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戦いはいよいよ現実のものとなった。
吹き上がる戦火は、人々に選択を迫る。
自ら望んで戦いに身を投じるもの。
守るもののため、武器を手にするもの。
才覚一つで、戦乱の時を乗り越えようとするもの。
戦火に紛れ、己の目的を果たそうとするもの。
戦いを見守り、あるいは止めようとするもの。
己の思惑を果たせるのは誰か。
思いの剣が交錯する先へ、歴史は進む。
どうやらこの中には、村人が13名、人狼が1名いるようだ。
語り手 が「時間を進める」を選択しました
― 温室 ―
[約束した通り、未だ陽の気配の遠いうちに屋内へと戻ろうと足を踏み出す。]
………あ
[が、膝が崩れる。
呼気は荒い。植栽の縁を飾るブロックに凭れると、ゆっくり深呼吸を繰り返す。]
………、
[銀の吸血鬼に奪われた分、例え狂ったとしても暴れるだけの力すらないようだった。
焼付くような喉の渇き―――否、最早痛みと呼んでも良いようなそれに、喉を掻きむしるように抑えた]
[吸血鬼評議会は、バランのチャイルドに罪はないとし、正しい教育を与えて吸血鬼社会の一員とすべく、マスターたちに預けることを決定した。
その組み合わせは以下のとおりと告げられる。
注) 本名ではない設定の人もいるけど、デフォルト名にて掲載しています。
エレオノーレには、アイリ。
クレステッドには、ファミル。
コンラートには、ディーク。
ステファンには、ダーフィト。
トールには、アレクシス。
ロー・シェンには、レト。
闇の世界の貴族たる吸血鬼一門に相応しく教育がされているか、評議会に背かぬよう躾けられているか、後で試験もあるとのことだ。
下手な振る舞いはマスターの威信を損なうことにもなりかねない。
さあ、血のつながらぬ者同士、新しい関係を築いてゆこう。]
― ホール ― >>1:573
[エレオノーレに向いていた目が、一度瞬いた。]
ああ、いる。
それを?
[予想とは違う相手を口に出され、暫し記憶をさまよったのちに肯定する。
彼を引き取るつもりかと確認を投げた。]
― ホール ―
うん。
[よもや真祖の君の手付とは知らず、執行人に頷く。>>3
そして、程近くで口を閉ざす娘を見遣り>>1:574]
僕の友人は……まあ、少々、玉に瑕な所もあるが、
あの様子であれば、悪いようにはしないと思う。
たぶん。
[しかし、己の思考を明かす訳でもない]
― 自室から ―
[目覚めた男は、着の身着のままだった服をベッドに脱ぎ捨て、別のスーツに身を包むのだが――…
硬い床に寝ていたせいだろう肩周りが痛むため、ジャケットはクローゼットへ戻し、上はシャツにウェストコートという幾分か楽な格好へと。
着替え終えても、瞼は重く、何か眠気覚ましになるものをと、部屋の扉を開けるだろう。
決定が出たとの連絡>>2は、そんなタイミングで男のもとへ。]
― 浴場―
[湯に浸かっていた幼子の掌は、人間のように温かい。
見詰める瞳に鮮血に似た緋のいろと、そこに宿る確かな自我と知性の光を認め。
いっそまっすぐに、無心に覗き込むのは、彼の求めるものの鏡像にならんとする心性。]
僕はコンラート。
ここは、僕の知り合いの所有する城館。
……でも君の知りたいのは、そういうことではないね?
― 屋上庭園・洞窟 ―
[噂にある我が子と比べられている>>0:566とは思っていない。
それゆえ、渇きを助長する言葉を口にすることも控えはしない。
リクエストを聞いたことから、彼は聴衆に聞かせることを生業をするものであろうと辺りをつけていたため、好きにせよ。といった。
そしてしばし楽師が奏でるリュートの音の奔流に身を任せる]
[言葉は理解できたわけではないが、思いは伝わる。
そういうものだと聞くし、自身もそうだと思っている]
壁に与える音の使いかたを理解しているな。
だがまだそれを使いこなせているようではない。
[他にも色々と、予想通り口うるさく賛否を述べた後]
己を磨くがよい、望むままにな。その時また我に聞かせよ。
[概ね文句はない。という態で観客は批評を終えた]
― 自室から ―
……ダーフィトって誰だろう
[ぽつりと呟いた言葉に、件の話>>2を持ってきた使用人は目を丸くした。
コイントスの結果なのだ、知るわけもない。そもそも、バランの血子に関しては、名前を知ってるものなど一人もいないのだ。]
あ、うん、まあ、向かうよ。
[取り繕いにもならない取り繕いをしたならば、何人かはホールにいるのではないかと……
男はそちらへ足を向けるのだった。]
[エレオノーレの頷きを受けて、いくらか視線が彷徨った。
珍しくも軽く躊躇ったのち、小さな溜息までつく。]
あれ、は真祖が持ち帰ったものだ。
評議会が面倒を避ける可能性は高い。
要望は出しておくが。
[自分のものであると主張しているなら、評議会も真祖を無駄に刺激してまで引き離すことはしないだろう。
予測を口にしたうえで、希望を出すまでなら自由だと指摘する。]
ー 浴場 ―
[翠が持つ透明に、困惑を深める。
身の内に滾るはずの激しい怒りも、絶望も、今はただ空白。
そこを埋めていた血親の呪いが去ったことは、理解していた。
その絆の断絶が意味するのは、]
〔あいつ、は 死んだ ?〕
俺に
何を命令する?
[まだ終わらないのだろうかと、知りたくはない問いを]
[フードの下でとても渋い顔をした。
色々解り過ぎる。>>10]
――そう。
[相槌と共に、似たような嘆息。
端的に、赤子の養育に向いておいでとも思い難いのだが]
解っているよ、僕の勝手だからね。
あの方が何か仰ったら、君は言われたままを書いただけだと、
そう答えてくれれば構わない。
[謝礼をといわれれば純金の延べ棒でも銅貨のように渡してしまっていたがそれはともかく。]
ふむ…詩か……。
[赤子からの思わぬ提案>>11に僅かに目を細める]
………実は我はな。
それでも問題にならぬというならば、戯れにつくってもよいかもしれぬ。
[犬畜生に堕ちればその限りではなくとも、赤子が成長する様は見ていて悪いものではない。]
夜もじきに明ける。屋内へと戻るがよい。次なる邂逅の折、腕を下げていれば容赦はせぬぞ。
[最後にそう投げかけると、夜より昏い闇のマントを翻し、洞窟を後にした]
……血を飲むのが怖い…。
[アレクシスの言葉を自らの口で繰り返せば、
自分もかつては人だったのに、血を飲む事に対して何の躊躇いもない事実に気が付き、自嘲に目を伏せる。]
…血を飲んで、何を失うが怖いのかな?
[アレクシスの頬に触れようと、指先を伸ばして問いかける。]
飲むのも飲まないのも、
君の意志に任せるよ、アレクシス…。
でも――
[その頬を捕らえることが出来たなら、指の腹でかすめるように撫で]
―浴場―
ここに君を傷つけるものはいない、
と言った筈だよ。
[あかがねいろの頭を僅かに傾ける。
湿気を帯びた髪の先から滴が落ちて、湯に波紋を作った。]
僕は、君の意に反して何かを命じることはしない。
僕の大切にしているものを害しようとしない限りは。
[感想も、似たようなものだろう。>>14
もっとも、一度自分のものとみなしたものには愛着めいたものを示すと見ている。
迷惑な話だが。
真祖についての評を口にすることはなく、ただ承知したと頷く。]
[去りゆく娘へは、半瞬ほど視線を置いた。>>12
彼女がどのマスターの元へ行くのだろうかと少し考える。
だが結局は評議会の決定しだいだ。
彼女とエレオノーレが同じ人物について語っているのは察したが、そこを深く聞く気はなかった。]
ん、……
[この娘も、ディークの行く末が気がかりならば――と、
過ぎる思考は表に浮かばないまま>>12]
恐らく、君が懸念するようなことは起きない。
[良くも悪くも。]
良縁のある事を祈るよ。
[言葉と共に見送った。今は、未だ]
君が消えてしまうのは…、とても悲しい…。
[この青年が陽光の中に消えてしまう光景を脳裏に描けば、辛そうに目を細める。
指先がすべり顎を捕らえれば、その形の良い唇を指の腹でなぞる――]
― 廊下 ―
[散歩中の蛇を探し、回収した後、屋上庭園から戻る途中、使用人の一人が現れた。
礼を逸さずに、此度のバランのチャイルドたちについての大よそ予想通りの結論を聞いたが>>2]
我がか。
[睨みつけるように目を細める。チャイルドを引き取るという考えはあまりもっていなかった。
その裏側には、概ねロー・シェン>>10のいうような思惑が働いていたが当人が無自覚なのはここでも同じだ。]
そこまで我に手間を取らせる。そう判断したととればよいのだな。
[そんな配慮であったはずが、怒気に触れた使用人はとても不幸であった]
[ホールで色々言われている>>14>>22とは知らぬが、新しい契約を結ぶものが誰であれ気にはしない。
この世の須らく欲するものは己のものである。
だが名代の一つぐらいならばくれてやる寛大さは持っている。但し犬畜生な真似をすれば須らく滅びを贈られるが――]
まあよい。
[その言葉に逃げるように去る使用人を見送ることもなく、供物の気配の場所へと向かった]
― →温室 ―
― ホールへと向かうまで ―
ダーフィト、少なくとも女性じゃなさげなのは安心かな。
[仕事部屋は吸血鬼にとって危険なものが多いのだが、居住スペースの方はというと……これも生活するには少々問題がある。
面白そうだからと目新しい機械製品を入手して
面白そうだからと見たこともない言語の石版を入手して
面白そうだからと怪しげな魔導書を入手して
面白そうだからと……
まあ、こまめに掃除してるとはいえ、それでも部屋のスペースの大半を占める趣味品と、漂うインクと油臭は、女性が寝泊まりするには少々どころではなく酷だろう]
まあ、まずはもう一人分眠れるスペース作らなきゃだね…
[そんなことを呟きながら歩けば、ホールへと着くだろうか。]
約束の報酬もらってないんだけどー?
[悪気はなさそうだったから、そのうち、思い出したらくれるんじゃないかなという気がして、追いかけまではしなかった。]
しばらく、この城館にいろって言われてるしな…
[立ち上がろうとして、喉を抑えて咳き込む。
空咳。冷たい汗。]
― 温室 ―
ほう、我に礼儀をわきまえるだけの知恵をつけたようだな。供物。
[ブロックにもたれかかれ膝を着く>>1供物の姿に声をかけるが嘲る様子はなりを潜める]
……血は飲んだのか?
[喉を抑え、飢えを抑えようとしてる姿をみて問いかけた]
じきに夜明けかあ。
[今になって、眠気のようなものも感じる。
戻った方がよさそうだ。
少なくとも、ここにひとり残って耐えるよりは。
奇岩に手をつき、リュートを手に立ち上がった。**]
[ちなみに楽士>>32への報酬については、手元にないため今は渡すことは叶わなかっただけであり、使用人を通して桃が届けられるのは、少し後のこと]
― ホール ―
[ホールに着けば、使用人に珈琲を淹れるよう頼む。
そして一息つきながら、周りにいる者達へダーフィトなる人物の居場所を尋ねるだろう。]
/*
エ「ファミルさんを僕に下さい」
ク「我のものに手を出すことは許さん。(力強くガード」フ「真祖様……(きゅん」
的な展開は駄目ですかそうですか
*/
[エレオノーレへ承諾を返した>>22 後は、仕事の残りを片付けに掛かることだろう。
目算通りならば、仕事は夜明け過ぎまでかかるだろう。
さっさと終わらせたいものだ、と内心で呟いた**]
[気が付けば、また彼と離れがたくなりかけていて、
慌てて手を離した。]
ともかく…若い命を終えてしまうのは、とても勿体ないと思うんだ。
[わざとらしく咳払いした後、同族としての年長者らしく、姿勢を正して言い直す。]
俺たちは不死に近いけど、不死身じゃない。
アレクシス…、死ぬことはいつでも選択できる…。
[だから、出来れば――。
新しい命を生きてみて欲しいと、続けて。
部屋を後にしようと踵を返す。]
[吸血鬼社会を牛耳る評議会や、討伐戦の詳細を説明しなかったのは、まずは血親の虐待で致命的な傷を負ったディークの心の安定を優先したからだった。]
何故?
どうして分からないと思うの。
[視線を外した隙突くようにすいと身を寄せ]
僕の愛し児たち。
僕の友人。
僕の側にいる人間。
[花開く笑み]
そうか、手のかかるやつだ。
[うずくまり顔を伏せる供物>>41に対してかがみ込み、親指に牙をあてて血を出すと、顎を掴み、上向きにさせて、血がでる親指を口の中へと突っ込み舌へとなすりつけた]
もう、人ではないけれど――
それでも、"俺達"がこうして出会えたのは運命だったんじゃないかな――って、思うんだ。
[『俺達』という言葉に、討伐に参加した同士もバランの遺児達も全てを含めて。]
…おやすみ、アレクシス。
良い養親に出会えるといいね。
[最後にそう微笑んで、部屋を後にした。]
[執行人が本格的に事後処理をまとめ始める段になれば、
礼を述べてその場を辞した。
誰を養子として迎えるにしろ、帰れば自領にも準備が要る。
そもそも養子を迎える事すら、部下達はまだ知らぬのだ。
連絡を取るために幾らかの雑事を片付けると、
評議会の決定を待つべく、再びの休息に入り。]
[――やがての宣下に、ほんの微か眉を揺らしたのだった>>2]
………ッ!!
[口の中に一気に広がる濃厚な薫りと、味蕾に触れるえも言われぬ甘美な味にびくりと震える。
貪るように吸いたてるような所作を見せたのは一瞬。]
………か、はッ!!
[強引に、引きはがすようにして頭を離し、舌に擦りつけられた血を石畳に吐き出す。]
はぁ…はぁ…はぁ……なにを…
[相手を必死の形相で睨みつけた後、駄々をこねるように首を振った。]
なぜ?それは、
[身を寄せる青年の動きで水面が静かに波立つ。
華奢にさえ見える身体]
愛し児──人間
〔大切にしているもの?〕
[綻ぶ笑みは慈愛。
だけど、何故? それは]
[コンラートは、その永い無為な生を存続させる理由を、他者に寄り添い、その希求するものに成り代わることで得てきた。
渇望を抱く者、欠落を抱えた者を探り当てる嗅覚は、殆ど本能に近い。
今、ディークに執着するのも、無意識に彼の空白を己が存在で埋めたいと欲望するが故。]
[しっかりと舌に着けた吸いたてる動作の後。手を離し指を口の中から抜くと]
……フン。まだ理解していないか。
[睨みつけ首を振る供物>>47の頭を掴む]
貴様に選択はない。我が望んだ。それが全てだ。
そして喜べ、どうやら我が貴様を育てることになったようだぞ。
栄に浴して、我を頼り奉るのがこれからの貴様の役割だ。血飲み子。
[供物から、血飲み子へと呼びかたを変えながら、掴んだ頭を石畳に押し付け、血の場所に口をなすりつけるようにした]
…おかしい
[声が強張る。
ほとんど明るい錆色に戻った目許が歪み]
そんなの そんなこと
[ 『オレのものだ』
嘲笑と、服従を強いる傲岸な声と、死を願わずにいられないほどの痛みが甦る]
あいつ──お前達、は…っ
[呻いた。
頭痛の強さに歯を食いしばれば、鋭い牙が傷つけた唇に苦い血の味]
― 決定の下りて後 ―
では、迎えに行くよ。彼女は今どこかな。
[黒衣のフードを被り直し、傍仕えに問う。
小間使いが知らずとも、許された行動は城内のみだ。
訪ね歩けばやがて見つかるだろうと、足音は微か*]
アレク――……
[部屋を辞する直前、投げかけられた問いに言葉を詰まらせる。
もちろん、評議会から文句を言われるからではない。
そしてなぜ、こんなにもこの青年が気になるのか――答えに気づいてしまった。
しかしまだ発表前の今、此処で彼に告げる事など出来ない。]
……ッどういう……ッ
[ことだ、という言葉を継ぐことは叶わなかった。
頭を掴まれ、石畳の己が吐いたものに口を押し付けられるなど屈辱以外の何物でもない。]
………はっ…
[だが、極限に達していた飢えはとうとう理性を超え。
ぴちゃ、ぴちゃり、と
ざらついた石畳に舌が傷つき、己の血の味までがしても最早止めることは叶わず。]
ぅ……
[しかし、確かに、その血が己の渇きに効くことを自覚せざるをえないほどの変化を感じた。]
[呻きに混乱だけでない苦痛の色を見出し、眉を顰めた。
両腕を彼の背に回し、抱き締めようと試みる。
血を与えた時に、怯える幼子を宥め鎮めた抱擁を、もう一度試そうと言うのだ。]
[屋上に広がる庭園の奥に、人の手が組上げたらしき岩窟を見つけ、闇の奥へと歩を進める。
ここならば、監視の目は届きにくいだろう。
“その時”を迎える際には、役立つかも知れない]
――……、
[久しぶりに独りきりだと、ふと気付く。
腰掛けるために誂えたような平たい石に腰を下ろし、
立てた膝に俯せる]
最初からそうしておればよいのだ血飲み子
[地におちたそれをなめる様>>55に満足げに目を細め、血をなくすまで取り払ったところで、頭から手を離し]
どうもこうもない。我が新たな貴様の主になった。それだけだ。光栄であろう。
さて、血飲み子がこれから覚えることは…我を倣いそして、頼り敬い奉れ。以上だ。
[こうして口頭での教育は終えた]
……は、
[飲んだ、と言っても、舐めたと同義程の僅かな量。
渇きが癒えたわけではないが、それでも、意識が戻る程度には回復した。
立ち上がるまではできぬまま、それでも頭を上げ、相手を茫然と見上げて怪訝な顔をした。]
ちのみご…?
主…?
はっ…何を勝手なことを…冗談じゃ…ない…!
血飲み子。意志を問うているのではない。決定を我は言っているのだ。あれも嫌だこれも嫌だというのは赤子の特権故許すが、決めるのは我だ。
[文句など端から聞く気はない>>60と告げる]
くだらぬ殉死に浸り魂を萎えさせるぐらいならば我の命を聞く気骨を作り上げよ。
まずは血を飲み、生きる糧を口にすることから覚えよ。血飲み子
[視線の先、豪奢なテーブルの上にはトールが残したワインの瓶。それを見遣るのと同じ頃、恐らくは手配されたのだろう
ワイングラスとデカンタが運ばれ、段取りが成された。]
――――……ぅ、ぁ…
[ワインとは違う、微かだが確かに気を惹く香りが鼻腔を擽る。
一体に何の血が混ざっていると言っていたか、それも今は
気にすることも出来なくて]
[小間使い達が部屋を辞した後、泣きながらワインを呷る
青年が居た。
その表情は、喜びに満ちてもいて
悲しみに歪んでもいるようでもあった。]
― 屋上庭園 ―
[いつの刻限だったか、少なくとも日中でない時刻。
風が外套を揺らし、手入れされた花や木の間を歩き抜ける。
魔力の気配が微かに漂う人工窟に踏み入った]
……ああ、ここに居たね。
[姿を見止める微かな声だけ零すと、
娘が座り込む斜向かいに腰を下ろした。>>57]
………ッ誰が赤子だッ…
[里子、と言う言葉を思い出して、何となく事態を飲み込む。
よりにもよってこの男に、己は里子に出されたらしい。]
……………っ
[反抗心を隠すこともなく、唇を引き結ぶと顔を背ける。]
/*
マスターから「グラスとデカンタが〜」とお聞きして
いましたのでそっと出し。
デカンタってなんぞ?と思っていましたが、なるほど
そんな効果があったのですね…(使い方のページ見てる)
また一つ勉強になりました!(パァァ
……ぁ、
[甘やかな香りを匂い立たせる腕から、緩慢に離れる]
ごめん なさ
ちが、
[首を振る。
否定の意思を伝える言葉が出て来ずに、違うと繰り返した]
貴様だ。血飲み子。
[端的に、だが何度でも告げ。唇を引き結ぶのをみてとり]
しかしひどく汚れているな。
[自分がやった行為など知らず、血飲み子の姿を一瞥すれば、ふわりと浮遊し]
まったく、泥遊びが好きなど、赤子そのものではないか。
[呆れたようにいいながら、赤子を浮遊させ自身の後をおわせながら、温室より離れ、向かうのは用意されているという部屋]
― 私室 ―
[室内には豪華な装飾や家具などが配置され、テーブルの上にはフルーツが盛られワインセラーまで完備されている。専属の使用人に一つ命を下した後、部屋を軽く見回して]
ふん、まあよかろう。
[不満げに一瞬唇を歪めた後、浮遊して連れてきた血飲み子を見やり目を細めれば、明かるい部屋の中で、ひとりでに血飲み子の服が脱がされていく]
― ホール→書庫 ―
[9(10x1)杯目の珈琲を飲み終えても、ホールに待ち人は現れず。
しかし、ダーフィトなる人物の人相を聞くことはできた。
それが彼女の孫であることを理解したならば、使用人へと言伝を頼み、男は書庫へと向かうことにした。
彼女の孫をどう育てるか、方針の模索の為である。
張り切るに張り切っているその様子には、やはりダーフィトの心情を考慮する様子は見えない。]
― 温室→私室 ―
誰のせいだと…っちょ、うわっ…!?
[抗議や文句、否、多分自分が何を言ったところで相手は聞いちゃいないのだと早々に理解する。
浮かされたまま連れてこられた部屋で、今度はよくわからない方法で服を脱がされた。]
ちょ、まっ、ぅあ!?
[矢張り抗うことが叶うわけもなく、ほっそりとした華奢な体つきと白い肌は露わにされた。]
なにをっ!なにをするッ!?
説明をしろ説明を!!!!
そう。それじゃ、希望は通らなかったのね。
[残念ね、と呟き、ドレスの裾を押さえ立ち上がる。
上げた顔は穏やかに、頬にかかる髪を指先で払う]
――それで、ディークは?
無事に、彼…、あなたのご友人に決まったのかしら。
[そうして、ふと思い出したように]
…貴方も大変でしょうね、厄介事を任されて。
お互いに、望んでの事ではないでしょう。
お手を煩わせる事のないよう心掛ける心算よ、“マスター”
[養い親を見下ろし、感慨もなく服従の証を口にする]
―城館・自室 ―
[用意された執務室に入るなり、椅子に腰を下ろすが。
机に肘をついて両目を閉じた後すぐに立ち上がる。]
養子……、養子か…。
[自分がまだマスターとしては経験的に浅い事は重々、承知している。
いや、だからこそ悩んでいた。
今まで禁を犯した不埒な同族を討つことはあっても。
まさか自分が、残された遺児を引き受ける立場になるとは予想しておらず。]
ひよっとして希望を出したら、考慮してくれる…のか?
[どの遺児を引き取りたいのか、希望を示せば。
もしかして、あの青年を手元に置けるかもしれない――。
そんな考えに至るものの、それでは他の遺児達と差別するようで申し訳ないし。
第一、評議会がまだ経験の自分の希望など受け入れてくれるか分からない。]
―城館・自室―
[用意された執務室に入るなり、椅子に腰を下ろすが。
机に肘をついて両目を閉じた後すぐに立ち上がる。]
養子……、養子か…。
[自分がまだマスターとしては経験的に浅い事は重々、承知している。
いや、だからこそ悩んでいた。
今まで禁を犯した不埒な同族を討つことはあっても。
まさか自分が、残された遺児を引き受ける立場になるとは予想しておらず。]
ひよっとして希望を出したら、考慮してくれる…のか?
[どの遺児を引き取りたいのか、希望を示せば。
もしかして、あの青年を手元に置けるかもしれない――。
そんな考えに至るものの、それでは他の遺児達と差別するようで申し訳ないし。
第一、評議会がまだ経験の浅い、自分の希望など受け入れてくれるか分からない。]
説明?そんなもの汚れたゆえ洗うにきまっているだろう。
[勝手に自己完結していた...は華奢で白い肌が露わにされたところで特に興味を強めるでもなく。だが容赦なく抗議の声を上げる血飲み子>>74を浮遊させたまま裸にさせていく。
先に命じて浴室の用意をしていた使用人に、血飲み子が来ていた服をもっていかせ変わりの服を用意させるよういって浴室へと入る]
― 浴室 ―
[浴室につくと、屈みこむように座らせ]
じっとしておれ。だが熱ければ熱いといえ。用意したあやつに罰を与える。
[これはこの血飲み子のための湯なのだ。当然最良のものでなければゆるさないと思いながら、自身は服を着たまま、張られていた産湯を一度被らせる。
新雪のような白い肌に手を這わせ、白金の髪を指で梳き。体を泡立て、赤子の体を手間暇かけて自ら洗っていく]
大丈夫――大丈夫だよ、
[恐慌に陥った幼子を落ち着かせようと微笑みかける。
実際、これしきの傷、何ほどのこともない。]
分かっているよ。
君は怯えていただけだって、
僕を傷つけようとは思っていなかったって、
良く分かっているから。
うん。彼はコンラートの元に行く事になった。
[自身の処遇を聞いた次にはディークの事を問う。>>75
予測は立てていたのか、続ける返答には余白がない。
立ち上がってこちらを見下ろす娘へと視線を上げて]
すまないね。
[知己と一緒にさせてやれなくて。]
厄介?
[首を傾ぐ。]
― 私室→浴室 ―
汚れっ…それはまあ、確かに、汚れたけどっ・・・
[なんだか渇きとは別の頭痛のような眩暈のようなものを覚える。
座らされ、もし熱くてもすごく言いにくいようなことを言われたが、幸い湯は適温だった。
その頃には、疲れも相まって抵抗を放棄し、大きくため息を零す。]
…別に洗ってくれなくても自分でこれくらい…っ
[肌を這う手に動揺を示す。
だが、相手から洗うという目的以外を感じなかったこと、おそらく何を言ったところで聞きはしないだろうことから落ち着かないながらもされるままに。
時折擽ったそうに身を捩れば咎められたか。]
……っ、皆にこうしてやるの?
[憮然として、しかし黙っているのも落ち着かなかったので問いかけた。]
[見上げる表情は、まだ乏しい感情ながら不安を示す]
しない もう
…
[微笑と共に囁かれた言葉を何度か反芻して、
目覚めたばかりの時よりはかなりスムーズに意味を理解した]
…わるかった
[湯の中で、腕を大きく広げ、幼子を差し招く。]
来て――抱いて。
僕にキスして。
[丸く穴が連なる傷口は、既に肉芽が盛り上がっていた。
袖に滲む赤も、湯に浸されれば色は薄れ。]
[憎い、と尋ねた若者へ首を振る。
あいつのようなもの ならば憎むだろうか。
怒りはある。それが憎悪なのかはわからなかった]
コンラートは ちがう
[わざわざ部屋まで訪ねてきたあの黒衣も]
なぜ?
― 浴室 ―
最初に血を飲んだ褒美だ。遠慮する必要はない。
[想像通り何を言っても聞き入れる気はなかった。身を捩ればそれを咎めだてしながらも、体を洗い泡が血飲み子の体を包む中の問いかけに、少し考え]
いや、こんな手のかかる赤子を引き取ったのは初だ。
[そしてもう一度湯をかけると、背中と膝裏に腕をあてて、持ち上げ、湯船へと肩まで沈めてからじっとみて]
……溺れぬだろうな。
[赤子は少しの水の量でも溺れるのを人間を見てきて知っている...は真剣な様子で湯船に浸かる血飲み子を見下ろしながら言った]
[今求めるは血でも情欲でもなく、
ぬくもりであり、
絆であり、
慰め。
ただ、彼を全身で感じたかった。]
それなら――……、
[良かった、と続けかけた言葉は、音になる前に消える。
彼の養い親を、自らよく知る訳でもない。
友人の保証付きでもあるから、比較的望ましい決定だとは思えど]
[謝罪の声には、微かに眉を動かした。
済まなく思う仕打ちを、養子に施す予定でもあるのだろうかと]
厄介以外の何物でもないでしょう。
[首を傾ぐ養い親を真似るように、小さく首を傾げ]
― 書庫 ―
[目的地についたなら、まっすぐに教本が置いてある区画へと]
うーん、ダー…?…うん、ダーフィトだ
[その場にいない教え子の名前をうろ覚え気味に復唱する]
ダーフィトは何が一番向いてるかな…
ああ、これ僕が書いたやつだ。懐かしい……って、この記述古いや、あとで直しとかないと。
血族になってすぐに能力使える子の方が多いから、初心者向けってのがないんだよね……
[紙の香りで満ちたその場所で、一冊とってはパラパラと捲り、気に入ったものは手元へと。
探しものは難航しているようで、しばらくそのまま没頭するだろう**]
[見当違いな返答が返ってきたので、それ以上言い募るのを一先ず諦めた。
体を清める手が思いのほか優しく、湯が温かかったからかもしれない。]
……ふぅん……って、ちょ、ちょっと!!!!?
[抱き上げられて湯船に沈められるなど人生初の経験で、自身の醜態に白い頬が朱に染まる。
意に介さない相手の視線から逃れるように顔を背けてはいたものの、ちらりとそちら側を見て]
………溺れられるもんなら溺れたい位だ。
[されっぱなしの腹いせに、仰向けのまま沈んでみた]
──…
[瞬いた。
腕が広げられれば、その動きで薄く血の香りが漂う]
な
に?
[困ったように眉を寄せて、
それでも招かれれば湯の中へ立ち膝になって、近付いた]
なぜ
[問いながら、
伸ばした腕は幼子を相手にするように、若者の薄い体を抱き寄せて背中をポンポンと叩いた。
どこかでされたような記憶の焼き直しの動作]
新たな子を迎える事を、僕は厄介だと思った事はないよ。
[さらりとした否定の後、立ち上がる。>>88
フードを下ろす、暗中で深海の瞳が娘を直視した]
僕の名はエレオノーレ。
君は?
[キスして?
それがどういう求めだったか、記憶の残骸を引っ掻き回して。
確信はなさそうに、若者の額へ唇を落とした]
溺れるな。まあそれぐらいで死ぬ体ではもうない。苦しみたいだけならばそうしていてもよいがな。
[相変わらずの態度であるが、やはり意には返さず、結末を述べながらも、沈む頭>>91を掴んで浮上させて]
また良い子にしたらこうして褒美を上げよう。よいか?血飲み子。
[紫水晶を見つめて囁くようにいうと、頭を離し]
至高の栄をうける権利をえた幸福を噛みしめ、ゆっくりと浸かっておるがよい
[そういうと血飲み子を残し浴室を後にした]
― 私室 ―
[神学校の服の変わりに用意するよう注文した――所謂メイド服が着替えとして置かれているのを横目にソファーへと腰かけ、テーブルの上のブドウを摘み上げ頬張る]
…いつぶりだったか。…ふむ
[影の中から出したのは、日々を綴った書である。私見混じりすぎるが、どの時代に何があったのかが克明に記されているため歴史的価値のあるもの…なのだが、そんなこと書いた当人は考えもせず、バランを討伐したことやら、トールのこと、我が息子のこと、楽士のことなどを記した後、頁をめくり遥か昔の時代、時を遡る。
それは己が眷属にしてきたものたちをどうして来たのかを思い出すため…であったが、見終えて気づく。羨望し焦がれ我も吸血鬼にならんとするものだけであった。そういう意味では教育の必要がなかったものたちばかりだ。
つまり…我は…まともにチャイルドを育てたことがない!
我は驚いた。という一文で書き足すと書を影の中に放り込む]
[その前に、彼の問いに答えねばならないだろう。]
ん……
僕がバランと違うのは何故か、を知りたいのかい?
[鮮やかな碧を幼子の赤錆の双眸に据えて沈思]
他の血族たちはどうか知らないけれど、
僕にとって、愛し児は生きるよすがだから。
彼らがいてくれたからこそ、僕は今まで永らえることができた。
一人でいたら、僕はとうに凍えて、消えてなくなっていただろうね。
[引っ張り上げられた。]
……ひとをマゾヒスト扱いするな。
[ご褒美、という言葉に、先程自分が何をしたかを思い出す。
血を、舐めた。
思い出せば、酷く難しい顔をして眉を顰めた。]
………私は
[小さな小さな声は、彼の耳には届かなかった様子。]
………幸福、か
[一人になった浴室で、銀の吸血鬼が去った方を見てつぶやいた。
だがそんな感傷も、浴室から上がって目にした着替えの頭の痛さにふっとぶ。]
[袖口から出てきたオスカーとポラーシュターンと顔を見合わせて決めて使用人を呼び寄せる。
楽師への褒美に桃を届けるように命じると同時に、蝙蝠の赤子が表紙に描かれたコウモリ倶楽部と書かれた会報誌も要求したのであった]
[涙が乾く頃には、瓶の中身は空になっていた。
大きく溜息を付いて、身体の具合を確かめる。]
…本当に、人間ではなくなってしまったんだな…。
これだけの量を一度に呷ったら、まず無事では済まない。
僕が学んで来た事って、何の役にも立たなくなるんだね…。
[独り呟く声は力を取り戻し、よく通る。
これが人間の血であったならと思うと…どうなるのだろうか。]
―――…知りたい。
[今まで積み上げて来た知識は、最早塵同然。
代わりに何かを詰め込まなければ。
生まれ変わったばかりの子は、身近なものから新しい知識を
蓄えようと手を伸ばし始める。]
/*
>>95
くっそww胃がキリキリしてたのが癒やされたwwwwww
クレステッドいちいち面白いから、絡みたいなあと思って入るのだけど、タイミングがね!
*/
僕が、今、温めて欲しかったから。
[抱擁はぎこちないが、触れ合う膚と肉の確かさは裏切らない。
幼子の――男の腕の中に包まれて、うっとりと目を閉じた。
]
ん。
[クラシカルな、上等な布をたっぷりとあしらったロングのフレアスカートに、白いエプロンまでご丁寧についたメイド服を、脱衣所に控えていた使用人に完璧に、実に優美に着つけられて出てきた。]
………これは……どういう…ことだッ…!!!
[声がなわなわと震えている。]
……私の性別は…先程みたとおりだと思うのだが…なッ…!?
ああもういい、いいからさっさと私の服を返せ!
[何やら書きこんでいる様子の相手に詰め寄った]
― アレクシスの部屋 ―
…アレクシス、いるかい?
[再び訪れた部屋をノックする。
彼はあのワインを飲んだだろうか、それとも中で苦しんでいたりはしないだろうか――。
館内で何も大きな騒ぎになっていない辺り、特に問題は発生していない事くらい、少し考えれば分かることだったが。
いかんせん、そわそわした状態では気が付かず。
じりじりとした気持ちで返事を待った。]
[額に落とされた、不器用な口接けさえ幼いけれど]
今はこれで充分。
[仄かな幸せのひと時を、丹念に味わった。]
うむ、似合っているな。我の見立ては間違ってはいなかった。
[書をさっさと影の中に消すと、あがってきてしっかりとメイド服姿>>101に着飾られた血飲み子に頷いて見せる]
赤子の内に教育をせねばならぬからな。血飲み子は我への敬いが足りぬ。それに我意外に対し、腹の内にどんな邪なことを考えていても構わぬから持ち上げることを覚えておけば今後楽できるぞ。
[巣立った後のことも、一応なりとも考えていうと詰め寄った血飲み子の腰に手をまわしてぐっと抱き寄せ、血の入ったワインの瓶に口をつけて煽ると、喚くその唇に口づけて口移しをする]
その口から自らの名を聞く事に、意味がある。
アイリス。
どれ程の時を共にするか解らないけれど、
君がこの先の夜を生きていけるように、微力ながら力を添えよう。
よろしくね。
[そして、再び黒衣を被り直すと、出口へ爪先を向ける]
一度、部屋に戻ろう。差し当たっての事を教えるから。
その後は……そのまま休んでしまっても良いし。
城内は歩いてみた?
見回り足りないなら、そちらに行っても構わないよ。**
[今の幼子から、ささやかなぬくもり以上のものを求める気はない。
今のディークはコンラートを、コンラートが与えることのできるものを切望してはいない。
コンラートは、奪いも強制もしない。
ただ誘いかけ、与えてくれるまでひたすらに与え続けるだけだ。]
見立てって…あーもう!
[服返せという要求は右から左に流れ去ったらしいことに軽く頭を抱えた。]
……ッあんたに処世術を解かれるとはね!?
[なんか腹立つのは気のせいだろうか。
いちいちつっこんでいたら、抱き寄せられて唇を塞がれてワインを流し込まれる。
血が入っていると気づいたのは、飲み下してしまってからだった。]
………ッ!
[何事か言おうとして、それは溜息に変わり。
代わりに別の言葉を紡いだ。]
………私の名前は、ちのみごなんかじゃない。ファミル、だ。
…あなたの名は?
[ひとまず何はともあれ、相手の名を聴くことにしたのだった**]
…ん
[小さく頷いて、背を撫でる。
一方が裸の、男二人。
風呂で抱き合っている図は何だろう、などという思考までは浮かばなかったが]
ぬれてる
…さむい?でる?
[肌にはりついたシャツ越し、温もりを馴染ませようとした]
……、ああ。
呪か何かということ?
[少しの間の後、問うともなしに呟く。
よろしくと告げる声には、ゆるりと頷く]
[気懸りも、半ば片付いた。
何もかも終わりに等しいのに、差し当たりも、この先もあるものか。
緩く笑って、黒衣の背に付き随う]
――…全て、貴方の意の侭に。
[揶揄めいた服従を、ぞんざいに告げた**]
[服は現在洗浄中であるため、文句をいってもどうあがいても無理であったが口にはしない]
我は我が至高であると知っているが、他の社会まで否定をするほど狭量ではないからな。
[口移しで血を飲ませる世話を終えた後、ようやく夜泣きのような文句>>105をやめたようだ。従うものには寛容を示すのが己の在りかた]
そうか、わかった血飲み子。我が名を知らせるは、次なる褒美としようか。では眠るぞ。本物の血親から切り離されてまだ疲れているだろう
[抱き寄せた姿勢から体を起こして血飲み子を抱き上げ、寝所へと運び寝かしつけるのであった**]
……その。
気分は楽になりました。
ありがとう、ございました。
[怖い怖いと繰り返していたものが、あっさりと覆された
ことに対し、彼からは何か言葉はあるのだろうか。
変わらず目線は合わせないままだが、彼を迎える為に
開いた扉は更に大きく開き、どのような言葉も
受け入れると態度で示して見せた。**]
[布一枚を隔てて、密着する膚]
大丈夫だよ。
君からはもう貰ったから。
[花の綻ぶように微笑んで。]
でも、そうだね。出ようか。
[一頻りディークのぬくもりを愉しんで、彼の腕から滑り出る。
額に張り付くあかがねいろの髪を掻き上げて、幼子を見やった。]
服は外に用意してあるよ。
この館の中なら、君はどこへ行くも自由だ。
何なら、君の血の兄弟たちに会いに行くといい。
全員この館にいる筈だ。
――おいで、アレクシス。
[部屋へ入り、扉を閉めてから。
彼を迎え入れるように両手を広げてみせる。]
俺が君の、養親になった――。
養育なんて初めてだけど、精一杯頑張るよ。
[果たして彼は、腕の中に収まってくれるだろうか。]
君が夜の血族として生きていけるように、何でも教えてあげる。
だから君の知りたいことを、教えてくれ――。
[改めて養子である青年に、微笑んだ。**]
[ふと思いついたように、右手を伸ばす。
人指し指に止まった白蝶が優雅に翅を開閉する。]
何かあるといけないから。
[白は、はたはたと飛び立ち、ディークの肩先を漂い舞った。]
僕以外にもこの館には、マスター・ヴァンパイアがいる。
もし万一君の意に染まない何かをさせようとしたら、これに呼びかけて。
可能な限りすぐに駆けつけるから。
それは、君の身柄を僕が預かっていると言う証明にもなる。
でも、それよりも、僕に尋ねたいことがあるのなら。
おいで。
僕が答えられる限りを教えてあげよう。
[濡れそぼって肌に張り付いた衣服から水滴を滴らせ。
伸ばした手で差し招いた。**]
/*
ぴょこり。
しかし、これほんとに絆自体芽生えないんじゃないかしらね?
エピまで8日間よね。
・案の定、クール×クーデレ?の相性はいまいちっぽい
(自己申告あった“デレめ”はやはり嘘だッ!と思う現在)
(当初計画のクーデレ路線に自分も戻してみた)
・ますたーのよその子希望
(コンちゃんに里子に出したかったっぽいけど気づかず)
・ますたー女の子疑惑
・げぼく化にある意味無抵抗
・気懸り解消で無気力モード発動
・直接的 or 間接的自殺計画
/*
デレとか隙とか誘い受けはちらちら混ぜる気で動いてたのだけど、
ますたーが自らはーどもーどを選択なさったので
目下のところその気はなくなったわ!(いいえがお)
ますたーは、ほんとに博打がお好きねぇ。
[ふと一冊の本が目に止まり、手にとる。
古い紙質の割に色褪せない背表紙から、その本があまり読まれていないものであるという事が伺えた。
著者の名前はステファン=リッシュ、70年前に書かれたその本に、男は“彼女”との出会いを思い出し、嬉しそうに笑みを浮かべ――…]
― 回想・吸血鬼と人間 ―
[70年前までの男は、今とはまるで別人だった。
空腹になれば食事を摂り、命じられたから仕事をこなし、与えられたから領地に住まう――…言われなければ髪を切ることもしないまま、自我のないかのようなその姿は幽鬼を思わせていたかもしれない。
無気力に“ある”日々の中、一人の少女に出会う。
怯える少女を前に飴玉を一つ差し出したのは、狩ることを禁じられている区域故、泣いて大声をあげられては困るから。
真祖の王が、気まぐれに、男に飴玉を渡さなければ、違う手段を探していただろう事は想像に難くない]
[特に意味のない行動。
慰めるためのものではなく、障害を避ける為の行動。しかし9歳の少女には、男の行動が違うものに見えていたようで――…
『お化けや吸血鬼は怖いけど、あなたは優しいから大好きよ?』
男が吸血鬼であると見て、知っているはずの少女の言葉に、その日を堺に男は“吸血鬼”から“ステファン”になった。
ただの吸血鬼ではなくステファンであるために、自身の特性はとことん利用するように努め、自身の細微な感情の動きを大事に育て、自身の抱く興味に貪欲であり続けた。
それでも「自身が吸血鬼だから」という壁だけは作り続けた男は……
それから2年後、11歳の少女に思いを告げ、見事に振られてしまったのだけど>>0:432]
― 回想・了 ―
[懐かしいその本は、男自身が自身をよく知るために、吸血鬼という種を調べ始めた時のもの。
抜けという点では大量にあるのだが、それでも何かには使えるのではないかと……
なにより、そのまま書庫の奥で腐らせておくのは忍びなくなり、魔導書と一緒に持つことにした。**]
よすが
[自分にもあったはず。
家族とも思い、愛おしんだ者達。
彼らに寄り添い、導かれ
この腕で、守れるはずと 希っていた]
…いいな
[何に対してともなく呟いた]
― 浴場 ―
[水面が蕩めいて、
混ぜられた香油と魔力持つ血が吸う息に酔いをもたらす]
…
[無意識に、自分の牙へ舌を這わせた。
舐めれば甘く優しい滋養。
滑るように離れたあかがねの色に目を細める。何かを思い出せそうでいて、感情は仄かに薄い]
[名を次の褒美と言われ、不機嫌に口をへのじに曲げる。]
……不便だ。
[次ぎに抱き上げられた時には、泥のように疲れていたから、早々に文句を言うのを諦めた。
ベッドに横たえられたあと、どうやら子守りよろしく寝かしつける気らしい相手を不躾な程、じっと見た。
ふと指先を動かして、白銀の髪にてを伸ばしかけて、止めて。]
……お前みたいな奴は、嫌いだ
[ふい、と銀の吸血鬼に背を向け目を伏せれば、眠りに呑まれるのは間もなく。
ーーー夜が明けるのか、と夢現に思いながら。**]
わかる
[語られた話を飲み込むのには少し時間をかけて。
血の兄弟という単語には一度聞き返した。
痛みを伴う響き。
胴から切り離された首が宙を飛ぶイメージが一瞬浮かんで、消えた]
たくさんは考え、られない まだ
少しじかん
[行動が自由ならば、歩いてみようか。
白い蝶をしばらく視線で追いかけて、
差し伸べられた手を取り、立ち上がった]
― 浴場→ ―
[体を拭けば、人心地ついてほっとする]
じぶんで
[ひっそり佇む小間使いに着替えを手伝うかと聞かれて首を振った。
シャツとトラウザーズが、どっちがどっちなのか混乱してしばらく広げて考え込んだりもしたが。
最終的にはボタンを全部掛け違うこともなく、自分自身の手できちんとした身形に近付けられた]
…これは
[ブーツだけ、複雑な紐と金具を前に降参状態になって、助けを借りて履いた**]
― どこかの一室 ―
―…。
[目が覚める。ぼんやりとした意識のまま、寝台から身を起こし…改めて辺りを見回せば随分と広く立派な部屋であったと気付く。けれど今はあまり意識は向かずぼんやりと自らの手を見ていれば、軽くノックの音]
……はい。
[返事と共に、扉を開けようとそちらに向かう。そして差し出された紙>>2を見たものの]
ええと…マスター?教育?
[そこに自分の名は見たけれど、なんのためのものかが分からずに持ってきた使用人らしき者に事態の説明を求めてみる。けれど己がマスターに聞くようにとの言葉に、改めて名簿を見返し
――ステファン、の名を見れば、昨日の褐色の青年の言葉が正しいならば金髪のあの少年が自分のマスター、ということになるらしい]
これから教えるのは。
[室内で再度フードを落とすと、今度は外套ごと脱いだ。
下衣もやはり黒であったが]
僕達、夜の社会そのものについて。
それと、吸血鬼としての力を制御出来るようにする事。
……血を糧とする事も、少しずつ慣れていこう。
[柔らかいソファに座るとすっぽりと収まり過ぎるようで。
いずまいを正そうと、もそりとした]
衣食住は用立てるけれど、不足があったら教えて。
君は何が好き?
― ホール→書庫 ―
[説明された通りに歩き、辿り着いた部屋の扉を開ける。途端飛び込んでくる古い紙とインクの匂い。そんなものは自身が変われど感じ方は変わらないんだと少し懐かしいような気持ちになりながら見回せば、すぐに金の髪の少年が見つかるだろう]
…、
[目に入った姿に何を話しかければいいのかと束の間逡巡する。あの後倒れた皆はどうなったのか。祖母の話。それとも]
…聞きたいことが、ある。俺は、死んだのか?今の俺って……
[吸血鬼となったのか。その決定的な一言を言い淀む]
― 書庫 ―
[探しものも一段落、絞った割に結構な高さとなった本の山に、もう少し吟味すべきかなと思いたつ。
彼がきたのはそんなタイミングだっただろうか。
何か思い悩む様に首を傾げつつ、本を探してるわけでもなさそうだしと言葉をまっていれば「俺は死んだのか?」との問い。]
生きてるよ?
[そう問われれば簡潔な返答を。
“死霊術で扱えるのが死んでいる状態だ”……そんな認識の男に問えば、返ってくるのはズレてしまった回答。こればかりは聞く相手が悪いとかしかいいようがない。]
今の君がどうしたの?
[濁した言葉は促すことにした]
[結局仕事は夜明けまでかかってしまったが、結果としてステファンからの報告書を受け取れたのは僥倖だろう。
退屈な事務仕事を終わりにして、ホールから出る。
向かったのは、城館の地下だった。
長い階段を下れば空気はひやりと冷える。
水音が遠く反響した。]
― 地下洞窟 ―
[城館の地下は、天然の洞窟になっていた。
食糧庫やワインセラーとして使われている区画を通り抜けてさらに奥へ行けば、空気に水の香が混ざる。
細い通路を潜り抜ければ、大きく広がった空間に出る。
そこに、青く澄んだ水を湛えて、湖があった。
湖のほとりで服を脱ぎ捨て、下穿き姿で湖に飛び込む。
水音もほとんど立てず、吸い込まれるように体が水に潜った。]
[身を切るような冷水が、心地よく体を引き締める。
書類仕事の気怠さが、拭い去られていく。
ひとしきり泳ぎ回ってから岸に戻り、髪を振って水気を弾き飛ばした。
冷気に晒された褐色の肌は傷跡ひとつなく滑らかで、
よく鞣された上質な革のように水を弾く。
いくらか岸で休んだのち、もう一度泳ごうかと立ち上がる。
そこへ、評議会からの知らせを携えた使用人が来た。]
[評議会の決定は、おおむね予想通りのものだった。
エレオノーレの希望が通っていないことも含めて。
少しばかり肩を竦めてかの同朋を思いやるが、すぐに思考は自分のことへ向いた。]
俺の部屋へ。
[レトを案内しておくように。
言葉は相変わらず省略されるが、よく慣れた使用人は了承して下がる。]
[使用人が下がった後、改めて水の中に入る。
ほとんど潜るように泳いでいた体が、水の中で形を変えた。
ほの昏い水の中、四足の獣が暫し泳ぎ回っている。*]
[今、目の前で動いている、どう見ても生きているのに何故彼はそんな質問をしたのだろう。
当たり前の答えなのに、何故彼は意外そうな顔をしたのだろう。
考えこんではみたものの、答えにたどり着けなかったのは、男の中に彼女の孫であるという認識が何より強くあったため。
促しへの返答>>133には、これもやはり簡潔に]
うん、そうだよ。
[の一言だけ。
そして、それに何の問題があるの?と言いたげに少し首を傾げたか]
[脱衣所を兼ねた控え室には、以前ディークが身に着けていた護衛兵の戦闘服に似た衣服が、下着もあわせて一揃い、コンラートの命で既に用意されている。
目測したサイズにあわせて仕立て直したそれは、その方が彼の記憶にも馴染みやすいと判断してのこと。
体を拭き、服を身に着けなければならない幼子と違い、コンラートには身支度は必要なかった。
手伝いを断って、ひとりで上下を広げてはいちいち黙考する幼子>>122を微笑ましく眺め、自身の肉体を衣服を含めて、構成要素である蝶の群れに分解させた。
足先から形を失い、舞い立つ黒蝶に変じては、虚空に溶けるように消えてゆく。
最後にバシャリと水をぶちまける音がして、衣服が吸い込んでいた水分が床に水溜りを作って残る。
一匹だけ、飛び立つのに失敗したか、水溜りに嵌ってぱたぱたともがいていたが、やがてはそれも輪郭を揺らがせ、ほろり崩れて消えた。*]
[吸血鬼である事を肯定した後に返ってきた考えこむような沈黙>>136に、吸血鬼という種への抵抗が含まれている気がして少し眉を顰めるが……
それに対する言及なく「何故連れてきた」の問いを聞けば、興味が移ったと判断し、懸念は思い過ごしと片付ける。]
なんで連れてきたって……吸血鬼になったからだけど。
[聞き様によっては、評議会に連れてくるために吸血鬼にされたようにも聞こえてしまうかもしれない返答を。
男は評議会を知るものであるが故にその考えには思い至らず]
― 自室 ―
[主の部屋に向かう道すがら、少し先を行く背に問う]
ねぇ。さっきの答えを、聞かせてもらっていないわ。
何か、私に呪を掛けたの?
