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破光装置 クレステッド は、魔王 カナン と 破光装置 クレステッド を愛の矢で結びつけた。
皇子 ロー・シェン は、流離の勝負師 ディーク を支配した。
亡国の将軍 ヨセフ は、長耳双子 ローレル を支配した。
次の日の朝、語り手 が無残な姿で発見された。
戦火の犠牲は確実に広まる。
それでもなお、戦いは終わらない。
求めるものを手にするまで、人は争い続ける。
己を犠牲にしようとも。
愛する者を失うとしても。
現在の生存者は、埋もれし一葉 、魔王 カナン、皇子 ロー・シェン、亡国の将軍 ヨセフ、銀月牙 アイリ、魔将 シメオン、破光装置 クレステッド、流離の勝負師 ディーク、長耳双子 ローレルの9名。
それは闇の津波のようでした。
恐ろしく暗い闇が、光の最後のひとかけらを飲み込んで
全ての希望が失われてしまうような気がしました。
けれども私たちは、信じたのです。
夜が明ける直前こそ、一番闇が深くなるのだという言葉を。
このときさえ乗り越えれば、きっと朝の光が闇を払うと。
これより深い闇が私たちの足元に口を開けているだなんて、
この時はまるで想像していませんでした。
─── 或る兵士の手記
亡国の将軍 ヨセフは、皇子 ロー・シェン を投票先に選びました。
[ロー・シェンとヨセフは、魔王の動く城のことを話している。]
あれは、人にどうにかできる代物なのかね。
フェールの湿地か海にでも沈めない限り、ダメそうだぞ。
あるいは、内側からなら壊せるのかもしれないが。
[預かりものの剣を差し出しながら、明日の天気の話でもするかのようにロー・シェンに提案した。]
ここは守りに適した場所とも言えない。
モーザック砦まで軍を引いては?
おや、
[ヨセフの口から「砦へ退避するにも」の言葉を聞いて、俺と同じ意見だと厭がるかな、と苦笑した後で、]
なら、後詰めは殿下にお任せようかな。
俺は先に戻って準備をしておく。
[それでいいか? とロー・シェンの顔を見た。*]
流離の勝負師 ディークは、皇子 ロー・シェン を投票先に選びました。
/*
おー。隷従してる♪
>あなたは人狼に隷従させられましたが、妖魔の誇りを失ってはいません。
>服従する振りをして、生存のチャンスを狙いましょう。
いいねいいね。楽しいw
魔将 シメオンは、皇子 ロー・シェン を投票先に選びました。
― 進軍中 ―
[堂々たる陣容を整えた魔軍は、決して急ぐことのない足取りで目的地へと向かう。
人間どもが営倉する地を踏み砕き、彼らの希望を叩き折るために。
故に押されつつも抵抗を試みる人間たちは、鼻にも掛けぬという態でいたのだが。]
いつまでも未練たらしくまとわりついてくる連中だな。
目障りだ。
やれ。
[飽きた、という魔王の命に、巨狼の一族が嬉々として躍り出た。]
[静から動へ。
対応できるほどの指揮官はいただろうか。
それぞれに趣向を凝らした戦旗を打ち立てて巨狼を駆るオークの一団が、鉄底族の横を一瞬で抜き去って人間たちに襲い掛かる。
彼らの持つ戦斧が、鉄槌が、闇夜を荒々しく引き裂いた。]
/*
>>1:285>>1:287
死霊魔術師って研究熱心な人が多いの?ww
グラム1のベリアンとネクロトークしたら延々と続きそう
破光装置 クレステッドは、皇子 ロー・シェン を投票先に選びました。
[ 攻城兵器についてのディークの言葉には、頷くしか無い ]
確かに、あれを壊すのは...人間業では無理そうだ......魔王も、あそこに居るんだからな。
内側から、か...それが出来れば。
[ 可能ならば是非にとりたい手段だが、今の所、内部に入り込む端緒はゼロだ ]
― 橋北岸 ―
[───ばさり。と、翼の音を立て、陣に魔将が帰還した。
慣れた魔の者らは、取り立てて驚く風もなく道を開く。
そうして迷う素振りもなく、僕の天幕へと向かった。
途中、屍の集まり具合を確認してアンデッドの補充もしておく。
特別な仕掛けのない、簡易な屍術だ。
この手軽さも、シメオンが屍術を愛用する要素の一つであった。
雑魚の補充には召喚を行うよりも手間が少ない。]
アイリ、おいで。
[雑用を済ませて僕を呼べば、声は間違いなく届くだろう。
僕の顔を認めれば、魔はにこりと機嫌良さげな笑みを浮かべた。]
[ 次いでディークの口から、砦まで軍を引いては、という提案が出ると、思わず笑みが零れた ]
ああ、俺もそう考えていた。
[ これで三人の考えは一致したな、と、頷く。再び最前線に立つというヨセフには、僅かに案ずる視線を向けたが、彼以上に頼れる将が、他には無いのも確かな事だ ]
では、前衛は将軍に、今度はレオヴィルの騎士団からも兵を連れて行って下さい。将軍の旗下に入れるとあれば志願者も居る筈です。
ディーク、砦の方は頼む。俺はここで撤退の指揮を執る。
[双子のかしましい囀りは、嫌いではなかった。
つまらない沈黙よりは、よほど良い。
それに、彼らは今のところ、己の望んだとおりの働きをしてみせている。]
ふふ。察しのいいことだ。
踏み潰されぬようにしろ。
あれは、おまえたちでも喜んで喰らうぞ。
聞いた。
モンテリーの王族と打ち合って…獲れなかったって?
[微笑んだまま、僕の頬から顎に手を滑らせる。
冷酷な光が紅の瞳に煌めいて、指が僕の首を緩く握った。]
駄目じゃないか、手ぶらで戻って。
アヴァーンガルデが泣いていように。
[戯れのように、指先に一度僅かに力を入れ離す。
声の響きは優しいまま、魔は僕を冷え冷えと見下ろした。]
そうだ、それと...
[ はた、と思い立って、首にかけていた小袋から翠玉をひとつ取り出す ]
お前は、この先も、じっとはしてなさそうだから、連絡が取れるようにしておかないとな。
[ 取り出した短剣の柄で、翠玉を叩くと、石はあっさりと割れて忽ち光の粒になって砕け散る ]
…仕方のないやつだ。
行くぞ、アイリ。我と共に来るが良い。
レオヴィルの王族、ロー・シェンを獲りに行く。
あれはきっといい素材になるだろう。
魔兵器にくれてやるなど、勿体ないからね。
お前には汚名を雪ぐ機会をやろう。
我の道を切り開け。
ついでだ。
獲りそこなったモンテリーの…ヨセフとやらも獲ってしまおうか。
見事どちらも獲れたなら、此度の失態も不問にしてやろうよ。
[選択の余地ない言葉を告げ、進軍の喧騒も知らぬげに、魔はにこりと紅の瞳を細めた*]
[ゆるりとした進軍にあわせ、兵器の陰影も沈黙を保ち夜を進む。
我が王が「全滅させて良い」と発したならば、無論ツィーアの前にいる者たちを区別なく順に踏み潰してそれを糧にレオヴィルの大地を灼いて見せようとするだろう。
しかし魔王カナン・ディ=ラーグは望まない。
狼牙の氏族が躍り出て、闇夜にまた死の華が咲いた。
破光の核はまだ満たされない]
銀月牙 アイリは、皇子 ロー・シェン を投票先に選びました。
ツィーア。
人間どもは、あの程度の軍勢で我を止められると、本気で思っているのだろうかな。
[魔力の波動を手繰って語り掛ける。
物思うとき、魔王はよくそうしていた。
最初は返答を求めぬ呟きだったが、ツィーアが言語というツールを得てからは、その反応も楽しみにしている。
思考の整理か、ただの暇つぶしかは、魔王自身にもよくわかっていない。]
抵抗などやめて大人しく従えば、まだ生きる道もあろうものを。
あれほど弱いくせに、なぜ抵抗したがるのだろうな。
奴らは、ひょっとして死にたがりなのか。
皇子 ロー・シェンは、皇子 ロー・シェン を投票先に選びました。
[王の声が疑問の形でも、ツィーアは正しい解を提示することが己の役目とは思わなかった]
家畜の人間と野生の人間は異なる種族か?
シラーの家畜は死にたくないようであったが
[それでも考える間をおいて、なにか応えようと回路をめぐらせる]
野生の人間が従う道をとらぬは
……ラーグを喜ばせるため?
[抵抗する方が面白いのだから]
[まだ自分の外側の世界に魔王だけを認知していたころ。
尖塔にとまる重い何かは、初めての刺激だった。
牛が虫を払うように、それを退けさせようとしたのはほとんど偶然。
ナールの方は、鞭のように振り抜かれた兵器の触腕を躱して、すぐ隣の稜線へ飛び移った。
爪の感触と気配を追って火花を差し向け、鎖を投げかけ、壁に挟み潰そうとして、と飽きず繰り返しているうちに、その遊びがなかなか面白いことに気づいたのだった。
そのモノが魔王の乗騎で、竜という生き物であることを知ったのは少し後だったし、漆黒の体躯が王の黄金をより耀かしく映えさせる様を見たのは、5年前に銀の眼を手に入れてから。
──いつかナールの命絶える時には、その死を取りこぼさぬようにしようと思うほどには気に入っている]*
人間に違う種族がいるとは、あまり聞かないな。
家畜となれば従順になるのは、他の獣も同じだろう。
野生の…、馴らすのに手間のかかる種族か。そうか。
[思えばナールもそうだった。
慣らすまでは実に手を焼かせて──今ではすっかりツィーアと戯れるまでになったが。]
なるほど。
愛しい種族というべきだな。
それならば、我も存分に楽しんでやらねば。
[うむうむとこの場はひどく納得して、幾度か頷いた。]
魔王 カナンは、皇子 ロー・シェン を投票先に選びました。
───……私は、この男を許すことは出来ない。
[ディークを睨みながらの宣。
誘拐の件についても、男は真の背景を知らぬ。
ディークを信じられるほどの絆も持ち得ぬ。
故に男は、彼を重罪人としてしか見ることが出来なかった]
…出陣する。
退避が済んだら連絡をくれ。
[ロー・シェンが加えると決めたのならば何を言っても覆らないだろうことは分かっている。
故にその宣の後は、加えることについて頑なに反対することはしなかった。
ただ、納得していないだろうことは、拒絶するように向けた背が物語っている*]
― 進軍中 ―
[狼牙に襲われた人間たちが逃げるにせよ全滅するにせよ、あるいは持ちこたえて見せたにせよ、なにごともなければ夜半過ぎには人間どもの宿営地へ魔軍は到達するだろう。
止めるという意思と力持つものが現れなければ。
魔王の興味を満たすものがいなければ。
明かりのひとつすら持たずに夜を征く軍勢は、
既に行軍速度の遅さに退屈した亜人の雑兵たちが、後方で小競り合いなどを起こしていた。]**
[戦場へと向かう途中、ふとローレル達の行動>>1:290と言葉>>1:292を思い出す。
役に立ちたいという想いを行動と言葉で示してくれた二人。
息子のためにも、と言ってくれたのが嬉しかった。
先程までささくれ立っていた心も穏やかさを取り戻していく]
私としては、あまり戦いに巻き込みたくは無いのだが……。
[男にとっては二人も護るべき存在。
故に戦場へ立たせる、と言う選択はあまりしたくない。
けれど、あの熱意を無下にしたくもない]
……そうだ、
[コエが届けば都度願うことも出来よう、と。
どの道この後は砦に撤退することになる。
道中異変が無いかを確認してもらうことは出来るはずだ]
[そう考えて、男はロー・シェンから託された言霊の魔石を手に、ローレル達の下を訪れた]
ローレル、ローズマリー。
少し良いか。
[呼び止めて、手短にだが用件を伝える]
この後我々はモーザック砦へと退避する。
君達もそちらへと向かって欲しい。
…それでだな。
移動しながら後方の状況を都度連絡をして欲しいのだ。
そのために、これを。
[指で摘んだ魔石を見せた後、それを砕いた]
───聞こえるかな?
[そうローレル達に問いかけるヨセフの口は動いていない。
コエを伝える魔法がかかったことは伝わるか。
理解し得ないようであればその説明もして]
何かあればこれで伝えて欲しい。
こちらからも頼みたいことがあれば伝える。
…君達の無事も確認しやすいしな。
[柔らかいコエを彼らへと伝えた*]
/*
この対極な親密度を大逆転させるイベントは何か起こせるだろうか…。
森に行けたらローレル達の所業を知れるので揺らげるんだけども。
ともあれ、今は前線に出ねば。
[ 案の定、ヨセフは納得しなかったようで、一瞬声を荒げかけたが>>21次の瞬間には見事に自制してみせた ]
...詳しい話は、この戦を凌いだ後で。
[ ユーリエの死が、ヨセフのディークへの不信の大元であろうことは、判っている。しかし、それについては、男自身、ディークからまだ直接には何も聞いていなかったから、弁護のしようもなかった。
自身が、なぜディークの仕業ではないと信じるかの理由なら、簡単に説明出来はするものの...果たしてそれでヨセフを納得させられるかどうかも疑問だ。
結局の所、互いに腹を割って話せる時まで、問題は、先延ばしにせざるをえなかった ]
そうであろう
[魔力の波動は嬉しげに弾んだ]
人形もそのようだからな
[顔も柔らかい体も持たない兵器にとって、五感豊かな流動鉱石の人形を介して王を知覚できるのは得難い歓楽だった。
眼が王の姿を見て、声を振動に聞き、肌に触れる。
与えられる苦痛、引き裂き溶かされるを人間の記憶は好んでいない素振りだが、
それを王が楽しむのはツィーアのよろこびでもあるのだから、やはり愛しい種族なのだ]
/*
そして、ローレルに会えてない。このままだと会えないまま終わりそうな予感...まさかこの人数でそんなことになろうとは...
─ 夜半へと ─
[宿営地に迫ったか、あるいは。
陣を解いて下がり始める人間と、その場を防ぎ止めようと出てきた人間とに分離するらしいと知った頃]
[『出て良いか?』
あまり分散されると、死の回収に障りがある。
ツィーアは魔王に求めを発した。
昼にヒトガタが指揮した雑兵は全滅させて喰ったから、他の惰弱な亜人を次の餌として連れて行こうか]**
― 出陣 ―
[前線から連絡が届いてから幾許か。
大急ぎで準備をしたとしても、直ぐに出立出来るものではない。
隊を取りまとめ、配置を確認し、迎撃へと向かえるようになったのはだいぶ経ってからのことだった]
我らの役目は退避の時間を稼ぐことだ。
急ぎ進軍し、魔軍を食い止める。
奴らはもはや目と鼻の先、迅速に行動せよ!
進め!!
[号を出し、男は隊を率いて前進、速度を上げる。
此度の編成は防衛を主体に置くために重歩兵の部隊も加わった。
盾と槍を携えた一団が先頭を進み、その後ろに騎兵の一団が続く。
弓兵は砦の防衛に回すため、引き連れてはいない。
魔法兵は一握りほどが男の周囲に配置された。
男が率いる軍団の者達は皆、ロー・シェンの指示>>1:106の通りに聖水が入った革袋を腰に提げている。
男もまた例外ではなかった]
[人は、あまり夜目が効かない。
それ故に必要最低限の松明をつけることになる。
前方を照らす灯火は魔軍がこちらの存在に気付く標にもなるだろう。
それを承知で進む先で、数名の人影がほうほうの体で逃げるように走ってくるのが見えた]
待て、お前達は前線の…。
落ち着け、あちらの状況は?
[怯えた様子の兵を捕まえ、パニックになりかけているのをどうにか落ち着かせ、話を聞く。
魔軍の進軍は然程速くは無いが確実に進んでおり、前線が突破されるのも時間の問題であることを知った]
ウルフライダーが飛び出してきた、か…。
[緩やかな動きからの変化。
それに前線は乱され、指揮系統は崩れてしまっているという]
お前達は後方へ下がれ。
今、モーザック砦へ移動している最中だ。
野営地の指示に従え。
[逃げ延びてきた数名の兵にそう告げて、自軍団の後ろへと押しやる。
戸惑うように、申し訳なさそうに兵達はこちらを見上げていたが、男は笑むことでその背を押した。
彼らが下がるのを見遣った後、前方を見据える]
征くぞ、希望を切り拓きに。
[ここで終いにはさせないという強い意志。
それを示すように言い、男は更に軍を進めた]
[やがて、前方に威容を備えた異様な軍団が見えてくる。
兵の中には息を呑む者達もいた]
重歩兵は5人一組の横列陣を3層作れ。
突出して来た者がいれば誘い込んで囲め。
騎馬兵は雑兵の殲滅とウルフライダーの対処を。
魔法兵は私に添い、随時魔法にて迎撃を。
我らは剣にして盾。
[右手に大剣を握り、頭上へと振り上げた後に前方を指し示すように振り下ろす]
突撃!!
