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人里に身を潜めながら、夜毎人を喰らうという恐ろしい人狼。
幾つもの村を滅ぼしてきた狡猾な化け物の噂が、遂にこの地にも訪れた。
震え上がる者、馬鹿馬鹿しいと一笑に付す者、そして…。
様々な思惑を余所に、人々は話し合いのため集うのだった。
1人目、語り手 が参加しました。
語り手 は、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
村の設定が変更されました。
2人目、将官 ギィ が参加しました。
将官 ギィは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
[夜も更けたとはいえ、賑やかな町の繁華街だった。
ちらほらと歩く人影もあれば、時折車も通る。
不思議なことに、その誰もが男に気づかない様子だった。
スーツにマントとシルクハットいう、いくらか時代がかった服装の上に、
降りたパイプシャッターと、鍵の掛かったガラス扉をすり抜けるようにして、宝石店から出てきたというのに。
道行くものに見とがめられぬまま、男は宝石店の前で立ち止まった。]
間違いない。これだ。
[片手を挙げ、目の前に翳す。
指先につまんだ石が、月の光を透かして深い赤に輝いていた。
正面から光を当てれば六条の光芒を見ることもできるだろう。
それは滑らかに丸くカットされた、大粒のルビーだった。]
ピジョンハート、と呼ばれているのだったか。
これはおまえたちが持つようなものではない。
私がもらっていくよ。
[誰にともなく告げて身を翻し、宝石店の前から立ち去る。
そのまま暗い路地へと歩き出した。*]
将官 ギィ が村を出ました。
2人目、 ギィ が参加しました。
ギィは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
3人目、 タクマ が参加しました。
タクマは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
[ サム・タクマ・シースがその男を見かけたのは、家に帰る途中のことであった。
信号待ちの車窓の外の夜の風景に、不意に現れた色と光は、上ったばかりの満月を思わせる深紅。
男のいでたちは、いささか時代がかっていたが、正装である。
宝石店で買い物をしそうな客として常軌を逸しているわけではない。
ただし、その店がすでに閉店後でなければの話。 ]
[ 勤務時間外であるのは、タクマも同じであった。
しかし、警察官として見過ごせる事態ではない。
仕事用の通信機で、署に一報を入れ、巡回にあたっている警官を確認に寄こすよう要請する。
自身は、歩き出した男を車で追った。
最新型ではないが、電気自動車である。静音性は高い。
が、男は狭い路地へと向かうようだ。
急いで起動したデジタルカメラで男を写す。* ]
[足を止めさせたのは音ではない。
視線と意思。こちらへ向けられたそれを感じたからこそ。
振り向けば、車内の男とカメラ越しに目が合う。合った。
ありえないことだった。
見とがめるものなどいないはずだった。
だからこそ、興味を引かれた。]
[微笑んで、シルクハットを軽く持ち上げる。
それを頭に戻すやいなや、身を翻して路地の闇に滑り込んだ。
紅い髪とマントが誘うようにたなびく。
デジタルカメラは、風景以外、なにも写しはしないだろう。**]
4人目、 ミヒャエル が参加しました。
ミヒャエルは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
――国境の砦近く――
[悪路にガタガタと揺れる車内、運転しているのは自分ではない。まだ気を抜けないとはいえ長年争いを続けてきた隣国との講和が成り、多少空気が緩むのは仕方のないことだろう。わざわざ会話を止めるのも無粋かとひとり視線を窓の外に向ける。
争いの発端は単純なもので、だからこそ長く続いた。両者の力は多少我が軍の方が上だろうか。だからこそ、やっと終わらせることができたのだが……予想では、あと数年は続くだろうと思われていた。まだ。相手はまだ戦う力を残している筈だ。
こちらに有利な条件での戦争終結を飲むので使者を寄越してほしいと言ってきたのは向こうからで、実際予想していたよりも揉めることなく講和は結ばれた。気のせいならいい。けれど、使者として相手が指名してきたのはこの戦いでかなりの活躍をしているミヒャエルの上官だった。だからこそ使者に、というのは分からなくはない。けれど不穏なまま結ばれた条約にどれだけの信頼が置けるのか]
「また難しい顔しとるな」
[後部座席からかけられた声に、ひたすら森の奥へと向けていた視線を後ろへと向ける。分かってはいるのだ。この調子で警戒を続けていたら、持たないことは]
……あと一日もあれば、安全な場所まで着きます。そこまで、なんとしても。
[固い表情のまま告げた言葉に上官は苦笑する。一人ではないのだから、皆でという言葉には頷くが警戒を解く様子もなく、愛用のライフルを抱えなおした。彼の上官は指揮官としては優れているが、個人としての戦闘力だとここで一番高いのはミヒャエルなのだ]
[視線を森に向けようとして……森と反対、崖の上にキラリと何かが見えた瞬間のミヒャエルの判断は早かった]
伏せろ!!!!
[叫ぶ声に隣の運転席に座っていた同僚がブレーキを一杯に踏む。完全に停まりきるよりも早くドアを押し開けて飛び出し、銃口を崖の上に向ける。さすがに狙いはつけきれない。ガァァンと派手な音が響くのと同時、レバーを引き下げる。ガシャリと空になった薬莢が零れ、新しい弾丸が込められた。ミヒャエルのものではない銃声が響き、車の近くの土が跳ね上がる]
[見えている人影は多くない。これなら自分が囮に残り、車を飛ばせば――視線を先に向けて、小さく舌打ちした。
待ち伏せされている。気付くのが襲撃予定箇所よりも早かったのだろう、少し距離がある。これなら森に逃げ込めさえすれば……]
こちらから!車を盾に!先に待ち伏せがあります、森に逃げて下さい!全員バラバラに!
[上官の手を勢い良く引き、森へと押し込んだ。次々に人が飛び出してきて、あとは運転席に座る同僚一人、と振り返ると同時、車は勢いをつけてフルスピードで突っ込んでいく]
おいっ!!
[ミヒャエルと同時に軍に入った彼は、最近結婚したばかりだと知っている。なにせ彼の結婚式にも出席したのだから知らない筈がない。数発の弾丸が飛ぶがスピードについていけずに地面や森の木を削るに止まる。猛スピードのまま敵の待ち伏せに突っ込む、寸前で運転席から男が転がりだしたのだけを確認して、自分も森の奥へと走り出した**]
/*
お邪魔します、よろしくお願いします。かんのこさんのリアルが酷そうですが二人で設定作って遊んでたら辛抱たまらんようになって飛び込みました。
私には珍しく戦えるキャラですよ!アクションできるかなぁ。まぁ相方人外だからまったく歯が立たないけど!
こう、反撃はするけど、どうやって歩み寄りをするかが難しいな。設定的にミヒャエルからはなかなか歩み寄れない。姿見かける距離になったら容赦なく攻撃するしかない。
途中からつい楽しくなって武器を色々調べていたんだけど、結果的にめっちゃ趣味に走りました。ライフルはミンチェスター、レバーアクションがカッコいいから。
拳銃は見た目重視でコルトSAAになりました。コルトパイソンの見た目がカッコいいんだけど、SAAだとミンチェスターと弾丸が共通できるから。ライフルを主武器に設定するならこっちかなーと。
あとブーツにナイフと、投げナイフも持ちますよ!和平条約の使者ってなんなんでしょうね!
