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歴史のうねりが奔流となり、時代が戦乱へ押し流される。
避けえぬ戦火が人々を呑み込み始める。
大きな時の流れに巻きこまれ、翻弄されるものたち。
その中にあって、なお歴史を作る力と意思を持つもの。
激流の世に生きる人間達の物語が、始まる。
1人目、語り手 が参加しました。
語り手 は、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
2人目、黒幕 が参加しました。
黒幕 は、人狼 を希望しました(他の人には見えません)。
■マスターたちへ
「バランと名乗る吸血鬼が、評議会の領土を荒らしてまわっている。
警告を聞き入れず、もはや看過できる状態ではない。
あなたたちマスターの力を見込んで、バランの討伐をお願いする。
かの者を退治し、心臓を持ち帰ること。
なお、バランは人間に無差別に血を与えて眷属に造りかえ、手駒にしているらしい。
まともに教育されていない吸血鬼の勝手な行動は人間たちに要らぬ警戒を抱かせ、吸血鬼社会に悪影響が出よう。
バランのチャイルドらも一網打尽に捕獲せよ」
■チャイルドたちへ
「貴様は死んだ。オレ様の血を使って蘇らせ、吸血鬼の力を与えてやった。
だから、貴様はオレ様のものだ。
オレ様のために、吸血鬼評議会からの追っ手と戦い、倒せ。じゃあな」
村の設定が変更されました。
3人目、職人 リエヴル が参加しました。
職人 リエヴルは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
― バランの夜 ―
[――……それは本意ではない。
この手は、剣の柄を握るためではなく、
この力も、何かを壊すものでもない。
そう信じてたのは、おそらく、それでも、
この兵役を終えれば為すべきことがあったからと思えたからだ。
しかし、
それは、人と人の争いではなく、
悲しげに塒に帰る鳥たちが知らせた、妖魔の訪れ。
その日の空は、陽は、まるで逃げるように西の彼方へ逃げた。**]
― 9歳時・山の祖母の家 ―
[その冬は、とても白く、そして、とても寒かった。
祖母は、毎年雪は多いけれど、今年はまるで、冬将軍がその牢獄に雪の精霊を閉じ込めたかのように、深く冷たい山だと唸っている。
もちろん、一人で家を出ることは禁じられた。
というのも、山で死ぬものがもう幾人か出ているというのだ。
だから、従順な少年だったリエヴルも、祖母の家で、愛犬と一緒にただ、白い風景を見、屋根の雪を下ろす手伝いだけはしながら、その冬を越す予定だった。]
[その犬が、何かに惹かれ、家を飛び出すまでは。
今の少年の唯一の友達であるその愛犬が家を飛び出した時、
彼は迷わずそのあとを追うことになる。
それが、その白い地獄の山の奥深くに入り込んでしまうと知らずに*]
4人目、神学生 ファミル が参加しました。
神学生 ファミルは、おまかせ を希望しました(他の人には見えません)。
― 或る夜 ―
[聖別された短剣を届けるべく暗い道を急いでいた時だった。]
………っ!?
ぅ……ぐ……うぅ…ッ?
[背後から抑え込まれ口を塞がれ。
乱暴に制服の襟口を広げられると、白い首筋に鋭い牙が突き立てられた。
酸欠と貧血に同時に苛まれ、手足は痺れ、徐々に意識は鈍磨していく。]
―――……はっ…ぐっ!?
[漸く解放された後、今にも潰えそうに朦朧とした意識にかまわず口腔捻じ込まれる指。
鉄の味―――血だ、と認識する頃には、其れは喉を通過し、意識は闇に飲まれていた*]
5人目、 ディーク が参加しました。
ディークは、おまかせ を希望しました(他の人には見えません)。
― 貴様は死んだ ―
退路を確保しろ!レディに奴らを近付けるな!
[要塞建築を典雅に総改築したゴシック・リヴァイバルの居館。
その門は既に意味をなさず、
先刻まで共に闘っていたはずの仲間が次の瞬間には敵となって襲い来る狂気に、護衛達は瞬く間に数を減らしていた]
っ、
[血と死の匂いに満ちた闇へ目を凝らし、弾切れのリボルバーを影へ投げ付けた。
鈍い音と低い呻きを聞きながら飛び出し、サーベルを一息に振り上げる。
骨を断ち切る手応えと、噴き出した血が灰に変わって降り注ぐ気配。
足元へ転がった首が月光に僅かに照らされ、親しい部下だったモノを殺したのだと理解する]
化け物が…!
[死体の手から剣を抜き取り、その背から心の臓を破り地面へと刃を突き立てた。一息もおかずに闇の中を走り出す。
主を守らんがため]
― バラン討伐戦 ―
[>>2 言い捨てて往く血親を不快を露わに見る。
少女のような端正な顔立ちに、夜風に流れる白金の髪。
しかし、纏う神学校の制服は彼が女性ではないことを示していた。]
”Nemo fortunam jure accusat”...
[使いとして届けるはずだった、聖別された刃を持つ短剣をグローブを越しに握り立つ。
布越しでさえ、強く握れば聖性を帯びた燻るような痛みが手の平に滲む。]
………主よ…
[首にかかるロザリオが銀光を弾いて鈍く光った。
血の強制力に抗うことは叶わず、未だ見えぬ眼前の闇夜を纏う者に刃を持つ。
華奢な体つきであり、武術の心得などもない。
”オレ様のものだ”と言った異形にとっては時間稼ぎのための手駒に過ぎないらしいことはすぐに察しがついた。]
[人間狩り。
この夜、広大な土地と建物の不動産資産で新しい時代を生き抜いていた旧貴族の一家系が絶えた]
[護衛兵の長、ディークが死ぬ前に見たのは、襲撃の首魁たるヴァンパイアの顔。
あと一歩踏み込めたなら、サーベルは魔物の喉を切り裂けただろう。
しかしその一歩はあまりにも。絶望的に遠かった。
背後に移った気配の嗤う声、首に触れた冷たい感触、
そして彼の人としての生は終わった*]
6人目、純血種 クレステッド が参加しました。
純血種 クレステッドは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
― 自城 ―
くだらぬ…
[呼びつけるようなことをしてもこないと知っている評議会のものから使わせた使い魔という使者から伝えられた手紙の内容に冷たく言い放つ。
蒙昧なる吸血鬼も、それを処分するのに手を借りることしかできない評議会もだ]
[しゅるりと鳴る音に眼を細め、腕に巻きつくようにして両袖の内側から顔を覗かせる白と黒の蛇を見遣る]
―――フン…ぁあ……証明は必要であろう。
[窓より覗かせる空の太陽と月が入れ替わるとき、羽織るマントが翼のように広がった*]
7人目、血織りの主 エレオノーレ が参加しました。
血織りの主 エレオノーレは、おまかせ を希望しました(他の人には見えません)。
― 日没を望む断崖 ―
[程なく宵が訪れて、陽光は地の果てに放逐された。
黒い外套の奥の視線は、件の凶状持ちが占拠した、という
居館を捉えている]
『執行人』が来ているそうだね。
僕は露払いで良いのだろうけど……
早く済ませてしまおう。
[中性的な声が淡々と呟いた。]
― バラン討伐戦 ―
これが我への出迎えであるか
[脆く不完全な香る闇の匂いに不快気に黒を基調としてに銀糸で彩られたマントはためかせ、マントの下に纏う白が銀の髪が月光に煌めき闇の中でも堂々とした威容を放つ紛れもなき闇の住人]
無礼者が…貴様のような聖職者崩れが我を見ることも語ることも許さぬ。ただ拝せばよいのだ。
[なによりも冷酷な声が闇に落ちる。眼前の刃>>8を向ける聖職者崩れのものへと傲然とした態度で言い放つ]
本来ならば刃を向けたその罪。命をもって贖わせるところだが…蒙昧なる血親をもった子よ。今の我は機嫌が悪い。
[身から溢れる意思は絶対零度の冷気となりて夜を凍らせる]
――……なんだ、これは……。
俺は、なんだ………。
[倒れふした大地、首から止めど目もなく流れるはずの血流が、黒く変色し止まる。]
[そして、やがて、むくり起き上がると、
今度こそ、その剣を引き抜くが、
表情は、暗くやつれ、そして、不気味に笑んだ。]
――……はい、仰せのままに。
[一時的に失われた自我。
残る従順さは、きっと妖魔のまやかし、されど、在る力。
引き抜いた剣、指でなぞると、その皮膚は破れるが、溢れる血の玉とともに、嘘のようにも癒え。]
ご命令を。
[人形と化した目玉は、爛々と見開かれ、
そののち、閉ざされる。
正気という異常を押し隠して。**]
8人目、息女 アイリ が参加しました。
息女 アイリは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
……私が拝するものは、私が決める
[伝播する冷気が頬を刺す。
”命令”には逆らえない。
元より抜き身の白刃を、構えも型も無く、ただその胸の中心めがけて振り下ろした。]
[フードを指先で摘まみ押さえると、
小柄な体は重さを感じさせない動きで地を蹴った。
容姿を隠す外套を纏うままで、戦場に立つ。
聞いていた通り、吸血鬼にされたばかりの人間が
ちらほらと辺りに、気配を窺う事が出来た]
― 討伐戦 ―
[生前のディークは有能な戦士だった。
竜騎兵として戦果を上げた腕は、兵役を終えて馬を下りても発揮され。
若くして護衛兵長として故郷に転任した後もその名と武勇は話に知られていた]
うァ…あ、ガァァ!
[凶状持ちの吸血鬼が、もし彼を有能な手駒として"チャイルド"にしたならば、その狙いを無駄にさせることには成功したのかも知れない。
眷属となって二週間ほど。
ディークはもはやサーベルを握ることも出来なかったから]
ぐ、 ぎ
[ガリガリと爪が地を削る。
四つ足に這う幼い妖魔は、苦痛に咆哮した]
[与えられた血は従命を強いる軛。
この呪いに逆らい、屈するまいと激しく抗った代償に、
強い自我は
戦士の不撓不屈の魂は ]
ガァァァァッ!
[ヒトの精神は脆い。
抵抗の意志ともろともに、 理性も思考も、血の強制力が容易くひしゃげさせた。
『追っ手と戦い、倒せ』
『追っ手と戦い、倒せ』
『追っ手と戦い、倒せ』
赤く染まった双眸が闇を向く。牙を剥く]
[耳に届くのは消え入る悲鳴と]
……生まれたばかりの赤子を、己の身代わりに
戦場に差し出すか。
[獣じみた咆哮がある。]
[鈍く痺れた指先を握り込むと、冷え切った掌に爪が食い込んだ。
重苦しい瞼を意志だけで抉じ開ける。未だ、視力は残されている。
錆びた唇を歪め、喉と肺を押し塞いでいた息を吐く。呼吸も、できる]
――…随分と、頭の軽そうな男ね。
逃げることさえ、敵いそうにないわ。
[悪い冗談のような命令に、擦り切れた声で皮肉を絞り落とす。
今宵、瞳を開けたまま見る夢は、何処までも鮮烈な悪夢らしい]
[闇にまぎれども盗人のような真似はせず、蒙昧なる吸血鬼の館の正面に配された門衛変わり>>18を冷酷なる蒼の双眸は見つめる]
―――ハ…良い眼だ。貴様が何者かは知らぬがその不屈たる様は、存外の掘り出し物かもしれぬ。それに―――
[醒めた紫水晶に嗤うと、腰にさしてある剣は抜くこともなく。堂々と近寄り、左胸へと振り下ろす聖刃>>19を左手で握り止める]
[ぱっと飛び散る血が目の前の白金の髪と輝かんばかりの貌を紅く染めた]
――おかれた立場もおもしろいようだ。救いの手を差し伸べぬ狭量な神をまだ拝するか。
[ただの刃にはない痛みを覚え目を細めながらも刃を握りしめたまま、首にかかる鈍い光を放つロザリオを右手で掴みとり引きちぎった]
9人目、境界なき者 ステファン が参加しました。
境界なき者 ステファンは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
― “彼女”の家 ―
[慌ただしい雑役女中の足音を背に、男は浅く息を吐く。
医師が、女中が、女性が、男性が、少年が、男の傍を通り過ぎるが、誰も彼を気に留めることはなく、彼の姿が他者には見えていないのだろうということは想像に難くない。
それほど広くない家の中を慌ただしく動く者達、男は歩く速度を緩めぬまま、彼らの間をすり抜けるように進んだ]
[足元に取り落とした懐剣を拾い上げ、不吉に煌く刃を翳す。
決断に、時間は要さなかった。
良く出来た悪夢だろうと、現実だろうと、下す結論に変わりはない]
――……ッ、!?
[真っ直ぐに振り下ろした刃は、唐突に勢いを殺がれ、それ以上些かも動こうとはしない。
自らの喉許に向けた刃先は、その決意を嘲笑するかの如く、するりと狙いを翻す**]
[目的の場所へ辿り着けば]
…タチアナ
[その場にて眠る老女の名を呼び、頬を優しく撫ぜる。
彼女からの言葉はなく……唇を震わせることもないまま浅すぎる呼吸を繰り返す様子からは、彼女の灯火が消えかけていることが伺えた。
だが男は、消え入りそうな灯火を前にして尚、悲しむということもせず。]
[愛おしそうに目を細め]
愛しているよ、タチアナ。
太陽の下で無邪気に笑う君も、
僕が人ではないと知って尚、臆することがなかった君も
あの男の傍で恥じらうように笑う君も
子を抱いて笑み浮かべる柔らかな木漏れ日のような君も
孫に囲まれて、くしゃくしゃ笑う老いた君も
君の命を、君の人生を愛している。
[歌うように囁いた]
[空気を読まない愛の囁きから一拍を置き、男は柔らかな笑みを消す]
――でもね、僕は我儘なんだ。
[そしてかわりに浮かべたのは、悪戯を思いついたような子供のような笑み]
[暗く霞んだ視界。音も匂いも遠い。
映るのは剣気と、戦場の"バランの敵"の気配だけ]
[バネが弾かれたように、低く跳躍する。
相手の間合いや力量を測るだけの知は、とうに壊れていた。
真っ直ぐ、何も考えずに"敵"に突っ込む襲撃。
思考がないぶんだけ、
吸血鬼の雛が体現するには、恐らくは異常なほどの速度で**]
僕は、君の最後も笑顔がいい。
言葉を発せなくなってからも、表情を浮かべることができなくなってからも、笑う君が愛おしい。
君の信じる神様とやらが君を連れて行くまでは、皆に見送られながら笑っていて欲しい。
それ以外の最後は認めないし、迎えさせない。
だからごめん、それまで生きて。
あとの一人を連れてくるから。
[彼女を担当する医師が聞いたら卒倒するのではないかという程の傲慢を吐けば、男は自分の指を噛み、それから眠る彼女の額へと口づけを落とす。
それを境に、眠れる老女の呼気が安定した事を見て取れば、男は来た時と同じように彼女の部屋を後にした]
[理性をねじ曲げられた赤い瞳が、こちらを向く。>>23
哀れにも、ヒトとしては強靭であったために
より強い力で歪められたものだ。
軽い足音は、牙を剥く男を前にして、
仔犬を取り扱う気安さで近付こうとして]
……!
[余りある速度の突進に、身を翻す。>>35
外套の裾が裂け、何も持たぬ華奢な手元が覗く]
困ったな。
[独り言は淡々と、言葉のようには色が乗らない**]
10人目、隠者 アデル が参加しました。
隠者 アデルは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
―宵闇―
[薄氷の色は、わずかに濡れて潤みを帯びる。
黄昏過ぎた闇の中でも、爛と輝く異形の虹彩。
薔薇色の唇は、結ばれたままにわずか歪む]
……外は、久しい。
[幼さすら滲む声音は、
同時に酷く老成した響きを持つもの。
若木のままで時は止まった、
けれど始まりは既に忘却の彼方だ。
重なる、しゃらりと揺れる銀鎖の音。
ほっそりとした指先が虚空に伸びて、月を摘んでみせたせい]
/*
マスターが男の娘のくせに、既にイケメンの気配が漂ってる…わくわく。
でもツン×ツンの気配も漂ってて、既にキャラ選択を間違えた予感も…
[←直前までチップも決めてなかった]
いいげぼくになれるよう、がんばろうとおもいます。
…なれるといいね。うん。
私が喚ばれるとはな。
我が罪もまた、忘却の憂き目とあったようだ。
[戒めの鎖は紛うことなく枷である、
罪がため、己が身を白の森に幽閉した隠者]
……適任とでも、思われたか。
[その忌むべき罪過は“血族殺し”である]
雛を嬲るは、趣味ではないが……、
[土を踏めば、喧騒の最中。
銀鎖はしゃらり、と涼しげな音を立てた。
追うを遮るものがあれば、
幼げな風貌にともすれば慈悲深く笑みを湛える、
しかしそれはすべからく闇の慈悲だ*]
[ロザリオをもつ手からじゅわりと焼け焦げつくような音と匂いが満ちた]
ああ、わからぬよ、あまりに狭量すぎてくだらぬからな。
…身をもって知っているだろう。化け物。
[値踏みするように紅く染まるもの>>36を見つめた後]
返すぞ。
[十字架を短剣のように握ると、袖を拭う肩口に突き立てた。]
[未だ握っていた聖刃を引くようにしてバランのチャイルドを引き寄せる]
もとよりここに住まう狗より貴様は私の無聊の慰めとして差し出された贄だ。我の恣意にして構うまい
[元より。戦いですらない。敵とすら認識をしていない相手を息がかかるほどの近くでささやくと、納得をさせるものではない。蒼の双眸に強欲の色を宿して、その白磁の首筋に牙を突き立てた]
―――ッッ…!!!!!!!
[>>43 肩口に突き立てられた銀製のロザリオから与えられる痛みは、刺し傷のそれだけではない。
悲鳴すら声にならぬ痛みに苦悶の表情を浮かべる。]
(だから)
(馬鹿は)
(嫌いだ)
[痛みで水気を帯びた瞳は、それでも眼前の男を睨みつける。
だが、次いで相手の出た行動に目を瞠る]
(コイツ 同族を食うのか…!)
う、ぐっ……あ……!!!
[バランより血を与えられてからこの日まで、一切血を口にしなかった華奢な身体は、吸血鬼としての力を殆ど発揮できない。
肩口の痛みと、首筋から啜られる赤に、短剣すら握っていられなくなる程無力化されるまでそう時間はかからなかった**]
― 道すがら ―
[街灯の灯りが石畳を照らすことも許されないほどの霧の中、一台の馬車が往く。
月とも違い星とも違う淡く灯る魔力なき光に見送られながら、男は上着を脱ぎ荷解きを始めた。]
――手配の方はできてるかい?
[トランクから金属製の板がとりつけられた革手袋を取り出しながら、男が質問を投げかければ、男と向き合って座る女が肯定の言葉を紡ぐ。
望み通りの答えを受ければ、男は満足そうに口角をつり上げた。]
― そして戦いの場へ ―
[霧を抜けたあたりで馬車は止まり、男と女は石畳へと降り立った。
戯れに刈られたのだろう点灯夫が、倒れるより先は月明かりの独壇場。灯す者のない燈りは沈黙を保っている。
女は、地に伏す点灯夫を仰向けにすると自身の荷から小瓶を取り出し、点灯夫の額へ瓶の中身を塗る。]
君は彼を処置し終えたら、派遣された者達の指揮へ。魅了、死体操作に対しては無力化の後、施術を。
眷属を発見した場合は極力交戦しないように。
[宗教的儀式を思わせる塗油……死霊術対策を施す女に指示を投げたなら、男は月を眺めぽつりとこぼすだろう]
もうちょっと賢いと思ったんだけど、買い被りすぎてたかな。
[件の吸血鬼に関して、苦笑まじりの言葉を吐く。
顔を知っているとはいえ、男と件の吸血鬼の間に良好な関係なんてものはないのだが。
そもそも、研究資料と称し聖別された品を持ち込み、それらを利用しようとする男を好く者は少ない。
今現在、身につけている手甲も、銀に吸血鬼……同族の遺灰を混ぜたもので足りぬ魔力を補おうという品である。
男に付けられた二つ名“境界なき者”は、昼と夜を歩むという意味以外に、禁忌を持たないという事から呼ばれる名前であった。]
[やがて、何かを察知したのだろう。男はゆるりと目を細める。
そして手甲に何かをつぶやくと、芝居がかった動作でコートを脱ぎ捨てた。
羽ばたきを思わせるような音を伴いそれが石畳の上へ落ちると同時に男は屋根の上へと場所を移し――…]
さて、何処から手をつけたものかな
[戦いの気配へと意識を向けるのだった**]
/*
耽美を目指して頑張ったものの、時間をかけた割にうまい言い回しが思いつかず、いつもどおりになってしまったアカウントがこちら。
求む:色気
急募:色気
*/
/*
自分の設定見てたら、SAN値0の狂人に見えてきた。
土着神ってクトゥルフ的なアレだったんじゃないの…
うん、寝よう。疲れてる。
ダーフィトくるのあとでだし寝よう。
イメージ的には某デイドラだったんだけどなあ
*/
[産まれたての雛は既に二度、血親の命令に抗い、
二度とも結果として失敗している。
二度目は望まぬ従属を自ら終わらせようとして、
刃は少し己の髪を短くしただけ]
〔 『追っ手と戦い、倒せ』 タ
… 『殺せ』 コロ 『戦え』
シ『オレ様のために』 『倒せ』 〕
[断片的な思考は、浮かび上がるたび押し寄せる圧に潰れて消えていく]
― 二週間前 ―
[産まれたての雛は既に二度、血親の命令に抗い、
二度とも結果として失敗している。
一度目は最初の夜、主家の当主と息女を狩りから逃がそうとして、]
マイロード。 …レディ アイリス
[自分がもうわからないのかと問う主に首を振った]
『誰一人逃すな』 馬車へ、振り返らず
… 『殺し』 逃れて下さい 『女は寄越せ』
貴方を守る者は『オレ様のために』 皆 『捧げろ』
死にました。『捧げろ』逃がさない『逃すな』
[命に抗う意志は痛みそのもの。己の鼻から滴り落ちた血の色をみて、
まだ赤いのかと、 薄く思った**]
/*
マイロードにときめく…
マスターも元護衛さんもできるなんて、なんて贅沢!
きゅんきゅんしちゃう。
マスター(予定)より先に護衛さんにでれるわよねコレは…!
初っ端からクーデレが維持できる気がしない…!
11人目、執行人 ロー・シェン が参加しました。
執行人 ロー・シェンは、おまかせ を希望しました(他の人には見えません)。
[標的の居館を見通せる屋根の上、
立膝をついて風を読み、気配を探る。]
……意外に多いな。厄介な。
[敵も味方も。
いくつもの気配が闇の帳に蠢いている。]
しかし評議会はなんだってあんな───
[
言葉の後半は呑みこんでおく。
自分一人でも問題ないと主張はしたのだ。
だが
手数が足りないのは、認めざるを得ない。]
まあいい。
さっさと済ませればいいことだ。
[標的は居館の内部だ。
弱敵に
戦闘の気配を避け、館へ向かう経路を見定める。
その時、ふと気配が近くに湧いた。>>49]
……。
[視線だけをそちらに寄越す。
"境界なき者"
年寄り連中の中でもとびきりの変り種と認識している。
浮かんだ思考をすぐに振り捨て、闇に跳んだ。]
― バランの館 ―
[戦闘の場を避け、館の内部へ突入する。
窓の鎧戸を斬り破って中へ飛び込んだ。
血と黴の臭い漂う館内をぐるりと見回す。
左右に続く廊下の先、行くべき道を見定める。
やがて、確信のある足取りで駆け出した。
微かな痕跡を辿り獲物を追いつめる様は、猟犬さながら。
ゆえに評議会の犬と陰口を叩く者もいるが、気に留めたことはない。*]
/*
肩書何にしようか悩んでいたので、執行人いただきました。
闇の猟犬とかでもよかったんだけどね。
(とてもちゅうにです)
[痛みを発しても、潤んだ瞳での抗議>>45も奪うものにとっては、次なる苛みを強請るものとしか受け取らず、心中を測ることもない。
背中に手をまわして引き寄せると、首筋に牙を躊躇なく突き立て、紅の甘露を啜り取れば、焦げた手、斬られた手は時間を巻き戻したように元に戻っていく。
握る刃からも力が抜けたところで、ようやく吸血をやめ血を浴びた紅い舌が新雪の柔肌についた傷痕にちろりと這わせる。]
…フン。我が供物となれるなど貴様には過ぎたる恩寵よ。
[傲慢に言うと、刃をくるりと手の中で回転させて柄を握りながら、袖より顔を出した黒い蛇が主の恣意に従って、バランのチャイルドの身に這い縄の役割として、胴体に巻きつくようにして両腕を万力の力で縛り付けんとする]
――塵は塵に返そう、といいたいが生かすことに価値がある。
[蒙昧なる吸血鬼の居場所を聞こう。口ではなくその体に、血親と血子の繋がりを手繰るように、冷酷な双眸が紫水晶の瞳を覗きこんだ]
[ファミルは、一度も血親の”命令”に”背いては”いない。
自分が吸血鬼になったと知った時でさえ。
かといって迎合したわけではない。
永遠の命、若さ、美―――そんなものを欲したことは無かった。
抗わない、ただし額面通り受け取った命令以上のこともしない。
故に、他の者のように精神を壊すこともなかった。
今はただ、あの野卑な血親がこの傲岸不遜な同族に八つ裂きにされるのなら―――良い気味だ。]
……探し物は見つかったか?
[自分を痛めつけた吸血鬼に、そう囁いた。
未だ自身を苛むロザリオを抜こうにも、拘束されていたから敵わなかったけれど、極力平静を装う。]
[二撃目は掠らない。>>50
そして四肢を地に突き、再び鋭角に襲い掛かる様は
単純な速度、よりも、その御し方を覚えて切り返しが速い]
本当に野生の獣だ。
親があれでなければ、こうも不遇ではなかっただろうにね。
[三度目は、爪が晒された掌を傷付ける事に成功した。
浅く抉らせ、流れる血は祖に相応しい芳しさを放つ]
それでは、軽くだけれど――
[それを握り込んで、振るった]
[パァン!!]