[どちらでも構わない気がしたが、知っておくに越した事はないだろうと、一度だけ答えを催促する。
それでも答えないようなら、聞くだけ無駄だろう。
促されるままに、ソファへすっと腰を落とす]
ふざけんな!
そんなために、皆を殺したのか!俺のせい、で、皆殺されたのか!
なんで…っ
[少年の言葉に怒りがこみ上げる。祖母のためにと尽力してくれたのが本心だったと思うだけに。少しばかり信用、しかけていただけに。
周りの人の死が自分のせいだったのかと思えば、殴りかかりたいくらいだ。代わり、テーブルを両手で力いっぱい叩けば派手な音がした]
[机を叩く音に、びくりと肩を震わせる。彼が、何を、言っているのがわからない。
聞かれたままに答えているだけなのに、ふざけていると言われたのは心外で、返す声には険の色を混じえる]
ふざける必要がどこにあるのさ!
確かに君のせいだけど!…………殺した?
[確かにダーフィトのせいだった。
だが、眠らせはしたけれど殺してはいない>>0:413
本当に、彼は、何を言っているのだろう?
彼を見つけたのは、被害にあった場所から遠い市街地だ。
彼が如何にして血子になったか、男は何も聞かされていない]
[蝶は、矯めつ眇めつするようにディークの周囲を舞った後]
“だいじょうぶ”
[溜息のごと、あえかな
[一度は戻したフードを再び剥ぐ主を眺めやる。
何の意味があるのかと湧いた疑問は、口にせず]
丁寧ね。
血を摂る時は、やはり人を殺すの?
[直裁な問いは、単調に。
衣食住の用立ての旨には、浅く頷き]
有難う。もし何か、思いつけば。
[そうして付け足された、一つの質問]
…特に。思いつかないわ。
[すきなもの。
朝日の中での目覚め。長年仕える侍女に駄々をこねて。
窓越しの子供達の声。花の匂い。
食卓につく父の笑顔。従僕の静かな佇まい。
どれも良くできた夢のように、淡く翳る]
だいじょうぶ?
[ならいい。
優雅に上下する白い蝶へ指を差し伸べて、肩へ導いた。
それこそ翅のとまる軽さ]
[この館にはほかにもマスター・ヴァンパイアがいる。らしい。あの黒いのもだろう。
そして]
血のきょうだい
[もう少し鋭敏であれば、同じ血親を抱く者同士、気配くらいは感じられるのかもしれないが。
今は、誰かに会って話すという目標は立てずに、気の向くままに歩き始める。
控え室を出る最初の扉を難なく引き開けた]
…………僕が
[彼は、何を、言って、いる?>>143
一度目は叩きつけられた言葉を、理解することを、拒否することができたのだが]
……ころし、た?……血を…吸って?
[二度目は、ついに、理解してしまった。
これは恐怖なのか、怒りなのか、絶望なにかはわからない。
乾いた唇は、ふるりと震えて、うまく言葉を音にする事ができずに]
ー 城館廊下 ―
[かつて、初めて来た場所では、出入り口や死角をおさえながら、脳内に建物の構造図を組み立てる。のが普通だった。
今どこにいて、どちらを向いているかくらいは暗闇でもわかる程度に]
…
[気紛れに、見えた階段に足を乗せる。
その先も廊下、角を一つ曲り、立ち止まって天井に描かれた何かの絵を見上げれば──もうどちらから来たのかわからなくなった。
肩の上で白い蝶が翅を開閉する。
また気の向いた方へ歩き出した**]
[ダーフィトが
タチアナの言葉を懐かしそうに語っていた彼が
タチアナとの思い出を聞きたいと言っていた彼が
僕が 殺して 血を 吸ったのだと 言っている]
……タチアナの……家族、を……?
[僕が、タチアナの家族を喰らったと、目の前にいるタチアナの孫は言っている。
そう認識してしまったら、正常な思考は働かずに。笑っているのか、泣いているのか、自分自身も理解できない。
その場に留まることさえも、脳が、酷く、拒絶して、しばらく、何の音も拾いたくないと――…
もう少し話を続けていたのなら、あっさり解けたであろう大きな誤解をそのままに、逃げるように書庫を後にした。
できれば誰とも話をしたくないと、男が逃げ込んだのは、館の外の森の奥。夜が明けてしまえば来れる者はいないだろうと考えて**]
― 私室 ―
[不平を漏らし、何を思ったのかこちらを見た後、背を向ける血飲み子>>120]
ならば巣立つのだな。
[教育が進むならば悪くもないだろう。
眠りにつく吸血鬼となりながら清廉なる乙女の如き血飲み子の白金の髪を撫でながら]
恐怖も感じずよく眠れ。血飲み子。
[あやすようにしばらく髪や背をなでた後...も眠りにつく]
[血飲み子が眠りから覚めた時、既に起きていた...は血のワインをグラスに注ぐ。]
飲め。
[たかが数滴の血と一口分だけ摂取させただけだ、すぐ渇く。などは説明せず開口一番にそう命じた**]
え。
[彼は何を言っているのだろう。なんでここで家族が出てくるのかが分からなくて混乱する。けれどそれ以上に、彼の表情が。
部屋を飛び出していく背中を目で追いかけて――彼の言葉をゆっくりと考えてみれば
――「彼が」「タチアナの家族の」「血を吸って殺した」と]
っ、ちがっ、ちょっと!待て!
[慌ててその背を追いかける。どうしてそうなったのかは分からないが、とりあえず誤解がある。そしてその誤解によって彼が酷く傷ついたらしいこと。
遠ざかる小さい背中を追いかけて、足を踏み入れたことのない森に踏み込んだ。
夜明けまでの時間は、あと6(6x1)時間ほど――]
……
[問いの形式ではないように感じていたのだが、>>108
後背からの催促に首だけ振り返る。>>139
歩みを止めぬために、また前を向き]
明示的な術は何も。
言ってみれば、気分の問題だね。
[その気分――意識こそが、
互いを親子、主従たらしめる最たるものだが]
ー 翌晩 ー
[窓の無い部屋では日没を視認することはできなかったが、自然と目が覚めたということはそういうことなのだろう。
着なれぬワンピーススカートの裾をベッドに広げたまま、示される瓶をじっと見つめた。]
……それ、なんの血が入っているの?
[そして、グラスに手を伸ばそうとはせず、視線を、顔を背ける。
頭飾りの長い白いリボンが肩口をさらりと流れた。]
即死を避けて、分けて摂る事も出来るよ。
己の渇きを律する必要があるけれど、
……その方が安定する。
[とは言え、血を失う事は人体に負荷を掛ける故、
その場で殺すか緩慢に殺すかの違いだ。]
そう。では、思い付いたら。
[昨晩すでに口にした其れを見つめる紫水晶が心許なげに揺れる。]
…………、どうして
私を生かす……
[溜め息のように、かすれる声が落ちた]
[一息を挟み、今日は簡単にね、と前置きをする]
僕達、吸血鬼は血統を礎にした、
氏族と階級の社会を築いている。
種々の氏族をまとめているのが評議会。
……概ね、イメージしやすいと思うけれど。
[明晰な発音、楚々とした所作。
アイリスが人間社会において上位に属し、
恩恵を受ける立場にいた事は想像に易い]
― 翌晩・私室 ―
[ベットの上、ワンピーススカートから覗く白い足は艶めかしく明かりに映え、バランを殺しに向かったときや温室に向かった時よりも血色のよくなり本来の紅顔の美少年らしさを取り戻したように見える血飲み子を見返す]
人の血が混ざっている。これから血飲み子が生きていく上では必要になるものだからな。慣れろ。わかったらさっさと飲め。
[所在無げな様子がリボンにも伝播したかのように見えるが、優しくするかといえば別問題である]
どうしてだと、まだわからぬのか。
[溜息をこぼす血飲み子へと呆れたようにいう]
我が貴様の養親になったからにきまっているだろう。
[希望を口にするでもない、倫理観を問うでもない。ただ一方的な押し付けをさも当然の決定として告げる]
―自室・評議会の決定を受けて― ―
[長椅子の背に片腕を乗せてしどけなく座し、評議会の使者の口上を聞く。
白皙の美貌は明確な退屈に彩られ、組んだ足先は猫の尾のようにゆらゆらと揺れていた。
既に、ディークを城館に運び込んでから今までの間に、自分をここに寄越した男>>0:84に口頭で報告は済ませていた。
同時に、ある程度の腹積もりは聞かされていたから、ディークを養い子とせよとの通達は予期していた出来事の追認に過ぎない。
執行人のロー・シェンは、自分の頭越しに評議会の特定の勢力に情報を供与したと知れば、あまり良い気分はしないかも知れないが、コンラートは頓着するような性格ではなかった。
使者を早々に追い出し、独り、細く長い指を唇に当てて思案する。]
[何となく迷子になっているような気もしたが、
蝶は特に何の教示もコメントもしなかった。
今のところは幼子の自主性に任せるつもり]
[『即死を避けて』という言い回しに引っ掛かりを覚えるが。
想像が難しいことではないから、敢えて聞く気も起きず]
…そう。その方が、後味は良さそうね。
[ただの仮定の話として。
世間話に、相槌を打つように]
氏族と、階級……、
ええ、解り易いわ。
[死んでまでも、随分と堅苦しい生活らしい]
貴方は、いつから吸血鬼なの?
[生来の魔物なのか、どれだけの時をそうして過ごしてきたのか。
世間話の続きのように、軽く尋ねる]
― 廊下 ―
[こうして歩いていると、従僕らしき者とたびたびすれ違う。
ほとんどは恭しく頭を垂れるくらいでこちらの行動には干渉して来ないが、二度ほど話しかけられた]
[一度は、名を確かめられた。
レト、という名に、たぶん自分ではないだろうと答えれば、丁重に非礼を詫びられた。
使用人が顔を知らずに探している相手なら、自分と同じような立場のものかもしれない。
聞き覚えのないそれを記憶に留めた]
[人間を糧とする事に、感情の抵抗は大きいだろう。
初めは直接ではなく血杯を与えるつもりではあった]
窮屈?
[つと立って、グラスに注ぐのは単なる口を湿す水。
ふ、と息をこぼして少しの量を口にする]
千年以上は前だよ。
[そう言えば、ディークを助けたあの場には、彼と友人の他に、転生前から親しい間柄だったと思しい若い娘もいたのだった。
保護されたディークの血兄弟の中には、女性はひとりしかいない。
その子は、友人の元に預けられると聞いた。
一度友人に挨拶がてら、彼女に会っておいたほうが良いかも知れない。]
[血の入った瓶を差し出されて、幼子がこちらへ視線を送るのを見た]
“そう、だね。
これから君は、血を飲んで生きることになる。”
“固形物……人間の食べ物を食べられるかどうかは、その子がどんな血統に属しているか……
つまり、吸血鬼の親から受け継いだ特徴によるところが大きい。”
“けれど、人間の食べ物は、何の栄養にもならない。”
[蝶は厳然と告げる]
”君を生かすのは血だけ。
吸血して君は生きていくんだ。”
…ここにいるのが?
それとも、貴方達の社会のこと?
[嫌味というより、単純に分からず。
そのまま疑問を口にする]
…そんなに?
貴方は、元々は人間だったの?
[眼前の主の出自に興味はなかったが、最低限のことだけを話すかのような相手との場が窮屈で、適当に質問を連ねる]
― 森 ―
[館近くの森の中、木々の迷路を奥へ奥へと分け入れば、森の終点へと辿り着く。切立った崖の上であるその場所からは、遠くの街を眺めることができるだろうか。
音を拾わないように歩を進めた男は、後を追う存在>>152には気づかずに、崖に腰掛け朝日の登る方向を眺めた。
昔、自然神崇拝者と見た朝日は、昼を歩む者である自身でさえも焚かれかけたという記憶がある。あれだけ巨大な聖印は、後にも先にも拝めないだろう――…
生憎と、そんな信仰を持つ者は今この場にはいないのだけれど、それでも以前死にかけたという記憶に縋るように、しばらく後の朝日を待つ。]
[血統と聞けば、嫌そうな気配が過るが。
続く言葉には表情乏しく耳を傾けた]
…ひとを メシのたびに
[あんなやり方で、という思考はまだ浮かばない。
死んだ夜にどういう人間狩りが行われていたか、ほとんど思い出せず。
それでも、ぽつと]
くいころすのは、いやだな
すこし
[受け取ったグラスの底へ、瓶から酒を少量注いでもらう]
…
[縁に鼻を近付けて匂いを嗅いだ。
普通のワインとは違う、変わった香りがするけれど
長生者の味を知る身にはあまり美味しそうには感じられなかった]
[血統の話をするのは、血親に虐待されていた彼には無神経だった、と内心舌打ちをする。]
”人間の生命を奪わずに血を得る方法はいくらでもあるよ。
殺さずに加減して血を吸えばいいんだ。
”そのためには、まず「渇き」について学び、
自分の欲望を制御するすべを身につけなければ”
“君が望むなら、僕が教えてあげる”
”でも、「渇き」を制御できるのは君自身だけだから、
君は自力でそれを学ばなければならない”
[ヒト以外の動物の血は、彼自身も良く知っている。
ヒトの血管を流れるが恍惚をもたらす甘露であるのに対し、栄養価は充分でも、口中が苦くなるほど不味い代物だ。
幼子の手にしたそれは、なりたての幼童向けに人間好みに味付けされたものだろう。
飲血の抵抗感を減らすためにワインで割ってある。
柑橘類の匂いがするのは、果汁も添加されているからだろう。]
……所詮、吸血鬼か
[闇の中、風に乗せるように溢した言葉は己自身に向けたもの。
諦めのように吐いたはずの言葉なのに、思った以上に心が軋み、往生際の悪い自身に力なく嘲笑いが漏れた。
現世の人にとって“吸血鬼”が血に狂う悪鬼にしかなれないなら……
彼女が、彼女だけが、特別だったのだろうと。]
[ふと「彼女がいなくなって悲しくないのか」と、問われた事>>0:420を思い出し]
――声が、聞きたい……
[ぽとり、涙が溢れた。
悲しくはなかったし、今も悲しいとは思わない。
彼女が幸せそうに旅へ向かうのを、その一助になれた事を誇らしかったと思うと同時に――…
“ステファン”を見て、呼んでくれる彼女がいないのは、酷く寂しい――…と、感じただけだ。]
[やはり、という思いを反映するように、ランプの中で揺らぐ蝋燭の炎は、色白の横顔に影を作る。]
…………要らない。
[瓶から視線を反らし、頭を振った。]
…………奪う命が顔の見えない加工済みなら気軽に摂れるだろうなんて、とんだ配慮だ。
[渇きは在った。
昨日ほどではないが、確実に存在感を主張している。
俯いて、手触りのよい布地をぎゅうと掴んだ。]
あんたは他人や組織の評価を気にするようには見えない。
……放っておけば面倒も無いだろうに。
[例え組織の決定であろうと、意に染まぬ事ならば従うようにはまるで見えぬ相手が、己にかかずらうことに困惑を覚えていた。]
尋ねたのは後者の意味だけれど、……そうだね。
前者の意味で窮屈なら、場所を変えても良いよ。
[ざっくりとした年齢を告げて返る反応に、少し顎を引く。
水差しを示して、要るかと尋ねながら]
そうだよ。僕も、大抵の吸血鬼も、元々は人間。
生まれながらの吸血鬼はごく稀だな。
今この城にも、解っている範囲で一人。
……なんだけど、まあ。いや、何でもない。
学ぶ
[聞くほどに、どうして、という思いははっきりとした形をもってくる。
吸血鬼がそれほど理知的で、社会性あるモノ達ならば何故。
手にしたグラスを傾けると濁った酒精も傾いた]
蚊みたい
なもの?
[殺さずに糧を得る制御を教えて欲しい、と請う。
渇きと欲を知りたい]
…俺は、がまんづよい かな
[目覚めてからこっち、自分を制御出来ている気はしなかった。
昔はどうだったのだろう]
[ほんの一舐め、口にワインを含む]
…まず
[柑橘類の口当たり、高級な葡萄酒の後味で巧く誤魔化してあるが、
そうと気づけばなんともどうしようもなく苦いものが混入している。
いわゆる、不味い薬をジュースで飲まされた子どもの心地]
…
[残りが入ったままのグラスを手に歩き出す。
あまり美味しくないけど、確かに力の足しになったような気もしたので。
誰か欲しい人がいればあげようの心]
いえ、此処で大丈夫。
[感じる窮屈さは、場所の問題ではないから。
水を勧められれば、結構よ、と答え]
…そうなの。
吸血鬼であることを、やめたくならないの?
千年もの間。
それとも、望んでそうなったのかしら。
[自分よりも幼く見える顔貌に視線を宛て、静かに尋ねる。
奥歯に物の挟まったような物言いには、珍しい調子を訝しみ、小さく首を傾げ]
”蚊みたいとはよかったな”
[クスクスと笑い声。]
”いきなり人間相手では危険だから、後で僕を相手に練習しよう。
僕なら、怪我しても死なないし、もし飲みすぎと判断したら止めさせることができる。”
[蝶はディークの肩でゆっくりと翅を震わせた。
動物の血はまだしも、人間の血まで吸血鬼の血と比べて美味しくない、と言い出したら困るな、とチラッと思った。]
ああ、でももし、君がどうやっても人間から血を吸えなくても。
僕の血をあげる。
僕がずっと君に血をあげる。
[声に出せば、それは冷えたからだの芯に、息苦しいほどの熱を点して疼かせる。
その行き着く先が、もろともの破滅だとしても。]
[おそらくは、今も自分に付き従う愛し児が、それを許しはしないだろうけれど。]
そう。
[開くことのない、嵌め殺しの鎧戸。
感覚をすり減らさないために時計は置かれているが、
人間にとっては常態の環境とは言い難いのだ。]
あまり、覚えがないかも知れない。
望んでなった訳ではないけど、
多分、ヒトであった時の幸福も覚えがないからだろうね。
[偽の窓に歩み寄り、掌で撫で。振り向くと背を預ける]
……やめたら何か、良い事があるかな?
− 廊下 −
[夜明けが近い屋上庭園を後にして、リュートを背に城館内を歩く。]
補給… 欲しいけど、 やり方なぁ…
食いながら 寝そう…
[どこか暗くて狭くて安全な場所を本能的に求めていた。]
− ロー・シェンの部屋 −
[そのまま使用人に案内されて、ロー・シェンの部屋だというところへ連れて行かれた。
まだ彼は戻っていないようだったが、入って待つようにと使用人は促す。
別段、逆らいもせず、中へ入った。
ソファがあったので腰を下ろす。]
うー…
[まだ仄かに眠い。満たされていない。
円筒形のクッション──いわゆる抱き枕を腕にかかえ込んで、床に転がった。]
[美しい繻子織りのクッションを噛んでみる。
美味しくない。
けど、なおも噛む。爪をたてる。
子猫が戯れながら狩りの真似事をするように、抱き枕を組み伏せて、のしかかって、噛みつきながら、
スゥと眠りに落ちた。*]
…ヒル?
[もっとグロテスクな想像を]
練習…ああ
[しようというなら、してもいいのだろう。
どうやら助けられてばかりのよう]
[同族の血は大っぴらには、摂らないもの。なる知識がないディークには抵抗もなにもなく。
悪食は感染する…かもしれない]
― 森 ―
はー。どこだよここ…
[暗い鬱蒼とした森。最初はステファンの姿を追って森に入ったものの、すぐにその姿は見えなくなった。あとは歩き慣れない森の中を方向も分からず闇雲に歩き続けて――すっかり迷子になっていた]
……。
[最初は館の方向だけは意識して歩いていたのだが、じきにそれも分からなくなり。空を仰げば月がやけに大きく見える。
明かりもなく飛び出した割に足元に不安がないことに不思議を感じたが、そういえば自分はもう人間ではないのだと苦笑いが浮かぶ。闇の住人なのだから闇と親しくて当然]
[がさりと物音がしてもしやとそちらに目をやると、足音に怯えたように白い野兎が駆けていくのが見えた]
…あれ…
[自らの喉に手を当てる。白い丸い姿を目で追うとすぐに見えなくなったけれど]
……。
[気がついた――喉が、渇いている?気がつけば、何故今まで気付かなかったのかが不思議な程に。耳をすますけれど小川のようなものはないようだった。
やけにひりつく喉を押さえて歩くけれど、意識すればゆびさきは冷えて歩みは遅くなる。最早館に戻ることも叶わず]
(あ、これやばい、かもしれない…?)
[そんな気がだんだんと強くなる。月の位置は最初に見た時よりもずいぶんと低くなっており――夜明けは、いつくるのだろう。けして詳しくはないが、吸血鬼ならば太陽の光に弱い筈。
視線の先をずっと遠くに向ける。先に森に入った筈の彼は、ちゃんと館に戻れているのだろうか――]
[そのうち、下へ下へ伸びる階段を見つけた。
階段昇降の練習とばかり、下まで降りる]
たべもの
[食料庫を見つけて首を傾ぐ。
勝手に漁って、ナッツや干し果実、チーズ類をほんの一欠けずつ。布に包んでポケットへ入れた]
[地下は人工物ではなく、削ったようでもない岩肌が見えた。さらに奥からは涼しい空気に混じって水の気配。
進むと館から出ることになるだろうか。
立ち止まって考えた]
[吸血鬼として在り方への拒絶も、人間としての幸福も。
どちらも覚えがないと、千歳を経た吸血鬼は答える]
……そう。
[短く応じると、鎧窓に背を預ける相手の顔を、
ソファに腰掛けたまま振り仰ぐ]
そうね。あくまで私の場合は、だけど。
これ以上、何も失わずに済むわ。
良い事かどうかは知らないけれど、私には十分過ぎる理由ね。
[他人の生も、これまで築いてきた自身も。
それと引き換えにしてまで永らえる理由も、もう持たない]
…………、――
吸血鬼をやめる方法は、死しかないけど。
君は、死ぬことは平気?
――……
[森を刺すような光の訪れを受け、男は自分の体に触れる。
その肌には痛みもなく熱もなく、わかりきっていた事だというのに、どこか残念な気分になって――…]
― 森・夜明け ―
[太陽の光を全身に受け、崖の上に立ち軽く背を伸ばす。
空腹を訴える体に、そういえば真っ当に食事を摂っていなかったという事に思い当たった。
一瞬、飢え死にを考えてみたものの、それは847年前と360年前に試してみた事、死ねなかった事は実証済だ。]
[ならば城館へと帰るしかない。評議会を裏切ってみるのは1000と800年位前にやってみた。
自分を無力化させることは易かったのだが、死滅させる方法が見つからず、流水牢の中で無為に時間を過ごす事となってしまったのだけど――…
心臓を抜かれ、焚かれてすぐに、新たな鼓動が存在した時は、自身の拝する神の愛を、恐ろしいと感じたものだった。
館にいるであろう彼のことを思えば足が重いが、他に選択肢もないと……
それでもできるだけ時間をかける為、来た道とは別の道を行くだろう]
………。
[ぱちりと一度、目を瞬いた。
何を今更、と言わんばかりに]
もう、一度死んでいるじゃないの。
[もう、後に遺すものもない]
[ほんの僅かな対話を数回、それでもトールの温厚な人となりは
見えるような気がしていた。
そんな彼で自分を嗤うだろうと…覚悟していた。]
……何も、言わないのですね。
[泣かないように、膝を折らないようにと構えていた力が
徐々に抜けて行く。
彼は何も言わない所か、そんな自分を迎えようとして
大きく両の手を開いて見せていて、思わず一歩前に踏み出す。
>>113]
養親……。
ああ、評議会がどうのと言っていた、あの。
[積み上げて来た知識は塵と化し、
人間で在り続けることは自ら放棄した。
滅びようかと考えると目の前の彼が手を差し伸べて来る。
ならば歩むべき道はひとつしか無い。]
――なん、で……
[見つけることができたのは、来た道と違う道を行ったからだろう。
森で迷い、動けなくなった彼が、岩陰に凭れるようにして倒れている>>177。
直射日光に当たらないとはいえ、木々の間から漏れる柔らかな日差しの残響は、現在進行形で彼の命を灼いている]
お聞きしても宜しいでしょうか。
[ゆったりとした足取りで近付きながら、口を開く。]
僕は、もう戻れませんか。
[自分自身でも嫌と言うほど解りきったものだが、
少なくとも再び会いたいと思っていた彼の口から
明確な答えが聞きたかった。
今度こそ踏ん切りを付けようと思ったのかも知れないし、
彼の子で在る為であったかも知れないが、
実際どのような意図を持って投げ掛けたのかは
一番自分が良く解っていない。
彼からの答えを聞く頃には、身体は腕の中。
往生際悪く頭を胸に押し付けるだけの形であるが、それなりに
信じているという証にもなるだろうか。]
/*
うーん。
ここまで自殺願望を高める気はなかったのだけど、
色々重なってこの現状。
自分より身近な他人の感情を優先しちゃうタイプにしたのが、今のとこ裏目に出てるわね。
ますたーと絆なり義理なりができれば、逞しく生き抜くモードに針が振り切れるようにしたんだけど…
余りっこでもらわれてるの知っちゃってますしね。
別に拗ねてる訳じゃないのよ?うん。
…ダーフィ……くそっ!!
[「ダーフィト、今すぐ館に戻るよ!!」そう言いかけたのだが、今は魔力の満ちる月ではなく、それを覆いかくす太陽の時間、加えて空腹状態に、独学の魔術では運ぶべき質量が多すぎる。
取れる選択肢が少ない事に悪態をつきながら、彼がここにいる理由を探し、自身が原因なのではと行き着く]
― 地下湖→ ―
[ひとしきり泳ぎ回って満足した後、獣は岸に上がって全身の水を振り飛ばす。
人の形に戻れば、水気もたいして気にならなかった。
使用人の伝達もレトに届いた頃合いだろう。
自室に戻るべく、歩みを進める。
途中、食糧庫の奥に寄って獲物を検分した。
食糧庫には、何かあった時に備えて生餌もいる。
生きのいいのをひとつ、選んでおく。]
ところで。
貴方の事はお義父様と呼べば宜しいのでしょうか。
他に何か呼び方があれば、そのようにしますが。
[未だ不安定な状態である事から、トールの傍に付いて
休む流れとなったは良いものの、口を開けば質問ばかり。
彼の部屋へと向かう最中も様々な内容の問い掛けが途切れず、
流石に面倒見の良い彼も疲れたのではないだろうか。
…ただし、思い出すのが嫌だからか自分の事には決して
触れようとはしなかった。]
[それと同じ事をもう一度、己の意志で成せるのか。]
[――突き付けても良かった、
ほんの瞬き程度の時間しか知らぬだろう幼気な少女に、
その断崖に至る恐怖を]
[ディークを置いて逝くのか。]
[――あるいは謗る事も出来た、
死の瞬間まで娘の無事を思ったであろう男を見捨てて、
その空虚な安寧を]
[あるいは生まれながらにそうとしか生きられぬ真祖の在を、
あるいはヒトが奪い口にして生きる生命の無声を、
もっともっともっと]
[まばたきの一瞬、ほんの一足か二足、
微かに揺れる空気とその姿は既に娘の眼前にあり、
両の手がその滑らかな頬を掴む]
駄目だよ。
失う事ばかりを考えないで
――僕が与えるから
君に理由をあげるから、
死なないで
最期まで失ったままで居ないで。
[しばらく水際から離れたほとりに立って、ゆらゆらと蠢く青い光を見ていた]
…
[──何かいた]
クラーケン?
[最初に記憶の箱から出て来た単語を呟いてみつつ。
服があったのだからそれを着ていたものだろう。
上がって来る前にと、そっと岸から離れた*]
…ああ!もう、本当にっ……!!
[自身を罵倒しながら、適当なサイズの石を拾い、ダーフィトの倒れる岩陰に力任せに印を刻む。
描く為の道具ではなく、それでも刻み込もうとするために、岩肌へ擦りつけるたびに、掌の皮膚が捲れては修復していくのだが。
生憎と、痛みというものには慣れている。
かくして物質変換の術は成り、印刻まれし岩陰は廂を伸ばし、彼の身を光より守るだろう。
とりあえずはこれで安心できるのだろうか?
安堵の息を吐き出し、彼の様子を見ようと近づいた]
[途中、見慣れぬ者を見かけたが>>183、幼い者のひとりと知ればそれ以上の関心は向けなかった。
獣の姿で水から上がったところを見られたならば、多少ばつの悪い顔にもなったが。
話しかけられなければ、そのまま通り過ぎることだろう。]
/*
早いとこどうにかしないとねぇ。
何かとこじつけて引き延ばしてるうちに、ますたーと絆が芽生えればいいんだけど…
もしくはでぃーくんとの邂逅で、何らかの心残り?復活。
最悪、お父様の生死を不明にして楔に…はテコ入れ過ぎてやりたくないのよね。
実は単独でさらわれたプランもあったとか。
/*
メモはりにいったら、メモの黒幕さんの発言が目に入った。
「血の繋がらない吸血鬼の主従として、愛と調教と葛藤のラブロマンスをお楽しみください。」
ラブ…ロマンス…?
/*
…ますたーないす!
実はますたーが使わなかった前者の理由は、真祖さまの件以外全部検討して、それでもこの性格と状況的に理由にはならなくて、なかのひと困ってた…!
回避してくれてよかった、さすが我が主!
― 自室 ―
[いくつかの手配を終えたのち、自室へと戻る。
使用人から、レトはもう部屋にいると聞いていたが、とくにノックする必要は見出さなかった。
扉を開き、部屋に足を踏み入れて、そこに転がるものに目を落とす。>>173]
……。
[ずいぶんとぼろぼろになったクッションを抱きしめて丸まる寝姿に眉を上げ、まずは静かに扉を閉めた。**]
[水のかからない位置まで退いて、上がって来た獣を見るともなしに眺めた。
蝶といい犬?といい、便利な技だと思う
廊下ですれ違う小間使い達と同じ、向こうが話しかけて来ないならそのまま過ぎる]
[戦士の本能だけは、浅黒い肌の魔物とすれ違った時にじわりとした緊張を生んだ]
[飢えによる消耗を見て取れば、自身の腕の皮膚を噛み切ろうとするのだが――…
「見る者によっては、自身は神の依代である>>0:305」そう彼に伝えたのが随分前のように感じる。
自身の信じる神にとっては自身の血は神の血でもあり、そんなものを混ぜ物もなしに与えられるわけがない。
混ぜ物を取りに一人館に向かうことを考えたが、離れ過ぎたら岩肌の印は魔力を失い、彼は陽光に灼かれるだろう。
既に人ならざる彼に、彼女と同じ方法>>0:37をとれるわけもなく]
――少しだけ待ってて!
[聞こえているのかわからない彼に、そう言い聞かせたならば、ウェストコートをその場に脱ぎ捨て、同じく脱いだシャツを手に、彼のいる場所から離れた]
[気配が消えた後、濡れた岸辺を避けてまた水際に寄る。
手を伸ばして青い水に触れた]
うみ…じゃないか
[掬った水を舐めてみて、見た目同様に透明な味を確かめた。
ならばこの湖は、館の外の世界には繋がっていない。
戻ろう、と立ち上がった*]
[何をどうした結果なのか、程なくして戻った男の腕には穴熊が一匹捕らえられている。
捕獲に使ったと思われるシャツはボロボロで、着直せそうにないのだが、男はそんなことは気にもとめず穴熊の首にかじりつく。
暴れる穴熊が命尽きるまで、男の身に傷をつけるが、それもすぐさま塞がっていく。
息絶えた獣の血を口に含み、仕上げに自身の唇の内側を切りつけ、その血も加え――…
そして、かろうじて息をしている彼の傍へ。
急がなければという気を抑えながら、器官に入ってしまわぬように慎重に、その口へと血液を流し込んだ]
配慮?
[瓶を拒絶する血飲み子>>165にフン。と鼻で笑いソファーから立ち上がる]
未だ満足に狩りのできぬものにはその混ぜもの充分なだけだ。
[ベッド上、誘われるにも欲するにも足りぬ赤子にまで近づくと両肩に手を置き間近まで顔を寄せる]
貴様は何を望んでいる?
[低く囁きながら、むき出しにした牙を、血飲み子の首筋に突き立てた]
[この者より命を宿した紅の滴が喉を通るのはこれで二度目。
渇きを覚えつつある血飲み子に更なる飢えを与え、理性と本能の際を彷徨わせるための責苦。
血を吸い上げると首筋から顔を離し、頭を掴んだままグラスに入った血のワインをテーブルに垂らし、そこに力づくで顔を近づけさせる]
手間をかけるな。血飲み子は地に這わねば飲めぬのか。
[嘲りの色が声に込めながら、なめとるまで頭を離しはしない]
(――くそっ!くそっ……僕は本当に馬鹿だ!)
[意識も危うい状態の彼が、舌を喉へと巻き込まないようにと、自身の舌で誘導する。
呼気の邪魔にならぬことも考えれば、一度に与えられる量は少なく、もどかしさを覚えながらも数度にわけで血を与えた。
こくん、と、喉が鳴る音を聞けば、飲めているのだと、安堵はすれど、予断を許さない状態には変わりない。
しばらくは給餌行為をやめることはせず]
―トールの部屋の前―
[室内を整えるのだろうか、少しばかり待つように言われて
大人しく扉の前に一人立つ。]
……窓が無い。
[今までの事を考えそうになると、無理矢理にでも周囲の
情報を得て覆い隠そうと試みる。
幸いながら人間の暮らしとは大きな違いも見えている為、
今はまだやり過ごせている。]
この周辺の違いは、それだけか……。
他に何かないのかな。
[右に左に視線を彷徨わせてみるものの、この近辺では
新しい発見は無さそうだ。
敢えて言うなら仄暗い廊下があるだけだが、妙に落ち着くのは
自分が変わったせいなのだろうか。]
― 自室 ―
[厚みのある扉を閉めれば、部屋の中は外と隔絶される。
部屋の壁にはタペストリーが掛けられ、絨毯は毛足の長い上質なもの。
足音も部屋に吸収され、音もなくレトの傍らへ歩み寄った。]
起きろ、ティファレト。
[静かな声を投げ落とす。]
貴様にとって我は頼り崇め奉る者。それ以外の何者でもない。
[幾度か告げた言葉を改めて今一度繰り返す。組織や他人の評価など気にもとめはしないが]
赤子を見捨てるようなものに誰が魅入られる?誰が焦がれる?我が我でいる以上、捨ておく気はない。
貴様は余計なことを考えず成長しておればよいのだ。
[それなら死ねと突き放すのか。
それとも、今一度死ぬべきでない理由、生きるべき理由を並べ立てるのか。
どちらだろうと見定める隙間を縫って、一瞬で距離が消える。
柔らかな掌に頬をとられたまま、視線を重ね]
――……理由、を?
貴方が?私に?どうやって?
[死にたがる者は、死なせておけば良いものを。
手駒としても用は成さないだろうに、とぼんやり思う]
貴方は、いつもそうしてきたの?
自分の子ども達に。
[だとしたら、随分と面倒見の良い吸血鬼だ]
[あまい。
口の中に流れ込んでくるあまい液体を一口、こくりと飲み込めば、既に力が入らなくなっていた四肢に少しずつ力が戻る]
…、
[数度に分けて流し込まれた液体を、たりないと。もっとと彼の口の中に舌を伸ばす。逃げようとするならば、片手で彼の頭を捕らえて逃げられぬように。そうしてあまい味を味わい尽くせば]
[こくり、と喉がなる。ゆっくりと目を開けば、目の前の彼はどんな顔をしているだろう]
―…、
[何かを伝えようとするように、唇が動く]
− ロー・シェンの部屋 −
[ロー・シェンの声に、意識は面白いほど素早く覚醒した。
寝足りたというわけでもなく、ただ、待っていたものがそこにある、とスイッチが入ったように。
抱えていたクッションを、エイヤッとばかりに投げ出し──それがロー・シェンの方向だったのは偶然だ──立ち上がる。]
おっ きた。
……!!
[>>196 吐息が降れるほどの距離で低い声が問う。
後ずさり逃れようとしたが、それこそ赤子の手をひねるように捕らえられ]
やめ、…やめろ…ッ
……ッぅ、ん、……ッ
[突き刺す痛みは、一瞬後には甘い痺れに変わる。
けれども、奪われた分だけ一気に渇きは悪化し、相手の思惑通り自身を苛んだ。
牙から解放される頃には、覚えのある痛みを再び味わう。]
……いや、だ…!!
[何を望んでいる、という声を脳内で反芻する。
そそる香りを漂わせるワインに間近につきつけられても舌を出さなかったのは、あの時とはモノが違ったからかもしれない。]
あんたの言う事なんか、聞くものかッ…
[ただ一度きり、その一瞬に渾身の力を込めて自分を押さえつける手をはねつける。
そんな力がないと油断されていたからか、奇跡的に抜け出すことに成功し、そのまま扉を叩きつけるように開くと部屋を走り出す。
こんな恰好(女装しかもメイド服)で出歩けるものかと思っていたが、かまってはいられない。
というよりは、向かうところも解らぬまま、ただ夢中で逃げた。]
……私は、
あんたを満たすための玩具じゃない…ッ
[苦い、苦い声で、絞り出すように叫んだ。]
――っ!!
[それは3(6x1)目の給餌行為の最中、何かが肩を掴む感触に思わず身を引こうとするのだが――…。
頭を抑えられたことによって、その目論見は失敗した。]
[レトが目を覚ます―――と同時に跳んできたクッションを、片手で受け止める。
微かに呆れたような感心したような表情が浮かんだが、それもすぐに流れた。]
俺がおまえを教育する責を負うことと決まった。
それに当たり、最初に言っておく。
[相手の反応は見ずに、まず宣言する。]
……方法なんて、良いでしょう。
もっと関係ないじゃない。
[血の繋がらぬ二人の間は、
差し出したものをその手に載せてくれなければ
通わせる事など出来ない]
時間が掛かるのは解っているよ、でも、
少しずつでも教えるから受け取ってほしいと思う。
……そうだよ。何故、訊くの?
死にたい者はそのまま死なせる事が良いと思う?
[階段を上って上って、地上階に出たところで、
十字の廊下に立ち止まる。
肩の蝶に指先で触れて、]
[方向感覚が完全に狂っている迷子の子は、どちらも同じに見える廊下を見回した]
(――いつの、間、に)
[彼によるものだと認識するのと同じくらいだろうか、更なる餌を求める舌が無遠慮に男の口内を蹂躙する。
彼の発達した犬歯が、勢い余って男の唇を噛み切ってしまった事に気づけば、一瞬焦りはするものの――…
未だ口内に残る獣の血の味に、混ぜ物があると認識する。
ならば好きにさせようかと、されるがままにしていたのだが……
口内の餌に反比例して、更に欲しいとせがまれて、これはキリがない事に気づき抵抗を試みてみたのだが、悲しきかな空腹状態……
開放される頃には、精神的な余裕は殆どなくなっていた。]
―廊下―
[宛がわれた部屋をふらりと出て、廊下を行く。
友人を訪ねるつもりであったが、所在が分かっている訳ではない。
つまり、殆どあてもなく彷徨しているようなものだった。]
/*
おもしろ愉快な現場が近そう。
でも、あんまり多角にしたらあれかなと思うので
遠くで派手な声がしたのを聞いただけにしておこうかな?
…!?
[こちらへ向かう足音が速い、と認識してから反応するまでに間があった。
振り返った双眸にメイド服が映る]
[瞳孔が僅かに開き、赤錆色の虹彩が色を増し───
そして、]
っぁ。
[思いきり衝突してきたメイドを抱きとめ、衝撃を殺すように一歩、二歩後退した。
時間差で、持っていたグラスが床で砕ける音がする]
……
[今の自分がどんな顔をしているのかなんて、よくわからない。
目の前の彼が目を開くのを見れば>>199、喜べばいいのか、怒ればいいのか、悲しめばいいのか。
――とりあえず、この場から逃げたい。
そう思いはするものの、未だ陽のある時間帯、追ってこられてしまったら、また大変な事になりかねない。
そもそも、自身が逃げ出さねば、彼は倒れる事はなかったのだ。
とりあえず自分も喉を潤そうと、傍に座ったまま、無言で獣の屍に残る血を啜る。]
目的のための手段も、気になる方なのよ。
[少しだけ、今までと違うように聞こえる話し方。
物珍しいものを見る思いで、間近で視線を絡めたまま]
そうね…、訊いた理由があるというより。
貴方がわざわざ、そんな事を私に言う理由が、一瞬解らなくて。
ああ、子どもになったからと思い出して、訊いただけ。
[唇に指先を宛がい、自問自答する]
親によって、随分子どもの扱いは違うのね。
貴方も、誰かにそうしてもらったの?
[>>180 様子から彼なりに現状を整理し、理解し始めてるのだろうアレクシスが、こちらへと歩み寄ってくるのをじっと待つ。
やがて近づいてきた彼を両腕の中に閉じこめれば、また小さく彼の名を囁いて、確かめるような彼の問いに目を伏せる。]
……残念だけど…、もう人には戻れない…。
[青年の黒髪を撫で、その感触を楽しみながら。
質問の意図はわかならくても、彼が知りたがっている事柄ならば、
自分が知りうる限りの知識で答えるつもりでいた。]
…とは言っても、陽の下を歩いても平気な者も極わずかだけれどいるから。
絶対に例外がない――とは、言い切れないけれど…。
少なくとも俺は…、人間に戻れた例を知らない。
[きっと彼の期待に応えられる者ではない答えしか返せない苦さと、己の胸に顔を埋めて来る彼へのじんとした甘さで、
胸の奥に、じわりと疼きが沸き上がる。]
[勝手に居た堪れなくなって逃げ出して、それで庇護するはずの対象に迷惑をかけてしまっている。
申し訳はないとは思うものの、これだけは言わねばならないと]
――…僕は、誰も、殺してない。 眠らせたとこ、君、見てたじゃないか
[ぽつぽつと、紡ぐ抗議の言葉。その中には、彼の疑念に対する答えも、無自覚ながらに含まれる。
彼の反応はどんなものだっただろうか]
[もう一つの問いには、また考え考え、ゆっくりと]
止めて欲しいと何処かで思ってる人なら、止めるのが
良いと思うけれど。
それに、止められるだけの理由なり関係なりがある人も。
どちらでもない相手なら、それが一番の手段だと決めた人に、
未だできることってあるのかしら。
…少なくとも、私なら。
大して何もしてあげられそうにないもの。
[目の前の人は、そうではないと言うのだろうか。
ごく微かな興味を以て、返答を待つ]
?
[メイドの体は軽い。
プラチナの光が眩しくて緋色を細めた]
だいじょうぶ
[支えた腕を離そうとして、ふらつくようならもう一度手を添える]
…血が
[出ている、と目線で示した]
[クッションの行方に気づいて、あ、という顔をしたが、有無を言わさずロー・シェンが用件を告げるらしい様子に、自分がここに呼ばれた理由を知りたいと、好奇心と期待の混ざりあった視線で見つめる。]
…、
[自分の引受人がロー・シェンだと知らされれば、小さくジャンプした。]
申請、通ったんだ。 やったね!
[ロー・シェンが自分を希望してくれたこと、そして、それが無下に扱われなかったことの双方が嬉しい。]
まったくどこまでも手間のかかる赤子だ。
[コウモリ倶楽部によると、『まずは血を飲ませるのが大事です。その際は、混ぜものの血が最適。なりたての子が本物の血を飲むと、血への欲求が深まり堕ちてしまうときがあるからです。』とあったからやったがどうやら失敗したらしい。
追わずに、会報誌にもう一度にらめっこする]
[続けて、ロー・シェンが伝えた方針には、しばし唇が引き結ばれた。]
ルマニは、まつろわぬ民だ。
…でもそれは、誰とでも事を構えるって意味じゃない。
兄貴は一度、オレに勝ってるし 、
「責を負う」って、一蓮托生ってことだよな。
義理っつーか、なんつーうか… 逆らう意味が見出せねぇよ。
[蝶による移動は、一見万能に見えるが、分身である蝶を配置している場所にしか移動できない欠点がある。
他者を随伴して移動する場合を除き、実際には自身を一度分解して、目的地にいる蝶を核に組み立て直している。
故に、分身の蝶のいない場所、完全に未知の場所には転移できない。
この城館内では、流石に他の血族の手前、むやみに蝶を徘徊させるような真似はしていない。
プライバシーを侵害したと、要らぬ騒動の種を巻かない為だ。
というより、釘を刺された。
それに、たとえ数万分の一とは言え、到底友好的とは言いがたい血族のひしめく館内に、自分の一部である
了解だ、
あんたについてく。
ただし──、オレを制するのはオレだって教えたのも兄貴だからな。
[肝に銘じておく、だけど、縛られはしない。
あくまでも自分で納得して従うのだと、胸を張る。]
[自力で立っているには心許ない気配を察してか、手を添えられて申し訳なさそうにする。]
……正気に戻っていたのか、よかった…
[あの夜見かけた彼は、まるで獣のようだったから、どこか反応に緩慢なものを感じながらも安堵を覚える。
血、と指摘されて、先程噛まれた場所を指で押さえる]
………あぁ…、行かないと…
[そうしてなんで走っていたのか思い出す。
追ってくる気配はないものの、背後を一度見た後、添えてもらった手を離した]
……もし、術やなんやで無理矢理心を動かす事を
選択肢として考慮したのなら、
それは大分、思い過ごしだよ。
[血を啜る化け物風情であるからそんなものだ、などと
思われているとしたら、随分と遺憾な事だ。
社会組織の基盤は、構成員同士の良好な関係であろうし]
執行人……ロー・シェンから話を聞いたでしょう。
子の扱われ方は様々だって。
[目を開ければ、彼がなんともいえない顔でこちらをみていて>>206
未だぼんやりする意識をゆっくりと辿っていけば、先程までひりつくようだった喉が今はなんともないことに気付く。
そうして彼が死した穴熊に噛み付くのをみれば、ああ助けてくれたんだと理解した。どんな手段で、までは意識が回らなかったけれど。
そうして>>209を聞けば]
…?、あ。そうか…
ちがうよ、俺が、吸血鬼に、襲われた時に…学校の、皆を。殺したの。
――うん。殺してなんていない…
[誤解、の元を理解して。あれだけ傷ついた顔をした理由も理解して。
未だ岩肌に倒れたままながら、安心させるように微笑むと、小さな子にするように、伸ばした手で彼の頭を撫でた]
オスカー。あれの下へゆけ、死なぬ程度にならば好きにさせよ。
[片方の袖から一匹の、黒蛇が呼び出しに応じて顔をだし、地に落ち、地面を蛇行しながら空いたままの扉から廊下へと出ていった]
おや。
[行く手に若い血族――トールの姿が見えた。
伴っている雛は、彼の養い子となる者か。
クレステッドらがバランを仕留める現場で一度顔を見てはいたが、人となりは知らない。
足を止め、頭を少し傾けてふたりの様子を見守る。
トールの表情から、何がしかのものを感じ取り、気付かぬのならと自分から声をかけるのを止めた。]
[続いて、己の子供としての経験論かと問われたら]
……そうだけど。
問いに問いを返すようだけど、
君にもし子供がいたら、どんな風に扱うの。
[自明だろう、と微かに唇を尖らせる。]
……そのどちらでもない者が出来る事は、
相手が死んでしまうまでに、
止められるだけの存在なれるように最善を尽くす事
かな。
……、ああ。
言われてみると、そういう方法もありそうね。
[ついさっき、呪を掛けたのかと自分で尋ねたくせ、
指摘された手段は今は思い浮かばなかった。
眼前の吸血鬼はとりそうにない手段だと、無意識に
判じたせいかも知れない。
口数も情の発露も少ないこの親が、どうやって子を
養ってきたのだろうと、単純に答えを待っていた]
執行人……、貴方がそう話しかけてた、金髪の人ね。
――ええ、聞いたわ?
だから、貴方の場合を訊いたの。
子を養って。その先は、どうするの?
千年もあれば、きっと大勢の子がいたのでしょう。
[申請が通ったのかと飛び上がって喜ぶ姿を見れば、目がやや細くなる。
続いて捏ねられた理屈に、今度は険が差した。
頭ごなしに押さえつけかけ、思いとどまる。
バランはチャイルドに何一つ教えていないらしい、と気づいたところだ。]
人としての理屈は捨てろ。
長幼の順を守り、目上に逆らわず、評議会に従順であること。
なによりも、"子"は"親"に尽くし従うことだ。
[表面には出てこない暗闘については、この際省いておく。]
[違うと言われ、彼の言わんとしていた事を聞けば――…]
君が吸血鬼にされた時なら、多分それはバランじゃないかな?他の血族が襲った場所でバランの血子が生まれるというのは、おかしな話だからね。
そもそも僕らは、バランが無差別に狩りを始めたから、それを討つために評議会に呼ばれたのだし。
[正しく、彼が聞きたかった答えを。
頭の上に置かれた手>>215には、特に抵抗することもなく。
不本意ながらに撫でられつつも、美味とは言い難い獣の血を吸い尽くせば、血抜きされた穴熊が一匹。
血抜き方法に問題があるので、土産物とは言えないのだが。]
では貴様は我の何になれるのだ?未熟な雛鳥よ、渇望する立場があるならば申してみよ。
[叫ぶ言葉には冷淡な声で望みを問う言葉を返すも無理に届けようとはせずに、蛇を追わせた]
[何気なく親のことを尋ねれば、相手は思いがけない反応を寄越し]
……。
ああ、ええと。
もしかして、聞いてはいけない事、だったかしら。
だったら、ごめんなさい?
[唇を尖らせる表情は、その容貌に似つかわしいと初めて感じるもの。
見てはいけないものを見てしまったような気がして、何とはなしに焦る]
私に子供が、いたら……?
吸血鬼の子供を持つ想像は、できないけど。
自分で産んだ子供なら、大事に可愛がると思うわ。
[何某かの興味を以て投げた問いは、久しぶりの気がした。
その答えは、自分の問いかけを継ぎ合わせたようなもので]
………、……
うーむ
『ただ甘やかすのも無暗に叱り付けるのもいけません。飴と鞭はバランスが重要です』…が…加減とバランスが乗っておらぬぞ。
[距離を置いて興味を持たれるのを待ちましょう。とかまどろっこしい方法もみながら眉をひそめた]
[過去の子らについて尋ねられれば]
大体は独立したよ。
その中には、既に彼らの子を持った者もいるね。
氏族を同じくする同胞として、協力してくれている。
執行人が言っていた『手駒』も、
『捨て駒』ではなくて、本質はそういう事。
……もっとも、みだりに子をなしてはいけない決まりだし、
大勢、という訳ではないけれど。
[首を振るメイドを横目で見る。
壁伝いに歩き去る姿には何も言わず、這い寄る蛇へ向いて]
とめる…今度は
[その人の逃げる先、求めるものがなんであろうとも]
…
[手ぶらで蛇に相対するならば]
[頭の付け根を踏めばいいか。と考える。
そしてそれを躊躇いない鋭利さで実行に移した]
[頬に掛けた手を、ゆっくりと退ける]
僕が前提として、自死が最善の手段という事はない、
という立場に立っているからでもあるけれど。
……話が逸れてしまった気がするね。すまない。
[緩く握った拳を口許にやる。
咳払いは上手く出なかった]
この歳になって親の話をするのはどうもね。
[ロー・シェンの珍しい長舌。
「吸血鬼我らの中で生きていくために」という理屈には説得力があるものの、ロー・シェン自身がそれを心から崇めて履行しているならば、こんな御触書みたいな説明にはならないだろう、と思った。]
…、
[反駁の言葉は100も思いつくけれど、ふたたびロー・シェンが”身内”発言をすれば、呑み込んでしまう。
そういう”覚悟”には感じやすい。]
教育って、具体的にどうしようって考えてるんだ?