*/
[ レンズを挟んで視線が絡む。微笑みと会釈を投げかけられる。
ドキリとした。
気づかれた、という知覚。
それは、職業上の失敗を察知したものである以上に、極めて稀なことであったからだ。 ]
[ サム・タクマ・シースの特性を簡潔に言い表すならば、”目立たない” である。
引き締まった身体に上背もある。
だが、屈強な警官たちの間にあっては、それも際立ったものではない。
仕事ぶりは堅実である。
いくつもの事件解決に関与しているが、とりたてて手柄は認められていない。
逆に、処罰の対象になるようなこともない。
縁の下の力持ち的な役回りをしている。
ふと気がつくと、もう別の署に異動しており、「そういえば、そんな同僚がいた」と思い出されることすら、ほとんどなかった。
ファーストネームからしてsome(誰か)に通じる平凡なものである。
そんな風にして、生きてきた。
──今夜までは。]
[ 礼装男は身を翻して路地に消える。
タクマは、その場に車を停めて外へ出た。
本来ならば仲間の応援を待つべき場面である。
けれど、この十数秒の間に、目撃情報は一般人である同僚らの手には余る案件に昇格していた。
デジタルカメラのディスプレイにも、男の姿は写っていなかったのである。
タクマは、男を追って路地の闇に飛び込んだ。*]
5人目、 ヒース が参加しました。
ヒースは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
── 国境の砦・居住区 ──
[くだらなすぎる理由で始まった、長きにすぎる諍いも
今日でやっと一段落つけることになった。
隣国の王妃が欲しいだなんてなんて、知ってしまえば尊き血について再考したくなるような理由を御旗に掲げ、交えた戦端は燃え広がり、剣が銃に変わっても終わる気配はなかった。
発端である色狂いが息絶える頃には、引くに引けなくなったのだ。
まあ、今の砦に詰める者たちにそんな戦の発端を知る者はほぼいない。
今を生きるのは、生まれてからずっとあの国だと教えられ続けた者が殆だ。
それでもこの戦は終わるのである。
終わるかもしれないのではなく、終わるのだ]
── 国境の砦・居住区 ──
[くだらなすぎる理由で始まった、長きにすぎる諍いも
今日でやっと一段落つけることになった。
隣国の王妃が欲しいだなんてなんて、知ってしまえば尊き血について再考したくなるような理由を御旗に掲げ、交えた戦端は燃え広がり、剣が銃に変わっても終わる気配はなかった。
発端である色狂いが息絶える頃には、引くに引けなくなったのだ。
まあ、今の砦に詰める者たちにそんな戦の発端を知る者はほぼいない。
今を生きるのは、生まれてからずっとあの国だと教えられ続けた者が殆だ。
それでもこの戦は終わるのである。
終わるかもしれないのではなく、終わるのだ]
(──…)
[終わる理由を見つけることができなかった戦いに、終わる理由を突きつけた秘された功労者は、居住区から商業区へ流れる人々を見送りながら、目的の人物を探している。
先程まではこの場所も色々な感情で溢れかえっていたのだけれど。
故郷に思いを馳せ笑う者、抑圧からの開放に高揚し泣き出す者
いろんなものが擦り切れて疲労感しか残らなかったことに力ない笑みを浮かべる者
突然の使命の喪失にぽかりと穴が空いたようになにも表すこともなく立ち尽くす者
悲喜交交であったのだけれど。
彼らはすぐに、この砦の大部分を占める「よくわからないけど臨時収入ができたから一杯やろう」という者達の波に飲み込まれてしまい、喜ぶも嘆くも、とりあえずは呑もうという流れとなってしまった。
それを悪しと言うつもりはないし善しというつもりもない。
けれど──…]
──…こんだけうじゃうじゃいると探しにくいなあ
[密集しすぎの人の波から、己の上官を探すのは……とても、とても骨が折れるのだ。
愚痴るくらいは許して欲しい]
ままならぬものだな
[密集しすぎの人の波を見送って、あれの中の吾は目を開けた]
そのまま抜け出してしまえばいいだろうに、だから小物は小物なのだ。
[ぶちぶちと文句を垂れても、小物の耳に届くことはない。
吾の影響など、小物に焦燥感を与えるくらいが精々だろう]
見失ってまた探しだすのも面倒だというのに……
[世界から世界へ、界渡りに失敗し。忌々しいあの女によって、吾が小物と割かれ、封され幾程経ったのか。
やっと、やっと見つけたのだ、あの日見失った女を見つけたのだ]
……居たのが戦場であったのは予想外であるが
[開放される条件がわからない以上、死なれても困るのだ。
気軽に聞けぬ状況も、それはそれで困るのだ。
故に、停戦をすっ飛ばして、戦自体を終わらせなければならなかったのである。
まあ、あの女をひと目見ただけで、覚醒時間が伸びたのは渡りに船ではあった]
しかし、ほんに謎だの
[王妃付という程であるし、吾を封じる力も魔力もあるのだから、まあ戦力的にはわかるのだが。
だが女であるし貴人でもあるはずなのだ。
彼の国がそんな存在を前線に引っ張り出すのが不可解だと。
彼の国がとうに王政でも貴族社会でもなくなっていることを知らぬ吾は、眠る時間が多すぎて感覚が狂いに狂った吾は、大いに首を傾げるのだった]
[深更になっても昼間の活気の名残を残す繁華街とは違い、角をひとつ曲がった路地の奥は闇がわだかまり夜の生き物が蠢く世界だった。
ビルの間を縫うように走る路地には切れかけた電灯がいくつか瞬いている。おぼつかない光はむしろ夜を深くしていた。
並の人間なら足を踏み入れるのも躊躇うだろう道を、迷いのない足取りで進んでいく。
闇は苦にはならなかった。
物陰に隠れた鼠が髭をそよがせる様さえ視えている。
背後から追いかけてくる男の姿も、また。]
[深更になっても昼間の活気の名残を残す繁華街とは違い、角をひとつ曲がった路地の奥は闇がわだかまり夜の生き物が蠢く世界だった。
ビルの間を縫うように走る路地には切れかけた電灯がいくつか瞬いている。おぼつかない光はむしろ夜を深くしていた。
並の人間なら足を踏み入れるのも躊躇うだろう道を、迷いのない足取りで進んでいく。
闇は苦にはならなかった。
物陰に隠れた鼠が髭をそよがせる様さえ視えている。
背後から追いかけてくる男の姿も、また。]
[振り切ることは考えていなかった。
いや。試みたとしても、彼ならばなお追ってくるかもしれない。
そんな、期待。
急ぐ素振りも見せずにゆったりと歩きながら、掴まることのない距離を保つ。
誘っているつもりはない。
けれども、追いかけて来るのを心のどこかで待ち望んでいた。
角の曲がり際や、積み上げられた箱の影に入る間際には流し目ひとつ投げかける余裕さえみせて、あてどない逃避行を暫し続ける。*]
[目的の人物を探し当てたのは、吾なる存在の愚痴よりほんの少しだけ未来の話であったのだが]
やっと、やっとみつけましたよ隊長ぉっ!