躾の時間だよ。
[長く、細く、のたうつ蛇のように織り上げられた血は鞭に。
ビュウ、と空気を引き裂いた鮮血が男の腕を打ち据えた]
/*
ふりかけかけてもらえなくても塩むすび好きだもん、泣かないもんねっ
(設定も性格もとっつきにくい子でかけにくい自覚はある)
/*
IEのいろいろの騒動で今、火狐を使っているのだけれども、火狐だとデフォルトでルビ表示してくれないのを思い出した。
ごそごそアドオン探して導入してきたなう。
そういや表情をプレビュー表示してくれるプラグインとかあったような。
無意味なことを聞く。かたるまでもないことであろう
[唇を吊り上げる強情な供物>>59に嘲りを含んだ笑みを返みながら、髪を掴みんで持ち上げ瞳を覗き込む。
そのようなことをしなくても逃れる気はなかったようだが、供物の心を知るにはまだ足りておらず配慮する心も持ち合わせずに紫水晶の奥の奥を覗く]
[魂。とそう呼べるものの存在を...が定めた先は心であり感情でありその繋がりの探る。
仮に壊れた人形であればこのまま打ち棄てることに躊躇いはなかったが、バランに何かの抱けるだけの感情があれば、手繰れる]
……フン
[問いかけの答えは、掴んだ頭を地面に押し付けることからはじまる]
至らぬものの出迎えに、我が供物に先に手を出した傲慢。
[元からこの供物はバランが得たものであるが、目の前に供物があればそれは須らく己のものだ。という傲慢な思考は、当たり前のように所有者が己であると言い切る。
更に無礼ともあれば贖う先は]
―――万死に値する。
[それ以外の帰結を見出すことはなく何よりも冷たい笑みを浮かべた]
[掴んでいた手を放す。黒蛇に腕を巻かれ拘束された供物に視線だけで命じるように見れば、縄で吊り下げされた虜囚のように浮遊した。]
――疾くゆくとしよう。
[などと言葉に割に駆けることはなく余裕をもって歩きはじめれば、供物も後をついていくように浮遊したまま館の扉を派手に壊して押し入った**]
〔『倒せ』 セ、 コロ『戦え』
渇 ク『オレの敵を』 …渇
『殺せ』 コ『殺せ』 シテ〕
[三撃目、爪は"敵"の一部を裂いた。
気配の距離が遠くなり、そちらへ向き直る。
漂う芳しい血臭に、餓えて弱った体は反応したが、渇きを理解する前に思考は掻き消える]
ッグルぁ、アア!
[赤く昏く霞んだ視界に、細くのたうつ鞭はただ剣気の軌跡として映った。
正常な判断力をもって避けようとしても、恐らく鮮血で織られた蛇の一撃から逃れることは不可能だっただろう。
ましてこの身に防衛の意思はなく、空気を引き裂いた鞭の打擲はまともに腕を撃ち据えた]
が …!
[地を掴み蹴る腕を弾かれて、駆けるバランスが崩れた。
風を切る音が連続で響き、勢いのまま転がる体に鞭が降る]
…! …っ、 ァア!
[痛みよりも、打たれる強さに圧されて身を起こせない。
顔だけを上げて、打擲の軌跡の根源へ赤い双眸を向けた]
……、
[赤く濁った瞳が瞬く。
脳裏に浮かぶイメージの断片が、壊れる寸前僅かに漏れ出した]
ギ、…
[唸りは吼え声へ。
声なき思考の欠片は、近くある者の意識へ短い映像を漂着させた。
切り離された首が宙を飛ぶイメージ
月の光、走り去る馬車
女性のイメージ。こちらを見た娘はアイリスの姿をして、微笑んだ次の瞬間闇に飲み込まれた]
アアアアアアアアアアアア!!
[ガリリと地面を掻く。
戦えと命じる呪いのまま、鞭の雨を跳ね除けて襲いかかろうと四肢に力を込めた**]
[蛇は紅の軌跡を持って躍る。>>67
身を起こす事を許さない打擲の中にあって、
獣に落ちた男は敵を見据える事を止めないようだ]
……眼はまだ死なぬようだね。
[不意に鞭の動きが緩んだ。
すかさず身を起こそうとするだろう男に向けて、
今度はその鞭が首へ絡むように躍りかかる。
掛かれば、仰向けに引きずり倒してやろうと
見目にそぐわぬ力で腕を振り上げた。]
[掴み挙げられたかと思えば、土を舐めさせられ、端正な顔は今や血と土に汚れていた。]
…まるで新しい玩具を見つけた子供だな
[唯我独尊、その四文字が誂え向きな不死者の物言いに、呆れを露にする。
黒蛇を起点に吊り下げられたまま浮く体は、すでに身動ぎすら気だるい。]
連れていくのか
[何を見せようというのか知らないが、殺して棄てるでもなく、無力化して放置するでもない様子に眉を潜めた。]
………放り出すなら外においていけよ
[日の出まではあと如何程か。
最期に目にするであろう朝陽を思い、目を細めた。**]
[獣は文字通り身を擲って敵を屠らんとした。>>68
吼える颶風は荒々しく襲い掛かり、そして
結果としては、地に背を打って一時呼吸を止める事になる]
では君は、血統に殉じる事を望むかな?
[浮沈する映像にゆるりと瞬きをして、
膝で肩を封じて、曇らされた赤い目を覗く]
獣のまま、あの無粋の捨て駒のままで散らすには……
惜しい事だね。
[黒いフードの下の少女めいて美しい容顔と深い眼が、
その時だけは睨み上げる視界に映る。
獣に裂かれた肩からぼたりと血が落ちて、
間もなく止まり、塞がった**]
[意思を持って躍る蛇が、撃ち据えた皮膚を破って中身を噴き出させなかったのはあるいは手加減だったのかも知れないが]
──…かっ
[絡み付く鮮血に喉が絞まる。
地に叩きつけられて息の止まる感覚に背がざわついた。
肩を押さえつける膝は、体重などなきがごとき軽さでありながら、巌より重く抵抗を封じる。
見上げたフードの下
闇に冴える美しい貌が像を結んだが、
その稀な姿と深い色の瞳も、淡と落とされた言葉も、
意味ある情報として認識する前にかたちを壊されて混沌に散った]
[息が出来ない。息などしなくてもこれ以上死んだりはしない。
瞳の暗い赤が鮮やかな緋色に染まり、漏れ出していたイメージの断片が途絶える]
…… …っぐ ガ
[首に絡み付く鞭を両手で掴んだ。手繰るように、鞭を操る力に抗う。
仰のいた体を反らせ、身を捩り。
膝に縫い付けられたまま泥にまみれ、
地べたへ釣り上げられた魚のように無為にのたうった**]
/*
シェン→金獅子(獅子)
クレス→夜の王(王)
オノレ→織り手
アデル→隠者
トール→
コン →
マスタークラスのト書き表現はステファンの認識。
*/
[暗闇にまろび出れば、床を揺らし響き渡るは、聞き慣れぬ男の声。
狂喜に満ちたけたたましい嗤いは、不快と恐怖だけを只管に煽る。
闇を縫う蝙蝠の鋭い爪が、ドレスの袖を切り裂き、浅く抉った]
……ひぁ、ッ
[か細く響いた悲鳴が、息女の無事を護衛兵達に知らせた。
退路を確保するよう、雄々しく叫ぶ兵長の声が耳に届く>>7]
良かった、ディーク……、無事で――
[――大丈夫だ。勇猛で名を轟かせた彼が、変わらず其処に立ちはだかっているのなら。
そう自分を鼓舞する努力は、よく見知った幾つもの顔が、虚ろな表情を湛え蠢くのを目の当たりにすれば、粉々に砕け散った]
―二週間前・或る貴族の邸宅―
[――その男は、少女の生まれ育った邸宅を、一夜にして惨劇の舞台へと変えてみせた。
煌々とランプに照らし出され、従僕達の行き交う長い廊下が、ふ、と闇に呑まれたのが、唯一の前触れだった。
異変にさざめく声が静まり返ったのは、ほんの束の間。
悲鳴が、怒号が、彼方此方で一斉に走り、館中に伝播した。
当主は、敵襲を人間の手によるものと考えたのだろう。
妻の忘れ形見の一人娘を、個室の奥に潜ませ、事が治まるまで決して動かぬよう言い含めた。
けれど、じりじりと時が経てども、喧騒は鎮まる気配さえなく。
獣めいた咆哮が入り混じるに至って、足手纏いとなる懼れを、すぐ傍で大切なものが損なわれていく焦燥が凌いだ]
[暗闇にまろび出れば、床を揺らし響き渡るは、聞き慣れぬ男の声。
狂喜に満ちたけたたましい嗤いは、不快と恐怖だけを只管に煽る。
闇を縫う蝙蝠の鋭い爪が、ドレスの肩を切り裂き、浅く抉った]
……ひぁ、ッ
[か細く響いた悲鳴が、息女の無事を護衛兵達に知らせた。
退路を確保するよう、雄々しく叫ぶ兵長の声が耳に届く>>7]
良かった、ディーク……、無事で――
[――大丈夫だ。勇猛で名を轟かせた彼が、変わらず其処に立ちはだかっているのなら。
そう自分を鼓舞する努力は、よく見知った幾つもの顔が、虚ろな表情を湛え蠢くのを目の当たりにすれば、粉々に砕け散った]
[彼が、彼らが、相手どっているのは一体――。
思わず立ち竦んだ足を、くぐもった呻きが走らせる]
――…ディー、ク…!?
ディーク、しっかりして!
私が、…解る…?ねぇ、ディーク…っ
[床に倒れ込んだ男の傍に膝を突き、押し殺した声で囁く。
鍛え上げた心身を余さず活かし、当主の息女たる身を、今日まで護り抜いてくれた兵長に。苦しげに喘ぐ咽喉が、それでもはっきりと戦士の矜持を以て、主の名を紡ぐ>>52
――未だ、彼は失われていない。
安堵に綻びかけた唇は、兵士達の死を告げられ、凍りついた]
……嘘、そんな…
だってみんな、あんなに強くて…、……
[手練れ揃いの護衛が、もし全て斃れたのならば。
天分は専ら商才に注がれ、武芸には通じていない父は――?]
12人目、 コンラート が参加しました。
コンラートは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
― 霧の夜 ―
[白い喉に刻まれたは、無惨なまでに咬み裂かれた傷痕。
縁はぐしゃぐしゃに肉が崩れ、はだけられた衣の下にも点々と、牙痕の緋の花が開く。
その姿は、まさしく野獣に襲われた哀れな犠牲者に見えたが。
ひとつだけ奇妙なのは、そこは野生の獣の棲みそうな鬱蒼した森林も草原でも、屋外ですらなく、洒脱な邸宅の、あかあかと暖炉の火が燃える、居心地の良さそうな居間だと言うことだ。]
[貪欲に伸びる男の腕は、不意にびくりと、夜目にも明らかに竦んだ。
闇にぎらつく双眸が、忙しなく瞬く。
忌まわしげに毒づいた男が、ぐわりと開いた口腔には、異様に発達した犬歯が覗き――]
[アイリス・ブライトンの人としての全ては、呆気なく終焉を迎えた*]
[否。
奇妙なのは、ひとつではなかった。
白い膚を血でまだらに染めた贄もまた、尋常の存在ではなかった。
肉の爆ぜた傷口が、こうして見ている間にもじわじわと塞がり、薄い皮膚が張っていく。
胸や腹に広がる血痕や体液でさえ、まるで皮膚に吸収されたかのように、薄れて消えていくのだ。]
[そうして、彼はゆっくりと寝返りを打つ。
長椅子にしどけなく身を横たえ、垂らした足をゆらゆらと揺らす様は、さながら猫の尾のよう。
いまだ寝乱れた姿のまま、とうに離れて衣服を整え、グラスの血酒を啜る男を見やる。
ちろりと薔薇色に色づいた唇を舐め。
与えた以上の血を得て、飽食した猫の笑み浮かべて、満足げに喉を鳴らした。]
13人目、後継者 トール が参加しました。
後継者 トールは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
―狂主の館―
逃がさないぞ、バラン!!
[争いの音はわざわざ耳を傾けなくとも、容易に届く。
"執行者"を始め評議会が遣わした者達は皆、手練れのマスター達だ、何も心配することはない。
むしろ血親から継いだ地位と名に恥じぬよう、気をつけねばならないのは己の方だろう。]
評議会の領土を勝手に荒らした報い、しっかりと受けてもらう!
[回廊をいくつか曲がり、人間を見境無く眷属に変えた同族の背中を追いかける。
外での争いを避けるように館に侵入したのは、生まれたての雛達に興味がなかったわけでもなく。
一刻も早く、元凶である狂主を討ち取るためだった。
[人としての命を無理矢理奪われた者達への憐憫は、今は心の奥に押しとどめて、走る。
バランさえ討ち取り、心の蔵えぐり出せば、罪無き彼らも血親の命令から解放されるはずだ。]
[つい先ほどまでの一時が嘘であるかのように、男は淡々と事務的な口調で評議会の決定事項>>1を語り始めた。
それを気怠げに聞き流し、ひとつ伸びをする。
言葉が途切れたところで、重ねた手の上に顎を乗せて]
……でもそれは理由の半分にしかなっていない。
何故君は、「僕に」行かせたいの。
[――そう、彼が素直に評議会の召集に応じるなど、誰も思いはしないだろう。
末席に連なるものの、議会に殆ど顔を出さず、まともに議員の責を果たしたことなど無い。
重ねた齢だけなら、血統の長となっても良い歳ではあっても、尊崇や畏敬には程遠いところにいた。
彼には常に不名誉な噂と蔑称が付いて回った。
曰く、誇りなき浮き草、人間にさえ媚を売る淫売。
曰く、相手も選ばぬ悪食、同族さえ食らう大喰らい、と。]
貴様の願いなど興味はない。ただ我は不機嫌なのだ。玩具を一つ、供物を一人捧げられたところで我の貴重な時間を割いた罪が消えるわけがない。
[そこかしこで音が気配がする中、自身の存在を隠すこともせず、供物>>70を浮遊させたまま堂々と屋敷の中を歩く。
そう、本来ならば今頃、我が城に住まう鳥のために巣箱を作っていたのだ]
醜く堕ちた凡愚な吸血鬼如きが…吸血鬼とは我のように尊厳と矜持を持つべきものだというのを証明する。
[餓鬼道に堕ちたことは下より、日用大工を阻んだ罪は重い。酷薄な笑みを刻みながらあるけば、先に来ていたのか、バランを追う同朋の声>>83が聞こえた]
― 現在 ―
[『――追っ手と戦い、倒せ』
呪わしい男の命令が、伽藍堂の身体に木霊する>>2
己の喉許を突くべく狙いを定めた懐剣>>31は、ひらりと闇に白く軌跡を描き、手首をつ、と掠めた。
流れ出す冷えた血は、握り込んだままの懐剣を這い伝うにつれ、淡く透き通っていく。
切っ先に滴る頃には、純白の結晶を成し、細く刀身を伸ばした]
……なに、よ。これ……
[呆然と呟く声とはちぐはぐに、倒すべき敵を求めて脚は駆ける。
魔物の眷属から受けた肩の傷は、何時の間にか綺麗に塞がり。
二週に及び身体を苛んでいた高熱は、しんと鎮まっている。
自らの衣擦れの音さえ、耳障りな程敏く拾う聴覚が、狂おしげな咆哮に圧される>>72
闘いの気配に、疾駆する脚は吸い寄せられる]
[男は答える代わり、傍らの文机からペンを取り、紙片に何行かの文字列を走り書きすると、彼に滑らせて寄越した。
身を起こし、あかがねいろの頭を傾けて、紙面を覗き込む。
それが、何人分かの名前であることに気付き、翠の瞳がすいと細まった。]
ふうん。なるほど。
「これ」では、君が僕を行かせたいのも分からぬでは無いよ。
[紙片を抓み上げ、細い二指の間に挟んで、ひらひらと振る。
僅かな動きで紙片は指を離れて滑空し、暖炉に燃え盛る炎の中に飛び込み、瞬く間に灰となった。
絹のシャツの前を掻き寄せ、立ち上がる。]
「あの時の借りを返せ」と言うのならば、僕に否やは無いよ。
[少しは僕に利用価値があると思っているのなら、それは即ちまだ絆の糸は切れていないと言うことなのだろうから――と声には出さず呟いた。]
14人目、学生 アレクシス が参加しました。
学生 アレクシスは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
[青年が夢見た、有り得た筈の時。]
[人々の為にと医者の志を良く学び、よく接し、よく笑った。
家の病院の後を継ぐのもそう遠い話でもないと囁かれては、
全てを修めてからだと首を横に振る。
忙しくも一歩一歩と確実に歩みを進めていた、
眩しくも温かな日は]
―――…。
[ほんの数日前に奪われ、踏み躙られて。
今となっては、澱んだ両の瞳が映すものは「主」か…
「敵」と定められたもののみ。]
― 10年前:或る教会の孤児院 ―
(たすけて)
(こわい)
(だれか)
(かみさま)
(いやだ)(こわい)(こわいこわいこわいこわいこわい)
[痛い程に握りしめていたのは、十字架ではなく古びた燭台。
連れてこられた暗いく狭い物置には、今は噎せ返る程の血の香りが充満していた。
返り血に黒く染まりながら、その時少年はただただ怯えていた。]
( か み さ ま ど う し て )
[神は、この罪をお許しになるはずがないと*]
― 10年前+1日:或る教会の孤児院 ―
[『…余計なことをしてくれた…』
『……様にこんなことが知れたら寄付金が…』『…商売女だった母親に似…』
『…しっ…あの子はロルト司教様の…』
『……今夜のうちに死体は処分するしか…捜索願いは明日に……』
漏れ聞こえる大人の声に、少年は俯いた。
様子のおかしい彼を心配してついてきた友人の手をとり、]
………やっぱり良いや、戻ろう。
おやつの時間になってしまった。
[少女のような可憐な微笑みでそう告げ、来た道を引き返す。
その日から少年は教会のあらゆる蔵書を読みふけり、結果として神学校への推薦を経るに至った。*]
15人目、混血児 レト が参加しました。
混血児 レトは、おまかせ を希望しました(他の人には見えません)。
( 痛ってぇ…
アイツら、オレがルマニだって知ったとたん、目つきが変わりやがった。
さっきまではオレの曲芸や演奏に喝采と小銭を投げてくれてたのにな。
確かに、ルマニは家畜を盗んで食ったり、紛い物を売りつけたりもするさ。
呪いをかける邪眼の民だって呼ばれてもいる。
だけど、どっかのおやじの腰痛が悪化したとか、子供が夜泣きするとか、ミルクが酸っぱくなったとか、なんでもオレが来たせいにするなっての。
でも、説得は通用しなかった。
あー、畜生。
口の中にまで血の味がしやがる。)
(
占いの得意な大婆様がここにいたなら、そう告げたろう。
貴族の横暴に立ち向かう義賊ティファレト、そんな風に呼ばれることだってあるオレも、今は商売道具の
だけど、まつろわぬルマニの森まではまだ何里もあって、夜はまだまだ長かった。
オレの上には更なる災厄が降り掛かり──そう、ソレはまさに、空から降ってきたんだ──冷たく重い暴虐の哄笑を払いのける間もあらばこそ、首筋を苦しい痛みが刺し貫いて、)
− 長い夜の始まり −
[ビクリと体躯が跳ねる。
バランに襲われ、その血によって作り変えられた青年は、操り人形めいた、ぎこちない動作で立ち上がった。
「殺セ」「喰ラエ」
その二つの単語だけが意識を埋め尽くす。
命令を下した当の血親はすでに近隣にいない。
けれど、その束縛は強固だった。
地面に転がされた自転車を拾い上げ、またがって地を蹴る。]
[人ならざる力で驚異的な加速を得た自転車は、飛ぶように大地を削り、断崖を垂直に駆け上って、月光の下へ躍り出た。
夜の中、いくつかの気配が響く。
吸血鬼──同族にして、標的。
「殺セ」「喰ラエ」
衝動に突き動かされるまま、生まれたばかりの若い吸血鬼は馬ならぬ自転車を駆って同族の気配へと突っ込んでゆく。*]
[その声は柔らかく、けれど温度のないものだ]
……捕まえた。
[しゃらり、
彼の者の背後に狭霧は白い腕を生やす。
喉首、噛めば甘き芳香の滴る柔らかな皮膚に、その爪はぷつりと血玉を作る。
雛は既に温度を持つ存在ではなかった。
薄笑いの震えは、雛の耳朶を掠めていく。
その指の、声の、冷たさに怖れを抱くかはしれず。
雛よりも幼い風貌の捕食者は、ちろりと濡れた指先を舐めた。
口唇は艶やかな緋に染まる。
人の血は芳しい、けれど己にとって何よりの美味は――血族のそれ]
今度は逃がしては、やらぬよ。
……いとけき雛よ。
[その言葉の意味を、彼の者は理解しえるだろうか。
理解しえぬとしても、その言葉は口に出された以上、為される。
隠者もまた、闇の眷属。己の意思を通すに抗うものは排除する。
――雛の運命は定まった**]
[喉を締め上げる鞭を逆に引き寄せ、抗う手。>>73
この獣が未だに戦士で、戦術を思考する頭があれば
無様に土に這いずる必要もなかろうが。
こちらに近付く足音が増えている。]
これだけ多くのマスターが動いているのは
見せしめを兼ねてあるのだろうけど。
……少々やりすぎではないのかな。
[真祖の君や白亜の隠者の気配までがある、というのは
不埒者の追討にしてはいささか趣が違う。]
[喧騒に吸い寄せられた娘が現れる頃にも、
状況はさして変わる訳でなく。>>86
傍目には、黒い塊の下で何かが唸り蠢くだけだが、
人ならざる眼は二人の姿を明瞭に捉えるだろう]
[ああ、今度こそ捕まったのだと……。]
[そして、彼は白い闇に語りかける。
その赤が白く凍っていく様は、その身体が白い闇に飲み込まれていくさまは、
きっと、誰もが止められる絶対さをもって、
隠者の透き通る眸に今度こそとなにかしらを聞こうとするが。
響きはそこまで。
掠れ残した、言葉は、人だったのか。それとも、妖だったのか。]
職人 リエヴル が村を出ました。
隠者 アデル が村を出ました。
時間があれば惰性に身を任せて過ごしていいわけではなかろう。
[楽しみも怒りも隠すことなく露わにする吸血鬼はやはり不機嫌そうに答え、続く言葉>>96には冷ややかな殺意が溢れ、それだけで壁に亀裂が走り、窓ガラスが砕け散った]
…地に伏せるべきただの犬畜生と天に仰ぐべき我とでは比べるまでもない。
[残忍な怒りを宿し供物を一度見た後視線と体を先ほど亀裂が走った壁に向ける]
それに間もなく、比べることすらできなくなるだろう。
[気配がいくつかある。その中の一つ、手繰り寄せていた心臓が近くにある。
ミシリと亀裂が入った壁が自身が近づくにつれて気配に押されるように壁はガラガラと音をたてて崩落した。
選ばれた最短の路は護衛>>108を従えていたものを置き去りにしたその先]
[悲痛な声が場に届くを聞き、少し顔を上げる。>>104
バランの子である事は間違いあるまいが、
訴えはヒトの意思のように思われる。]
……成程。
[漂着し消える虚像、闇に沈む笑みの。
どうやら、元から縁のある二人のようだった。]
[剣閃、凍てつく波動が己へと向く。
次の時には、小柄な黒はそこにはなく、
鞭は手元に巻き取って]
― 館内部 ―
[標的を追って移動する先から声が聞こえる。>>83
騒がしい、と表情は剣呑になるが、思考は好機を見出していた。
騒いでいる気配に紛れて背後から近づき、仕留める。
作戦行動に要素をひとつ加えて先を急ぐ。
その時だった。
背後で派手な音が響き>>109、何者かが近づいてくる。
新たな気配の乱入に、表情を険しくする。]
/*
ますたー(予定)がげぼくにどのくらいヤる気かわかんないので、とりあえずひんやり攻撃で様子見をば。
女の子に鞭は、すごくなんていうか、えすい絵面ですね!
離れたとこから冷気だけって、血親の命を考えるととっても悪手なのは見ない振り…
…あれ、ますたー(予定)が一旦鞭しまった?
これからぺしぺしされるフラグなのか、どっちなのますたー…!
/*
入村に際して、肩書きが何文字入るか試してみたんだけど、1000文字以上ってことがわかった!