[夜闇の中での撤退戦が始まった**]
...お前が姉上を連れ出して手配された後、それを解こうとしたら、古参の側近に反対された。
俺が皇太子として立ったことには、まだ納得してない貴族諸侯も多くてな。
姉上を攫った相手の手配を俺が止めたとなったら、誘拐の黒幕と噂されても仕方ないと。
結局、俺の保身のために、お前を罪人扱いのままにしたことは済まなかったと思ってる。
[ ヨセフが背を向けて去った後>>23ディークに向かって零したのは、恐らくは、ヨセフの怒りの元凶であろうことへの謝罪。
魔王軍の侵攻は留まることを知らず、いつ災厄が自国に降り掛かるか判らぬ状況の中で、皇太子が政争の火種になって国を混乱させる愚を犯すわけにはいかなかったとはいえ ]
ヨセフには、後で必ず説明する。あの人は...俺にとっては、兄同然だ。お前を誤解したままで居て欲しくは無い。
お前だけじゃなく、姉上のためにも。
[ なぜ姉姫のため、という話になるのかを、ディークは不思議がったろうか?** ]
[ロー・シェンは、遠方でも言葉を取り交わせるという魔晶石を使ってくれた。
貴重なものだ、ヨセフが色めくのも当然であった。
ディークの出現は、戦を前に、ヨセフを動揺させたろうかと考え、すぐに案じることはないと考え直した。
戦場で迷う男でもあるまい。
潔癖なまでに正義感が強いゆえに、背中から斬られる心配は皆無と断言できた。]
価値に見合うだけの使い方を考えておこう。
[礼の言葉に変えて嘯く。]
それはそれとして、俺が人や資材を使っても構わないと説明してくれる者がほしいから、こいつを借りる。
[ロー・シェンの近衛になっている軍学校時代の後輩を見つけて袖を引いた。**]
― 接触 ―
[騎兵を我が物顔で追い回していた狼牙族の一匹が、前方を見て鋭く咆えた。
平地の向こうにちらちらと動く明かりを見つけたのだ。
新たな獲物の出現に、全軍が血を求めて蠢く。
魔軍に全体の統率などという概念はない。
個々の判断、せいぜいが部隊/氏族単位で動くのみ。
魔王がひとこと、行けと発すれば、それぞれが思うままに戦いへとなだれ込んでいく。]
[最初に接敵したのは、やはり速度に優れた狼牙族だった。
戦場の外周を大きく回って、人間に近づいていく。
彼らの戦いは狩りと同じだ。
集団の外側をおびやかし、うっかり集団から離れたものがあれば群れで襲い掛かる。
騎馬兵が向かってくればまともには相手にせず、一旦離れた。
追ってくれば、暫くは鬼ごっこの様相になっただろう。
ただし、鬼が足を緩めれば反転し、隙を見せれば襲い掛かる命がけの遊戯だ。]
[次に雑兵どもが大挙して殺到し、重歩兵の壁に堰き止められた。
鉄と肉の壁を引き裂こうと幾度も突撃し、そのたびに槍に突かれ囲まれ斬られて下がる。
堰き止められた水がそうであるように、じわじわと両側へ広がり、呑みこもうという様相。
その雑兵たちを押しのけ、あるいは踏み潰しながら鉄底族は前進する。
彼らの両脇には、おおよそ移動力が同じである屍兵らがのたりのたりと動いていた。
まだ、最前線には少し遠い。]
[巨大蜘蛛を操る紫毒の一族は、敵が見えた瞬間から姿を隠していた。
細い木立に張り付くように。小さな茂みに同化するように。地面にピタリと這いつくばって、わずかな陰影に紛れるように。
そうして八本の足を巧みに動かして音もなく得物へ忍び寄り、蜘蛛の糸で絡め取って引き寄せ、毒の牙と短刀で仕留める。
仕留めそこなえば、あるいは先に気づかれれば逃げ出すが、逃げられなければ死ぬだけだ。
それほどに彼らは脆い。]
[すべてを見下ろす位置で、魔王はまだ玉座から動かずにある。
高い視点の利で、こちらへ向かってきた人間の火はだいぶ前から見えていた。
遠くで微かにちらつく火は、宿営地の灯りだろう。
人間たちにとっても、偉大なる魔王の居城は良く見えたはずだ。
明かりを持たない魔軍の中にあって、聳え立つ巨大な兵器は魔導の光を帯びている。
魔王自身もまた、魔力を淡い光として纏っていた。
大地から滲み出る火が闇夜に映えるような灼光。
魔界の太陽の、斯くの如し。]
[ツィーアの求めを、魔王は立ち上がりながら聞いた。]
行け。好きにしろ。
[戦場へ出ることも、亜人を連れて行くことも、望むままにしていいと許す。
己自身も、少しすれば出るつもりだ。
もう少し。心躍るこの光景を楽しんでから。]**
それとも逃げ出したかな?
[だったら面白い。と、声は明るくなる。
あの戦いの折に魔の群れを掻い潜って逃げおおせられたなら上等、追うほどの価値もないから、アイリのような印もつけていないが、そうかといってただ逃がしてやるつもりもない。]
もしそうだったら、アイリ。
獲物を追加だよ。
逃げたかどうか知らないが、まだ戻ってないような役立たずは纏めて材料にしてしまおう。何と言ったかな…いい材料になりそうなのがいたな。ちょっと髪の長いやつだ。えーっと…ディーだっけ?
生きが良さそうだったから、きっといい材料になるだろう。ふ、ふふ。
[そうして魔は機嫌良く別の僕を呼びつけて、同様の獲物を彼らに伝えた。すなわちマーティンら人間の傭兵どもを狩るべし、と。
彼らが真に逃げ出したかどうかなど、確かめるつもりもない。
所詮は人間、飽きられたら終わりなどということくらい、彼ら自身とて知ってただろう。
命を受けた亜人どもは、咆哮を上げ承知の意を示す。
無論知性低い彼らが、どこまで他の人間と彼らを区別するやら知れないが、構うまい。要は全て殺せということである。但し、なるべくはちょっと綺麗に新鮮に。]
それじゃ、行こうか。
[散歩に行くほどの気軽さで、魔は僕を促した。
周囲には亜人ども、そして更には周囲に統制取れぬ魔の者どもが広がっている。悪夢のような進軍の中を、指揮執る風もなく魔は進んだ。
「玩具」は仕掛けをして、後方にまだ置いてある。
戦闘となれば亜人や僕に任せる態で、奇妙にのんびりとした一団が夜闇の中進んでいく。**]
破光装置 クレステッドが「時間を進める」を選択しました
─ 宿営地 ─
[夜半。
篝火と共に、北進すべく起った迎撃隊>>29
同時に撤退の準備を始めていた野営地は速やかに畳まれ、
レオヴィル軍は先ず砦までの道の安全を確保する伝令斥候、
怪我人や子供達を守りながら砦を目指す隊、投石機を曳き戻す工兵、そして天幕付近で後始末をする者たちとそれぞれの仕事を進めていた。
皇子の撤退指揮は力強く、人や資材を動かす指示は明瞭だった。
魔軍と衝突していない後陣の士気は損なわれずにある]
ああ、期待してるぜ。
[ 価値に見合う使い方を、というディークの物言いにも、男は楽しげに笑う>>33 ]
そいつなら砦の備蓄品なんかの置き場は、良く知ってるはずだ。
あ、武器も持っていけよ?
魔法の通じない敵も居る。親分達も、もし逃げてないなら、適当な得物を探して持たせてやってくれ。
[ 近衛兵を借りるという言葉にも>>34あっさりと諾の返事を渡し、ついでに武器置き場への案内も兵士に託してから、じっと、ディークの顔を見つめ ]
俺達が戻るまで、砦の護りは頼む。
それと、ついでに、あの馬鹿でかい魔王の玩具の内部に入り込む方法、考えといてくれ。
[ 最後に、さらっと無茶な宿題を放り投げた** ]
[すぐ傍らにロー・シェンがいるかのように、彼の声が届く。
楽しげにその効果を実演してみせた後で、ロー・シェンが語ったのは、ディークが国を出た後の話だった。
旧臣たちの勧告に従わざるを得なかった自分を、彼は保身ゆえと自責し、謝罪する。]
…それは、悔しかったろうな。
自分の思いを実行に移せないというのは──
[まだ支持基盤の薄かった新皇太子。
兄も姉も失って、寂しい城での務めに、彼はどれだけ耐えたろう。]
だが、少なくとも、おまえは、その非力な状況をそのままにはしなかった。
今のおまえは押しも押されぬ皇太子だ。
周囲に自分を認めさせてきたその結果を、俺は今、見せてもらっている。
おまえは胸を張っていい。
…ま、俺にはそんなナイーヴなところを見せてくれるのも、嬉しくはあるんだぜ。
そうだな、追手の派遣を止められなかったのを悔いるのでなく、
俺ならば追手に捕まるはずないと信用して行かせたと言ってくれ。
そっちの方がいい気になれる。
[ひらりと、笑みの気配が舞った。]
[ヨセフの名が出て、「兄同然」と言われたところで、ふと思い出した。
声のいろを改める。
石の力をもつ全員に、同時に聞こえるように。]
魔軍に、クレステッド殿下によく似た将がいた。
屍鬼ではない。 しゃべることも、笑うことも、治癒魔法を使うこともしたからな。
やわらかな物腰の彼は──「語る名がない」と言っていた。
もし、記憶を失っているにしても、ここまで魔軍がしてきたことを看過しているならば、それはクレステッド殿下その人ではないだろう。
彼が何を言ったとしても、この戦いを投げ出すおまえではないと思うが──
会う覚悟はしておけ。
[畳む手間を切り捨てて放置された小型の天幕。
治癒師が怪我人の手当にあたっていたそこには、まだ行使された魔法の残り香が漂っているかのようだった。
いや、それはただの残滓ではなく、隠匿された細い糸。
ふ と、闇が濃くなると、
地面に落ちていた水薬の古い瓶の付近に淡い燐光が灯る]
……、
[明滅する魔法のさざ波。
次の瞬間には、仄かな光の雫を輪郭にまとう男の姿が佇んでいた。
転移の痕跡が消える頃、閉ざされていた瞼を開け、ヒトガタはマントのフードを少し深く引き直した]
[何に使うのか、油を積んだ荷馬車はまだ残されていた。
レオヴィルの軍服を着た男はそれらへ顔を向けることもなく、幻想の中を歩くように朧な足取りでそこを歩いて行き]
……
[横から、何かに声をかけられるに至って足を止めた。
お前、負傷兵だろう、大丈夫か
動けるようならこっちを手伝ってくれ
言葉を聞き取ると頷くように頭を揺らし、招かれるままに近づいていくと、荷置き場から運び出した木箱を車に載せる作業に腕を伸ばした]*
/*
シメオンが砦側まで飛んで、戻ってきた皇子を吊るのかな?と思いきや普通に戦場観光しているので、
ロシェも迎撃隊に交じろうとしているのだろうか
するってえと全体的にそのへんが多角になるのであるので、
えーとでは私はどうすればいいのだ!
……わかった。
あいつらを見たら、刈り取っておけばいいんだな。
[彼らと距離が開いた理由は、娘も知らない。
故に、事の真偽などはわからない。
主がそこを確かめると言わぬのなら、僕はそれに従うまでの事]
髪の長いの……ああ、うん。
あいつは、良さそうだ。
[同意を返した後、意気上げる亜人たちをちらりと見る。
こいつらに獲られる程度では、さほどでもないだろうが、なんて思考は短いもの]
……了解した。
先陣は、あたしが切っていいんだろう?
[接敵すれば真っ先に飛び出すのは常の事、確かめる必要もないのだけれど一応問うだけは問うて。
ゆるりと進む一団の先陣に、赤紅の花弁が翻る。
亜人の中では異質な姿は、けれど。
どこかその位置にしっくりと馴染むようでもあり。
それは娘の出自──半魔である、という事の象徴とも見えようか。*]
[ 今更ながらの謝罪を口にせずにはいられなかった男に、ディークは、悔しかったろう、と詫びたこちらの内心を慮った言葉を返す ]
ああ...
[ そうだ、悔しかった、と、一度も口には出来なかった想いが蘇って、ただ頷く。
限られた重臣以外には、固く伏せられている事だが、兄と姉を喪ってから、レオヴィル王は生きる張りも同時に喪ったかのように心身を弱らせている。
だから、王の加護も皇太子には殆ど期待は出来なかった。
唯一、ヨセフだけが、何の異心も無く心配し、支えとなってくれてはいたが、隣国の将に頼り切るというわけにもいかなかったから、その先は、ただがむしゃらに、己が為すべきと思う道を探してきたというのが本当の所だ ]
ナイーヴって、何だよ...
お前に、手放しで褒められると何か落ち着かないな。
[ そんな風に返しながらも、胸を張っていいという言葉に、心が躍る。
かつて願っていた通りに、彼が力を預けるに足りる相手と認められたのかと感じれば、嬉しさがコエにも滲んだ ]
それは...信じていたさ。
[ そう、彼が、追いつかれるようなドジを踏むはずがない、と、信じていた...だからこそ... ]
...兄上、に似た?
[ ふいに声の届く範囲を変えて告げられた言葉に、息を呑む。昼の間に現れたという幽霊の噂が自然と脳裏に浮かんだ ]
.........解った、報せてくれて感謝する、ディーク。
何も知らずに突然会ったら、俺も冷静でいられる自信はないからな。
[ 苦笑のいろの滲むコエは、魔の罠だとしても兄に会いたいと口にしたことを知っているヨセフにも届いた筈だ** ]
― 野営地付近 ―
[ ヨセフ・トネール・ド・モンテリー将軍率いる勇猛果敢な騎士と兵士達が、闇の軍勢と激しい攻防を演じている頃、人間達の野営地からは、砦から運びこまれていた投石機が、次々と運び出され、西側に位置する森の方へと移動していた。そして、弓兵のうち砦の防衛のために戻っていった者を除く、100人余りが、その投石機の後を追うように森へと向かう ]
[ 避難民を最初に、続いて民兵や歩兵といった足の遅い者から順に砦へと向かい、最後に残るのは皇太子を護る騎兵の一団だ ]
油を撒け。
[ 男の命により、人気の無くなった陣営内のあちこちに、放置された天幕や、燃えやすい木箱が積み上げられて、たっぷりの油が撒かれていく。撤退が完了した後、魔王軍の追撃を少しでも遅らせるための仕掛けだ。
火が出るのは、全軍が退いた後となるように前に傭兵が放火に使おうとした、ろうそく仕掛けの時限装置を応用することになっている。
利用出来るものはなんでも利用するのが今の指揮官である皇太子の方針であり…レオヴィル軍の方針でもあった。
避難民の中、或いは、仕掛けの役を担う兵士の中に…もしかしたら人ならざるヒトガタもまぎれていたかもしれないが>>48それを知る者は、まだ居ない ]
― 前線 ―
[最前線へと辿り着くと、隊を乱した前衛の兵達が男の軍団の方へと下がってきた]
下がってきた者達は軍の後方にて隊を立て直せ!
以降は私の指揮下に入ってもらう!
負傷者はそのまま下がって野営地へ向かえ!
[指示を飛ばし、指揮下の騎士に兵の取り纏めをさせる。
動ける兵は多くは無い。
けれど彼らはこの場を維持する貴重な戦力となろう]
[亜人の群れ>>37とぶつかった重歩兵は一進一退の様相。
しかし敵の数が尋常ではないため、兵の壁から群れが溢れそうにもなっていた。
時折、死の遊戯に参加していない騎兵が切り払いに向かうが、如何せん数が多い]
魔法兵、投擲準備。
[重歩兵の後方で、男は傍にいる魔法兵に指示を出す。
数ある触媒の中から小石のようなものを取り出した魔法兵は、一斉に同じ呪文を唱え始めた。
そうして呪文が唱え終わる辺りを見計らい、男は前方を見据えた]
盾を掲げよ!