どご行っでだんですか、俺……おでぇっ!!
[内部から煽られた焦燥感は、涙目では済まされないほどに小物の感情をかき回していたのだ。
それから開放された安堵に、小物は滂沱の涙を流しながら己の上官に駆け寄った。
鼻水と涙でぐしゃぐしゃになった小物に、駆け寄られた隊長なる男は「うわ、寄んなきたねぇっ」なんて引きつつも、小物の頭を撫でながら宥めようと試みる]
[そんな試みの甲斐あって]
ぢがくに、あいだい人が、いで、俺……
[隊長から受け取った、ポケットに入れたままだったのだろうくしゃくしゃになったハンカチを手に、小物はえずきながらも、なんとか伝えたかった言葉を口にすることができた。
困り顔だった隊長も、小物の言いたいことは理解できたようで。
「…………女か? そうか女か!」
近くにいる女なんて商業区の給仕か商売女だろうと当たりをつけた小物の上官は、感極まった(ように見える)自分の部下の様子から、一緒になる約束でもしていたのだろうと、こくこく頷く小物の肩を叩いて笑った。
女が女でないなんて、致命的な行き違いに気づける状態ではないものだから、
小物がかつての敵軍を追いかけるなんてことは予想できるはずもなく。
小物は、デートにでも使えと渡された外出許可とバイクの貸与許可を手に、砦を抜け出すことができたのだった**]
[ スラムとは異なるとはいえ、建物の隙間のわずかな路地は、何が潜んでいるかもわからない危険な領域だ。
長身の男は、その中を優雅とすらいえる足取りで縫ってゆく。
振り向きすらしない様子は、むしろ罠めいていた。
曲がり角でのわずかなスローモーションに投げかけられる視線は、確実にこちらを捉えているはずだ。
この先に仲間がいるのか。
その可能性を考えれば、単身で追ってゆくのは危険であろう。]
止まりなさい。
[ いくらか見通しのきく直線で、冷静な声を飛ばした。
銃はいまだホルスターの中だが、いつでも抜き撃ちできるよう、ジャケットの前ははだけてある。* ]
[止まれと言われて止まる者はいないだろう。普通ならば。
普通ではない逃亡者は路地の先で足を止めて振り返った。
ふわと翻る外套が地を払い、そこにだけ月明かりが差すかのよう。
人工の迷路を舞台に逃走劇を演じるのも楽しい。
夜が終わるまでこうしていても飽きなかっただろうが、投げられた変化の一石は歓迎した。]
何故?
どうして私を追ってくるのかな?
[両手を軽く広げて問う。
手にしたステッキが、かつりとアスファルトの上で鳴った。]
[止まれと言われて止まる者はいないだろう。普通ならば。
普通ではない逃亡者は路地の先で足を止めて振り返った。
ふわと翻る外套が地を払い、そこにだけ月明かりが差すかのよう。
人工の迷路を舞台に逃走劇を演じるのも楽しい。
夜が終わるまでこうしていても飽きなかっただろうが、投げられた変化の一石は歓迎した。]
何故?
どうして私を追ってくるのかな?
[両手を軽く広げて問う。
手にしたステッキが、かつりとアスファルトの上で鳴った。]
見たところ、君は店の者でもないようだが。
[観察する眼差しで追跡者の全身を舐める。
重心の僅かなズレから、武器を携帯しているのが見て取れた。
たとえそれが何であれ脅威ではないだろう。
だが、彼自身からは武器などよりよほど危険な匂いがした。
己を見とがめられた瞬間と同じ、危険と興奮の戦きが背筋を伝う。]
私に、なにか用でも?
[駆け引きを楽しむ口調で問いかけながら、重心をゆるりと変える。
近寄ればすぐにでも鬼ごっこを再開すると、言葉によらず示していた。**]
/*
今気付いた。 ミヒャエル普通のとローゼンクロイツ、どっちも軍人で肩書きも同じだから同じつもりでいたけど軍服が違う!ローゼンクロイツだとヒースと軍服が同じになってしまう!敵方だからこっち選んでおいてよかったー
*/
/*
ヒース君には挟まってごめんね。
終わり記号ないなとは思っていたけれど、こちらも多少時間が押してたからさ。
人外楽しげ。あとでじっくり設定とか見たいやつだ。
[ 男はいささかの動揺も見せずに振り返った。
ステッキを鳴らして問いかけるさまは、まるでスポットライトを浴びた俳優のよう。
ひどく場違いな出で立ちでありながら、この場を支配している。
生まれついての貴顕といったところ。]
署までご同行願う。
[ 重ねられた問いと舐めるような視線が、彼我の距離を無にして触れてくる。
久しく感じたことのない濃密な関心に心が騒ぐ。
それを表に出さぬよう、努めて事務的に用件を告げた。*]
[数人の部下と共に森の奥へと逃げていく上官の後姿を見送る。ミヒャエルが護衛をするのがいいのだろう。けれど足止め役も必要で、それを部下に任せてしまったなら、きっとその部下は生き残れない。ならば自分が残るべき。ミヒャエルならば、幾らかなりともこの状況でさえ生き残れる可能性はあると自負がある。
ライフルの届く射程ギリギリ、射線は通る位置。木の陰に半分身を隠しながら、待つ。
どこかで女性と勘違いされてるなんてことは当然知る由もないのだった*]
[
今度こそ、彼女に、会いたい、会って、俺は──…!
今度こそ、あの女に、会わねば、会って、吾は──…!
伝令用のそれは少々の悪路もものともしないものだから、引かれた道なぞ関係なしに、小物は己の感覚の導くままに森の中へと突っ込んだ。
ちなみにかつて見失ったと言うだけあって、吾も小物も彼女を探知する機能なんてものは持ってはいない。
つまりはまあ、小物の感覚も、その中にある吾の感覚も、なんの根拠のない当てずっぽうでしかないのである。
山勘だよりに通れぬものを迂回して、通れるものは踏み倒し、森の中を爆走するバイクは、森に新たな獣道を生み出しながら信じる道を突き進む。
そうして彼が出会ったのは、見慣れた制服に身を包む者達と、それに追われる目的の人物と別れた後の講和の使者の一団>>29だった]
[
今度こそ、彼女に、会いたい、会って、俺は──…!
今度こそ、あの女に、会わねば、会って、吾は──…!
伝令用のそれは少々の悪路もものともしないものだから、引かれた道なぞ関係なしに、小物は己の感覚の導くままに森の中へと突っ込んだ。
ちなみにかつて見失ったと言うだけあって、吾も小物も彼女を探知する機能なんてものは持ってはいない。
つまりはまあ、小物の感覚も、その中にある吾の感覚も、なんの根拠もない当てずっぽうでしかないのである。
山勘だよりに通れぬものを迂回して、通れるものは踏み倒し、森の中を爆走するバイクは、森に新たな獣道を生み出しながら信じる道を突き進む。
そうして彼が出会ったのは、見慣れた制服に身を包む者達と、それに追われる目的の人物と別れた後の講和の使者の一団>>29だった]
[終わらせたはずの戦場にある見慣れた制服の存在に、
この場に居てはいけないはずの存在に
それの相対するものが、攻撃してはいけない存在であるということに]
早くあの女をさがぎゃくぞくはちゅうすべし!