(上限は未確認)
見栄えがスゴかったw
[無視して先を急ぐことも考えたが、そこに留まった。
戦闘中に乱入されたら面倒だ。
気配の主は、すぐにもここへ到達するだろう。
得物を構えて迎撃の体勢をとる。
手にする黒い刃は、今は取り回し良く短めな剣の形をしていた。]
ほう、よく飛ぶな。よい曲芸だが――
[回廊の壁を横からぶちぬいて顔を出したときに、見えたのは、顔は知らぬが未成熟ではない吸血鬼>>113と。目的の野卑た狗]
頭が高い。控えろ。
[腰に刺さっていた剣を抜くと横薙ぎに振るうと、関節を区切り鞭のように伸びた剣が、その場にいる吸血鬼をいっそ二人とも切り裂かんと振るわれた]
― 館の中 ―
[交戦の気配をそこここに感じながら、壊れて歪んだ扉の隙間から館の中に滑り込む。
音も無く密やかに、それでいて極めて自然に散策でもするかの如く。
気配を隠すすべさえ知らぬ幼雛数羽と、隠す気もないのか、数人のマスタークラスの血族と。
バランを追っているのは誰か、と確認するために、館の内側にそろそろと意識の“手”を伸ばしていく。]
”……おや”
[紙片に似た薄翅が閃き、白い蝶がバランと対峙するトールの頭上を過ぎる。]
“意外に早かったな”
[はらはらと白い翅が瞬き、黒衣の長生者と可憐な娘、獣じみた咆哮を上げる幼童の三者を、天井に程近い位置から見下ろす。]
”こちらは……
助勢は特にいらないと思うけど”
― 館から離れた屋根の上にて ―
[向けた瞳は館へ向かう猟犬>>55の後ろ姿を捉え]
あれがいるなら、僕が出る必要はないんじゃないかな…
[と、こぼす。
制裁や無力化ならば、捕らえられた者を死滅させることだけが仕事の自身より、猟犬の方に分がある。
彼らが狩手として出る際は、人員不足時の根回しや後始末が主な仕事となっているのだ。共に討伐戦の任というのは少々どころではなく珍しい。]
[猟犬への陰口…評議会の犬、男もその呼び名を聞いたことがある。
その場にいた男はそれを陰口と思わず、感じたままに「ならば、城館は犬小屋であり、評議会の恩恵を受ける我らも等しく犬という事か。君は実に面白い例えをするね。」と、評してしまったが故に……
男が“評議会の犬”という表現を聞くのは、その一度のみとなってしまった。
目上に対する不敬に当たる表現を繰り出す男の話に、巻き込まれたくはなかったのだろう事は想像に難くない。]
[当然ながら、声を掛けただけでは相手は振り向くことすら
しない。>>113それでは次に何をすべきか、腰に差したナイフに
手を滑らせながら、頭の中で反芻する命令を実行すべく駆けて]
…何をしているのですか。
[眼前の壁が崩落し、>>111僅かにその歩調が鈍った。
それを招いたのだろう本人が姿を表した事によってであり]
[敵が増えた。]
[手持ちのナイフは銀で出来ていなければ、何の祝福も受けた
ものでもない、ただの刃物だ。
これだけでどうにかなる相手では無いが、それも今は意識の外。
しかし、同行しているように見える雛>>122の姿を認めると、
討つ対象としての命は受けていないとして、避けた。]
そう。
[振り絞った肯定にひとつ、頷きを示すが
続く質問には何ら回答を返さない。>>125]
……では、そうしよう。
[歪む剣の軌跡。
戦士ですらなかった娘の、たおやかな腕。
空いていた手で手首を掴み、踵を引く。
導くように腕を引けば、半円を描いて
その身は獣と化した男の爪から逸らされた]
…………
[小さいながらに自領を持ってはいるが、評議会の城館に居る事が珍しくない男。
手が足りずに呼ばれる事は珍しくない為、もののついでと二つ返事で仕事を受けたのだが、猟犬にしろ、戦いの気配にしろ人手不足とは思えず――…
思考を巡らせれば“心臓を焚け”ではなく“心臓を持ち帰れ”と命じられた事へと思いあたったのだろう。
まあ、いいか…と、心中でのみ呟いて]
[白い蝶がそれぞれの戦いの場に出現し、血族同士の戦闘を観察する。
もっとも、マスターヴァンパイアと雛の彼我の力の差は、大人と子供以上の開きがあるのだが]
ん……
[細く長い指を唇に押し当て、暫し考え込んでいたが]
解き放つ意志の強さにこそ、価値があるというものだ。
[派手という供物>>122の言葉には短く答え、土煙をあげた壁の向こうへと渡り―剣を振るった]
よい、芸だ。不遜にも我を見たことを赦しおこう。
[蛇のように曲がる剣は予測をしづらい斬撃である。それをぎりぎりまで、視界に入らぬようにして避ける囮役>>126をこなした吸血鬼へと投げる言葉は冷たい]
我の許しなくして我を見るな。凡愚。請うことも赦さず、ただ拝せばよい。
[更に一段と冷たさを増して、右腕を左に反らし傾けるようにして、足に、腕に、胴体に、蛇のように剣の関節が曲がりバランを囚人のように縛り付けた]
やあ。久し振り。
僕の助勢は特に要らないけれど……
ひとつ野暮用をお願いしようかな。
[ふと、天井からの気配と"声"に気が付き仰ぎ見る。]
――コンラート殿…?
[白い蝶を認めれば、未熟な戦いを見られた気恥ずかしさが込み上げた。]
[>>120壁をぶち抜いて出現したクレステッドは、標的と対峙していた追跡者の頭上に、白い翅はためかせる蝶がいたことに気づくか否か]
[ついで放たれた斬撃に煽られるように、白蝶は天井近くまで舞い上がった。]
[そして視線を地に戻せば、最早満身創痍の男を
躱しざま、無造作に脚を目掛けて蹴る。>>127
無論、折る程の強さで。]
確かコンスタンティノポリスで一瞥して以来だと思うから……
何百年ぶりだろうね?
いいよ。
僕でできることならばね。
― 館の廊下 ―
[現れたのは奇妙な乗り物に乗ったものだった。
ふたつの車輪を持つそれは、このところ巷で稀に見かける玩具か。
バランのチャイルドならば、捕縛せよとの決定が出ている。
戦闘不能に追い込む手加減は難しいなと、ちらと思う。
思考とは別に、身体は前へ動いていた。
目の前で跳ねあがる車体。
落ちかかるそれを受けても痛手になるとは思わなかったが、むざむざ当たってやる気もない。
飛び込むように車輪の下を潜り抜けざま、支点となっている側の車輪へ刃を走らせる。]
館内は大丈夫そうだし、何かあるまで待とうかな。
[と、館に視線を向けたまま、後始末の指揮をしている血子の女に“声”を飛ばし、死した中操られた中に、愛しき女性の家族がいるか否かを探させる]
― 館から離れた屋根の上から ―
[そしてどれくらい時間がたったのだろう、件の制裁対象が地に伏せる頃、男は市街地に眷属が現れたという報告を聞き――…]
…………あ、ああ。すぐ向かう!
動かないとはいえ、眷属は眷属だ、警戒だけは続けて。
[その内容に戸惑いながらも、報告の場所へと向かうのだった]
そう難しい事ではないよ。
ただし、真祖の君が癇癪を起こされる前が
良いかも知れないね。
……バランの血を届けてくれないかな。
この、傷付いた憐れな騎士のために。
[つまりは、親の血を与えて癒えるを早めようと言うのだ。]
“余所見はしない方がいいよ”
[くすりと笑う”声”が間近でささめく。]
”……おやおや”
[呆れたかのような響きが混じり、闖入者たるクレステッドを見やるようにふわりと舞った。]
――なるほど。
かの君は確かに今、とても気持ちよさそうに大暴れしているよ。
[苦笑の混じる声]
それでは台無しになる前にいただくとしようか。
僕を見たら彼の機嫌は余計に悪くなると思うけれど。
/*
コンスタンティノープルの陥落が1453年だから、
ゆうに300年は経っている計算……
でいいんだろうか
*/
求めたのは君でしょう。
[命乞いか、と問い、そうだ、と答えた。>>141
とは言え、暴れる獣を大人しくさせるのに、
傷付けるな、という方は聞かなかったが。]
[白い蝶は、印象的な色彩を持つ執行人の元にも向かっていた。]
[ただし、気を散らすのはよろしくないと判断したか、声をかけることはせず、少し離れた壁際で控えめに羽ばたくのみに留めた。]
どうも。
まあ是から先ずっとアレに良いように使われるよりは悪くない。
[事実、現状ほどに無力化されていなければ、蛇から脱出して後ろから攻撃を仕掛けただろう。
己の意志は、まるで関係なく。]
アレが滅ぼされたら。
……私たちはどうされるんだろうな。
[しゃべるくらいしかすることの無い虜囚は、回避行動をしている男に緊張感の無い気だるげな声で問いかけた。]
[後輪のみで着地した自転車を、ウィリーのまま維持する。
卓越したバランス感覚のなせる軽業。
右手は後ろに回し、背負っていたリュートの竿首を掴むと、鈍器代わりに振りかぶった。**]
貴様には罪がある。
我の時間を割いたこと。
[せっかく大工道具新調したのに]
我が服を汚させたこと。
[勝手に壁を壊して埃が少し被ったとしても]
我に対する己の子への無礼な振る舞い。
[それが敵であったとしても]
我が供物を先に頂いたこと。
[そもそもバランのチャイルドであったとしても]
― 市街地 ―
[命じたとおりに警戒を続ける者達に声をかけ、その間を通り抜ける。警戒網の中心に伏す者に近づきながら、男は表情を変えぬまま歌うように言葉を紡ぐ。
言葉は血のように赤黒く染まり、男の唇から右手の備える手甲へと。赤黒は銀を通じて色を失い、それに変わるように男の周りを光が包む。
その間、伏したままの者は身動きをとることもせず……いや、息をするのがやっとという様は、身動きを取ることもできないようだといった方が正しい状態だった。]
[白い翅を認めた直後、身体を仰け反らせ背中からくるりと回転すると、また音も立てず廊下に着地する。]
貴方は――アハド殿…。
[一瞬だけ怪訝そうに眉を寄せるものの、現れた銀髪の純血種を認めた。]
[遥か先に舞う蝶を示した指先は、ただ力無く宙を漂った]
〔 シロ 『殺せ』 モ ゥ
『戦って殺せ』『殺せ』 『早く』
『こいつらを殺せ』〕
…ぁ、ぐ
[脳髄を揺るがして叫ぶ声への従命。
折れた脚もそのまま、身を捩らせて起き上がろうとあがきだす]
盗人とは人聞きが悪いな。
君がわざわざ僕の視界に入っただけで、見たくて見たのではないよ。
[揶揄の笑みで答えると、転がるバランの前で片膝を付いた。]
……状態を見るに魔力の枯渇、か。
元の素養が低いのか、一度仮死に陥ったからなのかはわからないけど…、まあ、城館までは保つんじゃないかな。
[魔力を奪われることがないよう防護魔法をかけたまま、男は淡々と伏す者の状態を調べていく。
同情するでもなく、焦るわけでもなく、冬の湖面を思わせる瞳には感情らしいものは灯らなかった。
――……魔力の枯渇で倒れる者、その面を検めるまでは]
か弱く優しい娘。
痛みが落ち着く頃には、今宵も終わるよ。
[回答にはなり得ぬ囁きを耳に落とす。>>145
フードから僅かにのぞく口元からの音は、やはり淡々と
もがく勢いを逃がすよう、ステップを踏み、
魔力の感じられる白刃の手を、場違いな優美さで引く。]
弁える礼があらばまだ見込みがある。
[誰であったかの面影がある吸血鬼>>152>>154であるがすぐにどのものか引き当てることはならなかった]
反問することを許した覚えはないが、今宵は見逃そう。我は寛大ゆえにな。
[もう一人、バランのチャイルド>>143は存在をあまり意識していない。己の供物と話すだけならばそれを横に置くのは慢心ともいえる余裕]
[赤毛の吸血鬼が何を求めているかは埒外に、己は己の獲物の中にいる凡愚へ凍てつく視線を向ける]
貴様には罪がある。
我の時間を割いたこと。
[せっかく大工道具新調したのに]
我が服を汚させたこと。
[勝手に壁を壊して埃が少し被ったとしても]
我に対する己の子への無礼な振る舞い。
[それが敵であったとしても]
我が供物を先に頂いたこと。
[そもそもバランのチャイルドであったとしても]
そして吸血鬼といての醜くあったこと。
幾千幾万の死をあたえても生温い罪だ。
[剣に宿る真祖の魔が雁字搦めに絡め取るバランを逃がすことはなく、何よりも冷たい声が残酷に告げる。]
相応しき姿へと落ちろ。
[蛇腹剣を思い切りひく剣の縄を解く動作。が、剣の関節が牙となり、胴部胸部をずたずたに削り、両腕両足を断裂させ、胴体と首だけがつながる木偶人形へと変えた。
苦悶の声をあげそうになる口をその寸前で足で踏みつける]
喚くな。耳が汚れる。似合いの姿に我自らしてやったのだ、その栄を誇り死して我に拝するがよい。
[それ以上、クレステッドに答えることはなく、バランの上に屈み込む。
捕らえられた雛どもも、今は関わる気はなく。
縛めの間から僅かに除く皮膚に、牙を立てた。]
/*
お前本当にやる気あるのかってぐらい戦ってない!
でも雛も叩けって言われてないから、忠実にその命令は
守っているつもり。
自我の大部分を抑え付けられていると、こういう部分で
融通利かなくて大変ですよね、バラン様。
― 館の廊下 ―
[車輪の一つを斬り落とせば転がり落ちるだろう。
そんな予想は、あっさりと覆された。>>146
軽業めいた動きで転倒を免れた上、さらに攻撃へと繋げてくる。
眷属となって間もないだろう相手の予想外の身軽さに、軽く眉を上げた。
握っていた黒の刃が崩れ、形を変える。
持ち手はそのままに、腕を覆う籠手のような姿となる。
拳を腰に溜め、一歩踏み込んだ。]
[振り下ろされる即席の鈍器を籠手で打ち払い、
体を小さくひねってもう一方の拳を相手の腹へ打ち込む。
無駄のない、正確でミニマムな一撃**]
/*
真祖たんのピンポイントな天然ぶりと天上天下唯我独尊ぶりに
ぎゃっぷもえを覚えたらいいんだろうか(首こて)
*/
― 市街地 ―
…………あ、れ…
[体を起こし髪をかき上げてみれば、そこにあるのは彼女の家族。
彼女以外の名前を意識に留めるつもりなどなかったので名は知らないが、彼女が大事にしている写真の中で、団欒する姿を見まごうはずはない。
それなら彼は探し人であるのだが、何故今になってここに在るのだろうか。
彼がいるはずであった場所は館からは遠く、先に血族になったのであれば館にいるはずではないか。
そもそも、血親がなくなったからといって、ここまでの魔力枯渇状態に陥るとは……館にあった血子らを見てもおかしい話なのではないか……
数秒ほど、脳が状況を受け入れるのを拒みはしたが、それが済めば男は困惑に震える湖面を抑えこむかのように、一度だけ唇を噛み締めて]
……ああ。
全く君と言う奴は。
[眼前で手足をもがれたバランを見れば、呆れた声音が洩れるのは、致し方の無いところ。
クレステッドが忌々しげな口調とは逆に、思いきり踏みにじる様は実に気分が良さそうに見えるのは、恐らく本人には分からぬところだろう。]
しょうがないな。
[手足の断面から噴出す血を、魔力でまとめて丸い珠の形に凝縮させる。
クレステッドを完全に無視する形だが、これも致し方の無いことだろう。]
アレ。
[同じ雛の示すものは>>147、やはり主の事だろうか。
敵を倒せ、殺せとの命しか出さなかった存在に、自分は何故
従っているのか。
雛の言葉に意識の欠片は疑問を浮上させ、手に持ったナイフを
取り落とす。
抗いをも浮かばせたそれは、青年に苦痛と…
少しばかり感情の灯りの見える返答を齎した。]
そんなの―――…
親が滅ぼされるのなら…子も同じく、ではないのでしょうか。
[脳天を貫かんばかりの激痛に膝を付く。
いまや手足を奪われ、叫ぶことすら叶わなくなった主を前に
>>162しても、動けない。
新たなる気配が増えようとも、>>153意識はそちらを向かず。]
やめなさい。無駄足になるだけだよ。
[冷気を生み出す手指を離さないまま告げる。>>168
それが血を止めて壊死を招く程のものか、
硬く凍らせて手を砕く程のものかは解らぬが、
祖たる者の魔力に及ぶに足るものか。]
[骨を砕かれても足掻く男の姿には、いっそ感嘆を覚える。]
[掌の上の緋色の珠が握り拳ほどの大きさになったところで、もう用はないとばかり立ち上がる。
無残に転がる罪人を全く省みること無く、背を伸ばして立つ足元から、無数の黒蝶の群れが湧き立ち、コンラートの姿を包み込んだ。]
フン…
[とがめだてられる理由などないため悪びれもしない
だがその行為>>167に対してこちらもまた咎めることはしない。]
[その行為で気を引き締めたのだろう、男は周りへ向き直り]
眷属の無力化は完了、城館までは僕が責任もって運ぼう。 それと…そうだね、そこの君でいいか、同行するように。
それから…
[幾つかの指示を飛ばした後、先の連れであった女に向かえば]
あとはまかせる。頼んでいいよね!返事は聞かないけど。
[と、残りの仕事を押し付け、言葉の通りに返事も聞かぬまま、その場を去っていっただろう。
作戦に参加していた他の上級吸血鬼達に、一言の断りもしないまま。
彼が真にバランの血子であったなら、夜明けまでに彼女に引き合わせ、それから城館へ連れ帰らねばならない。
このままの状態で彼女にあわせるわけにもいかない為、時間の余裕などないに等しい。
男の血子は事情を知っているからだろう「他の方々には私から伝えておきますね、遅れる旨も」と、苦笑交じりに自身の血親を見送るのだった**]
“また後で”
[雛たちと言葉を交わすトールの耳朶に、ひっそりと囁きを送る。
そこに笑みが混じるのは、いまだ初々しさを残すこの若い血族を好ましく感じるが故に。
殻を割って、やわらかい中身を味わってみたい……という本音は押し隠す。]
トール。どうやら、今はバランの近くにいるね。
役目は果たせたかい。
[それは、評議会の指図通り、心臓を奪えたか、
という問いだ。
バランは決して惰弱ではない、四肢をもがれても
首や心臓がまだ繋がっていれば油断は出来ない]
[微かな呻きに視線を走らせれば、骨の砕けた脚でなお立ち上がろうとするディークの姿>>152]
――分かるでしょう、止められないのよ!
私も、彼も、自分の意志では止められないの…!
[彼を眼前で再び傷付けた相手の言動には、苛立ちが募るばかり。
けれど――目の前の人物は、一度は自分を庇うような真似をしてみせた相手でもある。
手を離す素振りもないのを見てとれば、堪らず叫ぶ>>173]
封じるつもりなら、武器なり何なり使えばいいでしょう!?
だから、早く手を離して…っ!
[迸りかけた魔力は、握り込む掌に反発するかのように逆流し、体内を巡る。掌に伝えるのは、ひやりと凍みる感触のみ]
はい、また後ほど…。
[耳たぶを擽るような囁きに頷く。
彼の本心がどんなものか、全く疑うことも知るよしもないままに――。]
ふん、やはり盗人ではないか。…まあよい。
[血を吸うではなく固めたのだ。なにか入用でもあるのだろうと類推はすれどそれ以上深くは考えぬ]
…トールだったな。
[消えた蝶は横に置き、確か始祖を血親とするもの。引き継いだ。といういつ聞いたかわからぬ情報だけを頼りに記憶の中にいたものの名を口にする]
我が恩寵によりわかりやすい手柄をくれてやる。この凡愚から心臓をとれ。
[わざわざ己の威を示す必要はないため新参のマスターに比べればこやつの心臓など価値は低い。]
/*
裏で糸引いて心臓をトールの手柄にしようとする僕でした
いや、だって似合うだろ……ローシェンいないし
*/
何を勘違いしているのだ。供物。
貴様は我に差し出された供物だ。その生も死も、我が手放すまでは許可なく奪うことは何者であれゆるすことはない。
[先のチャイルド同士の会話を聞きながらも微笑む供物>>179へと告げた]
バランはアサド殿が仕留めました。
役目は――…。
[視線は作業するコンラートを見送り――。]
どうやらアサド殿の恩寵におかげで、役目を果たせそうです――。
[と、苦笑混じりに答えたか。]
その必要はないよ。
[娘は己の意志では逆らえないと言う、>>181
いっそ武器でも使って封じろとも。]
じきに終わる。
[折しも、一方的な駆逐の終わりを告げるように
蝶のひとひらが漂うか。]
/*
ますたーが、言葉足らずな部分を終始リードしてくれてるのを感じます。
ありがとうありがとう。
暫く鳩さんなのに、頑張ってくれてる。
― 館の中 ―
[天井近くを音も無く舞っていた白い蝶の傍らに、黒い閃きが生まれ。
爆発的にそれは増殖し、柱状の黒蝶の群れとなる。
その中心部に人型の塊が生じ、泡から生まれ出でた美神の如くに、あかがねいろの髪の青年が出現した。
周囲に舞い飛ぶ黒翅をまとわりつかせつつ、羽毛の軽さで地面に降り立つ。]
やあ。
遅れてすまないね。
[若い娘と理性の無い獣、ふたりの雛をおいてけぼりにした挨拶は、明らかにこの場にいるもう一人、少女のような容姿の長生者に向けてのもの。]
そう……。
素直に受けておきなさい。
真祖の君よりも、トールの方が功績は必要でしょう。
障りはないよ。……僕の方はね。
[言外に、彼の行動の経路上にあったものを暗喩して
コンラートに気安さを含んで答える。>>185]
[扱いやすい短剣を取り出すとバランに近づき、血の海に片膝をついて。
いくつかの肉の塊と化した醜い物の胸に突き立て、切り開く。]
[躊躇する無く手を差し入れれば、
もはや脈打つ事なのい赤黒い肉の臓物を掴んで、取りだした。
ぶよぶよとした肉塊は、切り刻まれた本人同様。
とても醜い形をしている――。]
[痛めつけはするが、己がわざわざ奪う価値のない命を他のものに押し付けただけだというのに、トール>>186偉そうにうなずいて返す。
礼をとる態度を受け、ほんの少しだけ機嫌がよくなっていた]
ありがとうございます。
これで無事に、お役目を果たせました。
[バランから心臓を取り出したあと、再び先輩である上級吸血鬼へと答えた。]
そんなもの決まっている。
我が決めたからだ。
[半眼でこちらをみる供物>>189に、むしろそこで起きる疑問の理由がわからぬという態で答えた]
そう慌てるものではないよ。
ものを尋ねる時は順番にしなさい。
[どうやら、理性を保全した娘にとっては、
気を逸らせた方が抵抗は削げるらしい。>>190]
僕が知るのは、バランが今宵の内に……ああ、今だね、
死んだということ。
ここに居るのは、任を全て終えたわけではないから。
そして、彼は僕の友人だ。
[コンラートについては淡白な声で説明を加えた。]
ありがとうございました、アサド殿。
これで無事にお役目を果す事が出来ます。
[心臓を取り出すと、改めてクレステッドに礼を述べる。
何もない空間からガラスのような球体を呼び出すと、その中へとバランの心臓を押し込む。
表面はシャボン玉のように柔軟なそれは、外側から心臓を入れると張りと固さを持ち。
それでも風船のように、フワフワと浮いていた。]
[目線で、泥まみれで這いもがくディークを指して尋ねる。]
血が必要なのは彼の方か。
[分身たる蝶で、戦闘(と言うよりは制止)の模様は視ていたが、問うまでもなく満身創痍に近い、哀れな姿だ。]
閉幕だ。
[トールが心臓>>191を抉り取るのを見届けたところで、口を塞いでいた靴をどけ、汚れた靴を亡骸の服にこすりつける。
巣箱つくりを阻んだ不届き物は既に消えた]
構わぬ。此度の働きをもって、我と話すことを許可する
[戦闘の時に帯びていた冷たさが潜められながらも、礼をいうトール>>196へとどこまでも尊大にいうと、視線を、チャイルドの二名に動かす]
説明せよ。トール
[少しの沈黙した後、使い魔からの手紙を流し読みしかしていなかった...はどうなるのか覚えていなかったため、偉そうにトールへと説明を丸投げた**]
……と、言っても、僕は何もしていないけどね。
[淡々とする声だが、台詞は冗談めかしてあった。]
こちらは何人か、バランの子を連れて帰る。
顔を合わすのは帰還の後になるかも知れないね。
じゃあ、後程。
お疲れ様でした。
いえ、おかげでバランと対決するのに集中できましたから…。
[声の温度に反して、冗談めかした台詞にもちゃんと答える。]
そうですね。
こちらにも何人かいますので、責任を持って連れ帰ります。
では、また後ほど――。
[コンラートからの一目瞭然の質問には、>>198
フードが小さく揺れる頷きで答え。
娘からの、これも一目瞭然の答えには>>199]
解らないの?
[その身を新たに流れる夜の血統は、
娘に彼我の立場を教えないのだろうか。]
解らなければ、己の心臓に聞きなさい。
[ただ――…
抑え付けられていた意識が一気に浮上する感覚は、身体機能が
向上している現在であっても耐え難いもの。
潰えた夢、それまでの道程。
それらを一度に思い出して、取り戻せない全てを想い
叫ぼうと思ってもひとつも声にならず、
ただただその場に崩れ落ちるだけとなった。]
[バランの名にぴんと来ない風だった娘を見て、
何かに理解が及んだらしく声をこぼす]
ああ、血親の名も知らされなかったのか……
下策だね、従属の呪に主名を乗せないなんて、
何か足がつくのを避ける事情でもあったのかな。
今となっては些事か。
[虚脱する体に手首を掴むを緩めて、
その手を取るだけの力のみを残す]
[霞む瞳をディークへと向ければ、泥濘の中、傷めた身を沈める姿が見えた>>197
安堵の後、胸中に込み上げ息を詰まらせるは、血親となった男への憎悪。一度ならず幾度でも、この手で弑することが叶うなら、と昏い衝動が喚き立てる]
解りたくなどないわ。…何も。
[己の心臓は、二度とこの身に温かな血を巡らせることはない。
地に臥せる彼の身も――邸宅に残された皆も、恐らくは。
自分にとって全てが喪われた事は、解りきっている>>205]
血、を……?
……ッ、お願い、それで彼が回復するのなら…
[それでも、狂乱の態を見せたディークが少しでも元に戻るのならば、と。赤銅の青年に懇願する>>198]
[彼を助け起こそうしてみるが、
人間としての生命を無理矢理に終えさせられ、
家族も恋人も、夢も希望も――。
もう取り返せないものを奪われた者にとって。]
[掌に血珠を乗せ、泥の中に倒れ伏すディークに歩み寄る。
バランを討滅したことで、破壊衝動に駆り立てていた血の絆の強制力が失せたのだろう、彼は糸の切れた操り人形のように動かなくなっていた。
そこにいるのはもはや荒れ狂う獣ではなく、疲弊し、傷を負った、転生したての幼子に過ぎない。
泥で汚れるのも構わず、抱き起こし、腕の中に抱き取る。
泥にまみれた顔は、消耗の色が濃い。
疲労が目に見えるほどの影となって色濃く落ちるまでには、一体どれほど過酷な境遇に置かれたのか。
知性の感じられない、動物的な反応は、殆ど血を口にしていない、渇きのもたらす狂乱の所為だけではなかろう。
何からの理由で、理性を奪われ、心を破壊されたのだ。
伸びやかで強靭な四肢、全身の筋肉のつき方から見て、バランの手駒に変えられる前は、ひとかどの戦士だったのではないか。]
…、
[明るい赤錆色の瞳が瞼から覗き、揺れる。
泥まみれの乾いた唇が震え、
数日ぶりにその隙間から意味のある音が漏れた]
──い、 ャ
["あいつ"の血。あの呪毒の。
少しでも遠ざかろうというように、顔を精一杯に血珠から背ける。
のろのろと動いた手は相手の白い衣を汚し、押しのける代わりに緩く握ってしがみついた]
そ やだ…ぁ、
いや、 ──っ!