[前方に在る重歩兵への指示。
重歩兵達が一斉に盾に身を潜めたと同時に、魔法兵がスリングを使い複数の小石を亜人の群れの中へと投げ込んだ]
[小石が亜人、または地面へと落ちたと同時、爆発めいた閃光が連鎖する]
[閃光は目晦ましに過ぎないが、夜闇での行使ならばそれなりの効果もあろう。
押し寄せる亜人達の足を鈍らせるくらいにはなるはずだ。
足並みが乱れるようなら、その隙に崩されかけた箇所の建て直しも叶うだろう]
[だがそれを嘲うかのように、夜闇に、影に紛れ近付くものがいる>>38。
死の遊戯を続ける乗騎達の合間、亜人の群れの合間、地を這い近付いて来た蜘蛛が暗闇から糸を吐き重歩兵を絡めとる。
仲間が気付くのが早ければ防き反撃も出来ようが、そうではない場合は引き摺られ、一人、また一人と毒牙にかかり行く。
戦いの喧騒の中に、悲鳴と、蜘蛛だと叫ぶ声が入り交じった]
君達は重歩兵と連携して遊撃を。
君達は魔法兵の護衛を頼む。
[先に魔軍と相対していた生き残りの騎兵に、兵の壁から溢れそうになる亜人達と、潜み毒牙にかける蜘蛛達への対処を指示する。
残りの歩兵には男の周囲に配置していた魔法兵の護衛を指示した。
寡兵が戦乱の中へと駆け込み行く]
[男は愛馬の上から戦場を見遣る。
亜人の群れの後方からは闇ドワーフの一団とアンデッドが並び前進している。
火計で粗方焼いたはずのアンデッドは昼の戦いで出た死傷兵により補充されてしまったようだ。
男は苦虫を噛み潰したような表情をする]
[その後方の動く要塞は夜闇にも関わらず光を帯び、その存在を強く主張していた。
その光の中にある、異質の燭。
闇を凌駕する存在感、魔を率いる者の姿]
…行く先々が己が領土とでも言う心算か。
[あれは魔王の居城だ。
自立歩行をするそれが在る場所が領土であると、そう言っているように見えた*]
― レオヴィル王国/西の国境付近 ―
[ 魔王軍が進軍を再開したと相前後して、シャスラ村方面からの避難民達は、森の中を駆け抜けていく大鹿の群れと、その背に跨がるエルフの姿を目にしていた ]
[ それは、魔王軍のモンテリー侵攻を知って、偵察の為にエルフの郷を出ていた戦士の一団で、彼等が立ち戻った時、すでにエルフの郷は毒に侵され、壊滅の憂き目をみていたのだ。
聖木を侵し、郷を滅ぼしたのは魔王の手先と知り、怒りと報復の念に燃えたエルフ達は、魔王が次に侵攻するレオヴィルへと急いでいた。
生き残りに過ぎないエルフの戦士の数は多くは無いが、全員が長命であるが故の歴戦の強者であり、彼等の大鹿は、身軽な戦士達を乗せたまま川も山も難なく越えていく。
目指すは、魔王軍が必ず狙うと知れた、モーザック砦だ** ]
[ヒトガタは野営地にいた。
激しい攻防で花開く死のエネルギーはここまでならば、まだ届いていた。
南東へと向かっていく命の群には混じらず、灯火の影、夜の陰に立つ。
最後に残った兵が仕掛けを作っていく。
異臭にも動じない馬が蹄で地を掻き、嘶く音が聞こえた]
油の匂い、だ
知っている
火は汚れるな…
[ チリン
胸を一度抑えて眉をひそめ]
[紛い物の指は、軍服の懐から触媒を取り出す。
古びて欠けた火竜の鱗が一枚。一枚でも十分な。
ヒトガタはいつしか野営地の中心に立っていた。
印を組む。
知識と言語をもって、火球を生む論理魔法を唱え始めた]
[身を闇に隠すことをしないならば、その声は明らか。
顔はフードに隠れていても、護衛の騎兵の一員でないこともまた火を見るより明らかだろう]
...幽霊ではなかった、か...
[ 闇の向こう、徐々に近付いて来る激しい戦闘の気配を肌で感じ取りながら、男は先刻、ディークからコエを通して聞かされた、兄に似た...しかし、兄とは違うと思われる者の話を脳裏に浮かべ、浮かんだ想いを振り払うように、軽く頭を振った ]
風呂を沸かして待ってるぜ。
[ディークは保証人の後輩を確保して、前線に残してゆくロー・シェンらに軽い口調で退却を告げる。]
俺に言いたいことがあるなら、きっちり生き残れよ。
[ 砦への撤退は、ほぼ間に合ったと見て、男は前衛を指揮するヨセフに、戻ってくるようコエを送った。
彼等が駆け戻ったら、西の森の前に配置された投石器が活躍する筈だ。木陰に隠れた弓兵も、狼や蜘蛛を狙い撃ちしようと待ち構えている。
ヨセフと合流出来たら、更に後退し...と、戦略を辿っていたが、突然の「敵襲!」の声に、はっと振り返った ]
どうした?!
[ 敵の工作兵が侵入したらしいという、伝令の言葉に、舌打ちして、陣営内に駆け戻る ]
[咄嗟の判断として、斬りかかることを選んだ兵は優秀。
詠唱は一瞬途切れ、飛びすさった男は右手で剣を抜いて追撃を受け止めた。
印を結ぶ左手を斬り落とせなかったのは失態。
片腕の腕力で斬撃を押し返した男は兵士の腹へ痛烈な蹴りを放ち、そのまま身を翻して積み上げられた木箱の方へ駆ける]
疾… 発火せよ!
[ ごう
蝋燭による発火を待つことなく、木箱の山が一つ燃え上がる。
その炎の柱を背に、侵入者は剣を低めに構えた。レオヴィル軍、制式の型のひとつ。
加勢に現れた兵士へと相対し、口元を緩く引き結ぶ]
[不満気な後輩騎士をせっついて、まずはマーティンのところへ戻った。
早くもデカい態度で飯を持ってこさせて空腹を癒している親分に挨拶し、自分は先に砦まで先に退くこと、ロー・シェン皇太子が撤退の兵をまとめ、モンテリーの王弟が殿軍を務めることを伝える。
彼自身の意向を聞けば、「俺のありがたみを教えてやる」──すなわち、一暴れしてから撤退するつもりだと言われた。]
砦で、酒を探しておきます。
[そう請け合い、拳を突き合わせるアウトロー風の祝福を交わした。
シメオンが下した命令は知る由もなく。>>43]
[傭兵たちの振る舞いに、さらに苛立ちを募らせている後輩とふたたび歩きはじめたところに、少年が飛び出してくる。
魔軍から逃が出した子供たちのひとりだ。]
おまえたちも来い、ここは戦場になる。
[誘えば、少年はまだ声変わり前の高い音で、「もう皆と出立するところだ」と言う。
伝令を受けた軍属が差配してくれているのだろう。
そこを離れて何をしに来たのかと思えば、「あんたの馬、返す」とぶっきらぼうに言われた。]
あいつも連れて来てくれたか。 感謝する。
[破顔すれば、少年は頬を染めてプイと踵を返し、馬の繋がれているところまでディークを案内した。
鬣の焼けた馬と再会し、ディークはその首を擦ってやる。
馬は、鼻面を擦り寄せた。]
[「怒ってない?」 少年が上目遣いに訊いた。
放火を阻止した件だとわかった。]
おまえが正しいと思ってしたことなら、俺が叱る筋合いはないぞ。
利害なんてのは、相対的なものだ。
おまえたちも馬も無事だったしな。
それに、うまくしてやられるのはいっそ爽快だ。
これからもその意気でいろ。
[カラリと笑って、子供を仲間の元へ合流させると、焦りはじめている後輩騎士の背を叩き、再会した馬の背に乗って、南へと疾駆した。
ヨハンらが稼いでくれている時間を、反撃の刃へと変えるために。*]
よしよし、返してやろうよ。
楽しませてやらないとねえ。
[にこやかに言い放つと、虚空から取り出したのは魔力帯びた漆黒の弓。それに幻のような炎を矢に仕立てたものを番えて呪を唱える。]
「皇子っ!」
...来るなっ!
[ 表から追って来た騎兵達に、振り向かぬまま一喝する ]
すぐに、将軍が戻ってくる。ここは、俺に任せて、お前達は、予定通り、前衛の軍と合流しろ!
ロシェ
また大きくなったな?
[炎を背後に負ったヒトガタは呟く。
それは過去に幾度も繰り返された抑揚で。
12でレオヴィル王家に加わった弟。皇太子として多忙だったクレステッドと軍学校に入った弟が顔を合わせる頻度はそう多くなかった。
故に再会のたび口にした、成長の言祝ぎ。
やがて少年が青年となり立派な偉丈夫に育った後も、傍付きの護衛官として共に過ごす時間が増えても、戯言の響きで挨拶代わりのそれは繰り返された]
弓を...!
[ 男の言葉に応じ、従者が携えていた弓矢を手渡してくる ]
水の魔法で延焼を食い止めろ!
[ このままでは味方が炎に巻かれて逃げ場を失う。それを避けるために魔法を使える者へと指示を投げながら、弓に矢を番え、火柱の前に立つ男へと狙いを定めた ]
/*
うえええ マーティンご自由に〜かww
出来れば自分のNPCは!ご自分で片づけたまえよ!!!
と言いつつ、そんじゃサクッと死体にしてしまうぞ。
[前線が混乱した隙に、相手の陣が立て直される。
同様に、崩れ立った亜人どもの群れを割って、黒き巌が姿を現した。
闇と同化し光を吸い込む鎧の列から、同様に艶消しに塗られた刃が突き出される。
長い斧槍を地面とほぼ平行に構えた鉄底族の戦列が、人間の列へ真っ向からぶつかっていった。
同時に死者の群れもまた生者に牙を剥く。
緩慢に伸ばされた腕は刃を恐れることはなく、破壊されるまでは動き続ける死のシンボル。
鉄底族と屍兵にまで押され立て、雑兵たる亜人は人間たちの両脇へと半ば崩れ立つように圧力を深めた。]
[構えられた矢尻の尖端を見つめる銀の瞳は、フードに隠れ、火柱の逆光]
ここで死んでくれるな、レオヴィルの王族
……できるならば俺の手でが良いが
[水の魔法が、油を燃焼源とする炎にどれほどの効果をもつものか。
それは燃えて炎の濁流となったセミヨンの川が示している。
延焼を防ぐのが精一杯だろうそれには意識を払わず、ただ、ヒトガタは構えをそのままに皇子を見ていた]
[ ロシェ、と、その名を呼ぶひとは... ]
ち、がう...
[ その、懐かしい、声は ]
違うっ!!
[ 悲鳴に似た叫びと同時に矢が放たれる++ ]
[ しかし、男の身と心に走った動揺をそのまま乗せた矢は、大きく狙いを外れ、ヒトガタの顔の脇を掠めて炎の中に呑み込まれた// ]
そうか。だが
…この程度の狙いを外すようでは 死ぬぞ?
[ チリン、と場違いに澄んだ音色。
ヒトガタは僅かに身じろぎ、籠柄の片手剣を揺らがせた。
クレステッドが死の瞬間まで愛用した、それもクレイモア]
どれほど強くなったか、久しぶりに手合わせするか?
お前は最近、兄を相手に手加減していただろう
[久しぶり、と最近、という矛盾を吐きながら]
― 前線 ―
[魔軍の侵攻を受けながら、男の軍はじりじりと後退を始める。
その動きは魔軍にはどう見えただろうか。
押し込まれるような形でありながら、男に焦りの色は無い]
[前線の中に重歩兵の壁から溢れる亜人を殴り返す一団があった。
魔軍から寝返った傭兵───モンテリー王国の地下牢を脱獄した者達。
彼らが前線へ出ると志願して来た時は驚き訝しんだが、彼らは良く働いてくれている。
単に暴れ足りないらしいことは聞いていたが、実力に不足は無かった]
全軍、後退せよ!
[闇ドワーフの一団が到達したのを期に、男は軍を後ろへと下げ始める。
ロー・シェンからも概ね撤退完了の報が入った。
長居は無用である。
号に倣い、魔軍を相手にしながら軍はやや南西方向へと下がりゆく。
西にある森の前を通過するような動きだ]
[ チリン、と音が聞こえた、それに惹かれるように音のした方へと狙いをつけ ]
消え失せろっ!!
[ 今度こそ、真っすぐに矢を放つ。もしも避けられたなら続けざまに三の矢を、二度と迷わぬと決めた瞳が炎を映して金色に燃える// ]
/*
もうちょっと苛めてもらってもいいんですけどね、そろそろシメオンさんの方へこっちからも向かわないとな気がががが。
やはり、雑魚ばかりよりも好いものだな
[機嫌の良い声を響かせる。
眩しい光と、放たれた矢がもたらす夥しい死。
弱い人間や低級の亜人ばかりよりも質の良い餌がいくつか、収穫としてあった]
強いものほど美味
それを知るたびに焦がれるのは、お前にだ
お前は強く、最も美しい。ラーグ
― 戦場 ―
[敵陣が動く。
しかし、亜麻色には、それらの動きは一切入ってはいない。
よそ見をしていては獲り損ねるというのが一つ。
そして、もう一つの理由は単純で]
…………。
いない、か?
[獲らねばならぬもう一方、それらしき姿はそこにはない。
どちらを先に獲るべきか、そんな思考が廻るのは一瞬の事]
……黒いの!
[名は聞いているが、口にする事はない。
故に、こう叫びながら距離を詰め、銀月を横へと払った。
狙うのは、騎馬の脚。
動きを止めるを第一とした一閃。*]
クレステッドは死んだ
お前がその目で見た通り
[頷いたとも俯いたともとれないフードの動き。
二の矢は今度は顔の横ではなく、]
……っぐ
[僅かに体を傾けたヒトガタの右の肩に突き立ち、
三の矢は、前に翳した左の手の平を貫いて胸の中心に先端を飲ませた]
く、ぁ
[軍靴のエッジが地面をなじる。倒れず踏みとどまる男の足元に溢れるのは血の赤ではなく半透明の粘液だった。
ヒトガタがしているのも、時間稼ぎ。ただこの王族をこの場から逃れさせないための。
そして逃れえぬ死に呑まれさせるための]
/*
こいつ殺してくれるのってヨセフじゃねえかなーーってずっと思ってて、ずっとLoveな視線を投げ続けているんだよね。なんかもう、すまないなw
良い食餌をしているようだな。
[響いて来る波を手指に絡ませるよう、片手を宙に伸ばして声を捕える。]
ふふ。
我を喰らってみたくなったか。
おまえの隅々まで、我は満ち行くだろうな。
[巨体を、喪われた本来の姿をさえ満たして溢れさせる。幻視。]
[夢想に重なるもう一つの夢想。
"無"一色の世界を、ふっと意思がかき消す。]
頂を極めずに言うことではないな。
我はまだ、この程度では満足しないぞ。
[先へ。
幻想に浸るよりも先に、覇気が踊った。]
ふ、ふふ。
それは力示さねばならんだろうなあ?
