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戦いはいよいよ現実のものとなった。
吹き上がる戦火は、人々に選択を迫る。
自ら望んで戦いに身を投じるもの。
守るもののため、武器を手にするもの。
才覚一つで、戦乱の時を乗り越えようとするもの。
戦火に紛れ、己の目的を果たそうとするもの。
戦いを見守り、あるいは止めようとするもの。
己の思惑を果たせるのは誰か。
思いの剣が交錯する先へ、歴史は進む。
どうやらこの中には、村人が1名、天魔が2名、銀狼が1名、恋天使が1名、洗礼者が1名、誘惑者が2名、落胤が1名、胡蝶が1名いるようだ。
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ふるふるふるふる 夜がふる
ふるふるふるふる 人がふる
ふるふるふるふる 火の粉ふる
ふるふるふるふる 橋落ちる
――― 風の精の遊び歌
/*
今日の一葉さんの歌には特に意味はありませんよ。
寝ぼけ頭で思いつくまま頭の中から垂れ流したなにかです。
最後、橋落ちた、の方が良かったですかねぇ。(推敲)
― サクソー川 ―
[空が見えて、とっさに手を横に薙ぐ。
その軌道に弧を描いて並ぶのはカード。
教会の前に捨てられた時にこの身の傍らにあったというものだ。
魔力をもつそれが小型のトランポリンよろしくディークの背を跳ね上げる。]
親分さん…!
[再び、その位置を変えたカードはディークの足の下で飛び石めいた足がかりを作った。
そこを踏んで、川に沈みかけたマーティンを掴む。
だが、カードは炎にも水にも弱いのだ。
二人の体重を支え切れずに、ディークはもろともに災厄の濁流に飲まれる。]
[川がカーブした辺りまで流されて、ようやく岸に這い上がることができた。>>219
鎧が軽かったのが幸いしたのだろう。
刃物で切ったか、ふくらはぎのあたりに大きな傷がある。
痛い、が、それどころではなかった。]
親分さん…!
[傍らのマーティンをひっくり返し、水を吐かせようと懸命に背を叩くが、その息は弱かった。]
[と、強大な癒しの力があたりを覆う。>>227]
──これは、
[マーティンは息を吹き返し、ディークの足の傷もまた塞がっていた。]
[と、強大な癒しの力があたりを覆う。>>0:227]
──これは、
[マーティンは息を吹き返し、ディークの足の傷もまた塞がっていた。]
…ああ、
[今の”彼”を見たら、クレステッドが生きていたと思う者は多勢いそうだ。
ディークでさえ、あるいは、と虚しく期待してしまったのだから。
禿頭をかきながら起き上がったマーティンは、「おう。恩にきるぜ、旦那」とヒトガタに笑いかけた。
そんな風には素直に感謝の言葉を口にできないまでも、ディークも目礼する。
だが、ヒトガタの零した不穏な言葉>>0:228には、虚をつかれて、ひそかに奥歯を噛み締めた。**]
/*
問題は、ロードが一番凡庸だろこれ、という根本的な...がんばれ、ちょーがんばれ、俺...orz
[ ナカノヒト、ヤッパリ、ヒーロータイシツジャナイノカモシレナイ...... ]
あ、誘惑者、無事げっちゅー、デフォ誘惑先はローレルでした。
皇子 ロー・シェンは、流離の勝負師 ディーク を能力(誘う)の対象に選びました。
/*
口説くのはいいけど、ディークも夜まで不在表示か。こうちょっと、戦況まとめて落ち着かせとくべきかね。
あんまり混沌としたまんまだと、ゆっくりお話できないし。
あとは、ガーディアンとの親密度上げだなー。
[ 欲望には素直に生きる ]
― セミヨン川南岸 ―
[ 戦場を駆け抜ける暴風と、魔を祓う雷が、人の最後の誇りと希望を体現する軍勢の道を切り拓き、雷に貫かれ炎に飲まれた魔軍の雑兵達の屍が川面を埋めるように流されていく。
灰となった屍者の群れは風に攫われ、やがて炎も下火になろうとしていた ]
深追いはするな!今は、魔軍を押し戻せば充分だ。
[ 勢いづいて橋向こうまで、追いすがって行きかねない友軍に、そう伝令を走らせる。
数多の国を圧倒的な力で滅ぼしてきた魔軍に、一朝一夕の勢いで勝てるとは思っていない。
今、必要なのは局所であっても、勝利を重ねることだと考えていた。
魔王がそれを人の勝利と受け止めるかどうかなどは問題ではない。魔軍に屈せず勝ちを得たと、兵士や民が自信を心に刻むことが肝心だった ]
破光装置 クレステッドは、魔王 カナン と 破光装置 クレステッド を能力(結ぶ)の対象に選びました。
避難民は、どうだ?
[ 魔具を使って、戦場に散らばる斥候の報告を受け取っている従者に問いかける ]
「川向こうから逃げてきた者は、ほぼ保護できたようです。...子供達が一団になって逃げてきたと報告が、どうも例の「降伏勧告」を送ってきた者の元に居た子供達らしいです」
[ 皇太子が、その「降伏勧告」の使者を、特段に気に掛けていることを知る従者の言葉に、男は僅かに眉を寄せる ]
今度は、送られて来たんじゃないんだな?そうか...後で話を聞きたい。勿論治療と休息が先だが。
「解りました。年長の怪我のない子供を寄越すように手配します」
[ これまで送られて来た子供達からも情報は得て、彼等を送ってきているのがディーク・オラクルにほぼ間違いないこと、ディークが、共に脱獄した盗賊の手下となっているらしいことは掴んでいた。
しかし今、子供達が逃がされたのではなく、自力で逃げて来たのだとすると ]
(どこに居る?ディーク)
[ 強制的にか自ら望んでかは知らないが、魔軍に与している以上、戦場に駆り出されたのだろうという想像は出来る。
けれど、みすみす炎に巻き込まれる男だとは思っていなかった。
魔軍を見限って、逃げ出してくれていればいいと内心願っていたが ]
あいつを相手にするのは、ちょっと遠慮したいなあ...
[ 苦笑と共に、ぼそりと零れ落ちる呟きは、従者の耳にも届かない程の音 ]
― セミヨン川南岸 ―
[対岸に落ちた焔が齎した混乱。
それに対し、娘が何か行動を起こす事はない。
それは命じられていないし、何より興味がない。
亜麻色が向かうのは、敵と見なすもの──すなわち、『刈り取る』対象のみ]
……獲るぞ、アヴァーンガルデ。
[短く呟き、大鎌を横に構えて走り出す。
近づく騎兵の横を駆け抜けつつ、馬の脚を斬り払う。
鎧をまとった相手を効率よく獲るなら、この方が早いから。
ただ、唯一の欠点は]
……張り合いがない。
[強者と対した直後故に、感じてしまうのは物足りなさ]
そんな、簡単に刈られるような力で……。
[言いつつ、亜麻色を細める。
視線の先には一人で当たるな、という指示に従い連携して仕掛けてくる敵兵の姿。
先に斬り込んできた剣を横っ跳びに掻い潜る、その着地を狙ったように横合いから斬り込んでくるのに、赤紅を翻して正対し]
あたしの前に出てくるな!
[叫びつつ、大上段に振りかぶった大鎌を振り下ろす。
持ち手の位置はやや下。
一見すると大振りと見える刃は敵兵の肩の後ろへと落ちる]
[が、と手に伝わるのは鋭い切っ先が鎧の継ぎ目か何かの装具かを引っ掛ける感触。
それを感じると、勢いよく大鎌を横に振った。
引っ掛けられた敵兵はその勢いのまま横に飛ばされ、己が同胞に叩きつけられる。
そちらには目もくれる事無く、赤紅を翻して一回転。
背面を取らんとして来た相手に向けて銀月を振り下ろす]
……ちっ。
[戦場に立っている、それだけでも血は騒ぐ。
けれど、心の漣が鎮まらない。
原因は、先に聞いた声だ。
あれは何とかしないとならない──そう、思うのに。
そう考えるとどこかが軋むような心地がして、それが更に苛立ちを掻きたてる]
― 回想/7年前 ―
[隠れ住んでいた村を離れてから9年間、生活を共にした一族を離れる、と決めたのは7年前。
母が亡くなり、一人きりになった時だった]
……うん。
でも、決めた事だし、それに。
[ようやく15歳になったばかりの少女の一人旅に懸念を示す声も多かった。
けれど]
ただ、護られているだけなのは嫌なんだ。
[この一言でそれらを全て跳ねのけた。
離れるのは、護るためでもある、と。
いつかの別れに告げられた言葉>>0:134は、その意の全てが伝えられなかった事もあり──否、伝えられていても変わらなかったやもしれないが、ともかく。
隠れ住んでいた頃にも重ねられていた、『それがお前のためだから』という言葉とも相まって、ただ庇護される事を拒む一因となっていたから]
[己が出自や、亡き父の事は知らない。
けれど、『それ』の存在には気づいていた。
──大鎌アヴァーンガルデ。
一人でも生きて行けるだけの、自分の身を守れるだけの力が欲しい、との願いに応じるように現れた銀月の牙。
一人旅に出て、最初に辿ったのはその来歴。
ただ、それは容易い道ではなく。
かつて魔族の戦士が振るっていた、という事実に辿りつき、自身も魔の者と見なされ追われた。
他者の──人の害意に晒されたのは、その時が最初。
その場をどうにか切り抜け、これからどうするか、思い悩んでいた時。
目の前に舞い降りたのは──]
[周囲の騎士が相手を抑える間にクレイモアを掲げ、連携を取り相手に傷を負わせていく。
凶暴化したオークはこれまで以上に手強い。
斬られてもものともせず襲いかかって来るため、押し負けて脱落する騎士も少なからず居た]
散れ!
[オークが仕掛けた後の隙を突き、その首を大剣で刈り取る。
切り口から血を飛び散らせて、オークはその身を大地に沈めた]
負傷者を下がらせろ。
[短い指示に、心得たとばかりに動く兵達を見送り、男は馬上から戦場を見渡す。
戦線はひとまず維持出来ているよう。
西へと視線を移せば、遥か向こう、故郷に広がる大きな森のことを思い出した]
───あの子らは無事だろうか。
[己の家族と同様に案ずる存在。
森の住人であり、息子の友人でもある者達。
シラーが落ちてから、彼らの安否も確認出来ていない*]
[礼を言うマーティンの存外な率直さに、ヒトガタは少し眉を上げて唇を微笑ませた]
炎と水に呑まれて死んだ者もいる。ここに揚がった人間で全てだろう
…隊をまとめ直してくれるか
[盗賊のような素性のものの士気を上げるような言葉はクレステッドの知識の中にない。
およそ、人間の思考や感情を察する聡さも失われたものだった]
[あがった火の手は収束をみはじめているようだった。
上流域、セミヨン川南岸にはまだ乱れた空気は残っている]
一手、指し遅れたな
……是非もないことだ
[およそのことはさしたる問題ではない。
汚れた衣装と、灼け崩れてボロボロになった袖は大問題だけれども]
参謀殿、このさき其方等の行動は任せる
戦況に応じて己が道を
[橋を架ける手際から、実質の作戦指示者だろうと判じたバンダナの男へはそう言葉を残した。
先ず、落下せずに川を渡りおおせた傭兵達との合流をはかるのならば。ヒトガタの進路とは違えただろう]**
─ 回想/2年前 ─
[少年少女と出逢ったのは男が長男の乗馬訓練を行っている時だった。
シラーから森の手前まで走り、再び戻って来る予定だったのだが、不意の出来事により長男が乗る馬が暴走。
そのまま森へと迷い込んでしまったのだ。
広大な森を闇雲に走られてしまったなら探すのも困難、と。
急ぎ追いかけ男も森へと入った]
ロヴィン! どこだ!!
[声を張り上げ探し、陽も暮れようとしていたその時、泣きそうな長男の声が返ってきた。
聞こえた方へと馬を走らせると、そこには男の姿を見て泣き出す長男と、色味の対照的なよく似た男女が居た。
馬も落ち着いた様子で彼らの傍に佇んでいる]
ロヴィン、心配したぞ……!
君達は…?
[長男の無事を確認した後、男は共に居た二人に声を掛ける。
良く見れば二人の耳が長い。
どうやら彼らはエルフらしい]
息子を助けてくれて感謝する。
私はヨセフ・トネール・ド・モンテリー、王都の人間だ。
今度お礼がしたい。
可能なら、王都の私の屋敷に招きたいのだが…。
[エルフは森に隠れ住むような生活をする者も少なくない。
人と関わる者は変わり者とされることも多い。
遠慮するようであれば、またここに来ると約束し、その日は別れることに]
[それからと言うもの、長男の乗馬訓練は森へ出かけるという形で行われた。
最初こそ男も同行の上で、となっていたが、乗馬に慣れるにつれて、長男一人で森に向かうことも多くなった。
その度に長男は彼らと交流を深めていったらしい]
無理言って済まないね。
ロヴィンがどうしても君達に王都を案内したいと言って聞かないんだ。
[ある日、長男の願いで彼らを王都へと招き、男は自分の屋敷で持て成した。
長男に至っては、彼らに泊まって欲しいなど願ったほど。
当時まだ一人っ子であった長男にとって、彼らは兄妹のような存在となっていたらしい。
そして男もまた、彼らを我が子のように思っていた]
[このような交流は男がマルサンヌ砦へと詰めることになるまで続けられた。
男が不在の間も長男は交流を続けていたことだろう]
[それが仕組まれた、狙われたものであるとは知らぬまま]
[シラー陥落の際の混乱に彼らが関わっていたことも、男は未だ知らずに居る**]
/*
多分、村で今一番のんびりしている魔王様ですよ。
酒飲んでくっちゃぺっただけというぐうたらぶり。
いやあ。みんな頑張ってくれたまえ。はっはっは。
/*
しかしアイリわんこも可愛いな。可愛い。
ご主人様第一主義がたまらん。これは良いわんこ。
このあと、あの子寝返っちゃうんだよなー。
しかも、寝返る時にはご主人様死んじゃってるんだよなー。
不憫不憫。そして悲しみ。
/*
特に表に出る予定はないのだけれども、在席表示を変えておくべきか否か。
とりあえずはローレルへのラブを綴っておくんだ。
村の中で一度はやりたい囁き籠り。
ローレル来てくれるかなー?来てくれるといいなぁ。
でも、無理しないでいてくれるといいなあ。
心配心配。
[それを手にしたのは、さて。どれほど前のことだったか。
寿命などに縛られない魔にとって、年月はさほど重要でもない。
さりとて、数年という短さでもなかったはずだ。
ふとした折に、配下が一匹のエルフを捕えた。
女のエルフだった。
しかも、あろうことか、身ごもっているらしかった。
本来なら森の奥で守られているだろう存在が、魔の手の届くところに現れた理由は知らない。追放されたか、あるいは伴侶を追っていたのかもしれない。
いずれにせよ、女は魔の手に落ちた。]
[胎の子の命を盾に、女にはすべてをしゃべらせた。
森のこと。国のこと。
魔が、モンテリーという国に興味を持ったのはこのときだ。
未だ魔軍の支配を拒み続けている人間どもの国。
踏み潰してみるのも面白かろうと。
魔はその国をいかに潰すかの方策を定めることに没頭し、女はしばらく生かされた。]
[やがて時満ちて、女は双子を産み落として死んだ。
尋問と虜囚の日々に弱った身体では出産に耐えられなかったのだろうが、産んだ子を女の目の前で引き裂くのを楽しみにしていた魔は、聊か興を削がれた。
もはや価値もない子も潰すつもりだったが、ふと別のことを思いつく。
双子は生かされ、狡猾なる蠍の一族に預けられた。
純粋無垢なエルフの姿形のまま、魔性の魂持つものを育て上げるべく。]
[育ちゆく双子の魔性を、魔は戯れに愛でた。
初めて人間を狩ったといえば褒めてやり、毒の扱いを学んでいると聞けば激励のようなこともした。
人間を仕留め損ね、逆襲されて逃げかえってきた時には「出来損ないだったか」と冷ややかに言って背を向けたが、双子がその人間の首を獲ってくれば、よくやったと笑顔で迎え入れた。
年月が経ち、思い描いたとおりに成長した双子へ、魔は己の血をもって印を刻んでやった。
それぞれの胸に、魔を示す闇の
魔が望むときに、いつでも双子の見たものを見、聞いたものを聞き、言葉を交わすための印を。]
[かくして、双子はモンテリーのミュスカ森林へと送り込まれた。
そこで集められた情報は、魔王の侵攻に実によく役立った。
さらに、その後の働きも、魔王にとって満足いくものであった。
気を良くした魔王は、双子に更なる指示を下す。]
レオヴィルの人間どもは、どうも賢しらで気にくわない。
連中の中に潜り込んで、弱点を探ってこい。
ついでに、王でも将軍でもいい。連中の頭を潰せ。
[自分の声が"絶対"と知る魔王は、特に力を籠めるでもなく、夕食のニューをリクエストするほどの気軽さで命を下した。]
― 昔の話 ―
とにかく、あいつはとんでもなく頭の回転が速くて...それに勘もいいし、魔法の実力だって人並み以上で。
[ 軍学校に入ってからも、時々王宮には出入りしていた。姉姫から顔を出して欲しいと願われていたし、自分も王族としての自覚は薄くとも、肉親の顔を見たいという気持ちはあったのだ。
殊に、ヨセフが所用で尋ねて来ていると知ると、少々無理矢理にでも顔を出しに行った。
大体が僅かにでも時間があれば手合わせを願い、その技を目と身体に焼き付けるようにして学び取ろうとするのが常だったが、その合間に、軍学校の様子を尋ねられる事もあった。
いつの頃からか、そんな時に決まって口に昇るようになったのは、1人の学友の話題 ]
俺には無いものを、あいつは持ってる。
いえ、羨ましいとは思うけど、嫉妬とかじゃないんです、ほんとに。
ただ......俺は、あいつの信頼を得られるような男になりたい。
今はまだ、全然足りてないと思うんですけど。
いつか、俺が、貴方のような一人前の将になれたら......
[ 例えば、兄とヨセフその人のように、互いを認め合う真の友に、なれるといい、と。そんなもうひとつの夢を、男が語ったのをヨセフは覚えているだろうか?
その学友の名は、結局伝える事の無いままだったけれど** ]
― セミヨン川南岸 ―
将軍!