[怯える子の頭を肩に凭せ掛け、赤ん坊を宥めるように揺すり上げる。]
もう怖がらなくていい、
ここに君を傷つけるものはいないから。
[優しく抱きしめ、囁きかけ、己が首の血脈に彼の唇を導く。
「これ」は、あれとは違うものだから、と。]
ぁぁ…う
[耳に届くのは、音楽的な響きを持つ、穏やかな声音。
意味をとらないまま無意識に、しがみつく指に力が入った]
〔イヤ … それ
渇 コロシ〕
[空白の多い思考はまとまらない。
揺すり上げられ、頭部を導かれて、鼻先にしろい首筋が晒されると、
焦点の合わない瞳が細められた]
……
[唇に触れる血脈。 薄く唇を開いて吐息を漏らす]
[泥のこびりついた髪を指で梳き撫でる。
血脈が感じ取れれば、吸血鬼の本能が導くものはあるだろうと。
違わず、産毛をそよがす吐息を首筋に感じ、駆け上る淡い痺れに背筋を震わせる。
ん、と濡れた呻きが、形の良い唇から洩れ出た。
だが、幼子はまだ牙を立てて血を摂るまでには至っていない。
禁忌を取り去り、生きる術を学ばせねばならない。]
[片方の手で、自らの首筋に触れる。
そして、爪を突き立て、幼子の唇のすぐ側の皮膚を裂いた。
時を置かず、浮かび上がる鮮血が、首飾りのように赤い珠を作る。]
[鼻腔をくすぐる甘やかな──]
──…
[伏せた睫毛の先が震えた。
ぷくり、浮き上がった小さな血の珠へ唇を寄せる。
砂漠に水の一滴を零すような、 それでも糧となる甘露]
は、ぁ
[すぐに塞がった浅い傷に、
舌先を伸ばして触れさせればたおやかな残り香]
[再三、手を離す事を求められれば、膝をつく様子に
象られる疑問が生じるものの、口に上る事はなく。
最低限の力も抜けば、白魚のようにその手は逃げていった]
[コンラートと獣であった男の挙動に一時目をやり、
友人に礼を告げた娘がくずおれたところで、
つとその身を支え、意識がないのを確かめて抱き上げる]
[自分達は何なのかと聞いたり、何も解りたくないと
言葉を投げたり、どうやらどこか気難しいようだ。]
[躊躇うような間を何度も置きながら、
肌理整った喉元へ己の牙を触れさせる。
ほんの浅く表層を傷つけた切先が、新たな滋養に触れると]
ん
[ぴちゃ、と音を立ててそれを舐めた。
流血が止まれば、またささやかな甘噛みを試みる。
雛の初めての給餌は酷く不器用で、時間がかかった*]
ちなみに、複雑骨折っていうのは複雑な形に折れた骨折の事じゃなくて、
折れた骨が皮膚突き破って外に出てる状態の事をいうよ!
わーぐろい
[魔力の源が気をやった事で、懐剣から伸びた白刃は
はらはらとほどけて元の短さに戻る。]
…………
[鞘の所在が解らぬ刃物は、ひとまず己の手に。]
[次に口を開くのは、雛の給餌の後]
他のマスター達も帰還するそうだよ。
[残る友人へと促す声]
[濡れた舌先の感触。]
ふ、……ぅ
[唇があえかに開く。
もっと、その先を、と。
促し、牙が皮膚に触れるように、そっと頭を抱き締めて。
躊躇いの後に、尖った先端が皮膚に窪みを作れば、ああ、と溜息をつき。
滲み出した赤を舐め取る舌に、リズミカルに背を撫でて励ますを繰り返す。
白い膚をほんのりと朱に染め。
雛の不器用な給餌に向ける微笑は、聖性と淫靡をふたつながらに備える。
知らず唇は旧い古い子守唄を紡ぎ出す。
それは、血を与えた愛し児が新しく生まれいずる眠りの間に必ず歌い聞かせる――**]
[やがて、山の端から微かな金色が覗く頃には
暴力の跡形だけを残して、生ける者は全て、
この夜から姿を消した**]
[牙を立てて血脈から直に吸えばほんの数秒分の寡少。
渇ききって弱った餓えを満たすには、長生者の血潮が宿す魔力は濃すぎたのかも知れない。
首筋に鼻先を埋めて糧を啜りながら、いつしか胸元を握った指から力が抜けた。
瞼も落ちて、吐息は弱く浅く変わり]
──……。
[旧い古い子守唄の旋律が傷んだ心にひっそりと沁み込んでいく。
朧な意識は、やがて微睡みの帳の深くへ沈んだ**]
[量にすればほんのひと口かふた口。
精々唇を潤す程度を、時間をかけてようやく摂取した幼子は、やがて重い瞼を閉じて、眠りの淵へと沈んでいった。
乳房を銜えたまま寝入る赤児に似て。]
……ふふ。可愛いね。
[血を与えたことによって生じた、燻る微低温の欲に目元を仄かに染めたまま。
無防備な寝顔を眺め、額に張り付いた前髪を取り除けてやった。
バランの血珠は、いつの間にやら脇に押しやられていた。]
/*
ちら。
遠回しなおねだりにますたーが答えてくれてる!
だっこ、だっこー。
懐剣もちゃんとますたーが回収してくれてるわね、
あ、忘れてた…と思う時は、すかさずふぉろーしてくれるますたーが素敵。
持ってると目覚めた時に、衝動的に自害図りそうだしね…!
イケメン護衛長さんと縁故できた&父の末路を確かめてないので、自害の可能性はぐんと減りましたが。
ますたー毎晩闇討ちで遠回しな自殺(という名の返り討ち狙い)計画を想定してたとか。
[分身たる蝶が吸い上げるバランの血を、かすかに残る魔力の残滓ごと味わうと、あのような下衆でも血は甘い、と妙な感慨を覚えた。]
それでは一足先に戻っているよ。
[同じように意識を失った若い娘を抱える友人に微笑し、足元から黒蝶の一群を湧き立たせる。
無数の黒翅の雲に紛れ、姿の見えなくなる刹那。
首筋に鼻先を埋めて眠る幼子の瞼に、愛おしむように口接けを落としたを、友は気付いたかどうか。
――次に蝶の群れが出現するのは、評議会の所有する城館。**]
ちなみに、バラン=サンの血を飲まされたら、マーライオンしてやる気まんまんでした。
←耽美村でゲロを吐こうとする参加者。
でもゲーってせくしーですよね?ね?(首がっくんがっくん
うぐ…っ
[浸透する衝撃は若い吸血鬼の身体を後方に吹き飛ばすことなく静止させる。
派手さはない、だが威力のすべてを対象に集中する攻撃をまともに喰らっては為す術もなかった。
操り手と前輪を失った自転車、そして壊れた楽器は石床に転がり、自身は攻め手の握り拳の上に頽れる。
血親たるバランの心臓が抉り取られた瞬間も、自らの肉体が変容した時と同様、意識はなく、短い死の眠りを漂っていた。]
― 館の廊下 ―
[左手に柔らかな衝撃が伝わり、次いで抵抗が突き抜けて失せる。
代わりに掛かった重みを左腕で受け止めた。
倒れる自転車の上から相手を掬い上げ、そのまま肩に担ぐ。
そのころには館から戦いの気配は失せ、
眷属の気配もまた少しずつ減っていた。]
……終わったか。
[鼻を鳴らして呟き、踵を返す。]
[視線は一度、壁際の蝶へ向く。]
こちらも済んだ。
問題はない。
[気づかぬ顔をしていても良かった。
だが声を掛けたのは、気づいていたと示す意地のようなもの。]
[数歩歩くうちに人の形は崩れ、四足の獣となる。
狼を一回り大きくしたような獣の体毛は、闇に紛れる黒。
鬣のように豊かな首回りだけは、もとの髪色を残してした。
背に獲物を載せたまま、獣は疾走を開始する。
その姿は夜風に紛れてたちまち消え失せた。]
― 城館・ホール ―
[城館の門を抜けたところで人の姿に戻る。
正面玄関からホールへ入れば、獲物は適当なソファーの上に投げ出しておいた。]
任務終了だ。
バランのチャイルドは一旦ここに預け置く、でいいんだな?
[自身は立ったまま、評議会と連絡を取る。
バランの子はしかるべきマスターの元で再教育されることになるだろうと聞いて、投げ出した獲物にちらりと視線を向けた。]
14人目、 ダーフィト が参加しました。
ダーフィトは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
― いつか ―
[闇の訪れは突然だった。
彼の生きてきた世界は酷く平穏で、それが突然に終わりを迎えようなどとは思いもせず――生業とする学び舎で常と変わらぬ日を過ごし、同業の者や学生達が賑やかに笑いさざめく、それが日常…で、ある筈だった。
けれど夜の中より這い寄った闇が、一瞬にして日常を奪う。周りの者が順に倒れ伏し、命を与え損なっては失われていくのをなす術もなく逃げることも叶わずにただ見る]
(――や、めろ…)
[凍った喉からは音は紡ぎ出されず、自らとは別の最後の命に闇が覆いかぶさる]
「う、あぁぁぁぁぁ…」
[首筋に獣の如き牙を突き立てられ、いのちが喪われていく]
「――これも、駄目か…」
[呟きが洩れ、闇が、彼を見た]
[逃げなければ、と思うけれど目は闇から離れることはなく、体は自分の意思で動くものだというのを忘れたかのようで。
そして、闇が彼の上に身を屈める]
う…
[身から何もかもが抜けていく。力も意思も記憶すらも奪い去って――そして、彼はたしかに死んだ]
[気配を感じて首を巡らせれば、見覚えのある精悍な男と視線があった。]
いっ…
[喉元から鳩尾に蟠る鈍い疼き。
その原因のひとつは、この男の拳であることに間違いはない。
増えた光量のもとで見ても、彼は
さっきはごめんよ──
悪霊祓いしてくれたの、兄貴?
[多分、年上だろうと思ってそう呼びかけてみた。
さすがに300年も生きてるとは知るよしもない。*]
― 喧騒前 ―
[暗い地に倒れる意識。地面に縫いとめられた手足は動くことはなく
――コワセ
不意に遠くから聞こえた声。死んでいた筈の意識がぴくりと動く。
ああ、壊さなければと――死に絶え倒れ伏していた意識がもがく。
もがくけれど手足は動かずただ死への衝動だけが頭の中を駆け巡る
――ころさないと――
誰を?]
[動けずに意識だけ暴れていると、不意に闇の気配が周りに浮き上がる
――報告を
――生きているのか?
そんな声が聞こえる。ああ、これはころさなければいけないものたちだ――頭はそれを理解するが、体は相変わらず自分の意思では全く動かない。
ひとつの闇が近付いてきて、ふわりと体が楽になる。
とはいえ動けるほどの力はなく、そのまま倒れていると、身が起こされた]
「…………あ、れ…」
[そんな呟き。
ころさなければ。ころさなければ。これは、ころさなければいけない“もの”だ
意識だけが暴れるけれど、やはり体はぴくりとも動かない。ざわりざわりと周りの闇の者達が動く。
――そうして、どこかに運ばれた*]
― 城館・ホール ―
[視線の先でバランの血子だった雛が身じろぐ。
開かれた瞳は、先ほどの狂気が抜け落ちていた。]
無事だな。
───謝罪は不要だ。
[歩み寄って顔を覗きこむ。]
バランは死んだ。
俺ではないが。
[問いに、端的に答えを置く。
バランを殺したのは自分ではないから、おまえの呪縛を解いたのも別の者だ。
…との意を込めたものだが、いかんせん言葉は足りていない。**]
― “彼女”の家へ ―
[街を往く馬車は、馬の足よりも疾く駆ける。その姿は戦いの場へ向かった際とはだいぶ様相を変えていた。
普段は主人の趣味のまま、人の世でよく見られる二頭立ての四輪馬車を模していたそれは
姿を変えることを止め、疾走る事のみに、能力を注いでいる。
その姿を確認することが叶うなら、馬車を繰る首なき御者と首なし馬を見とめる事ができるだろうけれど、姿を模すことを止め駆ける早さが、人の目に止まる事などあるはずもなく]
少し君の血を貰いたいんだけどいいかな?
[霧を切り裂くように進む馬車の中、“彼女の家族”を連れた男は共に乗り込んだ者に問う。
問われた相手は男の血子ではなく、首筋を抑えて浮かべる表情は警戒の色に染まっている]
……ああ、いや、眷属化する気なんてないよ。申請ないまま眷属増やして、評議会敵に回すほど阿呆じゃない。
知ってるだろ?そう簡単に僕が眷属増やせない事。
[意図が通じてなかった事に気づけば、その意図がない事を相手に解く。
そして了承を得ることができたなら、指へと針を指し、その血を一滴すくい取った]
一時的な魔力の補填っていっても、僕の血はそのままじゃ毒だからね。
[そんなことを言いながら、指先にある他の血族の血、重なるように自身の指にも針を指す。
二つの朱が交わるのを見届けたなら、眠る子の口へとそれを落とした]
[高位種に染まることも叶わず、高位種を染めることも叶わない、存在能力だけは無駄にある異物の血をそのまま口にするのは、生まれたての吸血鬼にとっては自殺行為以外の何物でもない。
故に、混ぜ物を施して与えてみたのだが――…。
眠る子の反応は如何様であったか]
[「バランは死んだ」と男は告げた。]
ああ、あの悪魔か…
[そういや、自分も死んだと言われたような。
死んだんだっけ? あまり考えたくない。
そう思う傍らから、涙が溢れて止まらなくなった。]
なに… なにこれ
[抉られるような喪失感に血が滾る。
望んだものではなくとも、この身を縛る絆の慟哭。]
なんでだよ、 知らねーよ
[狂いそうだ、と我が身に爪をたてた。*]
[抱え込む胸に凭れた頭が、微かに揺れる。
獣と化した雛が引き裂いた傷、今は綺麗に癒着した痕に
こびりつく血が、甘く馨った>>71]
――…ぅ、ん……、……
[芳香を辿ろうと、フードに覆われた首筋に腕が絡まり、
肩口に頬が寄せられる。
小さく鼻を鳴らし、香を胸の内に吸い込めば、
重苦しい呼吸が幾らか鎮まった。
仰のく顔は、ふ、と和らぎ、そのままことりと肩に額を預けた]
― 疾走する馬車の中 ―
[先程までの凶器にも似た、死への渇望は不意に途絶えた。
意識を周りに向ければ、自分がどこかへ運ばれていると知る――どこへ?
と、かけられた声>>253にやっと開くことができるようになった視線を向けた。
――曰く、血を貰いたいと。
思い出されるのは自らが死んだ時。周りの親しい者達が次々と命奪われていく時。
思い切り警戒の色を出していたら、違うとの説明はある>>254が――正直訳が分からない。この男は何を言っているのだろう。眷族?評議会?まるで自分が何かを知っているのが当たり前であるかのような態度]
―…。
[口を開こうとすると、唇はなんとか動くけれども声を出すほどの力はまだない。
――好きにすればいい。
そんな形に動いたのを彼は気付くだろうか。
自分の周りで何が起こっているのかまったく理解できないが、彼がどうやら普通の“人”ではないこと、彼がその気になれば自分の意思など必要がないであろうことは理解できる。ならば勝手にすればいいと思うのは、死の記憶が鮮明すぎて自棄になった気分も手伝って]
― 評議会 城館へ ―
[蝶に化身して消え去るコンラートを見送った。
駆逐された館に残る気配はもう幾らもない]
……また悪い癖を起こさないかな。
[厳格な身分制の敷かれる吸血鬼社会にあって、
かの友人には悪評が目立つ。>>84
頭の固い御仁に睨まれなければ良いが。
拒むように目を閉じた娘を抱えて、ふわりと飛び去る。]
[眠る子を見る男は、それを口にだすことはしない]
(吸血鬼にはなってしまったけれど、自立稼働できる存在であるだけマシなのかな。
死霊術で誤負かせるかは五分五分だったからね…)
[死霊術の対策をできるということは、死霊術の知識があるということなのだ。
権利や尊厳を大事にするものには見せられない胸中、その動機は皮肉にも、尊厳を大事にする女を送るためのもの]
[夜明かりを背に受けて飛ぶ最中、
肩口に懐く身動ぎを覚える。]
ん……ああ、渇いているのかな。
酷い夜が続いて、疲れたでしょう。
まだ少し、眠っておいで。
[ことりと脱力した耳元に囁き、帰路を急いだ]
“――好きにすればいい。”
[血を入れるか入れないか、それくらいのタイミングで、彼の唇がそう紡ぐ>>258のを見て取った。
一体どこから聞こえていたのだろう、一寸そんな疑問がよぎるものの、それの優先順位は男にとって高くない。
意識があることがわかったのだ、やるべきことはひとつだろう]
自立稼働できる存在であるのだし、意識があるならそろそろ起きてもらえると助かるんだけど。
[自立稼働……まるで物か何かのような扱いで、男は相手に言葉をかけた]
― 評議会 城館 ―
[運び込んだ娘は、そのまま城付きの小間使いに
委細を預けてしまう。
彼女が次に目覚めるのはベッドの上だろう]
[ホールで『執行人』が評議会と連絡を取るようだったので
彼に任せて、黒いフードはふらりと温室に出た**]
― 破れた闇 ―
くろぐろと 睡る意識の 水底
瓦礫の山に座り込み あたりを見回した
近くにころがる何かの残骸を拾い上げる
顔のうえに透かし見ると
丘の道を駆け抜ける馬のイメージ
赤鹿毛の毛並
これはきっとだいじなもの
いくつかの残骸を抱え 瓦礫の山をおりる
何もない空白へ 丁寧にイメージを並べた
ここにあったはずの豊かな世界
欠片をあつめて
ひとつずつ積みあげる
けれど
もとのかたちが全くわからない残骸を手に
天を仰いだ
〔 …… 〕
はるか高くをひらり ひらり
舞う白のイメージが視える
毀れた世界にしんしんと漂う 穏やかな調べ
かそけき謌に聞き入った
白い翅がうたう
こもりうた
― 潜り抜ける蝶 ―
[幼児のように抱き上げられて、転移の雲に包まれた]
[脱力しきった身体は、白皙の青年の小さな身じろぎにもゆらり、流れ揺れる。
摂り入れた血精が少しずつ、馴染んでいく。
まぶたへ触れた蝶の気配にちいさく唇を動かした*]
[空を舞い、吹きつける夜風は黒い外套の腕に遮られる。
ふわふわと揺れる腕の中に降らされた、労わりの言葉。
父とも従僕の誰とも違う、中性的な声。
未だ馴染まぬ声が、耳の奥へするりと忍ぶ]
[肩に臥せた頭が、頷くように微かに動いた]
[自分を物であるかのように言う少年が差し出したもの。唇の前に出された紅い液体が甘い芳香を放つのを呆然と見る。
――これは、なんだ。
目の前の少年と傍らの人物の指から流れ落とされたもの。そう、認識しているのに。
動かぬからだがこれを飲めと欲しているけれど…意思がそれを押さえ込む。
好きにすればいいと思うのは本当で。けれどそれを自らの意思で口にするのは自分の中の何かが拒否をする。
いらない、と。意思を表示するものの視線は紅い液体から離れようとはしない]
[>>191 感じの良い方の吸血鬼が、己の血親の心の臓を取り出す時も、特にその瞳に感情は乗らない。
ただ、唯一無二の何か失った―――そんな喪失感を覚える。
親は選べねども、己を生まれ変わらせた親であることには変わりないということか。
微かに、ほんの微かに目を細めた。
>>204 偉そうな方の吸血鬼の丸投げに、>>208応えなされた説明に、どうやら自分たちは殺されないらしいことを知る。
自身を縛りあげつるし上げていた蛇がその拘束を解くのは同時くらいだったか。
床に下ろされたものの、そのまま膝を突く。動くこともままならない。]
一応聞く。
―――拒否権は?
[はからずして二人の吸血鬼を仰ぎみる形に。
この足が自由に動くなら、どうしただろう―――内心自問する。]
― “彼女”の家 ―
[向けられていた剣呑な眼差し>>261は、男の指先にある朱を認識した途端、忌避の色へと塗り替えられた>>264。
一瞬、男の瞳に一つの感情がよぎるものの、男自身もそれを自覚しきれぬままに。
想い人の家の前、霧にまぎれる馬車は止まってしまえば]
――時間がない。
[男の意識の大半は、想い人へのものと塗り替えられる。
自分の都合だけを口にして、相手の意思などおかまいなしに、その唇を、その歯列をこじ開け、指をねじ込んだ。]
空腹のままにタチアナの家族を襲われても困るからね。
[彼の家族、血を飲まされた彼にとってはそうであっても、男にとっては彼女の家族、それ以外の意味はない。
“混ぜ物”の効果もあるだろう、彼に与えられた男の血は、苦痛をあたえることはなく。魔力の補充、ただそれだけの効能である]
― 城館・ホール ― >>256>>257
[青年が訴える体の変調には、さして興味を示さなかった。]
使えそうになかったからな。
置いてきた。
[持ち物に関しては、暗に無事ではないと伝える。]
[バランの死を話すうち、不意に青年が涙を流す。
混乱のうちに慟哭する彼へと手を伸ばす。
望まずとも、搾取され強制されたものであっても、
命を注いだ親の喪失は、時に子の精神を崩壊させる。
それと知って、見過ごすわけにはいかなかった。]
俺を見ろ。
[顎を捕え、視線を合わせる。
絆の先を失って軋む精神を、強引に自分へ向けさせる。]
奴に囚われるな。引きずられるな。
おまえを制するのはおまえ自身だ。
いいな?
[命令を与え、返答を強要する。
精神を繋ぎとめる楔を打ち込むように。**]
素直に喜ぶそなたの顔は我にとっても不快ではない。時を過ごすのに価値のある会話を期待しているぞ。
[邪なことなく笑うトール>>207にやはり偉そうに頷いて返し、今後のことについて丸投げた説明>>208を聞いたところで、もう一人のチャイルド>>210が崩れ落ちる
手を伸べるトール>>215との二人のやり取りを見て、目を細める]
どのような親から生まれたことであれ、赤子に罪はなく選択肢もない。
どうせやつらのことだ。誰ぞ適当に里親にでも出すのだろう。それまでそこの者も我が供物もその身を誰かに自由にさせることは我とトール…それに先にいたコンラートなども許さぬ。
我が観察した限り、人間は好奇心を持ち、適度に怠惰で傲慢な生き物だ。それを続けておればよい。
[――時間がない、と。そんな声と同時に口を無理やり開かされ、あまい液体が舌に触れた。あまいあまい――頭は拒否をするのに、舌は今の彼にとって生命の源ともいえる液体を求めて動く]
う…
[頭の中がとろり溶けるような。大して長い時間でもないであろうが、呼吸のために胸が上下するにも体力を奪われていたような拘束感が軽くなった。
その時彼の口にした『タチアナ』の名前に、やっと少し楽になった視線を向ける]
…たち、あな…?
[そう珍しい名でもない。偶然ということはありえるだろうがその名は自分も知る人物にもあるもの。気付けば馬車はどこかに止まっているようだ]
――ここ…
[>>216差し出した手は、はっきりとした強い意志を持って拒絶された。吸血鬼同士の抗争に巻き込まれただけの彼にとっては、バランも己も、同じように見えるのかも知れない。
小さく溜息をつくと、一度瞼を閉じてからアレクシスを見やる。]
……大丈夫なら、いいんだけど…。
[そう言うと今度はもう手を差し出す事はせず、代わりに彼の傍らでじっと挙動を見守る。
彼の視界にバランの死体が映らぬよう、さり気なく位置取って。
彼自身の意志に任せつつも、気遣うように見つめる瞳は、
生まれた直後の仔馬が、初めて立ち上がる様を見守るのと似たような色を湛えていたかも知れない。]
― 評議会城館・個室 ―
[久方ぶりの、悪夢に苛まれない微睡。
微かに残る移り香に、緩く瞳を瞬いた。
視界に広がる、見覚えのない館の天井。
力の入らぬ身体を柔く包み込む、上質な寝台]
ここ……、何処…?
[部屋の片隅に控えていた女性が、音もなく進み出た>>262
此処は“吸血鬼評議会”の城館だと丁寧に述べられる説明を余所に、まるで監視だ、と冷えた頭で思う]
有難う。
それで――ここに連れてこられた目的は?
私と一緒に居た、栗毛の青年を知らない?
酷く傷を受けていて……赤毛の彼と、一緒かも知れないわ。
[小間使いらしき女性は、困惑したように『その方は存知上げませんが。詳しい事情も、あいにく存じませんので』と答えた]
………そう。
[聞き終えるが早いか、それともまだ言葉の途中だったか。
戦闘の無残な爪痕が生々しい壁を支えに立ち上がると、ふらりと歩き出す。]
誰の為の赦しなのだろう。
[落とされる言葉は、まるで他人事のよう]
……さて、日の出でも眺めてくるよ。
では、ごきげんよう。
[背を向けると、覚束ない足取りで歩きだす。
まるで、ついぞそこまで散歩にでも行くと言うように。]
[ゆるゆると、頭の中で理解するために、咀嚼しているかのような言葉>>274に]
僕の愛しい人、そして君の祖母だ。
[肯定の言葉を置く。
いつになれば、これは立てるようになるのだろう。いまだ意識がはっきりしない様にもどかしさが募っていく。
夜明けまでかかる事を覚悟して、その対策>>37はしているのだ、きっと彼女の最期に間に合うはず。
だが、万が一ということもあるのだと――…]
[天寿に逆らい延命をさせたあげく、間に合わなかったという最悪の自体を思えば]
彼女の、最期を、看取って欲しいんだ。
[彼女の孫へと紡ぐ言葉に、懇願の色が乗るだろう。
焦燥に苛まれながらも、身体操作の簡易術式を思い返そうとしていたりするのだが……
“彼女の最期を看取らせたい”その想いに二心はない]
殉死のつもりか、くだらぬ。
[奪い去ったままの短剣と十字架を影の中にしまう]
貴様の命は我が手放すまでは我のものだ。
太陽にも月にもくれてやるものは何一つない。
この世の余すことなく我が理の中で、赦し、許すことはない。
[覚束ない足取りで外へとむかおうとする供物>>277の背後より歩み寄り抱きしめた。
闇夜に煌めく銀の暗幕が彼の首から下をすっぽりと包み込んだ]
あっ。
コンラートのメモみて何かおかしいなって思ってたんだけど、
「3日と4日の日中」は喋れないっていうのは、
3日と、4日の日中 という意味か!