[方針についての論は避け、ロー・シェンのやり方を問うた。
吸血鬼についてほとんど何も知らないことは自覚している。
確かに、生きていくために覚えるべきことはいくらもあるのだ。]
……煩いッ…
[聞えてはいた。
けれども、投げつける答えすら持ち合わせていなかった。
ただ、”赤の他人”と言い返さなかったのは、何でか自分でもわかっていない。]
[目を惹く美しい黒髪と、思慮深そうな端正な顔立ち。
これではトールが惹かれるのも無理からぬもの。
雛の方はと言えば、さっきまでの考え込む表情と、一礼する様子から、見えてくるものもないではない。]
[蛇は主の言いつけを守っていたところに、阻む雛をみとめる。ぎょろりとした瞳は無関心以外の色を宿すことなく。
頭をぶしつけに踏もうとする足>>228に、蛇行の幅と速さをずらすことで、避けながら横を過ぎていこうとする]
大体は、ということは。
手元に残っている子もいるのかしら。
…まさか、共同生活をしなくちゃいけないってこと?
もし私が、死ななかったとしての話だけど。
[仮定の話を想像して、思わず顰め面になる]
実子の中に混ざるみなし子という訳ね。
ぞっとしないわ。
[頭を振り、浮かんだ想像を直ぐに打ち消す。
『手駒』の説明には、養い親のように捉える者もあれば、
血親のように解釈する者もいるのだろうと軽く頷いてみせる]
[レトが自分の言葉に納得していないのは見てとれたが、反論がないことで今はよしとする。
具体的な方法について問われれば、心得て頷く。]
なにごとも体で覚えるのが早い。
来い。まずは狩りから教える。
―――ああ。その前に
[扉へ一歩踏み出したところでふと思い出し、手招きで呼んだ。]
[靴底を避ける動きに、脚の軌跡は地についた瞬間から、弾けるように速度を上げて蹴り上げる形に変わる]
… ──?
[いや、速い。
まともな蛇にしては速過ぎる動きだった。
肩の近くを舞っていた白い蝶へ、もの問いたげな視線を向けた]
[目指すは―――
ガコンッ ズズ ズズズ
不意に手が触れた装飾が、壁の奥へと沈んでいく。]
……え?
[目を見張るとほぼ同時。
床が抜けるギミックが発動して、そのまま下へと落下していった。]
え、ちょ、ああああああぁあああ!?
[そう長くない落下の後、
ザッパーン!!!
盛大な水音を立てて、地下湖へと突っ込んだのだった。]
狩り!
[ルマニの民と暮らしていた時から、その言葉にはときめくものがあったし、今もまた期待と高揚を感じる。
その一方で、自分の状態を思い出して、へにゃんと眉が下がった。]
あー、飢えてる。
腹が減ってるのとは違うんだけど──いい気分じゃないのは同じ。
わびしいような、切ないような。
動けばもっと乾くってわかってるのに、やたらバリバリしたいような。
[裂けたクッションを拾い上げて眺める。]
(………っ!!!)
[水は澄んで視界はクリアだった。
だが、着ている服が悪かった。
着馴れぬスカートに、たっぷりとした布は水中で広がってまとわりつき、浮上しようとする手足の動きを妨げる。
血を奪われていたところにこの状況では、あっという間に体力は底をついた。]
(………っ、)
[陽に身を投げようとしたのに、今もがいているのが何か可笑しくなって。
こぽ、と口から泡を吐いたら、肺に流れ込んでくる水に意識が遠のいた。]
[蛇行を続けながら、一度、睨みつけるようにして再度阻むように足を動かす雛>>233をみれば、尾がハルバードのように形を変える。
威嚇目的という知性と更に阻むならば足を根元から切り裂かんと横薙ぎに振るわんとする獰猛なる意志の表れだった]
アイリス……
[彼の口から出た名前に>>229、昨夜の通達を思い返す]
多分
[確かに、その名前も記されていた。
最期のの質問に関しては、なんと纏めればいいのか思いつかずに、しばらく腕を組み悩む仕草を。
マスターとチャイルドですよ、と、いうにはあまりにも説明不足な気もしてしまって。
やがて出てきた返答は]
養子縁組みたいなものだけど、あれが何なのかは血族による、かな。うん。
[返答になっているのか怪しい答えを]
[子育ての経験は確かに豊富なコンラートだが、生きている血子の殆どが独立してコンラートの元を離れている。
若いトールは知らないだろうが、いわくつきの人物なのだ。]
それじゃあ、早く部屋に行った方がいいね。
僕はこれから古い友人を訪ねるところなんだ。
また後でね。
[莞爾と微笑み、自分からトールたちから離れようとした。
水差す無粋な真似はしないがいい。
時間はいくらでもある、そのうちにトールを知る機会もあるだろう、と。]
[それがクレステッドの蛇と気付けば、思わず唸ってしまう。]
”まあ……友人ではないけれど、
あんまり殺して欲しくないかな”
[頬に触れていた掌が、静かに離れていく。
同じ温度を持つ華奢な掌は、接触を意識させないもの]
いえ?
さっきまでの話に比べれば、余程興味深かったから。
[『この歳になって』と口にする相手を見れば、
笑みが小さな音になって零れ]
……あ、っと。ごめんなさい?
だってあなた、まるきり私より年下の女の子に
見えるのだもの。
[口許に拳を宛がう仕草も、外見と相俟って可愛らしく映る]
[蹴りの動きが止まるのと前後する蛇の異形の威嚇。
獰猛なハルバードはそのまま脇を通り過ぎようとして]
[城館自体が寝返りを打ったような振動。
遠くなる悲鳴のようなものが聞こえ、振り返れば廊下には誰もいなかった]
…
[脳が色々処理しきれない]
[頬に触れていた掌が、静かに離れていく。
同じ温度を持つ華奢な掌は、接触を意識させないもの]
いえ?
さっきまでの話に比べれば、余程興味深かったから。
[『この歳になって』と溢す声には、笑みが小さな音になり]
……あ、っと。ごめんなさい?
だってあなた、まるきり私より年下の女の子に
見えるのだもの。
[口許に拳を宛がう仕草も、外見と相俟って可愛らしく映る]
他に養育中の子は、今はいないよ。
――独立出来なかった子供がいた、だけ。
[逆に言えば、養育を終え独立した子が自領に残り、
働いてくれている者はある。]
僕の子が君の事を、養子だからという理由で
悪く扱うんじゃないか、と思っているとしたら、
そこはもう少し信用して欲しい所なのだけど……
まあ、言っても仕方ないね。
直接の面識がある訳でなし。
/*
秘話を独り言に誤爆しちゃった…
しかも、秘話に再投稿しようとすると、直前と同じ発言をしようとしています、と止められた。
・・・・・・・・・・・・何をやっているのだ。
[侵入者用のトラップかはたまたどこかの遊びにかかった。と知覚して>>234して霞むようにその姿が私室より消えていった]
”その前に君が殺されかねないよ”
”それ自体、かなり年ふり経た吸血鬼の蛇だ。
君の敵う相手ではない。
まして、それに血を与えた血族はね”
”兄弟を助けたいのなら、連れてこの場から逃げなさい”
[威嚇をしていた蛇も城館を揺るがす震動に阻むもの>>241への警戒を残しつつも、追跡兼護衛対象の存在がぽっかり消えたことを確認。
心なしかしょんぼりしながら、元来た道を帰っていった]
/*
へびちゃんの愛らしさったらたまらんですね。
そういえば、マスターの使い魔も考案中とのこと。
どうも可愛い子みたいなので、マスターより先に
抱き締めてしまいそうです。
[メイドが消えたところまで廊下を走れば、見事な大穴が床に開いていた]
…
[膝をついて覗き込むうち、
黒い蛇はするり、消えてしまう]
…
[肩口で囁く蝶の声を聞きながら、立ち上がった。
トラップならば追いかけるのは得策ではない。と思考したのは今では遠くなった判断力の欠片]
[血親の後を継ぎ、評議会の一員となったものの。
他の長命者と比べてまだ、経験が浅い。
そのため個性ある同族達の人となりを、まだよく知らなかった。
良い部分も、悪い癖も、含めて。]
ご友人を――…?
ああ…それは、お引き留めして申し訳ない事をしました。
[用事で急ぐところに声を掛けてしまったかと、慌てて頭を下げ。
優雅に立ち去るコンラートを見送る。
彼の血子がなぜ皆独立しているのか、
バラン討伐の際も、今も、彼が何を考えているのかは当然わからないまま。
見送る瞳には、ただ年長者に対する尊敬だけが映る。]
”……ああ”
[ああいうトラップがこの館にあるとは聞いていない。
奇矯な血族がよく仕掛けるギミックではあるが]
”…………”
”もう、大丈夫じゃないかな”
[しょんもり帰っていく蛇を見て、どこか脱力した声]
[多分、という不確かな答えながら。彼女の言葉>>0:497を思い出せば、同じ境遇である可能性は高く思えた。そして悩みながら出てきた返答に]
養子縁組。えーと、君が俺の親になる?
[見た目でいえば自分よりもはるかに年下ながら。きっと自分よりもはるかに長命であろうことを思えば理解はできる。けれど今まで平穏な生活を送り、親というものが近くではなくとも存在すれば、彼が自分の『親』というのしっくりとは来ず]
あれ、って?血族?
[さっぱり分かっていないところに聞きなれない言葉。この際だからと聞いてみることにした。というかだな]
…寒くない?それ。
[今更ながら。何故服着てないんだろう、と疑問も投げてみた]
― 地下湖 ―
[地下湖の上に現れた...はそのまま頭から落下していき、着水間際に水が畏れを抱くように割れていく様を睥睨しながらも、透き通った水の中は探しやすく目的の者がいる場所まで水を割って進み。
己の血飲み子>>236を捕える水に手を突っ込んで、引き上げた]
[さっきまでの話、と引き合いに出されると、
む、と一つ唸り声を漏らして]
……レッスンの方にも、もう少し
興味を持ってもらえるように善処するよ。
[努力目標を述べた所に、笑い声。]
――いや、謝るほどの
[続く弁明に一時停止。]
…………ああ。アイリス、僕はね
[そして城を揺する振動。 >>241]
[不調を訴えるレトを一瞥し、言葉を加える。]
血を飲まずにいれば吸血鬼は飢え渇き、いずれ狂う。
おまえはもう、限界が近い。
[衝動が行動になって表れている。
裂かれたクッションが、なにより証左だ。]
[近寄ってきたレトに手を伸ばし、引き寄せる。
腰を押さえ、首の後ろを掴んで固定し、
有無を言わさず首筋に牙を立てた。
きっちり急所に入れているのも、教育の一環だ。
一口ほどの血を啜ってから解放する。]
血の繋がりが無いのは不便だからな。
[いくらか上気した顔で、理由を告げた。]
……そうなの。
[独立できなかった。けれど、手元にはいない。そういう事だろうか。
もし解釈が合っているとしたら、その相反する状況が指す意味を問い直すのは憚られた]
養子だからというのもあるけれど…
私はあまり、何というか。
若しか、あなたに育てられたとしても。
…扱い易い子になる気がしないと思わない?
[婉曲的な表現で、自己申告を]
[片手をソファに突き、もう片方で娘の肩を支えた。]
――ッ、何だ?
[パラ、と僅かながら塵の落ちる音。
室内に視線を遣って、収まるのを待つ]
この程度で死ねると思ったら大間違いだ。
[何せ、この血飲み子は贅沢なことに真祖の血を二度も体に受けているのだから、濡れた血飲み後を抱き上げたまま、浮遊して岸に上がる。
割れた水が元に戻っていくのを背後に、平たい岩に血飲み子をおろし、水にぬれた服の前を開き、顎を傾けて気道を確保して人工呼吸をおこなった]
[行けるかと問われればこう答えるしかないだろう。
自分が離れれば、彼を危うくさせるかも知れぬと思っていても。]
”……それが君の望みならば”
[吐息交じりの声。
ふわりと蝶は暗黒の穴の中へ漂い降りていった。]
― 地下湖 ―
[吹きこまれる呼気に、ぴくりと指先が動く。]
………かはっ、げほっ…
はぁ…はぁ…はぁ…
[思いっきり咳き込んで水を吐き出すと、胸を上下させながら空気を貪る。]
死ぬかと…思った…!!
[言って、ようやく薄らと目を開ければ、目の前にあるのは先程逃げてきた相手で。
なんとも気まずい顔をして目を反らした。]
―自室―
…さて、と…
別に汚くはないんだけどね…。
[>>198コンラートと別れた後、アレクシスに部屋の前で待つように言い聞かせ、整理すると言って室内に入ったはいいが。
元々、沢山の物を取っておくような性質でもなく。領地の城とは違い、それほど物もない。
ちなみに言えば、決して領地の城が汚いというわけでもない。]
寝る場所の確保な…、忘れてた…。
[思わず額に手を当てる。
ようはそう言うことだった、単に自分の気持ちが整理できていなかったのだ。
それでも、寝る場所は扉の奥の寝室にしかない。
心を決めると、アレクシスを入れるべく扉を開ける。]
待たせたねアレク、奥へどうぞ。
[冷静を取り繕うとするが、自分の顔がどうなっているかなんて知るよしもない。]
[蝶の声を聞いて立ち上がった]
…
[もう大丈夫ならば、いい。と思えないのは]
いやがってた
[無表情に、どこか憮然とした気配を乗せる。
白い蝶はふわり漂い、暗黒の穴の中へ]
/*
足元がカパッっと開いて閉じるくらいのささやかなギミックだと思ってたらズモモモモモモモと響き渡った上に大穴空いてるらしくてキョドっている件について。
ディークうううwwwwwwwwwwww
ただ驚いて気絶しただけだ。
[まだ人としての記憶が色濃く残るための弊害である。空気を貪る血飲み子>>250へとその認識の間違いを正す]
くだらぬ殉死を望んでいたころとは偉い違いだな。
[死ぬかと思ったといって気まずそうにする血飲み子へをみて愉しげに唇を歪めた]
[レッスンという単語が、非日常の中に日常をもたらす
奇妙な響きに思え、口端に笑みが上る]
それは難しいんじゃないかしらね、あいにくだけど。
[言葉を途切らせる様子に、やはり気を損ねたのかと、
そろりと唇に指先を宛がいかけた折。
ぐらりと部屋ごと身体が揺らぎ、悲鳴を溢しそうになる
口元を咄嗟に押さえた]
……ゃ、なに、いまの…?
[ソファに倒れ込みそうになる身体は、主の腕に支えられ。
傾いだ身を正しながら、物問いたげな視線を隣へ向ける]
[ロー・シェンの行動は予想の斜め上で、膝の力が抜ける。
急所を穿たれる痛みと、失血の浮遊感と、告げられた”血の繋がり”。
飢えて乾いているというのに、また眦の稜線が溢れた。]
[彼がその顔に疑問符を浮かべているのを見れば>>247、ああ、説明不足だったかと気付くに至り――…]
うーん、どこから説明するべきなんだろうね。
養子縁組がピンと来ないなら、身元引受人あたりが妥当なのかな?
[彼に父母が居ることは理解しているため、家族以外の言い方を探す。]
血族は一族という認識が一番近いと思う。
吸血鬼っていっても、色々な吸血鬼がいて、しきたりも役割も能力も違うから。
それに――…
[と。そんな説明をし続けているところに、いきなり話題転換をされた。]
”いや ってた ら きみ 助 たいと思 んだね?”
[飲血によって生じた擬似的な血の絆はまだ薄く、血子でないディークが分身たる蝶から離れれば、声を送り届けることは難しくなる。
血子の共感覚――血子の五感や言語化されない感情までも共有する――もないから、ディークに何があっても知る術がない。
それらのことを説明する暇もないまま、声はますます遠ざかる。]
オレがこれまで知ってた吸血ってさ、
背面上空から蹴りかまして、襟首掴んで引きずり起こして、顔面殴って、ぐったりしたところにアレ剥き出してブッ刺す強姦みたいなのしかなかったんだけど。
上書き、された。
痛くて吐きそうなのに、身体の芯で気持ちいいとこまで、きっちり覚えた よ。
[ロー・シェンの首筋に手をかざし、白い牙を剥いて見せる。]
すぐ、役に立ちそうだ。
[狩りの場で、と笑う。]
[何故半裸と言いたげな無言の圧力に、穴熊の毛に塗れたボロボロのシャツを指さして]
素肌ウェストコートなんて格好をするくらいなら、着ない方がマシだからね。
まあ、夜になったら館に戻るから、大丈夫だよ。
[と、答えるか]
ああ…、
そっちがオレのこと、子供として扱うなら、「兄貴」はやっぱりおかしいよな。
でも、オレの父親、生きててさ。
岳父でもないっしょ。
よろしく。
あと、人前では、なるべく敬語使うようにするから。
そうしないと、師匠の教育にケチつけられるかもしれないからさ。
オレ、軍にいたこともあるし、旅芸人もしてるから、
丁寧な話し方もできないことは…ありませんよ?
[実例で示してみせる。]
それと、この先、出来る限りで師匠の身の回りの世話もオレがやる。
教えを受ける者としての感謝と礼儀だから。
いいよな?
……失礼します。
[促されるまま開かれた扉を潜り、視線は右へ左へ。
吸血鬼としての住まいを観察しようとして興味深げに
視線を彷徨わせているのだ。
しかし、窓が無い以外では思った程人間のそれと
大差ないように感じられる。]
……あまり、変わらないのですね。
[何と、とは言わず。]
[声が遠ざかる。
やがて意味をとれないほどに途切れ途切れになり、消えた]
…コンラート?
[聞こえないだろう相手へ呼びかける]
[落ち着かない。
穴の周りをしばらくうろついて、廊下の先の方を見た。
蝶の帰りを待つのが正しい、ところではある。
三歩までは行かなくとも三分も歩けば迷子になるのは確実。
しかしポケットを探って、布に包んだナッツや干し果実を見つければ、蝶がおらずとも自力で此処まで戻る手段を考えついてしまったので]
…
[真面目な表情で砕いたナッツの一欠けを床に置くと、廊下の片方へ歩き出した]
疲れたろう。
奥が寝室だから……――
[アレクシスを部屋に招き入れ、そこまで言いかけてから、言いよどむ。]
ああ、その…ベッドが1つしかなくてね…。
でも広いから、きっと大丈夫だと思うけど――
[男同士で気にする方がおかしいかも知れないが、改めて2人きりでと考えると、身体が熱くなる気がした。]
嫌なら、俺はあっちで寝るから…。
[そういってソファを示すが、アレクシスもう随分と眠たそうだった。]
寝台もひとつ。
……ひとつ。
[自分の言っている事が少し飲み込めない。
確かこの部屋で休むという話だったはずだが、寝台は一つ。
―――…そして考えた。
そうだ自分はソファで眠るのだと思い至り、手を打った。
此処はトールの為の部屋なのだから。
自分は子と定められている以上、親の妨げにはなっては
ならないと。]
―地底湖―
[紙片じみた白が下へ下へと舞い降りて。
地底湖の濃藍の水面が見える頃には、そうなるのではないかと思っていたとおりになっていた。
闇にも映える真祖の銀の髪と、淡い色合いの雛。
クレステッドが、ずぶぬれの雛に自ら手荒い介抱をしてやっている。
あれに介入するのか、と思うと少し気が重い。
が、ディークが望むのであれば、そうしてやりたいのだ。]
どういう吸血だ、それは。
[レトが語る吸血のさまに小さく笑う。
口の端を指の背で拭い、薄らとついた血を舐めた。
悪くない。
ああ。悪くない。]
好きにしろ。
[宣言されるあれこれにも、頷いた。
好きに呼べという言に偽りはない。
従卒の役割を果たすのにも異存はない。]
だが無理はするな。
俺もしたことはない。
[敬語についてだけは、笑いを含んで付け加えた。]
解らない。
元々、この城は僕の持ち物じゃないんだ。
地震ではないようだったが……
何某かの襲撃、という訳でもなさそうだね。
[自ら姿勢を正したのに気付いて、軽く肩を叩いてやる]
必要があれば、人が知らせに来るよ。
今は落ち着いていなさい。
[一通りが済めば、改めて扉へ足を向ける。]
行くぞ。
最初の狩りだ。獲物は用意してある。
だが実戦と思え。
[そう言って、ついて来るよう促した**]
えっ……?
僕がソファで眠るのでは。
此処は貴方の為の部屋です。
そして貴方は親として定められ、同様に僕は子です。
……そうですよね?
親を差し置いて一人寝台で眠ることは許されません。
貴方は寝台で休んで下さい。
[それは、人であった頃に受けた教育が反映されたもの。
また、親と子の定めを考慮せずとも部屋の主を放って
自分だけ、とはとてもではないが出来なかった。]
……少し、話を戻そうか。
[言いながら、注意の範囲は先程よりも広がる。
警戒すべき騒ぎなら即応するために。
だが、それは表には浮かばせないように、
静かに娘の隣に腰を下ろした]
退屈なお説教を長々とされたくはないでしょう。
とは言え、必要な事ではあるからね。
君も、興味が持てそうな方法が浮かんだ時は言ってごらん。
何事もチャレンジだよ。
それと、子供の扱いやすさなんて、
その子本人が気にする事ではないと思うよ。
誰にだって多感な年頃はあるものだ。
[心中、知ってか知らずか。寄越す応答はそんなもの]
そうなるね。
[希望した通りだったのだし、名前がわからなかったからコイントスで決めたということ>>0:557>>0:558は伏せておこうと考えて……
同時に、何故彼をと希望したのかを思い起こせば]
…………タチアナの話、聞きたい?
[上着>>260を受け取り、礼を言いながら、ぽつりと、問う。]
― 一階廊下 ―
[この館に、鼠や鳥はそうそう出ないだろう、と予想したところまでは上等だった。
問題があるとすれば、廊下に点々と落ちている食べ零しを見つければ、小間使いはよもや道標だなどと思わずに、即座に掃き清めるだろうことまで考えられなかったこと]
ちがう
[下り階段を探して歩き回る。
そのうち、千切り落としていた食料が尽きて戻ろうとすれば、途中で標を見失い ──迷子]
襲、撃……?
[そうではないと打ち消す言葉が続いたが、視界に重なる光景があって、ふるりと肩が震える]
…そう、ね。
物音も、もうしないし…
[衝撃がそれきり鎮まれば、微かに顎を引く。
宥めるように肩を叩く仕草に、もうひとつ頷いて]
やっぱりあなた、年長者らしいわ。
見かけによらず。
[取り乱しかけた心地を治め、揶揄めかす]
心底死にたい奴は貴様のように感情を露わにせん。ただ我儘をいって我の気を惹きたかっただけであろう?しかし 血の選別か。呆れたやつだな。
[拗ねながらいう血飲み子を言葉通り呆れたようにみる]
他のものをなぜ拒む?
[咎めるというわけではなく、好奇心>>263として問いかける
俺は何処でも寝れるから平気だ。
でも…、このままだと押し問答で夜が明けそうだな。
[真面目な彼のことだ、いくら遠慮するなと言っても。
絶対に1人では寝台を使わないだろう。]
アレク、君はベッドでおやすみ。
君が嫌じゃないなら、一緒に寝ようか?
[どうする? と視線で問う。
もちろん彼が嫌だと言うならば、ソファで寝るのは自分の方だと伝えるように。]
ん、わかった。 自然体でいく。
[ロー・シェンの受諾と助言に頷きながら、端的すぎる口調のロー・シェンが敬語を使ったら、語数が倍になるんじゃないかと想像して腹を押さえた。]
[血を飲んだロー・シェンが旨そうにするものだから、嬉しさと期待が高まる。
これからしようとしているのは、略奪じゃない。狩りだ。
ロー・シェンが選んだという標的。
脆弱な相手ではあるまいと思う。]
オレが器用なとこ、見せてやんよ。
[首筋に滲む自分の血で額に一筋、戦化粧をして意気を示した。**]
あれは、覗きが趣味のここにいるマスターの一人の使い魔…のようなものだ。
[血飲み子>>265の視線の先を一瞥していうと、気が重たい>>264など知らず]
何用だ?
[降下する蝶>>273。その先に居るものへと問いかけた]
[溜息を吐いた。
たぶん、落ち込んでいる。
当たり前に出来ていたはずのことがままならない。
それを今まで疑問にも思っていなかったことに気付いた]
なんだ…これ
[濃い栗色の髪へ指を差し入れて、ガシガシと掻き回した]
[隣に腰掛けた主は、何かの標語のような文句を言い含める]
……。
意外に、前向き…?積極的?な事も言えるのね、あなた。
まるでお人形さんみたいだと思っていたけれど。
[さらりと失礼な評価を洩らし、目を瞬く。
けれど、自分への評価にはくっきりと眉を寄せ]
否定しないのね。
…それどころか、遠回しに肯定したわよね?今。
普通は親なら嘘でも、そんなことないよ、とか何とか
言うものじゃないの?
それは、勿論。年長者だもの。
[首を傾げて、揶揄に応じる]
ついでだから言っておくと、今、城内にいる養親達は
皆、『マスター』の称号を持つ高位の吸血鬼だ。
僕は構わないけど、
吸血鬼の中には礼儀に口煩いお方もいらっしゃるから
外では気を付けなさい。
出来るね?
………。
[まただ。
“大切な子”と言われては恥ずかしそうに目線を逸らした。
彼と対話した回数は決して多くは無いが、その全てに於いて
建前は存在しなかった…はずだ。
やはり、彼には定められた役割以上の何かを、自身に対して
持っているように感じられた。>>267]
あー…そう、ですね。
確かにこのままでは陽が一巡りしてしまうでしょうね。
仕方ありません…一緒に眠ります。
勘違いしないで下さいね、僕は受け入れた訳ではありませんから。
[再び、何をとは言わずに。
こうして互いに言わなくても解る事を持っている事自体が
今在る結び付きを受け入れているのだとは、気付かない。]
“お取り込み中のところ申し訳ないけれど”
[一応は礼儀正しく、傲慢に聞こえない程度に泰然自若を装って]
“少し尋ねたいことがあるんだ。
聞いてもらえないだろうか。”
[加えて、双方の評価について、
己に対するそれは、ものの見事にスルーして]
嘘をつかれて喜ぶようには見えない。
……見立てが違うようなら、再考しよう。
[若干否定しづらい事を言った。]
[そして、彼女と出会った事、彼女が“吸血鬼”から“ステファン”にしてくれたこと、あの時は伏せた振られた顛末>>116>>117をと話していくうちに――…]
[内心の動揺を押し隠す揶揄を、戒める声]
……、そうね。
失礼しました、マスター。
[気安い口を利いていた事に気づき、言葉を改める。
どの程度の敬意を表する言葉遣いが適当なのかは知れなかったが。
だから、心得ます、とだけ答え口を噤む]
ならば無意識か。
[一人勝手に納得をするように頷き、何故という問いへの返事>>276に耳を傾ける
フン…吸血鬼にとっては生きづらい願いだな
[帰ってきた答えへの感想を漏らす。]
ならば獣の血でも構わぬだろう…まあいい。立てるか?
[起き上がり、手を伸ばした]
[雛が手を伸ばせば飛び来たり、その白い指先にか細い足で触れる。
と、]
”別に覗きが趣味ではないよ。
誤解しないで欲しいな。”
[いかにも心外だと言った声が、雛の心に直接聞こえてくる。]
タチアナは僕をステファンにしてくれた。
だからね 僕は君を“ダーフィト”にするよ。
吸血鬼のダーフィトじゃなくて“吸血鬼”である前に“ダーフィト”であるように。
[何故、そう考えるに至ったのか。
呼んでくれる人がいなくなるのが思った以上に寂しくて……
死ねない、死なない自身なら、そんな思いは抱かせる事はないだろうと。
彼女の後を追うことで、自身への慰めにもなるのではないかなどと――…
少なくとも、その感情がなんであるかを現す言葉を、今の男は持っていない]
そこに関しては、お見立て通りですけれど。
…でも、過小評価かも知れないでしょう。
[我ながら説得力がないとは思いつつ、一応は抗弁しておいた]
[はた、と蝶は舞い降りて、一時ファミルの指先に翅を休めたが]
[すぐにまた飛び立ち、ふたりから等間隔に離れた地点で中空を舞った。]
まあ、まずは、ダーフィトが何をできるか、からだね。
[館に戻ってから忙しくなるねなんて、散らかしっぱなしの部屋の事は記憶の向こうへ捨て去って、明日以降の話をするだろう**]
僕は構わないって言ったばかりなのに。
……まあ、良いか。僕相手には、話しやすいようにして頂戴。
流石に親子の間にまで口を挟む人はいないから。
外での振る舞いも。
君は話し方も綺麗だし、あまり心配していないよ。
ついでのお話、くらいに思っておいて。
[誰にどれ程の礼儀を求められるか。
一概には説明しにくいから、詳しくは述べない。
暮らす内に少しずつ身に着けていける事だろう]
見立て通りなら、良かった。
過小評価かどうかは、そうだね。これから、ゆっくり教えて。
つい、長話になってしまったね。
今日はここまでにしようか。
[ソファを立つと、亜麻色の髪をさらりと撫でる]
ああ、吸血鬼とて悪趣味なものはいるからな。
[言外にそんな風に育つなと血飲み子>>281へといいながらも、とはいえわざわざ些末なことに首を突っ込む理由はなんであるのか。
血飲み子の指先から、ひらりと舞う蝶へと視線を一度向けるが、すぐに反らす。
合わせる必要などないためだ]
[指に留まる白い蝶、心に直接響く声に一度瞬いて目を丸くした。]
”…こう、かな?
覗き、趣味じゃないのか。……あ、
あなた、さっきの彼の近くでも見た気がする。”
[ディークのことなのだが、残念ながら名前を知らなかった。]
”結局心配かけてしまったのかな…
ごめん、ありがとうって伝えてくれる?”
[首を傾いで見ていれば、蝶は飛んで離れてしまったか]
[すると。
地底の闇が凝ったかの如くに、突如として黒蝶の群れが虚空より湧け出て、人型を作る。
やがてそれは、火花の赫を戴く青年の姿を取った。]
――無粋な真似はしたくなかったのだけれど。
[ちらり、と雛を一瞥した後、銀髪の真祖に向かい、優美に腰を折り一礼する。]
非礼はお詫びしまう、クレステッド殿。
まずは拝謁の栄を賜りたい。
― 森・夜を待つ ―
…………
[一大表明をしてみたものの、魔力枯渇で倒れていたダーフィトを育てるのに、時間の余裕はどれほどあるのだろう。
自身の時間は際限がないと言ってもいいけれど、ダーフィトに関してはどうなのかはわからない。
マスター替えなんて事があった日にはそれまでなのだし、有限と考えたほうがいい気がしてくる。
そうならば――…]
[“ステファン”が語る“タチアナ”の思い出。それは知らないものばかりで…彼が、いまなお祖母を愛していると分かるもの。そして自分は“ダーフィト”だと告げられる]
…ああ。そっか。うん。
[自分の手を見る。人間であった頃とは違う筈なのに、今はもう人間ではなくて。それは――『恐怖』なんだと。
吸血鬼であるかもしれない、と。それを自分で必死で拒絶したのは、自分が自分でなくなる恐怖。そして、同僚達を殺したモノと自分が同じモノであるという恐怖]
――ありがとう、ステファン。これから、よろしく。
[彼の寂しさ>>283を感じたのかもしれない。それを埋められるなどとは思っていないが…共にあると約束するよう、手を差し出した]
/*
それにしてもどこの主従も見ていて美味しいですもぐもぐ
トールは後輩かわいい
ステファンは誤解かわいい
真祖たんはアホかわいい
執行人は……かっこいい
友はえろい。
*/
[蝶が指先から飛び立つと、声も聞こえなくなるが。
了解したらしき雰囲気は、何となく伝わるだろう。]
[夜を待つ今のうちに、休んでおいたほうがいいのだろうけれど、眠るには少々肌寒い]
…………
[眠るなら、身を寄せてとなるのだろうけれど]
強情なやつだ。だが願うのは自由だ。
[祈りなどという手段に頼るのならばそれは愚行であるが、この世に生きる全てのものが願う願いに貴賤などはないと知っている。
強情な願い>>286も否定はしなかったが]
反問をせよとはいってはおらぬ。罰を受けたくなければ答えよ。
[憮然とした態度をうけても変わらず再度問いかける]
―寝室―
これは邪魔だろう…。
[アレクシスの上着に手をかけて、有無を言わさずに脱がすと、自分の上着とネクタイを取り去る。
一連の動きは止まることなく滑らかで、まるでこれから情事を行う前の男女のような空気すら漂うものだが、しかし――。]
我が血を欲するのだ。相応のものを差し出す気はあるだろうな
[戦場でみせた酷薄な瞳が血飲み子を射抜くように見つめる]
[闇の蝶が群れをなし、焔の花を咲かし吸血鬼が芽生える様を
初めからそうしておればよいのだ。
[腹に虫を抱えるようなものがいる議院だ。自衛のためにも覗き程度ならば許しはしたがそれ以上は顔を見せぬものを相手にはしない。姿を見せなければ放っておいた帰ったことだろうが、そうはならなかった]
よかろう。我への拝謁を許す。コンラート。
[優美な一礼をするコンラート>>289へとあくまで尊大な態度で応じた]
[拒まれた雰囲気ではなかったので、きっと通じたのだろうと思うことにする。
銀の吸血鬼が言うほど変な人ではなさそうだ、という印象を持った。]
…………
[39分ほど、悩むに悩み。
それから意を決し……と、いうよりは半ばヤケクソで、寄り添って眠ろうとするだろうか。
この男、吸血鬼の中では、もしかしたら貞操観念が強い方なのかもしれない**]
―廊下―
[同時刻。
もうひとりのコンラートは、相変わらず廊下を歩いていた。
当然のごとく、友人の部屋を訪問できていない。]
うーん……
[召使に行き会ったら案内して貰おう。
そう思うのだが、何故かひとりとして通りかからないのだからしょうがない。]
おやすみ、アレクシス…。
[しかし、それ以上アレクシスに触れることはなく。
天蓋を止めた紐を外して幕を下ろし、
彼と共に寝台に横になると、2人うえに掛け布団をひきあげて。
腕枕をするために、アレクシスの頭部の下へ腕を差し入れる。]
……そう、ね。
あなたに敬語を使うのは、正直妙な感じがするわ。
[自分には構わない、そう告げる主に頷いてみせ]
だって私、本当にあなたの養い子になる気はないのだもの。
今更濁す事でもないから言ってしまうと、私の気が
変わった訳ではないから。
…あなた達がどんな社会生活を営んでいるかは、
表面的にだけど理解したわ。
親としてのあなたが比較的穏当で、客観的に見れば、
あなたに引き取られた私は運が良いのだろうとも。
だから、必要のない限りは、あなたの顔に泥を塗るような
態度を外でとる気はないの。
[主の手を煩わせる気はない。先程そう告げた時には、
全く別の意味で言ったのだが]
??
[なんでこんなに不機嫌そうにこちらを見ているのだろう。
原因は自分にあるのだが、そんなことは覚えていないので不思議そうにステファンを見ていたが――]
―?!
[くっついてきた小さな身体に少し驚いた顔をしたものの、意図に気付けば片方の腕を枕にするよう伸ばし、抱き込んだ*]
[理解したとともに、待てというように一度血飲み子>>298に視線を送る。
我が名を口にするものがこうしてきているのだ。先に答えるのが返礼であった]
…あんたにとって価値のあるもので、私がもっているものって何?
[鋭い視線にも動じること無く、むしろ微かに笑みを浮かべて問い返した。]
―地底湖にて―
[尊大な許可に、身を屈めた上に更に膝を折る儀礼で応えた。]
恐悦至極に存ずる。
[頭を上げた後は、岩に座り込んだ雛に視線を向け]
……実は僕の養い子が、そこの雛鳥が貴殿に意に染まぬ仕打ちを受けて、虐待されているのではないかと心配していてね。
実のところはどうなのかを、お尋ねしたかった。
あなた達が、人間の血を摂ることも。
それが欠かせない事なのだとは理解できる。
[一見してそれとは解らなかったが、供された紅茶に
含まれていただろう物がこの身に齎した効力を思えば、
そう出来ているのだと身を以て理解した]
でも、私個人としては。
血を摂る…というより、ヒトを殺してまで生きるのは、
一言で言ってしまうと嫌なの。
昨日まで同種だったものを、そう簡単に糧には見られない。
……見たくない。
身体がそう出来ていて、阻む手段がひとつきりなら、
私は遅かれ早かれ、実行に移すと思うの。
[ひとつひとつ、自身の中から言葉を手繰る]
…だから、ゆっくり教える約束はできないわ。
……あの。
[ついぞ先程まで居た部屋のものとは大違いの、天蓋付きの寝台。
身を横たえられれば深く沈み、良い眠りに誘ってくれるだろう。
再び瞼が下り始める頃、上着を脱がされて少し目が覚めた。
酷く慣れた様子であるのに、大人しく人の良い彼の意外な面を
垣間見たような気がする。]
……もういいです、何も言う気が起きません。
[とどめは腕枕。>>297
何処までも子として扱うのか、と深い深い溜息が漏れそうに
なったのだが、これもまた彼の気遣いの一つなのだろうか。
そうなのなら、ただ冷たく言い放つのも悪い気がして
今は大人しく従おうと、差し入れられた腕に頭部を預けた。]
― 地底湖 ―
[わざわざこんな場所まできて問いを投げる理由も合わせた説明に、下問をする必要はなくなる。礼儀を知る焔>>300を見下ろし]
そなたの雛は想像力が豊かな子だがそれは誤解というもの。心配するようなことは何もないと伝えておくがよい。
[淀みもなくきっぱりと答えた]
それすらも問うか。手間のかかる血飲み子だ。
貴様の全て。に決まっておろう。それでも対価にはまだ足らぬ。
[問いには尊大に返した]
良い夢を。
[少し休んで目覚めれば、きっと思考も落ち着いてくれる。
全てを振り返り、その上で今の自分を見つめたい。]
おやすみなさい。
[これが夢で在って欲しいとは思わない。
願うだけ空虚だと解っているから。
だから、受け止められる心の余裕を得られるよう願って、
目を閉じた。**]
[クレステッドへの問いの形を取っているが、実際はファレルの表情を観察し、心情を読み取ろうと為されたもの。
視線は真祖よりも、雛のほうへと多く向けられていた。]
…ん? ……うん…。
[腕にアレクシスの重みが乗ると、もう片方の手を彼の背に回す。
大切そうに抱き寄せてるようにも、逃がさないようにしているようにも見える姿勢のまま。]
――……アレ…ク…、
[意識をより深い闇へと落としながらも、呟く名前は青年のもの。]
……き、……だ…
[続きはよく聞き取れない何かを残して後は、
もう穏やかな寝息をたてるのみ。**]
[最後に、アイリスが一つずつ語る思いを黙って聴き、
ひとつ頷いた]
――うん。
そう簡単に人の心を変えられる訳ではない事、
解ってはいるつもりだけれど、
急かしたような言い方になった事を許して。
……そして、理解しているとおり、
僕達はヒトの命を削らずには生きていけないから。
約束はいらない。
願いを知ってくれれば、今はそれで充分。
[要は愛情の空回り。
いや、愛情の一歩手前くらいのところかも知れないが。
唯我独尊の男に飼われて可哀想だと思わなくもないが、雛が不幸かどうかは、そのずれた愛情をどう受け止めるかだけにかかっている。
僕なら、求められているのならば、それでも構わないけれど、と声には出さず。]
……私の全て。
私の存在に一定の価値を認めていてくれるということか。
[ほんの少しだけ考えるような素振りをした後。]
………それで私の望みが叶うなら、仕方ないね。
足りない分はまけてくれ。
[しばらくの後。
近くなった耳元に、届くだろうか。]
………っ…ぅ…
[押し殺したような小さな嗚咽。
生前の、笑っていた頃の夢を見てしまったのだ。
堪えようと傍に在る胸に頬を寄せる。
明らかに生者のものとは違う感触に触れるが、
今は何よりその存在、主に縋りたい。
再び眠りについた後、夢はもう見なかった。**]
[そんな思考はすべて押し隠し、表面上はにこやかに取り繕う。]
それを伺って、安心した。
けれど、僕の養い子は、自分の血親に酷い虐待を受けていたトラウマがあるのですよ。
僕の話だけでは、彼の不安は癒しきれないと思う。
どうだろう?
もし貴殿のお許しさえ戴ければ、後でこの雛鳥に会わせてやりたいのだけれども。
ふたりきりの場で、雛鳥の口から大丈夫だと聞けば、疑念も消えるでしょう。
[もし雛が本当に逃れたいと思っていた時のために、一応だめもとでクレステッドに提案してみた。
雛が見かけの何分の一かでも敏いなら、チャンスに気付くだろう。]
……、いえ。
私こそ、誠意を持って接してくれるのに、応えられなくて。
それに、悠長なやり方をしていたらきっと、その前に
私はもう一度死んでるのじゃないかしら?
[許しを請われ、思わず不謹慎な冗句を口にする。
――願い。その拠り所が、子として引きとったからという
一点であれど、自分のために向けられるとは思わなかった。
髪を撫でる手つきはさらりとして、確かに心地好い]
……私、あなたの人間性……というのも、何だか変ね。
在り方、みたいなものは。
良いと思ったわ。
[その程度の言葉しか、代わりに差し出せるものはなく。
頷き返して、ソファから立ち上がる]
[コンラートの言葉に、少し考えておもむろに口を開く。]
そうですね。随分迷惑と心配をかけてしまったようだし、私も直接謝りたいです。
養親の躾がなってなくて礼儀のひとつも弁えていない、なんて言われるのは不本意でしょう?
くだらぬ。我が言が全てである。そう伝えよ。
[問いを投げながら、それだけでよしとせずにいるのは無礼としか言えぬ。
コンラート>>311の提案は一考する間もなく一蹴した]
そなたの雛がトラウマをもっているのは境遇上仕方ないことであるが、癒すのはそなたの役目。提案であったと此度は思っておこう。
[血飲み子>>312の意志で結論を変える気もない。話は済んだとばかりに、起き上がれないという血飲み子の背中と膝の裏に手をあてて持ち上げて]
ああ、だが交流をもつ分には構わぬ。
[非常に束縛をするつもりはない。ただ言を疑った上での提案は飲むつもりはないと示しただけだ]
[全てなど当然だ。自分の血を飲むということは、血飲み子の体が己の血で満たされていくということ、その時点で己のものであるというのは当然のこと。
そしてそれは真祖にもっとも近い吸血鬼となるということだがそこまでは口にはしない]
価値はあると我が宣言してやろう。未だ未熟な身で領分を越え我が血を望む愚かな強欲さも吸血鬼に転じたことへの憤りも、生きたいと願う感情。吸血鬼にとって破滅的とも思う願いもな。
[コンラートが彼を呼んだことで名を知りはしたが、未だ自分を抱く吸血鬼が真祖であることなど―――否、彼のことなど何一つ知らないと言って差し支えない。]
……そっか。
じゃあ、一先ずはあんたが私に飽きるまで―――生きてみようかな。
[嘯く声は、そう悪くないものだった。]
コンラート。血飲み子をこれ以上濡れたままでいさせたくはないゆえ我はいくぞ。
[拝謁を終える>>315と、抱き上げた血飲み子ともども、空気に溶けて消えるようにして地底湖を後にした]
[そろそろ自分もディークのところに戻ろう、と分身を分解し始める。
来た時と逆に、人型が崩れて無数の黒い翅の群に変じ、地底の闇に散じて消えた。**]
― 私室 ―
フン、此度は違う思惑のようだが、本来ああいうのは下種の勘繰りというのだ。いちいち付き合う必要はない。覚えておけ
[私室に戻ったところで感想>>314に答える。テーブルに零したワインも拭き取られている私室では、黒蛇のオスカーに出迎えを受ける]
湯の用意をせよ。
[使用人に命じながら、血飲み子をソファーにおろす。
此度は、罰を与えるのか褒美を与えるのか、どちらが正しいのかと少し考える間に、先日と同様の手段で血飲み子の濡れた服を全て脱がしてしまう
結局まずは血を摂らせることが先決か。と思い]
飲め。
[裸で座る血飲み子へと親指を牙で噛みちぎりて差し出す]
―大穴の開いた廊下―
[程無くして、床の大穴から白い蝶が漂い出てきたが、そこには既に幼子の姿はなかった。
大慌てで白い蝶は廊下の奥へ飛んで行く。**]
[ある程度まで摂取させたならば、指を離す]
今後、館の中を出歩くときはオスカーをつれていけ。外に出たくば我の許可を取れ。
[本日血を飲ませた後にいうはずだったことを今更告げた後、湯へと放り込むのも先日と変わらない
そして着替えには汚れをとりおえた神学校の服が置いてあるだろう**]
― ホール ―
[迷いに迷った末、辿り着いたのは館の外へと繋がる大扉と、広い空間の端に佇む従僕の姿。
この迷宮は何かのトラップで、もう永遠に自分ひとりしかいないんじゃないかという発想が浮かぶほどだったので。
従僕の目には、歩み寄るチャイルドの顔に喜色が浮かんで見えたかもしれない]
あの、
……穴
[蝶を除けば、みずから能動的に人へ話しかけたのは本当に久しぶりだった]
[たどたどしい説明はいかにも要領を得ず。
落とし穴の廊下へ行きたいと言われても、従僕も怪訝な顔をするばかり]
なら 地下
………いや、
[あの金髪のメイドが落ちてからどれくらい経ったのか、わからなくなっていた。時間の感覚が乏しい上、館に窓はない。
しばらく考えた末、コンラートの名を出す]
部屋に、行きたい
俺を いい?
[頼む、仕草をすれば、
ご案内致します、と従僕は頭を垂れた**]
― コンラートの部屋 ―
[紆余曲折の末に戻りついた部屋。
案内に礼を言って、きちんと扉を閉める]
…
[大きな天蓋ベッドにも、居心地の良さそうなカウチにも、美貌の青年の姿はなかった]
[疲労感はあったが座る事はせず、扉の脇に真っ直ぐ立つ。
そこに控えるのがしっくり来るような気がした。
視線は蝶を探すように室内を彷徨った]
― 森から・日没まであと少し ―
[頬を撫でる冷たい風に促され、男が目を開けてみたならば、太陽の気配がだいぶ遠ざかっていることに気がついた。
少なくとも、森の切れ目までは安全だろう、そこへ向かうまでには日が暮れるだろうと、身を起こそうとしてみるものの――…]
…………
[そのままの体勢で69秒ほど混乱するものの「寒かったからだ。うん、寒かったから」と自分に言い聞かせ、今度こそ身を起こそうとする。]
[身を起こす際に、触れていた場所へと冷えた空気が入り込めば、少し名残惜しさを感じるのだけど]
……起きなよ、もうすぐ夜だよ?
[そもそも、時間がないからこそ眠りについたのだと、傍らで眠るダーフィトを揺り起こした]
― 城館へ・夜 ―
[森の中まで日差しが届かなくなるのを見計らってから移動を始めた事が功を奏したのか、日没後には館の灯りが見える場所まで。
あの後、少し睡眠もとったため、森で日中を過ごした割にはそれほど疲れてはいなかった]
……。ぁ…?
[身体を揺すられて目を開ければ、近い位置にステファンの顔がある。何か肌寒さを感じて身を震わせるも時間がないと言われれば欠伸を噛み殺しながら起き上がった]
もう、出ても大丈夫そうか。
――…うん、君が僕と組むことになった理由がよくわかったよ。
[姿を変えることもできなければ、何かを呼び出すこともできない。吸血鬼として生まれてすぐに使えるだろう能力が殆どないといってもいい。
最も、実際は隠された能力があって、男がそれに気づいていない可能性もあるのだが。
一応元教師という経歴を見られての、他の素養が全滅していても裏方として使えるだろうという判断なのだろう……多分。
そう、自分を納得させたなら、男はダーフィトに向き直り]
――あらためてよろしくダーフィト。14番目の僕の血族、13番目の僕の血子。
[と、歓迎の挨拶を。
そして、これからを問われれば>>324]
まずはそうだね。評議会のしきたりは後でやるとして、僕の血族のしきたりから、かな……
まあ、うちにはしきたりなんてないんだけどね。代わりに禁則事項が4748項目あるだけだよ。
[と、口にする。
少人数且つ独立を許されぬ血族には、血族間で衝突しない為の諸々があったりするのだ。]
[口にしてみると、あまりにも多い「やってはいけない事」の数]
数は多いけど、一つ一つは些細なことだから、大丈夫だと思う。
…………多分。
[自分でびっくりしてしまった事を誤魔化すようにぽつりと付け足せば。]
あ?ああ。こちらこそ、よろしく。
[彼の言った人数が多いのか少ないのかはよく分からないながら。歓迎の意を示されれば改めて挨拶を返す。
そして質問への答えを貰えば]
多いな!そんなにあるのか!
[その数の多さに驚いた。禁則事項。これをやっては駄目ということだろう。それだけあったら身動きできなくなって困るのではないかと少々の不安を覚えた]
― 夜 ―
[レトを伴って城館を出る。
途中、使用人を呼んでいくつかの準備を指示した。
その際、使用人から『コンラートが評議会のものと連絡をとっていたようだ』>>156 と耳打ちされた。
そうか、とうなずき、また何かあれば知らせるよう言い置く。
知らせを聞いて特に何を思うでもなかったが、情報としては重要だ。
評議会の内部で様々な思惑が渦巻いていることは承知している。
その波に飲み込まれぬために情報は役に立つ。
目端の利く使用人と懇意にしておくことは、利便以上の意味があった。]
― 森 ―
[城館を出て向かったのは、すぐ側の森だった。
入口でレトを振り返り、木々の奥を指し示す。]
ここに獲物を放してある。
狩ってみせろ。
[自分はここで見ている、とは自明のこととして口にしない。]
[森に放されているのは、捕えてあった樵の男だ。
食事をとらせ、正気付かせた上で得物まで与えて放してある。
印代わりにひと噛みしておいたから、自分はいつでも居場所を探れた。
だが、レトが見つけ出せるかは彼次第だろう。
獲物は森に慣れている。
飢えによって引き出されているだろう狩猟本能がどれだけレトを導くか、確かめてみようというところ。]*
うん、一つ一つはそんなに大したものじゃないから
[大事なことなので、言い方を替えてもう一度。]
『鰯が致命傷の血族もいるのです。星を眺めるパイを客人に出すのは止めましょう』とか
『客人にはかならず珈琲か紅茶かを問いましょう』とか
『買いに行くのが面倒だからと聖油を料理油代わりに使うのはご法度です』とか
『無闇矢鱈に自分の宗教を押し付けないようにしましょう』とか
『葡萄酒を用意する際の禁止銘柄』って感じのものだからね……
[禁忌がないからこその禁則事項の数である。下手に布教を許そうものならば、家庭内宗教戦争が起きかねない。
自分たちの感覚で他血族をもてなそうものならば、争いに発展しかねないのである]
それは……うん、あとでね。
[やけに詳しい禁則事項群。禁則事項加えられているということは、過去に誰かがやらかしたという事でもあるのだが――…それは伏せておくことに。
……しておこうと思ったのだが、理由付きで教えろと言われてしまったどうしよう>>334]
??