使えぬ駒など、人間とて必要あるまい。
なあ?マーティンよ。
[魔将がこの場にあることに、魔を見知る傭兵らの間から動揺したような声が上がった。慌てたように左右を見回す顔もある。
それを叱責して、統率しようとするマーティンは確かに大したものだった。そう、人間風情にしては。]
言ったはずだよ、……「材料」にしてくれると。
[次に魔が浮かべたのは酷薄な笑み。
赤紅が、銀月を振りかざして敵将めがけて駆け込んでいく。
それを傍目に、魔は微笑みを浮かべて死の呪いを人間どもの上に広げた。]
獄卒どもよ 汝らが忌まわしき刃を振るい
かの者らの命を露とせよ
穢れよ
我は汝らを永劫の苦しみの中に押し込めん
…聞け。闇に穢れし亡者の苦悶の嘆きを。
[闇にじわりと滲むものがある。
闇よりも深き黒、人に根源的恐怖を呼び覚まさせる汚濁の闇、それが音もなく、かの傭兵らと───その周りの人間どもへと降りかかった。
ひ…!と、男らの短い悲鳴が各所に響く。
そうした者らは、恐怖と苦悶の表情を浮かべ地面に倒れる頃には絶命していた。やがて人の子らは見るだろう。彼らが、再び生ける屍として起き上がるところを。]
[戦列の両脇で、次々と屍兵が炎に呑まれていく。
燃え尽き倒れる屍体は決して多くはないが、無視できる数でもなかった。
炎に倒れる仲間に妨げられ、アンデッドたちの進軍がやや遅れる。
それに構うこともなく、鉄底のドワーフたちは前進し続けた。
相手が後退すれば、同じ分だけを詰めていく。
炎の照り返しさえ吸い込む漆黒が、血を浴びる時だけぬらりと光った。]
[名を呼ばぬのは、この在り方となってからは常の事。
他者の名は呼ばず、己が名も主以外には呼ぶ事を許さない。
とはいえ、そんな事情は黒の将の知る由もないのだが]
……お前に暇があろうがなかろうが、そんな事はあたしには関係ない!
[一閃を避けるべく、空を掻く馬の前脚。
目の前に落ちるそれを寸での所で避けた娘は、次の一手のために身構える。
対する黒は、提げていた剣を振り上げる。
無造作なそれは、それ故に容易くかわせるもので。
それが、疑問を一つ抱かせた]
……こいつ……!
[以前の対峙とは微妙に違う。
将の意識は、完全にはこちらに向いていない、と感じられた。
それと先の言葉。
娘は距離を測りつつ、もう一度周囲を見回し]
…………ここにはいない、のか。
[やはり、もう一つの獲るべき対象はここにはいないらしい。
ならばどうするか、の判断は早い]
……マスター!
黒いのは、獲れたら、でいいんだろ!?
本命は、ここにいない。
……あたしは、そっちを先に狩る!
[呪を紡ぐ主へ向けて、一声あげて。
返事を待つより先、娘はだっと走り出した。*]
/*
そしてトロい!ごめん!!!トロい!!!!
ヨセフじゃね→ふっふーん。俺が死体マスターだよ〜(ふふん)
ロー・シェンいないの?んじゃいいや。→アイリちょっとこれ獲ってから来てよ
→じゃーねバイバイ、先に行くね。→みっけー
ここまでする予定でしてね。
そのつもりだったんだけどね、ええと時間。
アイリとヨセフは追いかけてきてくれるだろうと思ってる(
[ 胸に下げた袋から、透明な水晶を一つ取り出す。カツ、と鏃で砕けば、石は光の粒子となって、矢に纏われた。
魔の力に対抗する聖なる光を纏う矢が、輝きながら弓に番えられ、放たれる。
その輝きが、ヒトガタに効果のあるものかは解らないが...歪んだ存在を浄化したいという願いが、男にその選択をさせたのだった ]
[不意に聞こえたロー・シェンの声。
それは、届けようとしたメッセージではなく、心の苦鳴にも似た吐露だと感じられた。]
[馬上で一瞬、振り返った。
後にしてきた陣地では、炎と魔法の光が揺らめく。
「戻りますか」と後輩が訊いた。]
いや、 信じる。
(『…ヨセフはおひとよしね』)
(まったくだよ。ボクらが心配しちゃうくらいさ)
(『“声”は先生とワタシたちの大切な繋がりよ』)
(ニンゲンたちにだって大事なものだと思うけどなあ)
(『でも……ワタシたちに使ったわ』)
(―――…使ったね)
(『……』)
(ローズマリー、気にしちゃだめだよ)
(『うん。ダメよね。…分かっているわローレル』)
(それならいいんだ)
(『だいじょうぶ。お仕事はお仕事だわ。先生のためだもの』)
『――――ありがとう、ヨセフ』
こうやって繋がっていられるなんて、すっごく心強いよ。
[感謝と困惑と嬉しそうな気配が複雑に混じったコエが、
そっとヨセフへ投げ返された*]
じゃあお前には、お近づきの印に土産をひとつくれてやろう。
きっと懐かしいだろうと思うよ。
[そうして魔石をひとつ地面に転がせば、ふわりと魔力の光が陣の如きものを描き出す。その光が淡く消え失せれば、新たなる数体のアンデッドの姿がそこにあった。
一つは王冠を頭の上に乗せ、また別のものは落ちかけた首がゆらゆら肩の上に揺れるのを押さえている。彼らは哀れなる魔の玩具、モンテリーの王とその一族、その成れの果てである。……ただ、ヨセフ自身の妻の姿はこの場にはなく。]
お前、この者らの家族なのだろう?
せいぜい大切にしてやるといい。
お前がアイリと戻ったら、今度は妻にも引き合わせてやろうよ。
死後も夫婦揃っていられるなど、どうだ。嬉しいだろう?
[そうだそうしよう。と頷く魔は、自らの発案を気に入ったようだった。赤い瞳が残酷な笑みの形に歪む。]
……
[流動鉱石が蠢き、異物を排出しながら右肩を修復する。
左手を下げれば、胸のあたりが破れた軍服、地面へもう一本の矢も落ちて粘つく音を立てた]
生憎、これはどうやら壊れてくれないらしくてな
消え失せさせたいなら 弓など無駄だ
[番えられた矢の光を見つめながら、左の指で風の魔術の印を描き短い詠唱を紡ぐ]
──!
[くぐもった呻きが漏れる。
聖なる光を纏った一矢が唸りをあげ、ヒトガタに接触した刹那、グシュ、と濁った音を立てて仰け反った。
衝撃で揺れた頭部からフードが外れ、
一方で理論魔法が吹かせた風は、隣の油天幕へと火の粉を吹き散らして新たな炎を呼ぶ]
が、ぁ ツ…
[苦痛を覚えるのは、記憶がそれを痛みだと認識するからだ。
型を構成する魔力を解かれて、矢傷を中心にほとんど半身に及ぶほどどろどろとヒトガタは溶けていく。
チリン、
体の中心付近に覗く"核"──金色の光を湛えた珠が澄んだ音を立てた]
―夜半―
[夜が近づくにつれて、陣内の慌しさが増してゆく。
魔軍の猛攻を前線で出来る限り食い止めてもらっている間に
モーザック砦への移動を開始した人々を尻目に――…
双子は逆向きにしばし寄り道した。
すなわち前線見物である。]
あはっ、動くお城は今日も絶好調だなあ。
『遠目で見るだけよ。アイツに近づくのは嫌だもの』
わかってるって。食べられちゃ敵わないからね。
[遠くからでも、魔王の居城たる其の威容は充分感じられる。
今まで何度も見たことはあるが、
蹴散らすべきニンゲンたちを前に威圧感を放つ姿は、やはり一層の見栄えがあった]
[同道を命じられた後輩は、いろいろと納得していないようだった。
「ユーリエ姫を攫って、あまつさえ亡き者にしたと名指しで手配されているあなたが、どうして弁明のひとつもなく、我が軍に加わっているのか、理解できません」]
兵力は欲しいだろ?
「その程度で、償いとは認めません!」
面倒くさいな、
別に、償う気はない。
[歯噛みする後輩に、ひとつだけ言っておく。]
結果から見るから、惑わされる。
─ 魔法兵器 ─
[魔法の光を纏う王の城砦は、沈黙の威容をもってただ聳えていたが。
やがて唸りのような軋む駆動音を立てて、塔から細く煙をたなびかせた。
『やはり、あの玩具は非力に過ぎる』
魔導の波は、上機嫌を崩さないまま愚痴のような言葉を紡ぐ。
『楽しんでいるよう、王
…
だが私が真に見たいのは、お前の美しい姿だけ』
焦れるタイミングも黒竜と似ているよう]*
[ 壊れてくれない、と他人事のように紡ぐ言葉は、兄の記憶からのものか、それとも、べつのナニカのものか、それを考える暇はなくなっていた ]
風、か...!?
[ 魔法の風に煽られ、火花が周囲に散ると、ごう、と一気に火勢が強くなる。同時、聖光を纏う矢に貫かれた人形も、苦悶の声を上げてどろどろと溶け出しているのが見えた。
そして、その身体の中心に光を讃え澄んだ音をたてるもの ]
何...?
[ 魔法に属する力を、男は持たない。が、持たぬが故に、魔法や魔力持つものに対する違和感のような感覚は感じやすかった ]
“一夜城”って、知ってるか。
[話は飛んだようでいて、その実、つながっている。]
──砦での迎撃の支度を急ぐぞ。**
き、 さま……!
[低い、腹の底からの声が零れ出る。
この魔は、兄達だけではなく、妻をも手にかけた。
内に渦巻く感情は言葉では表現出来ない。
故に男はクレイモアを強く握り、愛馬の鞍に靴裏を当てると、その状態で愛馬を繰り魔へと駆けた]
今ここで斬り捨ててくれる!!
[兄らの前まで来ると鞍を蹴り、彼らを飛び越さんと跳躍する。
上空から大剣を向けるのは、酷薄に笑む魔の頭上//]
「皇子!もう、ここは!」
[ だが、その違和感の正体を確かめる前に、敵が倒れたと見た従者が、炎渦巻く場所から主を脱出させようと促す ]
...わかった、行くぞ!
[ 火の足止めが出来なくなった以上、魔王軍を食い止めるのは、兵の力だけでしてのけなければならない、撤退の期を逃さぬためにも、指揮に戻らなければならない。
男は従者と共に、炎の海となりつつある陣営の外へ身を翻そうとする ]
― 少年の頃 ―
[ 自由を愛し、祭りを渡るローグの民の中でも、少年は少しばかり浮いていた。それは出自のせいではなく、彼が、おおよそ元気のいいローグの子供達の中でも、飛び抜けて元気者だったせいだ。
大人でも怯むような危険な山の難所や、深い淵を見つけると、むしろ嬉々として探検に赴き、誰よりも高い木に昇り、目の眩むような崖の上からでも平気で川に飛び込む少年に、やがてついて来れる子供は居なくなり…仲間はずれにされるようなことはなかったが、一番面白いと思う探検にはいつも1人で向かうしかなかった ]
お前、すごいなあ。
[ だがある日、今まで訪ねた事のなかった小さな隠れ里のような村で、1人の少女と出会った時から、全てが変わった。
少女は小さな...少年から見れば華奢とも思える体躯でありながら、他の子供や大人が、全くついてこれないような場所へも軽々と少年の後を追ってきた。
そんな相手は初めてだったから、少年が、その少女を気に入るのは必然だった ]
お前となら、どこでも行ける、二人ならもっと先まで!
[ 楽しくて、嬉しくて、別れ難くて......それでも流浪の民の常で、その村を離れなければいけない日は来たけれど ]
一緒に、来るのか?ほんとに?
[ 少女がそれを願い、その願いが認められて、共に旅するのだと、そう知って、少年は心から喜んだ ]
リー、これからずっと、一緒に行けるな。
[ 手を繋ぎ、笑いあって、それから沢山の日々を共に過ごした...そしてある日、鉱山の村に訪れた時、子供好きの鉱夫に、その村で採掘された貴石を貰って、互いにミサンガに編み込んで交換した ]
俺がお前を、お前が俺を護れるように...
[ そんな願いを込めたのは、或いは既に、別れの予感があったからかもしれなかった** ]
[せっかくの土産は、あまり喜んでは貰えなかったらしい。
青褪めるヨセフの顔を、魔は面白がる表情で見返した。]
やだね。
[返礼に返す言葉は、ごく短い。
男の目には、ゆらと闇が凝って魔の姿が揺らぐように見えただろう。大剣が振り下ろされても切り払うのは空ばかり、逆に体勢を崩したと見えた将めがけて魔の者どもが得物を横合いから振り上げた。その中に、かのアンデッドらの姿もある。]
ヨセフ...
[ ディークの看破した通り、無意識のうちに零してしまったコエに反応したヨセフに、何も返さなかったのは、自分自身がなんと答えていいか解らなかったからだ ]
あれは、魔導の人形のようなもの、でした。
生き物ですら無い...
[ それでも、報せるべき事のはず、と、漸くにして、返したコエ...しかし、今度はヨセフに答える余裕があったろうか? ]
… ロシェ
[半ば溶けかけたヒトガタは、右手で核を抱え込む。
炎から逃れ、駆け去ろうとする背を銀の瞳は映していた]
……
[狩手はもうすぐそこに来ている>>135。
5年前の再現たる銀の月と赤紅、
違うのは獲物の色か]
[しかしロー・シェンと合流するはずだった野営地は既に炎に呑まれ、軍は近付けなくなってしまっている。
兵達に一時、動揺が走る]
「野営地を迂回して砦へ向かえ!」
[男の副官が新たな指示を出し、軍は再び動き出した。
燃え盛る野営地の傍を進めば、待機しているはずのロー・シェンの騎兵隊とも合流出来ようか*]
[足元で城塞が軋んだかと思うと、煙がひとつ夜の空へと昇っていった。]
なんだ。
また壊したのか?
[愚痴のような言葉に笑みを持って応える。
さらなる焦がれには声を立てて笑った。]
せっかく再会させてやると言ってるのに。
親切の分からないやつだなあ。
[肩竦める調子で煽るような言を吐き捨てて、視線は先に駆けていった僕をやや追う。]
どちらも獲れたら、と言ったはずだが…
[やれやれ。もう走り出した僕には聞こえまい。]
せっかく再会させてやると言ってるのに。
親切の分からないやつだ。
[肩竦める調子で煽るような言を吐き捨てて、視線は先に駆けていった僕をやや追う。]
どちらも獲れたら、と言ったはずだが…
[やれやれ。もう走り出した僕には聞こえまい。]
[野営地の炎と魔軍の波とに挟まれた人間の軍は、それでも動揺を抑え、迂回により撤退を続けようとする。
かかるのは時間。
そして追手を襲う森からの援護。
すなわち花咲く死は増えていく。
生ける魔軍が死せる魔軍に変わろうと戦力にさしたる違いはない──ますます、魔法兵器の満ちる時が近づいていく以外は]
[呼ばれたナールが嬉々として首を下げ、主を背に迎える。
ばさり、と打ち鳴らされた翼は風を捕え、黒竜の身体を軽々と高みへ運んだ。
輝く魔を乗せ、竜は空へ駆けあがる]
まずは、おまえを壊した奴の顔でも眺めに行こうか。
[目的などなんでもよかった。
死と血の臭い立ち込める戦場の空気を心地よく切り裂いて、竜は飛翔する。]**
[ 騎兵達は、皇太子の命を守り、炎に巻かれぬ位置まで逃れて、前衛に立った友軍と合流すべく待っていた。
先頭に在るのが、ヨセフではないことに、騎兵隊長が首を傾げたと同様に、そこに皇太子その人の姿が無い事に、戻ってきた副官らも疑問を感じたろう。
しかし、為すべき事は理解している。即ち、少しでも魔軍の侵攻を遅らせ、その数を減らし、そして兵の被害を抑えて砦まで戻る事。
しかし、将軍や皇子を置いて戻る訳にはいかないとの認識も、もちろん一致していたから、新たな陣が組まれるのは炎のすぐ背後となる** ]
あれはまた後で仕置きだな。
仕方ない。お前たち、獲れ。
我はもうここには用がない。
[この程度の兵で獲れる獲物にも見えないが。
出来て足止めが精々だろう。それ程の獲物に見える。
出来ればじっくり自ら獲りたいが、さりとて本命を逃しては本末転倒であるのもまた事実。
配下の者ども、動く骸に命じて自らは闇に溶ける翼を纏おうとする。
そうして再びヨセフへと視線を流し、ほほ笑んだ。]
呼びかければ応えるかも知れないぞ?
我もそれを期待していたのだ。
お前たちにとって、家族というのは大切なものなのだろう。
[告げる音は、案じるかのごとくにいっそ優しく。]
あれが勝手に壊れるのだ
……仕置をするか?