3日と4日それぞれの日中かと思ってた!どーん
[どれだけ文句を連ねようとしても、思考の辿り着く先は
“死”という壁、終わったという現実しか無い。
人間である事を続けていろと>>272言われても、皮肉にしか
捉える事が出来ずに苛立ちを募らせるばかり。
また、どれだけ反論しようとも同じ事を繰り返されるだけ
なのだろう事も、薄らと理解はしている。]
それで。
貴方は拾って帰るものは見つけられたんですか?
…心臓をお持ちですから、必要ありませんよね。
[やはり俯いたままの格好のせいで顔は見ないが、
それでも問うのは比較的大人しそうな、血親を討った方。
どうせならこのまま朝を迎え、人として死にたい。
だから放っておいてはくれまいかと。]
[そう、タチアナの名は自分の祖母のもの>>281。
自分にとって祖母は厳しくも優しい“家族”であり――彼は何だ。愛しい?そんな混乱を起こしかけるが、窓から見える風景を見ればたしかにここは自分が幼い頃を過ごした“我が家”だ]
……君は、何?
[目の前の少年のもどかしさには気付かぬまま、先程からの疑問を口に乗せるけれど。答えが返る前に聞こえたお願いに、微か目を開く]
ばーちゃん、が?
[祖母が最近体調を崩しがちなのは知っていた。けれどそこまで悪いなどと…いつの間に。慌てて身を起こそうとするけれど、先程まで目を開くのもやっとの状態。寝かせられた馬車の椅子から転げ落ちかけるのみで足は自分の体を支えるまでの力はない]
/*
なんだか思った以上にめんどくさい奴になってきたなあ。
マスターマスターねえマスター、めんどくさい奴で
本当にごめんなさいですよう!
…、Noli me tangere.
[聖書に綴られた中の一句を、口にする。]
―――…私に、ふれるな!
[優しさとさえ見えるような抱擁に、返る声は憎悪すら感じさせるものだった。]
はっ……
評議会とやらは…血親を失くした”孤児”に慈悲を施して崇高な生き物にでもなったつもりか?
優越感を満たすだけの玩具や道具として存在し続けるなんて、私は真っ平だ。
殉教?……私が殉じるのは、教義ではない。己の心にのみ。
[生きていても、死んだ今でさえも、根本的に何の変化もないのだと。
感情を吐露すれば、血を失っている呼気は容易に息切れを起こして顔色は青ざめる。
しかし、失態に気づけばすぐにその感情は顔から失せ、固く唇を引き結んだ。]
[柔らかな白い布の上に身を起こす。
栗色の髪の先からぽろ、と渇いた泥が落ちた。
眠るうちに目立つ汚れだけは拭われていたが、そうとははっきり理解しない。
四角い匣──個室は広くはないが寝台は上質なもの]
…?
[何かに違和感があって、指先を見つめた。
冷えきるばかりだった末端にまで、微温のぬくもりが行き渡っているような。
ゆっくりと握り込み、また開いてみる。 動く]
― 温室 ―
目が覚めたの? そう。
[一時気を休めていた吸血鬼は、
娘の目覚めを伝え聞き淡白に相槌を打った]
彼女に杯を与えて。
初めは薄めてあげた方が良いでしょう。
[短い指示により、程なく娘の元には、
それと解らぬよう、少々の人の血を混ぜられた
茶が届けられる事になる]
誰に命じておる供物。
[蚊が刺すような憎悪>>287に返すのは、空気を震わせる怒気]
自身に吸血鬼としての自信がないからこそ、吸血鬼らしくありたい。自尊心を満たさんとする評議会の行動については、供物の言は一考に値するが――今はそんな些末なことなどよい。
[大別すれば、自分とそれ以外。としか考えない...にとっては自身こその在り方が全てであり、評議会の意思などその実、微塵も興味がない]
我が殺すと決めたものは、須らく殺す。
我が生かすと決めたものは、須らく生かす。
そこに凡愚の雑念が介入する余地はなく我の恣にあることこと全て。
[抱きしめるように動かしていた片手で顎を掴むようにしてこちらに向かせる。
青ざめた表情。硬く引き結ぶ唇をかぶりつくように唇を重ねた]
これは我の決定だ。
それが憎く怒りを覚えるならば覚えればよい。
感情を破裂させることもせずして生きる価値などない。興じ、愛でる価値すらない。
[数秒の後、離れた唇は嘲るように歪められた]
…行こう。
[逡巡した後に、もう一度手を差し出した。
人間としての希望を取り戻す事は出来なくても、
今、命を失わなければ。]
一緒に来てくれないか……。
[いつか、新しい光りを見つける事だって出来るかも知れない――。
口をついたのは血親ですらない、懇願するような、何も強制力の無い言葉。
それでも視線は、彼から外さずに――。]
トールよ。そやつはそれていけ。
よもや我に二人も運ばせようなどとはいうまいな。
[言いつけ通り、我のことを見ることなくいたもうひとりのチャイルドのことを差しながら、呪を紡ぐことすらしない。
意志一つで事象に触れ、供物を包み込んだまま、城館へと転移した]
[汚れて破れた上着はない。
洗われているのか、捨てられたものか。いずれにせよ、その行方を思うこともなく、腕を見下ろす。
生前のいつか、肘まで袖をまくり上げたままの形のシャツの下。
鞭に打たれた傷痕は治りきらず、赤黒い線形を残していた]
──…、
[腕を持ち上げて、筋肉を裂くように走った鞭痕へと、そっと舌を這わせる。
微かな苦みとザラつき。
滲んだ己の血の味はおいしくもなんともなく。
毛づくろいのように何度も舐めると、傷はまた一段階淡くなる。
下肢を引き寄せて覗き込めば、砕けた骨はもうほとんどくっついているようだった]
[畳み掛けられた指示は最初のものより抽象的で、ただ、幾度も頷くうちに、狂おしい絶望感が剥がれ落ちて、顎を確と支える彼の指を零れた涙が濡らすのを感じる。
心引き裂く哄笑ではなく、今、ここにある存在が意識を凌駕する。
嵐に翻弄される船を救う碇のごとく。]
あ、 ああ… 了解、 大丈夫。
[ゆっくりと言葉が戻って来た。]
オレは──どうにかなったりしないよ、
そんな風に、言ってくれるなら さ。
[深呼吸し、歯を食いしばって応えた。
そもそも、彼が告げたバランの死を信じたからこその事態だ。
彼の意志は──響く。]
それでは、僕を連行しますか?
別に構いませんよ、どうせこの先何もないんです。
死体は死体らしく大人しくしておりますよ。
それとも、あの彼のように…朝日を待って人間の意識を
持ったまま死ぬのも良いなと思いますが。
……どちらが貴方にとっては楽でしょうね?
お好きな対処を取って頂ければ。
[生き永らえた所で空虚。
壁に当たって砕け散るも良し。
結局はその顔を見ないまま、手も取らず。
移動の為に触れなければならなければその時だけは
触れはするだろうが。]
…んん、
[呪いだかなんだか知らないけれど、大の男がこんなに泣いたことが恥ずかしくなってきた。
目を擦って涙を乾かす。
彼のおかけで、そうすることができた。]
…じゃ、行っていいかな。
自転車とリュートを回収したい。なんとか修理してさ、
その──ありがと。
[謝罪は不要と告げた男に感謝を伝えて、ソファから立ち上がる。]
/*
ディークに絡んでおきたい……けど、
予測している容態を考えるに、お嬢様と対面するまで
その容態を伏せておきたい
秘話か。
*/
[椅子から転げ落ちそうになる>>285のを見れば、慌ててそのからだを支えるだろう。
戦闘力がない方とはいえ男は人外、彼一人を抱える腕力くらいはあるのだが――…
人外であるがゆえに伸びることないその背丈、体躯の差だけはどうしようもない。狭い空間に倒れこまれては、起こすとなっても一苦労なのだ。]
僕が何者か、か。
[連れの者に手伝ってもらい肩を貸す姿勢になりながら、彼の問いを復唱し]
誰にとってのものを聞きたいかによるかな。
認識が変われば映るものもまた変わるから。
境界なき者、平凡な気狂い、高位ならざる者、冒涜者、神の依代、――への捧げ物…それから……
[まともな呼び名がないのだが、言われている本人は特に気にすることもなく。
真っ当な存在ではない事だけはこれだけでも通じるだろう。]
[>>298 "そやつはつれていけ"
そう告げる銀髪の純血種に、心得ています――と、
目線で頷いて、伝えた。]
オレは、ティファレト。
ゆえあって姓はいろいろあるんで、名前だけで通してる。
[直に本名を明かすのは信用の証。]
だいたいはレトって呼ばれてる。
[――けれど。
此処は住み慣れた邸宅でもなければ、人間の棲家でさえない]
ねぇ。
これ――…何?
[直截に問う声は、温度を持たない]
[了解を示したトールに、純血種の鷹揚な態度は変わらず、あたえた任を変わらず果たすことを疑いもしないで、呆気なく...はその場から転移した]
― ある個室 ―
コンラート。居るかい?
[各自用意された部屋に、友人を指名して訪う。
本人の所在はともあれ、人払いの指示がなければ
マスターの称号を持つ者の入室を妨げられはすまい。
友人のこと、かの獣となった男を
自室に連れ込んだのではないかと思ったのだ。]
[違和感とぎこちなさはあっても痛みのない脚を動かして、
しばらくの間。
四角い匣の端に沿って何度か這って周り、世界の狭さに首を傾げ。
やがて、折れた脚の動きがスムーズになってくれば、
二本足で立つということを思い出した]
彼の様子を見に来たんだよ。
[親の血を拒んだようだったから。
代わりに、より上位の血を得た訳だけれど、
それでも容態を確かめておこうと思ったのだ。]
……これを飲めば、少しは動けるようになるのかしら?
ああ、それと。この中なら、動き回っても?
[暫しの間の後、ぞんざいに探る声]
妙な真似をする気はないわ。
監視が必要なら、つければいいでしょう。
[――少なくとも、今は]
[投げ掛けた矢継ぎ早の質問。
侍女は、最初のそれは聞こえなかったかのように振る舞い、
残りの問いには肯定で以て答えた]
[小間使いは娘の問いに、>>308
「お茶をお持ちしました」と、見たままを答える。
続けて、葉の銘柄にも言及するだろうが、
それが望む答えであるかどうかは。]
…俺はトール。
[アレクシスの耳元に唇を寄せると、クレステッドが再三読んだ名前だ、彼もとっくに知っている事だろうが、改めて自分の名を告げる。]
――君の名前は?
[そうしてから、こちらを見ようとしない彼の、
艶やかな黒髪を撫でて、問いかけた。]
[感情を押し殺すわけではなく、むしろ睨みつけ、怒気を露わにする>>312>>313様子に哂い、力尽きぐったりとする供物を抱えたまま、世界へと溶けていく]
― 城館・ホール ― >>300>>301>>302>>304
[指を濡らす雫に熱さはなく、ただ痛みだけを感じる。
喪失の衝撃に翻弄される幼い魔性の、魂の痛み。
ひとつの命と諾ごとに、揺らぎが静まるのがわかる。
若者が声を取り戻したところで、手を離した。]
良し。
[応える言葉に頷く。
もう大丈夫だとの判断を示す。]
[衝撃から立ち直った彼の状態を見分する。
問いと感謝の言葉は、視線で断ち切った。]
評議会の許可あるまでは、
まもなく、おまえは新たなマスターの元に送られる。
[相変わらず、説明は端的だった。
自身にとってわかりきったことは省略した結果のこと。]
――― ロー・シェンだ。
呼び方は好きにしろ。
[名乗られたら名を返すのは、ほとんど習性のようなもの。
覗く信用の色に、微かに目を細めた。]
― 城館 ホール ―
[何一つの予兆もなく現れた...は気絶している供物をソファーへと置く。
執行者の姿>>267も近くにはあったが一瞥をくれた後、供物の体を横向き…ロザリオをさした場所を上向きにさせ、親指を噛みちぎると、傷口に血を一滴垂らす。
後は、体が勝手に怪我を再生させていく。その様を見守ること仰向けにしてしまう]
フン…おい、貴様だ貴様。
[城館にいた遣いのものの一人へと命じ]
我自ら連れてきたのだ。くだらぬ扱いをするな。
[殉死しようとしていたそれをくだらぬ。といったが、城のものはどう思ったかは知らず、何事もなければ個室へと運ばれていくだろう]
……、……
[扉が開いた途端、膝元に蹲っている(ように見える)
男の姿に、沈黙して寸秒。>>316
反応を待った。]
[身を寄せる事でより近くなった声は、その名を告げた。
何度ももう一人が呼んでいたものではあったが、バランの支配を
受けていた時で半分以上の意識が沈んでいた為に記憶に
残っていなかった。]
―――…アレクシス。
[相変わらず彼の顔は見ようともしないが、
名乗られ、訊ねられたなら答えない訳にはいくまいと
拗ねたような声音で自身の名を呟いた。
温かみなど欠片もないだろうに、撫でられる感触は
ささくれ立った感情を平坦にする。
しかし今置かれた状況を思うと認めたくなくて、
小さく頭を振って抵抗を試みた。]
………
[こちらも沈黙をもってただ見上げる。
苦痛も凶暴さもない表情には、といって別の何かの感情が浮かぶわけでもなく]
…?
[相手が動かないのでそういうものかと思い、扉の脇、普通の壁に縋って立ち上がった]
………
[こちらも沈黙をもってただ見上げる。
苦痛も凶暴さもない表情には、といって別の何かの感情が浮かぶわけでもなく]
…?
[相手が動かないのでそういうものかと思い、扉の脇、普通の壁に縋って立ち上がった]
[耳は聞こえている。かなりはっきりと。
相手の言葉の意味を理解するのには、かなりの時間がかかったが]
いたく ない
[立ち上がったのを見せれば、否定の意図は補強されたか]
[「ありがとう>>318」そう言葉をかけられたなら、何故礼を言っているのかわからないといった表情を浮かべる。
男の認識は『自分の我儘で、自分の望む最期を迎えさせたい』であり>>37、そこには自身と想い人の感情だけが存在している。
もし、彼女の孫が死んでいたのなら、死霊術を駆使してでも彼女の前に連れてこようと考えていた程、他者への意識は低いのだ。
礼を言われる筋合いなどない。少なくとも、男の脳内では。]
― 城館:何処かの個室 ―
[施された治療について知る由もなかったが>>324、目を覚ませば柔らかな寝台の上にいて、怠さは変わらぬものの痛みは消えてなくなっていた。
さらに自分を連れてきた偉そうな方の吸血鬼がくだらぬ扱いをするな>>325といったことはやはり知らなかったが、顔や髪に付着した血と土は拭き取られ清められていた。]
………、結局、
[半身を起し、周囲を見回したが、此処にいるのは己一人のようだった。
無意識にロザリオに触れようとして胸元に手を伸ばすが、あるはずもなく。
では、と刺されていた肩口に手を伸ばすも、そこには傷すら残っていなかった。]
…何一つままならない、か。
[持ち去ったであろう吸血鬼の顔を思い出して、唇袖口で拭うと、きつく噛みしめた。]
エレオメモ>
見守っててもいいんだけど不在の人を動かすの苦手なもので…
そして、一緒に居るなら風呂に入れて欲しいから!
おふろ!おふろ!マスターおふろー!
[疑問に思ってみたものの、今はその意識を追うだけ時間の無駄と判断し]
そんなことより、歩けるようになったかい?
[彼女の孫に、彼女の元へ向かうよう急かすだろう]
ああ、もう、立てるか。
[這いから二足で立てば、視点の高さは逆転する。>>327
痛みを与えた立場であるから警戒を得るかと思ったが、
男の表情は存外落ち着いたものだった。
彼が戸口に立っていた為に入室できなかったのはともかく]
― 城館・ホール ―
[若者と言葉を交わす最中、現れた気配に視線を向ける。>>324
だが知った相手であると認識すれば、そのまま視線を外した。
任務でもなければ、言葉を交わす気もない相手だ。
相手が評議会の意を無視しがちな純血種であることを差し引いても、要らぬ噂の種になるのは煩わしい。]
[似ている、と最初に言い出したのが誰かは知らない。
だが、確かに似ていると同調する者はそれなりにいた。
血を引いているだの、実は隠し子だの、荒唐無稽な噂話がこちらにまで聞こえてくる。
そもそも、相手は生まれながらの吸血鬼だ。
かつて人として生を受けた自分と血の繋がりがあるわけなど無い。
噂話に興じる連中に反論したことはないが、自分の中ではそうやって斬り捨てていた。]
そう。
[首肯をひとつ。
傷付けるなと、娘の求めのひとつは遅ればせながら
許容を求める程度には回復したと言う事だろうか。]
名前はディーク、と言ったね。
[それも娘が呼んだ名だ。]
……精神に受けた傷の方は、どうだろう。
[立ち上がってみれば、身長の差はある。
乏しい表情に少しばかりの困惑を滲ませて見下ろした]
たてる
[死んで以来、血親から与えられる以外の体性痛覚は、ずっとほとんど感じていなかった。
喉が鞭で絞まった時は苦しかったのだが、ディーク自身はあまり覚えていない]
…ここは?
[小さく首を傾げた。
聞いた音だ]
ディーク
[どこで聞いたのだったか、記憶の墓場を探るように一度目を閉じて、言葉>>77を思い起こす。
『あなたがまだ いきているでしょう ディーク』
誰の声だったのか考えようとして、鈍い頭痛に眉を寄せた]
――アレクシス。
[相変わらず顔を見せようとはしてくれないが、今はそれで構わなかった。
名を問いかけて、答えてくれたことが。
純粋に嬉しくて――。]
良い名前だね――。
[彼の耳元に囁き返す。
まるで"好きだよ"と、想いを告げるかのような。
どこか甘さを含んでいるように響くのは、単に声質のせいか。
あるいは――]
[クッションに背を預け、一口、また一口と紅茶を含む。
温かな液体が、熱を生まない身体の隅々に行き渡るのが、
ありありと感じとれる。
身の内に取り込み、力を漲らせるそれが何であるかは、
想像に難くない]
[空になったカップを静かに置き、寝台の上で身を起こす。
――もう、眩暈はしなかった。
小間使いに目線を送ってから、廊下へ歩み出る。
制する気配もないのを不審に思えど、何のことはない。
廊下のあちこちに従僕らしき人影が見えた]
他のまじない師よりもさ、
…兄貴がいいなー ダメなのか?
[再びソファに腰を落として、上目遣いに洩らした不服は偽らざるもの。
新たなマスターとやらのところへやられるより、この男にしてもらう方がよっぽど嬉しいと。]
/*
ますたーと、良い子でお留守番中のでぃーくんにどのタイミングで乱入しようか様子を見るアイリです。
気を使ってるとかじゃなく、なんかこう…、新鮮というか。
獣化してるディークかわいい。
ここは、……そうだね、難しい事は省くけれど、
いっときの仮の宿だと思いなさい。
[僅かに浮かぶ感情はそのままにさせて、問いに答える>>336]
ここを出た後の行先は、まだ決まっていない。
けれど、出て行くまでには少し、時間があるから
今は楽にして休んでいると良いよ。
[本名を名乗った相手に名を返すのはルマニでは礼儀正しい振る舞いだ。
ゆえに、ロー・シェンの名乗りに屈託なく頷く。]
うん、これでもう、行きずりじゃなくなった。
ディーク。
……それが君の名前、だと思う。
痛むのなら、無理に動いたり、考えたりするのはやめなさい。
今は、まだ。
[血親に支配されてからは、自分のものとは思えぬ程疾く駆けた脚。
討ちとられた後は碌に力も入らなかった脚が、
今は自分の意志で動く。
当たり前の感覚が、酷く懐かしく感じられた。
けれど、向かう先は知れない。
気懸りな彼が、直ぐに見つかれば良いのだが。
せめて彼を介抱してくれた赤毛の青年か――或いは、黒衣の。
手掛かりを持つ誰かが見つからないかと彷徨い出れば、廊下の先に、ぽつりと黒点が見えた>>332]
あの人……、もしかして…
[少なくとも、話は通じる相手だった。
早足でそちらへ向かい、少しばかり離れた所から、
誰かと会話を交わす様子を窺う]
[一瞬>>333視線が合い、しかしそれはすぐに会話へと結びつくことなく消える。いつものことだ。
似ている>>334そういわれたのはいつの頃だったか。
…は鼻で笑うだけで特に否定も肯定もしなかった。論ずるに値せぬという態度により、元より傲慢なる吸血鬼の前ではその話をするものはいなくなった。
ただ、執行人を個別で認識する切欠とはなった。]
― 城館・ホール ― >>339>>341
どこへ行くかは評議会の決定次第だ。
[おとなしくソファーの上に戻った若者を見下ろす。
自分がいい、との物言いをすげなく切って捨てた。]
―――…そう、ですか。
[名を復唱し、恐らくは嘘偽りの無いだろう感想を紡ぐ彼に、
気恥ずかしさを覚えて曖昧な返事をするだけに留まる。
何がそんなに嬉しいのだろう。
何がそんなに温かい感情を抱かせるのだろう。
わからない。
知りたい。
泣くことを堪えていたその顔は、今や心地良さに彩られた。]
― 回想 ―
おい、そこの執行者。名を何という。
[とある任務で、ともにすることになった執行者にて、噂だけでいえば己の息子らしきもの名を問うた。事実として息子であるということはないのは互いに知っている]
人の世であたえられた名だけでは不自由するだろう。どれ…気まぐれに我が名をくれてやろう。
[相手が拒絶しようと、勝手に与えた名。そうすることで余計に噂は、彼の執行者にとって嫌な方向に進んだかもしれないが...はそれだけで満足した。
その名が、名乗る名前として扱われたか、称号のようなものとして扱うことにしたか。彼にとってすでに忘れたか…
だが真祖が名を与えるということは他にも意味がある
名誉や地位ではなく、もっと根源的に存在としての力が増す一種の儀式。それが呆気なく行われたことだけは事実であった*]
/*
あ、でももうこんな時間なのね!
早めに合流しちゃえばよかったわね、
お待たせ?してたらごめんねお二人さん。
そしてコンちゃんが暫しのおかえりなさいしてる。
[足を進め頷く姿>>337を見れば、浅く安堵の息を吐き、彼が馬車から降りるのを助けるように動くだろう。
馬車の中では気にならなかったのだが、地面に足をつけたなら……普通に肩を貸すには背丈が足りない事に気づくだろう。腕の下に潜りこむような体勢で、彼が男の肩に重心を置けるようにした。]
― “彼女”の家 ―
[そして姿を消して扉を開けたなら、突然開いた扉に首を傾げる彼女の義娘を尻目に、まっすぐに彼女の前まで向かおうとした。
肩を貸す相手が声をあげようとしたり、触れようとする素振りがあるのなら、極力止めようとするのだが……
彼の反応は如何様のものであったのか。
彼の言葉を制するのに、腕の下に潜るような配置から、口まで手が届くかだけが心配である]
ディーク
[抱え直すようにして、名前を記憶へ刻む。
淡々とした口調に灯る、労りにもとれるだろう言葉には、困惑の色が僅かに深まった]
いたく ない
― 城館・ホール ― >>343
必要なものがあれば、城館の使用人に言え。
用意できるなら出てくる。
[囁く相手へ特に答えることはなく、
要求へも短く返す。]
[視線を追ってもう一度真祖を見やれば、
ちょうど、連れてきたものに血を与えているところ。]
おまえ、血は飲んだか?