[ やがて、男は最前線を駆ける猛将の姿を視界に捉え、呼びかける。
南岸に最初に押し寄せた魔の軍勢はほぼ全滅近い状態で、今は味方の屍を更に踏み越えた新手が増えようとしていた。
弓隊の半分は、聖水の入った革袋に鏃を浸して、上空の厄介な死霊にも対処を始めている。 しかし、このままではキリが無いのも現実だ]
怪我を...?
[ その動きに常とは違うものを見て、けれど兵達にそれを報せることを憚って、コエを使う。ヨセフに、動きに支障が出るような怪我を与えることの出来る者が、一見して数頼み、力任せの雑魚ばかりの魔軍の中に居たのか?と、その声には、いくらか不思議そうな色が乗る ]
いっそ、橋を落とす、か。
[ やがて、戦況を見定めた男の口から出た次の一手は、少々乱暴なものに聞こえたかもしれない** ]
[南の戦況は、聊か面白くないことになっていた。
橋の前での戦闘は膠着状態となっており、南岸の戦闘に至ってはほとんど殲滅戦に移行している。
それも、こちらが殲滅される側だ。
簡単に潰せると思っていてた人間の意外な抵抗に苛立つ。
不甲斐ない自軍の様子を見ているのも飽きてきた。]
初戦は雑兵どもか。
人間を蹴散らす程度のことも満足にできないとはな。
[自軍に対しては侮蔑を口にするが、相手に対してはいくらかの興味を覚えてもいた。
これほど追い込まれた状況で兵をまとめ上げ、戦いに向かわせているのはいったいいかなる人間かと。]
シメオンが獲ってくるなら、見てみたいものだ。
[言ってから、何かを思い出して玉座の肘置きを撫でる。]
おまえに似ているかな。
あれは実に良い人間だった。
[最後まで楽しませてくれた上に、こうして役にも立っている。
ツィーアの人形の素体とした人間を思い出して、微笑する。]
一旦進軍を止めさせろ。
これ以上無能どもの戦いを見ているのは不愉快だ。
[一転、冷徹な表情を浮かべた魔王の命はすぐさま伝達された。
各所で銅鑼が鳴らされ、魔軍の進軍が止まる。
じりじりと橋の北側に陣が出来上がり始めた。
機転の利くものは橋を渡って北へ戻ろうとする。
聞かず暴れているものは捨て置かれた。]**
― 昔の話 ―
[所用でレオヴィル王国へと訪れた折は、よくロー・シェンの訪問を受けた。
頻繁に訪れることも出来ないため、男もそれを快く受け入れ、主に手合わせの相手をする]
最近はどうだ?
[その合間に問うのは軍学校へと通い始めた彼の生活について。
最初こそ色々な話を耳にしていたが、いつしか必ず話に出てくる学友が現れた]
随分優秀なのだな。
[ロー・シェンはその学友を大層気に入り、認めているようだった。
話しぶりから容易にそれが窺える]
自分に無いものを持つ友、か。
認め合う相手が居るのは素晴らしいことだ。
互いを高めて行くことが出来る。
大切にすると良い。
[名前こそ聞かなかったが、ロー・シェンにそのような存在が現れたことを嬉しく思う。
己と親友を例に出されれば、少し照れくさそうに笑った]
[この時名を知っていれば、あの事件の時も少しは対応が変わっていただろうか。
知らぬ故にそう考えることもなく、男の認識は偽りを信じたままにある**]
あちらの戦力は無尽蔵かと言いたくなるな。
[力ある者も居るのは確かだが、それ以外の雑兵たる者達も多い。
それを相手にするだけでも疲労は蓄積する。
今も尚、屍を乗り越えこちらへと押し寄せようとしているくらいだ]
このまま相手をし続けるのは単なる消耗戦だ。
あちらの頭を狙うことも考えねば。
[統率者を減らすのも戦術の一つだ。
大将ではなく、部隊を率いる者を減らすだけでも違いはある]
[ロー・シェンと合流後もあれこれ指示を出す必要はあった。
命を落とした者達の骸はどれだけ奪われたやら。
確認作業自体は一度戦いが収束してからになるだろうが、相手の駒とされないためにも、怪我人だけでなく命を落とした者達もなるべく後方へと下げさせた。
当然、全ては回収出来ないだろうけれども]
…手ではあるが、進度が落ちるだけではないか?
[その最中にロー・シェンが紡いだ作戦>>26に少しばかり口を挟む。
押し寄せる数が減るのは確かだが、現状とあまり変わらない気もしていた]
水計も組み合わせるなら、効果も上がるか。
[だが今すぐに使える手ではない。
上流を堰き止めるには手間と時間がかかる]
[そのシラーはといえば、今は魔の理が支配する地となっている。
モンテリーが落ちたと聞いて、分け前を得ようと山脈の北から流れ込む邪悪な亜人たちは、そのほとんどがシラーを目指していた。
かの地を任されているものたちは魔王の期待に足るものたちで、魔王不在の中でも街の秩序は一応保たれている。
もっとも、支配される人間の側にすれば、すぐに殺されるか管理された後で殺されるか程度の差だったかもしれないが。
こうした流入勢力や奴隷たちの働きで、シラーは目下大いに作り替えられていた。
質実剛健という言葉が相応しかったシラーの美しい街並みには、今や悪魔的な装飾が随所に付け加えられ、奇怪な兵器や物々しい監視塔が組み上げられつつある。]
[南にあるシャスラの町の人間がどうしたかは、魔王の関知するところではない。
クレレットと同じように隣国へ逃げ出したか、あるいはミュスカの森に棲むというエルフの守りを頼みに留まったかは、その地の人間の才気と判断次第だろう。
そのミュスカの森のエルフに対しては、魔王はひとつ手を打っていた。
小煩いエルフどもが横槍を入れてこないよう、送り込んであった双子に命を与えていたのだ。
彼らが森を出る時に残した毒は、今頃エルフどもの聖なる木を侵し、エルフどもをも侵していることだろう。
いずれは森の奥で枯れ果てて滅びゆく運命だ。]
[そういえば、と魔王はふと思い出す。
双子が手元に戻ってきたときに、連れてきた人間どもはどうしただろう。
仔猫が獲物を加えて見せに来たようなものだから、褒めるだけ褒めて捨て置いたのだったか。
手頃な者に探しておけと命じて、再び記憶の棚に放り投げた。]**
/*
捨て置かれたでござるw
エルフ方面どうにかしたい感はあるんだが、私は双子とつるんでるので信用されない可能性が高くてだな(
遺跡に浄化のアイテムでも設置するかのぅ。
遺跡か湿地の建造物に何か置きたいとは思ってるのだけど、背後の頭では良いアイテムが浮かばない(
─ 噂 ─
[レヴィオル軍の後方。
後方支援にあたる者達のほか、応急手当てを受ける怪我人や、モーザックまで搬送する必要のある重傷者、モンテリー側から逃れてきたという子供、
そして命を落とした兵達の遺骸。
各自がそれそれの力を尽くす混雑のなか]
[ ざわめき
亡き皇太子の姿を見た、という噂が]
皇子に似た誰かが佇んでいたが、人込みに紛れて見失った
見慣れぬレオヴィル軍服の男へ誰何したら、それがクレステッドにそっくりだった
瀕死者を寝かせた天幕を歩いていた
皇子ロー・シェンの居場所を尋ねられた
とても、あのアンデッド達のようには見えなかった──
亡くなられたはず、と言ったら「それもそうか」と悲しげに笑って消えた
怪我人に水を配る手伝いをしていた
声をかけられたので振り向いたら誰もいなかった
そういえばセミヨンの最前線で騎上の皇太子を見た気がする
[怪しげなものも含み、いくつもの目撃談。
戦時の混乱のなかだとしてもあまりに唐突に現れた噂だった]*
[ヒトガタが微笑むのを見て、そんな真似もできるのだ、と漠然と思う。>>19
そのうち、しゃべったり笑ったりする屍兵も量産されたりするのかもしれない。
そんな世界は──]
…っ、 ディークだ。
[参謀殿、と呼びかけられて、そう言い返した。>>20
名を売りたいわけでもないのに、我ながらおかしなことをするものだ。]
[ヒトガタは、この先の行動は任せると言う。
先の魔法で動力が尽きかけてでもいるのだろうか。
様子を伺うが、魔法のことはあまり得意ではない。
ただ、焼けて損壊した彼の衣服を見て、自分たちも随分な恰好だと思い返す。
治癒魔法は身だしなみまで整えてはくれなかった。]
は…、 それもいいか!
[ふと、思いついて膝を打つ。]
このまま、川から助け上げられた連中に紛れて、王国軍に潜入を。
後方の備蓄品に火をかけてやりましょう。
[マーティンに提案する。
この人数では、敵を揺るがすような側面攻撃はできないし、すでにその機も逸している。
けれど、]
やられたことはやり返す。
ナメられないための鉄則でしょうが。
[焚き付けるように、言った。*]
─ クレレットにて ─
[魔王の命により、進軍を止めた魔軍が戻る頃。
転移により帰還したヒトガタは魔法兵器の砦へその身を滑り込ませていた]
……
『これ は
少々、非力に過ぎるぞ』
[ヒトガタの喉と、ツィーアの奏でる魔導の波が共振して"声"を作った。
そうして魔王の傍に侍ると殆ど同時、漂っていた夢魔の女の影が薄れて消えてゆく]
『だが、お前に気に入られるこの玩具は
私のよろこびだ』
[玉座の背と肘置きがなだらかにうねり、ヒトガタの銀の眼差しは魔王の髪が放つ金雫の光を見上げた]**
大鎌に、紅い装束...の、娘...
[ ヨセフが相見えた敵兵の特徴に、男が息を呑む気配はコエを通じても伝わったろう。
クレステッド皇太子を彼女が刈ったのだと、聞いていたヨセフならば、その反応は、兄の死に様にまつわるものと受け取られたかもしれない ]
...それ、で...
[ ヨセフほどの将とまともにやり合ったなら、相手も無傷ではないだろう。いや、ヨセフが生きている以上、負けて命を落としたのかもしれない、と、揺れる心情のままに、敵兵であるはずの娘の安否を問いかけようとして...続いた言葉に、かろうじて、その先を呑み込む事に成功する。
...用心せよ、と、我が身を案じて落とされたコエに一番に感じたのは、全く別の安堵で ]
はい、気をつけます。
ヨセフ、貴方も充分に用心を。
[ 彼を傷付けた敵手...ましてや兄の仇ですらある相手の無事に安堵したなどと、口には出来ず、口に出来ない申し訳なさに、コエは僅かに震えていた ]
/*
ヒトガタさんの神出鬼没っぷりよ。
まあ、いつか会えるであろう、うん。
ディークとは放火中に会えたりしますかね?
― セミヨン川南岸 ―
[ 兵に伝わらぬよう、コエを通して尋ねたヨセフが脇腹を傷めた原因...その返事が齎した内心の動揺は、男の表情を僅かに沈ませただけで、そのまま呑み込まれた ]
こちらの死者もあちらの軍勢に掏り替わるんですから、無尽蔵に近いと言えば近いでしょう。
だが、召喚された闇の傀儡も、動く死者も、戦い方を学ぶ事もなければ、生きるための知恵を絞る事も無い。
[ 故に、敵の大半は操り人形と大差無い ]
ええ、頭を潰せば...いえ、潰さぬ限り、この戦に終わりは来ない。
[ 指揮官の各個撃破も睨んだヨセフの言葉に対し>>32男が見据える先は、魔王と呼ばれる者の、まだ見えぬ姿だ ]
橋を落とすだけでは...そうですね、水計か...
[ 即物的な進路分断だけでは、確かに人ならぬ軍団の攻勢は止められないだろう、と、ヨセフの忠告に頷くと、男は視線を一度、川の上流へと向ける。
上流の水源に近い山間に、ひっそりと存在する鉱山の村サンソー。
そこは、飾りや楽器に加工出来る金属を求めてローグの民が頻繁に取引に訪れる村であり、その縁が元で、ローグの血が混じる者も多い場所だ ]
それも、考えておきます。
[ 戦の準備を始めてすぐに、男は、ローグの民が互いに連絡を取るために使ういくつかの拠点に使者を送った。
魔軍襲来の警告と、叶うなら助力を、と請う内容の伝令は、流浪の民達の元にいつ届くかも、応じてくれるかも定かではないものだったが、魔に対しての抵抗の心は、自由を愛するローグの中には根強く育まれている。
鉱山の村も、協力を求めれば水計を助けてくれる公算は大きかった ]
/*
いやあああ、ほんっと、いろいろすみません…!
ただでさえ約1年振りの村で
エンジンの掛け方を忘れかけているところに
リアルもバタバタするとかもう。。。
皆さん、本当にお気遣いありがとうございました。
…まあご高齢だったので、ね。
こういうこともあると思いはすれど、まだまだお元気だと思っていたからなあ。
いつ何があるか分からないから、
会える時に会うとかやれることはやっておくとか
そういうのって大事ですよね。
勝鬨を!
[ 明らかに敵が背を見せたと全軍が認識できるタイミングで、男は従者に命を下す。
応じて、声を拡げる魔法がまた使われた ]
勇敢なるレオヴィルの民、そしてモンテリーの民よ、我等、人の誇りが、魔の侵攻を跳ね返した!
同胞の奮戦を讃えよ!勝鬨を上げろ!
[ 朗々と響き渡る声に、どよめきが広がり、次いで『オー!』という勝鬨が大気を震わせる。
馬上、その声を聞く男の顔には笑みが浮かぶ。
戦いに先があろうとも、それは、その先の未来を掴むためのものだと、信じて疑わぬかの、明るい金の光が、今は、人の先頭に在った ]
……お前たち、手を貸せ。
[呼びかけに、戦場の気に酔うその一団は拒絶を示すが]
……『荷運び』をして無事に陣に戻るのと、この場であたしに刈られるのと。
どちらがいい?
[先頭にいた者を鎌の柄で殴りつけた上で、改めて問う。
選択肢というには余りにも極端なそれは、血の酔いすら醒ましたようで。
いそいそと『荷運び』に勤しむ一団を一瞥した後、空を見上げた]
……あの、黒いの。
なんとしても、獲る。
いや、その前に、あの声をどうにかしないとだな。
[どうにかしないと、と思う相手を、己が主が求めているとは未だ知らぬけれど]
……ほんとに……何なんだ、アレは。
[わからない。わからないのがイラつく。
なのに、その事を考えるとどこかが軋むように痛んで]
……ちっ……。
[苛立たし気な舌打ちの後、ぎゅ、と左の手首を掴む。
そこにある、金と黒の石をあしらった飾りの由来は思い出せないけれど。
触れていると心が鎮まるような、そんな気がしていた。*]
[特徴を伝えたロー・シェンの反応>>*7は硬いものだった。
兄の死に関わる相手であることに気付いたのだろう。
相手のその後を聞く様子も、仇を取れたのかを確認するものと取った]
あぁ、気をつける。
……そう言えばあの娘、君の声を聞いた途端に動きを鈍らせていたな。
[震えるコエに含まれるものを察せはしないが、用心を返されて>>*8諾を示す。
直後、ふと思い出したことをコエに乗せた]
あの女性はどうやら誰かの下、指示を受けて動いているようだ。
マスターと呼んでいたようだが…どうも、命すらもそのマスターとやらの手の内らしい。
勝手に首はやれんと言われた。
ただの部下、と言うわけではないのかもしれない。
[男の推測と言われたことも告げておく]
[最前線を駆けたモンテリーの騎士団は一度後方の陣へと戻ることになる。
負傷者や命を落とした者も当然多い。
休息と隊の再編成も兼ね、男もまた後方の陣へと戻り行く*]
/*
あーーあーーあーー
もうちょっと転がっていたい。
なんかすることある気がするけど、もうちょっと転がらせて。
っていうかお返事か!
撫でていいターンか!
っていやしかし魔王様そんな軟派なことしない。つらい。
/*
ああもうアンカ間違えてるww
遺跡入口でモンテリー王家の血でポータル発動、湿地の建造物に繋がっててそこに聖剣あるとかやって良いかな。かな。
/*
でも取りに行くのは後半の方が良い気がするのよなー。
最終決戦前に手に入るような感じ。
話だけは出しておいても良いかもしれん。
─ セミヨンの河原で ─
ディーク、殿?
[火の残滓燻る漂着物が重なる河原で。
名を名乗る男>>41へ、ヒトガタはどこか不思議そうに頷いた。
死を貰い受けると告げたばかり。そも最初から警戒した様子を崩さなかった男だが]
この身に語る名がないことは、既に存知か
……それとも、生きているようには見えないかな
[俺もレオヴィルの陣へ行くつもりなのだがなどと、まったくごく普通の態度で主張したが後の、幽霊騒ぎとなったとか] **
[魔軍と王国軍がセミヨン川を挟んで対峙している頃。
双子は戦いに加わらず、さりとて魔王の傍にも居ず、
戦況が見渡せる草原で並んで体育座りをし、ぷらっと前方を眺めていた。
やがてセミヨン川の橋の北側で火の手が上がる。
みるみるうちに其れは周囲を焼き、黒煙と焦げた臭いを天に吐く]
わーあ。いっぱい燃えてるね。
『おおきな篝火みたいだわ。もっと燃えないかしら』
あれ? でも燃えてるのってボクらの軍じゃないかい? ローズマリー。
『あら。誰かしら不甲斐ないのは』
気になるね。ちょっと近づいてみちゃおっか。
[立ち上がって大きく伸びをした少年は、散歩に行くような気軽い口調で隣の少女を招いた]
人形など飾りだ。
我が手掛けた傑作たる飾りだ。
早くもう一つの美しいおまえも見たいものだ。
[大地を溶かし城を薙ぎ払う輝きもまた好ましいものだ。
純粋なる力の発露は、実に美しい。]
[自らが作り上げた芸術品を鑑賞する目が、一点で止まった。
袖の先が焼け焦げている。]
それはどうした?
[問いに微かな不機嫌が乗った。]
『ねえねえローレル。ところでワタシたち、 …――サボリ?』
[歩きながら、桃髪の少女は長い耳を疑問の形に傾ける]
そうそう、サボリだよ!
ちょっとワクワクする単語だよね。
[同じ歩調を保ったまま、少年は悪戯っぽく鶯色の目を輝かせる]
『いいのかしら。先生に怒られないかしら』
だいじょうぶ、だいじょーぶ。
だってボクらのお役目的に、目立っちゃうのも良くないし。
『ん。そうね…』
そうだよ。
なんだい――ローズマリー。暴れたかった?