[漠然とただ文字を覚えるよりも、理由や原理が分かっていた方が応用がきくし覚えやすい。
それが経験則だったので何気なく聞いたのだけれど、妙に引きつった顔を見れば]
あー…急がなくてもいいし。なんなら口頭で言ってくれれば、俺が書くよ?
[なにせあの数である。それを全部一覧になどというのは手間がかかりすぎる、それへの反応であろうと解釈してそう提案してみるのだが]
う、ありがとう……
[ダーフィトからの申し出>>336に「違う、そうじゃない」と言いたくなるものの、その欲求を押し込めて礼を口にする。
浮かべた笑みは、やっぱりちょっと引き攣ってるかもしれない]
ルマニの森を思い出すよ。
[森での狩りなら慣れている、と自負してみせた。
実際、人間──正確には兵士を相手にゲリラ戦を繰り広げたことも一度ではない。
血を求めて、は初めてだったけれど。]
朝までに戻れ、だよな。
[ついてはこない様子のロー・シェンに疑問を抱くでもなく、まずはその場に身を屈めた。]
[ある。人間の走った痕跡。
獲物はここから放された。
逃げ切れたら自由とでも言われているのだろうと思う。
狩りとは、知恵と体力と運の勝負だ。]
行ってくる。
退屈だからって、先に帰るなよ。
[背中で告げて、森の奥へと疾駆した。]
[産まれたままの姿で、眼前に差し出された親指を口腔に含む。
温度を持たぬそれは芳醇な薫りと濃厚な味ーーー闇を味わうことができるのならきっとこんな味かも知れないと思う。
飢えていた身には、砂漠で得る一滴の水にも等しく染み渡るようだった。]
ん…………
[指に舌を這わせ、ちゅ、ぴちゃ、と音をたて吸いたてる。
酔うような感覚の中、夢中でその行為に没頭していれば、指が引き抜かれる時には、名残惜しそうに離れる指を少しだけ舌が追った。]
まあ、しきたりは置いといて
[結局、禁則事項は後回しにすることにした]
帰ったら、魔術の基礎を始めようか。
[一週間でできれば三…無理でも一つくらいは使えるものができるように、と考えながら館の扉を開くのだった]
― 館へと ―
……つかぬことを尋ねるけれど。
[声色は打って変わって硬い。]
僕の養い子のディークを見なかったかな?
軍服っぽい服を着た、濃い栗毛の……
いや、見ていないのならいいんだ。
手間をかけたね。
[それでも、別れ際には取り繕うように、ひと掻きではがれ落ちそうな薄い微笑を閃かせ。
きびすを返し、元来た廊下を戻り始めた。]
………オスカー?
[黒蛇のこととは知らず、首を傾げた。
風呂に放り込まれれば、少量ながらも希有な糧を得て回復した身は特に動くに不自由を感じない。
一人の浴室で、ぼんやりと天井を眺めた。
湯に比して、触れる自分の体は随分と冷たく、温度を失ったまま。]
……… "nosce te ipsum"
[汝を知れ、という言葉の重みをこれ程感じたことがあっただろうか。
変容を経て、尚己を己たらしめるものとは。
少し長い湯編みを終えると、綺麗に洗われた自分のもとの着替えに袖を通した。
懐かしい、陽の香りがした気がした。*]
ちょ、ひゃあ?!!?
[着替え終え部屋へと戻ると、足元から這い寄る蛇が足を伝い襟首から服の中に入り込み、袖から顔をだした。
慣れぬ爬虫類が素肌を這う感触に思わず変な悲鳴を上げたが、黒蛇は素知らぬ顔。]
…………もしかして、オスカー?
[何当たり前のこと言ってんだとでも言うように、蛇が鎌首をもたげた。]
―自室―
[――それからどれほどの時間が経ったか。
従僕に案内されて戻ってきた幼子が、室内に視線を彷徨わせると、果たして一匹の白蝶が奥から現れた。
ゆらゆらと揺れる軌跡は、必死さを窺わせて。
蝶にあらざる素早さで、扉脇のディークの元に辿り着くと、それは瞬きの間に白を纏ったあかがねの髪の青年に変わる。]
「あ。」
[ダーフィトの声がして後ろを振り返れば、猟犬が子を伴うのが見えただろうか。
猟犬の連れであるならば確か、名前は…レトだったような。
狩りの練習だろうかと軽く一礼をし、その姿を見送った辺りで男は自身の格好に気がついた。]
[森の中から出てくる二人連れに気が付いて視線をやる。
こんばんはと言われたのには、小さく頷いた。>>348
ホールで見かけたときにはずいぶんと混乱しているようだったが、今は落ち着いていると見える。
養い親が決まり、自分の立ち位置がはっきりとしたせいだろうかとも思う。]
――…
[サイズの合わないシャツ姿。上着を借りたことを後悔しかけたものの、借りなかったら借りなかったで半裸なのだ。
とれる選択肢がない現状に、男は大きなため息をついた。]
――…
[サイズの合わないシャツ姿。上着を借りたことを後悔しかけたものの、借りなかったら借りなかったで半裸なのだ。
とれる選択肢がない現状に、男は少し遠い目に。]
ねえ。
外。散歩行きたい。
[許可を得ろというから、一先ずは大人しく従って言ってみる。
窓の無い部屋は、そろそろ息苦しい。
呼び掛けるとき、先ほど赤毛の吸血鬼が読んでいた名で呼ぶべきか少し考えたが、教えて貰ってはいない出前、相変わらずなあだのあんただのとぞんざいに呼ぶのだった。]
[その養い親の変り種といえばなぜかちぐはぐなシャツ姿だったが、とくに言及することはなかった。
なにしろ、しきたりだかなんだかが山ほどある一族だ。
きっとなにかあるのだろうと、ひとり納得する。]
良い夜だな。
[狩りには、という接頭辞が抜けていたが]
手配は滞りなく行われたとの報せだ。
迅速な対応、感謝する。
[あの報告書のおかげで、などの重要語句もまた省かれるのだった。]
[遠い目をしている所に、猟犬の子の声がした。
名乗りに関しては、自身については猟犬から聞けばよしと、自分から名乗ることはせず。
猟犬のことについてもダーフィトに問われてから答えるよう務めるだろう。どうやら知っている相手のようだから]
こんばんは、僕らは…………森林浴帰りだよ。
[故にレトへの返答は質問への回答のみとなる。なんと表現すべきか悩んだ挙句、森林浴という言葉へと。]
[白い軌跡を見つけ、滲んでいた疲労の色が消える。
ひとの形になった蝶へ手を伸ばした]
戻ってこれた
[事実を述べただけの淡とした短文。
それをわざわざ口にしたことに、不器用な感情の発露はある。
鮮やかな翠を覗き込んだ]
ああ、確かにいい夜だね。
[傍らの猟犬からの言葉>>355には同意で返すだろう。
最も、こちらは昼に死にかけた経緯から、夜の良さを実感してのものなのだが。]
え、あー、あれか。
[続く礼には記憶をたどり、該当するものを思い起こせば]
ああいったのは、事が起きてからじゃ遅いしね。
[と、当然のことをしたまでというスタンスで。
ちなみに『事後処理を後回しにしてはいけません』という禁則事項もあったりする。]
[迷子になって森林浴を堪能したらしき二人。
意見が噛み合っていないままに、二人が互いを同伴者として認めている気配は伝わって来た。]
お楽しみでしたね?
[相づちのつもりで変なことを言った気もする。我ながら焦れている。
ロー・シェンから狩り中止の声もかからなかったから、問題はないのだろう。]
獲物を追ってる最中だ、 改めて。
[なるべく敬語、の方針はさっそくどっかに行ってしまっていたけれど、さすがに彼らの頭上を飛び越えたりはせず、横跳びに迂回してから森への侵入を再開した。
追跡すべき痕跡と、森を歩いていた彼らの痕跡とを混同しないようにしなければ。
少しばかり難易度が上がったが、むしろ先に知っていてよかった。]
[幼子の声を聞いただけで、感情が溢れて]
ディーク!!
ディーク、ディーク、…… ああ
[飛びついて、全身を彼に投げ出す。
首に両腕を巻きつけて、あられもなく縋り付く。
いきなり抱きつかれたディークがどうなるかなんて、思いやる余裕もなかった。]
[そして――…]
――緊急避難で簡易術式使っちゃったんだけど、訓練に問題あるなら彼に伝えといて。
[と、猟犬へのみ聞こえるように。
術の施行と大体の場所を伝えておいた]
ちょっと待って、それ、僕まで迷子になったみたいじゃないか…
[スルーしかけたダーフィトの表現>>356にはきっちり横槍。
焦れた猟犬の子が駆ける後ろ姿に]
――よき狩りを
[と、見送りの言葉を送るだろう]
っ
[助走付きで衝突してきたメイドも受け止めた体が、今度は不意打ちによろめいた。
後頭部が壁にぶつかる鈍い音を聞きながら、華奢な肢体へ腕を回す]
…戻れた
[もう一度言ってみる。
白い布越し、触れ合う低い体温を浴場で感じていたのが、随分前のことのよう]
[迷子だの森林浴だのなにをしてきたのかいまいち要領を得ないが、なにしろ朝帰りならぬ夜帰りだ。あまり楽しくない類のことであろうとは思う。
既に相当飢えているだろうレトが飛び出していくのは、横目で追った。]
すまないな。
まだなにも口にしていないせいで、頭がそちらに行っているらしい。
[謝罪を入れたのはレトのちぐはぐな言葉について。]
術式?
[伝えられた内容に一度目を開くが、すぐ頷いた。]
それならば問題はない。
が、忠告感謝する。
[やはり日中ここにいたのか、とは内心思うのみで。]
[散策組二人の声を背に、森の奥へ。]
あの二人の声、どこで聞いたんだっけか。
[疑問が頭を掠めるも、今は狩りに集中することにした。]
[人であった頃は畏怖の対象でもあった闇が、今は様々なことを囁きかけてくる気がする。
水の気配、生き物の動き。
樹々の呼気や瘴気の澱みさえ。
ルマニと育った下地があるとはいえ、周囲を探る知覚の鋭敏さは突き抜けて向上していた。
倒木を飛び越える身軽さも、長く走っても疲れない足も、これまでの比ではない。
吸血鬼の力を自覚する。
チラチラと意識を炙る破壊衝動は厄介だけれど、血を喰らって満たされれば、それも収まるのだろう。]
あっちな。
[餓えた夜の狩人は徐々に獲物の位置を割り出し、迫る。]
[何かが激突する鈍い音がしたが、それすら意識に上らない。
背にディークの腕が回されたを知り、胸を塞いでいた塊がゆるゆると溶けていくのを感じる。]
……うん
[目元を涙の痕で濡らして、稚い子供のように頷いた。]
[養い子の言葉につっこみ入れるステファンの様子を見て、小さく笑う。
すっかりなじんでいるらしい彼らはきっと相性は悪くないのだろう。]
もう納得したのか?
[なにか感心しているらしいステファンの連れ子に、笑みの気配残したままで聞いてみる。
自分が吸血鬼であることを、だ。]
[ダーフィトが、猟犬の子を見送りこぼす言葉>>361に]
同じ血を受けても、同じ子ができるとは限らない。
そこは人間の血縁でもいえる事。
[自分が劣ると思っての言と受け取り、個体差についてはよくあることだと。]
[間近で見詰める瞳は、錆の色か、それとも鮮烈な赤か。
表情のあまり変わらぬ子だけれど、不器用ながらも感情を表そうとしているのは、感じていて。
胸を占領していた冷たい不安の塊は溶けたのに、
今度はこみ上げてくる熱いものに胸ふたがれる。]
…… す き
[切ない息吐いて、幼子に顔を寄せる。
彼の唇の感触を、己のそれで感じたかった。]
[森を走る背を追って、闇語りの声を送る。]
先のマスターが使った術式が残っている。>>189>>193
危険はないだろうが留意しておけ。
[つながる声は、自身の血から響いていると、レトは気づくだろうか。
離れても見ている、と無言で告げる。]
そうか。なら良い。
[笑み浮かべるダーフィトへと頷きを返す。
彼が自己を認めたのなら良いことだと、素直に思う。
さて。彼と話していた娘の方はどうしているのか。
ごく短く、思考を巡らせた。]
[レトが狩りへ向かった森の奥に視線を向ける。
彼の姿はとうに見えなくなっていたが、その場を離れるつもりはなかった。
腕を組んで立ち、帰ってくるのを待っている**]
[困惑に眉を寄せて、背を撫でた。
涼しくも艶ややかな翠の瞳が赤くなってしまっている]
泣いてる?
したで なにかあった?
[見当違いの心配をしながら。
大丈夫、というように腕へ力を篭めた]
…──?
[近付いて来る顔に瞠目した。
間近な翠を縁取るあかがねの睫毛が綺麗だと、
不意に思う]
、
[拒む仕草のないままふたつの距離が消え、唇が重なった。
ふわりと翅が触れるようなやわらかさ。
閉じないまま、錆の色の虹彩にじわりと緋が滲む]
ン
[喉が微かに上下した]
まぁ。向いてなさそうだし、できることをやるしかないね。
[魔術やらが自分に向いているかは知らないが。
その場に留まるローにもう一度挨拶を残し、まずは魔術の基礎を試してみるべく館への扉を押した*]
[口接けは翅の軽やかさ、
羽ばたきの如く二度、三度と、
弾力をもった男の唇の上を舞って]
ふ、 ……
[ディークの腕は、決して逞しくはないのに、鍛え上げられたものの力強さとしなやかさを備えて、世界から隔ててくれる。]
〔…すき? なぜ〕
[好かれるべき点などどこにも残ってはいないだろう。
蝶は兄弟を連れて逃げろと言わなかったか。
人を殺さずに血を得る方法を教えると言ったのは、]
──
[思考はまとまらない。
ほのかに緋のさした錆色が揺れて、
薄い背へ触れた掌は、零になった距離を縮めようというように、あるかなしかの力が加わった]
にっ…
[森を駆けてゆく最中、不意に自分の血を介して響いたロー・シェンの声に動転して、うなじの毛が逆立つ。
周囲を伺ったが、彼の気配はなく、これも吸血鬼の技のひとつなのだろうと納得した。]
あい、あい。 了解。
[まだ慣れず、つい声に出して応えてしまう。]
[なるほど、森には古い魔力が息づいていた。
下手に触れないよう、そっと通り抜けて先へと進めば、逃げてゆく筋骨逞しい男の背が知覚に捉えられる。
その手には斧、腰には鉈が下げられているのが見て取れた。
森に生活の糧を求める者──だが、その男にはロー・シェンの印がついているのだった。>>332]
──邪魔をするぞ。
[振り向かせようと思って声をかけたが、相手は足を緩めなかった。
ただ全力で逃げているわけではない。そうだとしたら、とっくに息を切らして疲労困憊しているはずだ。
だが、男のフックワークは軽く、体重の掛け方を見ても、足場の悪い森に慣れているのがわかる。]
貴様だ。
[獲物と見定めて、距離を詰める。]
[男は狩人の接近に気づいて、より慎重になった。
巧みに遮蔽を取るから、飛び道具も使いづらい。
ここがルマニの森であれば、地形を味方にできるのだが──ないものねだりをしても仕方なかった。
逃げる男と追う吸血鬼の影は幾度か交錯し、だが、止まらず。]
近接でやるしかないか。
[相手の間合いに踏み込む危険さに舌打ちしながらも、男の向かう先へと回り込み、スライディングで男の足を崩しにゆく。]
[身を投げ出し、足を絡めて男を引き倒す。
この時とばかりに振り下ろされた斧の刃が肩先に食い込んだ。]
ぐ…っ
[衝撃に呻きが洩れたが、痛みとは隔てられている。
むしろ、傷つけられた自覚に、理性が遠のいた。]
んらぁっ!
[関節を狙って逃走を止めるつもりの攻撃で、相手の脛を砕いてしまう。
破壊の衝動。
それでも、相手の苦鳴の雄叫びには眉をひそめた。
男の手から捥ぎ取った斧を攻撃に用いる代わりに背後に投げ捨てる。]
血をもらう。
[あがく男の手を膝で抑え、まだ動く方の掌底で男の顎を押し上げて喉笛を晒させた。
瞬間、バランに襲われた自分のイメージが過って萎えかけるも、違う、と言い聞かせて牙を剥く。]
― 夜の森 ―
[ステファン主従が去ったあとも、森を向いて立っている。
と、後ろから掛かる声があった。>>377]
待っている。
[問いへ返す答えは、これ以上なくシンプルだった。
答えてから相手の方を向いて、片方の眉を上げる。
初めて見る顔だ。
だが、纏いつく黒の蛇は真祖が連れているもの。
真祖の中で、この蛇が自分の兄扱いされているまでは知らなかったが、ともあれ真祖に引き取られた仔で間違いないだろう。]
おまえは?
[なにをしているのかと逆に問う。]
……確かに、何を語る前に死なれてはやりきれないね。
[冗句に軽く肩を竦めて応じる]
そう? ありがとう。
[席を立つ娘を見送る態。
休むなら、彼女はベッドの場所も解るだろうし、
外に出るなら、気をつけるんだよ、と
先程の振動の手前、言い含めておくのだった]
もし、僕のいない所で何かあったら呼びなさい。
耳は良い方なのでね。
[相手の二言目で親戚かと問われ、表情が険しくなる。
嫌そうな顔をした、と言い換えてもいい。]
断じて違う。
くだらない噂はあるが───
[言いかけて、ひとつ注釈を入れなければならないことを思い出した。]
ここは、評議会所有の城館だ。
[そういう解を求めているのではないだろう、とわかっていて"此処が何処か"を示す。
多分、そういうことも聞かされていないだろうなと予想はつく。
と。森の中から聞こえた叫びに、意識を向けた。]
───狩りだからな。
[殺してしまうのかと問われれば、当然のこととして答える。
向き直った瞳を、真っ直ぐに見返した。]
厭うのか?
[人間を殺すことを。]
[狙うは頸動脈。
噛み裂くのではなく、牙を埋めて届かせる。
組み敷いた男の背が戦慄く。浅い喘ぎ。
男が溺れているのが痛みではないことは、知っている。
口の中に命の味がゆっくりと広がった。
衝動が、鎮まる。]
[飲む、というよりも舌の上でとけてゆくような感触。
それは官能の陶酔にも似て、全身を包む。
血の供給によって目覚めてゆく力は、春を待って草木が芽吹くよう。]
[だがその感傷に、長くは浸らなかった。
もはや抵抗する力の残っていない男から牙を抜き去り、掌で首の傷を覆う。]
獲物を仕留めた。 糧もちゃんと得た。
後は、
[思い直して、先程の”声”を真似せんと、自分の中の力を探る。]
ロー…シェ
届く かな 届け
どうすん …これ
放っといたら狼や鴉の餌食だし、ここじゃ手当のしようもないし。
それとも、これ、吸血鬼になるのか?
[応えが返る時間がもったいない。
治りかけでない方の肩に男を担ぎ上げて、ロー・シェンの待っている森の外れへと駆け出した。]
[険しくなる表情に、誰と、というのはいわずとも知れたことらしい。
名付け親、と聞けば、すごくその反応に納得するものがあった。]
……親って選べないものみたいだね。
……おにいさま?
[名付け親で、養親。
さしずめ血兄弟とは別の意味で、同じ親をもつということは、お兄様というところなのだろうとぼんやり思った。
評議会の城館であるというのには、そう、とだけ返す。問いを重ねることの無駄を感じとったからだ。]
狩り……誰が狩りをしているの?
[待っている、と言った相手なのだろう。
厭うのか、という問いには少し目を細めて森を見て。]
……ひとであれ、そうでないものであれ、飢えに苦しむ姿を見ていることに耐えられる自信は無い、から……
……せめて苦しまなければ良いと思う。
[食わねば生きていけないことを否定することは誰にも出来ない。
己が人血を拒むことを、他の同胞に押し付ける気は毛頭なかったが。
少しだけ睫毛を震わせ、視線をさ迷わせた。]
[森の中でレトは見事に獲物を仕留めたらしい。
血を探り、返ってくる響きの強さは彼が力を増した印。
人間の血を吸うことで、夜の狩人として目覚めていく。
まずは上々だ。
押さえた笑みが唇に乗る。]
持ちかえれ。
[届いたたどたどしい念話に返事を寄越す。]
おまえの初めての獲物だ。
検分してやる。
[人を殺す。
その言葉を内心で反芻すれば、
幼い頃のことだというのに一度も忘れられずにいる、金属越しに伝う肉を潰す感触が甦るよう。
振り払うように、首を振った。]
あ、 やった?!
[試みた技が成功したことの喜びが、そのまま念話にだだ洩れた。
「初めての獲物」、そのフレーズにも誇らしいものがある。]
すぐに、用意された獲物じゃないのを狩ってみせるけどな。
[意気込んで宣言し、ロー・シェンの下へ向かう足は自然と弾む。]
[森の影から抜け出し、月光のもと、待つ人を見つけた。
先程の散策組はもういなかったが、代わりに淡い髪色の聖職者らしき青年がロー・シェンの側にいる。
ホールで、あの白銀の男から血の洗礼を受けていた青年に違いない。
もう出歩けるようになったんだ、と思う。
そちらへは軽く目礼だけして、運んで来た男をロー・シェンの前に横たえた。]
狩りはつつがなく。
[足技を仕掛けて服が汚れたとか、肩口を斧で割られたとかは、「問題ない」の範疇と見なしていた。]
この男で間違いない? ですか。
[概ね満身創痍で、男を担いで森から出てきた人を見る。]
……あ
[二人の会話を妨げることはなかったが、
初めて見る顔だったが、彼も自分と同じ血親をもつ兄弟であることに、すぐに気がつき、小さく声をあげた。]
[おにいさまとの呼びかけに、軽くうろたえた。
そうなるのか。……なるのか。
自問自答の末に、これ以上の言及は避けることとする。
おおむね、
……選べることもあるんだがな。
[押しかけ名付け親を持った自分と、略奪され無理に変容させられたうえに評議会によって二度目の養い親を決められた彼。
残念ながら両方とも選べなかったくちだ。]
…ん?
[血の糧を得て目覚めた力に、近しい血の共鳴が伝わる。
この祭壇の乳香のような感触は誰のものだろう?]
こいつ? アレクシスと同じくオレの血の兄弟?
[思念が洩れているだけで、話しかけているつもりはなかった。]
俺の子が、初めての狩りをしている。
おまえの血兄弟だ。
[誰が、の問いにはいくらか丁寧に答えた。]
自力で糧を得るところから身に付けさせている。
もう帰ってくるようだな。
[口数が多いのは、機嫌のいい証拠だった。
対照的に、視線をさまよわせる金髪の仔の顔を眺める。]
むやみに獲物を苦しませるのは、狩人としては下等だ。
それを趣味とする輩もいるが、俺は好かない。
なにをどう糧とするかは個々の趣味だろうが、
俺は、捕食者としての自分に誇りを持っている。
[悩むらしき様子に直接言及することはなく、ただ自分の在り方を語った。]
[直接内に響く声に、驚いて瞬いたあと、きょろりと辺りを見回した。]
……だれ?
アレクシスって?
戻ったな。
そうだ。間違いない。
[森から現れたレトの肩には、獲物として選んだ樵が担がれていた。
横たえられたそれの体を改め、首筋の傷に触れる。]
初めてにしては上出来だ。
よくやった。
[頷いて、レトの頭を撫でた。]
親に獲物を捧げるのも子の役割だが、
今回はおまえのために用意したものだ。
全部喰ってしまっていい。
[樵にまだ息があることを確認して、レトに続きを促す。
暗に、吸い殺せと示唆していた。]
[僅かに狼狽えた様子に少しだけ目を丸くした。選べることもあると聞き眉を潜める。]
……私は運にも見放されているらしい。
[と、小さく息をついた。]
私の、血兄弟。
[急に大家族になったような感覚だが、どうも吸血鬼のいう家族は血の系譜を表すものらしいと、今の会話を通して推察する。
次いで狩りについて語る声に耳を傾ければ、彼の在り方には小さく安堵の息を漏らした。]
……捕食者。
ねえ、日々の糧に、感謝と祈りを捧げることはある?
[あたりまえのように朝晩捧げてきた祈りを思い出して、ふと口にした。
あなたのおかげで今日も飢えません、という対象が人となって始めて、祈られた相手が何を思うのかをようやく思考したことに、気が付いたというだけ。
彼の子で己の血兄弟が戻ってきたのは、丁度そのときだったか。]
[血をさざめかせて声が届いた。
さっき、ロー・シェンから送られてきたのと似ている。
だけど、別人の響きだ。
周囲を見回す淡い金髪の青年と視線が会った瞬間に、新たな声の主に気づいたけれど、その時、ロー・シェンの掌が頭に触れたから、確かめることはすっかり意識から抜け落ちてしまった。]
[親に獲物を捧げるのも子の役割らしい。
覚えた。
今回の獲物はおまえが喰ってしまっていいと、ロー・シェンは促す。]
じゃあ、持ってってあっちで。
[食えなくはないけど、餓えの衝動が去った今、ガッつきたい気分でもない。]
[肉声を聞いたことで、先ほど漏れ聞こえた声の相手が眼前の青年であることに気づく。
気づきはしたが、今声をかけることはしない。
吸い殺せと命じられた彼がどうするのか、じっと見つめていた。]
[気を失った樵を見つめていたが、やがて、静かに祈るように目を伏せた。
短く何事か口のなかで呟いて。]
じゃあ、……私は行くね。
[二人の邪魔をせぬようにと、夜の森へと歩きだした**]
[持って行ってあっちで、というレトに頷いて承諾を与える。]
獲物の始末を覚えるまでが狩りだ。
後で処分の方法も教える。
[まずは食べること。ついて後片付けをすること。
まずは生存に密接なところから教えていく方針。]
[そして、先ほど途切れた会話>>401を、レトにも聞かせるように続けた。]
感謝と祈りを捧げたことはないな。
だが獲物への敬意は払っている。
我らの源だ。いかなる意味においても。
[もう行くという金髪の仔を引き留めることはしない。]
…強くあれよ。
[ただ、彼と彼の養い親のことを思って、短く声を掛けたのみだった。]
あれ、どこ行くん──
[しばらく固まったように様子を伺っていた青年が、視線を伏せて森へ入っていくのに気づけば、いくらか戸惑うような声を上げた。
あまり、森に慣れてそうには見えないんだけど大丈夫なのか。
だが、ロー・シェンに彼を引き留める気配はない。
それを見て、深く息をついた。]
[へにゃと眉を下げる。]
あの …ごめん
[いきなり謝られてもわけがわからないだろうと、つっかえつつ説明する。]
あのさ、オレ、師匠がそいつにオレが人を喰うところを見せたいんだと思ってた。
[淡い金髪の青年の聖職者とおぼしき恰好を見れば、青年が人食いに積極的でないことくらいは予測可能で]
だから… その、
オレをそいつの教育のダシに使うつもりかと思って…
今、喰いたくないのは本当だけど、それ以上に、その、 拗ねた。
[幾度も唇を重ねるうち、自ら求めるように少しずつそれに応えていった。
肌の裡から、痺れるような欲が綻び拓く。
あやかしの魔性は情に慣れぬ雛へ容易く陶酔を生む。
背へ、脇腹へ、熱が灯った。
一度舌で触れられている傷痕が、記憶に呼び覚まされる如く淫靡に疼いて]
はッ…
[深く長く交わした口接けの果て、
体を入れ替え、壁へ押し付けるように白く白い喉を晒させた。
一気に発火した緋色が瞳を煌めかせる。
欲しい、 求める劣情のまま長く鋭利な牙を]
[背に宛がわれたディークの手に、ほんの少し力が加わったと感じたのは錯覚だろうか。
互いを隔てる服の距離さえもどかしいと、摺り寄せる肢体は猫のしなやかさ。]
(ディーク)
[触れあわせた唇が動き、無音で名を呼ばう。
濃い栗色の髪に細い指が潜り込み、彼の頭を掻き抱いた。]
(……ディーク)
[牙を ]
〔こんなことは赦されない〕
──!!
ク、 …
[牙の切先を血脈へ埋めぬまま、顔を離した]
[燃え盛る曙光に似た焔の双眸に、明確な知が瞬く。
狂おしいほどに血と、深い絆を求める慾の色は露なまま。それらを凌駕して宿るのは、心ごと毀されるまで折れなかった強固な自制。
怒りと絶望を識り、憎悪を──吸血種ではなく己自身への深い憎悪を抱いた瞳が苦しげに眇められた]
…コンラート……私に、その資格など
[不意に謝られてレトを見る。
なにを言っているのだという顔でしばらく見ていたが、やがて得心して小さく笑った。]
そんなことで拗ねるな。
俺はおまえの"親"であって、彼のではない。
年長者としての義務は果たすが、それだけだ。
[他のマスターの教育方針に口を差し挟む気はないし、
そもそもあれのマスターは関わりたくない類の相手だ、
とまでは説明せず。]
謝罪はいいが落ち込むな。
今は俺だけを見ていればいい。
他の連中のことなど気にするな。
[重ねる毎、ディークの唇が、躊躇う幼子から静かに燃える炎に変わっていった。
貪ると同時貪られて、身のうちに火が宿る。
じわりと総身に燃え拡がる炎熱に焼き焦がされる。]
ぅ ふ、 あ ……
[熱に蕩かされた蝶は、容易く捕らえられ、壁に展翅され。
仰け反り皓く白い喉を晒す。
双眸の赫と輝く緋に、燎原の炎の如き渇望を認め、恍惚と戦慄いた。
欲しい、恣にこの身を貫き穿ち引き裂く牙を]
わ、わかってるっていうか、 …ちゃんとわかったから!
[ロー・シェンは教えるべきことを、指導する相手を、しっかりとわきまえている。
自分の情けなさに頭を抱えたけど、ロー・シェンの揺るぎなさは本当に嬉しいのだ。]
ついてく── 師匠に負けない。
[よいせっ、と獲物を再び担ぎ上げて城館へと向かう。]
とりあえず着替えたいかな。
あと、傷の汚れを流して──ん、風呂?
[放浪生活では湯浴みの機会なんてめったにない。
だが、ロー・シェンの個室にも浴室が備わっていると聞いて、使わせてもらうことにした。
大浴場は誰が来るかわからないから、ちょっと困る。
獲物は使用人に託して一時保管してもらうことにして、ロー・シェンの部屋へと向かった。]
えーと、あー…
近くに誰もいなくって、助けてほしいとか、話を聞いてほしいとかあったら、この技は便利だなって思わないか。
他の血兄弟とか──自分の引受人にも届くかも。
ひとりで行き詰ったら、 遠慮すんな。な?
[城館に戻る前に、遠ざかる気配に投げかけるように、声を送った。]
[――けれど、その瞬間は来なかった。]
[喉に近づいた熱塊が一瞬で遠ざかり、ディークが顔を離したのだと知った。
瞼を開けば、狂熱に浮かされた視界に、苦しげに歪んだディークの顔が映る。
緋色は未だ狂おしいほど求めてくれているのに、望んだものを与えてくれない。]
…… ?
な ぜ
[やはり僕では駄目なのか、と絶望の
[新しく得た力を使って、自分を吸血鬼にしたのと同じ、バランに縁のある者を探してみる。]
んん?
この縺れた枝のような感触は誰のものだろう?
[思念が漂う。]
[決意を口にするレトに、ちらりと笑みを零す。]
楽しみにしている。
[負けない、が形になる日を。]
[新しく得た力を使って、自分を吸血鬼にしたのと同じ、バランに縁のある者を探してみる。]
んん?
このボビンレースのような感触は誰だ?
[思念が漂う。]
し かく ?
[彼が何を言っているのか分からなかった。
漠とした心に、資格がないのは自分ではないのか、との
その意志のない、傷ついて苦しんでいる彼に、勝手に引き裂いて欲しいと望んで押し付けたのだから。]
[新しく得た力を使って、自分を吸血鬼にしたのと同じ、バランに縁のある者を探してみる。]
あれ… これは… 知ってる感じ?
図書室…教室?
[思念が漂う。]
[新しく得た力を使って、自分を吸血鬼にしたのと同じ、バランに縁のある者を探してみる。]
あれ… これは… 知ってる感じ?
この松葉杖のような感触は誰のものだろう?
[思念が漂う。]
何もかもが遠くて まだよくわからないけれど
私は
決して信を得、求められるに値しない
…きっといつか、貴方を裏切って──
壊し、殺す
[首を振る。
闇から掬い上げられて以来、自分のことだけで手一杯で、彼が何を想い、何を望んでいるか考えも出来なかった。
今、それをしてこなかったことに、怯えに似た後悔を抱く。
気持ちを知りたいと、思った]
…っ、だけど
時間を、ください
[美の化身のような白とあかがねの青年の足元へ膝をつく。
いつか殺すと言いながら、縋るように見上げた]
すべてを失い、
このうえ──今また奪われれば、もう…
[ 。
瞳は激情の煌めきが終熄すると、鮮やかな緋色から少しずつ色が落ちていく]
せめて、私の罪を思い出すまで。どうか
そばに いさせて
[表情を隠すように俯いた。早口で囁くように言葉を紡ぐ]
恩義には報いる
心なき空蝉の身でも良いならば、喜んで捧げよう
寒い時には温めるし、
男娼と扱うならば── したことはない、が、その。
[そういう志向にも応える、と、ぼそぼそ続けた]
― その日、その時 ―
[漂う気配に顔を上げた。
広げた紙を前に、無表情へ軽い絶望感を浮かべていた頃。
つまり、迷わないように地図を作ろうとしていた頃]
…?
[虚空を見上げた視線は何かを探すように動き、
それからまた紙面に落ちた*]
[怒涛となって溢れるディークの言葉に、悲痛な表情を浮かべながらも口を噤み、じっと耳を傾けていたが、]
違う――それは違う。
[彼の声が途切れると、駄々っ子のように首を振った。]
[彼の瞳から緋色が薄れていく。
鋭さを失い、忘却に侵食された茫漠の世界に引き戻されてしまう。
その前に、或いは途中でそうなってしまっても。
彼の中に刻み込む、と俯く頬を両の手で挟んで、引き上げて。]
君が僕を壊し、殺すと言うのなら、
僕はそれを拒まない。
君がそれを望むなら、
何度でも壊され、殺されよう。
望まずして壊し、殺すのだとしても、
それも僕は、愛だと思おう。
[額を合わせ、消えゆく緋に翠を映し込み。]
けれど、君がそうしたくないと望むのなら。
僕が君を、そうさせない。
――どれほど僕が君に壊して欲しいと願ったとしても。
[この両手は冷たいけれど、
それでも長い生の間に僕を支えてくれたひとたちのぬくもりが、
彼にも伝わりますようにと祈る。
そうして、額をこつんとぶつけて、瞳を閉じる。]
[白磁の肌を惜しげもなく晒しながら口を伸ばす姿は雛鳥でありながらどこか官能的な様相さえ醸し出す。]
我に価値を示し続けるのだぞ。そうすればまたこうして血を飲ませてあげよう。
[食に飢えた雛鳥に優しく心に染み入るように囁く
少量でも真祖の血だ。当面の活動に支障がない量はそう多くない。だが欲が満ちるかといえば話は別だ。そうとしりながら、指を舐るのに合わせ指を動かし、引き抜けば名残惜しそうに舌で追う指を悪戯に血の香りを残すように鼻の近くを一度通して戻す]
…よいな。
[優しい笑みを浮かべ、自身の血と血飲み子の唾液交じりの親指を口に含んだ]
― 私室 ―
[血飲み子が逃げ出さねばよかったのだった>>341という結論を口に出すのは控えた。厳しくてもいけないということから、厳しかったらしい。
湯からあがり初めての邂逅のときに着ていた神学校の服を纏い戻ってきた血飲み子の下へと向かい体を這うようにして緩く巻き付くオスカー]
それがオスカーだ。
しばらくの間、血飲み子の盾となり刃となるだろう。親しくせよ。
[変な悲鳴を上げる>>349血飲み子へと告げる]
よいぞ。但しオスカーが引き留めた場合はそれ以上はいくな。
誰ぞにあっても相手の尊厳を穢さず、さりとて卑屈にならずにいろ。
[簡単な注意>>354をいい、自由に行動をさせた]
― 自室から教室へ ―
[泥を落とし軽く身支度を済ませ部屋を出たならば、暇そうにしていた使用人を捕まえ頼み事を。
それが終われば、書庫と隣接した部屋へと向かうだろう。
ダーフィトの手によって運び込まれた本の山>>412を目にすれば、やはりもう少し吟味すべきだったかと軽く後悔が入る。
血によって目覚める事のある能力を、本能によってではなく知識によって引き出すならば、一つの能力で8冊超は必要になるので、吟味したところで減りそうにはないのだけど。]
ああ、そうだ、ダーフィト。
君は珈琲にするかい?紅茶にするかい?
[自家のしきたりのうちの一つを口にして、ダーフィトの返答を受けたなら、勉強の始まりとするだろう。]
[頬へ触れる温度の低い手。
何を否定されるかと構えた身に、降り注ぐ言の葉]
ぁ、
[首を振ろうとした動きは手のひらから伝うぬくもりに制される。
翠の宝玉に、淡い朝陽の色が映った]
──うらぎっても…?
[額を触れ合わせれば、間近な銅色の睫毛はやはり美しい]
[鼻先が触れ合うくすぐったさ]
[薔薇色の唇へそっと啄むようなキスを]
…
[再び翠が開く時、
元の明るい赤錆色に戻った双眸を笑みの形に緩めた]
こわせ、とねがうなら
やる
[それが貴方の望みなら]
― 私室 ―
[自由行動をさせておく間もオスカーがいれば問題はないだろう。
己の血を受け名前を授けられた執行者>>380のお兄ちゃん分であるのは伊達ではない。
その間に考えるのは――本来ならば血の味に慣れさせ、狩りを覚えさせ。知識と処世術を学ばせればいつでも巣立てるだろう。と思っていたがいくつか省けてしまった中]
反抗期…というやつか。
[コウモリ倶楽部への悩み相談に対する投書を行っていた]
――裏切っても。
[こくり、と頷く。]
[幾度も裏切られ、痛めつけられ、貶められてきた不死者にとって、嘘偽りのない真実の感情だった。]
― 教室 ―
[運んだ本の山を目にしたステファンが、ちょっと固まった気がした。本気?と問うような目を向けたけれど…本の山はこれ以上減らないらしい。不意に珈琲か紅茶かと問われ]
紅茶。
[そう答えて、運びついでに適当に分類して置いた山のひとつから一冊手に取り、ぱらりと捲った]
― 教室 ―
まずは変性…名前の通り、物の性質を変える魔術だね。
帰ってくる前の話だけど、君が寝ていた岩場の形が変わっていたよね?
あれが該当するかな。
ちなみに血による変異能力はこの系統の最上位で――…
自分の体の全身なり部分なりを変異させ、その生き物として動かすという恐ろしく高等な事をしてるんだ。
知識によって実践する場合、自分の体であるからこそ、自我があるからこそ、他の生き物として動かす事が難しい。
本能による能力使用は、応用編だけ知っているという例えが言い方としては適当かな――…
[実際に起きた事例を絡め、しばし授業が続くだろう*]
[啄ばむキスに瞼を開ける、
目の前のやさしい赤錆いろに、
自然笑みが浮かぶ。]
壊していいよ。
君にそうされたいよ。
[物騒な言葉に不釣合いなほど
―目覚めの頃―
…おはようございます。
[一体どの位眠っていたのだろう。
相変わらず天蓋越しの室内は薄暗いが、今はそれが心地良い。
しかし、夢見は最悪だった。
怖い夢を見て泣きじゃくる子供、とは良く聞くが
楽しかった頃の夢を見て泣く者は、世界中何処を捜しても
自分だけなのだろうと苦い笑いを浮かべる。]
[先に目を覚ましていたトールからその際の涙の跡を問われては
苦しい言い訳を繰り返して過ごしていた頃の話である。]
……えっ?
[不意に、頭の中に直接響くような何かが聞こえた。
音のようでもあるし、イメージとして表せるようなものでも
ある、これは一体何だろう。]
あの…今、何かが頭の中に直接響くような声が
聞こえたのですが、貴方…僕に何か細工しましたか?
聞き覚えのある声でしたので、少々気になりまして。
[まず疑ったのは眼前の主。
先の声の気配は、違いなければ再会を願った血兄弟のものだ。
自分達が短くとも語り合ったことを知っているのかどうかは
さておくとしても、余計な気を回して元気付けようという
魂胆なのだろうかと考えたのだ。]
わかった、茶葉はこちらで選んでおくよ。
[ダーフィトから「紅茶。」という言葉が返ってきたなら、使用人を呼び、紅茶>>0:291を準備させる。程なくして、届けられることとなるだろう。
ページを捲るダーフィト>>418を、興味をもつことはいいことだと特に咎めることもせず。
ただ、何を読んでいるのかだけは気になったので覗きこんだ。]
― 教室 ―
あ、ちょっと待っててね。
[ふと、悪戯を思いつき。
後ろに回りこむと、ダーフィトが着ているシャツの項部分だけをジョーゼットに変えてみた。
絹に近い柔らかで優美な布地の感触に、どんな反応を示すだろうか]
[目覚めがこの通りであった為、夢見の悪さについては
その後触れる事が無かったのは幸いだった。
トール及び声の主には感謝せねばなるまい。]
そうだ…メガネ、メガネ……。
ああ、あった。
[上着に入れ放しになっていた眼鏡を探ろうと、手を伸ばす。
掛けられていた上着を掴み、ケースを引き出した所で
ようやく気付く。
眼鏡が無くとも、ものが見えると。]
……有難いような、そうでないような。
[それならもう眼鏡は必要ないはずだが、それが無ければ
自分の何もかもが変わりきってしまうようで、怖い。
だから眼鏡は変わりなく身に付ける事にした。]
[紅茶を、と。要望を出すと程なく、綺麗な模様が描かれたカップが運ばれてきた。続く授業に疲れかけていたために運んできた使用人から礼を言って受け取り、口をつけかけたものの]
―…??
[なんとなく。嫌な気がして、数秒考えたもののカップをソーサーに戻した]
…
[額を触れ合わせたまま、背を抱き寄せた。
ぎこちない仕草で、
ぬくもりと、絆と、慰めを]
やれる 大丈夫
[きっと貴方が思っているほど、この魂は感じやすく儚い『善良』なものではない]
― コンラートの部屋 ―
[紆余曲折の末に帰り着いた部屋。
随分長く迷っていたらしいのは、部屋の主の様子からやがて理解した]
[そういえば、と呟くのは、
心配させた事をぽつぽつと謝った後]
あの…穴の
…メイド?
だいじょうぶだった?
あ、ああ。
?!
[待ってと言われて後ろに回るのを不思議に思いつつ待っていたら、不意に首筋にあたる生地の感触が変わった気がして。服の襟に触れてみたりするものの変化はなく]
―????
[ほくそ笑むステファンには気付かず、首を捻った]
見てみたいのは血による変化かい? それとも魔術によるものかい?
………後者なら今やったけどね。
[あっさり仕込んだ悪戯を白状しつつ]
ん…… ぁ
[抱き寄せられると、艶かしく背は弓のごと反り、臆面もなく擦り寄る。
力強い腕に囚われ、硬い布越しとは言え、確かな質量を備えた肉に触れる、
その愉悦。]
ディーク……
[歓喜に包まれながら、彼がいつかそうしてくれることを願った。]
[それでも先を急かすのは、自制を総動員して堪えた。
薔薇色に色づいた唇から熱が零しながら、苦笑する。]
――どうやら時間が必要なのは、君だけじゃなくて僕にもみたいだね。
君が、記憶を取り戻すまで、待つよ。
その後でも、僕が欲しいと言ってくれるなら、
その時こそ、僕を壊して。
前者なら――…
[と、記憶を探る。
何人か思い当たりはするものの、その中で一番高等な事をしていると男が認識する人物は――…
ふと、自身より長命な吸血鬼の姿>>114がよぎるのだが、今までの彼を思い起こせば、今訪ねて行っても大丈夫どうかが難しい気がしてきて遠い目になった。
訪ねた際、タイミングが悪かった事があったのだ。どうタイミングが悪かったのかは深く言及はしないでおくけれど。]
― 夜の森 ―
兄弟たちへと出会えたようだな。
[名を付けた子と血飲み子の血兄弟との邂逅後、歩いて行った先>>405には当然のように闇の衣をまとう銀の吸血鬼がいた]
本来ならば血に慣れさせた後、お前にもああやって狩りを教えるつもりだったのだがな。変なところで手間をかけ、変なところで手間を減らしてくれる。
―自室―
[幼子が行方不明になった一件では、いっそ分身を全館内に放とうかというところまで思い詰めたとは、内緒である。
それを考えれば、その後の涙の再会など可愛いものだろう。
地下に落ちたメイドについて尋ねられれば、一瞬酢を飲んだような表情を浮かべた。]
あー……一応は大丈夫だったかな。うん。
[ダーフィトが興味を持った一冊>>428に]
回復魔法は対人間のものだね。後々必要になると思うけど、今はいいかな。
効率化は術を使えるようになってから考えるものになるんだけど――…
[とまで説明して、ふと目の前の生徒の燃費の悪さを思い返す]
(一体、何に栄養取られてるんだろう――…)
[と、首を傾げた。]
[送った念に共鳴があった。
ぽつねんとした問い。]
お! 繋がってる?!
よろしく、血兄弟! だよな、多分。
オレか?
ん、オレの名は、いっぱいあってな──
[嬉しそうな声が注がれるも、なかなか技の維持が難しく、声は吹き散らされるように乱れて掻き消えた。]
[案ずるような響きを伴う先程の青年の”声”に、一度瞬いて足を止めた。]
―――…ありがとう。
ね、それは、ただ寂しくて人恋しくなっただけの時でも、良い?
[柔らかな声で、囁いた。]
私は、ファミル。…名を聞いても?
[少し困ったようなような顔をしたのは。
高い攻撃性を戦士としての欲求に振り向けてきたディークは、元々性的な方面にはあまりもの馴れない方。
ましてこれほどに艶美で淫靡な妖蝶、
危うくたおやかな、おとこ の形をしている者を、この腕で抱いたことがあるはずもなく]
コンラート
[清しく甘い媚毒に酔いながら、
宥めるように慈しむように背を撫でた。
苦笑する翠の目尻へ唇を落とし、温もりを分かち合う]
…ありがとう
いつ、 か わからないけど
待ってて
− ロー・シェンの部屋 −
[狩りは成功したし、ロー・シェンは「楽しみにしている」と言ってくれたし、気分は上々だ。
次の伝授内容についても否やはない。
身軽さには自信があるとはいえ、体の使い方となるとまだ無駄が多い自覚はある。
先の狩りでも、大きな負傷は肩のみとはいえ、シャツを脱いでみれば、擦過傷や打撲はいくつもあった。]
じゃあ、師匠が出たら、入らせてもらうんで。
[風呂に入る段になれば、いささかぎこちない笑みで勧める。]
ああ、だよな…
[対人間、というのを聞いて納得した。吸血鬼ならば怪我なんてすぐに治る筈で、回復術が必要になるとは思えない。
まぁどちらかというと、怪我の回復よりも病気を治せたりはするのかと気になって開いてみたのだが]
そういえば、吸血鬼って怪我は回復早いけど、病気ってなるのか?
[好奇心のまま、思いつけば質問を。ステファンが不思議そうにこちらをみているのに気付けば、こちらも首を傾げた]
[自信のなさそうな口調になってしまった。
それで心配させても何なので、慌てて付け加えた。]
怪我はしてなかったよ。
それから。
養い親のことは、されることややらされることが嫌なのは嫌なんだけど、親自体が大嫌いというのとも違う感じだったな。
[少しずつ言葉を選んで説明を試みる。
……今の記憶にいまいち難のある状態では、理解するのは難しかっただろうか?と思いつつ。]
今度一度、君を訪ねて来ると思うよ。
そうしたら、直接色々話してみるといい。
―寝室・やがて目覚めて―
[どれくらい眠っていたのか、とうに夢など見なくなった眠りから覚める。
腕の中で眠るアレクシスの頬に涙の跡を見つけて、指で拭い。
彼が目を覚ますのを待つ。]
おはよう、アレク。
なにか…怖い夢でも見たのかい?
……声?
いや、俺はなにもしていないよ。
[血親に襲われる瞬間でも思い出したのだろうかと、まさか幸せだった頃の夢で涙を流したとは思わずに、問いかけて。
不思議そうに『頭の中に響く声』について問われると、首を左右に振って否定する。]
…どういたしまして?
[小さく笑んで、こちらも軽く応じた。
先にソファを立った主は、特にどこかに自分を先導するつもりではないらしく]
じゃあ…、少し休ませてもらおうかしら。
[紅茶に混ぜられていただろう血は、恐らくはそう多くない。少し疲れを覚えてきていた。
何かあれば呼ぶよう言われれば、素直に頷いて]
ええ、きっとそうさせてもらうわ。
後で見てまわるかも知れないし。
[森の奥から返る囁きに意識を集中する。]
ああ、 お気に召すまま。
[柔らかな声を掌に掬おうとするごとく、応えた。]
ファミル、ね。
オレの名前は、いろいろあるけど、レトって呼ばれることが多いな。
そう呼んでくれるかい?
[遠隔通信で真名を明かす危険を避けて、いつもの通り名を名乗る。]
イッパイアッテナ
[変わった名前、と感想を抱く。
乱れて掻き消えた思念を追ってしばらく視線を彷徨わせた]
… よろしく?
[あれも血の兄弟だろう。
たぶん、元気そうだった。
ああいうタイプが昔、身近にもいた気がしたが、
それ以上は思い出す事なく手元へまた視線を戻した]
………うん、廊下で赤毛の青年と出会ったら、聞いてみるといいんじゃないかな。
[遠い目>>430をしたまま“前者”について説明するが、あえて外見の説明だけする。
襟への細工に抗議の声>>429がきたので、渋々元に戻したなら、病気についての質問が飛んできた>>437]
病は…僕はあまり見たことがないな。飲んだ血が合わずに起こす体調不良を病というのなら、たくさん見ているんだけど。
そうそう、重病人の血や、薬物中毒者の血を飲ませてみた時は凄かった。
[ゆる、と目を細め、誰に飲ませたのかは言わず。
聞いたところで、制裁により灰と還った者であるという事しか答えないだろう]
[ふと、半分以上残されているティーカップへと視線が向いた]
……口にあわなかった?
[そう問いながらも、視線はカップにそそがれたまま]
聞き覚えのある声か…、誰だろう?
マスターの誰か…か、もう力の使い方を覚えた兄弟かな?
[評議会にバランの心臓を届けている間に、彼が兄弟達とどんな風に出会い、どんな交流があったのだろうと考えを巡らせる。]
[月夜とはいえ、鬱蒼とした森で地に届く光は僅かだ。
それでも、夜目が効くという表現では足りぬほど、良くものが見えた。
見えはしたが、慣れぬ森歩き。
躓いて転びかけたり、枝で小さなかすり傷を作ったのはご愛嬌である。
やがて少し木々の開けた場所に出れば、其処には当然のように銀の吸血鬼が立っていた。>>431]
…待ち合わせをした覚えはないんだけど。
[自分の居場所や行動は筒抜けらしい。
本来の育成計画を聞けば、一応まともに育成する気だったんだな、なんて変に感心したりもした。
>>432 問いかけの真意をはかるように、銀の双眸を覗き込んだ。]
種として正しい在り方だと思う。
……変化を受け入れ、適応するしなやかな強さは美しいとすら。
[つい、と視線を逸らした]
― 自室 ―
[一頻り主と話を終えれば、ソファを立ち、寝室へと引っ込んだ。
羽布団にふかりと顔を埋めれば、やはり気を張っていたのか、頭が重くぼんやりとする]
──……?