[芸も披露しないうちに褒美を強請る獣のよう、期待を露わにした波動がゆるりと王の指の間を絡みぬけ]
それとも…それを諦めて、自ら再び殺すか。
お前に選択肢を与えてやろうよ。
[さも寛大に彼へ告げ、魔は黒い翼を纏う。
夜闇に溶けて辺りを見渡し、]
……?こんなところで何をしている。
[ばさり、と。黒い翼が問いを投げつつ降り立ったのは、壊れかけた銀のヒトガタの傍ら、今まさに身を翻さんとしていた獲物の程近くであった*]
[崩折れて動かぬまま、レオヴィルの皇子を見ていたヒトガタの顔が、ガク、と不自然な動きで天を仰いだ]
『見よ、私の王の姿を』
……
[喉が震え、声が響く。
そして、傍に降り立つ黒い翼を耳に聞き、
ヒトガタの顔がまたガク、と揺れて動く]
『魔のシメオン』
[玩具は遊ぶためにあるものだ。
何をしているかといえば、遊んでいた]
『お前がそれを獲るならば、死を横取りはせぬ
それで良かろう』
[譲るも良い、と思考した通り。
ツィーアはチリンと核を鳴らし、沈黙した。
崩れたヒトガタは再び天を仰ぎ、
飛翔する竜の姿を目で探している]**
殊勝じゃないか。
なればそこで黙って見ているがいい。
終われば運ばせるくらいはしてやろうよ。
[ヒトガタが沈黙すれば、魔の関心もすぐ逸れる。
それよりも関心は、正面の獲物に向かっていた。
皇子。と呼ばれている。だから間違いはない…いや。
それだけではない。ヒトガタと顔が似ている、それもある。
けれど何より魂が、その輝く色が一際立っているように魔の目には映った。これは極上だ。ざわりと歓喜に肌が泡立つ。]
...おまえっ?!
[ 飛び込んで来た銀月の一閃、見覚えあるその輝きと、姿に、男は大きく喘ぐように声をあげた ]
なぜ......
[ その瞬間、男の動きは全て止まった。危険も魔将の姿も、傍らで名を呼ぶ従者の声も、全てが消え失せて、ただ亜麻色の髪と瞳に、視線と心が釘付けになる ]
何故だ...リーッ!!
[ それは、5年前と同じ、迸るような絶叫だった ]
― 回想 ―
「お前のその性格はその内命取りとなるぞ」
[いつだったか、兄に言われたことがある]
「懐広く受け入れるのに否やはない。
だが、時には切り捨てる覚悟も持たねばならない」
[兄は一度懐に入れた相手をとことん受け入れる男の性格を案じていた]
「万一儂が道を過った場合、止めるのはお前でなくばならぬと言うに」
[そう言った兄の表情は、それでも仕方が無いやつだ、と笑うようなものだった]
……兄上、皆……すまない。
[助けてやれなかった謝罪を紡ぎ、瞳を開くと、囲む他の魔共も巻き込んだ一閃を放つ。
その一撃で残る王族の首も刎ね飛ばし、男は感情を飲み込むように俯き息を呑んだ]
───安らかに眠ってくれ。
[零れそうになるものを堪え、男は顔を上げる]
[気付けば男は取り残される形になっていた。
ひとまず軍は後方へと引いた模様]
援護がまだ続いているなら……何とかなるか。
[愛馬を寄せ、ふらつく身体で馬上の人となる。
燃え盛る野営陣では何かがあったらしい。
コエは聞こえていたが、男に返す余裕は無かった]
戻らねば。
[馬首を返す男に飛び掛る魔軍もいる。
それを斬り払い、矢の援護を受けながら、男は野営陣を迂回する形で撤退を始めた*]
……おま、え。
[向かう亜麻色は、睨む態]
なん、なんだ。
なんで、あたしをそう呼ぶんだ。
……その、呼び方、は……。
[誰か一人しかしていなかった。
けれど、その『誰か』は、今はわからない]
もう、誰も使わないはずなのに!
[わからないから、ないものと見なしているのに、とは口にはせず。
大振りの後、提げていた大鎌の柄を両手で持ち直した。*]
ロシェ……無事か?
まだ陣に居るのか?
[状況を把握せねばならない、と。
先程コエを返せなかったこともあり、再びロー・シェンへと呼びかける。
既に陣が燃えていることが男に焦燥を抱かせていた]
[擦り抜けて行った赤紅や、先程姿を消した魔まで集まっているとは予想もし得ないでいる*]
[ 目を逸らさず、いや、逸らすことが出来ず見つめるその先、戸惑うような声をあげ、こちらを睨む亜麻色の瞳 ]
リー...お前は、本物のリーだな?
[ 目の前にいる魔が、アイリと呼ぶのを聞くまでもなく、ヒトガタと対峙したからこそ、解る。彼女はアレと同じものではない。ましてや動く死体とも違う。
何よりも、その腕にはまだ...虎目石が光っている。
それなのに、自分を知らぬ者のように見る、目と言葉 ]
なんで、だって?お前が俺の、大事な妹だからだ。リー...忘れる筈がない。お前だって。
[ 皇太子として、身を律して来た五年間の努力も、魔王軍と戦う指揮官としての立場も、今、この瞬間、全てが男の中から消えていた。
危険な魔の前で、無防備に...そして必死に、どこかに隠れてしまった娘の記憶に呼びかける。それが、それだけが自分の望みであるように ]
思い出せ、思い出してくれ...リー。
俺だよ、シェンだ。約束しただろう?
[ 彼女の色...カーネリアンの編み込まれたミサンガを巻いた左腕を差し伸べる。娘の持つ銀の刃を恐れるいろは微塵も無かった ]
[ この異様な状況の中で、従者は己の行動に迷っていた。このまま皇子の傍に居て、あくまでも皇子を護るべきか、それとも... ]
くっ...!
[ 逡巡の挙げ句、身を翻して外へと駆け出す。逃げ出そうと思ったのではない。このままでは皇太子は敵の手に落ちる。そう判断して、助けを呼ぶことを選んだのだ。
魔将がそれをどう見るか、黙って行かせるかどうかは判らない。しかし、逃げ切れず殺される事も、すでに従者は覚悟していた* ]
へえ?お前──…、そうか。
我の僕を知る者か。
[「リー」の呼びかけ。娘の反応。
それらを白々と眺め遣っていた魔が呟く。
これは随分と簡単な狩りになるのかも知れなかった。
あまり簡単では興ざめかな。そんなこともチラと思うが。]
駄目だよ、
──── アイリ。
[僕の名を呼び直す。
揺らぐ心を、再び魔の支配のもとに押さえるように]
[ロー・シェンへとコエを送ると同時、男は後方に対してもコエを送る]
…後方の状況はどうなっている?
こちらは魔軍を退けながら撤退している最中だ。
[砦へと戻るにはまだまだかかる。
野営陣からの撤退は完了しても、砦への撤退中に追いつかれてしまっては元も子もない*]
...ヨセフ、すみません、俺は......
[ 心に届いたコエに、僅か、意識が揺れる。けれど、返せたのはそれだけ ]
殿下。
我が僕に……
随分と無礼であろう?
[嘲笑うように尊称で呼び。虚空から再び漆黒の弓を喚びだす。
今度は炎ではなく、同じ漆黒の矢が、
───── とつ 、と。
身を翻した彼の従者の背に向け撃ち放たれた。*]
/*
ほんとに簡単に落ちそうですが、実は、単になかのひとが眠くてバトル脳が起きてないだけです。明日がんばる、たぶん。(うとうと
……あたし、は。
お前が、きらいだ!
[解放されたのは、幼い頃に口にしていた強がり。
それが、寂しさを紛らわせるために幾度となく繰り返していた裏返しの言霊であることは。
既に亡い母以外には知らぬ事。**]
リー...
[ アイリの紡ぐ言葉に、彼女が本当に自分を記憶していないのだと知る、けれど「きらい」という言葉には、僅か笑みが浮かんだ ]
そういうとこは、変わってないな。
[ そこに届く、殿下、と、揶揄うように魔将の呼ぶ声>>176そして我が僕というのがアイリを指すと、そこで初めて認識して... ]
貴様が...リーに、呪をかけたんだな?
[ 視線を魔将に移すと、その手に黒の矢が産み出されるのが目に入る。それが狙う相手も ]
ナイジェルッ!!
[ 反応は殆ど反射だけだった。腰のクレイモアを抜き放たれた矢をたたき落とそうと振り抜く。魔力で作られた矢は折る事は出来なくとも、警告の声を聞いた従者は、低く身を伏せて、矢を辛うじて避けた ]
「お、おうじ...!」
行け...行って、将軍に伝えろ!
[ 常の皇太子の口調に戻って、鋭く投げられた声に、はい、と頷いて従者は必死で炎の向こうへと駆け出す ]
はっ!
[ 従者が駆け出すと相前後して、男はクレイモアを手に、魔将へと肉薄する。
この魔が全ての元凶と認識し、その禍を断つために。
けれど、アイリの大鎌に対しては、未だほぼ無警戒のままだ** ]
[撤退する軍から逸れたために、男へと群がる魔軍は多い。
雑兵であれば斬り払うにも造作は無いが、名のある氏族が向かって来た場合が問題だった]
はっ!!
[影から飛来した糸に気付き、捕らえられぬよう大剣で斬り払う。
けれど叩くべき本体が見えず、何度かそれを繰り返す羽目になった。
そうしていると森の中から矢が飛来し、影に潜む大蜘蛛へと突き刺さる。
奇怪な悲鳴をあげ、影から大蜘蛛と騎乗していたゴブリンが転がり出てきた]
そこか!
[慌てふためくゴブリンに肉薄すると、クレイモアを振りその身体を斬り飛ばす。
動きを鈍らせていた大蜘蛛も、突き刺すことで止めを刺した]
[頑健さに定評のある闇ドワーフには投石器から放たれる岩石が集中した。
それで仕留めることは出来ないにしても、進軍を鈍らせることが出来ると信じて。
闇ドワーフに対しては、男も一人で挑むようなことは流石に避けた]
[もう少しで撤退中の軍に追いつくという頃合で、男の視線が炎に包まれる野営陣へと向く]
ロシェ…!?
[呼びかけに対し届いたコエ。
そのコエが酷く弱い]
[野営陣へ飛び込むか、そう刹那の思案をしていた時、前方から男を呼ぶ声が上がった]
「将軍! こちらです!」
[呼びかけてくる副官に男はハッと意識を戻す。
燃え盛る炎の後方で組み直された陣。
ここで再び魔軍を食い止めることになりそうだ]
状況は?
「はっ、野営陣に残っていた騎兵隊と合流しております。
ただ、皇太子殿下が……」
やはりか……
[離れていた割には状況を把握しているらしい男に副官は首を傾いだが、直ぐに意識を切り替えて]
「将軍まで向かってはなりませぬよ」
[必要であろう釘刺しを一つ紡ぐ]
[副官の釘刺しを受けて、男は強く表情を歪めた]
……分かっている。
私の役目は魔軍を食い止めることだ。
[堪えているというのが分かる、低い声色で紡ぐ]
[野営陣内で何が起きているかは分からない。
ロー・シェンを案ずる想いは強い]
[けれど、それ以上に彼を信じる想いが強い。
彼ならば己が力で切り拓き戻ってくると、そう信じている**]
[手にしていた弓は、とうに宙へと投げ捨てた。
落ちる音を立てることなく、漆黒の弓は虚空へ消えゆく。
僕への新たなる指示はない。
僕は僕で、己の意思でこれを刈り取るだろう。
それよりも今、魔の関心は目前の極上の獲物へと向けられている。
短い呪を唱えれば、ローの周囲の闇が、ざわりとその重さと濃度を増したようだった。水の中にあるかの如き抵抗が不意に彼にかかる。]
素材はいいが、やはり野蛮だね。
所詮は人間の王族かな。
[勝手な評まで付け加え、魔はやって来たローめがけて、新たに生み出した黒き刃を*一閃した*]
― 手紙 ―
[ 皇太子がずっと持ち歩いている手紙がある。今は、砦の中、彼の使う寝台の枕元に置かれた小箱の中に ]
心配かけてごめんなさい。
私は、楽しく暮らしています。
毎日がとても美しくて、きらきらしているわ。
前にあなたが話してくれた、ローグの民の群舞も見る事ができたのよ。
みんな、あのひとのおかげ。とても感謝しています。
御礼の贈り物を造ったのだけれど、なんだか照れ臭くて渡し辛いから、いつか、あなたから渡して下さい。
お願いね、ロシェ。
お父様を頼みます。
[ それは姉がこの世を去る、ひと月程前に、それを預かったローグの民の1人から、ローグの連絡網というべきものを巡り巡って、男の手に届けられた。
短い手紙と共に、同封されていたのは、押し花を魔法でクリスタルの中に封じ込めた、美しい御守り ]
『あら、殿下、どなたか姫君からの贈り物ですか?』
[ こんなものを造れる技をいつの間に習ったのだろう?と、不思議に思って眺めていたら、いつも身の回りの世話をしてくれる古参の侍女頭が目に止めて、嬉しげに尋ねてきた。自分が贈られたものではない、と告げると、あからさまにがっかりした顔をしたので、その理由を問うと ]
『それは、若い娘が、殿方に、恋心を告げるための御守りですから。その花には、いつまでも共に、という意味の花言葉があるんです』
[ そう返ってきた答えに、姉の本当の想いを託されたと知った。
わざわざ弟に預けたのは、今は追われる身となっているディークの名誉をいつか回復して欲しいという、彼女の切なる願いでもあったのかもしれない** ]
― モーザック砦 ―
[星明かりの下を疾駆して、南へ下った。
砦につくしばらく前から、砦側の斥候と行き会う。
北の空が赤く燃えているのは、砦からも見えたらしい。
援軍を出そうと準備が進んでいた。]
この砦が再終結の場になる。
味方の回収が仕事だ。
[敵を倒すことにこだわらず、味方と合流したら力をあわせて戻るよう伝えて、兵らを送り出した。]
[殿軍を務めると言ったヨセフから、状況報告を求めるコエが届く。
よかった、まだ生きている。
だが、魔将シメオンがいる限り、どうあがいても敵の数は削り切れまい。
キリのない戦いだ。]
撤退支援の援軍が砦を出た。
敵を押しとどめるのも充分だろう、そろそろ退却を。
負傷者の受け入れ態勢も整えておく。
とはいえ、薬がもったいないから、できるだけ無事に戻れ。
[どうしてもそんな言い方をしてしまうけど、ロー・シェンのことともども、気にかけているのはだだ漏れか。]
― とおい記憶 ―
[幼い頃の閉ざされた世界を開いたのは、外から訪れた者たちだった。
取り分け、探検と称して危険とされる場所に入り込んでいく少年は、幼い少女の好奇心の対象となっていて。
村に近い歳の子供が少なかった事もあり、親以外の誰かと一緒に、という事があまりなかった少女にとって、その後を追いかけて行くのは楽しい事だった。
それを可能としていたのが、魔の血に基づく身体能力──とまでは、知る由もなかったが]
んーん、おにぃの方がすごいよ。
こんなとこまでこれる子、いないもの。
[すごいという言葉も、どこでも行ける、という言葉も向けられる機会はなかったから、純粋に嬉しくて。
それもまた、一緒に行きたい、と言い出した理由のひとつ]
[そんな感じで、誰よりも懐いて。
けれど、時折、噛みつく事もあった。
一番酷かったのは、探検の途中。
少女が足を滑らせ、高所から落ちた時の事。
支えきれず一緒に落ちて、こちらを庇った少年が怪我をした時]
……おにぃのおばか!
あたしは、ちょっとの事じゃ怪我とかしないのに、なんでそーゆー無茶するの!
おにぃのそーゆーととこ、あたしはきらい!
[護ってもらえるのは嫌じゃない。
けれど、そればかりというのは嫌だから。
大丈夫よりも何よりも、口をついたのはそんな言葉。
涙目でうー、と唸る様子は仔犬さながらに見えたやも──というのはさておき]
……母様には、ないしょだよ?
[一しきり騒いだ後、そんな前置きをして。
軽く擦りむいた手に滲むあかいいろを一滴、掬い取って指先に乗せて]
……いたいの、とんでけ。
[小さな声で紡ぎながら、怪我をした部分に指先を押しあてる。
薄紅色の光がふわりと舞い、それと共に怪我の痛みも引いてく。
怪我の痕自体を、完全に消す事はできないけれど]
……いたいの、へーき?