『暴れたかったのはアナタじゃないの、ローレル』
ひどいなあ。ボクだけに擦り付けるのはよくないと思うよ。
『ワタシは、先生に言われたお役目を果たせたらそれでいいもの』
はいはい。じゃあそれでいいよーだ。
[ヒトガタに名を教えたら、相変わらず”殿”をつけて呼ばれた。
前皇太子の顔でそんな風に呼ばれると、違和感がありすぎて背中がむず痒い。
そして、ヒトガタは「語る名がない」と言った。>>57]
生きてる、の定義なんて難し過ぎて答えに困る。
だが、俺はアンタとこうして対話した。
対話できる相手と認識した。
面倒くさいな。
[まだ濡れた髪を搔き上げて嘯き、相手が瞬間移動で消えるのを待って立ち上がる。]
― 天幕 ―
[後方の陣へと戻りしばらくして。
男はロー・シェンの天幕を訪れた]
ロシェ、少し良いだろうか。
[今後についてを話しにきたのもそうなのだが、男はそれ以外で一つ、ロー・シェンの耳に入れておきたいことがあった]
フェール湿地の中央に建造物があると言う噂は知っているか?
───モンテリー王家に伝わる伝承なんだが。
そこに魔を祓う剣があると言われている。
[門外不出とされ、王家にしか伝えられていない伝承。
今では男しか知ることの無い話だ]
なにぶん古い話で、兄はあまり信じていないようだったが…。
[詰まり未だ持ち出されては居ないということ。
勿論、あくまで伝承であるため、本当に祓魔剣があるとも限らない]
可能性があるならば、行ってみるのも手だと思っている。
……ただ、そうなると私は戦場を離れねばならない。
その場所への道を開けるのは、モンテリー王家のみと言われている。
[伝承の内容を掻い摘んでの説明を、ロー・シェンはどう思っただろう。
彼もまた眉唾だと思うのであれば、この話はそれまでとなる*]
/*
そういや魔王様、あんまり人前に出る気ないんだけど、
一回ぐらいご挨拶しておいた方がいいのかな?どうかな?
これから君たちを滅ぼすね☆よろしく! とかなんとか。
/*
ただいま。ぜーはー。
あれ?魔を祓う剣とかって、確か前にも出て来たような?
まあなあ、魔王だからなーそんくらい用意しないとなところはあるよねえ。
[この先の計画を簡潔に話す。
臨機応変がモットーのディークの作戦説明は基本的にシンプルだった。
いわく、前線からの引き上げを装って王国軍に紛れ込むこと。
炊事場や野戦病院など、もともと火の気や燃えるものの多そうなところへ散って火を放ち、後はそれぞれ川の北へと戻ること。
もう充分に稼いだと思ったり、魔軍はコリゴリだという者は、この機会に逃げるのもよかろう。
マーティンはヒトガタの治癒魔法に感心したらしく、「アイツと組めば最強じゃないか?」とか言っているから、まだ魔軍に留まるつもりらしい。
ディークもまた北へ戻るつもりだ。子供たちのことがある。]
[と、子供っぽい声がそこへ降ってきたのだった。>>64
見れば、縁浅からぬ子らの姿がそこにある。
ユーリエ姫と共に旅した双子であった。]
…おまえたち、どうしてここに。
/*
うーん、派遣したいのはやまやまなんだけど、二日目に落ちるのとの兼ね合いがなあ。ディークって寝返り組だから、すぐに全軍の指揮とか任せらんないんだよね。
ああ、でも、落ちるまでか、落ちた後に帰ってきてもらえばなんとかなるのか。ふむ。
[ しかし、その場合、ディーくんとの親密度アップがまじめに殴り合いから始まることに... ]
どうしてって、火が見えたからだよー。
『気になっちゃったの』
[とりあえず嘘は言っていない]
キミこそ、どうしてこんなところに居るんだい?
『捕えられた、って聞いたわ』
[懐かしくもかしましい双子の発言の二重奏に、ディークは、声を抑えろとジェスチャーで示す。
ディークが子供奴隷を集めていることを知っている傭兵たちは、適当に合点して、王国軍に紛れ込むべく移動していった。]
こっちは仕事だ。
[「捕らわれた」の部分は頷くことで肯定しつつ、双子を見つめる。]
おまえたちが無事でよかった。
[本心である。
ユーリエの死に双子が関わっていることを、ディークは知らない。
彼らもまた巻き込まれたのではないかと心配していた。]
― クレレット ―
[人間の鬨の声も亜人たちの騒ぎも、この距離では遠い唸りにしか聞こえない。
聞こえたとしても魔王にはひとかけらの感慨もないが、少なくとも不愉快ではあっただろう。
無能どもに好きにさせたのがまずかった。
とは、誰に言うでもない感想。
そも、日がある時間に戦う必要などなかったのだ。
人間どもには、これより先、安らかな夜の眠りなど訪れないことを教えてやろう。]
びっくりしたよ。
『怒られるかと思っていたわ』
[声を抑えるのを忘れて喋ってから、慌ててトーンを落とす]
ボクらは無事だよ。
『でもお姫サマは無事じゃなかったわ』
キミに頼まれたのに。
『ごめんなさいディーク』
[殊勝な素振りで頭と長耳を下げて、]
[頬へ触れる指にヒトガタが瞼を閉ざすと、>>59
チリン
体奥に埋められた核が、澄んだ音色に弾む]
『斯様に 玩具を介してお前に触れられるも
また悦びだ』
[アルテスの湾を広げる。だったか。
兵器は我が王の望むとおりに力をふるうだろう。
大陸そのものを光と消し去るはずの破壊の力は、いまや限定的に、統制の元で発動されることを証明してみせた。
それを望み、叶えたのはこの魔王が唯一]
[ チリン
やがて魔王カナンの声に変化を認め、ヒトガタの下瞼が小さく震えた]
…これは、
…………汚してしまった
[閉ざしていた瞼を開ければ、視線の止まるは袖の損傷と知る。
端的に述べたヒトガタが唇を噤めば、"声"は同じ喉で微かに笑う]
『潔めてからとも思うたが、まずお前に見せんとな
仕置をするか?』
[褒美をくれるか、と同じ調律で鳴らす。
実際、兵器内のひとつの空間には既に、不潔になったヒトガタを洗うための流動鉱石の沐浴槽が用意されていたが。
帰還して先ず身嗜みを整えさせなかったのはツィーアの意思]
どうぞ。
[ 敷物に座るようにと勧め、香辛料を落としたスパイスティーを自ら用意して目の前に置いた。ローグの民が用いるお茶には独特の風味と身体を温め、治癒力を高める効能がある ]
湿地の奥の...ああ、古い建造物があるという話は聞いたことがあります。
[ ローグとしての旅の途中、立ち寄った湿地近くの小さな村、そこで話を聞いたのだ。
探検に行きたいと言ったら、聖地だからか呪いがかかっているだかで、普通の人間は近づけない、と脅すように止められたが ]
魔を祓う剣...そんなものが?
本当ならば、役に立つかもしれませんが...
[ 村人の真剣さを思い出せば、確かに何かが在るのは間違いなさそうでもあったが ]
[双子の報告と謝罪の言葉に、感情を乗せないようにして頷く。
こちらを伺うような上目遣いには、少しばかり媚びを感じたが、これが初めてでもない。]
ああ、もう知っているなら、辛い話を繰り返さずに済む。
おまえたち、行くあてはあるのか。
よければ、どこかで俺を待っていてくれ。
俺と別行動をとった後のユーリエのことを知りたいんだ。
[双子は、ユーリエ姫との旅の可愛い仲間だった。
その旅慣れている様を信頼して、レオヴィル王宮へ戻るユーリエ姫を双子に託した。
そこから、自分がユーリエ姫謀殺の罪に問われるまでの経緯がわからずに、ディークの中で痼りになっている。]
しかし、あるかどうか判らないもののために、貴方を敵陣同然の地に送り出すのは、無理です、ヨセフ。
[ 彼が前線を離れること自体も、もちろん痛い。だがそれ以上に、魔軍の占領地となっている地へと、その身を送り込む事は危険に過ぎた ]
......もしも他に打つ手が無い、となったら、改めて考えますが、今は、話だけと聞いておきます。
[ 強大な力を持つという魔王が、普通の武器では倒せないかもしれないという可能性は、確かにある。
魔法で武器に聖性を持たせたとしても、それが通じるかどうかも怪しかったから、先では危険な賭けも必要となるかもしれなかった// ]
/*
挟まりまくってごめんねー、でもまあ、気にしてると先に進む前に寝落ちてしm(
それにしても、改めて人間関係がカオスです。ここまでカオスってるの始めてなんじゃないかしら?ロードと魔王はわりと単純なんだけど、個別のオチつけるの大変ぽい。
/*
ところで戦闘外だと、シメオンの居ない状態のアイリが、とても暇そうなことに...ヒトガタさんとか魔王さんとかと遊べると良いね...いや、うちに遊びに来ても構わないんだけど...てか、夜襲が来そう?
[かつて、ユーリエという名のお姫サマを連れていたディークと会ったのは偶然だった。
束の間の道中の観察で彼女が高貴なヒトだと知り、面白そうだからそのまま一緒についていったのだ。
そしてレオヴィルの王族と分かれば――やることはひとつだった。
なのに眼前のディークが、姫を託すなどと愚かにも双子の獣に格好の餌をあげた。ただそれだけのことだ。
勿論、彼は何も知らずに…
可哀想に罪を被って投獄されていたのだけど]
行くあて…難しい質問だなあ。
『だって戦争が始まっているもの』
でも多分、レオヴィルの方に行ってみるんじゃないかな。
『多分だけどね』
[魔王の言いつけに従って潜入する心積もりだが、
どういう手段をとるかはまだ決めていない行き当たりばったりの双子である]
頭の隅に置いてもらえればそれで良い。
真偽のはっきりしないものであるのは私も分かっている。
それを無理に押し通す心算は無い。
[ただ可能性の一つとして示しておきたかった、と告げて]
独断専行などしないさ。
[そんな約束も付け加えておく*]
手打ちとしてやろう。
喜べ。
[掴んだ腕を通して、破壊の魔力を注ぎ込む。
流動鉱石が仮初の形を維持できなくなるように。
そうしてすっかり溶けてしまえば、今度は注ぐ魔力の質を変えて再生を促した。]
生まれよ。
我の望むままに、無欠なる姿であれ。
[時折こうして、作り上げた当初の楽しみを繰り返すのだった]**
― 陣営内 ―
[ 魔軍の本領が夜の闇の中であることは、さすがに忘れられてはいなかった。
兵達は、出来るだけ日の在るうちに治療や休息を取るようにと指示され、日暮れ前には、川岸から鳥使い達は引き上げて、休息を取った歩兵達が入れ替わり、投石機を積んだ馬車が砦から援軍として陣営まで到着する。
前線への配備が遅れたのは、火計の準備に手を取られ、更に備蓄の油も使い果たしたせいで、投石機と一緒に、荷馬車には改めてかき集められた油の樽が大量に積まれている。
ここに放火されたら、辺りが火の海となるのは必至だったが、その危険は、やはり誰も考えついてはいなかった ]
/*
ああ、やっぱり森に行きたいんだったか。>ヨセフメモ
最初森の奥の遺跡の事を言ってるのかと読み違えたものね、こっちも。(森には行きたいだろうと思ったから)
道案内に双子を連れてくとかがいいのかしらね?(首傾げ)
まあ、そこらは任せるか。
[落ち着いた所で装束を解き、黒との対峙で受けた傷を見る。
肩と脇、切られはしなかったが、肌の上には痣が浮かんでいる]
……骨や内側がやられてる訳じゃないな。
なら、いける。
[問題はない、と自己完結し、簡単な手当てだけをして再び赤紅に身を包む。
可能なら沐浴したい所だが、この状況ではそうはいかないだろう。
戦いを第一とする狂犬とはいえ、恥じらいまでは失ってはいないから]
…………。
[手当てが済み、多少なりとも気が鎮まると、大鎌を抱えて座り込む。
右の手は無意識、左手首の飾りを掴んでいた。
軋んで見えなくなったものに揺さぶられている自覚はない。
それ故に、安定を欠く理由がわからなくて。
は、と小さく息を吐いた後、緩い微睡みに落ちた。
動くべき時に動けるように休息する、というのは、血と共に受け継いだ本能に基づくもの。**]
[双子はレオヴィルへ向うという。
今、魔物に占拠されていないのはレオヴィルだけだ。
普通の子供ならば、当たり前の判断だった。
そして、ユーリエ姫の件で、彼らは追われたりはしていないのだろう。
姫の死と無関係ゆえに、とディークは判断する。
子供の姿をしている彼らに、ディークは甘かった。]
以前とは情勢が違う、気をつけてゆけ。
[行く先は同じでも、今回、双子を連れてゆくわけにはいかなかった。
レオヴィル領内にいるだけで、ディークはいつ捕まってもおかしくないのである。]
飴でもあればやるんだが、あいにくと手持ちがなくてな。
おっと、俺とここで会ったことは内密にしといてくれ。
[努めて明るく別れようと試みた。]
― 自天幕 ―
[男は自分用の天幕へと戻ると、深く息を吐き腰を下ろした。
身につけた鎧は外さない。
何が起こるか分からないためだ。
ただ、胸当てを少し緩め、その下から細いチェーンに繋がれたカメオを引っ張り出す]
…ヴェルザンディ…ロヴィン…ベルティス…
[それは結婚した当初に妻の肖像を彫り入れたもの。
妻は男の肖像を彫り入れたカメオを持っている]
無事でいてくれ……!
[カメオを握り、その手を額へと当てて男は祈る。
シラーを離れる際、男は自分の屋敷に戻ることが出来なかった。
兄は民の、家族の命と引き換えに首を差し出したが、その願いが守られているのかどうかすら分からない。
男には確かめる術が無かった]
― 天幕 ―
...気負っているように見えますか?
[ だとしたら、俺もまだまだだな、と、男は笑う ]
兄上の代わりには俺はなれない。それは理解してるんです。でも、時々どうしても、思い出してしまって。
兄上がここに居たら、どうするか?どう考えるか?そんな風に。
[ 語る声は、寂しげではあったが穏やかなもの。五年前に味わった大きな喪失感は、今は、その喪失を力に変えようという決意に育っている]
/*
子供さんがずーっと生死不明のヨセフさん。
どうなるのかなー?
明るい未来的には生きててもらった方がとも思うけどね。
そして、そこには気が回ってないっていうか、多分触れられないんだよなー、このこ。
[ 概ね死んでるような気がしてるからね ]
[ミュスカの森の聖なる木は既に毒で祝福してきた>>37から、もう何も心配はない。
その後に通りがかったシャスラの町は、徐々にモンテリーの領土を侵していく魔王軍の足音に騒然としており、町としての機能は不安で破裂する寸前になっていた。
森のエルフを頼りに町に残る者に、逃げたほうがいいよと親切に伝えてあげたのはちょっとした気紛れだ。難民を抱える方がレオヴィルは大変だろうし、魔軍にとっては進軍ルートにゴハンが増える。
荷物を纏めた馬車が…ヒトが、レオヴィルに掛かる橋を目指して行列を成しているのを横目にしながら、双子はこのセミヨン川の岸までやってきたのだった]
飴?飴ならあるよ。
『とっても“おいしい”の』
[少年は懐から赤い包み紙を一粒取り出して、ディークへと投げた。
ちなみに飴はひたすらに辛く、口の中が真っ赤になる仕様だ]
『あら。ディークにはこっちがいいんじゃない?』
え。そうかいローズマリー?
[今度は少女が青い包み紙を一粒、投げた。
こちらの飴はひたすらに甘く、まるで贈られた当人の態度のようなダダ甘砂糖味だ]
― 陣営内 ―
「皇子...実は、おかしな話を聞いたんですが」
なんだ?
[ 従者が恐る恐るという様子で切り出したのは、天幕からヨセフが帰り、夜に備えての用意を確認するために、男が陣営内を見回り始めた時だった ]
「それが...皇太子...いえ、クレステッド皇子の幽霊が、出たというんです」
兄上の?そんな噂をまだ飽きずに口にする者がいるのか?
[ 5年前、遺体も戻らなかった皇太子の死は、王にも、王国全体にも大きな衝撃を与え、結果、良く在る話だが無念の相を浮かべた皇子の霊が王家の墓所に出るだの、王宮内から毎夜皇子の笑い声が聞こえるだの、といった怪談が多発した。しかし新たな皇太子が一年後に確定し、そんな噂も徐々に下火と成って消えたはずだ ]
「いえ、それが、今日、この陣営に現れたという話なんです。それも昼間から」
.........敵襲なら、何故伝令が来なかった?
[ 眉を顰め、一瞬唇を噛んでから問い返したのは、それが「動く死体」であったろうという予測の元の言葉。アンデッドが現れたなら、当然それを告げる伝令が在る筈だった ]
「...アンデッドには見えなかったそうです。目の前で消えてしまったという者も、生前同様に会話したという者もいて...どうも幻覚や魔法のまやかしとも思えない感じなんです。そもそも敵襲なら被害が一つもないのがおかしすぎます」
だからと言って...昼間から歩く幽霊なぞ...あるわけが...
[ 馬鹿げている、と、理性は言い、何かがおかしい、と、男の直感は告げる ]
..見たという者の証言をまとめておけ。特に会話したという者には、内容を出来る限り詳細に聞き出せ。
......兵達に動揺は?
「多少は...ですが、前線に出ていた者は殆ど見ていないようなので、大きな混乱はありません」
判った。夜までに...聖魔法を使える者に、邪気祓いをさせろ。それと聖水入りの革袋を可能な限り全員に持たせろ。
どちらにしても、敵の夜襲がある可能性がある。聖水は身を護るためにも必要だろう。
[ そう指示を出してから、男は小さく吐息をつき ]
すまん、しばらく、1人にしてくれ。
[ 従者に、そう告げて、人気の出来るだけ少ない、陣営裏の荷置き場へと身を隠すように向かった ]
兄上......まさか、ここでずっと迷っていらしたんですか?
[ 荷の入った木箱に腰を降ろし、腰に佩いたクレイモアの柄を撫でるようにして呟きを落とす。その剣は、軍学校を卒業し近衛の任に就いた時、兄が贈ってくれたものだった ]
いえ、なんでもありません。
すみません......