[そういえば、とレトに確認した。]
[注がれた白銀の男の血が、若者の傷をたちどころに癒す。
奇跡と呼ぶには、どこか禍々しい技。]
…
[そして別室へと運ばれていった若者は、初対面にも関わらず、どこか忘れ難い印象を残した。
彼が血の兄弟たることはまだ知らない。
ただ、少しばかり疼きにも似た渇きに口を抑えた。
血を見て気分が悪くなるようなことは今までなかったけれど──]
湯? ……ああ。身を清めるか。
そうだね、用意させよう。
[前半の説明は理解したのか、どうも怪しく感じたが、>>350
今すぐに叩き込まねばならぬという事もない。
指図の出来そうな小間使いを探し、視線が廊下を渡る>>344]
……。
[そして、娘から視線を外し下男を呼び、浴場の支度を言付けた]
―城館・用意された個室―
[どこからともなく現れた白い蝶が、幼子──ディークの周囲をひらと漂う。
先ほどまで、寝台の天蓋の陰に止まり、眠れる幼子を見守るかのように翅を休めていたのだが。
幼子の覚醒と、長生者の訪れを知って、扉前まで飛び来ったのだった。]
脚、ではなくて。
ここや、
[つん、と額の中央を指先でつつき]
ここが。
[その指を下ろして、胸の中央を同じようにした]
[やがて、覚えた強烈な渇きから意識を逸らすように、目を伏せ、手を組み、緩く首を垂れる。]
………。
[祈りとは、即ち内なる神との対話。**]
― “我が家” ―
[肩を借りて―身長差でお互い辛そうだったけども―家に入ると、すぐに母親が驚いた顔でこちらを見た。それはそうだろう、いきなり連絡もなく帰ったのだから。
祖母の容態を聞こうと口を開くけれど、それを遮るような動きで肩の下の彼が引っ張るものだから、つられて歩が進む]
お、い…
[慌てて母を振り返り見るが、視線はこちらには向かずに開いたままの扉に向かっていることに微か違和感を覚え]
――。
[彼はこの家をよほど熟知しているのか、迷うことなく祖母の部屋へと向かう]
[手が額へ伸びて来る動きには、顔を逸らすような弱い嫌悪反応を見せたが。
警戒の表現にまでは至らず、胸を示す指先を見下ろした。
細く華奢なかたち]
ここが
[相手の言葉を繰り返して、わかったのかわかっていないのかよくわからない頷きをひとつ]
[吸血によって結ばれた仮初の絆はかそけく、
血子との堅きそれには遠く及ばない。
幼子の心象、身体感覚はぼんやりとしか伝わらず]
― 城館・ホール ―
[執行者が話している赤子の視線>>343を感じはしたが、小動物の好奇心を意に介さずに身を翻し、ホールを後にした]
[男が蝶を追って視線を外せば、>>360
今度はこちらには娘の方が近付いて来る。>>362]
そうだよ。
[淡白な肯定。そののち、部屋を振り返り]
では、僕はこれで失礼するね。
[用は済んだとばかり、告げてみせる]
― バルコニー ―
[少し後、この地域名産の果実を机に乗せ、優雅に果実を頬張る真祖の姿があった。]
―――真祖は果実で釣れるのであった**]
……今度は本当に赤子のようだね。
[どことなく微笑ましさを覚えるが、
これもまたバランの遺した爪痕のひとつだ。]
まあ、良い。ゆっくり、お休み。
― 城館・ホール ― >>357
[血という言葉に反応するレトの様子に、眉を顰める。
人を血子にしたあと、目覚めた雛にまず血を与えるのが血親の役目だと思っていたが、やはりというかなんというかバランはそんな手間を掛けなかったらしい。]
最初の糧無しに、あれだけ動いたのだな。
じきに身体がもたなくなる。
渇きの衝動が来るまえに飲んでおけ。
[やめろという言葉は聞かずに一方的に言い、近くの従者を呼びつけた。]
邪魔をして、悪かったね。
様子が見られて助かったよ、ありがとう。
[蝶に向けた囁きは淡々としたもの。]
[こちらに向けられた赤錆色に首肯するごとく、脆い白は上下に揺れ]
[栗毛色の頭の周囲を回ると、不揃いな髪の端にそっと止まった。]
[莫迦にされたような気がした。なんとなく。
表情は変わらないまま、
ゆっくり一語一語を区切って言われた言葉には明瞭に頷いた]
…ありがとう
― 城館 ・ホール―
遅くなりました、申し訳ございません。
[評議会の所有する城館に着けば、もう殆どのマスター達が集まっていた頃だろうか。
先に到着した長生者のうち、まだ誰かがホールにいたなら、彼らに丁寧に頭を下げる。
それから腕の中のアレクシスから静かに手を放し、
身体も離れようと数歩、下がった。]
決定が下るまでは、ここがしばらく君の居場所になる。
どなたの元に行くかは、まだ分からないけれど。
ここは君と同じ血兄弟達がいるだろうし――、
それまで、彼らと交流を深めてみるのも良いかも知れない。
[どこか離れがたい感覚に捕らわれながらも、簡単にここでの生活についての説明をする。]
[入浴の支度や案内は小間使いがするだろうから後は介さず。
娘が声を掛けて来たのも己の方だったため、
何もなければさくりと扉を閉めるだろう]
“邪魔ではないよ”
[蝶から返るあえかな囁き]
“君も、この子を気にかけているのだとしたら、それは当然のことだ”
あ、 あぁ、
オレを制するのは オレ自身 な。
[項垂れつつも、噛み締めるのは、先程、ロー・シェンから与えられた言葉。
顔をあげて、ロー・シェンを見た。]
…理不尽なことには、とことん抵抗するぜ、 オレ。
[受け入れる努力する、との決意は胸中に、ここにも言葉足らずがひとり。**]
[サーベルの刃が不揃いに断ち切った髪の端に、蝶が休む]
…しろ
[脳裏に浮かんだ単語をそのまま零して、
指先を蝶に触れさせる。
儚い存在は光めいた淡い鱗粉を撒くように見えた]
[さくりと閉じられた扉を、もう一度開く方法を思い出すのにややしばらくかかったりもした。
扉の向こうで聞こえた声は、注意を向けなければ意味のとれない音の羅列で]
[鼓膜を震わせる事なく届いた囁きに、瞬いた]
こっち?
[蝶が示したのは廊下の方。
閉ざされた色の違う壁を前に、しばらく考えることになる]
― 回想 ―
[気まぐれな純血種と任務を共にしたのはいつだったか。
任務上の必要以上に、恣意を感じる人選だった。
ちょうど、自分と相手との噂が煩くなってきた頃合いのこと。]
ロー。
[名を問われての返答は、これ以上ない簡潔さだった。
本来の名は捨て、血親に与えられた名だけで過ごしているが、不自由を感じたことは無い。
───という反論も口に出す必要を覚えなかったが、直後に続いた真祖の言葉は、あまりにも予想外だった。]
は…… …。
[思わず吐き出した息を呑みこんで、黙って受ける。
礼もなにも、言葉にはしなかった。
ただその日以降、名乗りはロー・シェンに変わったのは事実。]
は…… …。
[思わず吐き出した息を呑みこんで、黙って受ける。
礼もなにも、言葉にはしなかった。
ただその日以降、名乗りがロー・シェンに変わったのは事実。]
[名づけの現場にいたものはごく僅かで、
真相を知るものはなお少ない。
それでも噂は千里を走り、ますます煩さを増した。
結局それが血親の元を離れた一因となり、
マスターへの昇格を満たす要素ともなり、
評議会の敵を狩る任を積極的に受ける契機ともなった。
機会があれば、いずれ狩ってやる。
───とは、ひどく複雑な感情の賜物。
無論、口に出したことは一度もない。]
大抵の者なら用意できるから。
何か入り用であれば、いつでも近くにいる者を呼ぶといい。
[必死にしがみついてきたのは、初めての魔法による恐怖からで。
本当は必要上に触れて欲しくはないのだろう――と、思う。
それでも名残惜しげに、もう一度だけ夜色の髪を撫でると、
近くを取りかがった小間使いを呼び寄せる。]
ああ、そこの君。
彼を用意された部屋へ案内してあげて欲しい、くれぐれも大事に扱ってくれよ。
[柔らかい口調でいいつける。
わざわざ言わなくても、これから里親へと引き渡される雛を乱暴に扱ったりしない事は分かり切っていたが。
それでも尚、念のために釘を刺してしまった。]
― 浴場 ―
[しばらくの後。
小間使いの案内か、あるいは意思もつ白蝶を水先の標にでも。
歩くうちに足取りは雲を踏むようなものから、確りしたものへ戻っていき、
そうして優しい温度の湯気が篭る浴室まで辿り着いた]
ふ、
[何か垂らしてあるのか、淡い香りのする空気を吸って。
自分の格好を見下ろした。
水浴びならば服は脱ぐのだった気がするが、シャツのボタンの構造が思い出せない]
[幼子の脳裏に送り込まれたは、直截的なイメージ。
ドアノブを掴み、捻り、扉を開く、
その身体イメージを、主観映像とともに再現する。]
ゆっくりおやすみ、アレクシス…。
[別れ際に、たった一言を残して。
彼の姿が廊下の奥に消える前に、背を向ける。]
さて――、"これ"は評議会に持っていかないとな…。
[バランの心臓が入った球を呼び出すと、それをふわふわと空間に浮かべながら、独りごちた。**]
[酷くぼんやりと頼りなく、断片的なものではあったが]
[同様の導きは、幼子が浴場に辿り着くまで根気強く続けられた。]
― “彼女”の部屋 ―
[彼女の孫が彼女の義娘と話そうとした時は焦ったが、その後は黙したままなので、何を思うかは気に留めずに先を急ぐ。
やがて、彼女の部屋へと着けば、去った時より呼気が浅くなってしまった想い人へと声をかけ――…]
ごめん、遅くなった。
約束通り連れてきたよ。今、皆を呼ぶから少しだけ待ってて。
[間に合ったという事への喜びを浮かべながら、壁にかかった振り子時計を慣れた手付きで操作した。
その間は連れてきた彼が、彼女に何を語ろうと、それを阻むことはなく]
[男が時計に施すは、おかしな時間に時計がなれば何事かと集まるだろうという企み。
彼女の小さい孫にとっては、眠りの妨げになるだろうけれど、彼女の最期にはかえられない。
男が時計を元の場所に戻してまもなく、見当違いの時を告げる12度の鐘の音がなる。
足音が近づくのに気がつけば、連れてきた彼には、人差し指を自身の唇に当てることで静かにするようにと伝えるだろう。]
[ここに辿りつくまで、いちいち行く手を遮ったドア達を開けたり、
見た目で階段が上りか下りかを判断出来ずに立ち往生したときのように、
ボタンを外すイメージが流れて来ることを、少し待ってみたりもする]
…
[このまま湯を使っても構わないのじゃないか。
と考えた。
気の効く小間使いが着替えを用意してくれたかまでは頭が回らない。
靴は最初から履き忘れていた]
思ったよりも自由にさせてもらえるのですね。
拘束されるかと思っていましたよ。
……まあ、それもほんの僅かだと思っておきます。
[城館での過ごし方を聞いては意外そうに目を瞬かせ、
残された自由な時間をどうしたものかと思案する。
出来る事なら、彼から話を聞いてみたいと思うのだが
彼の管轄はどうやら此処までのようだ。
だから、踏み込んだ足は一、二歩程度で留まった。]
―――…御疲れ様でした。
[それはこちらへ向けられるべき言葉だろうと思うが
礼儀としては必要かと、挨拶は短く。]
[そして、最初に男が望んだ通り>>37、彼女の灯火が消えるのを見届ければ、用は終わったと言わんばかりに、連れてきた彼女の孫を伴って、その場を去ろうとするだろう。
――すんなり戻れればの話だが。]
―浴場―
[評議員の誰の趣味なのか、
古代帝国様式の、広大な浴室に、ふんだんに湯を湛えた大理石の広い浴槽が設えられた、かなり贅沢なものだった。
湯気の籠った浴室で、シャツを纏ったまま、何かを待つように己の姿を見下ろす幼子。
その髪の中から、白蝶が不意にふわりと飛び立って消えた。]
― 城館・ホール ― >>373>>374
[若者は、自身の運命を改めて思い知ったらしい。
その苦悶に同調することはない。
自分にとってその感情は過去のものだ。
同じ苦悩を抱いたかどうかも覚えていない。
しかし、彼がこのままでいれば確実に苛まれるだろう狂おしい飢餓は、理解していた。]
……必要ならば呼べ。
城館から出ない限りは、おまえの自由だ。
[一度、経験させるのも一つの手かと思い直す。
抵抗するとの宣言に、小さく頷きつつ。
呼べ、の言葉から、使用人か誰かをという単語が落ちているのは、相変わらずの言葉足らずだった。]
[呼んだ使用人には、レトを案内するよう言いつける。
部屋も用意されていることだろう。
口にした通り、しばらくは自由にさせておくつもりだった。
その間に、自身はバラン討伐の事後処理を片付けるつもりでいる。]
/*
ふと、客観視点でみて。
一番マスター・チャイルド関係が成立しそうな絆が芽生えてないのが、うちだった件。
他の所は、マスターかチャイルドどっちかが気に入るなり執着するなりしてる訳で…
でも逆に考えると、消去法で里子にもらわれそうだよやったね!
[自ら引き留めた割には戸惑いを見せる娘を振り返り、>>383
半分ほどずれたフードを元に戻した。
もう少し引かれていたら、そのまま剥がれ落ちていただろう]
血親を喪った子らが、外に無用の混乱を与えないためだよ。
元より、連れて来る手筈になっていた。
……手を離してくれるかい。
[告げて、それが叶えば今度こそゆるりと歩き出す]
君たちはこれから、然るべき養い親の元へ送られる。
そこで改めて、夜の一員に迎えられる事になる。
[護衛兵の戦闘服は元々、軽装に近い。
上着がなければ、街を行き交う市民や労働者のそれと大して違いはなかった。
服を着たまま湯を溜めた槽の近くにかがみ込み、片手を浸す]
…
〔 あたたかい 水 匂い? 〕
[帝国式に掘られた浴槽の上に身を乗り出しても、水面は揺れて自分の姿は映さなかった]
ああ──本当に。
[感極まったかのように苦笑を含んだ声は、幼子のすぐ背後から響く。]
君は、愛らしい。
[背後より伸びた繊手が、愛撫さながらに幼子の胸の上をを這い、湿ったシャツのボタンをひとつずつ外してゆく。
その背には、確かな質感を持つ肉体が押し付けられる触感が広がる。]
[話の途中、現れた者に気付いて視線をやる。>>370
トールという名を思い出して、一礼には目礼で答えた。
共に任務をこなすのに悪くない相手だ。
少なくとも年寄連中よりよほど好ましい。
───と、わざわざ言葉にする気はないのだが。
バランの気配が微かにするから、心臓は彼が持っているのだろうと見当をつける。
共にいる黒髪は、バランのチャイルドだろう。
先の真祖が連れ帰ってきた者といい、どこまでも見境がない奴だったと、改めて感想を胸に落とした。**]
──…?
[小さく身体が跳ねた。
不意に届いた言葉について考えるより、背に覚える感触と、胸の上を動く手に意識が向く]
な…
[なに、と零して
腕が上がって、ボタンを外す手をとどめるように動いたのは弱い抵抗の反応]
[屈み込んだ背の丸みに沿って、衣服越しに皮膚が合わさる。
小さく跳ねた身体の驚きも、押し留める腕の抵抗も。
もろともに抑え込むように、
或いは、それが恐怖を生むものでないと悟らせるように。
ゆっくりと触れた身体の温度をなじませる。]
そうだよ。
[遅い歩みを娘は追って来るだろうか。>>400]
一般に自子より養子の方が難しいから、
子を独立させた実績のある者の所に行く場合が多いけれど。
あとは、……
[養親候補に先んじて引き合わせ、相性を見る事もある――
と、浮かんだ思考は口を噤ませた。
複数人のマスターと、みなしご。
構図に空々しい何かを感じてしまう]
[感じる気配は蝶のもの。
血を介して得た細い絆は、抱き寄せられた朧な記憶を呼び起こす]
……、だれ
[緊張を和らがせて、背後から回されたたおやかな手を見下ろした。
ボタンを外す動きだとわかれば、留めようとしていた手が力を抜く]
― 祖母の部屋 ―
[祖母の部屋に入ると、見慣れた彼女が寝台に横たわっている]
ばーちゃん!
[慌てて近寄る横、隣に立つ彼が祖母に向かい優しげに語りかける。今まで見なかったその幸せそうにも見える表情に不思議なものを感じる。祖母をここまで想う人がいるなど、今まで知らなかった]
ばーちゃん…
[一人でも立つくらいはもうできるけれど、祖母の寝台の横に膝をついて座り。閉じた彼女の瞳を覗き込む。
一瞬『死』の記憶が掠めるけれど、『あの日』のような闇はそこになく。そういえば何故自分は生きているのだろう、という疑問が浮かんだ。
そこに響く12の鐘――]
[――冗談じゃない。込み上げた叫びを、喉許で押し留めた。
必死に抗う心を弄び、意に反する行動を強いた圧倒的な力]
[ならば、もうあまり時間は残されていない。
そのために、必要なのは――
忙しなく思考を巡らせながら、ゆったりと滑る黒衣の後を歩く]
……そう。珍しいことではないのね、つまり。
あの男…血親、だったということになるのでしょうね。
“あれ”は、本当に死んだの。?
まるで――…不死のように見えたけれど。
[自分が目にしたのは、血親の手駒と化した従僕達だけだが。
何気ない調子で尋ねる]
[――冗談じゃない。込み上げた叫びを、喉許で押し留めた。
必死に抗う心を弄び、意に反する行動を強いた圧倒的な力]
[ならば、もうあまり時間は残されていない。
そのために、必要なのは――
忙しなく思考を巡らせながら、ゆったりと滑る黒衣の後を歩く]
……そう。珍しいことではないのね、つまり。
あの男…血親、だったということになるのでしょうね。
“あれ”は、本当に死んだの?
まるで――…不死のように見えたけれど。
[自分が目にしたのは、血親の手駒と化した従僕達だけだが。
何気ない調子で尋ねる]
[腕の中の肉体の緊張が和らいだのを感じ、背骨に触れた唇が深い笑みを形作る。]
僕は、コンラート
[それはいくつかある呼び名のひとつでしかないが]
君は?
[ボタンを外す指が再び動き始めると同時、やわらかい唇が蠢いて皮膚の上に問いを落とす。]
コンラート。
[密着した背から、低い体温が交わる。
少しずつ晒されていく肌にも、馴染ませるように繊手が触れ]
……ディーク…?
[脱がせるだけの動きならば抵抗はしない。
隆椎の突起に直に触れて響いた声には一度息を止めて、
あまり自信なさそうに自分の名を紡いだ]
[白い手は胸の上を滑り、ボタンを外されて開いたシャツの内側に滑り込む。
悪戯な指先が胸筋をまさぐり、滑らかな隆起のひとつひとつを辿って下へ降り──]
[はだけられるシャツに、居心地悪いのか少し身じろいだ。
舐めて癒せなかった部位に残る細い鞭の傷は、まだ肉が薄く盛り上がった治癒途中の痕を残している]
[どちらかと言えば、己が少しばかり長生きをしたせいで
そういった例を見聞きしている、と言うのが正しい。
だが、問いではなかったから、答えは返さない>>406]
死んだよ。心の臓を抉り出されたからね。
……血の絆の喪失を感じないのか。
君は感覚が鈍い方なのかな。
[血親の死すら懐疑的な様子に、回答と具体的な叙述を補った。
血の絆を喪った孤児らは、新たに養親との契りを交わさない限り
新たな絆、つまりは強制力を受ける事はないのだが。
こちらもやはり、問われなければ言外のこと]
― “彼女”の部屋 ―
……え?
[先程まで沈黙を保っていた連れが、帰る時になって声を上げた>>405。
彼女に縋る者の心情を考慮しなかった男は、思考を疑問符で埋め尽くされてしまい―…
結果、“透明化の術を張る”という意識を切らし、二人揃って、彼女の家族の前に姿を現してしまった]
……ディーク。
良い響きだね。
[ごくさりげなく。笑みさえ含んで。
言祝ぐ言の葉は音楽的な響きを伴う。]
[腕のわずかな動きで、シャツは幼子の肩から滑り落ちた。]
――っ!!
[そしてすぐさま催眠の魔法を施行し、周りの人間達を眠らせた。
雑役女中が眠りにつく際に、水差しを取り落としかけたが、それもしっかり掴みつつ]
[胸を辿る手の感触は、もはやシャツとは関わりのない動きをみせていた。
滑り落ちる布が肌の表を擦っていく、柔い摩擦。
下へと降りた手が腰のベルトの縁を撫でて、その先へ戯れを伸ばす。明らかな侵入の意]
[滑り落ちる布が肌の表を擦っていく、柔い摩擦]
[手が上半身だけでなくその先まで脱ぐのを助けるような動きを見せれば、流石に背後を振り向こうとした]
…っ!
[瞠いた眼の、
瞳孔が僅かに広がって、虹彩の色が人離れした緋色に色を変えた]
なに、してる
[声の質は知と鋭利さを一時、取り戻す。
背後を振り向こうと首を捻った]
[小さく嗤いが込み上げた。
作り笑い以外の笑みは、あの夜以来]
…ああ。
多分、そうなのでしょうね。
[人間である事を止めた身に、まともな感覚など残っているだろうか。
しんと冷えた思考を巡らせるばかりの頭が囁く]
でも、身体から不自然な力が消えるのは感じたわ。
…あれを『絆』と呼ぶなら、ね。
[説明されたのは、簡潔で明快な死因。
それではこの身は、不死ではないのだ]
[水差しを近くの机へと置き、縋る男に向き直る。
言いたいことがある。言いたいことがたくさんある。
言いたいことのうち殆どを、言葉にまとめられそうにないのだが、言いたいことがたくさんある。
しかし、言葉に出す事はしないよう注意して。声に出さぬようただ一言の問いを練った。]
──恐れなくていい、
[肩越しに見える白い貌に浮かぶは、穏やかな笑み]
ここに、君を傷つけるものはいない、
そう言った筈だよ。
[もっとも、自失していた幼子がそれを憶えているかは定かではないが]
[相手に紡ぐは声なき声。
彼にとっては、口論になってしまったら、それがこの家だけでなく近隣に聞こえてしまったら、記憶の操作をする対象が増えてしまうが故の配慮なのだが……
相手が目覚めたばかりであることが抜け落ちてしまっているあたり、平常心はどこかへ行ってしまっているのかもしれない]
傷…
[見えた笑みの穏やかさに、眼差しの剣呑は薄れるが]
ちが、 何してるって、訊い
[赤い双眸は困惑に揺れる。
悪戯な手を抑えるように手首を掴み、緩く握り込んだ]
[出し抜けに問う声。
また、笑いが込み上げた]
…そうね。
嬉しいわ?すごく。
[こちらの真意を解しながら、わざわざ教えたのか。
喰えない相手だとは思っていたが、やはり]
どのみち、もう死んでいるのでしょう。
“血親”が、ご丁寧に教えてくれたもの。
ほら、
[遮る動きに悪びれもせず。
剥き出しの肩に顔を寄せると、刻まれた線状の鞭の傷痕を、舌先でなぞる。
濡れたものが這う感触の後には、傷は一見して分からぬほど色味が薄れていた。]
― 玄関ホール ―
そう。
[嬉しいと答える娘に、零す相槌は
実に淡々としたものだ。>>421
二人は廊下を抜けて玄関ホールに行き着く。
城館の各種の施設を巡るなら基点たりえる場所だ]
他に聞きたい事がなければ、館内では自由にして良いよ。
飲んだのでしょう?
ん……
[問いには答えず、縛められた手首はそのままに。
滑るように腰を落とし、背や脇腹に残る鞭痕にねっとりと舌を這わせてゆく。
それは紛れもなく癒す行為ではあったけれども。
同時に、幼子の皮膚にざわめきをもたらすには充分なほど執拗に、技巧を駆使した愛撫でもあり。]
――何故?
[目の前の青年の首を削ぎ落としてしまいたい程の怒りを抑えて紡ぐ声は、酷く冷たく感じられるかもしれない。
相手が肉声で話している事など、気づく余裕などありはせず。
ただ、自身が彼女に抱いていた感情を否定されたという事だけが、今の男の思考を埋めている。]
お前には、彼女が不幸な死を遂げたように見えるのか?
[男にとっては“彼女が幸せに生き、幸せに逝けた”それが全てなのである。相手の抱く喪失感なぞ考慮にいれるわけもなく。
彼女の血縁者という意識よりも敵対心が勝ったのか、呼び方さえもかわっている]
ン…
[肩に触れる濡れた感触とそれがもたらす変化に、
押し殺した声が洩れた。
身を捩る動きは弱いもの。抵抗の意図よりもざわめく皮膚をもてあまして。
細めた双眸の緋色がじわりと濃くなった]
は
[傷に舌で触れて癒す動きは、自分自身でもやったものだったが。
他人に与えられるのはまた違っていて、なんとも言い難い感触に眉根を寄せる]
いい、痛くない から
[人に脱がされるのを待つのもなんだった。
片手をベルトにかけて、自ら金具を外そうとする。怪しげな手つきながら、何度か試せば外れるだろうと]
止める?
そうだね、外に出るようなら止めさせてもらうけれど。
[流し見る視線を受けつつ、壁に背をつける。>>426
縁者の無事を問う言葉に、目を閉じて、開くまでの間があり]
彼も生きているよ。
同じくバランの遺児として今後の処し方が決められる。
[無事とは返答しかねた。]
今頃は浴室ではないかな。
[結局散々に手を借りながら脱ぎ落とした服は、とうに湿ってしまっていた。
裸身を見られること自体には元々、然程の抵抗感もない。
泥を落として、浴槽に身を沈める]
[駆ける馬上で精確な射撃を行い、あるいはサーベルを振るう必要で鍛錬された身は、戦うためのもの。
力の大きさよりも瞬発と持久性、しなやかなバランス感覚を求められた戦士の肉体は、逞しいというよりは締まって細い。
命と時を止めた瞬間のまま、その後の過酷な状況にも変わらずにあった筋肉の上を、香を垂らした湯がゆるり流れていく。
少し短くなった髪を水面に散らして、下眼瞼の高さまで浸かれば
とぷん、
蕩めいた音を立てて湯が揺れた*]
――僕が言われたのは少し違う。
[想い人との思い出を語る姿>>428に、気勢を削がれてしまった為、その声は落ち着いたものへと置き換わる。
懐かしさを覚える言葉を聞いてしまえば、その思い出を噛みしめるように反芻する。
が、締めの言葉は次のようなものだった]
教える気はないけどね。
[“あなたが好きになれない人を、私が好きになれると思う? 人を好きだと言えるあなたは素敵だと思うけど、あなたが私を好きなくらい、あなたはあなたを好きになるべきだわ”
――なんて、彼女に振られた際の言葉をどうして彼女の…いや、恋敵の孫に聞かせてやらねばならないのかと。]
[故意を問う声に、>>429]
……ううん。
[取り敢えず返したのは否定だ。
――例え、ヒトとしては終焉した存在であれど。]
そう。
[故意を問うたという事は、娘は今の所は
陽光に身を投げるなどというつもりはなさそうだ。
今の所は、それで良い]
君と、ディークの他にも、何人かの子……
つまり君達の新たな兄弟と、僕のような年かさがいる。
顔を合わせておくのも良いだろう。
[そこから先は、娘を先導することはない**]
[少し違うという言葉>>432に意外そうな目を向ける。祖母はよくそんなことを言っていたのに。が、すぐに教える気はないと言われて残念に思う。それを言った顔が少し悔しげで、それ以上を聞こうとは思わなかったけれど]
そっか。残念、ばーちゃんの思い出、聞きたかったのに。
あ、そういやさ。皆に何かした?急に倒れたけど。
[不思議そうに倒れた家族の一人の顔を見た。自分に危害を加えてこない彼が家族に酷いことをすると思わず、さほど心配はしていないのだが。一斉にというのは何かがあったということで、そういうことができそうなのは彼一人に思えたから]
[壁に凭れ動かなくなった相手を暫し見据えて、踵を返しかけ。
ふと向き直り、フードの奥をじ、と見つめる]
そう、もう一つ思い出したわ。
ここまで運んでくれたのは――きっと、あなたよね?
