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[泣いた後の目で父親と会うは気恥ずかしいが、母が待っていると思えば、あまり先延ばしにもできない。]
親父見かけた?
[撤退してくる兵に問えば、巨漢で禿の名物熊のこと、ほどなく居場所を突き止めることができた。]
や、おかえり。
それ、殴られた? それとも転んだ?
[殊更にいつもの調子を崩さず声をかける。]
拠点に母さんが来てる。
湯をわかすから、湯浴みしろって。
[湯浴みといっても、浴室があるわけでもない。
地面に置いた盥の中に座り、上から湯を掛ける程度ものだ。]
なんなら、俺が背中を流してやるよ。
親子のスキンシップだぜ。
──少し、話したいこともあるし。
では、小隊の皆、親父を借りてくぜ。
[そう言って、マーティンを拠点の方へと引っ張るのだった。]
伝書屋 カークは、独立解放軍副将 マーティン を投票先に選びました。
― 森の拠点 湯浴みタイム ―
母さん、どんどんお湯ちょうだーい。
[父の大きな背に湯をかけて目の荒い布で擦る。
傷に泥が残らないよう細心の注意をはらって清めた。
後でエディの薬を塗るつもりだ。]
ほんとに、ゴツい筋肉だよねー
[昔はよく肩車してもらったものだ。懐かしい。
誰よりも強い父親が自慢で、見上げてたあの頃。]
今日もよく働きました、お疲れさん。
[その日の平原の戦の経緯を聞きながら、問われればクリーク砦での戦いについても話すつもりだ。
聞きたいことのひとつもそれに関係するのだから──]
なあ親父、この剣に見覚えある?
[示すのはガートルートの持っていた、弧を描く刃をもつ剣。]
屋根を破って砦に潜入してきた赤毛の女剣士のなんだ。
そのひと、ギデオン伯父のこと知ってたみたいでね。
そんな考え込まなくていいよ。
わからないなら、母さんに預けておこう。
はい、背中は洗い終わったよ。
後は自分でどうぞ。
[ついでに自分も湯浴みしてしまおうと、その場で服を脱ぎ出す。
しなやかで強靭だが、親父の逞しい肉体に比べればまだまだ細い。
胸にはガートルートに斬られた長い傷が走っているけれど、向こう傷だ、親父も怒らないだろうと。]
次の戦、俺は
慣れない鎧をつけての立ち回りになるから、死角のフォローお願いするぜ。
間違っても「カーク」って呼んだりしないでくれよ。
[話したいことは尽きないけれど、湯を使って傷の手当をし親子で食事をとった後は、両親を二人きりにしてやろうと外へ出る。
俺って孝行息子。]
― 夜の森の奥 ―
[拠点の人いきれを離れ、闇の中へと足を踏み入れた。
仄かに浮かび上がるような夜咲きの白い花を手折っていると、ディークが出てくるのに気づく。]
よう、
…地の柱としてのオーラが戻ったな。
これは手向けにな。
夜咲く花は香り高いから。
[ここに来た理由を手に応じる。
二人の間では言わずと知れる名は口にせず。]
そうだな、 おかえり。
少し、いいか。
さっきの続きだ。
オクタヴィアスは、今の生活が向上することを是としている。今そこにいる人を助けたくて、新しい技術をどんどん採用するし、他国にへりくだることも厭わない。
そこに寒さに震えている人がいたら、神木でも薪にして与えてしまうような優しさと決断力を持ってる。
おまえとは見ている
このレスポンスの速さは強いと思うぜ。
ああ、
[「ただいま」「ありがとう」と、不器用なほど素直に告げる声。
口調はまったく違うのにエディの純真さを思い出す。
互いに影響を及ぼす万有引力。
人が繋がることの不思議。]
[オクタヴィアスの手法を否定せず、揺らがぬ自負を語るディークに頷く。]
同感だ。
おまえとオクタヴィアスの「違い」は必ずしもどちらかの「間違い」を証明するものではない。
本当は、どっちも必要だと思うんだよ。
今日の飯も、餓えたからって他人の飯を奪うことを正当化しない誇りも。
俺はオクタヴィアスと話してみて、
おまえが領主になり、オクタヴィアスが外交を担うといいんじゃないかと感じた。
そうすれば、100年500年先もラモーラルが大国に媚従する奴隷国家や資源を外に求める侵略国家になったりしない、その礎を築くことができる──と。
[その逆はあり得ない。
ディークはラモーラルの地に縛られる身、そもそも負けたら反乱の首謀者だ。
彼が折れない挟持を示し続けるなら、再度の乱を阻止するためにオクタヴィアスはディークを処刑するしかあるまい。そして、地の柱を切り捨てたラモーラルは精霊の寵を失って荒廃するだろう。]
荒唐無稽な話と思うか?
[かけがえのない友を含むたくさんの死を経験したばかりのディークに投げかけるには痛い甘さであろうと思う。
だが、不屈の意志と気高さをもったラモーラルの魂たる彼ならば、掴むことを怖れないだろうと信じていた。]
オクタヴィアスの柔軟性については信用していいと思うぜ。
周囲に佞臣を蔓延らせておくたちでもないし。
あとは俺らの戦いぶり次第かもねえ。
[勝つか、せめてオクタヴィアスを交渉の場に引き出せなければ実現しない。
でも、その時のことを具体的に考えておくのは悪いことじゃない。]
運命は、この手で引き寄せようじゃないの。
[そう締めくくった。*]
[ディークの手が肩をたたく。
かつてのように、いつものように。
ゼロになった距離が何より温かくしみる。]
ああ、世界に。
おまえに見蕩れないように注意しないとな。
[本当は、出会ったときから心奪われてるよ。*]
― 森の拠点 ―
[ディークとともに拠点まで戻り、殯屋に花を手向けた後、カークは野戦病院と化したテントにチャールズを訪う。]
顔を見せにくるのが遅くなって、失礼しました。
これ、母が焼いたクッキーです。
親父、ちゃんとあなたの分を取り置いてから食べてましたよ。殊勝でしょう?