[ いずれ、クレステッドの幽霊の噂がヨセフの耳に届いたなら、途切れたコエの意味も伝わったかもしれない** ]
[ 何れ程の間、そうしていたか、そろそろ戻らねば、と、思う程には時が過ぎた頃、複数の人の気配を感じて、着いたばかりの荷馬車の方へと男は視線を向けた ]
『...は、油の...』
『好都合......』
[ ひそひそ声で交わされる会話は意味が掴める程には届かなかったが、どこか人目を忍ぶような様子が気にかかった。
単にサボりに来た兵士という可能性もあるのだが ]
.........
[ もっと近付いて様子を伺おうかと、木箱から立ち上がった、その時 ]
「皇子、どちらですか?」
[ 探しにやってきた従者の声が届いて、同時に人の気配は、さっとその場から遠ざかってしまう ]
「皇子?どうかされましたか?」
いや...
[ 従者の問いかけに首を振り、結局、その場は、諦めて、男は見回りへと戻る事になった** ]
/*
なんかデジャヴがと思ったら、コミュで某腹心が同じことしてるわね緑で...
この語彙の無さなんとかしようね、俺...
さってと。これからどうしようかローズマリー。
『レオヴィルに行くんでしょ。ローレルが言ったのよ』
そうだけどさあ。
あ。そういえばヨセフって今どこにいるのかな?
『確か、マルサンヌ砦を護っていたのよね』
でも死んじゃったとも聞かないよ? きっと生きてるよ。
『そうね。その方が“あのお土産”も喜ぶわ』
[王都シラーを手際よく陥落させるために
モンテリーの王族ヨセフに接近したのは…およそ2年も前に遡る]
[首尾よく馬を見つけ、吹き矢は証拠隠滅して。
親しげに安心させるように、互い違いに子供へ声を掛けた]
大丈夫かい?怪我はしてない?
『お父さんと来たの? なら会えるまで一緒にいてあげる』
[森の木の実や葉や枝を使った素朴な遊びで時間を潰した。
都に住む子供からしたら、逆に物珍しかったかもしれない。
勿論その辺りも狙っての所作だ]
[やがて子供の父親が顔を見せた。安堵の表情をしている。
子供としっかり抱き合って、感動の親子対面だ]
困っているようだったからね。当然のことだよ。
『お父さんと会えて良かったわね』
別にお礼なんて必要ないよ。
『でもそうね。またいつか、遊べたら嬉しいわ』
[あくまで善意の塊という顔を作る。双子にとっては慣れた仕草だ]
[急ぐ必要はなかった。
こういうことは、ゆっくり徐々に重ねた方が深みが増す。毒と同じだ。
目論見通り――…
王弟ヨセフの息子ロヴィンは、すっかり双子に懐いた。
招かれて王都に訪れた時も、種族の異なる異邦者のエルフに対し
誰も警戒する素振りがない。
こちらが拍子抜けしたほどだ。
やがてヨセフがマルサンヌ砦に赴くことになった。
護りの要とも言える将が王都を離れるのだ。好機は訪れた]
[魔王に情報を流し、内から門を開け、混乱を招き入れた。
いくら頑丈そうに見えたニンゲンの都でも、
内部から侵食すれば落とす労は少なく済む。
そうして……]
ロヴィン。逃げた方がいいよ。
『ここはもう危ないわ。ワタシたち抜け道を知っているの』
連れていってあげるよ。さあ早く。
[けれどロヴィンは最初、首を縦に振らなかった]
[同じく屋敷に居る母や、まだ赤子の弟の身を案じたのだ。
自分だけ逃げる訳にはいかない――母と弟も助けたい、と。
どこか父親にも似た責任感のある凛とした態度で、双子の申し出を拒否した]
(どうしようか、ローズマリー)
(『でも“お土産”は欲しいわ。先生に約束しちゃったもの』)
(大人は持ち運びが大変そうでイヤなんだよなあ)
(『騙しっぱなしなら大丈夫よ』)
[結局、3人を連れて王都を抜け出すことになった]
『でも先生へのお土産は、アイツが食べちゃうかもしれないわよ』
[魔王の傍に常に控える魔法兵器。死を糧として食すアレは魔王のお気に入りだ。
自分たちのお土産が下賜される可能性はすこぶる高い]
だからさ。
シメオンのおじちゃんに渡せばカタチが残るだろ。
『……先生へのお土産を減らしちゃうの? いけないわ』
先生へはロヴィンを持っていくとしか言ってないし。
それにきっと、先生もいいことしたって誉めてくれるよ。
『そうかしら…?』
[少女は悩んでいる素振りだったが、少年はさっさとシメオンを見つけて声を掛けてしまった]
シメオンのおじちゃーん。
コレあげる。
『…お土産なの』
[子供たちが眠っている間に、
言葉巧みに連れてきたヴェルザンディをシメオンに引き渡す]
『モンテリーの王族の奥さんよ』
まるごとがいい出汁でると思うんだ。
[不要と言われたら魔王のところへ持ってゆくだけだ。
ちょっとした気紛れの思いつきに、少年はご機嫌そうだった]
[捨て置かれたロヴィンの様子を、一度だけ見に行った。
裏切り者と罵られた。
だから、笑った]
ボクらは裏切ってなんかいないよ?
『ただ騙したの。それだけよ』
[お仕事だからね。と、優しく*告げた*]
/*
こんだけ夜更かししたの何時振りだ…?
さすが村効果(
まあ、まあ。お昼寝したからセーフだと思いたい。。。
しかしあと囁きがだな…。
[父というモノも
母というモノも知らない。
それらは単なる記号であり特別な要素などない。
生まれた時から周りにあったのは魔であり…
更には魔が与えた蠍であり、毒であった。
他の者とは異なる長い耳を揺らし
闇の褐色に染まらぬ白い肌を保ったまま。
けれど裡は確実に魔性に染まり
闇の心地よさを覚えていった]
[魔が戯れに訪れてくれるのを
双子はいつも首を長くして心待ちにしていた。
焦がれていた――と言ってもいい。
それほどまでに魔は双子にとって絶対的な存在であり
世界のすべてであり、拠り所だった。
誉められれば天に昇るほどに喜び、
失望されれば見捨てられる恐怖に震えた。
魔に必要とされたくて、
ただひたすらに毒の扱いを覚え、魔術を訓練し、
人間という名の獲物を仕留め続けた]
[ある年の誕生日。
魔がプレゼントしてくれた闇の“
双子はただただ、魂を歓喜に打ち震わせた。
なによりも大切な魔との、確かな繋がり。]
ボクらはアナタの目であり
『アナタの耳であり』
アナタの手であり
『アナタの足です』
――――… ボクらのすべてはあなたのもの
[それは 永久の誓い]
[ミュスカ森林のお役目を終え、すぐさま下された次なる指示に
双子は嬉しそうに返する。
お仕事があるのは、役に立てる証。
必要とされている証拠。
だから。]
はい、先生!任せてください。
『先生の気分を損ねるなんて悪いやつらだわ』
ほんとだよね。たっぷりお仕置きしなくちゃ。
『頭をぐしゃぐしゃにしちゃうんだから』
[いってきます、と最後に声を揃えて双子は言った]
[双子は去りがてに、それぞれ飴をくれた。>>102]
ありがとうな。
[またね、と再会を望むような声には、苦い気持ちを噛み締める。
姫と双子と自分と、和気あいあいと旅した頃にはもう戻れない。]
[小犬のようにまとわりついて甘える双子を、ユーリエは可愛がった。
ロー・シェンが語るローグの旅路に心弾ませて夢見たように、双子の話も楽しく聞いていた。
盛ってるだろうとわかる話でも、彼らの巧みな話術にかかると信じてみたくなるから不思議だ。
夜に花を咲かせる石があるんだと双子にそそのかされて夜通し探し回り、身体を冷やした姫が寝込んだこともあったが、姫は叱ろうとするディークを宥めた。信じて探している間、楽しかったもの、と。
また、先方からしょげた風情で謝られれば、反省はしているのだと思った。]
──…話半分、か。
[出陣してから川の水以外、何も口にしていなかったので、さっそくもらった飴を口に放り込む。
包みの色は、2(2x1)だった。 1.赤 2.青 >>102]
[ダダ甘砂糖味に、余計に喉が渇く。]
半分でもヤバかった…
[つくづく彼らとの付き合いを再考させられつつ、青い飴をしまいこんで、傭兵たちの後を追う。]
─ クレレット ─
[まるで掴まれた腕を振りほどきたがっているかのように、ヒトガタは小さく身じろぎをした>>90]
ぐ…ァ、
[流れ込む破壊の力に歪むヒトガタの表情も苦悶の息も、地上に届くことはない。
黒竜ナールが一度首を擡げ、また元の彫像のごとき姿勢へ戻った。
やがて、剣が床に落ちる音。
装備品と衣類が散らばり、内から溶け崩れたヒトガタは流動鉱石の半透明を晒す。
粘つく半固形体の中心、埋もれた拳ほどの大きさの"核"がチリチリン、と澄んだ音を立てた]
─ 参照 ─
[胸を貫く銀の月
霞む視界に躍る紅
左の指は、治癒の印を結んだ]
ーー… …
[携行袋の触媒は尽きていた。
なによりもう、理論魔法に意識を集中できない。血と共に力も意識も流れ出していく。熱いのか冷たいのかわからない]
…シェ、 を
[死の瞬間、クレステッドは愛しい妹姫の顔も、レオヴィルの民の姿も思い浮かべはしなかった。
ただ、共にいた護衛官達をどうすれば生かせるか、
この場を乗り切って砦まで逃れる撤退戦のルートを考えていた。
少しでも被害を 抑え 隊を ******
[生まれよ]
[木偶人形は、瞼を開けた。
半透明の鉱石は、素体の記憶を参照して薄蒼に変じ、クレステッドの銀の瞳を現す。
汚損のない望まれた姿への再構成]
ぁ……
[茫漠とした表情はやがて感情らしきものを模倣し、ヒトガタは小さく震えた。
読み取れる記憶と、現状との落差に混乱する起動誤差はそれほど長くは続かない。
玩具を作り上げた最初の夜を繰り返すことの面白さをツィーアは理解できてはいないが、魔王が気に入っている遊びのひとつであることはわかる。
魔道兵器は歪んだ塔の歯車を廻らせて、機嫌のよい猫のような音を立てた]*
― 回想 ―
[今から1年ほど前、ユーリエは自分の意志でレオヴィルに戻ると決めた。
「今のわたしを記憶に留めておいてほしいから、あなたとはここで別れましょう」と彼女は言った。
ユーリエの身体を蝕む病は、確実に進行していた。
むしろ、こんなに長く旅を続けていられたのが奇跡だ。
「夢を諦めていたら、わたくしはもっと早くに歩けなくなっていたに違いないわ。
命をかけて惜しくない夢なら、力を貸すと言ってくれたあなたのおかげ」
その夢を共に見るのも、この日が最後で──
旅を始めたときから覚悟していたことだというのに、傍らに気心知れた相手がいないというのは、けっこう寂しいものだと身にしみた。]
[人生の終わりに家族を安堵させて残された時間を心安らかに過ごすべく王宮へ向った姫と、仲良し双子を送り出してしばらくたった頃、シラーの宿でひとり酒を傾けていたところへ警吏が踏み込んできて、ユーリエの死を知っているかと訊ねた。]
…多分、あんたたちより先にわかってたよ。
わざわざ俺を捜し出して知らせに来なくてもよかったのに。
[感傷的に答えたら、相手は「では認めるのだな」と色めき立ち、あれよあれよという間に乱闘になった。]
[自分ひとり逃げ切るつもりならできなくもなかったが、「殿下」と呼ばれる男まで登場するに当たって、これは相当、込み入った話らしいと抵抗をやめておく。
未決牢に放り込まれて知ったのは、ユーリエが王宮に帰りつく前に殺されたことと、その場に残されていた凶器の短剣がディークのものであったということだった。
その短剣は、レオヴィルの軍学校を卒業する際に成績優秀者に与えられたものだ。
見栄えも使い勝手も良かったが、双子が玩具にしたがって危なかったので、旅の途中で売り払った。
それが、どうして。
警吏らが納得しなかったように、ディーク自身にも謎は解けていない。]
― レオヴィル王国軍陣地 ―
[双子の出現で、いやがおうにも思い出してしまったが、この先は、作戦に集中すべきだろう。
川岸で、息はあるが意識のない王国兵を見つけて肩に担ぎ上げた。
負傷者を連れて戻ったという偽装だ。
そうして、防衛成功の勝利に沸く王国軍の領域に紛れ込む。
こんな作戦ができるのも人間ならではだ。オーガでは一発でバレる。]
ボーナス要求してもいいな、これ。
雇い主に、町のひとつもくれと言ってみようか。
[野戦病院に兵を届けたついでに、戦場で回収した遺品の入った袋を、そうと告げて看護兵に渡しておく。
多忙な看護兵は、今、細かいことを気にしている暇もあるまいと計算した上でだ。
後で家族の手に届けばいいものだ。死者は急がない。]
足りない品をとってきてやる。メモをくれ。
[資材置き場に入り込むために、そんな手を打つ。
そうして、そろそろ夕闇の濃くなってきた陣地を奥へと進んだ。*]
― クレレット ―
[人形が崩れ溶け落ちていく過程も、
新たに生まれ出でた人形が慄くさまも、
心地よく魔王を楽しませた。]
表情も仕草もそそるものだな。
感情まで伝わってくるようだ。
[実に良い、と自分の手になる作品を褒める。
幾度も壊して作り直せるこれは、ただしく玩具だ。]
[塔の中から響く低い音が足元を揺らす。
意志あるこの兵器も、究極的には玩具だ。
打ち捨てられていた兵器に手を加え、己のものとした。
移動する居城など、まさに己のために在るようなものだ。
我の居る場所こそが、我が王国の中心。
圧倒的な力を秘めたこの城塞が、その象徴だ。]
おまえは我が翼だ。
我が世界を征する足だ。
我がツィーアの名は、いずれ世界に轟くだろう。
[期限の良い魔王は、そんなことまで口にした。]
[そして、はたと手を打つ。]
───そのうち、飛行機能も付けてやろうか。
[それも面白い。と真剣に考える顔をする。
今のところは、まったくもって夢物語だが。]**
『飛ぶのか
好い。世界をお前の光で照らそう』
[声を用いて話すと、ヒトガタが頭を振って指を頸に当てた。
生者の命が絶える刹那、体から離れて散り消える力を捉えて我が触媒とする、その障害は時であり距離であった。
飛行機能を与えられたら、非力な人形を使わずとも、あまねく死を拾い上げられるだろう]
『だがこの名を呼ばうはお前だけで───』
[ぐ、と指が喉に食い込んで音声が止まった。
表情を歪ませるのは、憤激と絶望の発露のよう。
作り直したばかりのヒトガタが魔王へ攻撃性を見せて愉しませたことは何度かある。
ツィーアは魔導の響きへ変えて、言葉の続きを紡いだ。
『お前だけがいいというのに』]
……ぅ、 ゔ
[『レオヴィルの王族はシメオンとやらが獲るか?
譲るもよいが…あの者が死ぬる時は喰ろうていいか』
魔将シメオンの配下達は実に味気ない不毛の輩だが、シメオン自体の抱える魔力には魅力を感じていた]*
― 陣営内 ―
『おい、兄弟』
[ 資材置き場に向かうディークに>>132陣の裏手からやってきた男が近付いてきて声をかけた。男は盗賊の一味で、首領が息子か弟のように扱っている相手は「兄弟」ということになっているらしい ]
『裏手に油を満載した荷馬車があったんで、油を零してロウソクを置いてきた。ロウソクが燃え尽きたら派手に燃え上がるって寸法だ』
[ 頭良いだろう?と自慢するように胸を張り、その後で、少し顔を顰めて言葉を繋ぐ ]
『その...荷置き場の近くでよ、お前さんが預かってたガキ共を見かけたんだが、ちゃっかり逃げ出して来てやがったんだな。逃げて来た場所で焼け死ぬってんじゃ、ちっと可哀相な気もするが...どっちにしろ、あっちに居ても命は無かったんだ、仕方ねえ。
こっちの顔を見られるのもまずいしな』
[ 仕方ねえと、言いながら、どこか罪悪感を感じてはいる様子なのは、やはり悪党も人の子というところか。それでも、我が身を危険に曝して子供を助けようという気は、この男には無いようだった ]
『それじゃな、俺はそこらで食料をちょろまかしてくる。お前さんもうまくやれよ、兄弟』
[ 魔王軍では人間の食の嗜好など、大して気を払われていなかったから、久々に人間らしい飯が喰えるだろうと、すっかり根源的欲求に気を取られ、男はそのまま宵闇迫る陣営のどこかへ身を晦ませていった ]
『あっ!』
[ そうして、その男と入れ替わるように、少し離れた場所から、驚いたような子供の声が届く。
ディークが視線を向けたなら、見覚えのある子供が、素早く身を翻して陣営の裏手、まさに先程の男が言っていた荷置き場の方へと駆け去って行くのが目に入った筈だ// ]
「…実は、先の戦いの敵陣にそれらしき人物を見たと言う話も」
馬鹿な…!?
仮に生きていたとしても何故魔軍に!
それよりも何故その時に言わなかった!
[如何に遠目であったとしても見間違わない自信がある。
問い詰めるように言うと、副官は少しばつが悪そうに理由を述べた]
「例の女性とまみえている時だったもので…」
あの時か……
[その答えに男は苦々しく表情を歪めた。
邪魔をすまいとした配慮だったのだろう。
副官に非は無いため、それ以上は言わず]
[副官を下がらせ、親友のことについてしばし思案する]
……あの女性、確か、”獲る”と言っていたか。
獲って帰ればマスターが喜ぶ、とも。
[赤紅のマスターがアンデッド軍団を作ったと言うならば話の筋は通る。
だが目撃されたクレステッドはアンデッドには見えなかったと言われていた。
繋がりそうで繋がらない糸]
何が起きている…?