[ふと微かに届いた、誰かの声]
― 自室 ―
[部屋に入って上を脱ぎ始めたレトの体を、少し離れて眺める。
肩の傷は深そうだが、放っておいても大事には至らないだろう。
細かな傷がいくつも残っているのは、まだ吸血鬼としての力が弱いせいか。]
俺は泳いできたから構わない。
おまえが行け。
[風呂については断って、レトに行くよう促した。]
…
[されることもやらされることも嫌なのに、嫌いじゃない。
複雑な構文を理解するのに数秒かけて、
それからメイドの表情を思い出した]
そう、か
……いくさ ではよくある
[戦場で起こっていたのは殺し合いだけど。
少々ずれた納得をしながら、続く促しに頷いた]
[視線がカップに注がれているのに気付き]
あー…う、ん。なんだろう。
――できたら、ミネラルウォーターとかがあれば、そっちの方がいいな。
[聞こえた声は、直に頭に響くようで]
……、レー、ス……?
[その事自体もだが、酷く平和な響きを持つ単語にぽかんとして、思念が知らず零れる]
[背を撫でる手と、涙の痕に落とされた口接けと。
白く赤く灼かれる悦びは無いけれど、全身を包みこむあたたかさがある。
本当に『今はそれだけで充分』。*]
……うん。
待ってる
[隠すことなく浮かべられた嫌悪>>443については嬉しそうで微笑んだ。上に侍らないというのは自己を持つのに大事な事だ。
尊厳だとか知識だとか、行われた対象がどうだという、正当性があるかどうかの話を自分から論じるつもりもない為、そのまま話を続けるだろう。]
血の話が出たことだし、食事について説明するよ。
[血液混じりのティーカップの中身は残されたまま>>425。
彼の反応は如何様であったか。]
思い当たる子がいるのかな?
[どうやら本当に力を使いこなせるような素養のある兄弟と知り合ったようだ。
だが、アレクシス本人は不安げに瞳を揺らして問いかけてくる。]
……そうだね、いずれは君も。
力を使いこなし、狩りの仕方を覚えていかなくては駄目だ。
[無情だとは思うが、もう彼は夜の一族なのだと、
改めて思い起こさせるように答える。]
この世の全ては我の庭だ。
[なんのことはなく応えながら、こちらを覗き込む紫水晶>>444。
冷静にかたる言葉は拗ねているようにも聞こえる]
ああ、そうだ。多かれ少なかれあのような道を辿り、必要な技能を学び、親元を巣立つか親を主として仕えるかのどちらかだ。
だが、血飲み子は違う。
[淡々と語りながら視線を逸らす血飲み子に苦笑して]
わかった、レト
…名前、たくさんあるの?
[そういえば、名を知らぬ人ばかりだと、思う。
真名という、自身の名が大切なものであるという感覚があまりないが故に、少し不思議そうな声になる。]
呼んでくれる人がいるっていうのは、素敵だね。
[けれども、それだけたくさんのひとに呼ばれるのは彼の人柄なのだろう、と。]
じゃあ、それ貰っていいかな?
[紅茶を指さし。
行儀の悪い行為だが、混ぜ物の血に異常があるのではと、少し不安を覚えたため。
使用人には新しく混ぜ物のない茶を用意させた。今度は赤を感じさせぬ香草茶である、混ぜ物はしていない。]
[ロー・シェンの視線を意識して、どうしてもそちらに背を向けてしまう。]
泳いできた? 泉とかあるの、あの森。
オレもホントは湯浴みより水泳の方が好きだな…っと
[薮蛇にならないうちに、さっさと脱衣所に移動することにした。]
まずは館の中を歩いたり、その声の主に会いに行っても良いかも知れないね。
もし、兄弟にもとに行くなら、この子を連れて行くと良い。
[パチンと指を鳴らせば、部屋のどこかで休んでいたのか、1匹の蝙蝠がパタパタと羽ばたいて指に止まる。]
[ズボンを脱げば、長方形の布を巻くルマニ式の下着がパツンパツンに張りつめている。]
血が滋養てきめんなのはよくわかった…
[実を申せば、さっきからずっと、
正確には、ロー・シェンに血を吸われた時点で疼いてしまったのだが、どう説明しろというのか。
いや、できないから風呂場でなんとかしなければならない。
あまり長湯すると怪しまれるだろうし、慣れぬ湯でゆだってしまう。]
あ、 う…
[声が響くのもマズい。
ロー・シェンに気づかれずに済むのか、孤独な戦いが開始された!]
会ったら、きいてみる
[それから。
目の前に広げた地図、にはなれなかったただの白紙を見下ろして、
コンラートを向く。
今の自分に出来ない事がわかれば、解決策を考える事もできる]
本 すき?
易しいの あるかな
[読み書きを思い出す練習が必要だった。
この蝶はどんな本を読むのだろうと、相手への関心を覗かせながら*]
この子は使い魔でフルーツ蝙蝠のモリちゃんだ、可愛いだろ?
[モリちゃんこと、使い魔の毛を撫でてやる。
つぶらな黒い瞳の蝙蝠は気持ちよさそうに、瞬きをした。
アレクシスの反応をよそに、この子が初代から数えて、5代目になるとか。
実は生まれた6代目がコウモリ倶楽部の表紙にモデルとして採用されたとか。
どうでもいい親ばかによる、我が子自慢が始まる。]
この子の耳と目を通して、会話も出来るから、
何かあったらこの子に話しかけてご覧。
どんな相談でも乗るし、いつでも君を見守っているよ。
[そう微笑むとそっとアレクシスの肩に、蝙蝠を乗せた。]
― 場転・コンラートの部屋 ―
[死んだ日から幾つの昼夜が流れたのか、
時の感覚が曖昧な身にははっきりしない。
ただ、鼻先も見えぬ濃霧のように霞み朦朧としていた周囲の『世界』は、血親の死後少しずつ把握出来るようになってきていた]
[聞く所によると、今は定められた養い親が施す躾の期間、らしいが。
しきたりだのといった、それらしい教育にはほとんど入れていなかった。
もっとどうしようもなく基本的なことから、こつこつと積み上げる。
育成というより介護と呼ぶべきなのかとか]
― 自室―
[幼子の迷子に気を取られて忘れていたが。]
そう言えば、ディーク。
一晩中ずっと歩き詰めで疲れたり、喉が渇いたりしていないかい?
[ワインに含まれていた獣の血では、量も少なく、物足りないだろう。
幼童のうちは耐久力が無いから、日中は暗所でちゃんと休ませなければならない。]
…変じゃない?
[靴紐を綺麗に結び終えたブーツの踵を床に軽くついて、顔を上げる。
日常生活の動作は滞りなく。人との会話で言葉を理解するために要する間も短くなっていく。
記憶は相変わらず混沌として断片的。空間認識にも難があって…要するにとんだ方向音痴ではあった。
茫としてあまり変わらない表情は、喜怒哀楽に表出豊かだった生前のディークを知らない者にとっては然したる問題でもないだろう]
今日はどこへ?
[宛てがわれた部屋を拠点に、ルートを叩き込む訓練。
自由に歩くと集中力がすぐ途切れるので、
貴方が好きな場所へ連れて行け。そう白い蝶へ言って始めたものだった]
え。あ、ああ。
[指差され、戸惑いながらカップをステファンの前に置いた。行儀にはあまりうるさくない方だ。少しだけカップに口をつけたものの紅茶自体には触れていないことだし
新しく運ばれてきた香草茶には口をつける前に数秒香りを楽しみ――こくりと飲み込んだ]
[女性のものとおぼしき響きが返ってくる。
あの複雑で繊細な、そして裕福な家をイメージさせるボビンレースの印象を感じた相手のものだ。]
…、 っは、 ふ、 ダメ…
[何かちゃんとした言葉を返したかったが、現状、ひどく取り込んでいて無理だった。
意識が集中できない。]
/* いや、蝙蝠を検索してたらこのフルーツ蝙蝠を見つけて一目惚れしてしまいましてね…。
どうしても使い魔に出したくて…。
親は嫌われようが呆れられようが子を育てるものだからな。それぐらい考えはする。
[コウモリ倶楽部の受け売りである。
しかしやりかたがあかんかったという自覚はなかった。]
ああ、そうだな。変わり種だ。だがそんな些事など気にするな。
[異端といっていた言葉も些事の一言で済ませた後。目を丸くしながらも考え込んだ後に言われた言葉に目を細める]
趣味がないなどつまらん。なければ作れ。
書物ならば城館にもある、後ほど書庫にでもゆくか。
[聞きだしたことから散歩の後のことを口にした]
[レトが風呂へ行ったあと、使用人を呼んでレトの着替えを持って来させたり寝床を設えさせたりという雑事を片付ける。
裂かれたクッションは、そのまま廃棄となった。]
湖なら城館の地下だ。
[扉越しに声を投げる。
が、なにやら妙に静かだなと耳を傾けた。]
どうした。
使い方はわかるか?
[着替えを手に、もう一度声を掛けてみる。]
そう…
[やり方は手荒いがやる気はある様子に、ひそりとため息をつく。
運が無い、とは先程言ったが、通常の常識的なマスターではなく、あらゆる意味で規格外らしいこの養親だったのはもしかしたら不幸中の幸いなのかもしれない、と些事だと言った言葉には少し思った。]
作れって言われても…
趣味ってどうやって作るの。
[首を傾げて困惑した顔をしたが、書庫と聞けば少し嬉しそうに頷いた。]
……あんたは。
いつから吸血鬼やってるの。
[そうして月夜を散歩しながら、おもむろに尋ねてみた]
[頭の中に反響するのは、壁越しに洩れる声のように不明瞭なもの。
けれど、それが何処か艶めかしい響きを孕んでいるのは、本能的に察せられて]
――ぇ、やっ……な、にこれ…ッ!
[思念は同時に声になり、がばりと寝台から跳ね起きる]
[ロー・シェンの声を耳にした瞬間、目的を達して浴室の壁に背を預ける。]
う…、 もう出るよ。
[ロー・シェンの声のおかげかもしれない。
いやそれバレたらもっとヤバい。
証拠隠滅とばかりに、手桶に湯を掬い上げた。]
[送られる厳しい視線には強く反応を示さなかったが、聞く気がないというアピールにも見える行動をされれば>>455、本を取ろうとした手を叩く]
――一つ聞くよ。
[嫌悪されることには慣れているのか、男の瞳には怒りはなく。]
見逃して、君が飢えに耐え切れなくなっていくのを観察するのと、責任をとって君を処刑しとくの、君はどっちがいい?
約束が果たせないのは残念だけどね。
[他の選択肢はないといいたげな言葉で。
椅子に座れば、自分の前に置かれたティーカップに口をつけ、返答を待った。]
[肝心なことを忘れていた。]
……そう言えば、ディーク。
一晩中ずっと歩き詰めで疲れたり、喉が渇いたりしていないかい?
[ワインに含まれていた獣の血では、量も少なく、物足りないだろう。
幼童のうちは耐久力が無いから、日中は暗所でちゃんと休眠させなければならない。
ひとまずは、己の血を与えて休ませようと、手を差し伸べ寝台に誘う。
己を練習台に吸血の加減を学ばせるにせよ、今日はまだ無理だろう。
取り敢えず、色々な経験をし過ぎた幼子を労わって、添い寝するだけに留めよう、と心に決めた。*]
[驚嘆の声が突き抜けてくる。]
あ、 ア、 すまな…い
もう済… から、
[なんというタイミングで繋がるんだぁ、と思うも後の祭り。
消耗した意識はくたりと引いてゆく。]
そうだ
[育成についても、異端を些事であるといったことも、相手の心中はしらず、ただ当然というように言い切る]
何か興味をもったことややりたいことはないか?例えば星の数はいくつあるのか。鳥獣たちはどのような営みをしているのか。なんでも構わない。読書ならば読書で構わぬが、長く生きていれば一つでは足りないだろう。
吸血鬼になったからこそできることもある。それをするのもいい。どうせ護身の術を覚える必要はあるからな。
[書庫と聞けば嬉しそうにする様子を少し珍しく思う。]
我か?……我は生まれた時から我のままだ。
[月明かりを歩きながら、いつから。という問い>>462には初めからであると答えた]
[――寝室に引っ込んで程なく。
勢いよく扉を開け放ち、元居た部屋へと飛び込んだ]
ちょっとっ、吸血鬼、は…テレパシーが使えるの!?
[首筋まで桜色に染まり、耳を両の掌でぴったり押し塞いだまま主に向かって叫ぶ]
ねぇこれ、どうやったら止まるのよ…!!
[あの時血親の声が頭に響いたのは、血の因果故と解釈していた。
伝播する見知らぬ声を、いやいやをする子供のように頭を振り、
何とか追い払おうとする]
……。
[扉越しに返る声に思うところあって、おもむろに脱衣所の扉を開ける。
用意した着替えを置いて、そのまま躊躇なく風呂場へ踏み込んだ。]
なにかあったのか。
[自分が気づいていないような怪我でもしていたのかと思ったのだが]
……なんだ。
[生憎と、鼻は利いた。]
よかったのか。
[煽るでもからかうでもなく単に事実として口にする。
吸血行為に性的興奮を覚えるのはよくあること
───する側、される側ともに、というのは知っていたから、特になにを言うでもない。]
来い。
見せてみろ。
[なにをとは相変わらず言わずに、レトへと手を伸ばす。]
ふーん。
[随分多趣味らしい相手の口ぶりに、此方もこちらで意外そうな顔をしていたかもしれない。
しかし、続く返事には、1、2度と瞬いてゆっくりと相手の顔を見た。]
生まれた時から、って…
どういうこと?
誰かに血を吸われて吸血鬼になったんじゃないの?
………何歳?
[吸血鬼の両親から生まれた吸血鬼の子供ということだろうか、というかそういうことは可能なのだろうか。
まさか真祖だとは思わず怪訝そうに問いかけた。]
― 自室 ―
[就寝した、と思いきや。
勢い良く飛び出た娘の様子に、一時停止>>469
……因みに寝ている間に食事をしておくつもりだったが。]
……そうだよ。
話しかけないで欲しい時は壁を……ああ、
今すぐには難しいかな。
相手にお願いしてみたらどうだろう。
[「どうしようもなくなったら>>470」と言われれば、呆れの色を隠さない。どうしようもなくなった時にどれほど理性を保てるかなんて――…
そう思えば溜息しか出てこずに]
どうしようもなくなってから、取り方を勉強して間に合うんだ?
それとも、毎回探しだして口移しで餌付けしろとでも言うのかい?
混ぜ物探すのも一苦労なんだけど。
[ダーフィトが記憶がなかった際の事を口にした。]
おでかけするなら、少し長くなってしまうよ?
だから、帰って来たら…ね。
[そうして頬に触れようと指を伸ばすが、彼は避けたかどうか。]
[ロー・シェンに乗り込まれて、慌てて手桶の湯を被る。
「なにかあったのか」の問いに、う、と口ごもった。]
えー、あー
さっきの、遠くから”声”を送る技、試してみたんだよ。
そしたら、風呂ン中にいる時に女の子から反応があって、うわーってなった。
[嘘ではない。すべてではないが。]
[だが、続くロー・シェンの率直な指摘に、お見通しだと悟る。]
あ、うー
師匠も男だからわかっ… え、 なに っ!
[出された手を掴んでから、「見せてみろ」に気づいて動揺したが後の祭。]
[――済むって何が。
反射的に、瞬間的に湧いて打ち消した疑問は、思念にも声にもならず]
……〜〜〜ッ、!
[空気がざわめくような、混乱の気配だけが伝わったかも知れない]
[バランのチャイルドが、評議会の選定したマスターのもとへ送られてから一週間後。
評議会から、試験を行う旨、通達がなされる。]
「預かったチャイルドの馴致は進んでいるか。
吸血鬼社会でそつなく振る舞えるかの試験として、それぞれ以下のマスターのところへお使いに出すこと。
使いを受けたマスターは、それに見合うもてなしをしてやるといい」
クレステッド のところへは アイリ を
エレオノーレ のところへは ダーフィト を
ステファン のところへは レト を
ロー・シェン のところへは ディーク を
コンラート のところへは アレクシス を
トール のところへは ファミル を
注) 本名ではない設定の人もいるけど、デフォルト名にて掲載しています。
―その後の日々―
ああ、大丈夫だよ。
[ブーツの紐の結び目がちゃんと結ばれているのを確認して、微笑みかける。
ついでに、もう一度服装をチェックする振りをして、そっと襟を整えた。
ディークとの日々はこんな感じだった。
記憶障害のあるディークを狩に連れ出すのは危険であったし、また何かの拍子に恐慌状態に陥って激しい攻撃衝動を誘発するかも知れないことを考えると、行動範囲を館内の、それも自室近辺に留めた方が賢明だった。
街に行ってみたいと望むディークに、それは酷であったかもしれないが……。
そんなこんなで、学習とやらは殆ど進んでいない。
もとより、吸血鬼として生きていくサバイバル以上の何かを教えるつもりもない。
評議会の動向など、精々討伐対象にならなければいい程度の認識である。
他の親たちが雛たちをどう育てているのかは、知らないし関心もなかった。]
村の更新日が延長されました。
[こちらの顔をまじまじとみる血飲み子>>472の再度の質問に眉を潜める]
生まれた時からだ。血を吸われなければなれぬ吸血鬼と一緒にするな。
年など数えておらぬが……千や二千は超えているだろう。
[続く問いかけに応えながら、足を一度止めると、空に登る月を懐古の念を抱きながら見上げた]
/*
大慌てでログ落としたから、
名付け親はあんたかーいみたいな反応をまるっと
抜かしてしまいました…意味の解らない発言になっとう。
あの娘か。
そうだな。血兄弟なら声も届きやすいだろう。
[女の子から反応があって、という言葉に、城館にいる同族の顔を思い浮かべて納得する。]
実践は良い。
数をこなせば身に着くのも早い。
[うわー、の部分は特に気にしないのだった。]
[掴んだ手を引き寄せて、背中に手を回す。
なにに動揺しているのかは知らないが、見たいのは傷の方だ。]
深いな。
あとで手当てをしておくか。
[肩の傷を改めて確かめたあと、そこに口をつけ、舌を這わせる。
獣が傷口を舐めるようなしぐさだが、これは別に治療ではない。]
[しばらく舌で味わってから、レトを解放した。]
上がるなら早く体を拭け。
冷えるぞ。
[ぱし、と腰のあたりを叩いてやる。]
[とりあえず自覚はしているようだ>>480。
ならばきっちり言ってしまったほうがいいかと]
きちんと理性を保てる状態じゃないと、加減して血を飲む事ができないよね?
僕らの一族は群れて暮らさざるを得ないから、領内から吸血鬼の被害者が出ると面倒なんだよ。
[回復術が必要になると言ったのは、早い話が証拠隠滅の為である。
口移し?と問われれば]
そうだけど?
意識のない相手に、直で流しこめるわけないじゃないか。、
[と、あっさり答えるだろう。]
……一応確認するけれど。
生まれた時から、その姿?
[薄らと思い出すのは、人間であった時に読み漁った書物の中の吸血鬼の記述。
真祖、というものが存在するという。
誰が書いたか実しやかに、闇から生まれ出で事象の体現であり世界そのものの一部でもあるとかなんとか…
もし本人の言が本当であるならば、千や二千では到底きかない。万単位は軽い。]
真坂とは思うけど……真祖とか言われたことある?
[正直に驚いて、半分まさかという気分で尋ねた]
先に教えておくべき事だとは思わなくて。
[あっさり。>>482
もっと言えば、こんなに早くから彼女に『声』が掛かると
思っていなかった、と言う事もある]
そう?
[ただ話しかけられたにしては妙な顔をしている娘に
軽く首を傾げるに留め]
恐らくは、君からも出来る事だよ。
得手不得手があるから、絶対とは言えないけれど。
ああ、いや、もう少しは小さかったか?…もいれないが…
[そんな遥か昔の自身の大きさなど曖昧なために歯切れの悪い返事を返す。
書物に書かれている逸話についても聞けばその通りではない。と答えはしたが、その先に告げられた言葉には首肯してみせる]
よくしっているな。誰かに聞いたか?
[見上げていた月から血飲み子>>484へと視線を移し何一つ紹介などしていない中辿り着いたことに感心したように応えた]
…っは、
[血を吸われた時のように距離を詰められて、同じ唇が肩を這う感触に声がうわずる。
手当て? こんな──
直接、現場は見られなかったけど、事実を掴まれていることに変わりはないワケで…
それでも陶然としかけ、自由な片手をロー・シェンの腰に回して膝が砕けるのをこらえる。]
う…
[混乱のうちに一方的に儀式は終わり、ぱし、と肌が鳴った。
痛くはない。ただ、余韻が残る。]
― コンラートの部屋 ―
問題が?
[大人しく扉の脇に控えていたが、通達を運んだ従僕が部屋を去るとコンラートへ声をかけた。
退屈な表情や物憂げな表情は見た事があっても、この長生者の険しい顔はあまり見ない]
っ、 はい。
[脱衣所に着替えが用意されているのを見落とし、大判のタオルを腰巻きにして浴室から出る。
既にベッドメイクが済んでいるのを見れば、]
あ、自分がやるつもりだったのにー
[ベッドに膝で乗り上がって、ちょっとだけ枕の位置を変えてみたりした。]
/*
>>477
ちょっと、真祖様にお使いですって?
一番難易度高そうなところじゃないの…!!!
ランダ神のお告げで決まったのかしら?
[芝を群生させたくてたまらない。すごく。とっても]
げぼくがはーどもーど解除前に遭遇できてたら、
→よその子手討ちにしても罪悪感とか無縁そうな真祖さまを見込み
→力の限り喧嘩をお売りして
→間接的な自殺未遂計画
というのも、実は考えていたとか。
真祖さまの様子を拝見してると、PLさん的に上手にあしらってくれそうな気が。
でも解除されちゃったので、スタート時は猫をいっぱい被って挑もうと思います。
現在萌えランキング首位の真祖さまには、折を見てエンカしにいくつもりだったのでわくどき。
― 一週間後・教室 ―
……
[出された命令を前に、頭を抱える男が一人。
あれからダーフィトが何をできるようになったかというと……初級の幻惑魔法が一つのみ]
一瞬で返り討ちにされるのが目に見えてるけど、奇襲でもさせようかな。
…………ダメだ、何かに負けたような気がしてくる!
[ダーフィトに適当なおつかいが思いつかないらしく、しばらく考えこんでいる。
せっかく覚えたものなのだし、それを利用したものにしたいのだけど……]
[うろ覚えっぷりが真実味を増すからタチが悪い。
だが、”真祖と呼ばれている”というところには明確な肯定が返る。
本人のうろ覚え以上に、他称であるということがある種の裏付けを感じさせた。]
………これが真祖……
[まじまじとみて、なんだか少し残念な気分になったのは否めない。
まじまじと月光に映える銀の髪と、銀の瞳を見ていたが、やがて一つ息を吐いて。]
まあ…なんでもいいんだけどさ。
あのさ。
名前。いい加減教えてほしいんだけど。
[不便だから。と付け足した。]
―自室―
ディーク、落ち着いて聞いて欲しい。
[自身があまり落ち着いていないと言うのは、置いといて。
来客中は大人しく控えていたディークを手招きして、自身が座っていた寝椅子の前に呼び寄せる。]
君を他のマスターのところに送りださなければならなくなった。
[手を差し伸べ、見上げる。
あかがねの柳眉を逆立てて、苛立ちを隠そうともしていない。]
………。
[無言のまま、一応話は聞いているというように香草茶に口をつけ]
わかって、る。
[そう、返事はする。実際に目の前に“獲物”が出されてそれに口をつけれるかと聞かれたら保証はできないが。そして意識がなかった時のことを聞かされれば]
……。
[予想外な言葉に微か動揺して。けれど言われてみればそうかと納得すれば、やはり憮然としたまま視線を逸らす――先程の不機嫌さとは、少し違うかもしれないが]
[レトから一歩遅れて風呂場を出て、なにか残念がっている様子を面白く眺める。]
いいからさっさと手当して服を着ろ。
先に中庭で待ってるぞ。
[治療用具のある場所を示し、置いて行かれた服を投げてやる。
自分で手当てできない、とでも言われない限りはさっさと先に部屋を出る気だった。]
―――ええ、知りたいですよ。
義理とは言え、貴方は僕の“親”なのでしょう?
そういう意味からですよ、知りたいというのは。
[未だに複雑な感情が胸の内で絡まっていて、思った事とは
方向のずれた言葉が零れ落ちていく。
本当は、彼が自分と同じ「元人間」なのかを知りたいし
役目を果たす以外の何かがあるのか、彼が自分をこのように
大切に扱う理由も、知りたい。]
でも、急ぎません。
僕もまだ気持ちの整理がついていませんから。
では、モ…モ、モリ、モリちゃんの食事を貰いに行って来ます。
何か他に御用件がありましたら遠慮なくお伝え下さい。
―――トール様?
[半ば嫌味のような、それでいて一番紡ぎ易い呼び方で以って
主の名を呼び、肩のお供と連れ立って部屋を出て行った。
その後、城館内で何度も何度も蝙蝠に話し掛けては
見当違いの方角へと歩いて行く青年の姿が、複数の使用人達に
目撃されていた。*]
君の相手はロー・シェンだ。
優秀
試験官としては厄介な相手と思っていい。
そう、これはテストなんだよ。
君がこの先、吸血鬼としてちゃんと生きていけるかどうかの。
[ギリ、と真珠の牙が鳴る。
付き合いの短いディークは無論、こういう顔は数百年を共にした愛し児でも見ることは少ない。]
なんでもよかろう。他がなんといおうが我は我であり、他は我意外の何かだ。
[息を吐く血飲み子に変わらず傲慢な口振りをする残念な気分>>491を与える真祖]
よいこにしていたら。といっていたはずだが…まあよかろう。
クレステッド・アル・アハド。貴様が頼り奉る者の名だ。
[治療道具の入った箱を開けてみて、馴染んだルマニの軟膏がないのには、むー、と唸ったけれど、ともあれ運動に支障のないように包帯でテーピングを施す。
端は歯で咥えて縛った。]
お待たせ、 行ける。
[着替えを済ませて立ち上がり、ロー・シェンの背を追う。]
一番の難関は、だ。
[赤錆いろの両目をきっと見据える。]
君がちゃんとロー・シェンの居場所に辿り着けるかどうか、だ。
……僕の先導なしに、全然知らない場所にいる彼を探せるかい?
[物凄く不安そうだ。]
しかしこの入れ替えタイプのイベントだと、参加しない、という選択肢がないよね。
そういうものだったっけ。
いや私はいいんだけど。ろーしぇんのコアどうだっけ?
/*
中の人レベルで呼び方に悩んでいたという。
ちなみにゆすらさんと連絡し合う時は、普通に
マスター!とか言ってます。
アレクもこれくらい素直になれればいいのに…
なんでこんなやり辛い子になっちゃったんだか。
…
[難しい。
どう考えても難しい。養い親も本人も、もの凄く不安]
人に道を聞きながらは──?
[自力で探せというルールでないのなら、なんとかならなくもないかもしれない気もしないでもない]
― 回想・一週間前 ―
……
[先ほどとは違う気まずさを纏っている事>>493に気づけば、やはり意識がなかったのか、と呟いて。]
選択肢を増やしたいなら、まずは識る事だよ。君に馴染みのある……あの馬車にかけてた術、あれから始めようか。
[と、中断した授業を再開したのだった。]
― 回想・了 ―
知っておるし聞こえてもいる。
[それでもあえて呼ぶことはせぬまま、もうしばらく月夜の散歩を続け、夜の明ける前に、私室へと戻った*]
― 狩りの日/中庭 ―
[初めての狩りから帰ったあと、レトを中庭へと伴った。
適度にひらけていて、柔らかな芝生に覆われたそこは、軽い運動をするのにちょうどいい。
この日は、夜明け近くまで組み手を続けた。
吸血鬼としての身体能力に慣れさせるため、
そして戦いに必要な基礎動作を教え込むための訓練。]
[翌日以降も戦闘訓練は続けられる。
合間に、吸血鬼とはなにか、評議会とはなにかというごく基礎的な知識も伝えた。
相変わらずの言葉足らずではあったが。]*
― 狩りの日/中庭 ―
[初めての狩りから帰り、レトに湯を使わせたあと、彼を伴って中庭へ向かった。
適度にひらけていて、柔らかな芝生に覆われたそこは、軽い運動をするのにちょうどいい。
この日は、夜明け近くまで組み手を続けた。
吸血鬼としての身体能力に慣れさせるため、
そして戦いに必要な基礎動作を教え込むための訓練。]
[翌日以降も戦闘訓練は続けられる。
合間に、吸血鬼とはなにか、評議会とはなにかというごく基礎的な知識も伝えた。
相変わらずの言葉足らずではあったが。]*
― それからの一週間 ―
ふつうの吸血鬼で、一日に必要な量は、大体これくらい。
同じ人間から毎日これだけを摂った場合、
猶予はあるけれど、確実に死に至るものだ。
[1つめのグラスに注がれる淡い金色は、林檎の果汁。
その隣のグラスには、半量ほどを注ぐ]
長期の絶食をした事がないから推測だけど、
恐らくはこの位でも、生きていけない事はないかな?
同時に人間も、相応の期間を存える。
複数人から輪番で摂れば死を免れるだろう。
……君には、ここから更に減らした量のヒトの血と、
代替として、家畜の血を摂ってもらうよ。
[見目や味に慣れぬようであれば、薄めて。]
これだけは了見して。
[礼儀については簡単な心構えと処世術程度に教えるが、概ね、猫を被れ。と告げ、残りの時間は書物を与え、興味のある分野を聞かれれば答えるなどし護身の術は時間があれば教えただろう。―――そして一週間が過ぎる]
― 一週間後 私室 ―
フン、我につかいをさせよなどと、どこまでも恥知らずなやつらだ。
[議会の方針>>477をまるで知らぬとはいわぬが、それでも納得するかどうかは別問題だが、そういいながらも己の赤子が向かう先の相手を考えて、ペンをとる]
― そして試験の日/自室前 ―
使い―――?
ステファン殿のところにか?
[評議会からの知らせを聞いて、暫し悩む姿があった。]
使いといっても、何をさせればいいんだ……?
[わりと真剣に悩んでいた。]
[吸血鬼として生きるための方法は敢えて教えなかった。
代わりに吸血鬼というものの生きる環境、世界、
あるいはもう少し噛み砕き、己の事について。
真っ先に教えたのはテレパシーの発し方と返し方だったのは
お察しの通りとして]
[因みにこの血親は娘に寝姿を見せない。
彼女が眠るまでは起きており、
寝つきが悪いようなら落ち着くまで傍にいて、
目を覚まし、身形を整えて起き出す頃には
既に自室で立ち動いている、というのが常態だった]
− その後 −
[次の通達までは、ときに悶着を起こしたりしつつも、ロー・シェンの下で励んでいた。
遠距離通信技は便利だけど、保留がきかない分、予想外の事態を招くことがあると実感したから、何をしているかわからない相手への送信はやめておこうと自制中。
代わりに実践主義のロー・シェンとの間で念話を飛ばし、技の習得に努めた。
いつでもどこでも集中を切らさない鍛錬にもなる。
そうして、たまに講義を挟みつつも、専ら夜はロー・シェンと身体を動かし、日中は爆睡していた。
退屈する暇はなかった。*]
みちみち、誰かに尋ねるのはありなんじゃないのかな。
他の子だって、聞かなければ分からないと思うし。
君の場合、それも試練として考慮して貰えたら良かったんだけど……
[優しそうなトールや、保護の時の状況を知る友人のエレオノーレなら、事情を説明すれば手心を加えてくれそうだったが。
強面のロー・シェンでは、自身が有能なだけにそうはいかないだろう。
まともに色々知識や技能を問われそうだ。
頭が痛い、とディークの手を取り、嘆息した。]
ただ、ふつうにたずねて
試験を受ける?
[そも辿り着けるかどうか。という根本的な問題は置いておくとしても、どういう内容なのか。
嘆息するコンラートの手を大丈夫とでも言うようにゆらゆら揺らし、
事前に知っておけることがあるかどうか聞いてみる]
取り敢えず、だね。
「無事辿り着いた」という証明を貰うのを目標にしよう。
[そんな「お使い」では、却って呆れられて失格にされるかも知れないが。]
大丈夫。
何があっても、君は僕が守るよ。
それに、今はだいぶ迷わなくなったし。
[ディークの指先を握り締め、力づけるように微笑んだ。]
― 試験の日 自室 ―
……さて。
[ソファの背もたれに腰を下ろして、思案する。
娘を遣いに出せと指定された先は、かの真祖の君と。
……どうにも言葉にしがたい感情を味わっていた。]
― 数分後・教室 ―
よし、思いついた!!……けど、まずはダーフィトがどこまでできるか、かな?
[目の前で特製の混ぜ物をした茶に口をつける生徒を前に言いたい放題しつつ、楽しそうに笑みを浮かべた。]
[
『祝いの遅参は御免あれ。当主就任。真に目出度い。以後、マスターとしての誇りと当家の繁栄と安寧を願う。
クレステッド・アル・アハド』
簡素ながらも後継者となったトールへの書簡をかき上げ。書に一滴の血を落とし徴とすると。同時に今一度思案をして想像し創造するのは、水を必要とせず、枯れることもなく在り続ける、天上の花といわれる蓮。
花びらの一枚一枚が色を変え虹の輝きを宿す芸術品が、手の中に産まれる]
[――それから。
仮初の養い親から、日々の糧について、そしてその元となる存在への影響も併せて説明を受けた]
……思ったよりも、少なくて済むのね。
[淡く透き通る液体は、自分も飲み慣れたものだと匂いで解る。
説明を幾度も胸中で繰り返してから、ひとつ頷く]
ええ、それなら。…解ったわ。
[一時凌ぎの手段かも知れないとは思うが。
色々と結論を出しかねている今、暫し時を挟んでみようかと]
……酷く、手間を掛けるでしょうに。
考慮してくれて、有難う。
[そして使用人に書き上げた書簡を便箋に虹に輝く花を包ませる]
初めての使いだ。これを届けよ。
トールというものはバランの討伐時にもお前があっている温厚なやつだ。
[ちょうどよい機会であると、おつかいは、遅ればせの祝いの任とする]
居場所は何か必要なことがあれば使用人に言え。
[要件と同時に諸々を委ねる旨も告げ]
……知っておくべきことは本当はたくさんある。
吸血鬼の生態、しきたり。
ロー・シェン向けなら、吸血鬼社会を統括する評議会のこと。
でも君に教授するのはまだ早いと思ってた。
[そこで、ディークの様子を見極めようとしながら、ゆっくりと言葉を繋ぐ。]
実はバランが討伐されたのも、人間社会に干渉しすぎたために、放置しては吸血鬼社会を脅かすと評議会の議決で決定されたからなんだ。
― 試験の日 ―
[>>517 手の中に生み出される虹色の蓮の花を、じぃと見ていた。
評議会からの試験で使いをするとあらかじめ聞かされていたから、>>519 命じられたことに素直に頷く。
書簡と華をバスケットに丁寧に収納した。]
トールって言うんだ、あのひと。
[>>520 初めて名前を呼ばれ、少しだけ目を見開いた後、少しだけ憮然として視線を逸らす。]
当たり前でしょう……こんなことが何の試験になるのかわからない程だ。
[少しだけ早口でそう言って。
バスケットを手にすると、部屋を後にし、使用人に確認しておいたトールの私室へと向かった*]
バラン?が、
[名を聞くと、明るい錆色の虹彩が一瞬赤みを増した。
耳を傾ける仕草は少なくとも、落ち着いているように見えるだろう]
…では、あいつは
特におかしい 奴
[しばらくの間をおいて、冗談のような軽口をこぼした]
しきたりとか、わからなければ
勘でこたえてみる
[最初の恐慌を知っているからこそ、ディークの精神が安定するまでバランが絡む事柄は説明したくなかった。
のみならず、難解すぎる文章を理解できないディークでは、血族社会の複雑さを理解するのは難しいと判断してのことだったのだが……。]
[礼の声には、首を横に振ってみせる]
代わりに、浅い飢えを常に覚える事になる。
味も上等とは言い難い。
[ヒトの上流階級で過ごしたであろう娘にとって
恐らくは経験した事のない、飢えと、舌に合わぬ味の強制。
当たり前のようにそこに在った幸福の享受を剥奪されて、
どのような感情を覚えるか。]
この生き方は、口で言う程、易くはないからね。*
[主に聞かされたのは、吸血鬼という存在の営みよりも、その環境や世界についての話。
何らかの配慮があるように感じ、どれも真面目に耳を傾けたが。
社会生活自体は、存外人間のそれと大差ないように思えたから、
主当人の話の方が興味を以て聞けたという実情は、
極力顔には出さないよう努力した。
テレパシーの制御については、とりわけ真剣に聞き入ったけれど]
[主の生活は、ある意味規則的なもので。
こちらが眠りに就くまでは起きているのに、
目覚めた時にも起きている。
眠るのが難しい時は傍にいてくれるらしいと気づいてからは、目を閉じるのは幾らか楽になった]
[悩んだ挙句、ひとつの包みを用意することにした。
透明な石英の小瓶を出してきて、箱に収める。
中身もまた無色透明の液体だった。
かつて、狂える毒蜥蜴を討伐した際に得た貴重な毒───だが、使い道がなかったのでしまい込んでおいたものだ。
そうして準備しておいて、レトを呼ぶ。]
ねえ、ダーフィト
[紅茶の他には、タチアナがよく作っていたレシピのままのレモンパイ。
飢えや乾きは満たされないが、やや酸味のあるパイと生クリームの取り合わせは味覚を満足させるには十分で……]
アイリスって知ってるよね?
その子のマスターへのおつかいなんだけど……
[そこまで言えば、ダーフィトがおつかいに行く相手が誰か伝わるだろうか]
これをステファン=リッシュ殿に届けてこい。
わかるか? おまえを狩りに出した時、森の入り口で会っているマスターだ。
後のことは、その手紙に書いてある。
目の前で読んでもらえ。
[包みに添えた書状を示す。
『これを持たせた子に術の基礎なり理念なりを軽く教えてやってほしい。
不躾な頼みの代償となるかはわからないが、かくかくしかしかのものを持たせたので受け取ってもらいたい。』
おおよそそのような文言が記されていた。]
―7日後―
[コウモリ倶楽部を参考にしながらも、繊細なアレクシスの教育は慎重に進めていた。
きっと、どのマスターよりも進みが遅いであろう事は薄々気がついていたが。
何よりも人間から変化したアレクシスの気持ちを尊重し、そこに重きを置いていたためだから、仕方がない。
ここへ来てから7日が経過した今も、彼には人の血はおろか、マスターである自分の血でさえも与えてはいなかった。
彼が初めて味わったのと同じ、特製の血酒をいまだに与えているほどに。
ただし羊の血は、日々少しづつその濃度を増していったが――。]
試験か…よし。
――アレクシス、こちらへおいで。
[>>477 途中経過を見るため、評議会から下された通達を確認すると、ソファで本を読んでいたアレクシスを手招く。]
[虹彩に赤が滲むを見れば、握る手に少し力が増すが、
しばらく経っても態度に変わりがないのを確認すると、安堵の息を洩らした。]
うん。臨機応変、でね。
分からなかったら分からないでもいいから。
[召使に頼んで用意して貰った古風な羊皮紙に、簡潔な文章をしたためる。
『当方の養子、ディークを紹介いたします。
つきましては、無事貴殿を発見し辿り着いたと言う証明をいただきたく。
サインなりと戴ければ幸いです。』
他に書けそうな内容を思いつかなかったのだから致し方ない。
羊皮紙を巻いて封蝋で封をし、印璽を押した後、ディークに手渡した。]
これを彼に見せて、受け取りを貰ってきて。
気をつけて行って来るんだよ。
[そうして、幼子を力づけ、自身の不安も宥めるために、固く抱擁した。]
― 試験の前日の夜 ―
[クレステッドの手から血を受けることも、少しづつ慣れてきた頃。
指が口腔から引き抜かれる時は、矢張り酷く名残惜しい思いをしていたが、飢えてはいなかった。]
……飢えはしないんだけど、
[飢えとは別の、慢性的な満たされない欲―――空腹感にも似たそれに戸惑い始めていた。]
これ、何…?
[食後の陶酔に仄かに頬を染め、倦怠感に身を委ねてベッドに横たわりながら、尋ねた。]
[助言は与えなかった。心得が一切ない、未知のものであれば下地がでるまで教えたが、己で考えて行動する。ということをさせていたためだ]
後はあやつがどう思うかだな。
[いつまでも見送るわけにはいかない。出迎えの役も残っている]
アイリ…とやらが何を飲めるか知らぬ。各種の血を取り揃えておけ。後は茶菓子と果実ぐらいで今のところはよかろう。
[どういう使者となるかは知らぬが、現段階で整えておくべきことだけ使用人に指示を出した]
― 廊下 ―
[部屋の外へ出て、息を吐く。
グラグラするような頭痛を抑えて眉間を揉んだ]
…
[血の親の名を聞くだけであの声が甦って吐きそうだ、とは。言わずに]
[幸先は──不良。手近に道を尋ねられそうな人影はなく。
右手の壁に指先をつけて、借り物の時計で時刻を確認した。
まずは既に何度も自力で辿り着いており、人の多そうなホールを目指して歩き始める]
―7日間の道程―
[この城館に来てからはや7日が過ぎた。
狩りの修練に励まなければならないと、頭では理解していても
未だに抵抗は強く、主から与えられる血酒を摂取する日々。
ただ、少しずつ血の臭いが濃くなっている事に気付き、
喜びの色を態度に表すようになって来た。
小さいながらも変化は見えているようだ。]
モリちゃん、この表紙にいるのが貴方の子ですか?
[主が持っていた本の表紙を指し、真面目な顔で蝙蝠と出掛け
語り合う日常も定着した。
意思の疎通は図れない、しかし蝙蝠はその仕草で凡その気分を
示してくれるので、なんとなくではあっても伝えたい事は
解る様になってきた。
そのおかげで、城館内の施設は大体把握出来た。]
− 試験 −
[ロー・シェンがデクスワークに時間を取られている間、森で採ってきた草を轢いていたが、呼ばれてロー・シェンの傍らに手を突く。]
届け物? 了解。
[説明には別段の異論も挟まず、包みと書状を受け取る。
軽微な作業は自分の勤めと自負していた。
最近では、ロー・シェンの室内では使用人の用がないほどだ。**]
[紅茶と共に出されるパイは懐かしい味のもの。幼い頃より祖母がよく作ってくれた味によく似ていた。
飲むようになったとはいえ混ぜ物入りの茶を出される時は嫌そうな顔をする自分のために、用意されるようになったもの。とはいえこの特性の紅茶も、今となっては舌にあまいのだが]
アイリス?は、知ってるよ。
彼女のマスターは知らないけど…
アイリス。
[洗練された所作でカップを置く娘に、首で振り返る。
身支度も整い、落ち着いているのを見計らって、>>533
試験の概要について説明した]
――……という訳だから、
『クレステッド・アル・アハド殿』の許を訪ねて、
ダンスの手ほどきを頂いておいで。
僕からの書状も託すけれど、ごく簡素なものにするから。
君自身の眼で、見るべきものを見、
行うべき事を行って来なさい。
― トールの私室の前 ―
[早すぎず遅すぎず、かといって食事の時間でもないであろう頃に、トールの私室へとたどり着き、扉をノックした。]
…我が主クレステッド・アル・アハドより、トール殿の当主御就任をお祝い申し上げるよう使わされました。
[トールと見えることができたなら、頭からすっぽり猫を被って恭しく用件を口にしただろう。]
/*
ますたー……!!
さすがよ我があるじ、ないすりくえすと!
真祖さまにリードして戴くなんて楽しそう!
……して下さらなかったらどうしよう。
[きっとしょんぼりする]
― ホール ―
[ほぼ迷う事なく辿り着き、
壁の装飾から埃を落としていた小間使いを捕まえた]
あの、
ロー・シェン というマスター・ヴァンパイアは
どこにおられるか、わかる?
[ところまでは良かった。
部屋の場所を聞かれなかった小間使いは、中庭でよくお見かけます、といった旨の返答をする]
中庭…
[道筋を尋ね、記号と線混じりのメモをとる顔は真剣**]
― 試験の前日の夜 ―
[護身術を多くしたときに補給することがなければ一日一度。血を摂取させれば事足りる。
自分の血とはそういうものだ。だがそれは濃度ではなく量でいえば本来の何百分の一程度。指を丹念に這う舌先を時に撫でるようにするのが口から引き抜く合図。
そうすれば余計に絡みつこうとする舌の動きを愉しんでいたが]
……足りぬだけだろう
[趣味を見つけよ。と一週間前にいったのは長い生を腐らせぬためともあったが、足りないものを補うためでもある]
血飲み子は強情の上、思った以上に欲深いようだな。
どうやら試験のようだ。
君はこれからコンラート殿の元へ、お使いに行くことになる。
[あれから使い魔のモリちゃんと共に、散々館内を探索させたため。
この城館内の位置はおそらく一番良く把握しているであろう子に、にこりと微笑む。]
コンラート殿に、これを届けて来てくれるかい?
あかがね色の髪に空色の瞳を持つ、マスターだよ。
[そう言って差し出すのは、リボンで丁寧に包まれた小袋が2つ。
中身は昨日、アレクシスと共に厨房を借りて作ったクッキーだ。]
体は動く。怠くはない。だがもっと欲しい…と、そう思えているのだろう。
[身をベッドに投げ出すようにしている血飲み子へと低く囁いた]
― 教室 ―
嫌だな、贈り物はまともだよ?
[向けられた視線の意味>>531は大体察しているらしく、抗議の声をあげる。
そんな男の手の上には、いつの間にやら菓子箱がひとつ乗っている。]
― 自室 ―
[アレクシスを送り出してから、程なく。
規則正しいノックが扉を叩き、お使いに来たであろうアレクシスの血兄弟を迎え入れる。]
どうぞ、開いてるよ。
[入室をうながし。
姿を現したファミルを見て、教育の行き届いた彼の所作に笑顔を浮かべる。]
[大量摂取すれば恐らく何らかの不具合は避けられない。
知らずとも本能的にそう感じる程に、始祖の血は濃い。
低く囁かれる声に、薄らと目を開いた。]
………そう、なのかな…
[足りぬ、欲深い、と言われて戸惑うように首を傾ぐ。
続く囁きは実に正しく今の状況を言い当てていて、こくりと頷いた。]
……そう、不都合はないのに…物足りないんだ。
[徐に傍らに腰掛けていたクレステッドの手をとると、すでに血の止まってしまった指をじっと見つめた]
味覚がどうなってるかはわからないから、目でも楽しめるものを!
自分が何者になったとしても、楽しむ事は必要だからね。
[菓子箱の中には、更に透明な箱が収められており、その中に色とりどりの飴細工。
花園で舞う妖精がモチーフとなっている]
こ、れ、に、ダーフィトがあのパイの幻影をかぶせればできあがり!
ああ、蓋を開けての反応見れたら、術解いていいよ?
[パイ生地の上に鰯の頭がいくつも聳え立つ、禁則事項にも記されている――…
『君のチャイルドと一緒にどうぞ。 ―ステファン=リッシュ―』
[添えつけるのは一枚のメッセージカード。
贈り物はまともである。贈り方がまともじゃないだけで]
―自室・ファミルが訪ね来る前 ―
手紙を書くから、少し待ってね…。
[小さな籠にクッキーの袋を入れて、万が一の事を考え、共に持たせる手紙を一つ。
『コンラート殿
先日の討伐戦、お疲れ様でした。
我が養子アレクシスに持たせたクッキーは昨日、一緒に作ったものです。
稚拙な出来ですが、もし宜しければご子息とお2人で召し上がって頂ければ幸いです。
そしてお恥ずかしい事ですが、我が子はまだ人の血に慣れておりません。
彼には人の血を与えないよう、何卒宜しくお願い申し上げます。』]
――もう、館内は大丈夫だね?
さあ、行っておいで。
[内容はアレクシスに告げず、いささか過保護気味の手紙を入れて。
愛しき養子を送り出した。]
[血飲み子の本能は正しく。それゆえ、指先をきって渡す。という摂取しづらい方法をとっていた]
血飲み子がこれから在る道はそういう道だ。他のことで気を紛らわすしかないが、趣味はまだ見つからぬようだからな…どれ…
[手をとり指を見るファミルをみて、そろそろ重症であることを察して、手を退けて、自身に背を預けさせるように抱きしめる]
少し痛いが、我慢しろ…なに、よくなる。じっとしていろ。
[逃がさぬように抱きしめたまま。顔を首筋に近づけ、舌を這わせなめあげた後、牙をたてた。
あの時以降...は吸血をしておらず今回も吸血が目的ではない。
今回影響を与えるのは神経だ。空腹感の変わりに他へと影響を与えるのが目的
食欲と並ぶものであれば睡眠欲。だがそれは十分にとっている。ならばと選んだのは最後の一つ。]
[ファミルの体の中を波が漂うだろう。
血を吸っていたときのような陶酔感の波は次第に強く快楽の波へと変わっていく]
― トールの私室 ―
失礼します。
[招き入れられれば、折り目正しく礼をして部屋へ。
ちなみにここらへんの礼儀作法は神学校時代に躾けられたものでクレステッドの教育の成果ではなかったりする。
バスケットをテーブルに置くと、書簡と、虹色の蓮を包みから出す。]
改めまして。
当主ご就任おめでとうございます。
此方を、あなたへと。
[両手で包むようにして、トールへと煌びやかな光を放つ蓮の花を差し出した。
紫水晶の双眸が、じっと相手の琥珀を見上げていた。]
試験ですか…。
―――解りました、コンラート様の元へ行けば良いのですね。
[自分の評価だけが問われるならまだ良いが、恐らくは
養親の教育の仕方も判断に入れられるのではないか。
そうなれば、未だに獣の血以外取り込めない自分は
著しく主の評価を落とす存在になってしまうのではと考えた。
しかし繕う訳にも行かず、が現状だ。]
ちょっと。
あの方にこれは…いえ、なんでもありません。
それでは行って参ります。
[主から聞いた外見の特徴は、幸い記憶に新しい人物のもの。>>544
高位の者と認識している為、預かった届け物には不安を覚えるが
少しでも食べてもらえたらとの思いで、手提げ籠へと収めた。]
[時々、ふと向き合った瞬間に、ナイフで自分の頸動脈を切り裂きたい衝動に駆られる。
混ぜ物のない己の血を大量に浴びた青年はどうなるだろう。
身を灼くもの、受け入れられる糧、自身の喉を灼きながら、その喉を潤そうとするのだろうか。
この一週間、血への忌避感を見れば見るほど、衝動は強くなっていくのだが――…]
モリちゃんは、今日は留守番。
帰ったらまた遊びましょう。
[別れ際に蝙蝠の小さな頭をひとつ撫でてやる。
愛くるしい仕草を励みにして、主の部屋から真っ直ぐに
目的の場所へと進んで行った。
…いつかは、主の笑顔を励みに出来る日も来るのだろうか?
そんな事を考えながら。]
ちょっと、せめて名前は教えろよ!
[そこは一応再度確認を。これで教えないなら多分教える気はないんだろうと思うが、聞けるものならともう一度聞いた]
……なに?