[体調については触れない。
誰が止めたところで戦場に立つときは立つ将だ。*]
ところで、羊たち連れてくのってあり?
[挙手してディークの意見を伺う。]
いくら馬が少ないからって乗るわけじゃないぜ。
羊は臆病だが、群れで追い立てられた時の勢いは猪にも劣らない。
戦場の撹乱にどうかなって。
[群れを動かすのは専門家たる遊牧民と牧羊犬だ。
人数的にはあまり負担にならないと思う。]
[羊の群れを使うことについて、ディークが平原の民と交渉をしてくれた。
15年前、身ひとつで落ちのびてきたディークとチャールズを受け入れ、褒賞目当ての傭兵崩れの追手からも守ってくれた民だ。今ではディークのもうひとつの家族のようなものだろう。
真剣に交渉に当たってくれる両者の姿から、その親睦と信頼が伝わってくる。]
なんかいいもん見せてもらってる気がする。
話し合うことの実、ってか。
[戦火を避けるためとはいえ、いつまでも羊を下草の乏しい森に置いておくのが難しいという事情もあったのだろう、
平原の民は羊と牧羊犬を貸すことの同意をディークに与えた。]
あんたたちの大切な財産、疎かには扱わないと約束する。
[カーク自身も平原の民の取りまとめ役たちの間に入って宣誓する。
やがて、牧羊犬と羊が集められてくれば、屈んで目の高さをあわせた。]
開拓で住処を脅かされてきた声なき獣たちの代表として、総力戦に加勢よろしくだ。
[橋方面に分配される解放軍兵力はざっと1000人。
その半数以上が元々職業軍人で、指揮するのがチャールズとあらば十全の働きをしてくれるだろう。
特別な装備としては、狩猟用の網と衝立がある。>>235
そして、テレピン油。>>237
連れて行く羊は300頭ほど、牧羊犬が20匹。
兵の運用はチャールズに任せるとして、動物たちのポジションは俺が差配するのがいいかな、と考えておく。
部隊と考えるようなものでもない、いわば突破に障害のある地形効果みたいなものだ。
行動方針としては、ともかく派手に動いて、ディークたちに敵がゆかないようにするのが目的だと心得ている。]
…オクタヴィアスはどこに出てくるかな。
[会って正体を暴かれるのも難だし、間違っても一騎打ちなんて申し込むつもりはないが。]
― 戦いの日・橋方面へ ―
[出撃の朝は晴れた。
軍を先導するように南へ飛んでゆく小鳥を手庇で見送る。
羊の群れは先行して草を食んでいることだろう。
そこだけ切り取れば長閑なものだ。]
いつもなら俺が率先して偵察に行っちゃうところだけど、
今回はそういうワケにもいかないんでね。
[そう言って馬上の人となるカークは、解放軍盟主と揃いの武装をした影武者仕様だ。
髪の色もディークに似せて明度を落し、挙止もそれらしさをまとう。]
[マーティンとチャールズと視線を交わし、進行の合図を出した。]
──我らの希望を州都へ届けよう。
[敵の状況が報告され次第、陣形に関する指示がチャールズから出されるだろう。
今のところは兵種を混ぜず、人数カウントがしずらいよう衝立の後ろに緩く集まり、連絡役の馬が散る形で行軍してゆく。**]
― マーチェス平原 ―
[入れ替わり立ち代わり戻る斥候から、報告がもたらされる。
オクタヴィア軍は橋の北には出て来ていないらしい。
そう見せかけて北の草原の中に兵を伏せているわけでもないというのは、仮放牧中の犬と羊が証明してくれている。]
前回は橋を渡らせまいと激しい攻防だったんだろ?
その地を明け渡すとは潔い。
オクタヴィアスが合流したことで大胆に方針を変えてきたか。
[将が変われば兵は別物だという。
亡き辺境伯の嗣子を国外より迎え、士気も格段に上がっているだろうと予測できた。]
橋を渡っているところを、あるいは渡り切ったところで包囲して集中攻撃してくるのが常套。
あるいは、すでに橋に崩落の細工をしてある可能性もあるな。
そこはちょっと漢探知が必要か。
[砦戦で自分が企んだ策と似ているんじゃないかと予想。
しかし、今回は周囲にそびえ立つ壁はない。資材があれば馬防柵くらいは講じているかもしれないが。
なるべく被害を抑えつつ、敵の手と目を釘付けにする。そのために。]
突破──だろ。
[言葉にすれば、父親とハモった。*]
[羊たちは今のところ、川の北岸付近にいる。
騎馬の突撃ルートからは外れていた。
牧羊犬を使う非武装の羊飼い数名はいくらか離れた小高い場所に散ってカークからの合図を待っているが、
現時点で羊を移動させる指示は出さない。
間に合うはずもない。]
[騎兵の突撃が迫る。
点ではなく線でもなく、波のような衝撃。]
俺を誰と心得る──!
[負けじと言い放って両刀を抜けば、圧はより強まった。
カークを盟主と見なして討とうとする動きに、果敢に大斧が振るわれる。
それは、子を守る熊の獰猛さそのもの。]
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