[何もかもが疑問ばかりだった*]
[思案する最中に躊躇うようなコエが届く。
それは途中で途切れ、何でもない、と締め括られた]
……ロシェ、
[躊躇いを抱くロー・シェンもまた、例の噂を聞いたのだろう。
そう考えて、そっとコエを送る]
仮に本当に、彼が現れたのだとしたら、今現れたことに何かしらの意味があるはずだ。
君に伝えたい何かが。
[生きていたにしても、化けて出たにしても、何かある、と]
私は、真偽を確かめる心算だ。
[はきとしたコエで宣した*]
― 回想/1年程前 ―
[それは親友の時と同様、唐突な報せだった。
誘拐されていたレオヴィル王国の姫・ユーリエが殺害され発見された、と。
モンテリー国内で起きた王族殺し。
警吏だけに任せられる事案ではなかったため、男が捜査指揮に立つことになった]
凶器の出所を探れ。
早急にだ。
[凶器として押収された短剣はそこらで売られているような代物ではなかった。
故に持ち主は直ぐに判明し、ディーク・オラクルと言う旅人を指名手配するに至る]
この男は……ユーリエを誘拐しただけでは飽き足らず…!
[その男はユーリエを誘拐したとして指名手配されている人物でもあった。
事件が起きる前に捕らえられなかったことに男は拳をきつく握り締める]
[やがて目撃証言からシラーの宿にディークが居ると知り、男は警吏を向かわせる。
少し遅れて宿へと向かえば、犯人は警吏相手に乱闘を起こし>>129、宿は大騒ぎとなっていた]
何を手間取っている。
[眉を顰めながらやり返された警吏を下がらせ、暴れるディークの腕を掴みあげようとしたが、上手く身を捻られ躱された。
更にはこちらへと一撃食らわせようとする動きに、今度は男がその腕を往なして弾き返す。
どうやら相手も腕は立つらしい]
流石は軍学校の成績優秀者と言ったところか。
[感心したように紡ぐと、警吏から「殿下!」と案ずる声が上がった。
大事無い、と手でそれを制していると、ディークは抵抗を止めたようだった>>130]
殊勝だな。捕らえろ。
[観念したと判じ、男は警吏にディークの捕縛を命じる。
こうしてディークはモンテリー王国の未決牢に入れられることとなった]
……これはお前のもので間違いはないな?
[凶器となった短剣を未決牢に居るディークに見せて確認を取る。
仮に否定したとしても、レオヴィル王国の軍学校に賞与のリストがあるため、言い逃れは出来ない。
旅の途中で売り払ったと証言されても、納得出来るものではなかった]
ユーリエを攫った挙句殺すとは、どう言う心算だ…!
[当然のように男もユーリエと交流があった。
レオヴィル王国を訪れた際には、モンテリー王国であったことを教えることもあった。
元々病弱であった姫。
ただでさえ死を間近にしていたのに、何故このような仕打ちを。
男は何度もディークを問い質した]
[やがてディークは王族殺しの重罪人としてモンテリー王国の地下牢へと収容されることになる。
証拠が揃っていること、他に犯人と思しき人物が現れなかったことがその理由だった**]
/*
そしてツィーアのこの破壊力の高さよ。
おまえはどうして私のツボをこんなに突いてくるのか。
ヒトガタと本体とでダブルでおいしい。
ふひひひひ。たまらないな。好きだ。
― 5年前 ―
兄上っ!!
[ 銀月の一閃が、クレステッドの身を切り裂いた時、護衛官としての表層は瞬く間に剥げ落ちて、男はそう叫びをあげていた。
兄の指先が治癒の印を描こうとして力を失い、その身は為す術も無く崩れ落ちて...僅か、己の名を呼ぶ声が聞こえたと思ったのは、気のせいだったろうか? ]
あ......
[ 血の紅を纏い、銀の大鎌を揮った死神の如き娘の顔を、その瞬間に初めてはっきりと視界に捉えた ]
リ...
[ そんな筈は無い、と激しい拒絶の念が男の中に渦巻く、しかし、別れた時よりもずっと大人びてはいても、見間違えようのない亜麻色の髪と瞳...そして、左の手首の艶やかな虎目石を編み込んだミサンガが、否定すべくもない事実を、男の目の前に突きつける。
騎士の兜を身に着けていた男の顔は、彼女からは判別出来なかったろう。けれど ]
リーーーッ!!
[ なぜ?と、言葉には出来ず、ただ血を吐くように名を呼んだ、その声に、娘は一瞬、ぴくりと反応したようにも見えた ]
『皇子!ダメです!!』
[ 衝動のまま、兄と娘の方へ駆け寄ろうとした男を、近衛隊長が全身をぶつけるようにして止めた。
皇太子の傍近くに仕える近衛の護衛官達は、大半が男の真の素性を承知していて、それでも普段は同僚として扱ってくれていたのだが、皇太子が命を散らした、この瞬間から、その仮初めの扱いもまた、終わりを告げたのだ ]
『砦まで、急ぎ撤退を...貴方まで失うわけには...っ!!』
[ 男を庇いながら、死体を増やそうと襲いかかってくるゴーレムやコボルトに立ち向かっていた近衛隊長は、皆まで口にする事無く、その頭をゴーレムの一撃に砕かれた ]
隊長っ!?
[ 護衛兵達の中にも動揺が走る。けれど、残った者も皆、男を囲み、護る位置から逃げようとはしなかった。それが、皇太子の遺志である、と、堅く信じているかのように ]
...ぐっ!
[ 視界からはすでに、兄の遺骸も、紅を纏った娘の姿も消えていた。
男は、胸を破り、こみ上げるかのような、痛みと熱とを呑み込んで ]
/*
ここまでのダイジェスト
・とりあえず魔王の足の下に初期配置する
・行っておいでって言われてしぶしぶ出かける
・布陣がよくわからないので後ろから現れる作戦にでる
・思ったより火攻めが燃えた
・ディークが落ちるなら俺も落ちる!
・どんぶらこで汚れた→そうだ、お風呂に入ろう
・せっかくだから弟の顔くらいは見て、アイリと合流したいな(願望
・帰っておいでって言われて大急ぎで戻る(りんきおうへん
・おふろはいるの忘れてた
・そんなことよりシメオン美味しそうだなって
― 伝承の話 ―
[万一を考え、ロー・シェンに伝えておいた伝承。
詳細は語らず、掻い摘んで伝えたのはそもそもが門外不出のものであったからなのだが───]
(…これを言えば、絶対に止められるだろうからな)
[───道の開き方を知れば、必ず止められると思ったからでもあった]
[伝承内で、モンテリー王家の者でなければ道は開けない、と書かれているのは確かだ。
だが、ただ入口に行けば開くというわけではない。
離れた場所が入口と言うことは、魔法的な力で繋がっていることを示す。
いわば特殊なポータルがそこにあるのだ。
そのポータルを発動させるのに必要なのが、モンテリー王家の”血”だ。
触媒として血を捧げ、適切な呪具を持ち、呪文を唱えれば道は開く。
その場合、触媒としての血は少量で足りるのだが、他が揃わない場合は捧げる血を多くしなければ開かない]
[男が持つのは触媒と呪文のみ。
呪具が無い分、捧げる血を増やす必要があった。
これで呪文も無いとなれば、恐らく致死量の血を捧げなければならないだろう。
そこまでせずに開けられる目算があるからこそ、祓魔剣の存在だけは明かしたのだ]
/*
感想
うちのまおーまじまおー
アイリかわいいよアイリ
ローレルかわいいよローレル
シメオンおいしそう
主人公が苦労人でおきのどく
ガーディアンも不幸でおきのどく
リテイナーのポジション人気ないのってなんでなん明らかにこの村の中で一番らくちんなうえに一番幸せじゃない?
(現状でもどれほどの血が必要か分からないのも問題ではあるんだが)
[それでも必要となるならば、男は向かう心算でいる**]
/*
……うん。
何故、そこらへんちょっと書こうかと思っていたのがわかったんだい?
[現在軸はちょっと待ち状態なのでそっちやろうとしてた]
ずいぶんと可愛らしいことを言う。
[人形の喉を介さず聞こえてきた言葉に笑う。
自らの喉を潰そうとするかのような人形には、つと手を伸ばしてその喉を掴んだ。]
おまえのすべては我のものだと、幾度言わせるか。
[幾度、もなにもこの人形に対しては初めてだ。
たとえ首を絞めても流動鉱石でできた人形が"死ぬ"ことはないだろうが、素体が持つ記憶の判断は別だろう。
握りつぶすほどに力を加え、指先に伝わる震えに快を覚える。]
案じるな。
おまえを真に呼ぶのは我だけだ。
他の者がどう呼ぼうと、聞き流しておけ。
世界の王の居城となるのだ。
その程度の度量は備えてもらわねばな。
[人形の首を締めながら、何でもないことのように言う。
その実、魔神さえも凌ごうという野心の発露でもあった。]
───だろうな。
あれが為すという業、我も興味はある。
[シメオンへと話が向かえば、うっすらと笑みを浮かべた。
続くツィーアの望みには、ふむ、と頷く。]
シメオンをか。
あれはあれで、なかなかに使えるものだ。
何かという時は護ってやれ。
[言ってから、当然の声音で付け加える。]
それで死ぬのならばその程度ということ。
好きに喰らうがいい。
おまえの糧となるのならば、無能の命も多少の意味があろうというものだ。
[ 兄の残してくれたものは大きい、と、男は自覚している。そして、今も自分が、ただ兄の影を追っているのではないかとも時折自問していた。
だから幽霊の話を聞いた時も、そこに拘るのは自身の弱さ故ではないか、と、浮かんだ想いが、思考を先に進める事を躊躇わせたのだが ]
ヨセフ。
[ 確かめれば良い、と、揺れず響いたコエに、はっと胸を衝かれる ]
[王国軍の中を早足で、だが怪しまれない程度には毅然と歩いてゆく。
と、盗賊一味のひとりに遭遇した。>>138
蝋燭を使った時限着火装置の自慢と、ディークが手元に置いていた子供を目撃した旨を伝えられる。]
ああ、情報感謝する。
人生、悔いなく男らしくいこうぜ、兄弟。
[マーティンの口癖を挨拶代わりにして、拳を軽く合わせ、食糧調達に向うらしい彼を見送った。
傭兵たちの刹那的で快楽的な生き方を見ていると、自由だなと思う。
あの屈託のなさ、己と何かが決定的に違う。]
そうですね。自分の目で、確かめなければ。
[ 噛み締めるように繰り返す。何を逃げる事があるのか、と、死者であれ、生者であれ ]
はい、俺も、そのつもりです。
[ 真偽を確かめる、と、きっぱりと告げる言葉に頷く ]
...ヨセフ、俺は...例え、魔の作った幻であったとしても...兄上に会いたい。
本当は、そう、思ってしまっているんです。
[ 最後に落とした正直なコエは、僅かな寂寥を滲ませながら、けれど、想いに引き摺られるではない、どこか柔らかい響きを帯びていた** ]
[考えながらも、歩みを止めることはしない。
その視界の端に、身を翻す小柄な影を捉えた。>>139]
──…、
[かすかに洩れた声と身のこなしから、魔軍の拠点に置いてきた子のひとりだと察した。
どうすれば王国軍と接触できるかは、使者に出す子供を引き合いにして聞かせてきたとはいえ、魔物たちの目が前線に向いている間に脱出を計るとは、なおかつ、子供らだけで成功しおおせたとは、なかなかいい判断力をしている。]
[ディークは、即座に子供を追い、その襟首を掴んで物陰に連れ込んだ。]
おまえひとりで脱出したのか、それとも、全員か。
[後者だと聞くと、ディークは、よし、と頷いた。
魔軍に戻らねばならない柵がひとつ消えたと、漠然と感じながら、子供の頭を撫でる。]
良くやった。
いい意味で裏切られて、俺は嬉しい。
この先も、勇気をもって切り抜けろ。
おまえたちには、生き延びてもらいたいんだ。
[短く告げて、子供を放す。
そうして自分は、篝火から燃えている薪を引き抜き、手当たり次第に天幕や荷駄に放り投げた。
どのような形であれ、潜入を発見されてしまった以上、時限発火装置の稼働を気長に待ってはいられなかった。
疾きこと風の如く、侵略するとこ火の如くあれ。
随所で騒ぎを起こして、そのまま撤退の構えだ。*]
[男の宣を聞き、ロー・シェンも想いを同じくしたようだ。
次いで紡がれた正直なコエからは、噂に縋るようなものではなく、純粋に兄に会いたいのだと言う想いが伝わってきた]
…そうか。
良いんじゃないか、家族なのだからな。
ただし、己を見失ってはならないぞ。
[コエを聞く限りは心配ないと思えど、案ずるコエは紡がれる。
年長の癖だと思ってくれれば良い**]
[クレレットの街道に玉座を定めた魔法兵器は、時折魔導の光を滲ませながらそこにあった。
異形の地這竜は吐息のように煙をくゆらせ、
脚の下で泥酔して騒いでいたトロル兵を一匹すり潰す。
高みにおいては、急所と記憶している首を縊られた玩具が弱々しくまだもがいていた]
[『お前が望むなら…努力しよう
度量も、 死ぬまでは助けるのも』
そして、甘えるようにヒトガタのなかの核を鳴らした。
チリン]*
...やるとは思ったが、本当にやりやがったな。
[ 時を置かず、子供の1人に先導されるようにして、男は荷置き場に駆けつけた。ディークは既に姿を消していたか、逃げていたなら子供等に、どちらへ逃げたかを尋ねて、後を追う構え ]
頑張れよ、消火班!火傷に気をつけてな!
[ 子供達に消火班の任務を与えたのは、他ならぬ男の発案だ。なぜ放火の企みに気付いたかについては ]
ディーク!!
[ ディークの姿を視界に捉えると、男は声を張り上げる。
護衛兵の類は着いて来ていない事は、振り向けば判るだろうが ]
マーティン・トッドは、捕らえたぞ!他の連中も、大方捕まる頃だ!
[ マーティンの手配書はレオヴィルにも届いていた。だから、荷置き場で怪しい男たちを見かけた後、別の場所で、マーティンを見つけた時にピンと来たのだ。
彼を捕まえる為には、少々大立ち回りを演じなければならなかったが、おかげで傭兵達とディークの目的を知る事が出来た ]
/*
結局ディークとは、殴り合わないとダメなんじゃないかって気がひしひしとしててだね...
[ 最初は普通に説得する気だったんだよ!ほんとだよ! ]
あ、マーティン親分の名前、間違えてーら...orz
― 5年前 ―
[その命が、どんな経緯で下されたのかは知らない。
娘にとって重要なのは、それが主からの言いつけであり、果たさなくてはならないものだ、というその一点のみ。
だから言いつけられた通り、『運搬役』も兼ねる一隊を引き連れ、その一団を強襲した。
娘の亜麻色が獲物として捕らえたのは、一際目を引く銀。
跳躍から、問答無用とばかりに斬り下ろされた大鎌の閃は、さすがに強い警戒心を抱かせたか。
獲物と見なしたそれは、引く様子もなくこちらに向かって来た]
……この状況で、逃げない、か……!
[それだけ腕に自信があるのか、それともただの無謀か。
いずれにしても、立ち合いは一筋縄ではゆかぬもので。
それが感じさせる楽しさは、自然な笑みを口の端に浮かべさせていた]
……っ!?
なん、だ……?
[そう、呼ばれたころの記憶は霞んで見えない。
思い出せなくても、僕としての務めには支障がないから、気にもしていなかった。
なのに、その叫びは確かに、霞の向こうのそれを揺るがして]
……あたしは、コレを持って引く。
後は、好きにしろ。
ただし、ちゃんと持って帰るのを忘れるなよ。
[これ以上ここにいるのが苦しくなって。
近くにいた運搬役にそう告げると、獲った銀を運ばせて一足先に引いた]
― 橋北側 ―
[持ち帰った銀がその後どうなったかは、特に気にしていなかった。
総大将たる魔王の元で何かに使われた、という話を聞いても興味はなく。
ただ、実際にヒトガタを目にした時、獲った時の揺らぎを思い出して息苦しくなったから、必要がなければ近づく事はしなくなっていた。
それと共に、知らない呼び名と、それを紡いだ声の事もずっと忘れていた──というのに]
……なんなんだ、ほんとに。
イラつく……。
[浅い眠りが齎した、いつかの夢。
それが破れて最初に零れたのは、愚痴めいた呟きとため息ひとつ。*]
― 陣営内 ―
[ロー・シェンがディークを追う一方で、男は紛れ込んだ残りの傭兵達の捕獲に動いていた]
よくぞ気付かれずに紛れ込んだものだ。
頭の切れるものが居ると見える。
[彼らの頭となるマーティンは既にロー・シェンによって捕らえられていた。
それを告げると大人しくなる者も居れば、躍起になって向かって来る者も居る。
今は後者がほとんどであり、陣営内ではちょっとした追いかけっこが起きたりもしていた]
止まれ、これ以上の抵抗はしないことだ。
[逃げる傭兵の前に回り込み、制止をかける。
前方に男、後方に追いかけてきた兵士達。
挟まれた傭兵は切羽詰り、逃げるために剣を抜く]
……仕方が無い。
[前方は一人と見て傭兵は男へと剣を振り上げてきた。
それに小さく息を吐くと、クレイモアは抜かずに無手で相手に立ち向かう。
焦りが乗った剣筋であれば読むのも難しくは無い。
頭上から振り下ろされた剣を、踏み込みと同時に左半身で躱し、相手の側面へと身体を滑り込ませ。
右手を相手の右胸へと添えると同時、右足を相手の右膝の裏に当てて右手に力を込めた]
「────!?」
[傭兵は天地がひっくり返る思いをしただろう。
背からどぅと落ちた傭兵は目を円め、しばし呆然としていた]
捕らえろ。
[狭所で暴徒を鎮圧する時の体術はこう言う時でも役に立つのでありがたい*]
─── ローレル!? ローズマリー!?
[目を凝らせば、そこには長男が懐き、己も我が子のように接していた双子が居た。
何事かと視線を向ける見張りを余所に、男は二人の下へと駆け寄る]
二人共無事だったのだな……良かった。
[砦へと詰めていたために彼らの所在すら不明で、探すことも出来ずにいた。
無事な姿を見て男は安堵の色を浮かべる]
怪我などは無いか?
[二人を見比べ、怪我の有無を確認する*]
/*
こう、あんまり弱音吐いてない感じ&さくさく進めたくて、あっちこっち御都合主義万歳状態なので、ちょっと無敵臭くなってないかが多少心配です。
若者っぽい青さとかが自然に出せるといいんだけどねえ。何しろナカノヒトがとしy...(強制終了)
/*
あ、ちなみに時限発火装置がどうなったかは、わざと眩ましてるのです。魔軍襲来時に発動しても良い。そこはディークに任せよっかなーとか。
ちゃんと書いた方がいいかな?
