本体の進撃が始まる前。
魔将が先行したことを教えたのは手土産代わりか、殺意とともに放たれた太い雷撃は、
ひらり人間の気配に躱され、下層の壁へ大穴を穿った*]
― モーザック砦・演習場 ―
[弧に歪む魔の双眸>>231に、男は睨むように目を細める。
彼の言葉を間に受けてはいけないと言うのは、男の中では既に決定されたことだった。
喩え約束が真実だったとしても、その内容によっては結局拒絶したことだろう]
……っ、
[立ち込める魔力の濃さに息苦しさを感じ始めた頃、放ったミドルキックにより魔の詠唱が一瞬途切れる>>232。
表情が変わったことに、男はほんの少しだけ口端を持ち上げた。
大剣は留められた箇所から引き抜くに至れたか否か。
それを確かめつつも、次いで放つのは足払いを狙うローキック//]
――――、… 「「 だから 」」
[少年は懐から取り出した短剣を
傍に立っていた見張りのひとりの喉を目掛けて振るう。
少女もまた、背後に短剣を投げて其の頭を貫いた]
[戦場を吹く森の嵐が雑兵を切り裂き、短弓の剛が狼牙を貫く。
鉄底族の大盾はエルフの魔法をも防いだが、大鹿の速度に対応出来なかった。
数を減らしていく魔の軍勢の間を、ヒトガタは青肌の馬で駆ける。
満ちる死を収穫して核が鳴いた──チリン]
ぅおお!
[右に片手剣を抜き、ヒトガタの左の指が結んだのは爆裂の魔法。
鞍上に腰を上げた人形の背後で空気が弾け、
爆風を受けて凄まじい勢いで跳躍した。
不意打ちそのものの激突は、回避できなかったエルフの腹へ深々と刃を貫かせる。
そのまま大鹿ごと引き倒すように大地へと転がり、ゴブリンを一体巻き込んで止まった。
絶命したエルフの体にめり込んだ剣の柄には手をかけず、ヒトガタは起き上がる。
腰から短剣を引き抜く動作は、爆裂や衝突を痛みとして認識しない静かさで]*
[銀糸の触媒を手に、見よう見まねで呪を唱える。
なんとか成功したのか、オリジナルと比べると多少いびつながらも、
倒れた見張り兵らは…ざり、ざりと四つんばいで立ち上がり、
見張りの塔を下ってゆく。
下からだけでない上からのアンデットの襲来は、
砦の混乱に一層拍車をかけることだろう*]
[ナールが飛び去った後、バリスタやクロスボウの矢は必然的に魔王の城へと集中する。
玉座にある魔王の姿は夜の闇の中でも淡く輝いていたから、城兵らの攻撃も必死のものとなった。]
ここに、レオヴィルの王族がいると知ったら、奴らはどうするつもりだろうな。
[己はあのような矢玉で倒されるつもりはないが、人間の身体は容易く壊れるだろう。
未だそうならないのは、彼我の距離が射程ぎりぎりであることと、単なる幸運の賜物にすぎない。
ただ、どちらにとって幸か不幸か、城の連中に教えやって攻撃を止めさせようという発想には至らなかった。]
痛くはないとはいえ、これは鬱陶しいな。
少し下がれ、ツィーア。
[小賢しい罠は踏み砕いた。
後は雑兵どもに任せればいいだろう。
そう考えた魔王は後方を振りかえり───広がる惨状に暫し沈思した。]
[続けざま放たれるローキックを交わさんと、身体を引く。
ぞわりと、魔の気配はまた濃くなる…けれど。
…ず。と、大剣は闇の枷から外れ出る。
一連の、ほんの短い間の出来事だった。*]
─ 炎の回廊・上 ─
[行儀よく止まった魔法兵器の前で、砦の出丸が黒い汚泥へと変じていく。>>236
広げた射出翼は絶えず光を帯びて、優美なほどのこの世ならざる景色を作り出していたが]
──
[黒竜が痛みに鳴いた直後、兵器の翼や体にも巨大な矢が飛来する。
それらはツィーアの外装を損ね、青白い火花が散った。
汚毒の霧に降り重なるように、死を練り上げたエネルギーの破片が瘴気と変じて散る]