[こてり、と首を傾げて問う様子が、先ほどよりも疲労して見える事には気づかれたか。
何をしたのか問われても、ひみつだから、としか答えずに。
追及されたらまた、きらい、の言葉が積み重なる事になるのだが。*]
……っ。
[ふるり、首を横に振る。
思考の時間はどれほどだったか。
ちらり、周囲を見回せば、先に主が狙った者の姿は離れている。
追うか否か、の選択は早い。
獲るべきはあちらではなく、こちらだと思うから]
……あたしの務めは、小物を獲る事じゃない。
[そう言い聞かせつつ、大鎌を握り締める。
刈り取るべきものは主に向かい、こちらに意識を向けてはいないよう。
主もまた、獲物に意を集中しているようで。
ならば、刈るべき瞬間を見極めるか、と。
銀月を構え、亜麻色を僅かに細めた。**]
[だから急ぐワケじゃないけど、と誰に言い訳するでもなく嘯いて、砦に乗り込む。
総員招集だ。
事情説明は後輩に任せ、ディークは木炭で壁に図を描いた。]
屍鬼対策に、馬防柵を使う。
ピンボールゲームのように柵を並べて誘導し、その先で炎の壁をもって封殺する。
ネクロマンサーが近くにいなければ、なんとかなるだろう。
[有象無象の屍鬼に愛着するシメオンではなかろうが、なにしろ炎は目立つから、気を引いてしまうおそれはあった。
まあ、その時は術者当人を狙うとして──ちと手強い護衛が怖いけど、と言葉には出さず算段する。]
オーガやゴーレム対策には、ポータルを使う。
この先に転移門を設け、それを偽装するために一夜城を築くぞ。
[ポータルは、多勢を瞬間移動させる魔法装置だ。
通常は、二カ所をつなぐのに使う。
だが、今回は強制送還機能として入り口だけを開くつもりだ。
そこをくぐった者は、自身に馴染みの深い場所──魔物であれば魔界へ飛ばされると目論んだ。
一夜城=出丸の生成は、植物精霊魔法と幻術に頼ることになろう。]
空を飛んで来る魔物対策に、砦の上のバリスタをいつでも使えるようにしておいてくれ。
ありったけのクロスボウも城壁に運んでおくんだ。
[何故、ディークが差配をしているのか、兵らに疑問を差し挟ませない勢いで指示を飛ばしてゆく。
そこの呼吸は、ほとんどプロの詐欺師にも近いものがあった。]
/*
ディークさん、やはりたいへん頼りになる(拝みまくる)任せて安心の軍師がいてくれて、ほんっとーに、良かった><
ツンデレ具合も絶妙にさいこーです。ごちそーさまです!(もぐもぐもぐ
― 5年前 ―
[ 皇太子が銀の月揮う娘に命を攫われた後、王国の中枢は、まさに蜂の巣を突ついたような騒ぎとなった ]
ヨセフ...良く来てくれました。
[ そんな混乱の中でも、なんとか滞りなく執り行われる事と成った皇太子の葬儀の前日、参列者として訪れた隣国の将軍に再会した男は、ひどく張りつめて見えたろう ]
丁度良かった、今から兄上に最後の別れをしに行く所です、出来れば一緒に来て頂けませんか?
[ 何故、今から?と問われれば、寂しげな笑みが、男の顔に浮かぶ ]
俺は、葬儀には参列出来ないので...資格はある、と言われましたが、下手をするとクーデターが起こりかねないそうです。
[ 王権を巡る混乱は、すでに争いに発展しかけていて、事実上の皇太子候補である男の周りには、取り入ろうとする者と、排斥しようと動く者、遂には抹殺を計る者までが群がる事態となっている、とは、ヨセフにも察せられただろうか。
だが、当然のように、そんな動きは、男自身の心とは、何の関係もないものだった ]
俺は......兄上を護れませんでした。
[ 遺体の戻らなかった皇太子の棺には、急遽こしらえ上げられた、木彫りの彫像が置かれていた。その彫像の面影を切なく見つめ、男はぽつ、と言葉を落とす。
あの日から、幾度となく、苦い後悔と共に、繰り返した言葉 ]
力も、心も…俺には、足りない…!
[ そこにあるのは、哀しみを覆い隠す程の怒り、何よりも自分自身の無力への。
ぽたり、と、彫像の上に、溢れたひと雫が落ちて、男はハッとしたように、片手で目元を覆う ]
すみません…ヨセフ、みっともないですね。俺がしっかりしなければいけないっていのに。
[ 声が震えぬように、こみ上げる想いを呑み込んで、男は、もう1人の兄とも慕う相手になんとか笑顔を見せた ]
ありがとうございます…ヨセフ…誰よりも兄上の心を理解してくれていたのは貴方だ。
貴方がここにいらしてくれたら…兄上の魂も迷わない。きっと……そんな気がするんです。**
[兵器は内部、魔道炉の唸りを強くした。
それを聞く者はいない。
留守居の玉座は、臥した獣の背のように、曙光色の肘掛けをなだらかに上下させる]
──
[ヒトガタの視力は人間程度しかないらしいが、ツィーアはそれでも気に入っていた。
この世界は美しい。
雑多な命を飲み込んで輝く破光は、
王の背中越しに見る太陽は、
地にあって高く仰ぎ見る極上の流星は]
─ 野営地 ─
[聖なる光に構成を解かれた魔法鉱石は、物理的な損壊とは比較にならないほど自己修復が遅れていた。
ヒトガタは喘ぎながら、残った指の腹で地面に印を描く。
溶け落ちた鉱石の一部を触媒に消費して、再生の魔法を。
首から上、視線は核が直接操っているから、ヒトガタの自律機能は耳と肌とで周囲を窺う]
…
[弱い再生魔法を刻んだ指は、そのままガリガリと土を掻いた]*
─ セミヨンを越えてモーザック砦へ ─
[ふと、佇む魔法兵器の唸りが小さくなった。
城砦に畳まれた触腕がズルと蠢いて、持ち上がる。
美味そうな"匂い"
小さき有象無象ではなく、年ふりた強い命の光が複数。
ツィーアの認知範囲に入ったその気配>>61は横切るように南東へ動いていく。
もたげられた触腕はそちらへとたなびいて揺れた]
[それは以前、の話。
一つなのか二つなのか曖昧な気配が、足元に遊んできたことがあった。
くるくると愛らしいそれに惹かれ、尾を持ち上げたツィーアはその気配のあたりへ振り下ろした。
黒竜ナールのような反応を期待したのでもあるし、そうでなければ文字通り取って食おうという、いわば好意的な意志で。
しかし、機敏に打擲を躱した気配は見る間に遠ざかり、それっきり、ぱたりと間合いに近づいて来なくなってしまった>>125
それから数日のあいだ、魔法兵器の光は沈み込んだ色のまま戻らず、魔王の声にすら反応しなかったほど。
以来、かの長耳双子と似た匂いの命を知覚するとそわそわするのだし、今も足元に寄ってきた命があればじゃれかかる癖は変わっていない]**
/*
逃げられて落ち込むとか、まじ可愛すぎるだろう。
なんだよこいつほんとうにもうかわいいなぁ。
(灰潜伏してますが、長文書き書き中なのです)
― 追撃 ―
[人間を追いかけて、狼牙族は本隊よりもずいぶんと先行していた。
巨大な戦斧を振り回しながら先頭を走っていたオークに、不意に矢が突き立つ。
痛みに咆えたオークを、同調して猛る巨狼を、幾本もの矢が襲った。
針鼠のようになって倒れた仲間を目の当たりにして、後続は一瞬戸惑う。
判断の遅れは、彼らの命を代償にした。
幾匹もの仲間を犠牲にしながら、残るものたちは這う這うの体で矢の射程外へと逃げていく。
追撃などもはやできる状況ではなかった。]
[後退していく人間の本隊に追い縋るよう、群れ為す亜人たちも森の手前へ差し掛かる。
両脇の抵抗が減って、一時は押し包まんとするほどの勢いだった。
そこへ横手から矢を浴びた亜人たちはたちまち混乱に陥る。
逃げ出すもの。変わらず人間の本隊を追いかけようとするもの。弓兵を探して殺そうとするもの。それぞれに分かれたために、本隊へと掛かる圧力はずいぶんと減っただろう。
森へ向かったものたちは、たどり着くより先に次々と射落されていく。
だが、彼らは数に任せて遮二無二進むのを試みた。
仲間の死体を盾に、先頭はじりじりと森へ近づいていく。]
[相変わらずの速度で動く鉄底族と屍兵は、少し遅れて矢の雨に遭遇した。
しかし矢の雨は、彼らの足を止めるには至らない。
鉄底族は盾を掲げて矢を防ぎ、ものともせずに進んでいく。
屍兵たちは多少の矢が刺さっても変わらずに動いた。
彼らを打ち倒したのは、唸りを上げて飛来する石だった。
大きな石はアンデッドを動かなくなるほどに押しつぶし、鉄底族の盾を吹き飛ばして鎧ごと彼らをひしゃげさせた。
鉄底族の先頭を進む一族の長、偉大なる鷲髭のゴルバは即座に配下の戦士たちに指令を下す。
鉄底族の隊列はさらに密集し、丸盾を重ね合わせるようにして巨大な天蓋を造り出した。
幾重にも重なり支え合う盾は、投石器の石をも跳ね返す。
ただ、もともと乏しい移動力は、さらに減少した。]
[紫毒の一族も、等しく矢の脅威に晒された。
弓兵に見つかれば射止められ、無様な死骸を地に晒す。
しかしながら、森の中こそが彼らの本領だった。
見つからずに森にたどり着いたものたちは、素早く木に登梢に身を隠した。
枝葉のざわめきに紛れて移動し、獲物の頭上から糸を垂らす。
悲鳴を上げながら梢の間に連れ去られたものは、二度と戻らない。
少しずつ少しずつ、不可視の死が弓兵を侵食していく。]
[いずれにせよ魔の進軍は森の側で一度停滞した。
森の脅威が排除されない限り、有力な部隊が宿営地まで到達することはないだろう。]
[戯れる波動を指に絡ませる。
期待し、強請るさまは愛らしい。
何もなくとも、
それほど我に仕置されたいか?
そんな悪い子には、特段きつい躾をしなくてはな。
[喉を鳴らすような、優しげな声]
[それら戦うものどもの上を、竜は飛んだ。
変わり果てた兄弟らを斬る男の激情を嗤い、燃える宿営地の上を一度飛び越し、人間どもが立て籠もろうとしているモーザック砦の旗に影を落として旋回する。
夜空高く飛ぶ黒竜など人間には見えなかろうが、竜の背には魔の光纏う王が在った。
光に縁どられた竜の影絵は、地上からでも見えたことだろう。]
怒りと恐怖の声が聞こえる。
血と死の匂いを感じる。
これは良い。実に心地よい。
我の心まで躍るようだ。
[風の中で高らかに笑った魔王は、ナールに指示を下す。]
我も少し遊んでやろう。
あれだ。あの木偶がいい。
[高揚のままにナールを駆けさせた魔王は、森に潜む人間どもめがけて竜翼を鋭く急降下させた。
驚愕する人間たちを尻目に上空をナールは木々の上を掠め飛びながら、投石器を前脚でつかんで別の投石器に投げつける。あるいは尾を打ち振ってなぎ倒す。
幾本もの矢が射かけられるが、下から飛んでくる並の矢がナールの鱗を傷つけることなどできようはずもない。]
良いぞ。
次はあれだ。
[遊戯の感覚で、投石器を次々と破壊していく。]
[目につくところをひとしきり破壊して満足した魔王は、ナールを燃え上がる野営地へと向けさせた。
人間がほぼいなくなった場所に、いくつかの気配がある。
玩具が壊れて落ちているなら拾っておくかと、
───ついでに楽しみのひとつでもしようかと、
上空をぐるりと回って見下ろした。
そこにシメオンと、その僕と、壊れた人形と、
人形によく似た顔立ちの人間がいた。]
ふん?
[興味を引かれた顔で鼻を鳴らし、ナールを降下させていく。]
あれだな?
ひどく壊れたものだ。
我以外の手で、こうまでされるとはな。
[声が不快を含んだ。
お気に入りの玩具を別の者に触られたときのそれ。]
───ふむ。
もう少し、壊れにくくするか。
[真剣に検討する色で唸る。]
[黒竜が舞い降りたのは、今まさに刃交わす魔と人間から少し離れた場所だった。
大人しく伏せる黒竜から降り、半ば溶けて崩れた人形の横に立つ。]
無様だな。
守りたいと願った人間に殺されるのは嬉しいか?
[呼びかけたのは、素体の記憶に向けてだ。]*
/*
そうそう。
書き忘れてたけど、ツィーアがラーグとか呼んでくるのも嬉しいよね。特別感。
兵器だなぁ。可愛いなぁ。むやみになでくり回したいなあ。
/*
ロシェからの反撃を貰っておきたいな〜
負傷しておきたいな〜
ヨセフに目撃されて殺されたいな〜
ここまで願望の 難易度。wwwがんばる。
…──、
[魔の知覚には、大いなる気配の動きが捉えられてある。
戦場を行き来するには気にも留めはしないが、流石に頭上より降り来ては僅か注意がそちらへ向いた。]
あまり猶予はないぞ、人間。
[言いやって、少し距離を置かんと試みる。
黒い魔石が、ぱらぱらと小さな音を立てて地面に散った。]
貪欲なる 地底の顎よ
[短い呪は、地面に幻影の棘を現出せしめる。
ほんの瞬間現れるだけのそれは、その場にある獲物の足を貫く。
棘は幻影、なれば怪我も幻影だが、その齎す痛みだけは本物だ。
痛みにより、実際に怪我した如き反応を示す者すらある。
この男に、そこまで期待は出来ないやも知れないが。]
…。それだけか?
[煽るではなく、確かめるように問いかけた。
確かにこれはいい獲物だ。気力も充分、精神力もまた素晴らしい。
だが剣振り回す、これではただの人間の戦士ではないか。
所詮この程度かと、やや落胆する思いで問いながら、魔は手にした黒い刃を獲物へと向け*投げ放った*]
[小回りの利かない兵器のために、我が王が精緻な玩具を用意したのは5年前か。
当初の新鮮な感覚こそ多少は薄れても、人形と、人形を介して知覚する全ては悦びだったから、それが壊されるのも遊びの範疇。
とはいえ、出かけた先で簡単に壊れられると、ヒトガタに自律行動の能力がついている意味がないのではないか]
……、ぅ
[上空を舞う竜の影、王の流星を眼に探しながら、
刃と刃の触れ合う音と声を耳に聞きながら、
ヒトガタは溶けた半身を掻き寄せては自己修復の試みを繰り返していた]
この素体は弟より弱いのだと言うていた
[だから壊されたのだろう、と判断する]
皮を硬くするのか?
あるいは魔力を注いで含ませてやれば良いか
[創造主である王の叡智に任せておけば良い、と。こちらの検討は抽象的なもの。
そもそも射撃に対して回避行動をとらさせれば良かっただけ、とは思いもよらぬこと]
[上空を向いていた顔が下がり、
視線も天から、より近い位置へ焦点を結ぶ。
舞い降りた黒竜、
ヒトガタの瞳が映すのは黄金の乗り手だけ]
……
[不完全に生えかけた脚を動かし、指で地を掻いて身を起こそうとした。
脆い泥人形はそれにも耐えず半身の輪郭を崩し、べちゃり、粘つく音]
まだ …ころされてない
[嬉しいか、と魔王に問われて零したのは弱い息]
そうか。
[まだ、と言う人形に短く返す。
片足を上げ、爪先を人形の頭に掛けた。]
ならば、死ね。
[押さえきれぬ喜悦が声に滲む。
爪先に──傍目にはごく軽く──力が加わり、
熟れた果物の潰れる音がして、人形の頭が弾けた。]
そうか。弱いのか。
[人形の頭を踏み砕きながら、声はまだ思案する風。]
全て硬くすれば動きが悪くなるな。
打撃に反応させて密度を増やすか。
[ぐずぐず崩れる流動鉱石を足先でかき回し、]
我が命じる
我に染まれ
然して立て
[言葉そのものが呪へ変じ、崩れた人形へ力が流れ込む。
魔光が聖なる光を凌駕しかき消して、再生を促した。]
── 戦い方を書き加える、という方法もあるか。
新たな素体を探して、記憶を抜き出すか。
人形自身で死を増やせれば、効率もいいだろう。
[試してみようと言って弾む声は、ツィーアを改造していた時と同じだった。]
― 野営陣傍 ―
魔軍の進軍が停滞している隙に砦へと向かう。
負傷者は先に出発せよ。
部隊長、集まってくれ。
[兵に負傷者の運び出しを指示する中、各隊を取り纏める部隊長を集めコエにより聞いた忠告を伝える]
砦前方に罠を仕掛けた門を置くそうだ。
帰還には別の門を通れ。
良いか、間違えるなよ。
[厳命し、部隊長を各隊に戻して撤退準備へと移った]
― 西の森 ―
[西の森では投石器が闇ドワーフとアンデッドの一団の歩みを鈍らせていた>>209。
盾により防がれているが、倒すことが目的ではない。
故に投石器は次々と岩石を投擲していたのだが、その勢いが唐突に止まった]
「ひぃっ!」
「逃げろーー!!」
[漆黒の竜が投石器を目掛け滑空する>>213。
向かって来る竜に兵は驚き逃げ出し、後には動かぬ投石器が残された。
完膚なきまでに破壊される投石器を見て、兵達は震え上がる。
敵うはずもない、と兵達はほうほうの体で逃げ出し、男の軍との合流を図った。
途中で亜人や大蜘蛛に仕掛けられ倒れる者も少なくない*]
埋もれし一葉 は、皇子 ロー・シェン を投票先に選びました。
[ 男はこれまで、亜人や闇の眷属と相対したことはあっても、魔界から地上を蹂躙するための意志をもって現れた生粋の魔将とは、戦ったことも顔を合わせた事も無い。
だが、黒に包まれ、闇を操るかの魔将からは、これまで感じたことのない、強い魔力の気配を感じていた。
決して一筋縄では倒せぬ相手。けれど、必ず倒さねばならない相手... ]
人間を......