[背後から抱き締める腕は優しいものだったが、襟元を大きく肌蹴させ、首筋を這う舌に血を抜かれるのかと思わず身を固くした。]
…っえ?なに、なにを…
[牙は突き立てられた。だが、血を吸い上げられる気配はない。
けれども、血を吸われる時と同じ、甘い、甘い痺れがぞくりと背筋を這い上がった。]
ひ、ぁ……あッ……っ!?
[首筋からじわじわと身体中を犯していく甘い痺れに、腕の中で華奢な身体を震わせ、抱きしめる腕に縋りつく。]
……クレス、テッド…!これ…やだ……やだ……あ……っ
[押し寄せる波に頬を染め、吐息を漏らしながらも、戸惑うようにしていやいやと首を振った。**]
いいや。
立ち振る舞いを見て、洗練された教育を受けているな、と。
そう思っただけ。
気配を探って訪ねる事も、練習にはなると思うけれど、
もっと楽をしても構わないのではない?
[曰く、知らぬ道は人に問えばよい。>>556]
…?
[たまに、自分をみるステファンの目が。剣呑なものが含まれる気がするのだが…
あまり考えないようにして、箱を手に今度こそ部屋を出る]
/*
>>548 これは僕氷点下に行けば良いのか、
微笑ましく受け止めてやれば良いのか、
コントにしてやればいいのか
6(6x1)
*/
―自室 ―
[テーブルの周りに、肘掛け椅子がいくつかと長椅子と。
給仕は断って、血酒のデカンタと茶器だけ並べて貰った後は、
自身は長椅子に横臥して、客人の訪れを待った。**]
[牙を立てた位置から快楽を送り込む。
波は強く徐々に逃れれないほどの強さをもち、縋り付く血飲み子を薄目をあけて見遣りながら、直前まで甘く血飲み子の体を浸食させていき]
やめてしまってよいのかな?
[頂に辿り着くその手前で牙を放し、意地悪気に未知の感覚に戸惑う首を振る血飲み子へと囁いた]
残念、聞かれなかったらそのまま送り出そうと思っていたんだけど。
[ゆるりと微笑む。
聞かれてしまったならば教えないわけにもいかず]
お届け先は“エレオノーレ嬢”までだね。
[答えながら、教室を出て行くダーフィトの背中を見送った]
それならいいの。
吸血鬼と言うより、あなたはそのくらいできそうで…
[少しばかり唇を尖らせるが、気を取り直し]
安心したわ、ぼんやり気配は感じるけれど、誰がどの気配かは
よく分からないし、そもそも知らない方だもの。
一つ一つ扉をノックして、お邪魔する羽目にならなくて良かった。
[時と場所を見当しなければ、窺い知る状況は今度は
声だけで済まないかも知れない。
心底安堵して、主の書き上げた書状を受け取ると、
立ち上がった*]
―コンラートの部屋前―
[始めは、ノックを三回。
内側から返事があるまでは動かない。
…正直、不安で仕方がなかった。
吸血鬼として不安定過ぎる部分を抱えている事は
広く知れているだろうし、と。]
……受け取ってもらえるのかな…。
要らないと言われたら、結構来るなぁ…。
[小さな手提げ籠へ視線を落とせば見える、先日主と共に
作った、素朴なクッキー。
いつだって彼は人間に近い感覚で接してくれる、心優しい主だ。
それが「何故」なのかは未だに明かされてはいないが、
是非とも食べて頂きたい。今考えるのはそれだけ。]
……。
[相変わらず、悪戯と本気の境目がみえない。軽く睨んで、相手の名を確認すれば、今度こそ教室をあとにした*]
― 書簡 ―
[控え目な蔓葉が四隅にあしらわれたシンプルな手紙には、
挨拶と共に、養娘について拝謁を賜りたい旨を書き添える]
なお、日頃の指導が身に着いているかを見るため、
恐れながら、娘には御身にかかる一切を伏せております。
いまだ夜の世には不慣れな幼子ではございますが、
御指導、御鞭撻の程、何卒お願い申し上げます。
[ぶっちゃけると真祖の君のオーラを正しく感じ取って
ちゃんとお行儀よく出来るかどうかテストさせて下さい、
というお願いである。
更には、ここで生じる無礼は偏に養親の手落ち、
という事も行間に含められていた]
― 廊下 ―
そこのあなた。マスター・ヴァンパイアでいらっしゃる、
クレステッド・アル・アハド様のお部屋はどちらかしら?
[従僕を呼び止め、主から聞き知った名を淀みなく紡ぎ尋ねると、
従僕はじっとこちらを見た。
まだ年若く、血子としての齢も幼い少女を、いささか不躾なほど、じぃぃーっと]
……何か?
[『いえ、どういった御用件でいらっしゃるのですか?』と確かめる声は穏やかだが、双眸には懸念の色がはっきりと映る]
もしかして、アハド様は、そんなに……、
[余程気難しい相手なのだろうかと尋ねかけたが、ふと
続きを呑み込む。
主が与えなかった事前情報を、本人以外から得るのは
趣旨と反する気がして]
[程無くして室内へと通されたなら、いつものように
観察の目を彷徨わせる事はせず、大人しく真っ直ぐ前を見て
背筋を伸ばす。]
突然の訪問、失礼します。
主より預かりましたお土産を
お届けにあがりました。
[コンラートの姿が見えたなら、即座に頭を下げて
訪問の挨拶を述べる。
何度も何度も頭の中で文章を組み、おかしな事を言っては
しないかと再度確認した上で口を開くが、何事も
無ければ幸いだ。**]
― 現在・自室 ―
これは――、どうもありがとう。
礼儀作法もきちんと教育されているんだね。
[>>552礼儀作法や所作は、真祖であるクレステッドによって教え込まれたものと思い込んだまま。
ファミルによってバスケットから取り出され差し出された蓮の花を、こちらも両手で包み込むようにそっと受け取れば。
一枚一枚異なる色彩を持ち、七色に輝く蓮の花とその高い芸術性に目を奪われる。]
さすがは真祖の君――。
こんなに美しい品を俺になんて…、勿体ないよ…。
[真祖の君が送ってくれた好意の厚さに、思わず自信の無さが言葉となって漏れる。
これに応えられるだけの品を返礼に――と、考えるが。
浮かんだのは先程、自らの養子に持たせたクッキーであり――。
思わず頭を左右に振る。
が、養子たる青年の紫水晶の瞳に、すぐに表情を戻した。]
……では、私がじきにお伺いする旨を、先にアハド様の
お耳に入れておいてもらえるかしら。
[礼儀作法に煩い吸血鬼も、中にはいると教えられている。
自分で直接訪うより、先触れを出してからの方が安全だろうかと。
一度従僕を先に訪わせ、訪問に差障りがない状況であれば自ら部屋を訪れ、拝謁を請うつもりだ**]
どうぞ、そちらへかけて。
楽にしてくれてかまわないよ?
[ファミルに来客用のソファを勧めながら、自分はアレクシスを送り出してから用意していた紅茶をポットから注ぐと、ソーサーに乗せて彼の前に置た。
透き通った水色は、赤い。]
ここに来て、いくらか生活には慣れたかな。
…アハド殿は、少し厳しかったりするのかい?
[そしてさり気なく、真祖の君と彼の養子との暮らしぶりを訊ねてみた。
正直に言えば、やはり他の教育具合が気になるものである。**]
/*
実は
吸血鬼流ダンス=人間のダンスと違う何かの指導をお願いします
という、真祖たんに対する無茶振りも用意したのだが
色々考えた結果やめた
*/
さて、こちらも客人を迎える支度をしようか。
[送り出す先も曲者なら、迎える先も曲者である。
飲物は血を含むものとそうでないもの、両方を用意して、
黒衣のフードも目深に、境界なき者の子を待つ**]
ほう…
[ファミルがしなかったことへの先触れの使者>>565が届くことに感心する。主の躾か元の素養かまではわからぬがそれは合ってみればわかること。
先に用意をさせた歓待>>536は血がどれだけ飲めるのかという気遣いゆえの措置をだが、仮に唐突な応対では急遽用意ができるものではない。]
無駄にならずにすんだか…いや、こちらのことだ…ブライトン嬢は如何なる血を飲まれるか知っているか?
[先触れの使者である下僕へと尋ね、答えられたならばそれに適したものに絞るだろう。使者には来訪をお待ちしている。という返答を頼んだ**]
[この一週間、アイリスは最低限未満の人血と、
栄養の不足しか補わぬ家畜の血で過ごす事を果たした。
何の支障もないように。平静そのもので]
[所作と、身形、出会った場所の質から、
良家の姫君と呼べる事は想像に難くない。
もし、本心から平静であるのなら。
生存と満足の第一義をああも強靭に律するのなら、
最早、ただの地方貴族の娘の程度を超えていよう。
天井を仰ぐ]
[ただ空気に溶けて消えるだけの音は]
――――殉教者だな。
[ヒトである、という信仰に殉じる、不可侵の魂よ**]
ところでコンラートって、クッキー食べれるのだろうか
ここで食べるとこを見せられると軽く嫉妬しちゃうよね?(中の人談(手作りクッキー風 泥団子を手にしつつ
― 中庭へ ―
[それらしいものが見えてきて、時計を確かめる。
ホールから辿り着くまでにまだ半刻。
今日は冴えている]
[眉間を揉んだ。頭痛も治まったよう。
ロー・シェンなるマスターがどんな容姿なのか知らないことに気付いたが、]
剣呑なおとこ…
[短い人生で恐らく最も多く接してきたタイプならば、
見ればわかるかと薄く考えた]
[足元と前方に振り向けていた意識を周囲へ拡散させた。
気配を発していれば見えない距離でも朧に掴めるはずと]
…
[何かを探すように視線を彷徨わせながら歩き始め、]
[しばらくして、ずっと右の指先をつけて歩いてきたはずの壁が左側にあることに気付いた。前方に見えていたはずの中庭がない。
コース逆走。
踵を返した**]
[>>564 感心したような様子がうかがえる相手に、いやぜんっぜん、と余計なことを言うことはしなかった。
贈り物は、どうやら相手のお気に召した様子だ。
尤も、トールならば何を贈っても嫌な顔はしそうにないが、と初めて目にした時と今再度見えて思う。]
…あのひとが、不相応な昇格だと思っている相手を祝うことは、例え形式であっても無いのだけは断言できます。
[自信の無さの垣間見える相手に、少し考えてそう添えた。
お世辞ではなく、あの銀の真祖のこと、認めていない者など歯牙にもかけないどころか認知すらしないであろうというのは本心。
無事ミッションを終えて部屋を辞するかと思えば、椅子をすすめられた。>>566]
……では、少しだけ…失礼します。
[そう言えば試験だと言っていた。
口述試験か何かがあるのだろうか、と考えながら勧められた席へ。
供された琥珀よりも赤に近い紅茶には小さく一礼を返したが、手を伸ばすことは無い。]
どうにか、お蔭さまで慣れてはきました。
………厳しい、というか…
[言葉が僅かの間淀む。
半透明の赤色の揺らぎを見つめながら言葉を選ぶ。]
慣れぬ故に戸惑うことも多いですが―――気にかけては頂いているようです。
人の血を飲めぬ私を、放り出す様子も今のところはありません、し。
[なにせ自分がルールというタイプの主だ。
熱意は感じるが恐らく養子の育成には不慣れと此方が察するほど、手加減や方法が荒削りなのである。
が、なんだか純粋に真祖を敬っている様子の相手に、イメージをぶち壊すような発言控えたほうが良い気がしたから、そう言った。**]
― 自室 ―
[礼儀正しいノックが三回。]
どうぞ。お入り。
[自身は長椅子に寝そべったままで、威儀を繕うこともしないのは、物事に頓着せぬ性によるもの。
それでも、物堅い雛の様子から彼の緊張を知れば、即座に長椅子から滑り降り、]
良く来たね。
堅苦しい挨拶は抜きだ。
こちらにかけて、楽にして。
[やわらかな笑みで迎え、テーブルの前に並べられた椅子のひとつを勧める。]
ぅ、ぁ……あ…ッ
[嫌だという言葉など何時も通りどこ吹く風。
ただ、首筋に牙を突き立てられる。
其れだけの行為に、感じたことの無い快楽を強いられ、熱を失ったはずの身体が熱くなっていくような感覚さえ覚えた。
沸きあがる羞恥心に、きつく目を伏せて耐えていると、限界の一歩手前で刺激が消える。
震え強張っていた身体から、かくりと力が抜けて、荒く息を吐いた。]
………っ!
……こんなこと…嫌に決まっているっ…
[意地悪気な低い声に、まだ体の中で燻る火種が煽られ、ふるりと身を震わせた、が。
潤んだ瞳で恨めし気に睨み付けて、顔を背けた。]
何か飲むかい?
[椅子に座ったのを確認した後は、主人役として歓待に努める。
召使がいないので、給仕は手ずからだ。]
君はお茶と酒、どっちが好きかな?
[上質ではあるが人間が飲む極普通の茶葉と、
とある一門が門外不出の秘術で作っている、最上級の血を醸した血酒、
(どちらもこの城館の貯蔵品で自分の物では全くない)
テーブルの上に並んだそれらを勧めてみた。]
[未知の快楽にその身を捩り熱っぽい声を上げる血飲み子。
荒く息を吐きながらも抗議するのをなだめるように牙を突き立てた箇所に舌を這わせ]
そうか、手早く解決する方法の一つなのだがな。
[震わせた体を抱きしめたまま]
気に食わないならば違う方法を探すしかない。それまで耐えるがいい。
[慈悲を与えはせぬが、意地悪でもなく今後の生活にかかわる内容を淡々と口にした]
[レトを送り出して一仕事終えた気になっていたが、自分のところにも訪ねてくるのだと思い出す。
もてなしをしろ、までが指示であったから何か準備するべきかと考えたが、特に必要ないとの結論に至った。
自室で待っているのも退屈だったので、この際、レトを引き受けて以降滞りがちになっていたことを片付けることとする。
まずは評議会や自分の配下と連絡を取り、各地の状況を確認。
次いで、必要な資料を求めて書庫へと向かった。
資料をいくつか広げながら、文机に向かって書状をしたためる。
面倒だが必要な作業で時間をつぶす。
使用人には、自分の所在を伝えてあった。]**
―→ 書庫 ―
─ ロー・シェンの部屋 ─
いない…
[顎を引くように視線を落として呟いた。
誰もいなかった中庭から、人にここへの道筋を尋ねてやって来るまでに既に81分]
その書庫へはどうやって
行きますか
[いつも廊下で蝶々を連れて迷ってる人だわヒソヒソ。
ご案内しましょうかと申し出る使用人の哀れみの眼差しは見ずに、
丁重に固辞してメモをとり始めた**]
……っ、だからって、いきなり、こんな……
[白磁の素肌を這う舌にひどく切ない思いをする。
満たされない食欲を、代替えの欲求を満たすことで紛らわす行為。
胸に満ちるのは堕落への背徳感、そして昂る性欲への嫌悪感。
それすら、疼きを煽るから罪深い。]
……違う、方法……っ?
[未だ抱き締められたままの腕のなか、眉をしかめる。
ーーーとにかく、与えられた劇薬のような快楽から体を収めようと。]
…………耐えれば…………いいだけだ
[堕落の淵を踏みとどまろうとするように。
長い睫毛を震わせて、かすれる声で強がった。]
― 自室 ―
[一度は面識があるのが幸いだった。
偶然廊下で見かけた時から数日経っているが、まだ吸血鬼である自分に順応しきれていない雰囲気がある。
その時から、控えめで、胸に思い詰めたものを抱えている子であるように感じていた。]
トールは君に良くしてくれるかい?
[雛が所望した方の飲み物を器に注いで、彼の前に置く。
ついでに、同じ飲み物を自分にも用意して、雛の向かいの席に座る。]
― 教室 ―
[ダーフィトが部屋を出て行くのを見送って、もう一度、試験内容>>477に目を通す。
吸血鬼社会で“そつなく”という文言をみなかった事にしながら、グラスの中の朱を呷る。]
あとで織り手のとこに行かなきゃだね。
[男が重視する“主の趣向をどう扱うか”
その一点がどうであったかは、贈られた側に聞いてみないとわからない。
ネタばらしをしてしまったのなら不合格、術を使わなかった場合も不合格――…逆にその二点をクリアしていたのなら、及第点にしてもらおうとも考えながら。]
[空になったグラスを下げさせて、別な飲み物を頼んだならば、未だ机の上にある、タチアナが得意だった菓子へ視線を移す。]
(――彼は、血を、どう感じるのだろう?)
[ある者は甘いと言い、ある者は熱いといい、ある者は――…
彼がそれらを口につけるまでの時間を考慮外としたならば、混ぜ物のある茶より混ぜ物のない茶、それらよりも
茶を邪魔しない味であることは見て取れるのだが、以前を思えば面と向かっては聞きにくく。]
[男にとって、血は、血の味でしかないのだと――…時々、彼が酷く羨ましく思えるのだが、彼に対してそれを口にすることはせずに。
やがて届けられた混ぜ物のない茶で、口内の血を拭い去れば、机に残る
欲深く不満を口にしたのは血飲み子であろう
すぐさまどうにかできる手段は他ない。本来の吸血鬼から逸脱する行為をしているのだ。これぐらいの弊害はあって当然とし、長い目で手段を講じるしかあるまい。
[傷痕を労うように這わせていれば、先に摂取した血と合わせ、傷口は消えゆくのを見ながらも胸に渦巻く思いはわからぬが]
それも血飲み子の願いならばよかろう。
[人の血を飲みたくないといったことと同じように受け入れる旨を耳元で囁いて教えながら、壊れそうになったら破ることもここに決めておく]
もうそろそろ朝が来る。眠ることで気を紛らわせるがいい
[ゆっくりと抱きしめたままベッドに倒れ込んだ。今日も今日で血飲み子は真祖の抱き枕である。尚、抱き枕というだけでやらしいことをしたことはない]
ー 試験日の数日前 ー
[その日、ふと思い立って明け方、うとうとと微睡みながらで囁きかける。]
……ねえ、人を狩るって、どんな感じだった?
[感情の見えぬ尋ねる声に、答はあったか*]
[本来の在り方から逸脱することを望んだのだから仕方ない、と諭されれば、拗ねたように唇を尖らせた。
耐えると望むなら受け入れる、との囁きに、寛大なのか尊大なのか、それとも出来ぬと解っていて言っているのかはかりかねながら。]
解っている……
[自ら望んで逸脱した。それだけは誰のせいにもすまい。
毎晩のように己を抱えて眠る銀の真祖に、夜明けの近い微睡みの中、尋ねる。]
…………私が来る前も、こうして誰かを抱き枕にして寝るのが習慣だったの?
[腕のなかで身を返すと、白銀の髪にてを伸ばし、何となく撫で付けた。]
ただ持て余す欲求を違う方向に向ければよいだけだ。お前ならできるようになる。我が育てているのだからな。
[最もその大きな欲求を向けるものだから並み程度では済まないが、それでもできると根拠を示さずとも自信満々にいう]
む?…妬いておるのか?可愛いやつだ。
[口許を吊り上げながら、腕の中、身を返し髪を撫でる血飲み子を見遣り]
赤子が夜泣きせぬようにするにはこうするのがいいと聞いたぞ。
[コウモリ倶楽部より抜粋されたことを忠実に実行する真祖であった。]
その自信がどこから溢れてくるのかはさっぱりわからないけど。
……試練なのかもしれない。
[ロザリオの無い胸元を触れた。
まだなお、神の面影を探す仕草。]
だ、誰が嫉妬など……!
それに、私は夜泣きなんかしない!
[手を離すと、憮然とした表情をして再び背を向け、目を伏せた。
腕のなかは、相変わらず人臭さが感じられない闇の薫りに満たされていて、酷く落ち着いた。*]
我が正しいからだ。それに試練などと口にするから苦難を感じるだけであろう。当然として在るもの。と思えば易い。が、そうだな…
[何かあれば罰を与えよう。と言おうとした言葉は中途で留め置く
仮にそうなった場合は、それはそれで愉しそうだと察したのだ]
ふふ…素直になれ、我の下にいるのは幸福であるとな。
[低く楽しげな笑いが口から零れながら、夜泣きなどしないといっても聞き入れずに、背を向けた血飲み子をあやすように撫で、抱き枕ように抱きしめた腕は離すことはなかった*]
は、失礼します。
[勧められるままに席に着き、心底落ち着かない様子で
コンラートの姿を追っていた。
…よく見ると、召使が居ない。
そこから彼自らのもてなしを受けるのだと知り、
慌てて手伝おうと席を立ち掛けた所]
あ、いえ、その。
お茶とお酒…ですか?
[ふと、それは失礼にあたると思い直して席に着き直すという、
傍目から見ればいっそ怪しい動作の最中に飲み物を勧められた。
酒と聞くと普段から飲んでいる血酒を思い出す。
最近は自分から強請る事もあるくらいだが、流石に目上の前で
そのような面を見せる訳には行かないとして]
― 書庫 ―
[それがやってきたのは、いい具合に書き物が仕上がり、息抜きに中庭にでも出ようかと立ち上がりかけた時だった。
すれ違いにならなかったのは、おそらくお互いにとって幸運なことだったろう。]
俺がロー・シェンだ。
[名を問う声に頷いて立ち上がり、相手に正対する。
敬礼に、こちらも敬礼を返してから、まじまじと使者の姿を見た。]
……なにをしてきたんだ?
[道なき道を突っ切った感のある相手の姿に、手を下ろしながら問うてみる。]
コンラート殿よりの書状、確かに拝受した。
[差し出された羊皮紙を受け取りながら、相手を観察する。
今は残念なことになっているとはいえ、軍服姿が様になっていた。
武器を握ったことのある手だ、と思う。
マスター・コンラートに引き取られた仔。名はディーク。
白い蝶とともに城館内を歩いている姿が、よく目撃されている。
頭の中に情報を呼び出しながら書状の封を切る。
ずっと蝶が同行しているというのは、監視なのか過保護なのか───
などという思いは、書面を一読して途切れた。]
[羊皮紙から顔を上げてディークを一瞥し、もう一度書面に目を落とす。
再度、ディークに視線を合わせた時には、瞳から表情を消していた。
───もっとも、もともと乏しい表情ではあったが。]
ひとつ問う。
コンラート殿は、他に何も言っていなかったか。
[書状を渡すこと以外の目的があるのではないか。
ごく真っ当に、裏を勘ぐっていた。]
― 自室・ファミルと ―
そうか…――良かった。
[思わず見せてしまった自信のなさをしっかり見られたようで、多少彼の言葉に驚いたが、
彼が自ら語る養親の評価に顔を綻ばせる。]
他でもない君が言うのだから、間違いないね。
そして…君はちゃんと養親を見てるんだな。
[聡明な紫水晶の瞳を持つ青年を微笑ましく見つめる。
カップの中を見つめたまま言い淀んだ、僅かな間。
赤い水面の揺らぎに呼応するかのように、彼の瞳もまた揺らいだように見えた気がした。
何か悩みでもあるのだろうかと推察するが、彼自身が言葉にしない限り、こちらから聞き出す事はない。]
君もまだ、なんだね。
なかなか勇気がいるよな…、人の血を飲むって…。
[ファミルによる養親の話に耳を傾けていたが、『人の血』と言う言葉を聞けば瞼を閉じる。
さんざん血親に迷惑をかけた、血族になり立ての頃の自分を思い出して溜息をつくと、再び瞼を開いて苦笑を浮かべた。
人の血もそうだが、アレクシスにはマスターである自分の血すらも、
まだ与えていない事は伏せたまま。]
……実は俺のアレクも、まだなんだ。
そろそろ人の血に慣れさせないと…とは、思っているんだけれどね。
[自分の養い子と、彼の血兄弟に向ける微笑みは、
どこか申し訳なさげな、情けないようなものだったかも知れない。**]
……大変お世話になっております。
でも、時々…どうしてそこまで僕を大切にしてくれるのかと
疑問に思う事があります。
このお届けものも、先日一緒に焼いたものです。
こうして、人間に近いやり方で僕に接してくれるんです。
…あれからずっと。
[流れと勢いに乗り、手提げ籠の中身を二つテーブルの
中央に静かに置いた。
中身はコウモリや三日月などを模した、見た目愛らしい
素朴な味わいのクッキー。
横には手紙も添えておく。
コンラートがすぐに手紙の内容を確認するならば、今の
話も含め相当に甘やかされていることが良く解るだろう。*]
["未だ"、と、行く行くは飲ませる方針を聞けば、微かに睫毛が降りる。]
私は……この先人の血を摂る予定はありません。
[ほんのわずかな自身の血だけで吸血鬼の渇きを癒すという芸当は、並の吸血鬼に出きるものでは恐らくないのだろう。]
主の血以外摂らぬと、誓約しました。
[真祖の血を取り込み続けることで払う代償は決して軽くはない。
まさに、悪魔との契約を交わしたのだと。
口にすることで改めて認識した。]
……もし失礼でなければお伺いしたいのですが。
私の養親は、トール殿の目からみて、どのような存在ですか?
[年長の吸血鬼たちからどう見えているのか、興味があった。]
[書状をあらためるローを黙って見つめた。
何か問題でもあったのかと考えるが、書状の中身はほとんど読んでおらず。
視線が再び合えば赤錆色をゆるく瞬かせた]
…ほかに
[問いへ一拍の間を置いて返し、
さらに数秒考える。
これを見せて受け取りの証を貰う。それ以外には]
──あなたが験すと
これは生きていけるかどうか、のテストと聞きました
[これで一応やる気はあるが、気負いようもない。
起伏に乏しい眼差しでローの瞳を見返す]
[綺麗にアイシングされた蝙蝠をひとつ摘み上げて眺めれば、思わずくすりと笑声が洩れる。
トールが少女趣味な一面も持っていると知り、彼がますます好ましく愛らしく思えてきた。
だが、残念なことに、コンラートは固形物を食べられない。
昔は、人間のふりをするためにほんの少し食物を口に入れることもしていたように思うが、分身能力を獲得したあたりからだろうか、全く胃が受け付けなくなった。
今では精々が薄い茶か、薄めた酒の類しか口にできない。
だが、そのようなことはわざわざ口に出すようなことではない。
そっと元に戻し、]
ありがとう、ディークと一緒に食べるよ。
きっと喜ぶだろう。
トールにもそう伝えて欲しい。
[感謝の意で、雛に向かって微笑む。]
− 廊下 / 試験の日 −
[届け物の配達先は、「ステファン=リッシュ」というマスターだという。]
あの散歩組の──どっちがマスターなんだろ。
[歩きはじめてから記憶を手繰り、ふと首を傾げた。
ほんの一言二言、躱しただけで狩りに突入してしまったからよく観察していない。
裸の上半身に大きな上着だけひっかけていた少年か、束髪の自称・迷子の青年か。
どちらも、ロー・シェンに対してへりくだった態度ではなかった。]
[「ステファン=リッシュ」は術を使うと、ロー・シェンは言っていた。
森に残っていた古い力を思い出す。]
あれさ、ちょっと懐かしい感じしたよな。
[ルマニの長老が森の神を祀って捧げる祈りにも似た波動。
教会が説く慈愛の神ではなく、恵みと祟りのどちらももたらす太古の神だ。]
― 教室 ―
さてと、えーと、僕の所に来るのはレトだっけ。
[いつぞや見た狩りの訓練の事を思い起こせば、一瞬、実践として奇襲されるのではないか、場所を変えておこうかなどと思ったものの――……
かの猟犬の性質を思えば、余興じみた事はしそうにないと考えなおした。]
さて、おもてなしは何にしようかな。
[お茶はともかく、茶菓子が少々悩ましい。
早々に狩りをしているならば、血の味を知っているということだろう。混ぜ物なしも味気ないかもしれないし――…そしてなにより]
[ロー・シェンの説明によれば、吸血鬼の出自もいろいろあるそうだ。
それらの者たちが孤立したり対立したりしないように生み出された汎吸血鬼の調停組織が評議会なのだと理解している。
ルマニにも大集会というのがあって、何年かに一度、集まっていろいろなことを決めたり裁いたりする。
その時には、久しぶりに会う家族同士で贈り物や婚姻なんかも盛んに行われるから──]
これもその一環?
[託された小包と手紙を見やった。]
……うん、ダーフィトに試そうと思ってたのがあったっけ、あれにしよう。
[思いつきで作らせてみたものを早く試してみたかった。
混ぜ物に忌避をきたす生徒のために作らせていたのは、ラズベリーと血のムースにウエハースを添えたもの。
血は特製ではなく普通のものであるのだが。]
む、
[自分の恰好を顧みる。
礼装でこそないが、ロー・シェンの威信を損なうほどラフでもない。
紫と緑が嫌いとか言われなければ大丈夫だろう。
お護り袋の中身は、黒曜石と山翡翠の羽根と古い銀貨と、ここに来てから見つけた金色の獣毛くらい。]
[この子の名前は何だっただろう、と記憶を掘り起こそうとする。
評議会からの使者から、バランの血子全員の名前を知らされたように思うが、ディーク以外に関心がないので聞き流してしまった。
たしか、トールが愛称で呼んでいた筈なのだが…などと思いつつ、取り敢えずは。]
ねえ、君。
君は、人が誰かを大事にする理由って何があると思う?
[組みあわせた指の上に顎を乗せ、上目遣いに雛を見詰める。]
− ステファンの教室 −
[ともあれ、目下の任務は配達だ。
自転車を使っての運び屋も一時期やってみたことがある。
今は自転車はないけれど、要領は同じだ。
使用人に教えてもらい、「ステファン=リッシュ」に宛てがわれた部屋=教室へ。
何人かの情報が合致したので、間違いはあるまいと思う。
在室中か不在かは訪ねてみないとわからないが──]
ロー・シェンよりの使いで参りました。
[ノックして反応を待つ。*]
ー 試験日の数日前 ー
[明け方。
ロー・シェンとの組み手を終えて、頭から水を浴びて、さっぱりしたところにファミルから声が届いた。]
よ、 寂しくなったのか?
[感情に出さなければ、こっちが何をやっているかはわからないはずと余裕ぶっこいて褌をしめながら、ファミルの問いかけに耳を傾ける。]
狩りの印象?
基本的には獣を獲るのと同じ。
自分の持てる力を総動員して、こいつと勝負して勝つぞって。
ある意味、熊より強いから怖くもあるけどさ、 嬉しかったな。
喜ばせたいもん。
[誰を、の部分は主観につき割愛されているが伝わったかどうか。]
[そういえば、ファミルはロー・シェンにも獲物について尋ねていたな、と思い出した。>>0:401>>0:407]
ファミルは勝負とか言われると、勝ちを譲って身を引くタイプかな?
だとすると、オレの頑張りって理解できないかもしれないけど。
人それぞれだよ、 あわせる必要なんてないさ。
[直に会話していたなら、肩でも叩いていたろう。
だが、念話では限度がある。
ファミルの微睡みに意識を重ねるように、ベッドに潜り込んだ。*]
― 書庫 ―
猫に道でも聞いて来たか。
[あなたを探して。
ディークのそんな返答に、表情も変えずに言う。
これでも冗談のつもりだった。]
[もう一つの問いへの答えに、暫し考える目をした。
生きていけるかどうかのテスト、と定義した上での書状の内容。
コンラートの意図はどこにあるのか。思考はそこに帰着する。
まさか目の前の仔が文字通り赤子のレベルから始まったとは思いもつかず。]
───書状には、おまえを紹介するとある。
ならば、おまえの口から紹介してもらおうか。
[文机に視線を落とし、確かにディークから直接書状を受領した旨のコンラート宛の書状を認めながら、諮問の口調で問う。
それへの答えを中途まで聞いたところで、ふっと手を動かした。
ディークの胸へ投げつけたペン。
そこに、確かに殺気が乗る。]**
[準備を終え、混ぜ物のない茶を口にしながら、次に試すべきアイディアを練っていると――…
「ロー・シェンよりの使いで参りました。」とノックの音が>>606]
開いてるよー
[待ち人来たれリ。
レトが部屋に入ったならば、椅子にかけるよう勧めるだろう]
― 私室 ―
[遣いの下男より『人間と家畜の血を薄めて摂取している』>>597との追加報告が入れば、それを出せるように整えさせる。
そして来訪の時は訪れた。
入室の許可をだし、使用人が扉を開いた]
ようこそ、そして久しぶり。
[実践的な訓練をしていたであろう彼と、生徒を本漬けにする勢いで書庫近辺に篭っていた自分が会うことは――…なかったような気がしている。多分。
とりあえずはと、一週間前のあの時からという計算での挨拶。初めから砕けた態度で接する。
相手が椅子に座ったならば、紅茶と特製菓子>>603を用意させ、菓子を口にするのを待つだろう。]
[使用人が扉を開けた瞬間突風がふきあれたような見えざる圧が外へと漏れ出る]
ようこそ…ブライトン嬢…とお呼びすればよいかな。
[いつもの傲慢な口調は一時潜められ、歓待の態で立ち姿のまま仰々しい態度で来客を迎える。
別に男は敵意を発しているわけではない。
別に男は闘気を放っているわけではない。
別に男は殺意を向けているわけではない。
ただそこにあるだけで全てを従える威風を漂わせ、動作が空気を動かすだけで、見えざる闇を放つ銀の吸血鬼は使いのチャイルドをサファイアの瞳が見つめる]
道には迷られなかったか?っと、いかんな、立ち話を強いるのはレディに失礼。どうぞ。中へ
[深淵へと迎えるように部屋の中、来客用のソファーへと誘った]
うん、少しだけ。
[返る快活な声に耳を傾ける。
元より森から狩りをして糧を得る生活をしていたのだろうか、語る声は順調に状況への順応を示しているように感じた。]
……そう、マスターのこと好きなんだね。
[おにいさまと呼んだ彼の満足そうな様子を思い出せば、問うまでもないか、と。
勝負について問われると少しだけ考えるような間を置いて。]
……内容に寄っては。
絶対に譲らない程度には強情。
[重きを置くものが違う気配は、何と無く感じていた。
だからこそ問うことができたともいう。]
教えてくれて、ありがとう。
……私が吸血鬼としての有り様を拒んでも、レトは私の友人でいてくれる?
[自分が往く道をまどろみのなかに浮かべて*]
[その時間、ほんの僅か。
口元に軽く握った拳を遣り、未だ考えながらではあるが
思いついた端から出してみる事にした。]
多くは自分が相手を好いている、愛情を持っているから
というものだと思います。
しかし、どのような形であれ自分に利があるから大事にする、
といった考え方も時には見られました。
…後者はあまり考えたくありませんね。
[何故か同意を求めるかのような締めとなった。
さて、今話した内容から主の対応を当てはめようと頭の隅で
試みるのだが、出来ない。
何故自分を好いているのか、愛情を持っているのかという
疑問に当たってしまうのだ。]
[椅子と茶菓を勧められても、まずは任務を果たすべく固辞して預かった品を取り出す。]
マスター・ステファン=リッシュご当人様へ、
こちらがお届け物、
それと、この場にて、この書状を読んで聞かせてもらうこと、と指示されております。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。
[任務を果たすことの熱意に加え、書状に何が書かれているのか興味津々な様子は隠さず。]
[人に聞くのはだめだったのだろうか。
冗談を理解出来ない男]
紹介…
[ある意味一番難しい問いだった。
勘で答える類ではないし、]
……名はディーク、と
[そこまで言って一度止まり、視線を落とす]
俺から見て――?
[アレクシスには己の血だけを与える方法で行くべきか――、という思考も過ぎったが。
その思考はファミルからの質問に遮られた。]
うーん、そうだなぁ…
『憧れの俳優さん』が近い…かな――?
[どう例えたら良いのか、暫く考えた後にそう答えた。
実の血親と同じかより長く生きているであろう真祖の君には、親とはまた違った種類の尊敬と憧れを抱いている。]
とは言っても実際にお会い出来たのは、あの夜が初めてだったんだけど。
だから口を聞いても良いと許しが出たときは嬉しかったよ。
[あの夜バラン諸共切りつけられた事や、(当然のように)初めて出会ったときの不遜な態度についての話は一切触れない。
せいで兼ねてからの噂で、真祖とはそういう方なのだろうと納得していたせいだ。]
北の湖沼地帯の 生まれで
うまが ああ、
成長後──ドラグーンとして、しばらく戦に たぶん
[あやふやに答えを紡いでいると、
不意に男の手元から直線的な軌跡が発せられた]
、
[殺気がなければ、その速度に反応する余地なく鋭利な尖端が突き立っていただろう。
バシ、と軽い音を聞きながら、男の方へ一度視線を上げる。
たしかにこのような有様では怒らせても無理はないだろう]
……申し訳ありません
正直に言えば、まだよく、わからないのです
[緋色に染まった双眸を伏せて、ペンを手元で回した。
飛び散ったインクが襟を汚してしまっているが気に留めずに、
ペン先を自分側にして返却しようと差し出した]
― 教室 ― >>618>>619
[椅子より先に届け物をという行動を見れば、強くは薦めることはせずに。]
あ、ありがとう、確かに受け取らせてもらったよ。
ちょ……っと、待ってて
[年季の割にマスターと呼ばれ慣れてない為、少し挙動不審になりながらも、品物より先に、目の前の青年が気にかけている書状へと。]
君に術の基礎なり理念なりを軽く教えてほしいんだってさ
[そのまま読むのではなく、渡された書状の中で彼に関係するものだけを口にした。]
[目線を合わせ、懸命に思考を巡らしつつ答える雛を微笑ましく眺める。
同意を求めるように締められた言葉は、彼の自信のなさを示すものと受け止めた。
それではトールの恋情を素直に受け止められない筈だ。]
そこまで分かっているなら。
[組んだ指を解き、頬杖へと変え。]
――話は変わるけれど、僕の打ち開け話を聞いてくれるかい?
[翠は少しく悪戯心を窺わせて輝く。]
[貴族の息女として傅かれ育った身は、同時に王族に傅く身としての心得を刷り込まれている。
問題は――礼をとる先が、元首や貴族に相当するのか、権力を勝ち得た猛者なのか、匙具合がさっぱり解らぬ事だ。
マスターの一人であり、ダンスの手解きができるだけの素養を持つ相手なのだろうという事以外、知り及ばない。
入室の許可を待つ間、自分を送りだした主を思い出す。
本人にも告げた通り、養い子となると決めた訳ではない。
けれど、敢えて顔に泥を塗るような真似もしないと約束してある。
滞りなく済ませるためにも、及ぶ限り努めようと決め]
[扉の奥が覗くや否や、身が沈み込む錯覚に襲われる。
重苦しい圧を全身に受けたまま、部屋の中へと一歩踏み入り]
拝謁の栄を賜り、恐悦至極に存じます。マスター・アハド。
此度、マスター・エレオノーレの子と成りましたアイリスと申します。
ご挨拶が遅れましたこと、先ずはお詫び申し上げます。
どうかご寛恕下さいませ。
[ドレスの裾を摘まみ恭しく腰を折ると、面を伏せたまま言を待つ。
部屋の主は、歓待の意と、思いがけず自分の姓を口にした>>612
口調こそ丁寧だが、王者だけが持ちうる自信と威圧に満ちた声]
[人の血を摂らぬと言ったことに気分を害した様子はなかった。
真祖の血は劇薬にも等しい。
通常の何百分の一の量の血で活動し、常に渇きとは別の衝動に苛まれ続けることは、あえて説明する必要を感じていなかった。
同じ方法がとれないか、と聞かれても、解らないとしか答えられないのだが。]
……憧れの俳優。
[クレステッドの顔を脳裏に浮かべる。
まあ見目は悪くないな、などと検討違いのことを思いつつ。
身近すぎてよくわからないのだが、案外と敬われてるのかな、などと思う。]
不躾な質問に答えて下さりありがとうございました。
……ところで、試験、と聞いて伺いました。
あまり長々お邪魔してもご迷惑でしょう、終了であれば、おいとま致しますが……
[琥珀を見上げて、小さく首をかしげた。]
− 試験の数日前 −
[眠りに引きずられる意識に、子守唄のような優しい音が響む。]
師匠… へへ、
[枕を抱え込んで爪をたてる。]
[自分を強情だと評するファミルに、うん、と頷いた。]
芯があるのは、 大事だ。
友人?
もはや兄弟だろ、 オレら。
[何ものにも変えることができない絆があると、教える。*]
― 書庫 ―
[投げ放ったペンは、仔の体に突き立つことなくその手に止められた。
手加減した覚えはない。
ちら、と笑みを閃かせて彼の方へ向き直る。]
良い。
人であった過去のことなど意味はない。
マスター・コンラート殿の養い子。
それだけで十分だ。
[差し出されたペンを受け取り、文机に返す。
書いていた書状のインクの乾きを確かめてから懐に収め、ディークの横をすり抜けて歩き出した。]
来い。
一本付き合え。
[足を向ける先は中庭へ。
ディークがついて来るかどうか、確認することはしない。
途中、使用人を呼び止めて、送る分の書状は託しておく。
コンラートへの返書は、未だ懐の中。
"生きていけるかどうか"
その意味を、実にシンプルに捉えたのだった。]
[村民のような愛嬌ではない、長年培われた品位と理知を感じさせる雛>>626だ。]
構わない。互いに事情があるのは了解している。特にブライトン嬢やその血兄弟たちはもとを糺せば望まぬ生きかたを強いられることとなった被害者といえるのだからな。
[礼節をわきまえた慇懃な態度を受け寛大さを示すと、来客用のソファーへと誘う。使用人が使いの雛と自身の前へと血に混ぜた紅茶と焼き菓子が運ばれてくる]
どうだ?少しは慣れたか?
[世間話から入る態を持ちながら、その実。使いとしてどのような要件をもち、それをきりだすのかを待つ姿勢だ]
いえ、どういたしまして。
…俺は真祖の君をとても尊敬しているよ。
星々に囲まれて闇を照らす、青白い満月のような――素敵な方だと思うよ。
[「俳優」との言葉に、何やら彼なりに考えを巡らせている様子のファミルを優しく見守る。]
ありがとう、こちらこそ引き留めて悪かったね――。
もし良ければ、これからもアレクと仲良くしてあげてくれないか?
[それから少し、他愛もない話をしただろうか。
バラン討伐時、彼がアレクシスと会話していたのを思い出し、彼なら他の兄弟よりも話しやすいかも知れない、との考えから最後にそうお願いしてみた。]
また、いつでも遊びにおいで。
[別れ際、彼にクレステッドへ宛てたお礼の手紙を託して。養子の友人が、彼の養い親の元へ帰るのを見送った。]
[子猫のような様子の声に、自然口許が緩む。]
……レトが幸せそうで、私も嬉しい。
[ひとであった時と同じように、祝福を紡ぐ。
兄弟、という言葉には、教会に教えられてきた人類皆兄弟、隣人を愛せよというもの以上の絆を感じて、密やかにシーツを握った]
……ありがとう。
闘うよ、私も……私の向き合うべきものと
[レトのそれとは異なるものであれど。
兄弟と言ってくれるひとがいるならば、独りでは無いのだと胸に刻む。
その日の眠りは、とても穏やかだった*]
…?
[殺気に反応して色を変えた虹彩はすぐに元の錆色へ返って行く。
機嫌を損ねた、わけではないのだろうか]
はい
[一本。一本?と脳裏で反芻しながら、男の後から書庫を出る。
一度目を離せばそのままはぐれること請け合い。滑らかで隙のない足取りを追いかけて、時折小走りになりながら中庭へ]
僕は、ディークを愛している。
会ったばかりで、彼のことを何も知らないのにね。
吸血鬼になる前に彼が何をしていて、どうしてああなったのかも知らない。
彼の正式な名さえ知らないんだ。
[苦笑いを浮かべ、おどけたように肩を竦めて見せた。]
なのに、どうしてなんだろうね?
彼からしたら信じられないだろうね。
彼のことを何も知らないのに、愛しているなんて。
きっと重荷に感じるだろう。
利用されているようにすら思うかも知れない。
[暗い自嘲が滲むのを慎重に避け、惚気と受け取られるように、明るく澄んだ調子を保とうとする。
そうして、雛の瞳の奥を覗き込んだ。]
― 教室 ― >>629
[書状を読んでから向けられる期待感に、少しどころではなく気圧されて]
え、ああ、うん、いいけど!
[返答はやはりどもりがちに。
しかし、彼の猟犬から教師として期待されたなら、目の前の期待の眼差しを向けられたなら、手を抜くわけにはいかないと。
用意させた茶が冷める事もきにかけず、男はじぃっと相手の顔を見つめたまま腕を組んで考え込んだ。]
[……そして、少々の思案の後]
一つ、問いかけをしていいかな。
[と、口を開く。
そして、自身の胸の前へと、何かを支え持つように片手を差し出し――…]
ここには“在る”と思う?“ない”と思う?
[森を駆けるもの、自然とともにあるもの、森の前で会ったからだろうか、男は猟犬の子にそんな印象を抱いている。
ならば小難しい理屈で固めるよりも、本能あるいは感覚による魔術の方が相応しいのではないかと――…
ダーフィトとは別のアプローチを試みてみたのだった]
[本当は。
彼の答えなど必要としていない。
その回答を得るべきは、ディーク本人からだけだと知っているからだ。
これは、だから、雛への寓意に過ぎない。
トールと自分に置き換えろと]
― 中庭 ―
[中庭へ向かう途中、声ならぬ声を飛ばして自身の従者に指示をしておく。
柔らかな芝生の上へ出た時には、従者が先に待っていた。
差し出された二本の剣を受け取り、うち一本をディークに投げて寄越す。
刃は無いが、総身鉄で打たれた剣だ。
吸血鬼の膂力で扱うことを前提とした、訓練用の剣。]
使えるだろう?
来い。
[それ以上の説明はなく、剣を右手に構える。
全身に纏う気が、戦いに臨むものへと変わった。]
[トールのクレステッド評には、密かに自分の知るクレステッドには勿体ないように思ったが、確かにその存在感は比肩するものは無いのだろう。
語るトールに言葉少なに相づちを返しながら、とても真っ直ぐで好感の持てるマスターであることを再認識した。]
アレク?……アレクシス?
[実は殆どの人の名を知らないのだ。だが、彼の口振りからして彼の養い子のことだろう。]
ええ、此方こそ、よろしくおねがいします。
[クレステッド宛の書簡を受けとれば、これで終わりらしい。
試験らしいことは無かったように思ったが、どこを見られているか解らない故に、静に一礼してその場を辞した*]
ー 私室:来客が帰った頃 ー
[トールから渡された書簡をクレステッドへと差し出し、バスケットを片付けた。]
……ただいま。
…………俳優に、満月ね……
[銀の真祖をまじまじとみやり、それからおもむろに近づいた。]
……よくわかんないな
[その肩口に、闇の薫りを求めて鼻を寄せた。**]
― 訪ね人の部屋の前 ―
[途中何度か人にすれ違えば道を確認する。幸い人見知りの性質でもない為、すれ違う者と気楽に挨拶を交わしたり。一週間のここでの暮らしで顔見知りも出来始めた頃だ。そうして部屋の前までくれば]
――
[予め、呪文の準備。足りない魔力を補うよう、ポケットの中に仕込んだいくつかの材料を右手で握り、左手は贈り物をてのひらの上]
―、――
[本当は贈り物のリボンに自分の血の一滴でも落とせばいいのだが、人様に差し上げるものにそんなことはできない。相手は血に敏感でもあろうし。さらに呪文を唱えて胸ポケットに入れておいた鏡を力の増幅に。術を完成させれば、大きく息を吐き]
……。こんばんは。エレオノーレ様、いらっしゃいますか?
[ノックの後、そう声をかけた]
― 中庭 ―
[夜が照らす芝の空間。
踏めば青い香りがした]
…
[投げられた剣を一度取り落とす。その重さに驚いてというよりは、何か熱いものにでも触ったように。
しかしすぐに腰を屈めて拾い上げ、握りを確かめるように一度振る]
これが、テスト
[一度瞼を閉じて 開く。
相対した褐色の男の気配が変じた。空気がビリと震えるような剣気。
握った剣の柄へ左手を軽く添え、見据えた。
──敵うかどうかは問題ではない]
[地を蹴った。
疾る錆色に緋色が混じる]
──ッ!
[切先は相手の胴、よりも構えられた得物そのものへ打ち付けるように振り下ろされた]
でないと…素直に受け入れられないんです。
解らないから怖くなるんです、僕は。
[ディークなら違う事を言ってくれるかも知れない、と
するように自分の言葉として締めくくる。
その一方で、自分の主に対してはどうかと自問してみるが]
……。
[あまり、変わらない気がした。
目を何度も瞬かせ、目の前の翠をじぃと見つめる。
仰りたい事がなんとなく分かりました、と言いたげに。]
― 教室 ― >>645
[男の掌に指をかざし「欲しいものは、在る」と答える青年に満足気に笑みを溢せば]
“ここには在る”これが魔術の基本だよ。
その場に“在る”と意識すること
このように“在る”と意識すること
そのように“在れ”と意識すること。
“ない”ものには働きかけることができないからね。
[そこまで話せば冷めてしまった紅茶を喉へと流し込み――…]
少し、やってみせようか
[と、自身のジャケットから飴玉を一つ取り出して、空中に放り、掌へと乗せ――…いや、掌から1cm程浮かぶように受け止めてみせたと言ったほうが正しいか]
―返礼の手紙―
[『拝啓
この度は私トール・イニティウムの後継に際しまして、ご丁重なるお祝いの品を賜り、心よりお礼申し上げます。
虹色に輝く天上の花を見ると、貴殿に励ましを頂いているような気がいたします。
執行補佐の任は身に余る重責ですが、血親の名に恥じぬよう全力を尽くす所存でございますので、
今後とも一層のご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
後ほど返礼の品をお持ちしますので、お納めいただけますと幸いです。 敬具』
真祖の君が喜んでくれそうな品を考えてみたが、花を頂いた以上、同じように魔力で作った花を返すのも興ざめかも知れなく。
ひとまず、そうしたためたのだが。]
[見詰め返す雛の瞳は、例え話に何かを読み取ったようだった。
くくっと喉を鳴らし、目を細める。
雛からすればいいお節介だろうが、トールが好きで、彼に幸せになって欲しいのだから仕方がない。]
ふふ。そうだね。
今度ちゃんとディークに話すよ。
でも、理由なんてあまりないんだよ。
ただ彼が愛しく思えた、それだけなんだ。
[この話はそれでおしまい、とぬるくなったカップの茶を呷った。]
― 自室 ―
……アハド殿は、甘いものはお好きだろうか?