[小物はあくまで彼女を追おうとする吾の意識を押しのけた。
先程まで小物はあの砦の中で、感情の奔流の中に居たのだ。
呆然とするものもいたけれど、きっと今頃はその心にもケリを付けていることだろう。
それに隊長は笑っていたのだ。幸せになれと小物を送り出してくれたのだ。
そしてなによりも、この戦は続かずに、終わるはずということも、どうしてか小物は確信しているから。
この世界で、この国で、この軍で、吾より長く表にあった小物には、今やるべきことがあったから。
小物は吾の制止も聞かず、見慣れた制服の一団の横っ腹に、バイクごと突っ込んだのであった]
[アクセルを踏みこんでのバイクの突撃であったが、何とは言わないが柔らかいクッションがあったおかげでその機体には大した傷はついていない。
吾はそれに安堵して、抑え込めなくなった小物にこの場は任せるしかないかと、意識を鎮めようとするのだが]
……誰か、いる? いる、よね?
君は──…
[己の頭を小突きながら、ぼそりと呟く小物の言葉に、その行動を中断する。
小物が初めて行った反抗は、決定的な意見の違いは、違う自我があることを認識させてしまったらしい。
吾が何であるか問い詰めようと、小物が続けて口を開くが、見慣れた制服から見慣れた銃を向けられれば、それを断念せざるを得なくなり]
……ん、んー、あとで聞く!
[小物は一言そう叫ぶと、放たれた銃弾を避けることもせず、ポケットに手を突っ込みながら、かつての味方に踊りかかった]
[かつての友軍の持つ銃が火を噴く度に肌に生まれる穴は、みるみるうちに肉を盛り上げ鉛を吐き出し肌を塞ぐ。
その間も小物は痛みを感じないから、怯むこともなく彼らとの距離を詰め、ポケットから両手を抜き出し一回転、その場で舞って見せるのだった。
手先の軌道に沿うように、元友軍らの首に咲かせた赤を辿ったなら、小物のもつそれが刃物のようなものでることに気がつけるだろう。
近すぎる襲撃者を相手に取ってのライフル弾では分が悪い、故にかつての友軍が小物に向けるはサーベルにショベルに銃床と、ナイフでは少々分が悪いものとかわる。
とはいえ小物は被弾を気にしないものだから、打撲も刺傷も気にせずに、刃を閉じた拳で殴りつけ、銃を持っていないように見える拳を押し付け、接触距離から銃弾を放つ。
絡繰りを知らねばなんと恐ろしい生き物だろう。
小物などと呼ばれる怪物を相手どった者達に、やがて恐慌が生まれ、それはみるみるうちに伝播した。
そうなってしまえば、小物に負ける道理はない。
ただの的と化したかつての友軍を壊滅させるのに、それほど時間はいらなかった]
[
あがっ 痛、痛い! ふざけ──…っっ!!
化物の絡繰りこと吾は、自重できない小物の突貫に怒りをこめて呪詛を吐く。
熱した鉛に焼かれるのに痛みがないわけがないだろう?
不自然な修復に痛みが伴わないわけがないだろう?
骨が砕ければ痛いし、それをつなぎ合わせるのにも激痛が伴うものなのだ。
違う理のもとにあるとはいえ、吾らは人に近きもの。
生存に直結する感覚を切り離すことは難しいのだ。
故に、表にある小物が生を手放すことがないように。
生を諦める程の痛みに襲われないように。
痛覚の大半を吾が引き受けているだけに過ぎないのだ。
吾が代替しているだけで痛覚はあるのである]
[
それ、を、あの、小物は……ぎあっ
新たな呪詛は新たな苦痛にかき消され、吾は小物が勝利を収めるまで、与えられる激痛に悲鳴をあげつつ、のたうち回ることしかできず。
結局、小物が彼女の上官にバイクを譲って砦に向かうよう促した後、彼女に助太刀するべくその場を辞すまで、口も手も出せなくなったのだった*]
……で、怪我しても痛くないのは、吾様のおかげなんだ。
うん、今は無理だけどあとでなんかお供えする!
[砦への先触れの為の一人にバイクに預け、彼女の上官に続く者達は歩きのまま、包囲を抜けることはできるからと出来たての獣道へと送り出し。
小物は、彼女を追う道すがら、小物は吾が何者であるかを問いただすことにしたのだが……
その結果がこれである。
何がどうすれ違ったのか、小物の認識はこれである。
あげく吾が、吾は吾であるなんて第一声をかましたせいで、呼び方も吾様で固まってしまった。
己についた精霊かなにか……
まあ、悪いものではないだろう吾様の為にも、彼女を助け出そうと心に決め、小物は先を急ぐのだった]
(――え?)
[襲撃者はきっとミヒャエルの上司の姿を追って、森へと踏み込んでくるだろう。同僚の突貫と片方は崖の上、時間稼ぎはできたはずだ。けれどこのまま諦めるとは思えず、じっと息を潜めて森の向こうに人影が現れるのを待つ……のだが、さほど間をおかず森の外から聞こえてきたのは銃弾と叫び声、怒号、悲鳴]
――……。
[単純に考えるならば、援軍が来た。どこから?我が軍から、は来る理由がない。砦側から?どちらにしても、自分が確かめなければ。そして上官を探しに行かなくては。森は深い、地図もなく当て所なく歩けば無事でいられるか分からない]
……、
[足音を忍ばせて、距離を詰める。突然飛び出してこられても対処できるよう、ライフルはすぐに発射できるよう構えながら物音を立てないようにと――そして目に入った光景>>33に、思わず銃口を謎の人物へと向ける]
(いや。ダメだ。ダメだ、効いてない。逃げ、ないと)
[なんだあれは。銃弾はいくつも『アレ』の胸を穿っている。腕も、足にも。その証拠に服にはたくさんの穴が開いている、なのに『アレ』は動きを止めることなく、埋め込まれた銃弾はすぐに外へと押し出されている。
――その原因たる彼の中の誰かが悲鳴をあげているなど知らないが、知らぬ目に目の前の光景は地獄のようとしか思えなかった。
なんなのだあの化け物は。穴だらけとはいえ、『アレ』が着ているのはたしかに今まで敵軍として見てきた軍服である。ならばあれは向こうの兵士なのだろう。何故味方を襲っているのかは分からないが、こちらに向かってこないとは限らない]
[逃げに徹したのは、敵わないというのもあるが、恐怖の感情もあったかもしれない。ギリギリの理性で逃げた上官とは違う方向へと向かう。あれを、あちらへ向けてはいけない。
ブーツに仕込んだサバイバルナイフで、近くの木に派手な傷をつける。来るならこちらへ。それから、撒こう。撒けるのかは知らないが、走るスピードは人並みであってほしいものだ。
それを幾度か繰り返し、やがてひっそりと距離を取るべく走り出した*]
交戦した、のかな?