[核を乗せたヒトガタとの距離は開いている。その分だけの弱体化は、矢を受けるたび剥落する浅い傷となった]
『…私にも下がれと?』
[竜が傷ついた気配、でありながら死なせるにも至らない攻撃に、ツィーアの声は不満の波動を起こした。
拗ねるような声を響かせながらも、前進の足は逆回転を始める]
『もう少しで満ちるが、この砦へ放って良いか』
[指先が触れるような感触。
胸の印が…悦びでじんわりと熱い]
『はい、もちろん』
先生の望みのままに。
[早く――… お傍にいきたい。
しばらく“お仕事”で会うことすら出来ていない。
その手で直接、労うように頭を撫でてもらってもいない。
もっと誉めてほしい。
もっと認めてほしい。
もっと…アナタの必要なものでありたい。
それが双子の切なる願い―――――]
/*
ところでボクらはリアルで魔王様に対面できるのだろうか…(
(ふっと脳裏を過ぎるるがる9←)
まあ今回は囁きあるから全然マシだがな!w
― モーザック砦・演習場 ―
[持ち上がった口端はすぐさま引き締められる。
まだ終わってはいない、と己に言い聞かせ、ローキックのために軸足を切り替えた時、男は僅かな変化を察した。
留められていた大剣が僅かに動いたのだ]
ぐっ……
[ローキックを躱すために魔が動くと立ち込める魔力が濃くなる。
それを受けて呻き声を上げたが、ぐっと堪えて一時息を止めた。
追い縋るように一歩、魔の方へと踏み出す]
[ 破られる罠...重なる死の気配 ]
[ 死を操る魔将の魔力に身を曝しているせいか、それらは常より身近に、男の内に届く ]
(帰らなければ...)
[ 死の影が全てを覆う前に...... ]
おおおおおおっ!!
[ず、と鈍い音共に闇の枷から引き抜いた大剣を右肩に担ぐように振り上げ、怒号一閃。
魔の左肩から袈裟懸けの軌道で大剣を振り下ろした//]
― 副官の奮闘 ―
[身軽な赤紅は払い上げの一撃を難なく躱す>>233。
空を切った長槍を頭上で切先を円を描くように動かし、手元へと引き戻した時、赤紅が右肩に担いだ大鎌を振り下ろさんとしていた。
それに対し、長槍の柄を大鎌の柄にぶつけて弾こうとした副官だったが、大鎌を引かれたことで虚を突かれ、長槍が再び空を切る。
「しまっ……!」
[上体を開いた体勢で副官の表情が歪んだ。
それは追撃を覚悟してのこと。
けれど、向けられた大鎌の背は直ぐには副官に襲い掛かることはなく]
「はああぁ!!」
[左へと振り上げる形になっていた長槍の柄を、突きの形で構えられた大鎌へ叩き付けんと振り下ろした*]
[ ふと、子供の頃のことを思い出した ]
[ まだ、アイリとも出会っていなかった、幼い頃 ]
[ 母に叱られたのだったか、単に道に迷ったのだったか ]
[ 1人で夜道を歩いていた ]
[ 星降るような夜 ]
[ 世界でたったひとりになってしまったような寂しさに ]
[ 泣きそうになって、空を見上げた ]
[ その、星の海に ]
[ 大きな輝く流星が長く尾を引いて ]
[ いくつも、いくつも、絶え間なく、空を一杯に埋め尽くして ]
[ その美しさに、ぽかんと口を開けたまま、眺めていた ]
ヨセフ、そっちは大丈夫かい? 今どこに。
『上空からも魔軍が攻めてきたの』
[嘘の報告を混ぜつつ、ヨセフの居場所を探ろうとする]
[残った手札を掻き集めて誘った雷撃は、狙い通りに壁を破壊する。 が、]
… な にっ
[ロー・シェンの名と共にもたらされた情報が、ディークの動きを硬直させた。>>239
ここにいない。 届かない。 もう、
それは、わずかな、だが、致命的な遅れだった。
奔流から弾けた猫の髭のような電撃に刺し貫かれ、足場を踏み越えて、城壁の外側まで身体を吹き飛ばされる。]
そういえばおまえ、
さきほどなにか下で言っていなかったか?
