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[”門”が目前に、
3年前とは違う圧倒的な威圧感を伴ってそそり立っていた。
もう少し、走って行けば跳び込めそうなほどだ。
ぞわりと、心臓を冷たい手で掴まれるかのような恐怖。悪寒。
滲み出す不吉さに、唇が乾いた]
…貴様、
[最初は、ベリアンがその門に飛び込むのではないかと思ったのだ。
止めなくてはならない、そう思った。
彼を救おうとか助けたいとか、そうした考えからではない。
ただ、”門”に人を飛び込ませて何が起きるかが分からない。
だから、それだけは防がねばならないと考えたのだ]
キアラが、そんなこと、
……っ!
[背後から、屍鬼に噛みつかれた。
暴力的な膂力に抗い、炎の剣を突き立てる。
元は子どもだったらしき屍鬼は、声も立てず斃れた]
望んだ はずが、
[門の影になったベリアンの表情は良く見えない。
ただ声だけが、抑揚を伴って響く。
影になった人影が、魔導書を手にする形ははっきりと見えた]
────万物の根源、万能なる
[剣を構えたまま、呪を詠唱する。
もうそろそろ、最後の呪だ。身体はとうに限界を越えていた。
喘ぐ、自分の息が自分のものではないように感じる。
声も、もう、常の通りかも良く分からない]
我が生命を汝が力へと変えん。
マナよ、我が身我が剣へと宿れ。
我が敵を打ち滅ぼす業火となりて、吹き荒れよ!
[詠唱と共に、シェットラントの身を青白い炎が包んだ。
襲い掛からんとしていた屍鬼が焼かれ、地に倒れ付す。
それへ目もくれずに、地を蹴った]
────…ない!
[恐れも何も振り捨てて、ベリアンを目指す。
彼の手にする魔導書、彼が”キア”と呼ぶそれを焼き払わんと剣を書に向け突き出した]
― カレン ―
[シンクレア卿は、生き延びていた。
南の魔軍の駐屯地を叩くための戦いに参じ、
火竜の炎の下を掻い潜って生き延びている。
手勢は幾らか失われてはいたものの、
怪我人は死の淵を渡ることなく良く生き延びた。
ローズマリー・ティールの歌の加護の賜物だろう。
シンクレア卿の一人息子の姿は、傍らにはない。
もう何日も前にペンホールズに行くと挨拶に来て、それきりだ]
「父上。…──どうぞ、母上をお大事に」
[遺言めいた言葉を残して行った息子の行方を思う。
戦いを終えてカレンに戻ってから暫く、
今度はペンホールズの妻から手紙が届いた。
シェットラントは何やら調べものをして、再び発ったのだという。
行き先は曖昧にして言わぬまま、
ただ部屋は完全に綺麗に片付けられていたらしかった]
[父親が息子の消息を聞き知ったのは、盟主の口によってである。
彼の口から途方もない計画を聞かされた時、シンクレア卿は大きく長い息を吐いた。
息子が何故、あのような言葉を残したのかも理解した]
承りましょう。
[盟主の言葉>>208に、シンクレア卿は短く頷いた。
余計な言葉を好まないのは、息子は父に似たとも言える。
けれどこの時は一言だけ付け加えた]
───お帰り、お待ちしておりますぞ。
[最悪の場合にも、盟主が…息子が戻るべきこのカレンを、
捨て去る決断をする気は男にはない]
[シンクレア卿は深い息をついて、物思いを終わらせた。
赤く燃えるような夕日が、カレンの港を鮮やかに彩りつつある。
…不吉な色だ。血の色のようだ。
一瞬そう思いかけて口の端を歪め、振り払う仕草で首を横に振る。
自分に、魔術の直感などないのだから───と*]
― カレン・見張りの塔 ―
[シェットラントが呪を完成させた、その時>>125
カレンの塔、かつて魔女が命を燃やしたと同じ場所に、
南と同じ姿の幻影の門が姿を現していた。
青白く透明な門の両脇には柱が高く伸びている。
その柱に挟まれるようにして、門の扉があった。
複雑な文様を彫りこんで見えるその扉は、今は堅く閉ざされている。
それを、待ち続けていた男がいた。