でも、それにしては……
[今度は迷わないように、追い抜かないよう人並みの速度で、示された方向へまっすぐに駆け抜けた。指し示したのは、当てずっぽうに進む吾や小物ではないものだから、その距離は着実に近づいていく。
やがて派手に切りつけられた木々>>39もその視界に入りはじめるのだが。戦闘があったと捉えるには、地面に僅かに残る足跡は乱れることなく一方向を示していることから、小物は状況を判断できずに首を傾げた]
…………誘導。なるほど。
[そうしていると己の中から答えを与えられ、吾様はすごいなあなんて小物は一人で頷いて。
でもなんで?なんて疑問も浮かびはするけれど、それはまあ会ったら聞こうと後回しにしつつ。
先程よりも速度を上げて誘いに応じることにした]
[誘われるまま一直線、一より早く駆け寄れば、彼女が撒く為の行動に移るより先に、彼女の姿を捉えることができただろう。
こちらを見据えて武器を構える彼女の姿に、彼女に会いたいとしか思っていなかった小物は軽いショックを受けてその足を止めようとするのだが、彼女が味方ではないと認識している吾は、小物の動揺に振り回されることはなく。
なんで──…小物、変われ
小物の疑問の声にかぶせるように、彼女が近くに来たが故に緩んだ封をこじ開けて、体の主導権を手にするのだった]
[己のうちでぴーぴー騒ぎ続ける小物の声から意識を外し、吾はかつて相対した女へと視線を向けて、声を掛ける段になって名前も知らぬことに思い当たった。
故に言葉を紡ぐより先に、杖を一振り女に向かって投げつけて──…
そして、その一撃は女の背後より悲鳴を挙げさせることに成功した。
こちらを警戒しすぎていたのだろう、女の気づけぬ二人の敵が、その背後にあったから。
杖の着弾を確認するよりも先に、吾は女との距離を詰め、そこからもう一方へと斬りかかり。
関係性は捨て置いて、男女の逢瀬を邪魔するなんて、情緒のない愚物共なんて吐き捨てつつ、赤く咲いた花の上、女の隣に降り立ったのだった。
割り込んだのは己の方であることを棚に上げた吾は、返り血で濡れた姿のまま、女へと手を差し出して]
──見つけたぞ、女
[にこりと笑おうと務めるのだが。
己の今の姿を顧みないその笑みは、彼女が手を取る未来など、とてもじゃないが想像できるものではなく]
[……呼びかけてみたものの返事がない。ただのしかばねでもないようだ。
さて、アプローチを誤ったようだが、ここからどう挽回すべきか。封印を解く方法もわからない以上、殺してしまうのはもってのほか、臍を曲げられても困るのだ。
じぃっと見つめ続ける時点で相当失礼なことなんて、吾は気づけはしないから。視線を途切れさせることはない]
──…ん?
[それ故に。それ故に気づいてしまった違和感を、今はうまく飲み込むことができなくて]
んんん?
[良く言えば中性的、悪く言えば男に間違えられそうな、その顔立ちは見間違える筈もない。
しかし、記憶の中の女に比べ硬そうに見えるのはなぜだろう? 服装のせいだろうか?
隣に立てば、当時もそれなりに高かった背も、更に伸びているようなのだが。 この世界の人種の成長期はいつまでだっただろうか?
そして声だ。もともと落ち着きのある低めの声であったのだが、さらに低くなってはいないか? 喉に病でも抱えたか?]
[ぐるぐる考え続けても、答えは降って湧かないし、そろそろ小物もやかましい。
とりあえず、女を前に、浮かび続ける疑問をなんとかしようと、幾分かがっしりして見えるその肩を掴むべく、吾は指を伸ばした*]
はは、なるほど。
君は、職業的忠誠心から私を追ってきたというわけか。
…残念だな。
[もう一拍挟んだ呟きには、酷薄で苛烈な響きが乗った。]
君には、私自身を追ってきたと言わせてみたい。
義務感や社会的な要請などではなく、
[語り掛けながら、ゆっくりと近づいていく。
両手は見せたまま、ごく自然な足取りで。
上質な絨毯の上を歩むかのように、足音ひとつ立てず。]
私が欲しいと、言わせてみたいものだ。
[最後の数メートルを瞬きひとつの間に征服して、左の掌を追ってきた男の胸元に伸ばした。*]
[後ろからの足音に舌打ちひとつ。撒くにしても、最悪迷わないようにと方向を確かめながら動いたのは失敗だったか。ともかく逃げ切れなかったのならと愛用のウィンチェスターを化け物へと向ける。効かないのは分かっているが、だからとおとなしく掴まるなど冗談ではない]
――近寄るな。
[警告。銃口はまっすぐに心臓へと向かっている。
銃を向けられた化け物が、何故か戸惑ったような、傷ついたような顔をしたものだからトリガーにかけた指先が僅かに緩む]
……?
[とりあえず、問答無用で襲い掛かってはこないのだろうか。けれど油断などできよう筈もない。
化け物の唇が、なんでというかたちで動く…続いての変化に慌てて指に力を入れなおした]
[それは、なんという変化だろう。
顔は変わらない。けれど表情が違う。存在感が違う。いうなれば、真の化け物――これは、勝てない。距離があるうちに、方向など気にせず無茶苦茶に逃げるべき化け物。
ゆるり、とした動作で手の中に現れた木の棒……杖?だろうか。動きはさほど早くはなかった、けれど反応しきれないスピードで投げられたそれは、どう考えても避けられないものだった]
――っ!
[棒は音を立てて真っ直ぐに飛び、背後へと突き刺さり、鋭い悲鳴を上げさせた]
っな……
[振り返りかけ、それだと化け物に背中を向けることになると咄嗟に横へと体を捻りながら跳ぶ。視界に入ったのはどうやら、背後からミヒャエルに襲いかかろうとしていたらしき追っ手の一人、そしてもう一人が化け物に切り捨てられるところだった。これは…距離が、近い。逃げられるものではない。勢いのままにこちらに斬りつけるなら、取り回しのきかないライフルではどうしようもない、けれど]
[なんなんだ。なんなんだこれは。この化け物は、自分を追ってきたのではなかったのか。攻撃してくる様子もなく……これでは、助けられた、ようではないか。そして化け物の呟きの内容が]
………。
[だんじょのおうせ、とはなんなのか。いや意味が分からないではないけれど、男女とはなんだ。自分は男だし特に女顔でもない、女と勘違いされたことなどないし、目の前の化け物はさらに勘違いしようもなく男でしかないと思うのだが――あれ、実は女性だったりするのだろうか]
[振り返った化け物、は。まさしく化け物であった。軍服のあちこちに砲弾による小さな穴が全身を穿ち、それでも覗く体には傷のひとつもない。たった今染まったばかりの赤に濡れた手を、こちらに差し出してくる――逃げようがない]
……あ?
(女?やっぱ女って言ったか?)