あまり力があるように見えないから、気づかなかったけど。
[詰め寄った時に仄かに嗅ぎ取ったのは、覚えのある甘い香]
…ありがと。色々と。
[庇われた事も言外に含め直し、再びその言葉を口にした**]
[そして、先ほどの彼の抗議の言葉は肉声>>420ではなかったか?と、記憶を巡るよりも早く、外に魔法が発動する気配を感じとり、大体の状況を察する事になった]
……彼らには少し眠って貰っただけ!
僕ら本当はここに居ちゃいけないんだ!
それよりも今は逃げなきゃ、ここから、急いで!
[簡単な説明だけをして、彼の手を引き、急いで外へと。
そこには男が想像したとおり、夜明け前に聞こえてた喧嘩の声に釣られたであろう野次馬が、馬車に置き去りにしていた者によって、深い眠りについていた。]
ごめん!!あとは僕が記憶操作しとくから!彼を朝が来る前に!
[男は、物言いたげにこちらを見る相手に、彼を預け城館へ向かうように急かすだろう。
そして、彼らが走りだるのを見送れば……]
[自身の犯した後先を考えぬの行動と年甲斐もない口論に、頭を抱えたくなるのだが……
自身の起こしたことへの後始末にかけられる時間を思えば、自己嫌悪に浸る時間もなく。
自身が夜が明けても平気な身であるとはいえ、太陽が昇ればそこは人ならざる者のみの時間ではない。人が起き出せば起きだす程、後片付けが増えていく。
故に、すべてが終わるまでは不眠不休且つ魔力の補充もできそうになく――…]
― 城館へ向かう途中 ―
[夜が明けてすぐ、男は自身の犯した事への後始末を終えたのだが……
城館に向かう途中、バランの夜にて指揮した一団に捕まった。
昨夜の作戦行動に関する報告書を作らねばならない事を、すっかり忘れてしまっていたのだ。
特に死霊術封じに関しては、宗教儀式に則ったものを扱っているのだ。
それがどういったものなのか、まとめておかねば、事後処理をする者達に類が及ばないとも限らない。
魔力の補充はできたものの、休息のないまま、日が高くなる頃まで働くことになってしまった]
― 城館・ホール ―
[顔には疲労の色が張り付いて、今すぐベッドに飛び込みたい衝動に駆られるのだが、後回しにできぬ仕事であるが故。
眠気を堪えて、事後処理を担当するであろう猟犬>>393の元へ行き、先にまとめた物>>443を渡す。
内容はといえば、作戦区域、術式に扱った香油の種類、該当する宗派、それを扱う際に助力を求める事が可能な血族のリストアップ等。
ある意味これも自分の行動の後始末である。]
― 城館・自室 ―
[やるべき事が一段落した後は、ふらふらとおぼつかない足取りで、自分に割り当てられた部屋へ向かう。
扉を閉め気力の糸が切れてしまえば、倒れ伏すのは硬く冷たい床の上、だが男には起き上がる気力さえも残っていない。
石の床に抱かれてから、寝息をたてはじめるまで、それほど長くはかからなかった**]
あ、 その いろいろとありがとう、助かった。
[礼を言いながらも、ちょっと困ったような顔になったのは、彼の任務を思ってのこと。
ロー・シェンはバランを殺したのは自分ではない、というようなことを言っていた。
彼が親の仇(?)ではないのは幸運だろうが、彼がバランの討伐に加担できなかったのは、おそらく、自分の足止めが功を奏したということだ。
それで、ロー・シェンの手柄が減点されるかもしれない。
ここまで彼から受けた厚意を思うと申し訳ない気もするが──
まあ、別の方法で返せばいいか──と前向きに考え直した。]
― >>425から>>430 ―
もういい
…コンラート?
[のろのろ首を振って、掠れ声で訴えた。
白い手首を捉えた指は離す事も出来ず、力を篭める事もせずにただ緩く握ったまま]
これ、何か なに。へんな
[もう一方の手は、二度もたついた後に慣れた動作を思い出す。ぎこちなく金具の音をさせてベルトを自力で解き始め。
逃げ場を浴槽の中へ求めながら、脇腹を執拗に這う舌には目許を染めて切ない息を吐いた]
― 廊下―
あのさ、自転車と楽器──できればリュート、用意できたら欲しいんだけど。
[ロー・シェンに教えられたとおり、案内人に要求してみた。
自転車はともかく、リュートはあるはずとのこと。]
嬉しいな、頼むよ。
[了承の返事をする使用人に、軽い調子でもうひとつの問いかけをしてみる。]
血も、欲しければ飲ませてもらえるの?
[予想に反して、案内人は「私をご希望ですか?」と婉然と微笑んだ。
なんだか色情多過の娼婦みたいで、慌てて首を振る。]
いやいやいや、 聞きたかっただけ。
[そのまま案内人にはリュートを探しに行ってもらい、自分は壁に背中を預ける。
ロー・シェンは「じきに身体がもたなくなる」と言っていた。
でも、どうしたらいいか悩ましい。]
…お、
[そうしているうちに、先程、ホールで見かけた抱擁組の長髪の方が、小間使いに案内されて廊下を歩いてくるのを見つけた。]
──よう、 血兄弟?
[疑問形で声をかけながらも、どこかで確信していた。
この青年もまたバランの犠牲者で、自分と相似のものであると。]
― 城館・ホール ― >>446>>447>>448
任務の内だ。気にするな。
[感謝を口にする彼の思案に頓着はしない。
仮に何を思われているか知っても表情は変えなかったろう。
自身の功に、さして拘らない性質だった。]
また。
[ホールから出ていくレトに、ごく短い声を返す。
そのあとは、自分の仕事に取り掛かった。]
― 城館・ホール ―
[レトがいなくなった後、残る仕事を片付けにかかる。
ホールの一角を占拠して、使用人たちから話を聞いた。
確保されたチャイルドの数と簡単な特徴をまとめ、
誰が捕えて城館に連れてきたかも付記しておく。
ついでに、レトを引き取りたいという要望も添えておいた。
バランの心臓は、トールが自分で届けるだろう。
そちらをどうするかは自分の知るところではない。
評議会の然るべき誰かが処置をするのだろう。]
[仕事をおおよそ終えた頃、やってきた者がいた。>>444
"境界なき者"から手渡された書類を、ざっと眺める。]
助かる。
[礼の言葉は相変わらず短いが、実感がこもる。
普段は後方での活動を担当する彼と、直接同じ任務に従事することは珍しい。
だからこうして彼の仕事ぶりを見ることも少なかったのだが、改めて報告書を見れば仕事の確かさ細やかさに内心で舌を巻いた。]
[評議会への報告を済ませてしまえば仕事も終わる。
後始末は、自分の範疇ではない。
水でも浴びてこようかと立ち上がった。]**
― “祖母の部屋” ―
[祖母のことを思い出したのか嬉しそうな顔をした>>437彼が、すぐに顔色を変える>>438]
え?なんで…
[ここにいてはいけないと言われて疑問が浮かぶが、それに答える間も惜しいように手を引かれて家を出た。扉を出れば、見知った近所の人々が固い地面に伏しており。一瞬『あの日』を思い出して混乱を起こしかけるものの顔を見れば苦しげなものではなく、むしろ穏やかに眠っているようだ。
押し込まれる馬車を見れば御者と馬には首がなく>>253、尋常なものではないと知れた]
え、どこに
[問う声は相手の耳には届かず、彼が手早く指示を飛ばすと首のない馬が声なきいななきをあげ、風のような速さで駆ける]
― 馬車の中 ―
……。
[いくらかでも話し相手をしてくれていた彼のいない馬車の中は沈黙が重く、向かいに座る人物に話しかけようにもこちらにあまり関心もない様子。それでも]
…どこへ、行くんですか?
[そう聞いてみれば、評議会所有の城館だと答えが返る。そういえば評議会という単語は先程も聞いた気がするけれど、自分の知識にはないもので。相手は会話を望まないのか、それ以上のものは聞けないままにどこかに辿り着いた]
― 回想 ―
ロー。か、成程。お前に相応しい名であるな。
[それが血親にもらった名であると知らず勘違いしたままの...簡潔な紹介>>377をうけて頷く。彼の吸血鬼の別の姿を考えればぴたりと嵌る
感心の声とともに、鷹揚にうなずきながら、思考そこに加えるべき字を選ぶことに傾ける。]
だが足らぬ。
[噂では隠し子らしい彼。
もしそれが彼個人が自称するような高慢なる思い違いをするものであれば生かす価値もないが、余所から言われているとなれば、それをとがめだてするのは筋違いであるという見識は持っていた。
その彼に名を与えるのは、噂なれど己に連なるものならば、その程度の存在で満足してもらっては困る。という自分勝手な思考]
[思考の沈黙は数瞬。]
シェン…ロー・シェンだ。良い名だろう。
[『狼(ロー)・神(シェン)』よい名だ。と自画自賛。それに伴う彼の労苦>>380など知る由もないのがこの時点でまるわかりともいえる態度であり、名付けという儀式は終わる。
その後の腹の内に眠る照れ隠しの殺意など、可愛らしいものだと笑みを浮かべていた**]
― 城館・ホール ―
[通されたホールは、人生の中で見たことがない程豪華なものだった。案内してきてくれた人物にそこで座って待つようにと言われてソファに腰掛けるものの落ち着かない。
手持ち無沙汰にソファを見れば、家具職人である父が手掛けたこともないような細やかな装飾が掘り込まれ、何故ここに場違いな自分が連れてこられたのかとますます疑問が湧いた]
―…。
[視線を巡らせれば、そこに誰かはいただろうか。人の姿を見れば、こんばんはと声をかけてみるだろう*]
― ホール ―
[ここに自分を連行した当人からも、条件付で放免を得た事だ。
今の内に館の構造を把握しようと、一人で踵を返す。
豪奢なホールには、他に人影はあったろうか。
血兄弟であれ年長の吸血鬼であれ、顔見知りとなる必要はないと
決めていたから、見知らぬ者に目を向ける気はなく。
けれど、傍を行き過ぎかけた男から、日常染みた挨拶を向けられ]
……こんばんは。
[反射的に、会釈と場違いな挨拶を返した>>460
礼には礼を、厚意には厚意を以て。幼少よりそう仕込まれている。
無礼と害意への返礼については、当主の年若い息女に、
周囲の誰も教えてはくれなかったが]
……。貴方も、誰かにここまで連れてこられたの?
[所在なげにソファに腰掛ける様子が引っ掛かり、そっと問うてみる]
― ホール ―
[軽やかな足音が聞こえてそちらに目を向けると、何やら難しい表情をした女性が一人。そのまま通り過ぎ往く時に挨拶をかけると、難しい顔をしたままで挨拶を返してくれた。
無視をされるかと思っていただけに、わざわざ足を止めてくれたことに微か驚きつつもへらりと笑う。難しい…というよりも、戸惑っているのだろうか。
誰かに連れてこられたのかと問われて>>461少し考え]
そうです。名前は聞かなかったので知らないけど…も、って。あなたもですか?
[少し意外に思う。場違いな自分と違って彼女の所作は洗練されていて、この館に相応しい人物に見えたから。事情が聞ければと思ったけれど、彼女がここの関係者ではないならあまり聞けないかもしれないと相手に悟られぬ程度小さく息を吐き]
待てと言われたから待っていたんですが…することが、なくて。
[浮かぶのは困ったような笑み。明らかに年下の女性に愚痴染みたことを零すのも憚られ、それだけを告げる。本当は祖母の所に戻りたかったけれど、先程の少年の様子を見るとそれは出来ないことであるであろうというのは理解できた]
[また、もう一つ気になった点がある。]
……ところで。
貴方も今来られたのですか。
[此処へ到着した際の抱擁や離れ難い一瞬を見られていなかったか
という懸念を抱いており、万が一にも目撃されていたならば
どう言い訳をしたものかと思案していた訳だ。
まことに残念ながらその懸念は現実のものとなっているのだが、
彼も人ならざるものの力を体感すれば恐怖も抱くだろうと
返す言葉を組み立て始める。]
[思い出すだけでも、怖い。
先程のように身体は崩れはしていないかと、彼を見つめていた
視線は徐々に下って行った。**]
[挨拶を交わした男の顔には、人当たりの良さそうな笑みが浮かぶ。
恐らくは同じ立場の男、憤りや絶望よりも、何処か困惑の色を見てとれば、こちらも改めて微笑を返した>>463]
……ええ。私も、今しがたここに。
ただ、待つように言われたのですか?不親切ね。
[近づいてみれば、男は自分よりも大分年上のようだ。
言葉遣いを少しばかり改め相槌をうつ]
[手持無沙汰と聞けば、また僅か難しい顔を覗かせる。
黒衣の人物から得た情報は、差し当たりは要件を満たしていた。
一番気懸りだったディークの消息は、確かめられた。
湯浴みであれば直ぐには会えないだろう、深手を思えば、要する休息も自分より長そうだ。
みなし子達に訪れる事態も、それから逃れる術も一応は把握した。
赤子のように自分を封じた吸血鬼、同等の存在が複数いるならば、再会を果たした後、実行に移せる隙があるかは定かでないが]
……もし良かったら、暫くお邪魔しても?
私も、当面することがないようですから。
[黒衣の内で、どのような表情を浮かべたかは知れない。>>436
ただ、最初からここに連れて来る手筈だったと、既に告げた]
そうだよ。
[短い肯定]
― 廊下 ―
[娘が一人で踵を返したのを見て取ると、こちらも去る。
折しも声が掛かり、金の髪の青年を、視野に収めた>>465]
……まだ先だよ。
[外套の下から細い手が真鍮の時計を取り出して、
相手にも見えるように文字盤を示した。
身長差は僅かだが、見上げてフードが揺れる]
光が恋しいようだけど。休んでいなくて良いの。
― 城館・ホール ―
ロー・シェン、か。
[先ほど、レトに名乗った名を唇の内に繰り返す。
神の狼、などと御大層な名の中に潜む力。
口にするたび、未だ縛を感じるのに微かに苛立つ。
名付けの呪。それに伴う力の授受。
あの規格外の真祖が何を考えていたかなど、
知るべくもないし、知りたくもない。
ただ、それが禍と益双方をもたらしたのは事実。
自分の親が四人に増えた息苦しさもまた事実。
人としての両親と、血族としての血の親と、名づけの親。
人間の親はともかく、いつまでも越えられない相手がいるのは、実に不愉快だった。]
なにが良いものか。
[記憶に残る真祖の笑み>>459に悪態をついていたら、
物慣れぬ様子の者がホールに現れた。>>460
あれもたしかバランのチャイルドだったものだ。
所在無げにしている様子ではあったが、特に声を掛けてやるほどの気遣いはない。
と、反対側から来た娘と言葉を交わすのが見えた。
同じ血子同士の会話を聞くともなく耳に入れながら、彼らの行く末に少しばかり思いを馳せる。
どのマスターに割り当てられるのか、程度のものだったけれど。]
[真鍮の懐中時計が示す針の在処に、漸く今を知る。
相手の言葉に余程酷い顔色をしているのかと、頬に手をあててみたりもしたが、その動作すら緩慢だ。]
……そう、まだそんな時間だったのか。
休んで良くなる苦痛であればね。
[近づいてみれば、少なくとも自分と同じような雛ではありえない気配を感じとる。]
…自ら陽に身を焼くなら処分に好都合だろうに、理解に苦しむ。
まるでヒトだな、あなたがたは
[案じての言葉か、勝手をされては困ると言うだけか。
どちらの意図にせよ、先程の偉そうな吸血鬼よりは会話が成り立ちそうな相手にそう感想を漏らした。]
[浮かべた笑みにふわりと綺麗な微笑が返された>>466
綺麗な人だなぁ、などと場違いな感想を思いつつ、不親切という言葉には微妙に視線が泳ぐ。
本来ここに自分を連れてくるのは少年の役目だったのだろう、それを自分が邪魔した形であったらしいので。それで余計に時間がかかっているなら完全に自己責任であろう。
お邪魔しても、という言葉には]
ええ、是非。話し相手をして貰えるなら、俺も助かる。
[暇であるのも事実、もし何某かの話が聞けるなら僥倖。さっき瞬間彼女が眉間を寄せた気がしたけれど、次の瞬間には元の華やかな笑みを浮かべていたから気にしないことにした。まずは自分の名がダーフィトであることを告げ、一番聞きたい質問をぶつけてみる]
それで…ここは、どこなんでしょう。
あ、評議会ってのは聞いたんだけど、評議会ってなんなのかを知らなくて。
[そう聞けば、己がほぼ何も分かっていないことは彼女に伝わるだろうか]
― 城館・廊下 ― >>462>>464
[小間使いに指摘されて、ようようこちらを見た長髪の青年は、ひどく消耗しているように見受けられた。
丁重な口調で、「今来られたのですか」と問われ、先程の邂逅に気づいていなかったようだと察する。]
今夜ね。
そちらさんよりちょっとだけ早く。
[問われれば、あっさりと「顔が至近状態」の二人を目撃したと認める。]
館から出なければ自由にしていいと言われたぜ。
そっちは? 同じ?
今、何時なんだか知らないけど、全然、眠くないし、ちょっと散策してこようかなって思ってる。
リュートが届くの待ってんだ。
かつてはヒトであった者も、少なくないからね。
血を糧とすることに抵抗があるか。
……親の死に殉じたいのかな。
[違うと解っていて嘯く。>>471]
おいで。
あ…、 体調、よくないのか?
[眼鏡の奥の視線が力なく落ちてゆく様子に、気遣うような声をかける。
これが、ロー・シェンの言っていた「身体がもたなくなる」状態かなあと。]
あんたも、 血ぃ飲んでないクチ?
異形になってまで、ヒトのように群れを成し社会を作り縛られるとはね。
ーーーしかも、100年そこらでは終わらないないしがらみだ。
[鬱陶しそうな顔をしかめた。
血を糧とすることに対しては、答えず。]
…親に殉じるような人間であったならば、今此処に存在することはなかっただろうさ
[親、という単語の持つ意味は、ヒトであった頃からろくでもないという認識しかない。
招く声に、少し首を傾いで従う。]
…?
そうしない弊害の方が大きいでしょう。
君は実例を見た。
[遅々とした歩みに、今度は合わせる。>>476
ホールや居室の方面からは離れて行く]
……そう。
[言い種は、血親を指してのものだけではないように感じた]
[ホールや居室、人の気配のする方向を一度だけちらりと見たあと、遠ざかるように歩く先導者の後を緩やかに歩む。]
弊害ね…
[縄張り問題なのか、ヒト社会との共生の方針かなにかなのか。
ヒトをやめても好き勝手にいられるわけではないらしいことは、この館の組織だった様子から伺うことができた。]
…どこに?
[連れていかれるのかと、ゆるりと辺りを眺める。]
― 温室 ―
気を紛らわそうと思って。
[扉を開いて中に入ると、硝子張りの天井を見た。
昼は人間の従僕が世話をしているのだろう植物と、
空気の中に太陽の温度の名残を残す]
文明と文化に根差した生活をしようと思えばね。
想像ができる?
ー 温室 ー
あ……!
[長い廊下を抜けた先にあったのは、温室だった。
ガラス張りの植物園は、見上げれば星空と、まだ高い場所にある月。
夜の帳に鳴く梟に目を細める。]
……確かに、素敵な場所だ。
[慣らされているのか、そろりと腕を伸ばせば梟が飛んで留まる。
重みによろめくのは今の体調では致し方ない。]
……できなくもない。
[少しの間の後、そう応えた。]
……永遠の命。美しさ。そんなものを欲しがるような者ならなおのことヒトとしての文明も、何も手放そうとは思わないんだろうな。
[この状況を喜ぶ者は少なからずいるとヒトのサガを知れど、大した慰めにはならない。
梟の柔らかな羽を撫でた。]
[しかし、下りて行く視線の中に映る目の前の青年の態度は、
こちらよりも生きているように感じられる。]
ええ、僕も同じ事を言われました。
……でも、出来る事など全部奪われたのに、今更自由なんて。
貴方は何故そんなに“生きて”いるんです?
どう考えても前向きになんてなれる状況には見えないのに。
[同じ立場だからか、浮かんだ疑問はすぐにぶつけられた。]
あなたは
存在しつづけることに、どんな意味を感じているの?
[終わりなき生を歩む相手に、今、自分が一番想像できないことを問う]
[路と花壇を分ける煉瓦の適当な場所に腰を下ろす。
静かな羽音が腕に止まるのを、フードの下で見る>>480]
手放せば生きにくくなるだけだもの。
君は違うの?
[ゆったりと首を傾げて]
君は自らのものを手放す事が出来るの?
恩義。
僕はこの生を享けたことに感謝をした。
それだけ。
……肉のある命に囚われたものと笑う?
できないだろうね。
今更獣のような生活に馴染めるほど適応力は高くない自覚はある。
[返す言葉はあっさりとしたもの。
柔らかな羽毛に頬を寄せれば、暖かな脈動を感じ飢えを思い出す。]
……あなたはものを教えるのが上手いな。
魔物も化け物も、未知というヴェールを剥いでしまえばそんなものか
[乾きの衝動に梟を逃がすと、腰かける人の隣に座った。]
……手放すならやはり存在ごとだな。
[妙に納得して頷いた]
でもまあ、そんなに落ち込むなんて、おまえ、これまで幸せだったんだな。
だったら、我慢しないで、泣くといいんじゃないかな?
だいぶ、スッキリするぜ。
なくしたものを悼んだら、気ぃ取り直そう。
オレはとりあえず、失ったものを数えるより、これから手に入りそうなものを楽しみに。
ほら、オレら、バランってヤツのせいで、吸血鬼の呪いをかけられたらしいじゃん?
[未確定情報ではあるが、長髪の青年も同類と括って話を進める。]
オレの知ってる伝承だと、吸血鬼はコウモリに姿を変えて空を飛ぶらしい。
できるようになったら、面白そうだなあと。
[両手でパタパタと羽搏いてみせる。]
[隣に座る気安さを咎め立てる事はしない。>>485]
そう。では、質問を変えるけれど、
君は自らを手放すことが出来るのだね。
何のため?
ただ、人の血を吸うのは、な。
やっぱり怖いよ。
[喉の渇きをなるべく意識したくなくて、こめかみを掻く。]
本来、個人で狩って喰う対象じゃないからな。
そこは不安だな。
……そう。
どんな命であれ、生きることに喜びを見出だせるならば、それは幸いであると。
……私は思う。
[長い生に飽いている様子もなく、恩義だと言う声にすこし羨望にも似た思いを寄せる。]
……、罰なのかもしれない。
死してそのみもとに行くことすら拒まれた結果が、永遠の命とは神は皮肉がお上手だ。
[少し笑う。
最後まで己に冷ややかだった世界を思う]
言葉は、鏡
[秀麗な面立ちに過ぎる微笑に口を開く。]
君は今、己の生に喜びを見出さず、
拒まれたという皮肉によって拒んだ。
……罰であることを望んでいるの。
[なんのため、という問に一度瞬き。
くすくすと笑った。]
嫌だから、かな……
[思い出すのは、自分の運命を他人に握られ続ける屈辱。]
でも、どうかな……私が理由を見つける前に、神は私を闇に呉れてしまわれたから。
[小さく呟き、唇を結んだ。]
[簡単な名前のみの自己紹介に返ってきた丁寧な挨拶>>486に、ああそういうべきだったかと瞬時慌てる]
ええと。吸血鬼…?
[彼女の言葉に、あの日自分と同僚達、数多の生徒達を襲った闇>>243>>244の正体が吸血鬼であったことを知る]
あまり、覚えてない。学校に、いたら。よく分からないモノがきて…皆が順番に倒れていって。俺も襲われたと思うんだけど…そこからの記憶がない。
次に気がついたら
[認識に沿って説明していくけれど、どこまで通じるかが分からなくて難しい顔になる。これが彼女が聞きたいことなのかはよく分からない]
………。
あの時…俺も襲われたと、思うんだけど。なんで俺無事なんだろう…
[最後の呟きは小さくて、離れた位置にいた黒い肌の青年>>470までは届いたかどうか。
不安も、ある。あの時のあまい香り――>>264
けれど他人の血をあまく感じたなどとは言いたくなくて、口を閉ざした]
[ゆらりと揺れる記憶。
半月近く日夜問わず魘された悪夢から、束の間解き放ったのは。
恐らくは、傍近くに在った自分以外の気配]
……、
[開き掛けた唇をすぐに閉ざし、そのまま背を向けた*]
詭弁だね
[さして感情も動かさず。]
結局のところ、罪も罰も、ただのルールに過ぎない。
しかもその適用はケースバイケース。
……ねえ、あなたは、このせかい、すき?
[“吸血鬼”お伽噺染みた名を、ダーフィトは戸惑いがちに口にした。
そこからして把握していなかったのかと気づき、不用意に告げた事を内心悔やむ]
…そう、吸血鬼。
貴方達を、襲ったもの。
[けれど、早目に知っておくべきだろう。
そう考え直し、ゆっくりと繰り返す。
ダーフィトが語ったのは、自分の身にも覚えのある経緯。
それが途中で様相を変えれば、きゅっと眉を寄せ]
――…ご実家、に?
お祖母さまが……?
[戸惑いが伝播しつつも、お悔やみを、と静かに述べる]
解りやすいね。
[端的な返答に頷いた>>492]
……そう。
[見た所、学生のようだが、
理由、志をなくて進める道であるのだろうか。
見付ける前に、神に手放されたという思いを覚えるなら]
少しは気が紛れたかい。
……とは言え、単なる気休めだからね。
飢えて狂う前に糧を求めなさい、渇きに振り回されるのが嫌なら。
[黒衣の外套、裾を捌いて立ち上がる。**]
何された…って、貴方…
[少しばかり理解が追いつかない。
この青年は一体何を言っているのだろうか。>>487
唐突に死を与えられた事に対して、何も感じないのだろうか。
しかし言葉の続きを聞くと、途中まで出掛かった疑問の言葉は
押し込まれ、胸の内へと沈んで行った。]
幸せ……。
そう、ですね――…。
[彼の言うように、>>488これまでの生を振り返れば
厳格な家の中には在っても、常に充実した日々を送っていたと
思うと同時に、それはとうに失われたものである事も
思い知らされた。]
……出来れば、人の目の無い所で泣きたいものです。
涙、出るんでしょうかね。
そうかな。どこからが詭弁だった?