シンクレア家の従僕、シェットラントに仕えていた男だ。
盟主が顔を見せる>>212たび、頭を下げて何もない旨の報告をする。
彼は息を呑んで、目前に門の現れる様を見守った。
やがて幻めいた門は、静かにその場に完成した。
それを見届けて、男は急いで身を翻した。
伝えなくては。盟主に伝えよと、主に命じられたそのままに*]
[門の影に隠れ、炎に焦がされたベリアンは、
影そのものが動き喋るかのように見えた。
キア、と。大切に呼ばれる名、その響き。
優しく響けば響くほどに今はもう───…遠く]
[握り締めた剣先に、肉を貫く手応えがあった。
炎の中、シェットラントはその事実に目を見開く]
…───は、
[驚き吸い込んだ息は、肺を焼く。
その苦痛に、シェットラントの端正な顔は歪んだ。
炎は文字通り、自身を糧とし双方を滅ぼしつつある]
……っ、
[黙れ。と、言いたかった>>237
言えない代わりに、彼の喉を掴まんと腕を伸ばす。
キアラを失ってから、どれほど憎んだか。どれほど恨んだか。
どれほどに、 ───…己を責めたか]
[剣をベリアンの肉から引き抜こうと、力を篭めた。
再び貫いて、その息の根を止めてやろう。この手で]
きさま、 だけ は、
[耳に詠唱>>240が響く。
それを防ぐことを、シェットラントは選ばなかった。
代わりに片手では抜けない剣を、捻り、更に突き入れる。
彼の喉に指が掛かった、そう思った…次の瞬間]
[鳴動を感じた。刹那、熱が全身を駆け抜けた。───痛み。
大きく開いた喉から、もう悲鳴は上がることがない。
全身を漆黒の瘴気の槍に貫かれ、]
…──── !
[悲鳴は、声ならぬ”声”に変わった*]
[かつて、自分と親しく言葉交わしたのは一人の少女。
彼女のことを、大切に思った。…本当に大切に思った。
嬉しかった。
気兼ねなく笑いあえる、その関係が。
彼らは知るまい。
この短い時に交わした幾つもの会話、
ふざけたような言葉たちの一つ一つが。
いつしか、青年の大切なものとなりはじめていたことなど]
ヤコブ、ポータルが───開く。
[苦痛の中で発せられた言葉は、ごく短い。
イメージを描き、投げつける。
何がどれほど成功するかしているかなど、確かめている余裕はない]
… 石を、使え。
シュテルン、
────あとは、お前に任せた。
[いつかヤコブの無茶を諫めたと同じ言葉、同じ調子で。
僅かに笑うような気配と共に、言葉を投げた]
[ベリアンが目前に頽れる>>260
支えを失ったように、シェットラントの身体もまた崩れ落ちた。
剣柄は最後まで離さなかったから、
結局、ベリアンの傍らに倒れるような形になった]
…───、
[間近に、求め続けて来た男の顔がある。
この手で殺してやろうと、追い続けて来た男の顔だ。
瀕死のそれを嘲笑ってやろうとして──…失敗した。
彼の瞳の色を、間近に見てしまった、その為に]
…め、だ。
[そのベリアンが、門へ向かって子どものように手を伸ばす。
駄目だ、止めなければ。
声が出ない。伸ばした手の先が揺らめいて定まらない]
……、だ。ベリ、ア………
[彼の服の端を、指先が掴んだと思った。それが最後。
シェットラントは大きく息を吐いた。
それを再び、吸うことはなかった*]
[シェットラントが最後の息を吐いた、その瞬間。
───キン!と、澄んだ音を立てて、
ヤコブに渡してあった透明な水晶の石に罅が入った。
未だ割れはしないが、
良く見ればじわじわとその皹は先へと進むのが分かるだろう。
青白い門の扉が、応じるようにヤコブらの目前に開かれた。
半日か……精々、もってあと一日。
それが術者失われた今の、残された*期限*]
/*
んん!
共鳴に返してあげたいけどここは……
返さぬ!方が美しい気がするので返さぬ!!!
でもヤコブめーーー ヤコブめ! かわいいやつめ…
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