[いやそれは今優先事項じゃ…あれ優先事項なのだろうか。人違い?人違いで助けられた?人違いで追いかけられたのか?その場合、どうなるのだろうか。
こちらの困惑が伝わったのか、じっと目を見つめてくる。しばし、固まったようにお互いじっと見つめあい……やがて、何かに気付いたかのようにしげしげと全身を見始めた]
(いやどうみても男だろう!)
[とは思うのだが、声が出ない。男だとばれた場合、どうなるのだろう。そろそろと、化け物が考え込むうちにそっと刺激しないように後ずさりを試みる――のだが、化け物はそう長く考え込むことはなかった。徐に伸ばされた手が赤く染まっているのを見て、咄嗟に伸ばされた手を振り払う*]
/*
ううーん、表出しの秘話は色変わらないから、やっぱりチェック忘れるなぁ。
ところで吾様にひそやかに萌えております。
かわいいいきもののけはい。
/*
相方への愛は出会った瞬間にMAXだよ。
しかたないね。変態さんだからね。
初手で「おまえが欲しい」しなかっただけ、我慢してるんだからね。
[ 今は非番で、制服を着ていなかったからか、タクマの要請に男は困惑気味の表情をみせた。
悪びれた様子はなく、現場を目撃していなかったら、不法侵入および窃盗の重要参考人であるのを疑いたくなるくらいである。
だが、続いてもれた声は、嘲笑的だった。
それも一転、酷薄な響きとなる。
瞬時に、狩る者へと立場をかえたようなオーラに、うなじがそそけだった。]
[ 同道を拒否されたら、素手で仕掛けてみるつもりであった。
だが、先に動いたのは相手の方。
詰められた距離は、そのまま脅威となる。
男の左手が、こちらの胸元へと伸びた。
通常ならば捉えきれないほどの速さだが、タクマは見切った。
自分自身が戦うのことは少ないにしても、近接戦には親しんでいる。
生まれたそのときからずっと。
後ろへ下がろうとする無意識を抑え込んで、抜き撃ちに二発、撃つ。
威嚇ではない。
相手もまた人外であることは、自明の理であろう。*]
[
──ぱしり
そう音を立てたのは、女が振り払った吾の指先だったか、
それとも、赤いペンキをぶちまけたような地面からだったか。
それを確認するより先に、吾は、吾らは浮遊感に襲われた]
……
[視線を向ければ踏みしめていたはずの大地は消え、視界の下に森が見える。
遠くを見れば赤い月、どこか懐かしい風景は吾に己が身に起きた事を突きつけるには十分で]
ああ……
[先程までいた筈の、焦がれた世界との別れを惜しむように空を仰いだ]
── 回想 ──
[世界の切れ目から見つめ焦がれたあの世界より、招かれたのは遥か昔。
女ひとりを拐す為だなんて、理由を聞かされたときは失笑したものだったけれど。
それでも、この世界に在ることができるのならば、それはとてもとても素晴らしいことだと思えたのだ。
吾を殺しその力だけを手中にし、世界の王となろうだなんて、
彼らの身の丈に合わぬ野望さえなければ、吾は彼らの望むまま件の王妃を手に入れていたことだろう。
しかし、裏切りは起きたのだ。
故に吾は逃げ出して、王妃へとつき彼らを討ったのだ]
[そうしてめでたしめでたしなんて、悪が滅べば物語は大団円と向かうはずではなかったようだ。
拐わされはしなかったものの、拐そうとした時点で、火種としては十分だったのだろう。
諍いは戦火に成り代わり、陣取り合戦の延長を燃料に急速に燃え広がって収拾がつかなくなってしまった。
そんな時勢である、異界の怪物は当然戦力として求められるようになり。
また相対する国からは、抹殺または封じるべき対象となったのだった。
吾の前にあの女が現れたのは、国家間の板挟みで二進も三進もいかなくなったときであった。
元の世界に還すとの申し出を拒否すると、あの女は吾の額に手を当てて──…それからの記憶は吾にはない。
次に目を覚ましたときには、吾はすでに小物の中にいて、小物が為すことをただ見守るだけであった]
── 回想・了 ──
[
あの女の拒否の意思>>52により、働いてしまった防衛機構。
送還の術の導くままに、吾は小物ごとかつての世界に落ちていく。
周りにあった死体も、多少の草花も吾の視界の隅を泳いでいるあたり、吾一人のみを飛ばす術ではないらしい。
この分だとおそらく隣にいた女も、落下行に巻き込まれているだろうけど、まああの女なら問題なんてない筈だと目を閉じたところで──…]
っ!!!
[その変化は突然に。
突然すぎるがゆえに、対応することができなかった。
静観を決め込み流されるままでいようとした吾の内の、小物の存在が急激に膨れ上がり、吾の意識を塗りつぶしにかかる]
[
なんで落ちているんだろう?
わからないけど、彼女はどこにいったんだろう?
かわってと言い続けているのに無視を決め込む、わからず屋の吾様にまかせてなんていられない!
力づくで吾様から体の主導権を奪い去り、辺りを見回せば落ちいく彼女の姿が見えたから。
先程拒否された手、血塗れの手であることも忘れて、精一杯に手を伸ばす。
その手が届いても届かなくても、すべきことは変わらない。
意識のない吾様の力を引っ張り出して、彼女を地面の上へと送るだけだ]
[
果たして、小物が小物としてあって初めて使った魔術なるものは、彼女を無事に送り届けることができただろうか?
彼女の姿が目の前から消えたことで、成功したと思い込んだ小物は、すぐさま意識を手放してしまったから、
ない意識で具体的な行き先を意識するなんて器用なことはできずに。
重力の導くままに地表へと落ちていくのだった。
地表に付けば体がバラバラになる程の激痛に、吾は叩き起こされるだろうけど、
満足げに意識を失う小物の脳裏にはそんなことなど僅かにだって掠りもしなかった**]
[落ちる落ちる、落ちてゆく。
ああこれは多少受身をとったところで助かる高さではない。伸ばされた血まみれの手を咄嗟に振り払おうと手が触れた、その時に。ぱしり、と手を叩き落す音に重なるように響いた音は聞きなれない響きだった。
――ぴしり。
浮遊感、そして目に映るのは、見慣れない遠い地面。喉の奥に小さな悲鳴のようなものが生まれたが外に出ることはなかった。こんな仕事なのだ、死が遠い訳でもない――それでもだいぶんと予想外となったものだが]
[相手がただの人間ならば、或いは少々鍛えている程度の人間だったならば、気づいたときには全てが終わり、自分は何事もなかったかのように元の位置に戻っていただろう。
反応があったことこそ非凡の証明。
それも、こちらの"期待"を上回るものを返された。
乾いた破裂音が二回。
灼熱が胸と腹を貫いていく。
躊躇ない射撃だった。
死線を潜り抜けた者特有の容赦のなさと、一歩も下がらず踏みとどまった胆力とを目の当たりにして、胸に痛みとは異なる火がともる。]
[撃たれ弾かれたように数メートルを飛び退る。
降参のしぐさを真似て、両手を上げた。
だが撃たれたはずの身体からは血の一滴も零れておらず、衣服の焦げ跡から覗く肌には傷の痕跡もない。]
それで私を仕留めるつもりなら、銀の弾でも持っておいで。
[さりげなく正体を明かして、一歩足を引く。
上げた手のそれぞれに、手品のように品物が現れた。
右手には類まれなる紅の宝石、左手には、先ほど隙を突いて抜き取った警察手帳。]
これで、他ならぬ"君"が私を追う理由になるかな?