[声を柳のように受けて、首を傾げた]
……僕は、事例そのものを斟酌しないルールは
森ばかり見て木を見ないと思うから、
そうであることが適切だと思うけれど。
僕の好悪を答えることは、君の助けになるかい。
僕はアレクシスと言います。
声を掛けて下さって、ありがとうございました。
…これからの事を考えられるようになったら、また。
[そういえば名を告げないままであった事を思い出し、
短く告げてその場を後にした。
彼の名もその時には知ることが出来ただろうか。
決して長くはない対話だったが、沈みがちだった気分は
少々ながら上を向いた。それに対する礼として別れ際には
深く一礼し、再び小間使いの後を付いて行った。**]
……"良くも、悪くも"、ね。
[相手の言を肯定し、ただしそっと後ろにつけ添える。
思い出すのは、苦い記憶。
正当防衛、過剰防衛、何とでも酌量の余地はあったかもしれないが、何の咎めも無かったのは、実際のところ権力者の隠し子であると言う大人の事情。
罰されないどころか、まともに大人に向き合ってもらった記憶が無い。
そうして少しずつ、年を重ねるごとに、神を信じていた少年に見える世界の真実は歪んで行った。
軋む音から目を背ける。]
……なるかもしれないし、ならないかもしれない。
恩義、と言えるあなたの目から見える世界はどんな風に映っているんだろう。
ね、
また会える?
……その時私がまだ消えていなかったら、あなたのことを、教えてくれる?
[青褪めた顔で儚げに微笑む姿は、最初より幾分柔らかい。]
……。
[聞きたくない答えが、彼女の唇から零れてくる>>505]
――っ、
[勢いをつけて立ち上がった。触れそうな位置にあった彼女の指が離れる。柔らかそうで……けれど、温度を感じないゆびさき]
…っ、きっと、だよな?絶対、じゃないよな?それ、誰に聞いたら分かる?!
違う可能性もあるんだよな?!きいてくる!
[答えは聞かずに走り出そうとする。回復しきっていないからだが一瞬傾ぐけれど、そんなものは気にせずに回りを見回して、先ほどは目に入っていなかった位置にいた青年>>470が目に入る]
なぁ!あいついつ帰ってくる?ええと、名前しらない!金髪の、ちっちゃいの!
[何かを知っていそうな人物を指定してみるけれど青年には伝わるだろうか]
― ホール ―
[ホールの向こうで交わされる幼子らの会話が耳に入ってくる。
聞くつもりなど無かったのだが、すこし引っかかった。]
おまえたち。
[顔を上げ、彼らの方を向いて声を掛ける。]
自分が吸血鬼になった自覚はなかったのか?
血親から聞いていないのか?
[だとすれば、自分はなにか勘違いをしていたことになる。]
[問いを投げると同時に、向こうからも勢いよく問われていささか鼻白む。]
金髪の、小さいの?
[なんのことだと撥ね付けかけたが、生憎と心当たりがあった。
目の前の幼子を捕えたのが誰かは、もう聞いている。]
ステファン=リッシュ殿のことならば、
いずれ、ここに戻られるはずだが。
[知らないと言って捨て置かないのは、生来の気質ゆえ。]
― 城館・少し前 ―
[一歩、二歩――。
離れたこちらへと歩み寄ろうとする、彼の意外な行動に内心驚いたが。
それを表情には出さず、穏やかな表情で見つめていた。
まだどの雛を受け持つか分からない以上、あまり1人に手をかけるのは良くないだろうと判断して、
再び彼へと差し出しそうになる手を、意志の力で抑え込む。]
アレク――……。
[>>395小間使いの後についていく彼に淡い寂寥を覚えて見送れば、
こちらを振り返った彼と初めて視線が合っただろうか。
喜びに口角が上がる前に、すぐ向こうを向いてしまったけれど。]
(…君が新しい幸せを見つけられる事を、祈っているよ)
[彼の姿が視界から消えるより前に背を向けて、身勝手な吸血鬼の祈りは心に閉じこめたまま。
長命者も雛も別なく、その場に残る者達に会釈をして、
評議会にバランの心臓を届けるべく、姿を消した。*]
[質問を投げる前、こちらに向けられた鋭い目。唇は動いていたかもしれないけれど、耳に捕らえたことば>>508
――吸血鬼
――じかく
――聞いていないのか
そんな単語に質問を被せて、目一杯聞かなかったことにする。
そうして得られた名前に>>509]
そ、っか…まだ、しばらく帰ってこないんだな…
[漠然とした質問だったけれど、答えた青年も何かを知っていそうで。多分、その人物で間違いはないのだと思う。
目の前の彼に聞けば答えは得られたのだろうけれど、敢えてそれには気付かない振りで少しでもと結果を先延ばしにして]
これ、いつまで待てばいいの…少し、つかれた…
[無愛想な口調ながら、聞いたことにはきちんと答えてくれた彼にそう問うてみた。疲れたのは本当だ]
[投げた問いへ、娘の方から返ってきたのは否定と肯定と見えた。>>512
同じ血子でも認識に差があるのかと納得する。
その差がバランの気まぐれによるものか、
あるいは当人の素質の差によるものかは、さて。]
[駆け寄ってきた男の方はといえば、>>514
理解していないというよりも、拒絶しているように思われた。
吸血鬼としての在り方と覚悟の決め方を教えるのは、今は自分の役割ではないから、それ以上は触れずにおく。]
疲れているのなら休め。
部屋の用意程度は使用人に聞けばいい。
[いつまでとの問いには答えを持たなかったから、言及しなかった。
ただ、休息を求めれば与えられることを示唆する。
もちろん食事や入浴も得られるだろう、とは当然のこととして付け加えなかった。]
じきにおまえたちへの決定が出る。
そう長くはかかるまい。
[連絡事項として添えたのは、気遣いに近いなにかだったかもしれない。]
この世界はいつだってわがままで、理不尽な選択を迫り、
それが、現実として連綿と続いていく……
良くも悪くもあるけれど、好きなのだと思うよ。
[温室を去り際振り返って、被るフードを深く直した。
再会を請う声には淡々と]
構わないよ。
夜明け前には、中に入りなさい。
[強すぎる陽光から、その儚さを隠す理由になるのなら*]
[三度目の拒絶に、びくりと打たれたように退くは、酷く稚い、傷ついた子どもの顔。
縋る眼差しの暗いいろを、我が事さえおぼつかぬ幼子が感じ取れたかどうか。
が、それもつかの間、
白い面は伏せられ、すべての表情は垂れかかる前髪の陰に隠された。
その後は、自力で何とか衣服を脱ごうともがくディークの動作を、最低限補助するように手は動く。
そこにはもう、甘やかなものはなく]
/*
噛ませ犬前提で「ファミルさんを僕にください」がやりたくなって来る。
相変わらず本命に対してはツン性能を発揮しているのはまあゴフン
*/
[そうは言っても、納得するために必要な過程は、やはり人それぞれだ。
青ざめた顔のまま、別れを切り出す青年を引き留めることはしない。
去り際、青年は、アレクシスと名乗った。
先程、彼を抱き締めていた──砂像に変化するという男の名前はトール、らしい。
真名を明かせとか、そういうニュアンスではなさそうだと判断して、通り名を教えた。]
オレはレトって呼ばれてる。
──ああ、またな。
[先程、ロー・シェンにそう言われて嬉しかったから、自分も再会を望む言葉で会話を締めくくった。]
[恥かしげに体を朱にそめ、薄布を纏いを力づくで剥けば、酔うほどに甘い芳香が漂い身誰にも穢されたことのない乙女の柔肌が露わになる。
まずは、視覚で、嗅覚で楽しんだ。そして最後に味覚で楽しむべく、牙を突き立てた]
― バルコニー ―
[使い魔の白と黒の蛇とともに桃を咀嚼する真祖。味わうものは目いっぱい味わう。何もかも無味乾燥なものしか抱けなくなっては生きている価値はない。]
あやつには、今度褒美にブラッシングしてやるのもよいかもしれな。
[桃を食べ終えた後、浮かんだのは先の執行者のこと、聞かれれば悪態>>470どころか新たな殺意を抱かれそうなことをひそかに思うではなく堂々と口にする。『格の違う存在となれ。』こちらが施した呪にこめた意志はそれだけ、己から行動を束縛したことはないが、立場に変化が生じてしまったのは...にとっては大きな問題ではないことであった]
[アレクシスを見送ってほどなく、先程の案内人がリュートを持って戻って来た。
古そうだが、精緻な細工が施された美しい品だ。]
おー、ありがと。
[調弦がてらに爪弾いてみれば、これまで使っていたリュートとは比較にならないくらい、いい音が出た。]
最高。
宮廷楽士にでもなった気分だね。
しばらく借りておくよ。
あ、部屋はいいや。 どっかいい場所探して弾いてる。
[せしめたリュートを抱え、嬉々として一人歩きを始めた。]
― バルコニー ―
[使い魔の白と黒の蛇とともに桃を咀嚼する真祖。味わうものは目いっぱい味わう。何もかも無味乾燥なものしか抱けなくなっては生きている価値はない。]
あやつには今度褒美にブラッシングしてやるのもよいかもしれぬな。
[聞かれれば悪態>>470どころか新たな殺意を抱かれそうなことをひそかに思うではなく堂々と口にする。『格の違う存在となれ。』こちらが施した呪にこめた意志はそれだけ、己から行動を束縛したことはないが、立場に変化が生じてしまったのは...にとっては大きな問題ではないことであった]
―浴場―
[それ以上は、幼子に触れることはなく。
トラウザーズを脱ぎ落とす際に裾を引っ張ってやったりと、衣服と格闘する幼子の動作の、要所にだけ手を貸すに留めた。]
[自分で言った通り、疲れた様子の男が礼を言って去っていく。>>523
直前、もの問いたげな視線を受けたが、斟酌することはなかった。
必要であれば、言葉に出して聞いてくるものだ。
それに、問うべき相手は自分ではないだろう。
新たにマスターとなるものがもろもろを教えるべきだ。
誰がその役割を担うにせよ。*]
[>>496 頷く相手の端正な横顔を見る。]
……実に。
子供染みた浅はかで短絡的な思考だよ。
ただ気に入らない現実を拒む、その為だけに、ままならないのなら全てを灰に帰すことで抗おうと言うんだ。
[神を探し、求め、学び。そして多分、今でも焦がれている。
彼の中にあるのは、冷静で淡白な思考と、子供じみた感情がひしめく危うい均衡。]
―――実行に移す力もないくせにね。
……飢て狂う、か。
[今でも、十分に苦しいこの渇き。
他者の血を糧に生きることを想像して、己の手に視線を落とす。
黒衣の翻る裾が視界を過った。]
…………お気遣い、どうも。
[黒衣の背に視線を上げた後、更にその上、天を仰いだ。]
− 屋上庭園・洞窟 −
[煙よろしく城館内を上階へと向かい、屋上へと出る。
月に照らされたそこには、森を借景にした屋上庭園があった。
花の香りを抜けてゆけば、奇岩を積んだ
日中でも、光の入り込まない仕様なのだろう。
それはともかく、洞窟の中は音の響き具合がよかった。]
そこまで計算されているのかもね。
[平たい石に腰掛けて、リュートの弦を弾く。]
― 一室 ―
[案内された部屋に入ると、寝台に突っ伏した。途端尽きかけていた体は眠りを求めてあっという間に意識が混濁していく]
………。
[吸血鬼、などと。信じたくはないけれど、今までに起こった事柄を考えればそれが事実であろうというのは想像がついた。
両腕を持ち上げて、自分の手を見る。左手を動かして、右の腕に爪で傷をつければ鋭い痛みが走る]
これ、で…
[目が覚めた時に、この傷が残っているのか。残っていないなら――
残っていることを祈りながら、すぐにやってきた眠りに意識は攫われた*]
[リュートの演奏に乗せて口づさむのはルマニ語の歌。]
[不可解な疼きをもたらす刺激が去り、
乱れた息は凪いでいく。
傷を癒すためにされたことだと、もたらされた結果の一つを素直に受け取って。
血で繋がった彼の心情を察するには、絆は薄い。まして、かつてのように人の機微に敏い耳目は残されておらず]
ありがとう、 …
[去りゆく男を見送ることなく仕事に戻ろうとしたところで、別の声に引き止められた。>>529
決定について改めて問われて、頷く。]
そうだ。
評議会の審議に掛けられ、経験と相性等で振り分けられる。
[養い親の決定に関する答えは、普段より多少丁寧だった。
今自分がまとめている報告もその資料となることは疑いない。]
そう。
[フードを目深に被りなおすその人の答えに、吐息のような返事をする。]
……わかった。
でも、もう少しだけ。
[是の返事に、添えられた言葉に素直に首肯し、黒衣の背を見送った*]
― ホール・深い眠りに着く>>445より前 ―
[疲労困憊といった様子でホールに続く扉を開けば、小間使いらの視線が気になった]
(またどっかの下級が、僕の仕事場に無断で入り込んで自滅でもしたのかな…)
[……が、よくある事と思うに至り、急ぎで片付けることでもないと判断する。
連れてきた青年と猟犬のやりとり>>507>>509を知らぬ男には“金髪の小さいの”という意識で視られてる事など気づくわけもなく。
猟犬へと書類を渡し>>444、その反応>>454から、問題がない事を察知したなら、ふらふらと部屋へと向かうだろう。]
―暫く後・城館 ―
…少し手間がかかったな……。
[評議会を訪ね、無事議長にバランの心臓を受け渡した後。
此処へ戻る前にある場所へ赴いて一作業終えて来た男の両手には、ワインボトルの様な瓶が握られている。]
君、長い黒髪の青年がどちらの部屋に案内されたか教えて欲しいんだが…。
そう眼鏡をかけた子だ……
わかった、ありがとう。
[廊下を行く使いを1人捕まえて、アレクシスの部屋がどこかを尋ねると、その手に瓶を一本握らせた。]
これを――もしまだ"血"を飲んでいない子がいたら、あげて欲しい。
それから、アレクシスの部屋にグラスを持って来てくれ。
[決して無理強いしない事と、中身は『人間の血ではない』事を伝えると、アレクシスの部屋へと向かう。]
[距離が離れればそれはそれで、心許なく。
衣服との格闘の間も握り込んだままだった手首を離したのはしばらくして。
髪を流す間、浴槽に身を沈める間も、時折視線を動かしてはあかがね色がまだそこにいるか探した]
― 浴場 ―
[鼻よりも上まで湯へ身を浸していれば、当然ながら呼吸は出来ないのだが。
ほとんど何も考えずに、数分ばかりそのまま過ごした。
覗く双眸は、苦しさに虹彩の赤みを増していく]
……、
[視界が急速に暗くなるような感覚。
ごぼ、と水が音を立てた]
[話している最中、わけもなくぞくりとした。
まさか名付け親が不穏な言葉を放ったせいだとは気づかず>>525
うなじの毛が逆立つのを覚えて、首筋に手をやる。]
― 温室 ―
[黒衣の背を見送ってしばらく、天井を見上げていたが、やがて立ち上がる。]
………だめだね、齧りついてしまいたくなる。
[先程戯れた梟を見て、喉を鳴らした後、苦笑いを浮かべた。]
……主よ
[唇から毀れる呟きは、心許ない。]
[幼子の、競走馬の如くに引き締まった肉体が湯に沈むを、浴槽の縁にぽつり立ち眺めた。
つい先ほどまで幼子の膚に触れていた唇は、何かを求めるようにうっすらと開いたままで。]
― ホール ―
『執行人』。
[黄金と鋼の双方を思わせる長生の吸血鬼を呼ぶ。
声を掛けてしまってから、どうやら別人と会話中のようで
一度は退こうと口を閉ざしかけるが。>>529]
……どうしたんだい。
[妙な素振りにフードが斜めに揺れた>>537]
―自室―
[宛がわれた自室へと案内された後は、半ば追い出すように
小間使いを下がらせ、部屋には一人きり。
部屋のそこかしこを確認することよりも、まずは寝台へと
飛び込み、様々な出来事で混乱した頭を埋めた。]
何も…考えたく無い。
[先のレトとの対話から、飢えと渇きが身を焦がすかのようで
他の思考が徐々に隅の方へと追い遣られていくのが分かる。]
このままで居るとどうなるんだろう…。
[人なら衰弱する、医学の範疇で考えずとも解る事。
では、吸血鬼は?……わからない。]
― 城館・アレクシスの部屋 ―
――アレクシス、いるかい?
[教えられたとおりの部屋を訪ねて、繊細に装飾が彫り込まれた扉をノックする事、数回。
中から返事が返るのを待つ。
もしかしたら、まだ館内を散策しているかも知れないが。
その時はこの土産を置いていくつもりで。]
― 屋上庭園・洞窟近く ―
[他より偉いものは高いところが好きだ。
決してなんとかではない。
天に仰ぎ見るべき己と、地にあるべきものと差があるのは当然のこと]
ポラーシュターン。オスカー。好きにせよ
[気に入りの深い偽りの人口(?)森へと、ロー・シェンの兄と姉にもなる蛇二匹を離す。
使い魔といえども真祖の血を飲み、千を越える年月を生き名をつけたため...の中では二匹の蛇はロー・シェンの兄姉となっていた。
そして自分はといえば、歩がて散ら彷徨い。一つの音>>532に導かれるように洞窟の近くまで足を運んだ]
[所在を確かめるように時折こちらを向く、ディークの視線にも気付いてはいる。
それが、目を離した隙にふと親がいなくなりはしないかと案ずる幼児のようだとも。
けれども、彼我の距離を縮めることはしなかった。]
[全てを喪った今、唯一気に懸るのは、惨劇の場から身を呈して
逃がしてくれた青年のこと。
非力な自分が、今更彼の忠義に報いられるとも思わない。
生まれに伴う権力は最早意味を成さず、人の生を代償に得た
魔力も、年嵩の吸血鬼にはあっけなく封じられた。
せめて――彼が託される先が、少しでもまともそうな
相手であれば良いのだが。
例えば、彼を慈しむにも似た素振りを見せていた、
赤銅色の髪の青年のような]
経験と、相性……
[浅黒い男から『経験』という言葉を聞けば>>533、黒衣の吸血鬼に似たような事を聞かされたのを思い出す>>402]
養い親は、子を引きとって、養って――
そして、どうするの?
[娘と話しているうち、ホールに現れたのは、
雛たちに比して深く涼やかな気配。>>540]
エレオノーレ殿。
[何用だろうか、と視線を向けるが、フードの揺れるさまにわずかに視線が逸れた。]
いや、 問題ない。
[いくらか言いよどんだのは、自分でも理解できていなかったから。]
ほう…
[耳にするには懐かしい曲が洞窟の奥より響く。
音が反響し、音の波に揺られる洞窟の中は、さぞ音色が魂に響くことだろう。
そして盗み聞きなど卑しいもののするものだ。迷うことなく洞窟に入るのが自身の在り方だ。]
おい、そこにいる楽師よ。我がために曲を続けよ
[勝手にやってきて邪魔をしていても気にせずにいう]
我が耳に入った雑音を洗い流せ。うまくできたならば飴を与えよう。
[初めて口を聞くにもかかわらず尊大な態度でいう。薄暗い中、石に座りリュートを奏でるものはホールにいた執行者がつれてきたチャイルドであったが、気にもせず、洞窟の壁に背を預け腕を組み聞く姿勢にはいった]
― 自室 ―
[あれからどれほど時間が経ったのだろう、もしかしたら少しも時間が経ってないのかもしれないが……
太陽が顔を出したままなのか、星が舞う時間なのか、床に身を預け微睡む男からは時計の針を伺うことができず。]
……ね…むぃ…
[またそのまま意識を手放しかけながらも、ゆったりとした速度で思考を巡らせる。]
―浴場 ―
[それが破られたのは、顔の半ばまで湯に遣った幼子の口の辺りから、ごぼりと大きな泡が洩れた時だった。
[息を呑み、さっと顔色が変わる。]
――ディーク!!
[浴槽の湯を蹴立てて、幼子に駆け寄る。]
[子を引き取った後はどうするのか。>>544
娘の問いには、何かを思いやる心が潜むように思う。]
眷属の一員としてふさわしく養育する。
そのあとは、親次第だ。
手駒として鍛えることもあれば、
恋人然として扱うものもいる。
[普段と比べれば、倍ほども口数は多い。
相手が何も知らぬ幼子だと理解してのこと。]
っ?
…っげほ
[身体を起こして自ら顔を出すと、何度か浅く息をつく]
あー… ?
[意識にかかったままの霧に、今は少し晴れ間があるようだった。
緋色に変じた虹彩、押し付けられた魔としての能力は自身の心身に影響を及ぼす事は、まだ理解しない]
[浴槽の縁に立ったままのコンラートを見上げて、
ここの浴槽がとても大きいことに思い至った]
あなたは入らない、のか?
…コンラート?
[聞いた名はスムーズに口をつく]
[意識を引き戻した呼び声の主、駆け寄ってきたコンラートを見上げて、
彼が服を着たままだったと気付いた]
だいじょうぶ、いま、ぼんやりして…
…コンラート?
[聞いた名はスムーズに口をつく。
近くある白皙へ手を伸ばした]
[思考の海に身を委ねていた男>>549の耳に、扉を軽くノックする音が飛び込んだ。
頭の中を覆うぼんやりとした靄を、取り払うように首を振ったなら、男は起き上がり扉へと。]
バランの、血子の、親、ね…
[要望も考慮するとのことを聞き、眠い頭で反芻すれば、彼女の孫に彼女の話を聞かせようとしていた事を思い出したのだが――…
あいにくと、名前は知らないし、聞いてもいなかった。]
村の設定が変更されました。
[闇を吸いこむマントに煌めく銀が月光を煌めかせ、月光よりも存在感のある銀の吸血鬼は在る]
…桃を望みか?我に対し先に要求するとは無礼なやつだ。
未だ生まれたての赤子でなければ許しおかぬことだ。
[香り>>555を口にしたこととは思わず、己の器量を疑うように問いを投げたと勘違いした吸血鬼は、傲然とした態度でいう。とはいえ戦闘中のような殺意も冷気も持つわけではなく。]
己で考え選別せよ。我の願う音を聞くのではない、楽師が奏でる音を聞くことよ。
[聞く姿勢のまま>>556リクエストについては、楽師に任せることとした]
本当は人の血の方が、いいけれど…。
["人の血は"――美味しさも、栄養面でも、何もかも。
こんな風に飲みやすく加工された動物の血より、ずっと価値がある。
吸血鬼にとって人の生き血は必要不可欠だ。
いずれ遠からず、彼も人の血を摂取しなければならないだろう。]
…まだ、抵抗があるだろう?
[人から魔へと変化した者にとって、人の形をしたものに牙を突き立てる覚悟は、
なかなかすぐには、決意しずらいものがある。]
/*
どこに凸ろうかと思ったが、色々悩んで
よーし風呂か…風呂…風呂だな…?
と思ったところでどうやって入り込むか想像がつかなくて諦めたターン。
話は終わったかな。
[双方の頃合いを見計らってから、口を開く]
執行人、その養子の件だけれど……ああ、
評議会との連絡など、雑事まで任せてしまって済まないね。
[不埒者ひとりを誅滅するには多過ぎるマスターの数、
捕縛された赤子同然の遺児たち。
評議会の腹はおおよそ読めている、とした上で]
この中から望む子を選びたいのだが、叶うかい。
− 屋上庭園・洞窟 − >>561>>562
[白銀の聴衆はロー・シェンより5倍くらい理屈と口数の多そうな相手だった。
やっぱり似てない。
桃は嫌いじゃないけど、桃とか飴とか喉の乾くことを今、言わんでくれるかな、と思ったけれど、口には出さず。
曲を任されたことには、是、と頷いた。
ふたたび、リュートを構える。]
[彼にルマニの言葉が理解できるのかわからなかったが、先程の続きを歌う。]
[娘が何をどう結論付けたかに興味はなかった。>>559
恋人の意味はずいぶんと広いが、それは説明するまでもないこと。
手駒という言葉に対する嫌悪感はわからないでもない。
だが自分にとっては、子供はどこまでも手駒だ。
部下、と言い換えてもいいが。]
[問いが途切れれば、それ以上を説明することはない。
作業に戻りかけたところで、ソファに座る同族をちらりと見る。
用があるならば、と聞く体勢を暫しとった。
そういえば、エレオノーレが連れてきたのはこの娘だったか。
記憶の鍵がひとつ頭の中で噛み合った。]
[触れた頬の温度は、お湯のそれに比べれば低い。
鮮やかな翠の瞳と緋色が交錯し、そこにこちらへの気遣のいろを認めれば、困惑して視線を下げ。
濡れて浮き出した鎖骨のラインあたりを彷徨ってまた見上げた]
貴方は──
ここは、どこだ
俺は…?
[既に一度した問いを、違う相手に向ける]
人の血には敵わないけれど、飢えで動けなくなったり、
理性を失う事は防げる…。
[それでも、何も摂らないよりは随分マシだ。
あるいは同族や養親から血を分けてもらう事も手段としてあるが、今ここで己の血を与えることは憚られた。
まだ彼の養親は決まっていない。]
構わない。
[エレオノーレからの労いには短く答える。>>565
これも仕事の内だ、と顔に書いてあるのが読めるだろう。
問いにも頷いた。]
保障はできない。
だが要望は添えておく。
─── おそらく、そのための場だろう。
[マスター相手への言葉は、普段通りの端的さに戻る。
普段、吸血鬼が人の子の間から血子候補を選ぶのと同じく、戦場にてマスターを幼子らと出会わせ、選ばせる目的があったのだろう、との意がいろいろ省略されていた。]
[せめて『手勢』と言葉を選んでやれば良いのに。
と思いながら、敢えて口出しする事はない。>>567
だが、代わりに次がれた言は>>568]
金の髪で、白皙の若者がいたでしょう。
養親が決まっていない手前、名を交わすのは控えたけれど。
[恐らく記憶の鍵を裏切る。]
/*
爆弾を投下しました(白目)
もうこの振られる前提の当て馬ポジションが楽しすぎてだね
お姫の事はこの後甘やかそうね、そうしようね……
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