[声変わり前の甲高い声があがったかと思うと、子供らが手に桶を携えて消火にかかる。>>163
それを見届けることはしなかったが、どうやら作戦が失敗したらしいことは膚で感じた。
呼応して上がる火の手もなくば、動揺の気配もない。
届いたのは──]
[己の名を呼ぶ、知らぬではない声。>>166
凛としたよく通る声は、続けて、もうひとつの名を告げた。
それが、ディークの足を止めさせた。]
『あのね、でも――…』
うん。ボクらヨセフにごめんなさいしなきゃいけないんだ。
『シラーの都が落ちた時にね』
ボクらはロヴィンたちと一緒に逃げようとしたんだけど――…
『途中ではぐれてしまったの』
[声のトーン落とし、二人揃って長耳をしゅんと下げる*]
[木の作る影の中に立って、単身追いかけてくる王国軍総大将を見やる。]
──久しいな。
[軍学校時代の悪友は、今や、世界の命運を背負う男の顔になっていた。
だが、そんな感想は口にしないまま、]
おまえの活躍は、見させてもらった。
魔軍相手に、ずいぶんと踏みこたえているようじゃないか。
[ロー・シェンが前に出るなら一歩下がり、そうして互いの距離を保ったまま、問いに答える。]
どうするも、 レオヴィルに俺の居場所があるとでも?
/*
そういえばディークくん魔法使いなんで、魔法発動されちゃうと、簡単に逃げられちゃいそうですね...(今頃気付いたのか)
─
[そのアーティファクトは退屈していた。
そのアーティファクトには魔神の力の仕組みがあった。破光により死をもたらし、その死を糧に次の光を生む、終焉に連なる環が。
けれどそれには最初の臨界が要る。
仕組みがあるのだからと、はじめの数百年は火種を待ちもしたが…あまりにも何も起こらないのでそのうち飽いた。
ただ退屈で、退屈で、退屈していて、]
[鼻先で何かが弾けた。
いい匂いのエネルギーだった。
アーティファクトは起きて、それが薄れる前にとって食べた。
これが自分の起こす魔法の触媒なのだと知った]
[すぐ傍で死んだ何かは、どこぞの魔王級だったらしい。
この時は知らなかったが、一つだけで満たされるような死は、そうあるものでもないようだ。
満たされたアーティファクトは起き上がり、魔法を発動させることにした。
起きだしてみると、……自分がずっと小さくなっていることに気がついた。
魔導炉には反属性の封印がかけられているし、射出翼は切り落とされている。捻じ曲げられた回路を迷走するうちに、力はどこかへロストしてしまう。
ああ、だが、退屈するより余程、好い。
アーティファクトは散々苦労して、最初の光を放った。
本来の仕組みよりもずっとずっと弱くて小さい破壊の光を]
、
[声が聞こえた。
世界を知覚したのが初めてでも、声の主が上機嫌だと理解した。
それで、アーティファクトはすっかり自分にかかった枷を気に入った。
くべられる死を食べて、満たされたなら光を放つ。自分はそういう道具だと知った。自分の姿と自分の出来ることを知り、そうして立ち上がった。
[後にツィーアは言語というツールを操りこう告げた。
『お前が変容させた私は、私の誇りだ』
『私はお前のためにあろう
お前の死を得る時までは』
魔王カナン・ディ=ラーグが死ぬことはない。故にそれは永遠を誓う宣として]**
気に病まずともいい。
ロヴィンならば、きっと上手くやっている。
[母と弟を助け逃げ遂せていると、そう信じたかった。
そうであると良いと言う想いも乗せて紡ぎ、双子の頭を撫でる]
君達が無事であっただけでも僥倖だ。
さぁ、陣の中へ。
先ずは着替えた方が良いだろう。
腹は空いていないか?
[家族を案ずる気持ちは多分にあるが、今は二人を保護するのが先と己に言い聞かせ、双子を陣営の中へと促した*]
― クレレット ―
[太陽が山の端へ掛かろうかという頃、クレレットの町に新たな一団が到着した。
艶消しの黒に塗られた揃いのプレートメイルに身を包み、酒樽のような全身を覆うほどの丸盾と自身の身長の倍ほどもあるハルバードを携えた、亜人のひと群れ。]
鉄底族が到着したか。
ようやく、だな。
[報せを受けた魔王は、即座に彼らを戦列に加えるよう指示を与えた。]
[鉄底族、と呼称されるドワーフの一部族は、かつては光の側に属する亜人であった。
しかし、彼らの里が魔に襲撃され、多くが奴隷として連れ去られてのち、彼らの精神は闇の側へと傾いていくこととなる。
奴隷身分から脱したのちも、彼らは戦いと略奪を糧としてきた。
力こそが全てであり、誰よりも強いものを族長として従う彼らは、恐るべき戦闘部族として知られている。
今回のモンテリー・レオヴィル征略にあたって彼ら鉄底族は、魔王の勝利の後にはサンソー周辺にある坑道を部族の王国にしてよいという条件で従軍している。
再び自らの王国を持つことは、彼らの悲願でもあった。]
[わずかな休息を挟んだ後、鉄底族は再び進軍を開始する。
太陽が山の中へと沈み切り、東の空が群青色へと染まる頃合いだ。
鉄底族を先頭として、魔軍は再び動き出す。
地を這うような鼓の音が轟き、休んでいた魔がぞろりぞろりと集まる。
巨狼に乗って獲物を狩るオークの狼牙族、巨大蜘蛛を操り、闇に紛れて毒吹き矢で相手を殺すゴブリンの紫毒族など、昼には見なかった有力な氏族も加わっていた。]
[昼の戦いに劣らぬどころか、威容と異様を増した魔軍は、隠すそぶりもなくクレレットの橋を渡り始める。
彼らの足取りに迷いはない。
魔王の意思は明確だった。
"王の軍に抗った不遜な人間の陣を潰す"
斥候などなくとも、陣の位置は知れている。
そこに、
活躍という程のことは、まだしていない。漸く無抵抗のまま踏み躙られるのだけは避けられた、というだけだ。
[ 勝鬨をあげろ、と、鼓舞した時とは別人のように、僅かに苦さを含ませた声が静かに響く ]
居場所はない、か、何故そう思う?
それなら、魔王の元が、お前の居場所なのか?
[ 問いに問いを重ね、重ねてから、ふ、と息をついた ]
いや、違うな。お前に会ったら、俺を、助けて欲しいと、そう言おうと思ってたんだが。
先に言いたいことがあると、今気付いた。
[ 剣の柄から手を放し、男は胸に手を当てて一礼する ]
姉上の望みを叶えてくれてありがとう、ディーク。
本当は、俺が姉上に、いつか世界を見せてあげると約束していた。だが、兄上が亡くなって、その約束を叶えることは難しくなって...それをお前が代わりに...叶えてくれた。
感謝している。
[ 成長した後は父王と、兄に面影が似ていると言われる男だったが、微笑む表情だけは、時折姉姫を思わせる、と、以前に王には言われていた// ]
[偽りの苦しみに悶える人形を放り出し、魔王は立ち上がった。
前に歩み出て、己の軍を遠望する。]
ツィーア。
我も動くぞ。
[居城を動かす。
炯々たる瞳で闇夜を射抜き、魔王は命を発した。]
中に入っていいのかい? 助かるよ。
『これからどうしたらいいか困っていたから、とっても嬉しいわ』
[やはりヨセフを頼ろう計画で正解だったようだ。
双子はお互いに顔を見合わせて一度目配せしてから、
有難く優しいヨセフの懐に潜り込んでいった*]
[重低音と共に魔道兵器が立ち上がった。
突き並ぶ角に光が灯る。
翼なくとも、駆けるは狼牙にも劣りはしない。
脚の下で砕けた石畳は既に凱歌を奏でるよう。
望むままに、望むままに。
王の貫く闇夜よ、平伏せと]
[“目”の役目として、陣地の場所の詳細をまず報告し]
またヨセフに会ったんだ。
『彼も王国軍の陣地に居たの』
このまま様子を探ってみるね。
『潰しちゃうカボチャ頭も探すの』
[今はまだ仕込み段階。
お仕事の本番はこれからだ。
先生に誉められるためにも、双子は改めて気合を入れ直した*]
[魔王は時折、意識に双子の視界を重ねる。
映った場所は、どうやら人間どもが集まる場所のようだ。
彼らが会話交わす相手の名が、意識に留まる。
それと同時、ふたつの"声"が届いた。]
うまくやっているようだな。
そのまま続けろ。
良い報せを期待している。
[ほんの微か、
声とも言えぬ思念の揺らぎで双子の精神を撫でていった。]
[もちろん最初はディークに止められた。
でもユーリエが双子に加勢してくれたので――数の勝利!]
ねえ、どうせなら二手に別れてさ。
どっちが早く見つけるか勝負するのも楽しそうじゃないかい?
『ふふ、いいわね。
じゃあワタシとユーリエ。女の子チームよ』
[子供の遊戯の延長のように笑って、
長耳の少女はユーリエの華奢な手をとった]
/*
んふふ。
念話のタイミングが被って、あわてて修正したけどまだ対応しきれていなかったというね。
もうちょい追記だな。
なんか嬉しいよね。タイミング被り。
[一方の男子チーム。
仕方なく探している素振りのディークの気分転換になるようにと
長耳の少年は声を掛けた]
そういえばさ。
ディークはどうしてユーリエに同行しているんだい?
あは、やっぱりあれかな。
だいじなひとなのかな。
[ディークの反応は果たしてどうだったか。
まあ否定しても、照れちゃってーと取り合わなかったのだが]
[満天の星空を見上げて、
肺を闇で満たす深呼吸をひとつ]
……ボクらもねー、いるよ。 だいじなひと。
[それは月無し夜の戯れごと]
[マーティンが捕らわれたと聞いた時点で、ディークを魔軍に繋ぎ止める最後の柵もなくなっている。
だが、この地がディークにとって危険であることは変わらない。
その焦燥を知ってか知らずか、目の前の男は微笑む。>>193
会えて嬉しいと。
荒くれ者の世界では、それは相手を殴ろうとする者の台詞だが、ロー・シェンの場合は言葉どおりの意味だとわかっていた。]
君達は私の縁者だ、遠慮することは無い。
ここにある分にはなってしまうが、必要なものがあれば用意させよう。
遠慮なく言ってくれ。
[路頭に迷うところだったと言うのなら尚更のこと。
男は双子>>202を招き入れ、陣営内の一つの天幕へと案内した。
そこは避難して来た者達を一時的に待機させる場所。
いずれはモーザック砦へと移る者達が集まる場所だった]
休息する場合はここを使ってくれ。
着替えや食事は兵達に言えば用意してくれる。
多少不便はあるかもしれないが、そこは我慢してもらえるとありがたい。
[すまない、と一言添えて男はすまなそうに笑った**]
ねえディーク。
[翠髪を揺らしながら、少年はぴょいっと振り返る。
リズムをとるような軽やかな動きで自分を――そうしてディークを順に指差して]
だいじなひとのために何かできるって
とっても素敵なことだと思わないかい。
[だからボクもキミもしあわせだね、と嬉しそうに笑いかけた]
[「俺を、助けて欲しいと、そう言おうと思ってた」と剣の柄に手をかけたままで言ってのけた男は、その申し出を後回しにして、胸に手を当てて一礼する。
その唇から出たのは、丁重な礼の言葉だった。>>199]
…、 ハ!
今のはよかったな。 不意を打たれたぞ。
[ぎこちなく笑う。
ロー・シェンの代わりにユーリエに世界を見せてやろう、というのは誰にも打ち明けたことのない理由だったものを。この男には気づかれていたと知って、どこか切ないほどだ。
理解されることの、渇望。
まして、ユーリエの面影を宿すその表情に揺さぶられる。
もう、後ろに下がるのは止めていた。]
だいじなひとを置いていくなんて、まったく良くないよなあ。
『でもワタシたちはお仕事を果たせるわ』
まあそうなんだけどさ。
『それに、いいじゃない。“それ”があるでしょ』
勝手に売っちゃうから探すのに苦労したよね。
[それでも、努めて冷徹な視線でロー・シェンを見返す。]
さて…と、旧交を温めたところで、現実に戻ろうか。
殺した魔物も、殺された兵も、屍鬼になって戻って来る状況で戦い続けても、残るのは焦土だけだ。
おまえも王都アルテスをクレーターにしたくはなかろう。
おまえの首をとって帰れば、褒美に町のひとつくらいもらえる。
そこで、生き残りの人間でも集めて暮らすというのはどうかな。
おまえも無駄死ににはならない。
── そのために、死んでくれるか?
[それ以上のことができるのなら聞かせてみろと、言葉にはせず、求める。*]
[双子は豪華な鞘から刃を引き抜き、その銀色を星灯りに透かす]
『だいじなひとの短剣で刺すなんてロマンチックだわ』
最期に傍に居させてあげるボクらって優しいよね。
[病が大分進行してしまったお姫さまは、今は夢の中に沈んでいる。
起こしても良かったけれど、うるさくされても面倒だし、
眠ったままの方がきっとお互いに早く終わる]
じゃあね。さようならユーリエ。
『ばいばい』
[銀を胸に飲み込み、儚い星は堕ちてゆく――――…**]
/*
さて、明日のミッションはディークにどう絡むか…。
ロシェ居ないと拙くないかこれ(
明日の進み具合見てから考えようそうしよう。
― 橋北側 ―
[再度の進撃、その報を齎したものなんだったか。
いずれにせよ、進むというならばそれに従うのは常の事]
……次は、必ず獲る。
[そんな密やかな決意と共に、娘は戦支度を整える。
動いていれば、余計な事は考えなくて済むから、と。
……実際には、余計な事も考えなくてはならないかも知れないが、それはそれとして。**]
[動き出す
巨大な脚が大地を蹴り石畳を砕く振動も、玉座のある高みでは心地良い揺らぎだ。
魔王の眼差しは、正確に人間の陣へと向く。
闇の双子が"声"で告げた詳細な位置と、彼らの視界を覗き見た情報が、魔王に目指す場所を知らせる。
同時に、ひとつの名前ももたらされていた。]
ヨセフか。
モンテリーの、あの王の一族。
殺しつくしたと思ったが、まだ生き残りがいたか。
ツィーアの魔力が溜まりきらなかったのも、そのせいか?
───あいつらの"土産"も殺しそこねのうちか。
[ふふん、と鼻を鳴らす。]
ツィーアに喰わせても、バラバラでは効果は薄いか。
……そうだ。あの女、なにか言っていたな。
[記憶をたどり、検証し、
やがて良いことを思いついた顔で笑みを浮かべる。
呼びつけた配下に何かを命じたあとは、思考を行く手へと戻した]**
[モンテリーの王族、ヨセフ。
それを、好ましい餌の名の一つとして記録する。
動かなくなった人形は腹の内に納めていた。
チリン
拳ほどしかない核は、死を蓄えるいわばツィーアの心臓。
今は王自ら動くのだから、「歩き回れる」必要もない]
――
[遠望の群、川を渡る夜の魔軍。
王の居城もまた南を図り、]
― 夜襲 ―
[渡河作戦、など 必要ない。
鉄底族は弓兵の聖矢を弾き、騎兵を槍斧で蹴散らすのだから。
南岸の制圧、そのまま後方の陣を正確に指向する黒い威容]
[悲鳴のような鳥の羽撃き]
[屍鬼の群、黒に沈む鎧兵、巨狼の息遣い。
亜人のざわめき。
やがて人間達は闇夜にも見るだろう。
肉眼で望める距離に聳える「マルサンヌ砦を落とした攻城兵器」をも]**
俺の首を手土産に、か...それで、お前は笑って暮らせるようになるか?
[ 紡がれた不穏な台詞に目を細めながらも、男は、まだ剣に手をかけようとはしなかった ]
お前がそれほど、頭が悪いわけがない。
魔王が、人間を...それも戦う力を持った人間を道具として使うのは、レオヴィルを滅ぼしてしまうまでの間だけだ。
世界が魔に凌駕されて、人間と戦う必要がなくなれば、家畜として生きるしかない弱くて扱いやすい者だけを残して、貰った町ごと皆殺しにされるのがオチだぞ。
解っているんだろう?
[ 淡々と告げる声は、脅すでもなく、ただ目に見える未来を告げるだけのもの。未来を告げたというなら、ディークのそれ>>217も同様ではあるけれど ]
簡単にクレーターを量産出来るなら、恐らく俺達はもう、この世に居ない。
あの攻城兵器は、恐らく莫大な魔力か贄を必要としていると、俺は踏んでる。
だから、まだ、勝機はある。
俺は...人間は、まだ、諦めてはいない。
[ 強く金の瞳が輝く ]
ディーク、お前がレオヴィルの王族に、もう何の期待も関わりも持ちたく無いと言うなら、それは仕方の無い事と諦めよう。
だが、人を...人として生きる事を諦めないでくれ。きっと、姉上も、それを望んでる...というのは、狡い言い方かな。
[ くす、と笑って、男は漸く、剣を抜いた ]
どうしても、と、お前が望むなら、俺の首をかけて相手をしてもいい。
だが、簡単に命を差し出すわけにはいかん。
今の俺には、死ねない理由と、死にたく無いという意志がある。
[ 魔法も巧みに使うディークに、本気の一騎打ちで勝てた試しは、軍学校時代には無かった。それでも退く事はしない、と、男は笑みを浮かべたままで、剣を構える。
まるでかつて、鍛錬をしようと、懲りずに何度も学友と剣を合わせることを願った、その時のままの表情で// ]
/*
それ乱入しろって言ってねーかwww
いややっても良いけどな、けどな。
流石にいきなり斬りかかるほど大人気なくは無いと思うんだwwww
/*
勝てる気しねえ、となりながらも、
殲滅されない程度に負けるのがいいんだろうとは思うのよこんどの夜襲はね。で、どうやって殲滅されないようにするかというのが大問題...
城が川渡ってくるなら、西から回って挟撃は考えてもいいんかもね。あと援軍どうすっかなあ...復活後の方がまあ、熱い気はしてるけど。
俺が倒されて、魔王が降伏迫るために一度手を止める、でいけるなら、それでもいいんかの。しかしそこまで引っ張ると長い.........