[ファミルを見送ったあと、さてどうしたものかと思案していたが。
ふと、立ち止まり。]
ああ…、彼に聞けば良かった…。
[自分以外に気配のない室内で、がっくりとうなだれた。*]
それは重畳。
[礼節とその中に確かな余裕を感じ取るところで、見かけだけではない笑みを浮かべると、アイリス>>643へと与える圧が減る]
そなたのマスターからか…拝見しよう。
[書状を受け取り、目を通す。
挨拶から始まった文を一通り読み終えて一度目を伏せた後]
ブライトン嬢の親も少々癖があるようだな。
[何よりも冷たい笑みを浮かべ]
― 中庭 ―
[剣を一度取り落した様子に疑問を抱いたものの、そこを深く追及することはなかった。
拾い直し、構えた彼の気配が凛と変わる。
間違いない。戦いを知るものの気配だ。]
……。
[疾り来る姿を視線でとらえる。
並の人間では反応し切れないだろう速度。
だが自分の目にはその一挙手一投足がありありと映る。
剣が振り下ろされる軌跡も。]
[間合いに入り、剣が振られた時にこちらも動いた。
ただ一歩、速度とタイミングを合わせて前へ踏み出し、打ちおろされる剣にこちらから合わせていく。
剣の腹どうしが擦れて甲高い声を上げた。
かつりと刀身が鍔に触れた瞬間、手首を返して相手の剣を巻き込んでいく。
力を込めて払えば、相手の剣は宙を舞った。]
良いぞ。
もう一度だ。
[流れるままに彼の脇腹を軽く刀身で打ってから、一歩を下がる。
再び構えの形をとった。]
[書状をテーブルの上にそっと置く]
我を我と知らずにその態度であったか。褒めて遣わそう
そこで…理知と品性を抱くチャイルド。アイリス・ブライトンに問いを一つ与える。この問いはここで答えを出さずともよい。だが答えを出すことを忘れぬな。
[不慣れな夜の子とある彼女へと興味と感心を併せた故に発する]
吸血鬼となって最も大切と思うのはなんだ?
[下問を申し渡した]
― 回想・初めてアレクがお使いから帰ってきた後―
おかえり。
ちゃんとお使いが出来たね。
[モリちゃんと一緒に迷走しつつも、ちゃんと厨房に辿り着き。
無事にエサを取って来れた青年を迎え入れると、彼を傍の椅子に座らせ、約束通り自分について話し始める。]
さて…まずは、どこから話そうか。
[あの夜のことから話せばいいのか。
それとも自分が人としての命を終えた理由から、話すべきか。
話のとっかかりをどこに持ってきたらいいのかで逡巡した後、]
アレクが聞きたいのは、どんな事?
[素直に愛し子に、問いかけた。]
/*
……やっぱりダンスとか嘘なの、閣下……!
(※ますたーの方)
いずれにせよ、売られた喧嘩は派手に買うわ!
[萌え真祖さまではなく、対ますたーで]
……はい。
ゆっくりと、お二人の語らえる時間に。
僕も、機会を作って一度聞いてみたいと思っています。
知りたがりですから、理由が無いと言われた日には
何処までも追求してしまいそうですが。
[冗談とも本気とも取れそうな言葉で締めくくり、
コンラートに倣い残った茶で喉を潤した。
…幾分か、胸の痞えが消えたような気がする。]
― 自室 ―
ああ、ようこそ。今開けるよ。
[廊下から声が掛かれば、短い返答。
扉に歩み寄ってノブを下げた。
現れるのは小柄な黒いフードの人影。
声は性別を感じさせず静かだ]
― 教室 ― >>654
これは“ここに在った”大気へ、一時的に働きかけた結果のものだ。
[そのまま、飴玉を口へと放り込もうと考えたのだが――…レトがウエハースを載せようとしているのを見れば。]
“在る”ということは“存在すると意識すること”
万物に意思があり、またそれに干渉できると考えること――。
そうだね、君がウエハースを乗せようとしてるってことは、“きっと、彼らも手伝ってくれるように在る”んだと思うよ。
[ウエハースがシーソーを思わせる動きでバランスを取った。
食べ物で遊んではいけませんと注意する人が、この場にいなかったのは幸いだろう]
[部屋の中から答えが返り、ほどなく小柄なフード姿が目に入る。室内で目深くフードを被っていることに少しの疑問はわくが、ここに来てから変わった人に出会うことは多い。気にしないことにした]
ありがとうございます。ええと…マス、ター、ステファン・リッシュより、エレオノーレ様へと贈り物をお持ちする、よう…
[なんとか挨拶らしきものを引っ張り出してみるものの]
[なんていうか、慣れない。自分で言ってて違和感しかない。
しかもステファン相手に敬語とか使ったことない。
そんな心の葛藤は眼前の人物に伝わるだろうか]
[力には差がある。
筋量的にも、吸血鬼としても。
強きけもの。無駄のない返し技は舞を見るように美しかった。
軽々と受けられた剣身が、そのまま捩じ込まれて握力の限界を越え]
……っ
[打たれた衝撃で飛んだ体が芝に軽く着地する。
痛み、頭の奥に広がる頭痛に、眉を顰めた]
ふふふ。
ディークが君ほど知りたがりでないといいんだけど。
トールをどきまぎさせてあげるといい。
[共犯者めいた笑みで、ティーポットを取り上げ、もう一杯いかが?と勧めた。
その後は、一度席を立ち、]
今、君の主へ礼状を書くから少し待っていてくれるかな。
[先ほどディークに持たせる書状を書く時に取り寄せた羊皮紙に、羽根ペンでさらさらと数行の文章を書き付ける。
礼状の枠を離れた奔放な内容は、若い血族の不死の心臓さえ躍らせるかも知れないが、まあそれはそれとして。]
[圧倒的な力量の違いを前にしながら、促されるまま剣を拾い上げる。
構え直せば、虹彩の錆へ斑に混じった赤がその範囲を増した]
[駆ける。
先程と全く同じ軌跡で、振る剣に速度と重みを増して。
それでも届かぬ力が刀身を巻き込まれてゆけば、
今度は腕の力を抜いた。上方へ力を逃がしながら自らの身を深く沈める。
脛の高さを狙って足払いをかけた]
―回想・初めてのお使いから戻った後―
只今戻りました。
……当然です、子供ではないのですから。
[こちらが大嘘をついても、モリちゃんは正直だ。
恐らくはトールには筒抜けになっている事だろう。
それに未だ気付いていない内は幸せだ。]
ようやくお話して下さるのですね。
貴方は知りたいことだらけで、どこから……
そうだ。
ひとつ気になる事がありました。
[問い掛けを受け、暫し考える。
モリちゃんを手の上で遊ばせておれば、何か思い出したか
不意に顔を上げ]
貴方の、僕に対する接し方なのですが、どうにも
人間の幼児に当てはまる行動が多いように感じられるのです。
随分と慣れているなと思っていたのですが…
貴方は、もしかして人間と深い繋がりがありましたか?
[敢えて元は人間なのかという言い方は避けた。
その方が多くの話を聞けるかも知れないと、期待していたから。]
― 私室:来客が帰った頃 ―
初めてのお使い。ご苦労。トールはどうであった?
[差し出されたトールからの書簡を受け取り目を通しながら聞く。
丁寧ながらも文字から人柄がにじみ出るようなのは若さゆえだろうと小さく笑みが浮かぶ]
俳優?満月…わからぬことをいう
[書簡を闇にしまい赤子のように甘えるファミルをあやすようにそっと抱きしめた]
― 教室 ― >>666
僕らは人間と違って、しっかり意識する事ができれば、そんなはずはないと思わない事ができれば――…って、知識による魔術は、それが一番面倒なんだけどね。
[常識を取り払えと言われて、取り払える者などごく僅かだ。思い込もうとしても、心のどこかでは信じ切れないものである。
そんな話をしていると「コウモリに変身したい」という要望が飛んできた。
期待には応えたいのだけど――…]
すぐには無理かな、自分を変えるのは一番大変なんだ。
自分ではない生き物になるって事だし、コウモリは僕らより格段に小さいしね……
[紡がれるのは否定。
少しもうしわけない気持ちになりながら、飴玉を口へと放り込み、何か代替案はないかと思考を巡らせた]
[そして――…]
そのままの体で飛ぶことは無理でも、跳ぶことなら――…
基礎を捻ればいけるかもしれない。
[出てきた代替案は代替案になっていなかった。]
幼児…?
すまない、そんなつもりはなかったんだが…
[知らず子供扱いしていただろうかと、焦るが。
続くアレクシスの問いかけが意味するところを知ると、深くうなずく。]
そうだよ――、深い繋がりというか。
俺も、元は人だったからね…。
[アレクシスの瞳を見つめながら、ぽつりと呟くように言葉を落とす。]
『トール様
素敵な菓子をいただき、ありがとうございます。
お礼に、ささやかながらご一席設けさせていただきたいと思いますので、ご都合の良い時間にお越しいただければ幸いです。
その折には、可愛い雛を是非ともご同伴いただきたく。
心よりお待ち申し上げております。
追伸
好意は言わなければ伝わらないよ。
さっさと「好きだ」と言ってしまいなさい。』
[今とて眼前の王者の何を知る訳ではないが、
その風格と身分は一致していたらしく>>658]
寡聞を何卒ご容赦下さい、マスター・アハド。
[名を刻むように、今ひとたび丁寧に唇に乗せる]
……身に余るお言葉です。
[掛けられた呼称には、そっと囁きを返す。
下された問いは、不意を突くもの]
――…畏れながら、若輩者の私が易々とお答えして
良いことではないかと存じます。
あいにくと、答えも持ち合わせておりません。
ですが。…考え続けることは、お約束致します。
[答えを出せない問いは身の内にもある。問うべき人々は既に無い。
統べる者として在る吸血鬼を前に、頭の片隅でまた思う]
[剣を拾い上げ、再び向かってくる姿に瞳がわらう。
相手の気が研がれていく。その気配に。
振り下ろされた剣は、先ほどよりも明らかに重く、速かった。
こちらも全く同じように受け、返す。
その先で剣が不意に支えを失った。]
[雛が文面を見ないうちにさっさと封をしてしまい、雛に差し出す。]
本来なら素敵な菓子のお返しをしないといけないんだけど、残念ながら僕には何もないんだ。
だから、その代わりと言っては何だけれど、君たち二人をお招きしたいと思っている。
手紙にも書いたけど、君からも伝えてくれるかな。
[雛が手紙を受け取ろうと近寄れば、すっと身を寄せて]
[ディークの体が沈む。バランスが変わる。
足払いへと移る体重の移動。
それを捉えて、自身の足に力を込めた。
支えを失い、崩れかけた体勢をそのまま利と変じて前へ跳ぶ。
相手の頭上を飛び越してその背後へ抜け、地に着いた片手だけを支点にぐるりと体を回して蹴りを放つ。
人間では考えられない挙動を難なく見せて、両足から再び地に立った。]
まだだ。
もう一度。
[三度剣を構える。
彼がもつ精悍な体躯と挙動。それに反してどこかぼやけた言動。
それが戦いのさなかに何らかの変化を起こしていると感じていた。
研ぎ澄まされた先にどこへ行くのか。
確かめてみたい、とも思う。]
[辿々しい挨拶に、ふ、と口から呼気が零れた。>>662]
堅苦しい挨拶はなしにしようか。
僕もその方がありがたいたちだ。
贈り物を届けてくれたんだね、ありがとう。
どうぞ、入って。
[入り口を開き、室内に招く。
比較的物の少ない部屋の応接テーブルには、
一通りのティーセットが用意されていた]
すぐに戻って、特訓します!
この感覚の冷めないうちに──
[言いさして、すっかり冷めてしまった紅茶と、茶菓を見やる。]
う、 すみません。
お菓子…持ち帰っていいですか。
[へにゃ、と眉尻を下げて訊いた。]
[黒髪から仄見える形の良い耳朶に、囁きを吹き込む。]
君は、トールをどう思っているの?
好き?
[すぐに見破られたらしいことに苦笑が洩れる。まぁ自分でもかなり無理があったと思うだけに、堅苦しい挨拶は抜きでと言われればすぐににこりと微笑み]
ありがとう。うん、慣れないことはするものじゃないね。
[導かれるままに室内に入り、ステファンからの贈り物を。手渡す前に最後の仕上げ、箱の上四方の角を指でトントン、と順に叩き]
これ、ステファンから。エレオノーレさんに。
[箱を開ければ中には透明なケース。ステファンの指示通り>>545であれば、ここの中には幻覚の
今彼女の眼前にあるは花園で舞う妖精の飴細工、そして妖精の間をころころと、多少不思議な動きながらも転がる小さないくつかの
[勿論、覚束ない態度は了承しているし、
境界なき者が礼節を重視して教えるとの印象もない。
多少の戸惑いは仕方ないだろう。
まあ率直に言えば門前で仕込みをしたら気配モロバレ
なのだが、逆にこの幼童が仕込んだ、と言うのは明白だ。
意図を手繰る思い。]
―――――…な、ぁ、えっ!?
[吹き込まれた囁きの感触や、その言葉の意味。
両方で情けない、変な声を上げた。]
……好きか嫌いかで言うとすれば…その。
好き、です、が。
[我ながら卑怯な答え方だと思う。
しかし、この慌て振りからして二択の意味でなくとも
好意を寄せていることくらいは伝わるのだろう。]
― 教室 ― >>676>>678
え、ええ、と! 無理はしすぎないようにね!
できれば保護者が見ているところで!
[返ってきたのは落胆ではなく――…バランの夜では館の外だった男は目の前の青年がどのようで“在った”のかを知らないため、予想外すぎる反応に驚いた。
猟犬がいれば過渡の無理はさせないだろうと考えて、焦りながらもでたのはそんな注意事項。
「この感覚の冷めないうちに」と聞こえれば、既にある程度の解はあったのだろうという事には思うのだけど、念のため]
うん、どうぞ……ちょっと待ってて、せっかくだから二つ包ませるよ。
できれば感想も聞かせてね。
[持ち帰りたいと言われれば断る理由もない。使用人に菓子を包ませ、その時になれば上機嫌で送り出すだろう]
[箱が開かれる一瞬、右手を微かに引いた事を
客人が気付いたかどうかは知れないが。>>680]
…………ん。
[玻璃の鳥籠が開いて花が舞った。
動物達が妖精の間をよちよちと転がり、愛嬌を添える]
[率直に零れでた感想>>664。素早く繕う様子は、何事もなく流れるように許すと態度で示す]
なぁに…もしマスターの地位にありて我を知らぬならば、そのような蒙昧は生かす価値もないが、そなたはまだ産まれたての赤子。赤子が礼を逸したところでそれを怒るのは筋違いであろう。
[無知>>672を責めることはなく、その点において、他のマスターにすれば耳目を疑う寛大さを披露しているといえる。実際として使用人が先程から挙動不審だ]
我が評したのだ素直に受け取るがよい…最も、マスターの教育ではなくそれはそなたの素養であろうがな。
[一昼夜、一週間程度で身に着く礼節ではないとこちらも感じたまま述べる]
……やはり。
そうではないか、と思っていました。
貴方も、望まぬ道を歩まれたのでしょうか?
[だから、自分に対して好意的な態度を取るのか。
問い掛けにはそんな意味も潜ませる。]
無理矢理に未来を奪われ、歩むべき道が一つしか無い中を
進んでこられたのでしょうか。
[互いの目線が絡み合う。それでも顔を背ける事はせず。]
[ブーツが相手の体を捉える事はなく、
消えた軌跡を追う前に死角から衝撃が全身を抜け、また軽い体が跳ねて芝に叩き付けられる]
…、
[蹴撃を受けた身には痛みを感じなかった。起き上がり、
ぬるいものを感じて耳に触れる。
耳孔から垂れていた血が指を汚した。そのまま鼻血も拭う。
頭痛がする。
戦えと迫る声]
──…はい
[眼差しに乗る色は緋一色。
剣を拾い、切先を黄金へ向けた]
さて、我からすればそなたら若輩と呼ばれるものほど答えを知りやすいと思っておるよ。時を重ねるごとに忘れ摩耗し無気力となり小石ほどの価値に堕ちる…いや、消費するだけまだ小石のほうが価値がある。そのような老害もこの世にはいる。そなたやそなたの血兄弟のほうがよほど愛する価値があるというものだ。
――ゆめゆめ考えるのを忘れるな。それがブライトン嬢の今後を価値あるものとすることにもつながるだろう。
[問いに答えなくてもいいのは予めいったこと。約束をすればそれだけで満悦といた笑みを浮かべ]
さて、そなたのマスターへと返事の書状をこれより書くが…何か上申あらば許す。
[書状にあったことは果たした。ダンス等については知らぬ...は、ただアイリス個人としての問いを許し、ペンと紙を取り出した]
ロー様
あなたならば
もしも あなたの子が
その意を裏切れば、 如何される?
[かそけく問うた声は裂帛の気合いに変わり、
駆ける速度は思考を止めた獣のそれに]
──ァアッ!!
[三度振り下ろした剣は、打ち当たる寸前タイミングを外すように更に前へ踏み込みながら軌跡を曲げた。強引に鉄へ鉄を叩き付ける。
二度同じく剣を受けた部位へ、衝撃を。
腕が折れるより先に金属こそ砕けよと]
− ステファンの教室 − >>682
[三度、訪問先を驚かせてしまったことを改めて反省しつつ、「できれば保護者が見ているところで」の指摘に大きく了承の意を示す。
彼も、自分の手元にあるチャイルドを見守っていることが如実にわかった。
そして、ステファンは菓子を持ち帰ることを許してくれたばかりか、二つに包ませ持たせる。]
お土産まで、ありがとうございます。
[「できれば感想も」と言われた時には、わずかに怯んだものの──実のところ、吸血鬼となって人の生き血を糧にするようになって以来、人の食べ物の味がよくわからなくなっているのだった──ロー・シェンに協力してもらう明白な口実も用意されたので、きっと大丈夫と、緊張を解く。]
それでは、失礼します。
──良き星の巡りを。
[楽士風に柔らかな身のこなしで一礼し、魔術師の部屋を辞した。**]
[自分の囁きが雛にもたらした反応を確認し、頬を緩ませる。]
ふふふ。
君とトールは、ある意味似たもの同士だね。
結果を知るのを楽しみにしているよ。
[彼を戸口まで送り出すと、またね、と鷹揚に手を振った。]
無理矢理というのは…、少し違う。
[長い髪と同じ、夜色の瞳と視線が交差すれば。
その湖面のよう静寂な美しさに目を奪わる。
しかし続いた彼の問いかけには細め、ゆるく頭を振った。]
人間の頃は、これでも武器職人だったんだ。
工房勤めだったけど、親方から「たまには親孝行してこい」って…お休みをもらって。
母さんと弟と一緒に、初めての旅行に出かけたんだ。
[記憶をたぐるように、何処か遠くを見るように、ありのままを語り始める。]
……ところが乗っていた列車が事故にあってね、街からは遠く離れた場所で土砂崩れに巻き込まれて。
脱線して横転した客車に、石炭を積んだ後続車が追突して――5日間に渡って燃え続けたらしい。
[蒸気機関車の構造や、木製の客車、様々な要因と不運が重なって起こった事故。]
その時事故から救ってくれたのが、俺の血親だよ。
一週間でこれを覚えたのか。
リッシュ殿も、教えがいがあって楽しんでおいでだろうね。
[フードの傾きが少し戻る]
ここでの生活はどうだい。
もし良かったら、少し茶飲み話に付き合ってくれる?
[眼前の乱暴な程の吸引力に意識は奪われ、主の用無き折は存在を潜めるべき従僕が、不審な挙動を抑えきれずにいる事には気づかず>>684
彼ならば己の言葉通り、一瞬の躊躇いもなく生殺与奪の力を行使するだろうと思わせる。
再び自分へと授与される評を聞けば、唇が薄ら弧を描き]
…光栄に存じます。お言葉を、確と胸に戴きます。
[――忘れ、摩耗する。アハドが滑らかに口にした言葉>>686
それは自分の懼れの一つな気がして、言葉少なに相槌を挟む。
けれど、もう一度念を押す命には、ゆっくりと頷いて]
考え続けます。
…例え答えが、出せずとも。それだけは。
[闇の王に、自分に、他にも。]
[立ち上がる仔の姿に眉根を寄せる。
なにかが、尋常ではない。
夜風に乗って、幽かな声が届く。
それに応えるより先に、戦気が吹き寄せた。]
―――!
[前の二回を明らかに凌駕する速度。
なんらかの枷がひとつ外れたと思わせる膂力。
打ち合った剣が上げた悲鳴を耳に捉え、自ら柄を離した。]
[折れた剣の先が飛んでいくよりも早く相手の懐へ沈み、肩からぶちかます。
吹き飛ばぬよう加減した一撃から、流れるように相手の腕を掴んだ。
そのまま、背中の側へひねりあげる。]
ここまでだ。
[無理に暴れれば腕が折れかねない形に肘を極めて、相手の反応を見定める。]
─── 俺の子が裏切ったならば、俺の手で滅ぼす。
それが親の責任で、覚悟だ。
[低く答えた言葉に、一切の躊躇いはない。]
[評議会の思惑などどうでもいいと思っているので、元よりコンラートに試験をするつもりなどはない。
形式上、雛――アレクシスを迎え入れたが、コンラートにとっては単に茶を飲んで身の上話をしただけのつもりである。
評議会から試験の結果を問われても、適当に合格で済ませる気満々だ。
……というような思惑は、あとで何かあった際にトールと雛に迷惑のかからぬよう己の胸に収めていた。]
[どうぞ、と掌で席を示し>>701]
そう? それも期待の表れなのかも知れないね、
……倒れる?
[斜向かいの席で、添えられたメッセージを手に取る。
プレゼントはテーブルの上に飾られる事となった]
一部、と言うのは……もしかすると、
これから尋ねる事に関係があるかな。
血には慣れたかい。
……。
優しい血親なのですね。
[答える言葉は短い。
彼は自分とは違う、彼は救われた者であり
奪われた者ではなかったのだ。
だから、何故自分に対して親身になれるのか、
という部分が解らなくなってしまった。]
― 教室 ― >>692
いえいえ、どういたしまして。
[おそらく用意しても手を付けないだろう
柔らかに送られた一礼は、格式張ったものとは違うが、これはこれで絵になるのではないかという華がある。]
今日は楽しかったよ、ありがとう。
――君に良い風が吹きますように。
[懐かしい言い回しを使い、部屋を去る青年を見送るのだった*]
とは言っても、俺が意識を取り戻したときに、
すべて血親から聞かされたんだけれど…。
当時、大きく新聞にも取り上げられたから、嘘じゃない事はすぐにわかったよ。
生存者はいないと書かれてた――、
俺の…、家族も……。
[そこまでを話せば一息つき、再びアレクシスを見つめた。]
[書状をしたためようとする素振りに、これにて遣いは済んだと知る。
社交には欠かせぬ儀の一つとはいえ、ダンスの教授を請えとは、
趣旨を鑑みれば妙だとは思ったが>>687
仮初の主は、不必要に嘘を吐くよりは無言を選ぶだろうと
判じていた。自分の見立ては、どうやら見当違いだったらしい。
速やかに認識を削除、上書きのち、傍線を引き]
――……、
[生まれながらの王者然とした様を目の当たりにしていると、
独りの時よりなお多く、繰り返される問い。
彼であれば、造作なく答えを下すのかも知れない。
――けれど、自分は彼ではない。
形に成り切らない言葉を、敢えて口にはせず]
……また、閣下にお目通りできる栄を賜れましたら。
幸いに存じます。
[静かにそう言い添えて、主への書状を御願いする]
[緋色が爛と燃える。
鍛え上げられた鋼のような褐色の魔物へ──
このつよきもの へ ]
………っが
[暴れる動きで腕が悲鳴を上げる。
その痛みを感じないまま身を捩り、体をはねさせて、
揺るぎもしない逞しい腕の方へ顔を向け、
全身の輪郭が崩れた。
溶けるように掴まれた腕ごと緋色の霞へ変じて、
『獣』の形に新しく収束する]
──!
[若い男の形から、栗色の体毛に黒の斑点をもった大型のリンクスに変じると、身を躍らせ、
男の肩へ爪をかけて喉笛を引き裂こうと牙を剥いた]
[彼の姿が廊下の先に消えてから、ふと思い出した。]
……ああ。しまった。
[細い眉を顰めて、嘆息する。
彼にバランの話を聞いておくんだった、と後悔した。
バランが彼ら血子にどのような扱いをしていたのか、
評議会が動くまでに、あの城で何があったのか。
生まれて間もない仔を時間稼ぎの使い捨ての駒に置いて行くくらいだから、相当にろくでもない扱いだったのは明らかだが。
もしかしてディークがあんなふうに壊れてしまった理由を知っていないか、尋ねてみるればよかったと思った。
それとも、まだ1週間しか経っていないのに、心に傷を負ったであろう雛に、非道な血親について思い出せと言わなかったのは、正解だったかも知れないと思い直した。**]
そうだね……、優しい方だった。
[アレクシスの言葉を認めるように肯いて、再び言葉を続ける。]
その時、どうして俺を助けたのか聞いたら、こう言ったんだ…
「もったいない」って――。
[変な方だろう? と苦笑する。 ]
どうやら、若い命が消えていくのが酷くもったいなくて、つい救ってしまったらしい。
もう50年も前の話だよ、
――昔の…話だ。
[君が聞きたい答えだったかい? と首を傾げてみせる。もし、まだ聞きたいことがあると言えば、答えるつもりでいた。]
あの夜、血親の言葉の意味が少しだけ分かった気がした。
[放っておけば、夜の闇に溶けてしまいそうな。
夜色の髪と瞳を持つ青年を、失いたくないと思った。]
――もし、評議会が何も言わなくても。
俺は君を連れて返ったよ…自分の城にね――。
[まるで消えてしまいそうで、放っては置けなかったと正直に言えば。彼はどんな顔をするだろう。]
ヨーロッパオオヤマネコちょうかわいい(ぽわわ〜ん
学名はリンクスリンクスです。くぁわいい(ぽわわ〜ん
尻尾長かったら完璧なのに。
――――…。
トール様。
ひとつお聞きします。
[家族を喪い、ただ「勿体無い」というだけで
永い永い夜の時を過ごす一族となったこの彼は、
自分とは違う。]
[解っているのだけれど。]
寂しくは、無かったですか。
[彼の他に血兄弟の話が出ない所から察するに、
当時救われた人間は彼一人のみなのだろう。
その上での問いだった。]
成程。
[魔力の総量とは、なかなか難しい所だ。>>708
誰しも、持ち得る素養というものもある。
渋い顔には、フードの下で瞬きをひとつ]
そう。では、今日は血を含まない方にしてみる?
[答えを聞けば、望まれた方の茶をカップに注ぐ]
僕の娘も似たようなものかな。
今は、ほんの少しの量を混ぜて摂っているよ。
[腕の下で、仔の動きが鈍くなる。
鬼気が減じた、と感じたのは一瞬のことだった。
肉体の損傷を厭わぬ動きで彼の顔がこちらを向き、煮え滾る銅のような目と視線が合う。
不意に捉えていたはずの感触が失せ、燃えたつ陽炎が目の前で揺らいで形を変えた。]
は、ッ……!
[凶暴な肉食獣の爪が肩口を捉え、血が飛び散る。
それ以上を許さずに上体を逸らして、鋭い牙に空を噛ませた。]
[そのまま後ろへ一回転、身体を宙に跳ね上げる。
軌道の頂点で人の形を崩し、芝を踏み散らして降り立ったのは四足の姿だった。
鬣と同じ金を宿した瞳で戦いの獣をひとにらみし、喉を逸らして鼻先を天に向ける。]
ガアアァァァ ォォォ−−−ン
[迸るのは心を砕き恐怖に染め変える獣の雄叫び。
響き渡った城館の中で使用人たちが震えあがりへたり込むだろうが、この際気にしなかった。
残響が漂う中、再び相手へ視線を向ける。
鬣を逆立たせて威圧する姿には、群れの長としての気迫が漂った。]
まぁ、総量が上がらないなら効率化を目指すしかないんだけどね。今はまだ、使うのがやっと。
[これからだよ、と気楽にへらり笑い。
血を含まない方にするかと問われれば、そちらでお願いする]
アイリスもですか。
まぁ…いきなり、飲めって言われて素直に飲めるものじゃないからな…
[それでも。完全に拒否しきっていた最初の頃からはだいぶん馴染んでいるのだ]
まだ、一週間だからね。
[一週間でこれ。むしろ、いつ全く平気になってしまうのかと、恐怖すら感じるのだが]
寂しくないかと言えば、嘘になるけれど――。
それでも紳士的で親切な俺の親は、本当にしてくれたから。例え夜の一族の気まぐれでも嬉しかったし…。
だから、与えられた命を粗末にしないように、
精一杯だったよ。
[血親と、彼が己の血と魔法で作り上げた従者に囲まれた奇妙な生活は。
長い時を過ごし、信頼を得て1つの家族であった。]
/*
楽しげなますたーを微笑ましく見つつ。
現状手を焼かせる一方のげぼくは、これからどう動くか考えちう…
真祖さまにお悩み相談した方が、スムーズだった気はしつつ。
きっちり察してサイン出して下さってたし。
真祖さま、やっぱり素敵よ。
ますたーとの事前ご相談で、最悪らぶ芽生えなくとも已む無し、くらいの博打を御所望だったようなので(ついでにメリー?バッドエンド好きそう)、多少手ごずって戴いてもいいのかと踏んでいるんだけど、どうなのかしら……
シリアス寄り過ぎ?展開遅過ぎ??
せっかく相方さんなので、楽しんで戴きたいのだけど。
予想以上に頑固な娘でごめんねますたー。
娘はね、ハッピーエンドもラブコメ?路線も大好物なのよ?ホント。
/*
あとね。
こちらのらぶを育てること以上に、
ますたーのらぶを引き出す道筋が、正直全くみえない。
文字通りまったく。
ああん。
要は慣れだよ。気長にね。
[魔術の習得においては気楽に話が進むものの、
糧の事に話が及べば、そうもいかないらしい>>713]
……血を摂ること、どう思う?
[考え続けるという、意志を真っ向>>695から受けとり顎を僅かに引いて頷く
それ以上の言葉は帰って装飾過多となり、不必要と断じると、書状を書き終える]
ご苦労であった。この世余すことなく我の庭だ。我の庭にいる限りまた会うこともあるだろう。我もまたそなたの会う次の時間をこれより愉しみにしていよう。
[上申>>705はなく、次をと望む雛の心地よい礼節を受け笑みを返すと、アイリスのマスターへの書簡を手渡した]
それと、これは我からの個人的な願いだが、我が養子。ファミルと会った時は気に入ったならば親しくしてやってくれ。
[書簡を渡すためにアイリスに近づいた際に、静かにそんなお願いをした]
ご苦労だった。しばらくは我もここに逗留している。何かあれば尋ねるがよい。
[そうしてお使いを終わりをいえば、真祖にあてるためよく訓練された使用人が、帰りの扉を開いた]
― 返礼の書簡 ―
そなたの養子は理知と品性を持ち、畏れを知り恐れをせぬ子であった。
我を試金石としたところで問題がなかった辺り似たもの親子なのであろう。
[気づいているというのを筆に隠すことはせず]
いかなる貴婦人と育つかはマスター・エレオノーレの尽力にもかかろう。
子の育つ姿を愉しみにしている。
[作法よりも私信めいた書簡をしたため、アイリスの主へとあてた*]
……十分です。
貴方が、元は人間だという事が解れば、それで。
ただ、ひとつ残念なことがあるとするなら…
貴方の城に行ってみたかったですね。
[50年もの時を過ごしても、人はこれだけ真っ直ぐなままで
居られるものなのだなと思い知り、彼についての大部分を
聞いたような気になって、ほんの少しの本音を混ぜて
今この時は話を打ち切った。
まだ問いたい事柄はあるにはあるが、そちらはもう少し
時間を置いても構わないだろうと、問いに開かれた唇は閉じた。]
[雄叫びがいかづちの烈しさで大気と館を揺らした]
[立ち上がり追おうとした山猫の四肢は吹き寄せる闘気にぐらり よろめき、
何度か地を掻く動きを最後、
力萎えて頽れる]
…
[漆黒に金の鬣を戴いた狼の神と交錯した視線は
急速に赩から錆色へと彩度を落とし、
やがて力無く輪郭を明滅させて元の人型へ溶け戻った]
[弛緩する体を芝の上に投げ出して、喘ぐ。
頭痛も少し軽くなっていた]
……、
[何か言おうとする口も動かない。
上げかけた頭をへたりと落として、瞼を閉じた]
行けるよ?
この試験期間が終われば、きっとね…。
[ここにずっと滞在するわけではなく、あくまでも訓練の期間だけの逗留であると告げ。
アレクシスの残念そうな声と、彼の明確な希望の言葉に喜色を隠せず笑みを浮かべたのだった。*]
では、それまでに…
決着を付けなければならないのですね。
今までと、それにしがみ付いている僕自身と…。
[今も故郷に暮らす家族を思うと胸が締め付けられるような
感覚に襲われる。
しかし、7日前のあの日に比べると…
それも幾分か軽くなっていた事は、自身では気付けない。*]
[すっと近づく距離。静かな囁きは、何処か今までとは違う。
ふわりと温かく肌に纏うような]
…お安いご用ですわ、喜んで。ファミル様、ですね。
閣下の御子息でしたら、私はきっとお慕いするかと存じます。
[口にしてから、闇の王を慕い初めている自分に気づいた。
彼の子はどんな子なのだろう。きっと気に入り手に入れたのだろう。
彼に、誰かに求められただろう子が、初めて羨ましく感じた]
どういった方なのですか?ファミル様は。
[それが、主が一度は所望した金髪の青年なのだと知るよしもなく。
廊下ですれ違う時にでも気づければと、何とはなしに尋ねる]
[四足の姿のまま、倒れ伏した仔へ歩みよる。
首を下げ、汚れた頬を幾度か舐めてやってから、人の姿に戻った。]
立てるか? ───無理そうだな。
[ちらと笑って、従者を呼ぶ。]
[横たわるディークの隣に胡坐をかいて、懐からコンラート宛の書状を取り出した。
やってきた従者からペンを受け取りながら、ディークに視線をやる。]
血親は選べなくとも、その血と永生はおまえのものだ。
生きる意味を考えろ。
おまえの意思で、先を選べ。
[戦いの熱が抜けた静かな声で、言葉を投げる。]
[受け取ったペンで自分の指先をつつき、血を含ませた。
それで、書状>>608の下に文言を書き加える。
『貴殿の養い子には大いに見込みがある。
この先を行く力を十分に持っていると認める。』
その言葉と血文字のサインだけでなにが起きたかは察するだろう。
書状をディークの懐に差して立ち上がる。
心得た従者が2人、ディークを担架に乗せた。]
己の力を己のものとしろ。
それがおまえとおまえの大事なものを守る。
[祝福がわり、そんな言葉を送った。]**
― 教室 ―
…はぁ
[レトが帰った後の教室で、男は一人窓の外を眺め、ため息をついた。
視線の先には城館の森が、星明りを吸い尽くそうと言わんばかりに闇を湛えているのだが、男の胸中に過るのは、朝の陽射しを湛えた森で。
要は、レトに会ったことで、思い出してしまったのだ。]
…………はぁ
[もう一度大きなため息を]
[静かな声へ少し髪を揺らし]
弱きは 罪
[もっと自分に力があったなら。
愛した人達を すべてを まもれたかもしれない]
……ちからを
[与えられた言葉が零れおちないように、記憶の匣の中へかき寄せた*]
そういってもらえると有難いが…そうだな
[アレが自分で選び抱えたものは少々一般の吸血鬼とは逸脱している。
それは口にはせず、まずは見た目を説明した後]
少々ひねくれてるが聞き分けのいい子だ、だがこうと決めたことは曲げようともしない頑固で強情な子だ。
直接聞いてはいないが、あるいはそれがあの子…ファミルの吸血鬼として選んだ自分なのだろう。
読書が好きな子だが、他に趣味がないなどと抜かしおった。もしかしたら人であったころ、それ以外のことを作れなかったのかもしれない。それを同情はせぬが、高く新しい目線をもっていきてもらいたい
もちろん高く新しい目線をそなたらもまた持つと良いと思っているな。
[最後はどこか願いを込めるような感想を口にして]
ああ、我がこういっていたことは内密に頼むな。
[そんなお願いも追加で頼んだ]
[どう思う?と問われたけれど、その質問は自分に向けたものだろうか。それとも同じく素直に血を飲めない、彼女の娘に向けたのだろうか]
…できれば、摂りたくありません。
ただ俺一人であれば、死んでも仕方ない。
けど…
[背負うのが己一人の命ではないだけに
― 自室 ―
アレク…、大丈夫だろうか…。
[聡明で育ちの良い彼のこと、礼儀作法などは全くといって良いほど心配していない。
それでも、小さな子供ではないのだからと自分に言い聞かせる程に不安が込み上げ、心配してしまうのは養い親の性か――。
もしかしたら何か面倒なことに巻き込まれていないだろうかと、部屋中をうろついていた足は扉の方へと向かう。]
[労いの言葉を聞けば、部屋を辞す頃合いだとすっと立ち上がり>>711]
この度は、おもてなしまで戴き、勿体のう存じます。
どれも美味しく戴きました。
[主が茶や菓子に手をつけるのを見届けてから、供されたそれらは味わっていた。
どれも、上品で抑制のきいた甘味に仕上がっていた。薄めた血を口にすることには、すっかり慣れてきている]
[常の挙動を思い出しつつあった従僕は、普段の訓練の賜物を発揮し、隙のない丁重さで扉を押さえる]
――…『何か』、が。もし、形にならない時であっても。
また、拝謁をお赦し戴けますか?
マスター・アハド。
[戸口に立って最後、彼を振り返り、微かに揺らぐ声をそっと押し出す**]
[そういえば
あんた『一本』 って言ってたじゃないか。どこがだ。
そんなことをちらっと思ったりも。
ここまで、と言われながら続けようとした自分の事はこの際、棚に上げ]
[何かに体を持ち上げられれば、その従者の手を掴んで請う]
すみません
かえる。 ここから へやまで
みち案内を 頼
[このままお連れします、という声はほとんど聞いておらず。
その前に湯を使うべきか、こんな蜘蛛の巣やら草まみれの格好で帰って、コンラートが心配する… 等
担架で運ばれる揺れに吐きそうになりながら考えていた]
ところで、トール様。
少々お伺いしたい事があるのですが―――…。
[彼に時間が無ければ一言二言で終わらせるつもりで、
伝わり易いよう、短く済むようにと率直に疑問を
ぶつける準備を整えた。**]
[一人であれば、か。>>725
言葉に思うのは、よき師に巡り合ったが故に
死を思い留まるに至ったのだろうかと言う事。
もしくは、生きてまた一目見えんとする相手のあるか、
またあるいは、無差別な狩りと血族化によって
命を落としたであろう他の人間を思ってか。]
慣れは、忌むばかりの事ではないと思うよ。
魔術の効率化も、意識を割いて行う事を
無意識に預けられるようになって、練度が増すものだ。
ただし、鈍麻してもいけない。
君から見えている君自身の奥、
言葉に浮かぶ前の『大きな自分』に耳を澄ますこと。
よく感じられるようにね。
― コンラートの部屋近く ―
おろせ
[見覚えのある廊下に景色が変わる頃、ぐってり閉じていた瞼は近付く絆の気配に開かれた]
じぶんで かえる。
[起き上がらんと担架からころがり落ちそうになれば、従者達も慌てて床へ降ろす。
ぐらぐら、ふらふら、立ち上がって、胸元の書状を確かめれば
壁に指先をつけて歩き出した]
[金髪白皙とその容貌を聞けば、おそらくは、と察するものがある。
彼が、エレオノーレが自ら子にと望んだ青年なのだろう。
この王者が相手では、勝ち目のない競争だったろう。
そうして、自分はエレオノーレに引き取られた]
[捻くれ者で、聞き分けの良い、こうと決めたら頑固で強情な。
自分にも思い当たるふしがないではない評に、沈黙を守る]
…よく、ファミル様のことを御理解されているのですね。
それに、父君としての御展望も、既に抱いてらっしゃって…
ファミル様は、お幸せなのではないでしょうか。
今お聞きした限りで、他の葛藤や辛苦は付き物と思いますが。
[ぽつりと漏らすは、独り言めいた囁き]
トール様。
貴方は僕をどんな風に見ていらっしゃるのですか?
教えて下さい。
僕は貴方にとってどのような存在なのでしょうか。
[さあ、「何故」を明確な答えに変えて行こう。]
[扉を開けて、
最初の言葉はきっと]
ちゃんと着けた
[無残だった到着までの過程は省いて事実だけ。
預かった返書を差し出そうとしながら**]
[金髪白皙とその容貌を聞けば、おそらくは、と察するものがある。
彼が、エレオノーレが自ら子にと望んだ青年なのだろう。
この王者が相手では、勝ち目のない競争だったろう。
そうして、自分はエレオノーレに引き取られた]
[捻くれ者で、聞き分けの良い、こうと決めたら頑固で強情な。
自分にも思い当たるふしがないではない評に、沈黙を守る]
…よく、ファミル様のことを御理解されているのですね。
それに、父君としての御展望も、既に抱いてらっしゃって…
ファミル様は、お幸せ…なのではないでしょうか。
今お聞きした限りで、他の葛藤や辛苦は付き物と思いますが。
[ぽつりと漏らすは、独り言めいた囁き]
[金髪白皙とその容貌を聞けば、おそらくは、と察するものがある。
彼が、エレオノーレが自ら子にと望んだ青年なのだろう。
この王者が相手では、勝ち目のない競争だったろう。
そうして、自分はエレオノーレに引き取られた]
[捻くれ者で、聞き分けの良い、こうと決めたら頑固で強情な。
自分にも思い当たるふしがないではない評に、沈黙を守る]
…よく、ファミル様のことを御理解されているのですね。
それに、父君としての御展望も、既に抱いてらっしゃって…
ファミル様は、お幸せ…なのでは、ないでしょうか。
今お聞きした限りで、他の葛藤や辛苦は付き物と思いますが。
[ぽつりと漏らすは、独り言めいた囁き]
思い悩んでいる事があるなら、せっかくだから
ここで吐き出して行くと良い。
少なくとも、聞いてあげる事は出来る。*
[それから、白き蝶の君を抱き寄せて、
酷く疲れた声で囁く]
渇いた
…欲しい、コンラート すこしだけ いい?
高く、新しい目線を――…?
…もしか、吸血鬼として生きるとして。
私は、そんな事が、できるのでしょうか。
[先程は使いそびれた上申の機会。
問いたかったこととは少し異なる、どこか似た言葉が口を突いた。
不適切な言葉だと気づいて、慌てて打ち消すと、ご内密に致しますと約束をする]
そう謙遜ばかりしては嫌味に聞こえてしまうぞ?
なにせ、今、そなたらは一番可能性に満ちている時期なのだからな。
[使いという儀礼が終われば少々からかいを含む色が滲み出し、歓待するものとして己から崩してみることで、社交辞令以外にも含まれる笑み>>719を容認する空気を作る]
うむ、ここは借り物の場所ゆえ少々不便もあったが満足できたなら幸いだ。
[真祖へと与えられた使用人は厳選とされていた。それゆえ血の摂取できる形と、それに合わせた味付けは...にとっても褒めおくべきものである。
礼を知る来客が去るにあたり立ち上がり見送るところ、振り返る榛色の雛の声>>727は訴えるように鳴くようにも聞こえた]
赦そう―――但し、その『形にならない何か』に対し、自身で辿り着けこうとする怠惰を行い、自身で辿り着かねば価値がなきものであるというならば、その問いに対する答えを我は発することはないだろう。
目を逸らさず生きるがいい。
[気をよくする相手であろうとも、そこを甘やかすことはせぬと一つ釘をさした後、追加に一言を言い添えた]
[エレオノーレが、ファミルを求めたとは知らず、あるいは目の前の子が養子となったかもしれない未来のことも知りえないこと]
理解せねば始まらず、興味をもたねば、尽きてしまう関係は惜しいだろう。
幸福の形はそれぞれとはいえ、我が親としているのだ。幸福であるのは当然のことだ。
[当然と言い切るのは圧倒的な自負。
間違った解釈や極端で荒削りだとか思われている養子の心、養親しらずである]
できるに決まっておろう。できぬと思うから遠いのだ。なして当然である道だと思えば近く見えよう。
[榛色の雛の不安にも聞こえた上申にあっけなく応える]
ブライトン嬢は今までどのような空気を吸って生きてきたかは知らぬが…こうして違う世界を少しは見たはずだ。
人間であった過去を捨て去る必要はないが、過去の己を更なる高みに連れて行かねばならない。人の一生分では足りない生が待っているのに、人間でいた器だけでいてはすぐに溢れ、歪んでしまう。
そうして歪んだ末路の一つが、あの…犬畜生にも劣るそなたらを吸血鬼にしたバランであろう。
悪しき例を知るものならば、堕ちることなく貴く尊厳をもった吸血鬼がいるのだと、証明できる存在になれる。
…如何なる形をもってかはわからぬが、我が保障しよう。下をみて生きねばならぬほど、我が庭たるこの世はつまらないものではない。
[陰りも揺らぎもない自信を声にのせ、アイリスへと断じた]
……あれに、牙を、突き立てられたい、だなんて…僕は、どうかしてる……
[一週間前、血を求められた時から、募り始めたもう一つの欲求に、男は一人、息を吐く。
想像してしまったのだろう、首筋から肩口までを指先でなぞり、陶酔するように目を細めたあと……
吸血鬼を灼く血潮の男は、己の血では叶わぬことだとふっきるように首を振り、代替行為として自身の肩口を強く引っ掻いたのだった。]
/*
意訳:血だと理解させながら飲ませたい
ドS版の「血液ぶっかけプレイしたい」と変わらない気がする……
病むのは楽しいね…(とおいめ
ステファン変態すぎてごめんねダーフィト!!(いいえがお
[慣れは忌むことばかりではない、との言葉>>731]
そうですね。経験はとても重要で、経験をつむには時間が必要で…
……。
[やはり言葉は途切れる。吸血鬼として生きるには吸血鬼としての力、だけではなく必要なものは“時間”。その時間は、己の中の人間だった頃の常識と心とを引き換えに得られていくようで。
本音でいえば、その“時間”を止めてしまいたいと、思ったことがないではなかったが。けれどそれを実行に移すには、心を残してしまいそうで。
自分と引き換えに失われてしまったいのち達
祖母との思い出を語り、束の間寂しさを滲ませた彼>>283
それらを置いて、自分が消えれば。
彼らの死を記憶するものがいなくなる
寂しさを感じても、それすら気付かぬまま日常を暮らしていく
――それは、とても悲しいことだと思う]
大きな自分、ですか。
[自分の気持ちの、本音の部分を忘れずに感じろと。
本音の部分は、きっと『弱さ』なのだろう。
吸血鬼として生きていくと決めた自分と、強くなりきれない自分と。
それすら忘れずに大切にしていけと、そう言うのだろうか]
/*
連休中夜昼逆転ぎみで、昨日久しぶりに仕事だったのだけど…夜昼逆転を無理やりに戻したようなものだから、一日とても眠かったんだ。
素直に早めに寝るっていえばよかったんだろうけど、あんまり会う機会がなさそうだったから、お話したかったんだよ…!
[優しく抱き締める腕に、身を委ねる。]
不本意だが、……落ち着く。
[この一週間で、大分馴染んでしまったのかもしれない。]
ねえ。長く生きるってどんな感じ……?
[途方もない時間を過ごしてきたであろうことを思う。]
― 中庭 ―
[ディークが零した囁きが、耳朶をかすめていく。>>723
笑み浮かべるのみで、否定も肯定もせず。]
[運ばれゆく姿が屋内に消えるまでを見送ってから、自身も踵を返した]
上出来だったようだな。
[聞こえてきた声の調子に、首尾を悟る。]
俺ももう戻る。
直接報告を聞こう。
[あとは会ってから。
なにを得たのか知りたいと、期待が滲んだ。]
― 自室前 ―
[足早に城館の廊下を抜け、自身の部屋に向かう。
もうレトは戻っているだろうか。
扉の前で髪を振り、草の名残を振り落してから扉を押した。]**
― 教室 ―
[男は窓から外を眺めたまま――…深い深い溜息を。
やがて、何かを振り切るように首を振り、視線は客人を迎えていたテーブルへと注がれる。]
……ダーフィトの方もそろそろ終わったかな。
[使用人を呼びつければ、客人用の混ぜ物入りのティーカップと、自分用の混ぜ物なしのティーカップを下げさせ、新しいものを用意するように言いつけて……]
――――――――
[送り出した生徒へと、声無き声を送ってみる。声なき声の使い方は教えたことはなかったのだけど、そのことはすっかり忘れてしまっていた。]
やあ、ダーフィト、お使いは終わったかい?
[その声は、先程までの思考が思考故、少々取り繕ったように聞こえたかもしれない]
[やがて男の目の前に、茶葉と茶器、茶を淹れる為の沸かした湯がやってきた。
あれは紅茶自体の味にうるさい上に、見てしまったなら飲むのに抵抗を覚えるだろうから]
[その後エレオノーレとはどんな会話を交わしたか。もし>>690を聞かれれば、あっさりと種明かしはするだろう。部屋を辞する時には弱音を吐いたこと、少しの後悔と共に謝罪を口に乗せ]
……。
[部屋を出た時には、少しは気も晴れているだろうか。そんな所に、不意に頭の中に聞こえた声]
、あ?なんでこんなとこに…
[声が届く距離にいると思った人物は見当たらず、きょろきょろと周りを見回し。不思議そうな顔はするも声はたしかに彼のもので]
……。教室?
[空耳と思うにははっきりとしすぎた声。これは相手に届いているのだろうかと、けれど届いていないなら独り言にしかみえないと、潜めた声で話しかけてみるけれど。当然声は届いていないらしく返事はない。
しばし悩んだ末、教室に足早に向かった]
― 教室 ―
[走る、まではいかないものの、周りから見ればかなり急いでいると思われる歩調でいつもの教室に向かう。
ばん、と勢い良く扉を開けてそこにステファンの姿を見れば]
あれなんかやった?!
[声に含まれるのは、警戒の色]
― 教室 ― >>747
――――痛っ!?
[何の返答もなかったから、まだ時間に余裕があると思っていた。
それになのに、勢い良く扉を開けられたものだから、手の皮膚を少しだけ切るつもりだったナイフは、深々と掌を抉ってしまう。]
……声をかけただけだけど。
[溢れだした朱は掌に収まらず袖口までを染めており、後始末を考えると気が遠くなっていく。
やがて傷は塞がるだろうけど、とにかく痛い。答える声は涙混じりだっただろう]
不本意は余計だ。そなたが甘えたい盛りなのは理解している。
[一つ仕事を終えたところで、赤子のように扱うのは変えず、労うように背をあやすようになでて、続く質問には考えるそぶりもみせず答える]
知らん。
人が吸血鬼となって長く生きるようになったことでの変容はみてきたが、我にとって、今の生はごく当たり前の時間だ。
[生まれたときから吸血鬼としていきる真祖には、長い時であろうとも、それが当たり前の長さゆえ個人としての感想を問われてかえせる言葉を持っていなかった]
― 教室 ― >>749
……な…――痛い痛い痛い!放してってば!!
[何をしてるって、それは――…そう答えかけたのだが、傷が癒えきってない手を掴み上げられれば抗議の声をあげる。
無理やり掴まれている為、そのままくっつくはずの皮膚がずれてしまい修復するにしきれず痛みと血の流れる感覚が止まらない。]
――ちょっと待っ……
[混ぜ物がない状態の血を口に含むのを見れば、その行為を制止しようとするのだが――…]
なんで……
[混ぜ物なしでは吸血鬼を灼くはずの血は、見た限りでは彼を灼いてはいないように見え――…]
――…あるわけがない
[見る者によっては、自身は神の依代なのだと、彼に伝えたのはいつだろう。
男の信仰にとって、男の血は神の血であり――…彼の血親もまた、それに灼かれる存在ではなかったのかと。
――…ならば、何故?]