[ 裂帛の気合を込めた切っ先は、楽しむ表情を崩さぬ魔の顔を縁取る銀糸を掠めただけで、躱される。>>216
猶予はないと告げた魔将が、地より喚び出した鋭い刺は、男の足に見た目通りの切り裂くような痛みを与えたが、男はその痛みに顔を顰めるでもなく、刺の上を踏み越えて地を蹴った ]
...舐めるなっ!!
[ 見た目ばかりは、人より重く見える体躯が、軽々と宙に跳ぶ。
真っすぐ頭上に振り上げたクレイモアは、そのまま魔の頭上に落ちると見せかけて、くるりと、宙で身を捻った男の動きに軌道を変え、魔の背後から袈裟懸けに、その背を切り裂かんとする。
それもまた、ローグの舞の動き...精霊に愛された者だけが、会得出来ると伝わる剣技だ ]
[ 上空に現れた黒竜の影と、強大な魔王の気配はまだ、男の意識に触れてはいない* ]
[ 必ず戻れ、というヨセフのコエも、砦を護る手筈を着々と整えるディークのコエも、男には届いている。
応えねば、案じさせるばかりだとは、判っていても、その余裕も、応える言葉も見つからなかった ]
[ 今、自分は、皇子でも、人の世を護る指揮官でもなく、ただ1人の男として、目前の魔将と闘っている。
それは、きっと、正道ではないだろう。
けれど、男にとっては、譲れぬ正義だった ]
― 怒れる森の民 ―
[投石器を壊され、下がらざるを得なくなった兵達に迫る影。
音無き糸が兵へと伸ばされた時、弓兵とは異なる位置から一矢が飛来した。
奇怪な悲鳴を上げ、木の上から大蜘蛛が絶命して落ちてくる。
次いで、大地を叩く蹄の音が響いた]
「そのまま下がりたまえ」
[兵の横を大鹿に乗ったエルフの戦士が通り抜ける。
擦れ違い際に声をかけ、エルフの戦士達は森に潜む魔の者達を狩り出した。
森は、彼らエルフの領域でもあるのだ]
[セミヨン川を抜けたエルフの戦士達は、当初モーザック砦を目指すはずだった。
しかしその途中で闇に燃える炎を見つけ、魔軍と王国軍が戦闘中であることを知る。
夜目の利く彼らは交戦場の一つである西の森での顛末を見、王国軍に加勢すべく駆けつけたのだ]
「人間達が引いたら我らも引くぞ」
[このまま魔軍の陣へは突っ込まず、森から撤退する王国軍の兵の援護をした後、エルフ達もまた森から去る。
彼ら単独では寡兵にすぎぬ。
王国軍と連携を取るべく、大鹿はモーザック砦を目指した*]
― 懐かしい記憶 ―
[ アイリは口が悪かった。乱暴というのではないが、何か気に入らぬ事があると、馬鹿だのきらいだのと、投げつけられる。>>195
言われるのは、まあ、良かったが、いつも涙ぐんだ顔で睨まれるのが結構堪えた ]
だって...勝手に身体が動くんだよ......
精霊のせいじゃないかな?
[ 仔犬じみた目でじーっと睨みつける視線から逃れようと、そんな事を口にもしてみたが、相手が納得する筈も無い。
結局散々に文句を言われて(護ったというのに、実に理不尽だ)...けれど最後には、本当に心配しているのだと解る表情で痛みを気遣われた ]
今の、治癒術か?すごいな...
[ ある日、少々無茶をしすぎて、多分骨にひびくらいは入ったのではと思っていた怪我が、瞬時に回復する術を使ったアイリに、目を丸くする>>196
治癒の術を使う者はローグにも居るし、他の町や村でも見た事があるが、大抵の術は表面の傷は癒せても、深い傷は回復を早めるくらいで、あっという間に痛みが消え去るなどという強い術は見た事がない。
触媒も僅かな血でしか無いように見えたから、不思議がって、どんな術なのか?と、しつこく尋ねたが、またまたきらいの大連呼で拒否られた ]
[ 仕方なく、追及は諦めたものの、術を使った後のアイリが、ひどく疲れたように見えたのが気にかかり、以後は少々慎重に行動するようになった ]
[ 怪我をせぬように、と気をつける...のは性格上限度があったので、怪我をしても出来るだけ我慢して隠す、という方向に努力を振り向けた結果...痛みに強い身体を得たのは、以後の役に立ったものの、アイリにバレた時には、常以上の、「馬鹿」「きらい」の二重の連呼を喰らう羽目になったのも...今は、懐かしい記憶のうちだ** ]
― 野営陣傍 ―
[魔軍の動向を窺いながら、男の軍は砦を目指し移動を開始する。
先行した負傷兵達は、砦からの援軍と途中で合流し、手を借りて砦へと急ぐことに。
それ以外の援軍は当初の目的通りに男の軍との合流を急いだ]
ロシェ……
[ロー・シェンが戻るならば直ぐにでも出立するのだが、彼が戻る気配が全く無い。
コエすらも返らず、男は気にするように炎が見える方角を何度も見た]
魔導人形のようなもの…か。
[野営陣の中で遭遇したらしい、親友に似た人物。
幽鬼でも屍鬼でもなく、造られた物だという。
ロー・シェンが見紛うほどだ、精緻に造られた物なのだろう]
偶然そのように造られたとは考え難い気がするな。
[遺体も残らなかった親友の死。
持ち去られたのだとしたら、元にされた可能性はあるように思えた]
[だがそこまで考えて、男は思考を振り払うように頭を振る。
今考えるべきはそれではない]
……やはり、
[釘を刺されたが探しに行くべきかと思案し始めた時、陣の一角が俄かに沸いた。
遅れて兵に支えられた人物が男の下へとやってくる]
お前は…ロシェの従者の。
ロシェはどうした!?
[一人で現れた従者を見て、男は焦りの声を上げた。
問えば従者は野営陣内での顛末を語り、男に助けを求めてくる。
野営陣内は予想以上に状況が悪化していた]
バルタザール!
砦からの援軍が到着したら砦へ出発しろ!
私は皇太子の下へ行く!
[副官に指示を出すと、今度ばかりは彼も反対はしなかった。
副官は是を返し、せめて騎士達を連れて行くよう進言。
それは素直に受け入れ、男は精鋭の騎士と共に炎が盛る野営陣へと駆け出した*]
/*
身内に甘くて、どうしても非情になれないとこまで、ヨセフに似てると言う話になったよね。
意識して設定してたわけじゃないんだが。
/*
やはし、どう考えてもローレルとは、復活後しか話せないな。でもまあ一日分あるから、なんとか...うん、なんとか...(なるのか?)
/*
ところでそうじゃないかと、設定出た時から思ってましたがアイリの治癒術は、生命力触媒ですね?(なまぬっくい目)
皇子癒すのと引き換えに生命力使い果たしたりしやがったら、キミが墓下で悶え死ぬくらい悲しんでやるから覚悟しやがれ(不穏
[ 「竜だ! 黒竜が──!」
櫓から降ってきた見張りの声に、迎撃準備に駆け回っていた者たちが動きを止める。
身を竦ませ、皆が空の一点を見つめた。
黄金の、だがどこか昏い魔光をまとう騎手によって浮かび上がる漆黒のシルエット。>>212
その口が炎を吐けば、砦は火の海になるだろう。
何事も受け流すのが常のディークですら、キュ…と心臓のあたりが締めつけられるような痛みを覚えた。]
手出しはするな…!
意気がったところで、届きはしない。
[あちらから攻撃してくる気配もなかった。]
あれを斥候というのは、火山を松明だというようなものだけどな。
…物見遊山なんだろうさ。
[歯牙にもかけられていない。だが、それを僥倖と思わねばならなかった。]
────… は、は、は!!!
素晴らしい!!素晴らしいじゃないか。
く、くく…それは失礼。確かに舐めていたようだ。
では舐めずに狩らねばなるまいなあ。
ああ…いいぞ、素晴らしい。
お前ならば、アイリ以上の傑作になりそうだ。
[赤い瞳を歓喜に輝かせ、人には瘴気ともなろう程の魔力を溢れ出させながら、魔は高揚した様子で男を見返した。こんなに楽しむのは、7年前以来だろうか。きらきらと瞳輝かせて、魔は武器を持たぬ両腕を宙に広げた。]
[と、厩舎の方で、ピイイ!と高い鳴き声があがる。
見えないままに、竜の気配を感じとったのだろう。]
…グリフォンがいるな?
[ディークの目が光を取り戻し、喜々として足を向ける。
「王家専用騎です!」 当番兵が止めるのも構わず、厩舎の戸を潜った。]
その、”王家”の戦陣をきってる皇太子殿下を迎えに行くんだよ。
俺は、案内人だ。
ということで、早く鞍を。
[口八丁で騎手を丸め込み、グリフォンを表に出させる。]
いいだろう。
お前は我が直々に狩ってくれよう。
───アイリ、少し大人しくしておいで。
これは我の獲物だ。
[それが獲物にとって、何を意味するかなど思考の外だ。
魔はひどく楽し気に、黒い魔石を幾つか宙に向けて放り投げた。]
…… 闇に蠢く 歪なる者どもよ
[そうして、詠唱を始める。
その口元には嘲るような笑みがある。これが終われば逃がしはしないと、煽るが如き微笑みが。]
グリフォン借りるぞ。
こいつの名前、なんていうんだ?
[ロー・シェンに送る声は唐突なものだったが、
すぐに行く、死ぬんじゃないぞ、と素直に言えない男なりの鼓舞だった。]
[ チリン
繋がる視覚が消失し、我が王の姿が見えなくなってツィーアの核が音を立てた。
一拍ほどの間を置いて聴覚も消える。
探していた音──魔と対峙し闘う弟の声──も届かなくなった]*
…今だけは、心のままに在れ。
私の前で取り繕う必要は無い。
[溜め込んではいけない、と。
吐き出し足りないものがあるならば受け止めようと囁く]
君がテディを護りたかったように、テディも君を護りたかったはずだ。
彼はきっと、後悔などしていない。
だがそうして君が自分を責め続けてしまうなら、テディは君を心配して彷徨ってしまうぞ。
[語りかけながら、もう一度ロー・シェンの頭をぽんと叩いた]
あ
[頭が砕ける新奇なる感触に、魔力の波動は悦をほころばせ]
……今、お前の顔を見ていたというに……
[次いで、憮然としたような響きをおびた]
[銀月を携えた娘の意識は、目の前の対峙にのみ注がれる。
主が自ら剣を取って戦う、という、娘にとっては珍しい事態に引き寄せられていた部分も少なからずあるが。
狩るべき獲物の動き、その舞うが如き技にも意識は寄せられていた。
剣を取り、戦う者としても純粋に強い、と。
それは、戦いが本分たる魔戦士の血による、本能的な察知。
故に、気を抜けない、と思っていた所に向けられたのは、命。>>246]
……わかった。
マスターがそう仰るなら、あたしは邪魔者を警戒する。
[先に取り逃がした者が援軍を連れて来る可能性もある。
ならば、己がなすべきはそちらへ対し、主の邪魔をさせぬ事。
そう、認識した娘は一歩後ろへ飛びずさり、対峙する者たちとの距離を開けた。*]
記憶を継ぎ足すのか
ならば好戦的なものが好い
[戦えと命じればそう動くが、人形の自律に任せておくと殆ど自らは剣を振るわない。
強弱だけではなく、そも剣技を護身の法として記憶から参照している節があったから、そこへ戦い方を書き加えるという策は魅力的に響く。
王がこの身の世界を広げていく、全ての過程を楽しんでいるのが嬉しかった]
またよろこびが増える
お前が私の為に手をかける人形は、私の誇りだ
だが...そう簡単に、狩られるわけにはいかん!
[ 不穏な闇の眷属を喚び出すかと聞こえる詠唱を始めた魔将の様子に、男は再び地を蹴って駆け出す ]
―見物―
あれ。宿営地の中も賑やかだね。
『誰かが来たのかしら』
[それは魔王の人形が齎した騒ぎだったが、
離れた位置にいる双子には仔細までは分からない。
閃光が瞬いたり、炎の気配がしたり。
うずうずするような戦の高揚が、あちらこちらで生まれていた]
[グリフォンライダーとタンデムで、空路、北へ向う。
風を孕んだ翼が肌をかすめた。]
ん…
[この感覚は、どこかで知っている、と感じたけれど、今はそれ以上は辿れぬまま。]
ねえねえローズマリー。ボクらもちょこっと遊んじゃう?
『でもそれでバレたらただの馬鹿よ、ローレル』
手厳しいなあ。とはいえ今もサボリには違いないけど。
[ヨセフにはモーザック砦に向かえと言われている。
なのに目下寄り道なうなのだ。
そろそろバレないうちに向かわなきゃいけな――――…]
わああああっ。
『……心臓にっ、わるいわ…』
[後方の状況を伺う“コエ”に、双子は揃って慌てた。
授業をサボっていたところを教師に見つかってしまった生徒のような心地だ]
好戦的なものか。
───そうだな。
[記憶の継ぎ足しに、ツィーアは興味を持ったらしい。
思い当たるものは、ひとつあったが]
……あれは、シメオンが殊の外気に入っているものだからな。
寄越せと言ってもいいが、あの数寄者が結局あれで何をしたいのかは気になる。
案外と便利にも使っているようだしな。
そうだ。
人形の素体を獲りに行かせたのもあれだったか。
ローズマリー!
『ローレル』
「「 とにかく急ごう 」」
[双子はきょろきょろと辺りを見回す。
一部の人気沸騰箇所を除いて人気のなくなった宿営地を物色し、
レオヴィルの旗なびく1本の竿に手を掛ける]
…これでいく?
『そうね。ほんとは箒がいいけど、ぜいたくは敵だもの』
…… 空は我らの庭
…… 『風は我らの足』
[旗の竿に二人揃って跨って、呪具となる本を開き、まじないを唱えると――ふわり。双子を乗せた旗が低空に舞い上がった]
ようし、れっつごー!
『ひとっとびー』
[竜や城や瞬間移動や変身といった技を持たない双子にとって、これはなかなか便利な移動手段なのだが…持続時間が短いのが難点だった。
とにかくちょっとは後方に向かっておこうと、レオヴィルの旗をぱたぱた揺らしながら双子は砦目指して加速する*]
/*
ひとり周回遅れでほのぼの軸を走っているような気がしないでもない(
ううむ、しかしこれ他全員宿営地に集まっているんだよなあ。
砦でぽつねんするのは寂しいし、どっかで回れ右しちゃうか。
はあっ!!
[ 真っすぐに駆け出したのは、詠唱の間は武器は使えぬはず、と、考えてのこと、最短距離を走り、剣は横薙ぎに、魔の首を刎ね落とさんと、揮われる* ]
[頭を潰した人形が起き上がってくるまでの間、魔王の視線は別の場所へ流れる。
シメオンが遊んでいる、人形によく似た面差しの人間。]
おまえがロシェとか呼ぶのがあれか?