[ 悩みつつ、寝る** ]
[ロー・シェンの主張を聞き、そこに狂信も悲壮感の欠片もないのを見て取った。]
地に足のついた男だ。
[そして、命をかけても惜しくない
そういう人間の光と熱は──ディークを惹きつけた。]
[ロー・シェンが剣を抜くのを見て、ディークは肩を竦める。
魔法のカードは装備しているが、剣の類は帯びていない。]
…面倒くさいな。
そういうのは、マーティン親分さんとやってくれ。
[口とは裏腹、策を繰り出すときの目で告げる。]
皆の前で、親分さんに勝ってみせろ。
あの人はわかりやすい。
おまえの力を認めれば、喜んでおまえに従う。
そうすれば、俺も荒くれ共もまとめておまえのものだ。
/*
おはようございます。
みらいのルビを見ると、こっちも何かがんばらなきゃいけないような使命感に襲われるボクです(
― 戦場 ―
[雑然として乱れていた戦場が、魔王の意の響くままに秩序を次第に取り戻していく>>30
シメオンの放った動く死体どもは、その多くを切り払われ、炎にまかれ、残ったゴーレムどもも引かず動いてあれば、やがて人間どもにより壊されるだろう。
視界が時折、明滅するかの如く閉じられていく。
死霊が聖なる矢をもって、払われていく。]
…────、
[そうした全てを、己が僕どもが失われていく様を、何の感慨も見せず魔将は見下ろしていた。
所詮は消耗品、幾らでも補充のきくものたちである。
ただひたすらに敵へと向かい、そのまま敵を巻き込み壊れてしまえばいい程のもの。その物惜しみのなさが、生きる者とはまるで異質なその進軍が、これまでヒトに脅威を与えてきたものだが。]
( …ご不快か。 )
[音とはせず笑む気配。魔の赤い瞳が、ちらとクレレットにある魔兵器の威容へと向けられる
。
かの退き鐘は魔王の意によるものだろう。
これまで圧倒的な力で踏み潰すを良しとしてきた魔王であれば、雑兵どもといえども魔軍が人間どもに押される様など、確かに不快な光景であるに違いない。
ばさりと、上空で闇の翼が弧を描く。]
( …ご不快か。 )
[魔の赤い瞳が、ちらとクレレットにある魔兵器の威容へと向けられる。かの退き鐘は魔王の意によるものだろう。
これまで圧倒的な力で踏み潰すを良しとしてきた魔王であれば、雑兵どもといえども魔軍が人間どもに押される様など、確かに不快な光景であるに違いない。
ばさりと、上空で闇の翼が弧を描く。]
― 回想/7年前 ―
へえ…。面白いものを持っている。
[唐突に頭上から響いた声。
それを娘はどんな風に聞いたろう。
魔は娘の反応にも動揺にも頓着せず、彼女の目前に降り立った。
ばさり。一瞬、闇色の翼が風を起こす。
娘の目前には、ヒトならざる赤い瞳が、楽し気に煌めいていた。]
ふうん?なるほど?
ははあ…そうか。お前、────「掛け合わせ」、か?
[遠くから見えたのは、かの大鎌の色…気配のみだった。
目に留めて降りてみれば、娘の纏う気配までが良く視える。
覚えのある気配だった。
武器と結び付ければ、一つの名前が記憶の中から浮かび上がる。]
レオンハルトの… 娘、ということか。
ははあ、なるほど………?
[自らの言葉に勝手に納得したように、魔は頷いた。
確かめるかの言葉は、返答を期待してはいない。
ただ魔はひどく楽し気な笑みを浮かべ、非力な獲物を見る目で彼女をじろじろと見つめた。く、く。と、喉の奥から笑みが零れる。]
ふ。娘、ねえ。
… く、く …… あっはっははははは!!!!
────素晴らしい!!
素晴らしいぞレオンハルト、
役に立たない僕と思っていたが、とんでもない!
いいモノを作ったじゃないか!
お前、半分は人間だな?そうだろう?くく…面白い。
下等生物との掛け合わせか、考えもしなかったぞ!
[一方的に捲し立てる。
シメオンの中で、もう彼女は自らのモノと決していた。
当然だろう。彼女の父が魔の僕であったから…ではない。
単に力弱い者は、力ある者に従うのが当然なのだ。]
聞け 深淵に蠢く夢魔どもよ
我は汝らに呼びかけ 汝らに力与える者なり
闇よ 帳を閉じて この者の精神を閉じ込めよ
夢よ、悪しき夢よ この者の記憶と成り代われ
昼は夜となれ 夜は昼となれ
我が瞳 我が息吹 我の言葉は汝を捕え操らん
──── 閉じよ!
[詠唱と共に闇の力が凝る。
魔の右の掌にあるは、自ら懲り固めた闇の魔石、それに呪を込め獲物の喉元に差し伸べる。
石が娘の柔肌に近づけば、石の邪悪はちりと醜く肌を焼いた。]
[ざわり。と木々が蠢く。
次の瞬間、黒い魔石は娘の首に首輪のように…飾りのように輝いていた。衝撃にくたりと娘が倒れようとも構いはしない。
殺してはいない。
ただ精神を封じ、忠実なる生き人形とした娘は、そののち暫くちょっとお気に入りの玩具となった。]
[その後、何度か「掛け合わせ」の再現を試してもみたのだ。
村を襲い、人間を攫い、魔のモノと一所に置いてみるなど試してみた。
だが、その試みは上手くいかなかった。
魔は人間を玩具か食料としか見做さなかったし、結局のところ人間を消費するだけで実験は飽きて終わった。
だからアイリは、唯一の成功例という貴重品だ。
貴重品ではあるが所詮は半ば人間、そのうちすぐ壊れるだろうと思ってた。だが予想に反して彼女はしぶとく生き延びた。
今では案外便利な、使える僕にすらなっている。まったく予想外だ。だが予想外だからこそ、面白くある──*]
― 我が"最後のもの" ―
["それ"を初めて目にしたときは心が沸き立った。
巨大で、精緻で、魔的な美を備えた力の象徴。
一度炉に火がくべられさえすれば全てを喰らいつくす、死と破壊の無限機関。
これが動くところを見たいと思った。
この力は己にこそふさわしいと感じた。
全てを消し去って、己と"それ"のみが空漠たる無の世界に立っているという想像は、官能的でさえあった。
しかしすべてが消えてしまえば、偉業を讃える者も力に恐怖する者もいなくなってしまう。
思案の末、魔神の業なるこれを己の手で飼いならすことにした。]
[炉の出力を絞り、回路を歪め、各所に重石を加えて力を分散させる。力の増幅器官を切り落とし、幾重にも封印を掛け、己の望む形に剪定していく。
複雑過ぎて、あるいは魔神の目を恐れて誰もやらなかったそれを、魔は熱心に行い、やり遂げた。
強大な力に自分の手綱を掛けていく作業は、実に楽しいものだった。
初めての贄には、目障りだった魔王を選んだ。
たいした力も覇気もないくせに、過去の栄光ばかりを振りかざす無能。
魔力だけは豊富だったから、餌にはちょうどいい。
甘言に乗せ、"それ"の前までおびき出し、殺した。
裏切ったなと罵る声はなによりも心地よかった。]
[目覚め、身じろいだ"それ"が、最初の光を吐き出す。
眩い一撃が城一つを消し去り、溶けた岩と金属の荒野に変える様は想像以上に美しかった。
手を打って喜び、"それ"の滑らかな肌を撫でて愛でる。]
おまえは佳い。期待通りだ。
これからも、幾度でも、おまえの力を見せてもらおう。
[新しい玩具を手にした顔で、嬉々として告げる。
丁度、面白そうな人間の国について知った頃だった。]
おまえは
我と共にある、最後のものだ。
[いつだかの折に、そう言ったことがある。
いずれこの世界に飽いたら、この終末機関に掛けた枷を全て取り払い、すべてをシンプルで美しい虚無に変えてしまおう。
ツィーアと口にするたび、そんな想像に胸躍らせている。]*
/*
ツィーア可愛い可愛い、というなにか。
なお、"Z"と名付けてみたのは最終兵器とかそういう気分からだったけれど、ツィーアってのは音の響きだけなので、特に意味はない。(ズギャーン
/*
タスクは積まないことにしている最近だけれども、忘れちゃいけないのでメモっておこうね。
・ロヴィンを楽しく魔改造するぞ☆
進軍中にやることでもないので、そのうちに。
/*
ロヴィンに関してはまだ多少悩んでるんだよね。
あんまりエグくしてもR:熱血から外れるし。
ぞんびー化はシメオンの専売特許だからやらないし。
記憶封印して、もアイリと被るし。
喋る生首とか送り付けても、単なる猟奇的嫌がらせだし。
/*
人間爆弾もさぁ。感傷的かつ感動的だけど、せいぜいが誰かに怪我させておしまいだよね。
やっぱり怪物化か、兵器に埋め込み型かなぁ。
怪物化なら、こいつもしかして、からのやっぱりおまえだったのか!コンボが美味しい。最後に元の姿に戻るとさらにおいしい。
埋め込み型なら、「助けておとうさん」でも「気にしないで斬って」でも、どっちもイイ!
こいつをね。
ミュスカの森の遺跡に配置するんだ♪
[進軍を続ける城塞の上で、魔王は意識を前へと投げる]
我はこれよりそこへ行く。
人間どもが逃げ散るようなら、共に行け。
おまえたちは我が人間どもに遣った毒だ。
内側より侵し腐らせ、無様に踊り狂わせてみせろ。
さぞ楽しい見ものだろう。
[機嫌のよさを映して、響く"声"は饒舌だ。]
/*
うーん、しかし魔王軍、割と時間開けずに来てるから...さてさて、どういう順番で宿題と課題片づけるか...
風呂入って考えようね**
[前方陣営に残る弓兵と歩兵、騎兵は応戦すべく魔軍に立ち向かう。
敵先陣である闇ドワーフへ聖水に浸した矢を射掛けるが、ことも無く弾かれてしまい。
射掛けられる矢を縫って接近した騎兵は巨大な槍斧に打ち落とされた>>225]
「歯が立たねぇ…!」
「おい……あれ……」
[じりじりと後退せざるを得なくなった兵達は、居並ぶ威容の奥に異様な建造物を見る]
「まさか、あれが────!」
[動く要塞、マルサンヌ砦を消した攻城兵器。
形容しがたいその姿に慄く兵達も少なくない。
前進を続ける魔軍に押されるように、王国軍の陣は削られながら後退し始めた*]
/*
時間稼ぎしてくれてる感じか、うん、傭兵さん達にも働いてもらう方がいいよな。
押し込まれるのは砦までかなあ。
なんだったら一度、魔導兵器発動してもいいよね。(え
─ セミヨン川 ─
[人間の壁を削り崩しながら前進する闇の波濤、魔軍を眼下に魔法兵器はクレレットの南へ抜け、直進した。
そこに橋は架かっていなかったが、道は魔王の示す先にのみあるもの。
轟、
川の流れを断ち、水底に沈む昼の残骸を踏み潰して]
[この兵器が死を喰らう法を知り得るものは少ない。
そこに屍を娯しむ魔将の赤い瞳があれば、視認しているのだろう。呼吸するかのように城砦の波動が揺らめくたび、斃れた生物のエネルギーを吸い寄せていく様を。
もっとも、ツィーアの方はシメオンの語る魂の云々や屍術の原理を欠片も理解できなかったし、どうやら彼の研究と競合することもある──死を喰らった後の骸は「状態の良い素体」ではなくなるらしい──理屈も、ツィーアの幅狭い好奇心の範疇ではなかった]*
[ 剣を収め、男は大きく息をつくと、にやりと笑った ]
その代わり、俺が勝ったら、お前も親分さんも、嫌ってほどこき使ってやるから覚悟しろよ。
[ ディークが、やってみせろと言うなら、それは、出来ると思っているからだ。ならば、してみせればいい。
ディークの信と、その知略を得て、更に兵力も増やせるというなら、痣のひとつふたつは、安いものだ ]
[ 魔軍がいつ動きだすか判らない現状、のんびりとしている暇はなかったから、その足で、ディークを連れて、男は、捕らえた傭兵達を縛り上げて繋いである場所に向かった。
見張りの兵に囲まれ、憮然として睨んでくる首領に、先刻ディークに向けたと同じ笑みをむける ]
マーティン・ドット。さっきは不意打ちされなきゃ、俺なんぞひと捻りだとか言ってたな?
その台詞、証明するチャンスをやるぜ。
「皇子!?何を...」
[ 慌てて駆け寄ってきた従者を、黙っていろと目顔で制止して、剣を手に盗賊の親玉に近付く ]
この参謀殿と賭けをした。俺がお前さんと一対一でやりあって勝てたら、こっちについてもいいってな。
もちろん、お前が勝ったら、ここから放してやる。
尤も、魔王のとこに戻るのはおすすめしかねるがね。
敵陣に潜入しておいて何もせず、何もされず、のこのこ戻って行ったら、スパイと疑われて動く死体の材料にされても文句は言えないぞ。
もちろん、これ以上、この陣で何かをしようとしたら、今度こそ、俺も容赦はしない。
[ その言葉を聞くと「てめえの首を取って行けば、充分土産になるだろうぜ」と剣呑な光を瞳に浮かべてマーティンは嘯いた ]
.........どっかで聞いた台詞だな。
[ ちら、とディークに視線を走らせ、しかし先刻口にしたような説得は試みず、男はマーティンの縄を切る ]
「おらああああっ!!」
[ 手足が自由になった途端、武器を求めるでもなく、マーティンは自分を自由にしたばかりの男に躍りかかった。そもそも武器など貸し与えられるとは思っていなかったのだろう ]
...!せっかちな野郎だな!ハゲは気が短いってのはほんとだったか?!
[ 辛うじて、太い腕に捕まるのは避けて、男は手にした剣をディークに向かって放る ]
預かっててくれ!
[ そうして始まったのは、文字通りの肉弾戦。親分がんばれ!とはやし立てる、縛られた元盗賊達と、皇子の蛮行を止めるに止められず、おろおろと周囲を囲む兵士たちの輪の中で、マーティンの拳が唸りを上げて、皇太子を何度か射程に捕らえ、しかし毎度紙一重の所で、男はくるりと身を翻してその痛打を躱す。
ローグの民の舞を見た事のある者なら、それが、彼等の得意とする、演武の動きと同じと気付いたろう。
ローグの舞は、打ち合わせも練習もしない。
ただ、気を合わせ、互いの気を読んで、技を交わし、更には心を交わすもの ]
さっきの、お返しだっ!
[ 男の舞に翻弄されて、足のふらつき始めたマーティンの腰に、男の鋭い蹴りが食い込んだ、それが仕合の最後だった ]
/*
マーティンがうっかり生存ルートに足を突っ込んでいる だと。
wwwwwwwwww
wwwwwwwwwwww がんばれ!!!w
「─── 将軍、前方から何かが」
何?
[見張りをしていた兵に声を掛けられ、男は示された方角を注視する。
舞い上がる土煙の根元、全速力で駆けて来る伝令馬が見えた。
それを見て何事かあったと察する]
伝令兵を集めろ。
「はっ!!」
[馬が到着するまでの間に、方々へと伝えるための伝令兵を集めた]
― 進撃 ―
[揃いの黒で身を鎧い、堅固な隊列を組んで鉄底族が進むさまは、名前の通りに鉄の大地が動くようであった。
彼らの歩みは遅い。
遅いが、止まることはない。
機械仕掛けのように正確な足取りで進み続ける。
いざとなれば馬に劣らぬ脚力をみせる狼牙族の巨狼も、今は悠然とした足取りで歩いている。
戦いの気配で興奮するような雑兵たるゴブリンどもも、先走った一匹が走り寄った巨狼の顎に捕らえられ幾度も地に叩きつけられるのを見てからは、大人しく進んでいた。]
急ぐことはないぞ、ツィーア。
[あらゆるものを踏み砕き、直進する魔法兵器の上で、魔王はゆったりと玉座に寛いでいた。]
存分に我が威容を見せつけ、人間どもを恐怖させればいい。
人間というものは、恐怖だけで勝手に自滅する。
[仮にその言葉通りになれば、興ざめだろう。
魔王は、言葉とは裏腹に期待もしていた。
昼間、あれ程に抵抗してみせた連中だ。
今回もまた楽しませてくれるだろう。]
[魔の軍勢は、死そのもののように進む。
向かってくる者があれば打ち払うが、離れるものは追わない。
いずれはすべてを等しく飲み込む。
そう思い知らせんとするかのような進軍だった。]*
「申し上げます!
魔軍がセミヨン川を越え進軍を開始!
現在前方陣営が交戦中!」
来たか…!
[伝えられたのは夜襲の報。
敵兵種は昼と異なり、闇ドワーフ、巨狼を繰るオーク、巨大蜘蛛を繰るゴブリンなど、魔の勢力の中でも有数の実力を持つ一団であることも伝えられた]
「加えて巨大な動く建造物のようなものも川を越えようとしています!」
まさか───動き出したか。
[次々と伝令兵が走り出す中、攻城兵器も動いていると聞き、男は拳を強く握る。
魔軍が野営陣だけでなく、その先も見据えて動いていることは明らかだった]
全軍に支度をさせろ。
皇太子には私が伝えておく。
[すぐさま迎撃に出なければなるまい。
そう考え出立の準備を指示する。
男もまた支度すべく、移動を開始した*]
ロシェ、魔軍が動いた。
セミヨン川を越えて進軍している。
前衛は交戦中だ。
[探すよりも早い、と。
コエでロー・シェンへと状況を伝達。
敵の兵種なども伝え、全軍に出立の準備をさせていることも伝えた]
どこに居る?
[一度合流せんと問いかける*]
はあ...やっぱり、強いな、親分。
そのくそ力、魔王なんかの奴隷として腐らせるのは、やっぱり惜しいぜ。
[ さすがに上がった息を整えながら、地響たてて、地面に大の字に倒れたマーティンに向かって男は笑いかける。
そうして、相手に手を貸して起き上がらせようと近付いた時 ]
...来ましたか。
[ 聞こえたコエに、ぐ、と拳を握る ]
俺は、捕らえた傭兵と...「話し合い」をしてました。
すぐ、そちらに行きます。すでに川を越えられたというなら、砦までの一時撤退も考えなければ。
「話し合い」?