[微かな波動の揺れがあった。
こちらに向けられたものではなさそうなので放置しておいたが、ふと気になって尋ねてみる。]
[呪が途切れてしまったのは計算外だ。
これではまた最初からやり直しになるではないか。
舌打ちする思いで身体を引く。
この男は、あのロー・シェンとはまた違う小技を使う。
良く鍛えられた正当な戦士の技だ。
気迫と共に大剣が振り下ろされる。
それを再び受け止めんと翳した腕を───]
… な、 に ?
[ず。と貫いて、刃は魔を切り裂き下へと落ちた。]
[信じがたい。そんな表情で己の身体を魔は見下ろす。
常には身体をすぐ再構成するはずの闇が、薄くなっている。
魔力が散って、身を保つのに追い付いていない。
不意に、背から零れ落ちる魔力を意識した。
目前の獲物をそっちのけで、振り返る。
あの男に…ロー・シェンにつけられた傷だ。
些細なことと見縊っていた。まさか、これが原因か。]
─────── は
は、ははははは … 面白い
面白いじゃないか 人間
面白いぞ。人間風情が────…
我を … … 破る か
[魔の身体は、今やもう目に見えて崩れ始めている。
傷口は黒くくすんで、そこからぼろぼろと形を失い始めていた。
だが魔は顔に笑みを貼り付け、赤い瞳は爛々と輝いている。]
良かろう───…
よか ろう、ヨセフ
モンテリーの王族 ヨセフ
そして、レオヴィルのロー・シェン
闇の記憶に その名 ……残そう ぞ
────は。はーーーははははははははは!!!!
ヨセフ
貴様が──…闇に 堕ち来る日を
… 楽しみニ
待ッテ ………
[にやりと赤い双眸が、ヨセフその人のみを映し歪む。
そうして、耐えかねたように遂にそれすらも崩れ落ちる。
闇が砕けて広がれば、そこに残る形は何もなかった。
ただ。膨大な魔力が砕け散る様は、その”死”は死を喰らう魔法要塞には知れたろうけど。]
[魔が──魔将シメオン=カザエル・ユートエニアムが”死”を迎えた、その直後。その魔力により保たれていたものは破壊の時を迎えた。
即ち、アイリ・ファタリテートの首枷。
そしてロー・シェン・アウルム・ド・レオヴィルの胸の楔。
更には、座した一人の死人形まで。
漆黒の魔石はどちらも一瞬にして熱を帯び、その次の瞬間砕けて散った。それと同時に、彼らを縛る魔力もまた消え失せる。
支配の霧が晴れれば、彼らの精神に残る傷もありはすまい。
ただ。死しても証残すように、彼らの首元と胸元には、それぞれ黒い魔の痕跡が刻まれ*残った*]
[砦から遠い、平原の戦い。
血赤に染まった大地には夥しいゴブリンや、有力氏族の死骸が転がっていた。
けれどそれらを成し遂げたエルフ族も、その数を減らしている。
一体の人形は隠匿と毒蜘蛛の狡智、不死者特有の再生と、剣技や武術の枠から外れた狂猛、すべてを以って森の賢者達を狩り立てていた]
……
[氷の魔法が、腕に絡みつく。
エルフの戦士長の上に馬乗りになった姿勢で、ヒトガタは拳を見下ろした]
これでは。…滅ぼすに足りない、長よ
[完全に凍りついた右手をそのまま、相手の顔面に振り下ろす。硬いものと柔らかいものが砕ける音がした。
右腕が壊れるに構わず、二度、三度と殴打を繰り返し、横ざまから飛来した矢から身を躱すために飛び退る。
顔面を破壊されたエルフはそのままでも呼吸困難で死に近い。それを待たず、倒れた戦士に群がるのは最も低級な魔物であるワーム達だった。
チリン
加勢に現れたエルフへ向かっていくヒトガタの背後で、やがて大きな死が咲き誇る。
場違いなほど澄んだ音を立てて、核はその死を喰らった]**
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