[微笑んで、再び身を翻し、追いかけっこの再開を誘った。*]
[足の裏に地面の固さを感じて、思わず閉じていた目を開く…咄嗟に空を見上げる、けれど空から落ちてくる人影はみえなかった]
――…。
[あれは、助かる高さではなかった。それができるかできないかは知らないが……あの化け物、に助けられた――の、だろうか]
なんで
[女性と間違われた、などと失礼な話だ。どこを見ているんだという気持ちがないでもないが、少なくとも彼が自分をどこかの女性と勘違いしていなければ、自分はとっくに死んでいたのだろうと思うとそれを安堵すればいいのか焦ればいいのか、感情の落としどころに困る。
再び会いたいかといえば全力で首を振るが、あの高さから落ちたのかもしれないあの化け物が、自分と関わりにならないところで無事であればいいと思う程度に絆されているのに苦笑した]
さて。
[ここはどこだろうか。森である、ということは前と同じだが、微妙に薄暗いというかおかしな空気だ]
――…??
[見上げる空には、赤い月。赤い月自体は珍しいけれどないとはいわない、けれど時間感覚がおかしい。たしか時間はまだ昼過ぎの筈。どちらに向かえばいいのかさっぱり分からない。山か川か、あるいは星かとにかく目印になるものがあればいいのだけれどさっぱり手掛かりがない。
かといってじっと立ち尽くしていても仕方がないのも事実]
[ふ、と笑いが洩れる。どうせどこに向かっても同じようなものなのだ。ならばなんでもいいかと落ちていた木を拾い、適当に倒れた方向に向かって歩き出した**]
[ 銃弾を受け止めた身体が後ろへと跳ね跳ぶ。
否、あえてその位置まで戻ったのだろう。
見せつけるために。]
──…、
[ 命中の手応えは確かにあった。
にもかかわらず、男は平然と立っている。
生ける屍 ── そんな言葉が脳裏を過った。
“銀の弾”という言葉が、さらに男の正体を絞り込む。]
あ、
[ 男が見せつけようとしたものは、銃弾に怯まぬ肉体のみではなかった。
手妻めいた仕草で、左右の手に盗品をかざす。
自然と目は、己の所有物であるIDカードへと向いてしまった。
人の身体というものは、時として表現が豊かすぎる。]
始末書を書いて、再交付を申請すればいいだけのことだ。
[ 口ではそう嘯いたが、問題は身分証ではなく、手帳に挟んだ一片の羊皮紙である。
《魔剣ルーキス・オルトゥス》の名が記されたそれを、お守り代わりに肌身離さず持っていた。]
[ そんな事情は知るよしもないだろうが、男は宝石と手帳とを手に微笑んで身を翻す。
追ってこいという明白な挑発に、タクマは唇を引き結んで乗った。
長い夜になりそうな予感がする。*]
[口では何と言おうと、彼から奪ったものは大切なものであるらしい。
彼の視線が、表情の微細な変化がそれを物語る。
彼の心に己を刻みつけてやりたい。
忘れ得ぬように、他のことを考えられぬように。
そんな願望を胸に焦がしつつ、夜の闇を駆ける。]
[相手の能力が非凡であると明らかになった今、逃走の経路も尋常なものではなくなっていた。
塀に飛び乗り、壁を駆けあがり、屋根から屋根へと跳躍する。
時折、ついてきているかと視線を後ろへ向けた。
やがて、前方で建物の列が途切れる。
道を挟んだ向こうには手入れされた木々が立ち並んでいた。
どうやらこの先は森林公園になっているようだ。
広い公園の中でなら、また違ったこともできるだろう。
人工物の森を離れ、自然を真似て植えられた木々へ足を向ける。*]
[ 言葉にはされずとも、これは勝負であると言ってよかった。
緊急回避の際以外に銃を使う気はないタクマは、まだ予熱をはらむ銃身をホルスターに収める。
魔法の品ではないから、自動で銀の弾が補充されたりはしない。
前を走る男のマントは、コウモリめいて翻り、塀を、屋根を乗り越えた。]
[ 最初のうちこそ、律儀に男の後を追っていたが、すぐに戦法を変更した。
ここ十数年、暮らしてきた街だ。土地勘はある。
距離を詰めるべく、男の進路を予測してショートカットした。
その結果、男が森林公園へ至るよりわずかに早く、その手前へと回り込む。
走り込む動きを止めることなく、飛び蹴りをしかけた。*]
[追ってくる相手の姿は、途中から見えなくなった。
追跡を諦めたのかと思ったが、首筋を火花のように灼く緊迫感は続いている。
何処かで仕掛けて来る気だ。
周囲に注意を払いつつ、ひた走る。
屋根の上から跳躍し、森林公園の前に降り立った瞬間、待ち望んでいた者が来た。
死角になる位置から影が鋭く飛び込んで来る。
攻撃の意思に反応して左腕で防御を固め、蹴り足を受ける。
刹那の均衡の後、相手を押し戻すように左腕を振るいながら、自らは後ろへと跳んだ。]
やあ、追いついてきたね。
捕まえてみるかい?
[軽口を唇に乗せながら、右手のステッキを顔の前に立てて左手を軽く添える。
その構えは、フェンシングというよりは斬撃を主とする剣術に近い。]
私を叩き伏せられたら、考えてみてもいい。
[署への同行とやらを、である。
省略した言葉を補う気もなく、間合いを測りながら、じわりと森の側へ足を運ぶ。**]
[ 蹴り足を柔らかに受け止められ、弾かれる。
そのまま弧を描いて降り立ったタクマに、男は軽妙に声をかけてきた。
ステッキを手にした構えは、剣術に覚えがある者のそれ。
足場の悪さをものともしない、端正な所作だった。]
名を、聞こう。
[ 言葉の挑発には冷静を保って、尋問した。
こちらの名は、すでに相手の手の中にあるのだから。
踵を浮かせて徒手を構えながら、男の怜悧な顔を見る。**]
[相手の身のこなしの軽やかさに目を細めてから、問われたことに微笑する。
名乗れと言われるのは、求められることと同義だ。]
ギィ。
[甘やかに、囁くように、名前だけを風に乗せる。
直後、同じ風に乗って馳せた。
肩口へのフェイントからの腿を狙うひと打ち。
旧く、そして実戦的な剣技である。*]
[ 答えは、与えられた。
家名も肩書もない、ただそれだけでわかるだろうと言わんばかりの名乗りは、自信を感じさせる。
間髪おかず、風を切る音が続いた。
肩口への一撃 ── ステッキとはいえ、まともに受ければ鎖骨が折れそうな ── をフェイントにした、下肢狙い。]
──ッ!