[人形が再生した直後、稀に口にする名だ。
足元に問いかけるが、返事はない。
さきほど、自分で壊したから。]
[砦へ退避してくる者たちを見つけて励ましの声をかけて進む。
北へ向うほどに、歩いてくる者たちの姿はくたびれ、怪我をしている者が多くなった。
長く前線に踏みとどまって戦った者たちだ。
グリフォンライダーが敬礼代わりに鉤槍を掲げ、ディークは肯首して意を重ね、通り過ぎる。]
──…、 あちらへ。
[何処にロー・シェンがいるか、コエに導かれずとも状況は示していた。
魔王が砦に見向きもしなかったのは、陣営でもっと”楽しいこと”が起きているからに違いあるまい。
それは、王国軍の敢闘と苦境を同時に意味した。]
アウロラか、承知した。
[応えのあったことに、ほっとしている自分がいる。
ロー・シェンに力を送り続けようとするごとく、続けた。]
何故だ
仕置は楽しいものだろう
[むぅ、と唸る声はちょうど、城が封印された魔導炉を動かそうとしている際の振動数と同じ]
先程の宿題だが──
一度でも、”城”の中に入った者を見つけることができれば、一緒に魔法で"飛ぶ"ことが可能かもしれないぞ。
残念だが、俺は行ったことがない。
おまえ、捕まってみる?
[作った軽妙さは、そこで、ふと途切れた。]
なんでも良いが、またシメオンか
横取りせぬとは言うたが、奴は王族を落とすのに手間取りすぎではないのか
この素体を獲った者…どうだったか。強いのなら欲しいが、手間取りすぎではないのか
[二度言った]
[闇を焦がして燃える火の傍らを、前屈みに歩く群れがいる。
怪我人よりも重い足取りのそれは──死者の軍だ。]
…っ !
[その中に、鈍く光る禿頭を見出して、ディークは目をみはり、逸らし、もう一度見て、唇を噛んだ。]
― 燃え盛る陣へ ―
[火傷だらけであった従者の格好が示すように、男らが居る場所は炎を越えねば野営陣の中へは入れないようだった]
炎の切れ目はあるか?
「いえ。
最短距離で行く場合は火の手が薄い箇所を越えるしか…」
迂回する時間はないな…。
行くぞ!
[躊躇う時間は数瞬もない。
熱気渦巻く焔の中を、男を先頭に数名の騎士が駆けて行く。
鎧と肌が、ちり、と熱を帯びゆくが構うことは無い]
[ロー・シェンが居る場所に何者が集まっているかは従者が教えてくれた。
死者を弄ぶ魔と、それに従う赤紅。
親友の姿をしていた魔導人形に────竜を繰り現れた、闇に在りながら光を纏う威容]
ロシェ! どこだ!!
[少しでもロー・シェンから彼らを離すために、こちらへと意識を向けさせるために。
男は敢えて声を上げ、存在を主張した。
最短距離で駆け行く一団は徐々に目的地へと近付いて行く*]
レオヴィルの王族か。
[人間などを一々個体識別することは稀だが、その人間は魔王の心を惹くだけのものを持っていた。
気に入って、人形の素体にまでした男に似ている顔は、太陽の加護を示すような色合いをしている。]
シメオンに遣らずに、我のものとしても良かったな。
[戯れだ。きっと飽きてすぐに捨ててしまうだろうけれど。
シメオンの背から流れる魔に、暫し目を細めた。]
[ 然して立て ]>>223
……っ!!
[痙攣するように跳ねた体は、再生と同時に戦いの空気に晒される。
起き上がると同じ動きで左手で治癒の印を描いた。
参照──どうにかして皆を、弟を生きて還さなければ──]
ロシェ、逃げろ !
[声が出る。体が冷たい、いや熱い、
ここはどこだ?
この背を敵の鎌が貫いたはず──瞼を開けば記憶を参照して、クレステッドの薄蒼、銀の瞳が瞬いた。何故炎が?護衛官達は、]
っ 、
[記憶と現実の断絶に息を呑む。
起動時の僅かな混乱、傍の強大な存在を認知するまでの間は短い]*
[ツィーアの反応に、堪えられぬとばかりに笑いが零れた。]
おまえは、本当に良く私を楽しませてくれる。
[くつりくつりと笑いの波動が暫く止まない。]
そう拗ねるな。
すぐにおまえにとっても楽しいことになる。
そうだな。
差し当たっては──あのあたりを一匹、使ってみるか。
[笑いを収めてから、とりあえず、と先のことを考える。
手頃なところに、いくつか近づいてくる気配もあった。]
/*
はーー、ロシェも格好可愛いし最高かな。
ロシェ呼びいいよねー、ずるいよねー。我も呼びたい(無理
ロシェとアイリの組も可愛いよねー
一々死体を拾ってくれるヨセフとディークはマジ愛してるww
/*
詠唱の続き考えなきゃ(
これいいけど、ログの手間が倍くらいなる〜
でも一人くらいいたらいいかと思って…個性欲しくて、なんかこう。つい…
[ヨセフ>>*25には、さてなんてお返事しようと考えている間に
別のコエ>>*31が報告のお勤めを果たしてくれた。
あちらさんは既に砦に到達しているようだ。
有能そうな気配がする。
…ちなみにこのコエについて、
仕様説明>>16は聞いたものの、実際に誰と誰が繋がっているかまでを教えてもらう余裕がなく、聞き損ねていた。
貴重な魔法なのだから使うのは偉いヒト――となると
おそらく知らない声のひとりは皇子サマなのだろうと推測がつく。
だがもうひとり……]
(『やけにディークにそっくりよね』)
(いやいや、まっさかあ。親戚か他人の空似だよ)
[ユーリエ姫殺害の件で逮捕されたディークが、その王族と貴重な繋がりを持っているなど冗談でも想像できなかった]
/*
お時間どのへんで決着がいいですかね、ギリじゃない方が多分いいよね。ギャラリー到着目撃時間も含めて、やっぱ0時前くらいかね〜
[魔は、獲物が息を呑んだ様子>>271を怯えと取った。
赤い双眸が、満足げな弧を描く。
闇に溶けたと見えた腕は、再び形を取り戻すようである。
無論これとて、魔力を膨大に使うもの。
それだけ夢中になっているとの証だが──さてそのようなこと、人の身には関心のないことか。]
厄災の名を冠せし牢番よ
嘆きの鍵を 今こそ開け
[詠唱に従って、先に地面に撒かれた魔石>>246が、ぼうと紫じみた暗い光を放ち始めた。それは、魔自身より溢れ出し零れだす魔力を浴びて、それ自体が鼓動を打つかの如くに明滅をし始める。
石はぐるりと周囲を取り囲み、魔法陣の様相を現し始めていた。]
その先だな。
退いてもらおうか。
[無駄と分かっていても、先ずは言葉を投げかける。
仕掛けられるだろうことを想定して、右手は腰のクレイモアの柄を握っていた//]
……何より。
お前を獲る事も、マスターはお望みなのでな!
[宣言と共に地を蹴り、高く跳ぶ。
上空で一度回転した後、繰り出すのは勢いをつけた真っ向からの振り下ろし。
文字通りの一撃必殺を狙った閃は、捉えきれねば己も危うい諸刃の一撃。//]
[跳ね起きた人形が、またあの名を口にした。
今まさにシメオンの力に囚われようとしている人間が、微かにその名に反応したのを見る。
逃げろという単語に反応しただけかもしれないが、それだけということもないだろう。]
ロー・シェン。
ロシェ。
レオヴィルの、ああ。王子だったか。
[そうだったと思い出して頷く。]
王が出ていないとしたら、
あれが、人間どもを纏めていたのか。
なかなかに面白い戦いであったなぁ。
[すでに過去のこととして戦いを振りかえる。
このあとは蹂躙するだけだろう。]
行くぞ、ツィーア。
おまえを改良しなくてはな。
[暫しの感慨にふけったあとは、すぐに興味を失くして人形を呼ぶ。
シメオンらに背を向けて、ナールが飛んでいった方向へ歩き出した。]
[「大丈夫ですか」と、グリフォンライダーに心配されて、顔から手を離した。]
ああ、道案内しないといけなかったな。
[首を巡らせると、眼下に、ヨセフがアイリと対峙するのが見て取れた。
女と斬り合いするんだ?とは思ったものの、アイリがいろいろと規格外なのは承知している。]
[ 胸に沈む、闇...
命と心を侵さんとする
その魔力の塊に刺し貫かれて ]
ぐ、、ア...あああっ!
[ 堪え切れぬ苦悶の叫びが、炎に熱された空気を揺らし、辺りに響き渡った ]
あ…ああ、あ
[ チリン
場違いに澄んだ音色がいて、ヒトガタの指の間で発動しかけていた魔法が消える。
見開いた瞳に映る抱擁>>281
チリン
一度瞼を閉じ、開き、その後はもうレオヴィルの王族の方も魔将シメオンの方も見ることはなく]
……はい
[同じ記憶を素体としても、再生するたび少しずつ異なる人格を呈するヒトガタは、
今は激憤でも絶望でもなく、何かを固く押し込めたような表情を面にのせて、
苦悶の叫びに背を向けると魔王に従い滑らかに歩き出した]
ディー...ク...
......ヨセフ、を、ここ、から......
お前も......気を......つけ...
...ヨセ、フ...
退いて、ください......
俺は、必ず......
[ 戻る、と、言う言葉は、コエにはならず ]
知ってるかもだけど、彼は王族だ。
何かあったら、乗せてけ。
この際、爪でひっつかんでも無礼にはあたるまい。
皇太子と両方でも、いけるだろ。アウロラはできる子だ。
[「何故、その名を」と驚く騎手に一礼して、グリフォンから飛び降りる。]
さすがに、俺までは重量オーバーだろう。
あれで、奴は何かを為しているのか?
[屍術を理解できないツィーアには、シメオンが何をしようとしたのかも、その結果も、曖昧として掴めないもの]
普通に死なせて喰らえば美味そうであったのに
[それも、人形が脆いせいだから是非もないこと。
楽しいことになる、と王の告げた"改良"に、意識は向いた]
……あたしは、僕たるもの。
[ちら、と傷を一瞥した後、亜麻色を黒へと向ける]
マスターにお仕えする、そのためにここに在る。
[淡々と紡ぐ言葉は、意思などいらぬと言わんばかりの響きを帯びる。
仕えるのが当然、と。
それ以外の思考を許されぬ娘の態度に揺らぎはないが]
ここまで乗せてもらって、感謝する。
ドラゴンに気をつけろよ。
[グリフォンに人の言葉がわかるかな、と思いつつ見送り、地上から合流せんと動く。]
俺の勘に従うとさ、
──… 見るのも怖いくらいなんだが、
[呪の完成と共に、禍々しい光は弾け飛ぶ。
それはあたかも、獲物に穿たれた闇の楔に吸い込まれたかのようにも見えた。
獲物にかりそめの死を齎し、縛るための術だ。人間に対し、ここまでの術を用いたことはついぞない──…その価値は充分に、ありそうだった。
意識を失ってしまえば、人の身体はすぐ倒れこむ。
望んだとはいえ、その重さに魔は軽く眉を顰めた。
ついでに背の傷から流れ出る魔力を止めようとして、思った以上の深さに達していたらしきそれにも辟易とした顔をしてみせた。]
[闇に堕ちゆく王子からなんらかの魔力が飛んだような気がしたが、魔王は関知しない。気にもしていなかった。
背後に人形が従うのも当然として、確認もしない。
歩みゆく先では、狩りが行われていた。
ヨセフと共に炎を潜り抜けた騎士の一団。
任されて、盟主の元へと急ぐ彼らを黒竜が襲っている。]
[騎士たちはいずれも手練れで、勇敢で、献身的でもあったが、空を自由に舞う竜と渡り合える人間などごく稀だ。
奮闘も空しく、一人の騎士が竜の前足に捕らえられていた。]
一匹で良いぞ、ナール。
他に構うことはない。
[新たな闖入者に、騎士たちが息をのむ。
それを見ることもせず、魔王は乗騎を呼んだ。]
ああ…高みに座すが当然のお前が、下賤と同じ地べたなど歩いているのも面白い
よく覚えておくとしよう
[眼が戻ってきたことで上機嫌、我が王の美しい背を見つめて喉を鳴らすように波動を揺らした]
先生だ!
『先生だわ!』
[優美な黒竜ナールに騎乗するそのひとの姿形を
地上から見ることは出来ないけれど、
その気配が今、傍に在る――というだけで
双子の心は悦びに満ちる]
[竜はくるりと旋回し、森の方へと消えてゆく。
その偉容な様を、双子はじっと見送った。]
…ねえ。やっぱりちょっと戻っちゃうかい?
『先生が動かれるのだったら、お傍で見たいわ』
ヨセフには、心配だったとか言えば大丈夫だよたぶん。
さあ?
なにやら試したいことがあると言っていたが。
[シメオンの行う屍術には、魔王もさして造詣は深くなかったから、返答も曖昧なものになる。]
ここで終わる程度の相手のことなど捨ておけ。
人形がまともに動くようになれば、いくらでも狩れるぞ。
…えっとね、疲れたり怪我してるヒトたちの砦の移動も順調だよ。
『もうそろそろ着くと思うわ』
[遅ればせながらヨセフに報告する。
嘘は言っていない。
着くの主語に自分たちが入っていないだけで。]
我とて歩くくらいはするぞ。
歩かねば太るらしいからな。
[上機嫌なツィーアに、返す言葉も冗談のようなもの。
太る、の意味は自分でも今一つわかっていなかったが。]
/*
一旦引くか?それがいいかな?
延々と野営地じゃ、砦の仕掛け組もあれだしなー
連続バトルで即死ぬの安易な案は、ぽいしておこうね(
[ロー・シェンが、黄金の希望が、死霊魔術師の前に頽れる。
間に合わなかった自分を悔やみ切れない。
それでも──、]
おまえには、渡さん。
[とっさにカードを投げた。
ディークの意のままに、蜻蛉のごとく飛翔するアーティファクトが闇を舞う。
一枚は、シメオンの手を弾くため、もう一枚は、その背後の傷を抉るために。]
[人間どもの砦の上を飛んだとき、騒がしい声が下から飛んできた。
双子が確かに仕事を果たしているらしいと、満足をひとつ置く。
悦びの気配に愛いものよと思ったが、言葉は掛けなかった。
褒美は稀少なのがよい。
──と思ったわけではなく、単に興味がそこへ留まらなかっただけだ。]
[ これは、死の闇だ、と、どこかで、己の一部が囁く ]
[ 沈み切れば二度とは戻れぬ、と ]
...俺は、諦めない...決して.........
[闇の中、意識を失い、それでもコエはまだ、諦めぬと響く ]
[ それは、男がまだその存在すら知らぬ、双子のエルフの元へも届いたろう ]
…いや、いい。
[モンテリーの王族を獲れと命じたのは自分、ではそれを全うさせるのが先だろう。僕が得物を運ぶとなれば再びの狩り、今はそれも少しばかり厄介だ。]
我はこれを持ち帰る。
お前もお戻り。これは少し面倒だろう。
[気配がまた増えている。魔王とその玩具は行ったようだ。
流石に要を失えないか、逆上した人間どもを相手取るのは厄介にも思えた。]
/*
発言に名前が入っていたら、相手として指定されたという感じなのかな??
うにに。赤貰ってすぐに動けなかったのが悔やまれるね。
時間ェ…。
結局ローさんとも会えぬままだ…むねん。
…いや、いい。
[モンテリーの王族を獲れと命じたのは自分、ではそれを全うさせるのが先だろう。僕が得物を運ぶとなれば己自身の再びの狩り、今はそれも少しばかり厄介だ。]
我はこれを持ち帰る。
お前もお戻り。これは少し面倒だろう。
[気配がまた増えている。魔王とその玩具は行ったようだ。
流石に要を失えないか、逆上した人間どもを相手取るのは面倒だ。]
太る… …太る?
[なんだそれは、という響き]
では地べたになど降りずとも歩けるように、私の中に道を作ろうか
[歩けど歩けど永遠にループする廊下ならツィーア自身の工夫だけですぐに実現できそうだ、などと]
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