[伝えられた内容に疑問を含むコエを返す。
自軍へ引き込む話なのであれば、やや難色を示してしまうのは致し方ないこと。
捕まえた連中はモンテリー国の地下牢から逃げ出した者達なのだ]
そうか…そうだな。
引くのもまた戦略、だが。
例の攻城兵器も動いているようだ。
何か手を打ちたいところなのだが…。
[果たして手段はあるのかどうか]
[ 届いたコエから、男が、魔王軍の動きを知ったと相前後して、陣営の動きも慌ただしくなり、急を告げる半鐘の音が響き渡る。瞬時に指揮官の顔に戻った男は、それでも盗賊の手を引いて半身を起こさせた ]
魔王軍が動いた。ここも、すぐに戦場になる。
[ 言葉は、傭兵達だけではなく、ディークに聞かせるためのものでもある ]
逃げるなら早く逃げろ。
[ 告げて、従者に命じ、捕らえた傭兵達全員の縄を解かせ、そのまま、背を向けてヨセフと合流するために陣営の表へと向かう ]
「親分、どうしますか?」
「あの...やっぱり、魔王軍に戻るんで?」
[ 魔王軍を迎え討つため、先刻までとは比べ物にならない喧噪に包まれた陣営の中心に、ぽつんと放置された傭兵達は、所在なげに、マーティンの周りに寄り集まってきたが ]
「.........馬鹿野郎っ!!今更逃げられるかっ!!」
[ 湯気の出そうな真っ赤な顔で、怒鳴り声を上げた頭目の様子に、うへえ、と、傭兵達は、一斉に首を竦めた** ]
[ 『お前の望むように』
セミヨンを後にして、南の岸にゆるり圧し上がりながら、尾のような構造物から水を跳ねた。
人間というものに恐怖という感情がどのような効果を持つのか、まだ理解しかねる。
身近においては、ヒトガタを作り直すと時折披露してみせる反応か──それが何なのかを理解しなくとも、
『恐怖しながら尚
…抗うを屈服させるのが面白い だろう』]
[学生時代に戻ったような口調で、ロー・シェンは提案を受け入れた。
皇太子になっても変わらぬその自由さを、ディークは愛した。
背を晒して平然と歩くロー・シェンの後についてゆく。]
背負う男になったな。
[以前から、抜きん出たものを持っていた男ではあるけれど。]
[塔の上で、黒竜が翼を空撃ちする。
我も動くぞ、と令した主の声をナールも無論聞いている>>200]
──
[ツィーアは幻獣に戯れるように彼の塔をわずかに撓ませ
た。
この黒竜のことは殊の外気に入っているらしい]*
[ 「話し合い」についての詳細を伝えるのはさすがに憚られた。多分放っておいても、後で従者か見ていた兵士から勝手に伝わるだろうと、半ば強引に見ない振りをして ]
攻城兵器が......
[ あれが動けば、少なくとも、ここに在る部隊の壊滅は避けられまい...だが ]
[ロー・シェンはマーティンの縄を解かせ、皆の前での勝負を挑んだ。]
ハゲって…、 火に油そそぐなような真似を。
[これは果たし合いではなく喧嘩だと、その一言で宣言してのけたようなもので、苦笑のうちにも感嘆する。
素手どおしでの闘いになると判断したロー・シェンは即座に皇太子の剣を放り投げ、ディークは一歩も動かず手を伸ばして受け取った。示し合わせたわけではないが呼吸はぴったりだ。]
[直後に肉体と肉体がぶつかり合い、皆は、わっと響めきたった。
学生時代も、ロー・シェンの周りにはいつも人が集まって楽しそうにしていた。
彼には、人を惹きつけるものがある。
それこそが──英雄たる資質。
ディークは預かった剣を肩に乗せて保持し、闘いを見守る態で、周囲をとりまく人々を観察した。
試合の行方を案じはしない。
ロー・シェンが負けるはずはないと、確信して言える。]
将軍...!
[ ヨセフの姿を目にして、男は足を速めた ]
魔王軍は、攻城兵器を先頭に、攻め寄せてきたんでしょうか?
[ その情報はあるか?と、問いかける。ディークはついてきていたかどうか。ついてきていたとしても、今は紹介の出来る状況ではなさそうだったが //]
[ロー・シェンの闘いは舞いのように力強さの中にも美しく、荒くれ者たちすら身を乗り出して惹きこまれてゆく。
猛禽のような蹴りが決まると、どっと歓声があがった。
ロー・シェンがマーティンの強さを讃えて、その身を引き起こす。
決着はついていた。 目に見える形でも、心の中でも。]
[だが、不意にロー・シェンは戦人の顔になって踵を返す。
敵が動いた、と。
ディークは、マーティンの傍らに身を屈めて、短く告げた。]
親分さん、こいつを預かっているんで、ちょっと行ってくる。
[皇太子の剣を見て、マーティンは、「遅れんな」と顎をしゃくった。
ディークは感謝の色を返し、ロー・シェンを追った。*]
[ツィーアの指摘に、くくと笑いを零す。]
人間は面白いな。
弱いくせに、たまに抗おうとする奴がいる。
そういうのが一匹いると、他の連中まで強気になる。
見ていて飽きない連中だ。
[亜人どもではこうはいかない。
まさに、抗ってくるのを屈服させるのが面白い、だ。]
[視界の端で、ナールが止まる塔が撓む。
翼を広げてバランスを取り、尖塔の先に首の後ろを擦り付けているのも見えた。
ナールもまた、己が見つけ、屈服させ、手懐けたものだ。
一度こちらを主と認めてからは、忠実な乗騎として働いている。
生を吸い、死をまき散らす。あれもお気に入りのひとつだ。]
……っ!
[ちり、と焼け付く感触が伝わる。
直後に感じたのは、息苦しさと重苦しさ]
や……だっ……。
たす……け…………おにぃ……。
[途切れがちの言葉は、木々のざわめきに飲まれて。
無意識、助けを求めた先の事も何もかも──それきり、淡い霞の向こうに閉ざされた]
[力による支配に崩れ落ちた後、再び目を覚ましてから。
娘は、これまでとは全く異なる在り方に疑問を抱く事もなく、当たり前のように、下される命を果たす日々を過ごすようになる。
半魔という点で、純粋な魔族にはどうしても劣る。
それでも、父から継いだ異界の魔戦士の血と、それによって生み出されし魔鎌はそれを十分に補っていた。
銀月の牙を振るい、赤紅翻して駆ける姿はいつか、人のみならず魔族にも恐れられるようになっていたけれど。
それを気にする機微もまた、霞の奥に捕らわれたまま──今に、至る。*]
/*
昨日あたりからずっとアイリと遊びたかったんだけど、クレステッドのこと避けてるって明言されてるしこちらが向こうを気に入る理由もないことに気づいた
― ** ―
[屍術、という。
忌まわしきその術の、出所を知る者はいるだろうか。
契機は5年前、魔王がクレステッドという希代のヒトガタを作り上げたことだ。5年前、魔王の命のままに僕たるアイリを、レオヴィルの皇太子を捕えるため差し向けた。
そのままアイリの如くに操るのかと思いきや、魔王カナン・ディ=ラーグは、魔将すらも思いもよらぬ方法で、見事な人形を作り上げた。
称賛の思いがある。
なればこそ、我が王よ。との思いもある。
それでも悔しさをも覚えるのは、シメオンが、殊の外そうした分野に秀でた者との自負を強く持っていたが為だろう。
何か、別の方法で別のものを。
常の如くに人界をまわり、見出したのがこの術だった。]
[その文書を見つけたのは、ミュスカの森の奥深く。
古くは修道院としての体裁を保っていたかと思われる建造物は既に遺跡と化していて、古びた石には微かにモンテリー王家の紋が読み取れるのみ、緑なす木々の合間にひっそりと蹲ってあるようだった。
そこにシメオンが訪れたのは、ただ気紛れによる偶然だった。
木々の合間に見えた遺跡に、或いは何か目新しい知識はないものかと、さほど期待もせずに立ち寄った。
そこで見出した文書は、古い、蘇生にまつわる試みだった。
元々は、ただ大切な者を死の淵から救わんとする試みであったのだろう。ひょっとすれば著者には、救いたい愛する者があったのやもしれぬ。
どうやら成功せず、日の目を見ることもなかったらしきその研究に、魔は好奇心を動かされた。シメオンが屍術の研究に熱心になりだしたのは、その後のことである。]
[余談だが、ミュスカの遺跡にその後立ち寄ったことはない。
既に用は済んだ。得るべきものは得た。
破壊衝動に支配されているわけでもなかったから、遺跡に手を付ける無駄もおかしていない。ただ少しばかり古びた文書が失われてあるだけだ。
その遺跡が真に守るもの。
それに、魔が気づくことはなかった。]
[ともあれ件の遺跡で見出した、元は人の子の考えた不完全なる術、祈りの術を、魔は昏い屍を僕とする術へと熱心に作り替えた。
人や魔や、幾らでも手に入る死体を使い───時には新たに作り出し、幾度か試して死体を「起き上がらせる」ことには成功した。
たが、彼らには知性というものが欠けていた。
ただ創造主の命のまま、他の生きとし生ける者へと向かう存在。
悪くなかったが、求めているのはこのようなものでなかった。
そうではない。魔王が見せた術は、こんな下等なものじゃない。]
[鮮度が重要かと、敢えて死にたてを用意するなどもした。
知性が失われている、記憶が失われているということは魂が失われているのだろう。そう考え、魔石を使って魂の定着を試みる試みることもした。
すると魂は少しの間留められたが、魔力に耐えかねた生身が今度は失われた。肉の身体を失った魂は正気を失い、青褪めた幽鬼となった。……これも違う。]
[ただ幾度かの失敗を経るうちに、気付いたこともある。
どうやら意志を強く持っているもの、何かの思いを強く持つもの、そうした者の魂は少し”持ち”が良いようだった。
それを魔は、品質が良い。と評価した。
モンテリー王の屍を魔王に願ったのは、モンテリー王の最後の願い>>0:157を耳にしたためである。自らの死と引き換えに、他の生を願う思い。その強さ。
伝え聞く、レオヴィル皇子の死にざま>>126にも重なるようだった。
なればこそ、王とその家族の屍をと魔王に願った。
結局手に入れられたのは、かの魔兵器に喰らわれた後の「抜け殻」であったから、王も王族も知性なきアンデッドと化しただけで終わった。]
これは…いいな。まるごとか、そうしよう。
ふ、それでお前たちは何を企んでいる。
褒美が欲しいならくれてやろう。
お前たちにしては、悪くない土産だ。
[機嫌よく双子に言いかければ、さて何と返ったか。
双子には気前良く褒美を弾んで、魔は女を手に入れた。女は既に絶望を悟っていただろう、なのに凛とした覚悟を決めた良い顔だった。]
『…あのね。ワタシたちも役に立ちたいの』
だから、何かできることがあれば言ってよ。
『ヨセフのためにがんばるわ』
ロヴィンのためにもね。
[長耳をぱたぱた揺らし、上目遣いに熱意を向ける。
…もっと情報を得るためには、護られる側だけじゃあ、ダメだから。
そうして双子は――次のお仕事に向かうヨセフを見送った*]
『どうか……お願いがございます。』
なんだ、言ってみろ。
[女の願いに、魔は寛大な態度で応じた。
女も、この場で願いを述べるむなしさを承知していただろう。だが、それでも。抵抗も能わず、逃げることも叶わぬ中で女は儚い願いを述べた。]
『私の命は差し上げます。どうなっても構いません。』
『けれど子どもたちを──…息子たちを、どうか……』
『どうかお助け下さいませ。お願いでございます。』
己の命を差し出しても、か。
ふ……どうなっても構わんのだな?
[非力な獲物を甚振るように魔が笑えば、女は身体を震わせて、それでもこくりと頷いた。]
『子どもらを、お助け頂けるなら──…』
………ふん。
[下らんことだとは思う。無意味だろうとの感想すら抱く。
だが、その願いには興味をひかれた。
かのモンテリー王の言葉にも似た、他者を案じる心に興味が動いた。
魔の口元が、にやりと弧を描く。]
良かろう。我はお前の子どもらに手出しせぬ。
[断言すると、目に見えて女の顔が、ほ。と緩んだ。
けれどそれも束の間、続く言葉で再び絶望へと突き落とす。]
…だが。
残念ながら、子どもらはここにはおらぬ。
つい先ほど魔王様に献上されてな。
[女の顔が恐怖に歪む。
それを、ごく面白いもののように魔の瞳が覗き込んだ。]
く、くく。
無事に戻れば、我は約定通りに手出しはせんよ。
その目で確かめてみるがいい。
無論それを、お前が見ることが叶えば。な───…
[ざくり。と、何の前触れもなく女の腹に刃が突き立てられる。
女の瞳は、絶望の色を浮かべたまま宙に凍り付いた。
首を裂くのは良くない。どうにも見た目が宜しくない。
死体の首から上が、歩く都度かくかくする。
だから傷つけるのは胸よりも下がいい。
そうして確実に死を、さりとて素早すぎぬ程の緩やかな死を。
残念ながら、子どもらはここにはおらぬ。
つい先ほど魔王様に献上されてな。
[女の顔が恐怖に歪む。
それを、ごく面白いもののように魔の瞳が覗き込んだ。]
く、くく。
無事に戻れば、我は約定通りに手出しはせんよ。
その目で確かめてみるがいい。
無論それを、お前が見ることが叶えば。な───…
[ざくり。と、何の前触れもなく女の腹に刃が突き立てられる。
女の瞳は、絶望の色を浮かべたまま宙に凍り付いた。
首を裂くのは良くない。どうにも見た目が宜しくない。
死体の首から上が、歩く都度かくかくする。
だから傷つけるのは胸よりも下がいい。
そうして確実に死を、さりとて素早すぎぬ程の緩やかな死を。]
………見たくば足掻くが良い。
強く生を願ってみせるがいい……
[耳に囁きを吹き入れる。
事切れる前に女の唇が動いて、子と、もう一つの名を呼んだ。
……ヨセフ様。と呼んだのは、かのモンテリーの王族の名か。
悪くない。魔は再び小さな笑みを浮かべた。]
[早足に通り抜けながらも、使えるものを頭に入れてゆく。
と、ロー・シェンは今ひとりの将官と合流した。
モンテリーの王弟。親しいはずもないが、存じ上げてはいる。
再会の間隔からすれば、ロー・シェンとよりもっと近くすらあるのだ。
彼が浮かべた表情を見て、把握されたと察した。
避ける色はみせず、会釈だけしておく。]
聞け 闇に彷徨い出し魂よ
我は汝を 死の楔より解き放つ者なり
我は汝に 永劫なる生を与える者なり
我は汝をとらえ 再び放つ者
暗黒の神の加護を 希う者なり
我は我が生の力をもって
永劫の安寧と苦痛を 汝に授けん
………応じよ。我が屍なる僕よ。
[ ヨセフの答えに、そうですか、と、頷く ]
話によれば、アレは、殲滅兵器...前に在るもの全てを消滅させるものだと聞きました。
ならば、使う時は前に出て来る筈だ。
大軍団を用意しておいて、それを諸共に消滅させる程、魔王も暇ではない...と信じたいとこですが。
[ 相手が人間ならば、それはほぼ確実視していい話。けれど、相手は魔王だ。正直何を考えているかは、判らないから、言葉尻は曖昧になった ]
/*
自分で、「使って良いよ!」ってぶん投げてたから仕方ないけど、予想以上に使われてて色々忙しくなる気しかしないw
私の家族がどうなるのか楽しみすぎる←
/*
そういやこの魔王、なんだかわりと肉弾戦特化みたいな気分でいたけれども、何か遠距離攻撃あった方がいいかな。
その方が自分で砦を攻撃したくなった時に、かっこいいよね。
ちょっと考えておこう。
攻城兵器については一時置こう。
今は手強いと連絡を受けている軍団をどう相手取るか、だ。
硬さと膂力を持つ闇ドワーフと、機動力のあるオークのウルフライダー。
巨大蜘蛛を操るゴブリンもいる。
どれも一筋縄ではいかない。
策を弄するにも、砦へ退避するにも抑える部隊は必要だ。
前線部隊だけでは持つまい。
私が出よう。
[昼の時のように前へ出ることを進言する*]
[ 話しながら、ヨセフの視線がディークを捉え、表情が変わるのを見る。対するディークは相も変わらず会釈などして涼しい顔だ ]
あ...ああ、ディーク。剣を預かってくれてたんだったな、すまん。
[ やっぱり説明は難しいなと思いながら、彼の持って来ていた剣に気付いて、礼を告げ、受け取ろうとする。
わざと親しげな口調を使ったのは、多分ディークには気付かれただろう ]
/*
もうすぐ更新ですな。
うむ。野球やろうぜ、はよくわかる。
……が、立場を変えて逆も何回かやったことがあるから、あまり強くは言えない魔王……
/*
魔軍の皆さんが色々仕掛けてるから、ヨセフは前に出てもらうべきなんだろうかねー。
向こうの考えてるタイミングはここなのかどうか?
/*
ヨセフ・トネール・ド・モンテリー(36)(※RKヨセフ)
モンテリー王(※薔薇の下テオドール・40代後半)の王弟であり、軍を束ねる将軍の一人。
最前線であるマルサンヌ砦で指揮官をしていた。
王の名代として各地視察や隣国訪問をすることが多い。
同い年で貴族出身の妻(※C&Dヴェルザンディ)と2人の息子(長男(※薔薇下ロヴィン)15歳・次男(ベルティス)8ヶ月)が居る(砦崩壊時は王都に居住)。
長男の乗馬訓練の際、長男が騎乗していた馬が暴走、森に迷い込んだ時にシャドウに助けられ、以降屋敷に招くなど交流がある。
ロードの兄とは親友。
装備:クレイモア、プレートメイル
(魔法なしの物理型、騎馬可)
ロード:隣国皇太子。稽古をつけたりと親睦がある。
シャドウ:長男の友。長男を助けてくれた恩がある。
にしても先生がご機嫌ってことは
『お城がうごいているのね、きっと』
あーあ、ボクらも見たかったなあ。
『もう少し待てば此処にくるわ。もうすぐよ』
そうだねローズマリー。
[そろそろ夜の――魔の時間だ。
ニンゲンは今度はどんな風に慌てふためくだろうかと
そんな想像をするのも楽しかった]
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