[ 前へと出ながら、受け流しに上げかけた腕を肘から回転させて、相手の手首を捉えんとする。
ビシリと腿を打ち据える痛みに、わずかに身が硬直した。*]
[肉を打つ感触がある。
得物を介してとはいえ、肉体の鬩ぎあいは快をもたらした。
向かい合う対手の筋肉の躍動を、至近で混ざり合う荒い吐息を感じれば、身体の奥から熱が湧き上がる。
悦びを味わう半瞬の間に、ステッキ持つ手に衝撃が走った。
重い打撃に腕が外側へと払われる。
得物を取り落とすには至らなかったが、手首から肩のあたりまでじんと響くものがあった。
果断な反撃を受けて、笑みが深くなる。
淡い蒼と見えた瞳の芯に、別の色が差していた。
先ほど手にした宝石にも似る、鮮やかな紅。]
[武器持つ手を払われたなら、一旦距離を開けて体勢を立て直すべきだろう。
彼我の距離も既に、徒手の間合いだ。
だが、下がるよりはなお前に出ることを選んだ。
一歩を踏み出し、距離を限りなく零に近づけることを試みる。
胸板を合わせんとするほどに身体を寄せ、首を傾ける。
睦言を囁くかのような仕草だが、言葉吹き込むのではなく耳朶を噛み裂くを目的とした。*]
[
シュ!
鋭い音に続いて何かよく分からない、しかし空を飛ぶから鳥なんじゃないかな?と思われる生き物が高い悲鳴をあげた。
ここにいる生き物は見たことのないものばかりだ。鳥、のようでいてツノのある生き物だとか。しかし食べるには意外と困らない。
積み上げた枯葉の上に枯れ木を組んで、葉の下に火種を突っ込む。捌いて木に刺し、軽く塩を振った謎の鳥もどきを炙りながら、ウエストポーチから取り出したパン── ドライフルーツを練り込み、腐りにくいように水分を極力減らした固いものを薄くスライスして、こちらも火で炙る。
水場も確保したから魚?だって釣れる──よく分からない状況ながら、意外と快適にやっていた**]
[ 互いの腕が交錯する。
その一瞬に、ギィの笑みは濃く、瞳は色を点じた。
この世のものならぬ美しさ。
だが、見とれている余裕などない。
そのまま身を寄せてきた動きは、奥の手と見えた。]
[ 先のやり取りで、ギィの正体は仄めかされていた。
唇の触れる距離に首筋を晒すのは、危険であると本能で察知する。
だが、突き放すにも躱すにも、間に合わぬ。
とっさに右手をギィの背に回した。
抱擁にも似た動きで長い髪を掴む。思い切り引いた。
それで狙いを反らそうとしたのだが──絹のごとく艷やかな髪は指の間を滑り、制しきれないままに、耳朶を牙が噛み裂く。
緋色のしずくがギィの白皙の肌を飾った。*]
6人目、城主 ソマリ が参加しました。
城主 ソマリは、人狼 を希望しました(他の人には見えません)。
[滴るように赤い満月が空に浮かび、明けない夜が押し包む森の奥、
ぽっかりと開けた場所に古い城館が建っている。
森の木々より少し高い尖塔を備えた建物は、空からならよく目立つだろう。
周囲を囲む石壁は蔦に覆われ、門扉は錆びついているようにも見える。
だが門を押すものがあれば、閂もなく、軋むこともなく滑らかに開く。
門より続く庭も、城館自体も、森に飲み込まれつつあるような風情ながら、手入れされていると気づくかもしれない。]
[城の奥、主だけに許された場所でまどろむのは、この城で唯一実体を持つ者だった。
髪も眼も、肌も服装までも漂白されたように色が淡い。
幽遠の果てに魂を遊ばせるかの風情だったが、微かな空気の揺らぎに目を開いた。]
客人があるか。
ならば歓待の準備を。
[言葉に感応して、影のように朧げなものたちが城の各所で行き交いだす。
意思無く形なく、ただ城の雑事をこなすだけのものたち。
それらが働く様子を意識の外に置いて、城主は指を伸ばす。]
我が領を訪うものとは、久方ぶりだ。
佳き刻を過ごしてもらわねば。
[空気が白く霞み、森に入ったものたちの姿を映し出していた。*]
ふ 、 …――
[押し出されるように息が漏れた。
舌先に触れる血の香気が陶酔をもたらす。
白い喉を曝け出して微かに喘ぎ、膝の力が抜けたかのように身体を沈めた。
姿勢を下げながら身体を半回転させ、髪を掴んでいる腕に両手を添える。
愛でる手つきで指を滑らせ袖をつかみ、背負う形で投げを打った。
手から離れたステッキが、からりと音を立てて転がる。]
[ 血を舐めたギィの吐息に眉をひそめた。
それはあまりに官能的で、己の血に対する評価としては贅沢すぎる。
極めて精巧に人の姿を模しているが、魔力で形成した器である。
美味ではなかろう。
にも関わらず、悦ばせていることに、苦い思いがした。
あるいは、これは焦りか。]
[ 不意に、ギィの身体が沈み込む。
失神したかのような虚脱に、とっさに抱え込まんとしたのは、守護者としての性。
前屈みになった身体は、続く投げの形にあっさりと持っていかれる。
そうなると身体はもはや、抵抗ではなく、怪我をしないための受け身へと反射的に推移した。
反転した視界に、紅の瞳と、月光が流れる。
後は、落下するのみ。*]
村の設定が変更されました。
[相手の身体が宙を舞い、上下反転して見交わす視線に時が止まる。
投げの最後の瞬間に腕から力を抜いて、叩きつけるのを避けた。
彼を壊すのは、まだ本意ではない。
彼の身体が地につくのと同時につき離し、飛び下がる。
途中足先にステッキを引っかけて蹴り上げた。
着地点で飛んできたステッキを受け止め、シルクハットの傾きを直す。]
サム・タクマ・シース。
いずれは君の真名を聞きたいものだ。
[彼を見つめたまま、後ろへ大きく飛んだ。]
もっと追ってきて。
私が君を捕まえるまで。
[奇妙に複雑な言葉を残し、木々の間に身を投げる。
今度はかくれんぼをしよう、と笑む顔が、一瞬固まった。]
[ 幸い、落ちたのは公園側だった。
転がって衝撃を逃し、立ち上がる。
相変わらず手妻めいた挙動で、ギィもまた、地上に下りてきた。
その濡れて艷やかな唇から、己の名が紡がれるのを聞けば、身震いがした。
すでに何某かの縁が結ばれたのを感じる。
もっと、と求める声は戯れめいて真摯。
今度はかくれんぼだ、と笑い、闇に消えてゆく。
最後の瞬間には、意外そうな顔をしていたのが、わずかにひっかかった。
何を考えている──、と手櫛で髪をかきあげて、一旦、署に連絡をいれるべく、通信機を手にとった。]
ん?
[ 電波がつながらない。]
──…、
[ 見渡せば、植生が見知った公園のそれとは異なる気がする。
街の灯りも見えなかった。
闇に呑まれたのは自分の方かもしれない。*]
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