――…ありえない。
[自身の信仰が揺らいだ覚えはない。
ならば、この身は、神から見放されてしまったのではないかと――…]
――…
[今になって手を放すなら、彼女を喪ってから手を放されるなら――…
絶望に染められた思考は周りの音を拾えずに。
男は、拘束される事がなかったナイフで、自らの頸動脈を掻き切った。]
[抗議の声を無視して彼の手を指に含むと、下から低い呟きが聞こえてくる。そういえば彼の血は取りようによっては猛毒にもなるなどと言っていたな、と今更思い出したけれど。溢れる血を止めるよう舌で舐めとる]
―…、
[視界の端、何かが動くのが見えた。それが何かが分かった瞬間、止めようと手を伸ばすが僅か間に合わず]
…っ!!!?
[鮮血が、視界を染めた]
― ダーフィトと ―
それは、どうだろうね。
[悩みは消えるか、との問いには、僅かに首を揺らす>>740]
いつまでも鮮明なままという事はないだろう。
それでは参ってしまうから。
消えはしなかったかな……僕の場合は。
慣れるのも早かったのだけど。
ただ、折に触れて思い出す事もあるよ。
今は、遠くで聞こえるような心地でいる。
[撒き散らされる朱――…
自身の血を大量に浴びるだろう生徒の様子はどうだっただろう?
男はそれには目もくれず、ナイフを投げ捨て自身の首に手を当てる。
大量の血を失いながらも、修復していく皮膚に触れれば]
――…はは…
[なんだ、まだここにあるじゃないか――…
手放されることのなかった神の愛の存在に、安堵の息を漏らすのだった]
[その後はとりとめない話やら、
プレゼントの仕掛けがどのように発案されたのかを
ゆるゆると聞いて、彼を送り出した]
気にする事じゃない。
メッセージには『娘と共に』とあったから、
きちんとしたお礼はあの子が戻ってから改めて。
では、またね。
[独り言はどうせテレパシーだろうとノーコメント。]
……にしても、執行人もやることが派手だね。
[どんなお使いが行ったのかは解らないが。>>712
城館を揺らした咆哮にぽつりと呟いたのだった**]
っおい!なにを!!
[沈み込んだ身体を抱え起こす。視界が赤いのは、彼の血液が目にも入ったのかもしれない。自身の首筋に、血を出させるかのように触れる手を血まみれの手で取り]
止血…!
[周りを見回すけれど、咄嗟にいいものが目に入らず上着を脱ぐとそれを彼の首筋に押し当てる。上着はすぐに血を吸って真っ赤に染まった]
ちょ、っと、まて、誰かひと…を…
[くらり。立ち上がった瞬間、不意に視界が歪む。急速に魔力が枯れていく感覚。体を支えきれずに赤く染まった床に倒れこむ]
う、ぁ…
[急速に失われていく力。けれど同時に失った分が溢れてくる。自分の中で魔力が渦を巻いて暴れ回り消えていき、立っていられない。
途切れそうな意識で、彼の血をそのまま飲んだのが原因と気付けばこのまま死ぬのかと思ったけれど――
今は、死ねない。]
[返る言葉に、目を細める。
おもむろに手をとり、手指の形を確認するように触れ。]
あなたはこんなに人の形をしているのに、
ヒトではない何かなんだな。
[その内面を覗き見る度に、思う。
自分を捕らえたのがこれ程までにヒトではないのなら、何なのかと。]
……寂しいと思ったこと、ない?
[無いのだろうな、と半ば予測しながら口にする。
多分、この真祖には、永遠ともいえる自分の存在する時間を行き過ぎるヒトの儚い生は、自分以外の何か、それだけのものなのかもしれない。
孤独というよりは、孤高、なのか。]
嗚呼、トールは、
とても良い"ヒト"みたいだった。
クレステッドとは大違いだ、吸血鬼にも色々なタイプがいるんだな。
[くすりと、小さく笑った。]
[近くに放り出されたナイフが見える。手に取ろうと腕を伸ばすもそんな力は出ず――最後の手段、と自分の舌を噛み切った。
口の中に血の味が広がる。彼の血に、
―っ、
[なんとか動こうとのたうち回れば尚いっそう全身が赤く染まったであろうが、気にしていられない。先程倒れたままの姿勢で動かない彼になんとか這いより]
ステファン!
[叫んだけれど、相手は意識を保っていないようだった。人を呼びにいこうかと見回すが、部屋の中に他に人は見当たらず]
[己が神の存在証明が為されたことで、男は過渡の失血により倒れこむ。
神の愛によって在る
ここにあるならそれでいいと――…
誰かの呼ぶ声>>760が聞こえた気がしたものの、沈む意識を止めることはできなかった]
[人を呼びに行く体力が自身にあるか。
呼びにいって上手く人が掴まるか。
どうしたらいいのか迷って…不意に思い出した。最初にステファンが用意した初心者用の本の中にあった一冊>>428。今の魔力が混在した状態でどれほどのことができるのかは分からないけれど…
目的の本はすぐに見つかった。血まみれの指で本をも赤く染めながら頁を捲り、術式を見つけ出せば頭の中に叩き込む。魔力増殖の符やら陣やら…ええい、今はそんな間はない!]
っ、――!
[いつもよりも不安定な状態で発した回復の魔術は、不安定な力ながらもステファンを包み込む。結果どうなったかを確かめる力は既になく、最後の力を全部注ぎ込むと、意識が途絶えた]
[
――ぎぁっ!いだっ痛い痛いいだ……何これ!!
[人間にしか効かない回復魔法は、術師の期待とは別な方法で、男を叩き起こすことに成功した。
失血で沈みかけようとする意識を、不完全な魔術による
これでは充足感に浸るどころではない。]
― 更に数分後・流血沙汰の教室 ―
[激痛に悲鳴を上げ、のたうち回りながらも、男は術の解除に成功し――…]
――…これは、酷いね…
[知識を扱うべく思考を巡らせ続けた為だろう、正しく現状を認識し、他人事のような感想を漏らした。
未だ残る鈍痛が、気を失うことを許さないのだが、今だけはそれに感謝をしつつ。
自分のものらしい大量の朱、自分で自分の首にナイフをあてがったという記憶は残っている――…その理由も。
前例のない事だったとはいえ、よほど錯乱していたのだろう。
その中で倒れる生徒の手には施術の痕跡。
混ぜ物をしながらも大量に自身の血を体に入れていたせいだろう、よほど相性がよかったのか、血に対する耐性ができかけていたようだ。]
…………
[そして数秒の思案の後、人間の使用人を呼びつけると自分の着替えとシーツをもってくるように命じた。
ダーフィトの口を開かせてみれば、自分舌を噛み切ったのだろう、大量の血で濡れている。
男はハンカチを取り出すと、先を丸めて彼の口内へと入れ、呼吸の邪魔にならないようにと喉の奥の血だまりを取り除いた。]
……
[真っ赤に染まったハンカチを見れば、少々行儀の悪い方法をもって、失われた血を満たす。]
[使用人が着替えを持ってきたなら、更に教室の後片付を頼みこみ、慌てて掃除用具を取りに行ってる間に、自身は着替えを済ませ、教室の扉に“清掃中・立ち入り禁止”と書いた紙を貼った。
ダーフィトに関しては、まずは自分の血から遠ざけないとどうしようもないと、衣服を脱がせてシーツに包む形になるだろう。
できるだけ取り除いてみたものの、髪にはまだ血が付着しているのだし、相手が起きようが起きまいが、自室の浴室に放り込むことまでは、男の中では確定事項である*]
/*
夜にまた悪化しなければいけるだろう!
と見切りつつ!
あとステファンが楽しくてすごくめがはなせない。絡むとっかかりは見つけられないので遠巻きなわけですが!
― 自室・浴室 ―
[部屋につき、まずは空の浴室にダーフィトを放り込んだ。ゆっくり入浴することの少ない男は、浴槽に湯を張りっぱなしにする事が少なく。ジャケットとウェストコートは脱衣所へ脱ぎ捨て、シャツの袖を捲り、シャワー片手にダーフィトに向き直る。
浴槽の中にシーツを敷いて、その上にダーフィトを乗せているような状態で、まずは髪についた血を流したのだが、急ぎの事故、湯温を確認することはせず……少々熱かったかもしれない。]
― 浴室 ―
……。
[意識は未だ薄いながら。頭に熱い湯がかけられると、少し眉が寄せられる]
―…。
[声になるほどの力はまだない]
[特に抵抗もなければ、手で髪をすくようにしながら湯で流してやる。凝固した血を解すように、時にはその長い髪に指を絡めるようにしながら。
服を着てる状態故、後ろに回り込むことができず、毛先まで洗おうとするには抱きつくような形になってしまうのだが、他に方法もない。
自身の血を取り除いたところで、彼の様子を伺ってみれば、血の付着による損耗がなくなったせいか、だいぶ落ち着いているようで]
…………
[ダーフィトの唇の端を噛み切りその血を舐め取れば、自身の口内を噛み切り混ぜ物入りをつくり上げる。
あとはいつぞやの要領で、抱きつくような体勢のまま、口内の血を与えるだろう。]
[特に抵抗もなければ、手で髪をすくようにしながら湯で流してやる。凝固した血を解すように、時にはその長い髪に指を絡めるようにしながら。
服を着てる状態故、後ろに回り込むことができず、毛先まで洗おうとするには抱きつくような形になってしまうのだが、他に方法もない。
自身の血を取り除いたところで、彼の様子を伺ってみれば、血の付着による損耗がなくなったせいか、だいぶ落ち着いているようで]
――……
[ダーフィトの唇の端を噛み切りその血を舐め取れば、自身の口内を噛み切り混ぜ物入りをつくり上げる。
あとはいつぞやの要領で、抱きつくような体勢のまま、口内の血を与えるだろう。]
……。
[唇にピリと痛みが走り、続いて柔らかい感触。あまいものが口内を満たせば、枯れたまま不安定な状態を保っていた魔力が満たされる]
…、
[ゆるく目を開け、間近にある顔を見つめ…なんとか名を呼ぼうとするも声にはならず]
すて ふぁ ん?
[唇は動かないまま、その名を呼ぼうとした]
ー 私室 ー
[部屋へ戻ってくれば、来訪者は送り出された後。
片付けやらトールからの書簡を渡すやらして、一息ついた後。]
……湯をつかってくる。
[そうして、お風呂へ。
贅沢にも誂えてある大きな鏡に、吸血鬼でも鏡に映るんだな、などと思いながら首筋の吸血痕跡を見る。
血親のつけたものと、養親のつけたものが、ふたつ。
密やかに息をつく。
痕跡を指でたどった後、体を清め、湯からあがった。]
僕だよ、ステファンだ。
[何か言いたげにしている事に気づけば、ゆるりと開かれた薄茶を見つめ、目の前にいるのが自分であると口にした。
意識を取り戻したという意識から、安堵の笑みを浮かべる]
だから!!私は男だと言っただろうが!!
[Iラインの白を貴重とした胸元にリボンの流れる素敵なドレスを有無を言わさずばっちり着付けられてしまった姿で、クレステッドに詰め寄るのだった。**]
[彼の顔を見れば先程の血まみれの光景が思い出され――咄嗟に身を起こそうと身動ぎする。顔の位置が近いことに戸惑うも口の中の血の味を感じれば彼の意図は理解した]
だいじょう ぶ
[動くようになった腕を緩慢な仕草で持ち上げ、ステファンの首筋に触れさせる。傷あとがないかを確かめる如く]
[状況をみるに、血を落としてくれていたのだろう。シャツの袖を捲り、シャワー片手に自分よりも体格のいい男を洗おうとしていたのだからシャツが濡れていない訳がない]
なん で
[急にあんなことを。そう問いたいが、声が出ない。けれど出る筈の言葉はステファンの耳には届いているか]
ならよかった――…
[大丈夫だという声を聞き、身を起こそうとしたのだが、ダーフィトの腕が、手が何かゆったりとした動きで何かを求めていることに気づけば、させたいようにさせるのだが――…]
―――ん……!!
[濡れざらしとなってしまったシャツの上から、傷の消えた首筋を確かめるように指でなぞられると、思わず声が漏れてしまう。
一瞬、いつか抱いた欲求に、思考を預けてしまいそうになるのだが、彼の問いが男を陶酔から引きあげた。]
[何故――…そう問われれば、男はびくりと肩を震わせた。
そして、密着するような状態から少し離れ、俯いたまま、口を噤む]
…………
[俯いたまま、微かに首を振る男の表情を窺うことは難しいのだが、
濡れた金糸からは、ぱたぱたと雫が落ち……それが心情を表しているようでもある。
やがて――…]
[指でゆるく首筋を辿ると目の前で声が揺れた。予想外に思わず指を引きかけるも確かめるように何度か首元を指で撫ぜる。
ゆびさきは滑らかで手触りの良い、何の痕も残さぬ肌を何度か往復し。
問いかけに肩を震わせ、身を離されると名残惜しげに下へと落ちた]
……。
[答える気があるなら答えてくれる。付き合いの中でそれを理解したので急かすことはなく言葉が返るのを待つ…不安げな様子に動きにくい自身の体を少し恨めしく思い――はたと気付く。動いたら、どうしたいのだろう、自分は]
吸血鬼じゃない僕は、タチアナが呼んでくれた僕じゃない……
[“彼女が僕をステファンにしてくれた”そう伝えたのが随分昔の事に感じられる。
― 記憶の瓦礫 ―
くろぐろと 毀れた世界の 水の底
堆く積まれた瓦礫の山
それらは全て記憶と心の残骸
ひとつずつ 欠片をあつめて
新たに積み上げていた
永久に解き終えないパズルのような
ここにあったはずの豊かな世界
〔血の きょうだい〕
痛みをともなう記憶を拾い上げた
これもだいじなもの
顔の前に透かし見ると
斬り離された首が宙を飛ぶイメージ
月のひかり 走る馬車
どうか どうか遠くへ── と
……。
[バスタブの中から彼の顔を見上げる。普段は上から見下ろすことが多いのだけれど、今は下から見上げれば―俯いた彼の泣きそうな顔がよく見えた。
だいぶ楽になったとはいえ普段通りまではいかない腕をまっすぐ伸ばして、金の雫垂らす髪に触れ――次の瞬間、勢い良くすっかり湯のたまったバスタブに引っ張り込んだ]
[血臭に噎せぶ館から走り去る馬車>>0:77
悪鬼は怒り狂った。旧く貴い血を受け継ぐ貴族の息女を欲して。
『娘をどこへ逃がした』
捕えられた父親へ与えられたのは苛烈な責苦。
無残に引きちぎられていきながらも強固に口を閉ざした父親を、悪鬼は嗤った。どこまで耐えられるものか。
息女アイリスの行く先を知られるのは時間の問題。
屈せずとも、もはや生きのびる可能性を失った彼の、際限なく引き延ばされる苦痛。
そうしてディークは血親の命に抗った。
首を断って殺した。主家の当主を。自ら望んで。
高潔で、才知に長け、おおらかで優しかった男。
自らの父とも思い慕った人。
それでもまだこの時は、守れるはずの ひとを想って**]
― /記憶の瓦礫 ―
[狭いバスタブに引っ張り込めば、抗議の声は聞こえるだろうか。それにへらっと笑って]
吸血鬼じゃないステファンがステファンじゃないなら
吸血鬼になった俺は、もうダーフィトじゃないってことにならないか?
[いつか彼が言った言葉>>283]
『吸血鬼のダーフィトじゃなくて“吸血鬼”である前に“ダーフィト”であるように』って…言ったの、お前だろ。
[バスタブに引き込むことで、自分よりも低くなった頭を撫でて]
それに、お前が吸血鬼じゃなくなったら今度は俺がお前をステファンって呼んでやるって。
何事だよぅ。
[深呼吸して、声の出所を探す。
あの感じ、きっと外だ。
だけど、要塞のごとく窓の塗り籠められたこの城館では、外の様子を窺い知ることが難しい。
うろうろするより、ロー・シェンに訊いた方がいいかな、と首を傾げ──]
[まさしくその当人から届いた声に、得体の知れない震えが掻き消えた。]
ん? ん! 報告する!
[「もう戻る」というからには出かけていたのだろうけど、自分の帰りを歓迎しているらしい気配の前には些事。]
――…?
[ぽつぽつと言葉を紡いでいると、ダーフィトの物言いたげな目と目があった。湯の中から差し出される温かい手が髪に触れる、その感触を、視線をそらさないままに感じていたら――…]
――わぶっ!!
[そちらの腕はフェイントだったのだろう、湯船に引きずり込まれる形となった。狭い湯船に二人も入れば、身動きをとるのも難しく、逃げようにも逃げられない。
部屋の持ち主の趣味で固められていた部屋は、浴室の作りも他の部屋とは違い手狭である。バスタブが狭いのはそういうデザインであって、部屋の持ち主の身長が小さいせいではない。]
これ出るときはどうするつもりなのさ!大体君は――…
[密着状態のまま、動きようもない状態……、文句の一つも言ってやろうと声をあげるが、目の前の青年のへらっと軽い笑顔を前に、すっかり気勢が削がれてしまった。]
……いいんだよ、ダーフィトが変わっても、ダーフィトを呼ぶのは僕なんだから。
どれだけ変わっても、君がダーフィトであり続けようとするなら、僕がダーフィトを更新し続けたらいい。
[拗ねるように言葉を紡ぐ。湯船に引き込まれたせいか、表情から悲しみが引き、代わりに不満を浮かべる。
顔を見て話すのが気恥ずかしくなって、目を合わさずに済むように、肩に顎を乗せるような体勢をとった。相手が全裸という意識は明後日の方向へ行っている]
だから、僕が君をダーフィトにするって言ったんだ。
僕は死なないから。
[昼を歩む者。境界なき者。
禁忌がないということは、死滅させる方法がないということだと――…彼が聞いたのなら、その時だけは答えるだろう]
― 自室 ―
[ディークの居場所が分からないのがもどかしい。
血子であれば、距離の制限など関係なく常に心の奥底で繋がっているのに、血の繋がらぬディークでは、それができない。
心が分からない。
だから、不安になる。
それでも通常であれば、長生者の鋭敏な感覚は、この城館程度の広さであれば、自身の気配を隠蔽する技巧のない幼童の所在を探り出すなど、造作もないことなのだが。
今のコンラートには、それができない。
いや、やろうと思えばできるのだが、そんな簡単な事柄でもやれば確実に餓えに近づく。
代用品の血酒をふんだんに摂取できるとは言え、出来るだけ消耗を避けねばならない事情がある。]
[「俺が呼んでやる」と言われて撫でられれば、返事をする事はせず、ぎゅうっと抱きつく。
嬉しいのだ、嬉しくはあるのだ。
また、先に、居なくなってしまった時を思うと、言葉にできなくなるだけで]
[そうして間近で相手を見れば、着替えはしたとはいえステファンの顔には所々に血痕が見えた。手を伸ばして湯を掬い、乾いた血の痕を湯で洗い流してやる]
箱移動用めも
― 自室 ―
[そんな状態でも、近ければ、足音を察知するくらいは出来る。
逸る心を抑えて、長椅子から滑り降り、扉へと歩み寄った。
ディークが部屋に入ってきた時、その足取りから、姿を見る前にどんな状態か大体予想はしていた。
予想以上だった。
端然とした軍装が、草にまみれ、あちこち埃まみれ、何か分からない染みだらけになっていた。
顔にぬぐい取った血の痕を見て取った時は、息の詰まる思いだった。
だが。
その瞳を見たら。
目に宿る光を見たら。]
/*
>アイリメモ
女の子だと思ってファミル襲ったら男だったという反省からとかじゃないかな(まがお>バランがご息女ご執心
[出る時と言われれば少し考える。この狭いバスタブ、確かに身動きが取り難くて出るのに苦労しそうだ。まだ自分は体の自由が利かない状態だし。けれど]
吸血鬼って寿命あるのか?ないならそんな簡単には…あー…うん。死なないように、気をつける。食事、とかも。
[拗ねて顔を見せないようにする、自分よりもはるかに年上な彼が可愛らしい。
死なない、というなら。そう説明されるなら。こちらももうそう簡単には死なない身だ]
俺がいる間は、お前の命、預かってやるよ。だからもうあんなのやめろ。こっちの心臓が持たない。
[そうして間近で抱きついてくる相手を見れば、着替えはしたとはいえ顔や髪には所々に血痕が見えた。手を伸ばして湯を掬い、乾いた血の痕を湯で洗い流してやった]
/*
ブライトン家の元護衛長さんは確定イケメン。
そしてでぃーくんの振りによって、息女がどんどん姫ポジに…w
ええ、むしろ美味しいわ(キリッ
姓は、ほんとはbrightonだけど、brightenなのに闇の住人になっちゃった、というブラックなアレだったり。
そしてえんじゅさんの日記の『菖蒲は剣の見立て』のくだりにふく。
アイリス→剣→貴族の紋章に多いという命名だよ!
それもあり入村でいきなり剣使ってみた。
あとアイリスはストーカーな神様から逃亡する乙女でもあるので、でぃーくんの『女は差し出せ』のくだり→ノリノリで襲われかけてみた息女だよ!
― 自室 ―
――!?
この声…、ロー・シェン殿か…?
[>>712城館全体をびりびりと揺さぶる咆吼に、思わず外の方に顔を向ける。
試験内容と鑑みて、随分と派手なもてなしをしているようだ。
養い子を心配していたタイミングだけに、顔色が変わる。
執行人であるロー・シェンの事は信頼しているが、アレクシスの身に何かあったかも知れないと、
扉に手をかけたところで、それはあっさり廊下側から開かれる。]
おかえりアレク!
[>>729開口一番、いつものように溜息をつく青年を躊躇うことなく抱き締めた。
廊下を行く使用人達が驚いた視線を寄こすが慣れたもので、小さく肩すくめる者、必死に笑いを堪える者、各人各様の反応を示した後すぐに仕事へと戻って行く。]
どうしてって、心配だからに決まって――……。
[言いかけて、コンラートから手紙を預かってきたと聞けば。
やっと冷静さを取り戻し、咳払いで誤魔化しながらも養子を室内へ迎入れて、後ろ手で扉を閉める。]
ただいま。
[誇らしげな笑みを見れば、
疲れて汚れた顔に嬉しそうな色が乗る]
とおった?テスト
しきたり聞かれなかった
いぬは優しかった
[掠れた声は常より饒舌に。
膝から崩れそうな体、重みをコンラートに半ば以上預けている姿勢になっていたけど]
[もっとも、そんな矜持も抱き寄せられればすぐに崩れる。
思いが溢れて、偽物の呼吸しかしていない筈の胸が苦しくて、息が詰まりそうだ。
疲労の色濃い仔を抱き締め返し、幼い仕草で頷く。]
……いいよ
僕を全部あげる
[囁く声は低く擦れて]
[髪を、顔を撫でられて、擽ったさに身を捩る。
「俺がいる間は」そんな条件付きであったとしても、共有してくれるという言葉は嬉しくて――…だからこそ]
――…無理だ。
[だからこそ、真実をしれば忌避するのだろうという事が予想できて、身動きが取れない状態ながらも、凭れかかっていた身を起こすことで、彼と距離を取る。顔を隠すことはできないけれど、背に腹はかえられない。]
……僕は、僕らはね、罪を犯した吸血鬼を殺すことを生業にしている。
死ねない者を死なせる方法を探すのが、僕らの仕事。
日光にあたっても、流水に飲まれても、飢えて倒れても死ねない者を殺す為。
例えば、僕みたいな…ね…
[今度は、死ねないのだとはっきりとわかるように、殺すのが仕事とわかるように]
[そこまで言い切ったなら]
――安心して、あれはもう、やらないから
ありがとう、それとごめん。
[だからこれで終わり、と言いたげに。
うまく笑えているといいのだけど。]
ん…
コンラート
[頷く蝶を抱いたまま、縺れ込むように長椅子へ。
高級な椅子の脚が軋んで体が沈む]
だ、め …って言って
──練習、は
[この欲を制御することが出来るか、わからなかったけれど]
[直前までは触れる手や指を甘んじて受けていた彼が、急に拒絶の意を示す]
なんで
[受け入れられるものなら受け入れる。時間はかかるかもしれないが。血を飲むことにも最初を思えば随分慣れたのだ。ならば、時間をかければ
そう思うのに
「死ねない者を死なせる方法を探すのが仕事」というのを聞けば]
………。
[言葉を失う。彼のようにと。
これを、受け入れられるのか。言うだけなら言えるかもしれない、けれど。
安請け合いをすれば、余計に傷つけるのは、分かる]
[けれど、死ねないと言った彼が笑うから。笑おうとするから]
――っ、時間!時間が、ほしい!
……正直、自分でもどうなるか分からんけど…でも。努力は、しよう…
[そう。不安そうではあるが、なんとか決意らしきものを口に乗せた]
[狭い長椅子の上、脚を絡めるように密着して、
腰を深く引き寄せる。
ぬくもりを。
細い繊手を掴み、口元へ寄せる]
そばに、いられる?
[尋ねた言葉>>784に重ねて問い、
淡い花弁のように色付いた爪に口接けを落とした。
チラと舌先を伸ばし、爪と指の狭間へ這わせ、指先を食む。
そのまま関節までを口中に含むと細くしなやかな指へ、甘く牙を立てた]
……──、
[とろりと眼差しが潤む]
いい――練習なんて
[熱に浮かされた声、
もつれる細い指が襟を掴んで、汚れた男の上着を脱ぎ落とそうと胸を肩を滑る]
今日はしなくていい……
君が 自力で勝ち取った お祝い だもの
[絡めた足、下肢を深く深く捕られられた。
焦る手を取られ、濡れたものに包まれる、
食まれる、喰われてしまう。]
ぁ、 は ぁ……っ
[ぞくりと背筋に電流が走る。
穿たれた指先から吸い出されていく血、
吐息は濡れて熱く、
なよやかな肢体は、男の体の下で蕩けて]
[手を取り形を確かめるように触れるファミルへと触れさせたいように触れるのを許しながら怪訝そうにファミルを見遣る]
当たり前であろう。
[ヒトではないことも。寂しくもないことも―――]
いや…一度だけあったな。
[その感情を理解できなかったころだ。後になってみて思う、それぐらいのこと]
いい人であったか。馴染み深く親しみやすいこと、それがあやつの魅力なのかもしれぬが、そのままでは少々マスターとしては問題があるが、これからだな。
[従え敬われてこそ一流。慕われては二流だ。だからこそチャイルドを引き取るのにちょうどよいと目をつけられたのかもしれないという評をファミルの言葉より改めて加えた]
[この子が答えを欲している……と、
震えを堪えて声を絞り出す、
自信と安心、それらを得て未来を描けるようになるのなら。]
ああ――きっと だいじょうぶ
[僅かな傷なのに、じんじんと熱い。]
― 私室 歓待後 ―
ご苦労だったファミル。
[使いの任を果たしたファミルへと労いの言葉をかけ、湯へと向かう>>770のを見送った後、トールよりの書簡に目を通し、威厳よりも人柄がにじみ出る書状に微苦笑を浮かべながら当主としては立派というよりも好かれる当主になるのだろうか。などという感想を抱いた後]
おお、似合っているぞファミル。月夜に咲く月下美人のようだ。
[白皙の美少年からドレス姿を着たファミルをそう評して、うんと自分の見立てを自画自賛する]
…何を怒っておるのだ?
[メイド服が気に入らないと思ったから変えたというのに。と詰め寄るファミル>>771に首を傾げ聞いた]
[口腔に広がり溶ける赤い蜜。
血を啜り、傷を穿っては舐めて癒し、また牙を立てる。
戯れのようで狂おしい愛撫]
…っは、
[深く咥えた指に舌を絡めて吸いながら、組み伏した蝶を見下ろした。
鼓動を探すようにその胸元へ片手を這わす。
だいじょうぶ。そう聞くだけで表情が歪んだ。
愛しむ形に]
[神妙な顔で話を聞くものだから、沈黙し、考えこむものだから――、きっと予想通りの答えが返ってくるのだろうと思ったのに……]
……くっ……あはははっ!君は本当に面白いね。
無理だって、そう言ってしまえば楽なのにさ……
[希望を持ってしまいそうになる言葉に、つい]
そうだね。一つ、我儘を聞いてくれるなら
[本当は、時間だけならいくらでもあるのだけど――。
彼がいつも警戒するような笑顔を浮かべ、試すような事をしたくなった。]
[ある程度の耐性ができてるとわかるからこその我儘を]
今ここで、僕の血を喰らってくれるなら。
僕は元々は人だけど、牙を受けた事はないんだ。
[血を忌避してきた彼に、獲物に牙を突き立てることができないだろう彼に、試練ともいうべき我儘を。
どれほど焦がれていたからといっても、牙を受ける事が現実味をおびると、少し震えてしまうのだけど。]
もしも時間をかけて無理だった時には、冒涜者に遭ってしまったのだと思えばいい。
見るものによって、僕の在りようは変わるから。
[出会った日の言葉>>0:305を借りて、彼の信念に冒涜を。]
それさえ無理なら、これで終わり
[締めの言葉はおどけてみせて]
あなたにとっては、ね
どうしてヒトの形になったのかな…
[当たり前だという相手に、仄かに苦笑する。
人として生活していた時には、吸血鬼や魔法が実在するとは思っていなかった。
そして、彼のような存在も。
確かめるように触れて絡めていた指を離せば、ゆるりと手は降りるか。]
……一度だけ?
どんな事だったの?
[意外な答えに、目を丸くして尋ねた。]
問題、かな。
在り様はそれぞれで良いと、私は思う。
私は好きだな、彼の人柄。
[集団の上に立つものとして、ナメられたりしたら問題だと言いたいのだろう推測しつつ。
生まれつきの王者の言に柔らかに唇を撓らせた。]
…… ふ、 ぅ
[胸を這う手に、甘い疼きを感じ、ひくりと身震いする。
偽りの鼓動刻む心臓が、先を欲して躍る。
熱に浮かされた瞳が、男の僅かな表情の変化を捉えれば、
欲しい、と声を出さずに強請る。]
……。
[血を喰らえと。今ここで。
そんな言葉に彼の目を見るけれど、いつもの通り真意は図りかねて。けれどここで拒否をすれば、時間をくれと言ったそれすらも許されなくなるのは分かる]
…喰われたいものなのか、それ。俺にはよく分からんけど…
[彼は死ぬことがないのだと、その言葉を頼りに彼の体を片手で抱き寄せる。濡れて張り付いたシャツを剥がして白い襟足を出させると、傷つけるべきそこをもう片手でそろりと撫でる]
したいと 思ってた
[唇はコンラートのそれへ重なる。
濡れた吐息を奪い、柔らかなそれを優しく貪って]
…
[苦しくなる前に一度顔を離し、瞬いた]
― コンラートの部屋 ―
[立っていられずに長椅子に転がって。
視界の端のテーブルに、二人分の茶器が置かれているのが見えた]
…
[自分のように、誰か他の仔もまたコンラートの元を訪れたのだとわかる。
潤んだ赤錆が瞬いた]
…試験、した?
[この吸血鬼はどうやって血兄弟を験したのだろうと、控えめな興味を覗かせる]
……。
[そ、と唇を近付けて…目標となる箇所に、痛みが起こりにくいよう小さく舌をつけてから、尖った犬歯を]
ファミルよ。答えは今、ファミルが口にした通りだ。
[ヒトでない何かでありながら、わざわざヒトという形をとった理由。
喜怒哀楽を最も表にだし、好奇心旺盛で強欲、適度に傲慢で怠惰なものたちと同じ姿でいる理由]
我が今ここにこうして在る。それがおそらく一度だけ寂しさを抱いた理由、なのだろう。
[こういう時...は強がりはしない。あったことを容認し受け入れ言葉として零す]
そなたのようにただ好ましく思うものにとっては良い。ただ別方向からみればよくないこともある。やつの環境上は改善したほうがいい面ではあるだろう
[ファミルの推測通り。後継者としての使命を果たすならば猶更。というもの]
次はそなたの番だ。そうだな、吸血鬼になる前はどう過ごしていたか聞かせておくれ。
[順番を決めていたわけではないが一つの問いに答えたから次はそちらが、と問いを投げかけた]
………。
[尖った歯を彼の白い肌に滑らせると、紅い線が浮かぶ。それを舌で舐め取り、何度か舌を這わせればじきに血は止まるだろう]
―…。
[そろり、と。これでは駄目?と確認するように彼の目を見れば、どんな反応を返されるだろう]
ありがとう――。
[申し訳ないと心の中で謝りながら、手紙を受け取り。
すっかり冷め切った紅茶をカップに注ぐ。]
……コンラート殿から、ご招待を受けるなんて光栄だね。君も一緒にと書いてる――っ、ぐ…げほげほッ!
[丁寧な文字でつづられた文字を目で追い、喜色を浮かべるが。
視線が追伸部分にたどり着けば、口内に含んだばかりの紅茶を吹き出しそうになり、堪えて切れずに噎せてしまった。]
[どのような反応であれ。
胸へ当てた手は不器用に白い白いシャツを寛げる。
艶かしく濡れた細い指がそれよりも器用に汚れた上着を落とし、ボタンが外れていけば。
空気に晒されて冷えるのを惜しむように、素肌同士を触れ合わせた]
あのいぬも、きょうだいの養い親 してるのかな
…少しだけ思い出したんだ
俺の──
[聞いて欲しい、と呟いて
裏腹に再び口接けで塞ぐ。
唇のあわいを破って、あたたかい裡へ滑り込んだ]
[「喰われたいものなのか」そう問われれば、自分の意思を確認するように復唱してみるのだけど]
喰われたい……いや
[口にしてしまえば違う気がして、しっくり来る表現を探す]
…………識りたいんだ、僕は。
[探り当てた言葉に納得してしまえば、やはり自分はこう在るのだなと――…苦笑する]
な ぜ だ !
[当たり前といって怒りを表すようにソファーの手置きを叩くファミル>>795に驚く
驚いたようにいう、マーメイドラインのほうがよかったのだろうか。]
自分の養子には似合うものを着せるものだろう。性別など些末なことを気にするな。それに一度外に出たではないか。
[無意識に過去の恥ずかしい行いを抉る養親]
[せっかくファミルが寝ている時に早起きして縫って完成させたというのにこの言い草に不機嫌になる]
とにかくその姿で過ごせ。恥じることはない。似合っている。それでも嫌なら裸で過ごせ。
[すでに決定事項としてドレス姿で過ごすように命じた]
[口にした通り、という謎かけのような言葉に首をひねる。]
―――解らない、って事?
嗚呼そうか、そもそも生き物だって自らの意志で今の形状になったわけじゃないし…
[なんとなく納得して頷いた。]
ここに在ることが、どうして寂しいの…?
[其方は測りかねて、問いを重ねた。]
結構世話焼きだよね。
[トールについて言う言葉には、思わず笑ってしまった。]
……吸血鬼になる前?
[少し考える。]
司祭になるための学校に通っていたよ。
―――そうすれば、神が何をお考えか、少しは解るかもしれないと思った。
[欲しいものは過たず与えられた]
ん 、
[男の弾力のある唇が己のそれを塞ぎ、やさしく息を盗んでゆく。
強欲な花は忘我のうちに色づいて開きながら、もっと甘い蜜が欲しくて、]
……… ぁふ
[ひとときでさえ離れてゆくをもどかしく、切なげに喘いだ]
…すまないッ、もう…大丈夫だから――
[ハンカチを取り出して、口に宛がい。
背中を擦る手の感触に彼の優しさを感じつつも、
誰も呼ぶ必要は無いと、手で制す。]
……アレク。
[手紙には、確かに助言があった。一切、言い逃れの出来ない助言が。
諦めたように溜息をつくと、心を決めて。
まっすぐにアレクシスを見つめる。]
俺は"養親"で、君はその"子"だ…。
――だから、こう言う事を言うと…君は……
[彼の立場は弱い。
だからこそ、まるで自分の立場を利用しているようで、
今まで言葉には出さずに来た。]
― 自室 ― >>778
[扉を開けると同時、飛びつくような勢いで声が飛んでくる。
レトの後ろに大きく振られている尻尾が見えたのは、たぶん気のせいだ。]
、 戻った。
機嫌がいいな。聞こうか。
[早速とばかり、試験の報告を求める。
視線がレトの手にある包みに向いて、ごく僅かばかり首が傾いた。]
ここにこうして在ることで…昔の我は寂しかったのだろう。
そう、感じれるようになった。ということだ。
[思い返しながらであるため、主観が強く、それゆえ客観が消え伝わりづらい言葉を吐き連ね]
我が気にかけたものがつまらぬところでこけてるなど許されぬことだからな。
[世話焼きという言葉も唯我独尊な態度は変わらず、笑うファミルの頬に手を伸ばしそっと撫でながら答えた]
そうか……司祭になるためか。そのせいで趣味がなかったのか。さぞかし禁欲的でつまらぬ生活をしていたのであろうな。
[神の声。などというのは聞こえないだろう。信じてもいない...はそこを深く掘り下げることはせず]
では、これよりは、なろうと思うものを決めていかねばならないな。
[同情はしない。ただ亡くした未来より別の未来に目を向けるようにいった]
………ふっ…
[伸ばされた腕に任せるままに抱き寄せられ、濡れたシャツを開けさせられ、宝物を扱うかのように撫でられ、思わず息が漏れてしまう。
力尽くであったなら、すぐに牙を突き立てられたなら、ここまで意識しなかっただろう。
何かを畏れるようにゆっくりと、自分自身がしっかり意識できる状態で、そして両手の自由が許されているだけに、されるがままなのが気恥ずかしい。
今の顔は見られたくないと思うものの、手で顔を隠すにも、抱きついて顔を隠すにも、血を吸うのには邪魔になるのが目に見えて――……
思わず睨みつけてしまうのだが、状況が状況だけに、あまり意味はなかったかもしれない]
[真坂ドレスの形状が気に入らないのだと思われているなどとは露程も思わない。
更に、真坂真祖手ずから朝なべして縫ったなどと思うはずもない。
上等な生地に繊細に仕立てられた飾りといい、多趣味多芸にも程がないか真祖。]
そりゃあなたは気にならないかもしれないけどね!?
そ、それは、あなたがあんなことするからだろう!!?
[メイド服で飛び出して思いっきりディークに突っ込んで抱きとめられたのを思い出して色白の頬が羞恥に染まる。]
〜〜〜…ッ!
ああもう!!
[不機嫌になった様子に、命令が覆らないことを知る。
勝手に着替えようにも、クレステッドと自分ではサイズが違いすぎたし、諦めるよりなかった。
不貞腐れてぼふ、っとベッドに倒れ込むと、柔らかな枕に顔を埋めた。]
― 自室 ―
[どこかに寂寥を思わせる感謝の言葉に対して、
後を継ぐ言葉はなく頷くだけに留めた。>>787
先見の明がある者は、そう多くはない。]
[プレゼント誕生秘話を、実演交えて聞いた時には、>>788
『……正直、そっちじゃなくて良かったよ』という感想を
零したとか何とか。
うっかり目の前の青年がごむたいな事になりかねない]
うん、確かに伝えるよ。
これからも血の兄弟、あるいはよき友として。
彼女の事、よろしくお願いね。
― 自室 ―
ん……
[ディークの視線の先を追い、ぼんやりとテーブルの上の茶器を見遣る。]
試験は、してない
話 した だけ ……
[物憂く答え、潤んだ翠を男の上に戻した。]
ー ロー・シェンの部屋 − >>803
[ずっと待ってたと言わんばかりの喜びを隠しはしない。
引っ張り込むようにロー・シェンを扉の内側に招じ入れたところで──すん、と鼻を鳴らした。
血の匂いがする。
ロー・シェンと別の誰か。]
怪我した?
[負傷箇所を見つけたら、先に風呂場でされたことをなぞろうと考えている。
癒しの効果はなかったかもしれないけれど、気持ちよかったから。]
[因みに、養子縁組の発表の時点で、
ステファン=リッシュの許に送られたチャイルドが
何と言う名前であるのかは知っている事だった。
仕込みに夢中で名乗りを忘れていたようだ、と、
そう思えば微笑ましいやら何やら。]
だから…、これから言うことは。
君に都合が悪ければ、何も聞かなかった事にしてくれて、かまわない。
[そう前置きした上で、やっと重い口を開く。]
/*
ステファンの発言、102回を、残り102ptかと空目して愕然としたw
いや、102回でも多いけどw
そしてダーフィトが飴6個全部、相方に投げてる、溺れそうw
我がやることは正しい。我が言うことも正しい。ゆえに我が用意したそのドレスを着るのが正しい。
[なぜ不満をいうのか。文句を連ねる聞き分けのない子>>805へと己こそが正しいのだと言って聞かせる。
派手になりすぎないように上品にしたてながら、白金の髪に、白磁の肌を持つファミル専用のドレスだというのに。もう少し露出が多いほうがよかったのだろうか。と思ったがそれは今言っても仕方ないことだ]
……まったく。聞き分けがないやつだ。
[ソファーより立ち上がり、ベッドに倒れ枕に顔をうずめうつぶせになるファミルの上に、馬乗りになるように覆いかぶさり、肩を掴んでこちらへと向かせ、じっと紫水晶の瞳を見つめた]
さて……あの子はまだ戻らないようだね。
[今の内に少し、野暮用を片付けておくとしようか。
贈られた飴細工には箱を被せ直し、使用人を呼ぶ。]
………
[首筋を彼の舌が這えば擽ったそうに肩をすくめ]
―――ぁ
[……一瞬だけの痛みが襲う。彼の牙を穢してやったのだと、冒涜者らしい充足感に身を委ねようとしたのだが……]
……ちょっ!ダーフィト、くすぐった……
[それを許さない心遣い…基、怪我を癒やそうとした舌の動きが擽ったくて、逃れようとしたら、バランスを崩してしまった。
不安げにこちらを伺っていた瞳が、この直後に起きるだろうことに気づいた時、その顔がどう塗り替えられたかまでは見届けることができずに――…]
[寂しいという感情を知るに至った彼が、昔今程豊かな感情を持っていなかったであろうことを知る。]
……なんでわざわざ組織なんかに属しているのかと思ってたけど。
そっか―――
[その感情を知ることが彼にとって良かったのか、思う所はあれど。
頬を撫でる手に目を細めながら、クレステッドの顔を見つめた。]
…学ぶことは確かに沢山あったけど…
それは嫌なことじゃなかった。
私は親を知らないから……ああ、教会の孤児院でね、育った。
…趣味、は…規則に沿って生活する以外の余計なことをする時間もお金も、無かったからね。
進学させてもらえるのはありがたいことではあったんだ。
[それがどういう大人の事情であれ。]
なろうとおもうもの・・・
[少し考えて睫毛を揺らす。]
少なくとも、もう二度と、ヒトを殺さないで生きていたい、な…
[たった一度の殺人は、今でもその手に感触を遺す。
戦場に立つ戦士のように強くあれば、これほどに苛まれることもなかったのだろう。
当時若干8歳に過ぎなかった少年は、敬虔な信徒で、酷く繊細だった。]
[レトの様子は、勢い込んでいるといっていいもので、はしゃぐ仔犬を連想させる。
引っ張り込まれるままに部屋に入ったところで、血の匂いに気づかれた。]
猫に引っかかれた。
[返答が多少おどけたものになったのは、自身も機嫌がいいから。
傷はほとんど痕になっているが、服の肩口が破れていることでそれと知れよう。
レトが見つけて舐めようとするなら、ぴしりと額を指で弾いてやった。]
本当は…俺は――、君を養い子として見た事は無い。
[そこで一旦、言葉を区切ると。
アレクシスの瞳を見つめ、背中を擦っていた手を取り引き寄せる。]
君は俺にとって――とても…
愛しい存在だ…"アレクシス"
[声が上擦るのは、愛しい男の手がたどたどしく素肌を暴いて晒していくから。
それと競うように、食まれた痕の残る指で、男の鍛えられた肩から汚れた上着を滑り落としていく。
互いを隔てるものがなくなって、体温の低い素肌の胸を触れ合わせれば、やっと、と歓喜の吐息が洩れる。
猫のごとく擦り寄って、ひたりと相手の身体の窪みに収まり重ねあう。]
思い出した …… なにを
[呟きを耳にし、仰のいた唇は、接吻で塞がれた。
唇のあわいから滑り込む、なめらかな彼の一部]
[今の彼はどんな顔をしてるだろう?
――まあ、大体予想はつくのだけど。
ムードぶち壊しの自業自得をする前の問いに言葉だけで返すことはしない。
唇へと啄むように一度くちづけを落とし、ダーフィトを抱きしめたなら、贈る言葉はただ一言]
――君は、本当に面白い
[「時間をくれ」への返答なのだから、これで十分だろうと]
[舌を歯列へ這わせる。
奥から一つ一つの突起を辿って、牙を探り当てると擦り付けるように強く舌を押し当てた]
ッ
[ピリ、と痺れるような陶酔が走って指が震える。
流れるあかは自分には味気ないもの、
請うように柔らかな舌を絡めとり、そこへ血を擦り付けて、]
──ふ、
[引き寄せた舌へ深々と噛み付いた。
どく、と溢れ出す美酒]
ん はァ
[血と血を混ぜ合わせながらふかく、ふかく。
奪われ、奪い、互いを食い荒らす口吻に溺れた]
猫〜? …あう。
[まんまと弾かれた額を覆いながらロー・シェンを見上げ、いつかその熟練猫との勝負を! とか、わかりやすい闘志を燃やしたりしつつ、再度、促される前に、頼まれ事の首尾を報告する。]
マスター・ステファン=リッシュのところへ行って、ちゃんと渡して、読んでもらった。
オレへのレッスン依頼だったんだね。
吸血鬼同士でそういうこともするんだ?
…何が正しいものかっ…
[拗ねたように口にするが、反抗が無駄なことももう悟っている。
だが真坂さらなるドレスの改良デザインをクレステッドが考えているとは思わず、着々とドレスが増えることになるなど今は知るべくもなかった。]
……なに。
[馬乗りになり身体を反転させられて、見上げる形になる。
憮然とした表情で、その銀と蒼の揺らめく瞳を見返した。]
飴玉飛ばす術を見せてもらって、魔術の基本を教えてもらった。
「このように“在る”と意識すること そのように“在れ”と意識すること」
あと、稽古は保護者が見ているところでやれって。
[そこで、じ、とロー・シェンを見つめる。]
あのさ…
マスター・ステファン=リッシュは、「自分を変えるのは一番大変」って言ったけど、
彼は孤独なのかな。
あの夜…。
初めて君を見た時、なぜだかとても……惹かれた――。
あの時君は、バランに人としての命を奪われて、悲しみの底に沈んでいたと言うのに…。
月明かりに照らされ、ただ1人廊下で斃れる君の姿は
まるで夜の女神の化身のようで……、
嘆きに伏している君は、どこまでも美しかった――。
[己が親である故に子は幸福だと言い放つ、その疑いない響きに、
微かに咽喉を揺らし]
…一時も止まずご深慮下さる御尊父を、ファミル様は
お持ちでいらっしゃいますものね。
[考えることを決して止めはしないだろう父を持つこと。
紆余曲折を経ようとも、必ずや価値ある関係に繋がるだろうと]
[意図せず零した囁きは、呆気ない程にさらりと打ち消された]
――……、
[生を与えられてより、奪われる最期の瞬間までも享受し続けてきた恩恵に。慈愛に、忠心に、犠牲に。
報い、相応しくあるためにできる事など、今や限られると決めた
心が言葉を失う]
……更なる、高みに――…?
[――そんな事が、果たしてできるのだろうか。
家族を、臣下を、領民を、愉悦とともに弄んだ悪鬼と同じ種で
ありながら、同じ道に墜ちることなく。
再び湧き上がる自問は、二度は声に成らず]
[力強く保障する声は、他者にも疑いを赦さぬ響きに満ち]
……今宵、閣下の庭で、お目通りが叶いましたこと。
何より幸いに存じます、マスター・アハド。
[幾度か開き、閉ざした唇がやがて結んだ辞は、
暇乞いのためだけではなく。
訪れた時より深く礼をとり、闇夜の王の深淵を後にした*]
最低だろう…?
悲しんでいる君を見て、そんな事を思っていたなんて…。
[それでも引き寄せた手は離さず、彼を閉じ込めるようにアレクシスの背に腕を回す。
そして彼を逃さないために、己にも逃げ場を許さない言葉を、
そっと耳元に囁く。]
[擽ったそうに身を縮めるのを抱き寄せた腕で制して。耐性がついたとはいえ、くらりと目の前が揺れる。同時、逃げようと捻った体が後ろに倒れる]
あ!
[支えようとする間はなかった。
――ごん!
派手な音が浴室に響く]
― 現在 ―
[幾許かの言葉を交わした後、王たる吸血鬼の居室を静かに辞し、
真っ直ぐ自室へと戻り]
…只今、戻りました。マスター。
ちょ、大丈夫か!
[慌てて支えなおす。眩暈は一瞬のことで、血の量も少なかったためかもうなんともない。
目の前の彼を見直せば、なんでもないように。こちらに視線を向けて]
??!!
[唇に触れる柔らかな感触。何度か触れてはいるが、餌を与える以外の目的で触れたことはなく――華奢な腕が背中に回った]
同情はするなよ。我が道は世にいう正義ではなく、だから後悔もない。
[そのような感情が浮かべたら許さぬ。出会った時と同じ冷酷な色が双眸に宿らせながら頬をから顎のラインを指でなぞりおろした]
「――君は、本当に面白い」
[そんな言葉が聞こえれば。きっと、許しはもらえたのだと]
……。
[躊躇いながら、自分からも彼の小柄な体を抱きしめた]
君が好きだ――アレクシス…
[鼓膜を震わせるように、
彼だけに聞こえる吐息が耳たぶを掠めるように。]
初めて見た時から、好きだった――。
[それが己にとっての、全てだった。]
そうか。我にはそれ以外に道はないためその道を歩いていたと聞こえたな。
本が好きであり学ぶことが好きであることは本当であろうがな。
[書庫でみせた瞳の輝きまで敷かれた選択だとは思っていない]
二度とか…そうか…
[一度目があったから、人の血を欲さぬはそれが理由なのだろう。
鳥獣の血まで飲まぬというのは少々げさなくはあっても、渇き飢えてまでそれを愚直に進む養子であることを再確認するのであった]
――いつか、きっと遠くない未来に、彼は僕の前を去るだろう。
彼の在り様を見ていれば、それはしかたのない事だと思う。
それでも、彼が僕を厭う度、僕はこの日を思い出すだろう。
僕が彼の牙を穢した日
彼が僕の命を与りたいと言ってくれた日
こんな日が在ったという事実だけで、僕はきっと幸せだ――…
[わかりやすく闘志を燃やすレトを楽しく眺める。
今のレトと本気でやり合ったら、怪我の一つ二つはもらうだろうかと考えつつ。]
そうか。
上等だ。よくやった。
[報告に頷いて、レトの頭を撫でる。]
術だのなんだのは俺も詳しくないからな。
機会を逃す手はない。
[教授を依頼して素直に教えてくれるかという懸念はあったが、要らぬ心配だったようだ。
もっとも依頼に対してどんな反応が返ってきても、なんらかのものをレトが掴んでくるように、という意図で送り出したのだ。]
[魔術の基本については頷くにとどめた。
自身が扱う力は、それこそ理論から入ったものではない。
赤子が立つことを覚えるように、経験と時間によって身につけたもの。
レトには経験を積ませる意味で話を聞かせにやったが、正直に言えば理論は理解が難しい。]
ステファン=リッシュが?
[見つめられ、問われて小さく鼻を鳴らした。]
あれは、眷属の中でも特異な一族だ。
孤独、というならばそうかもしれんな。
他と交わろうとしない変わり者だ。
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