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― オプティモ ―
[ブラバンドで恋する外交官と、些か鈍感な巫女姫との会談が為されている頃、オプティモでは、最早避けようもなくなったアレイゼル領主軍との戦に備えた防衛配備が着々と進んでいた]
[王府に近い東の半島部分は農村地帯で、そこに広がる畑が、多くのナミュールの民の腹を満たしている事は、アレイゼル領主ばかりではなく、解放軍も知るはずだった。
そのため、挙兵の義を失いかねない、この地帯への直接攻撃は為されないものと判断して、海岸線のみに火矢を備えた軍船が並べて配備される]
[祖先が海賊と、言われるだけあって、オプティモの海軍力は、他を凌いでいる。デ・モール火山を遥かに望む港と、街の西に連なる貴族諸侯の別荘地域の沖合にも、弓兵と、歩兵を乗せた軍船は展開され万一の奇襲に備えたが、護りを固めながらも、実際に海からの攻撃がある確率は高くないと、領主は考えていた。
アレイゼル領からの海路は南島部分を大きく迂回せねばならない。途中に設けられた燈台からの物見に発見される可能性も高く、奇襲としての成功率もあまり見込めないだろう]
オプティモ港に近付かない船は無視しろ。どんな船であってもだ。
[「無視ですか?報告は?」と、海側の監視を受け持つ隊の隊長が尋ねてきたが、男は必要無い、と言い放った]
どうしても報告したければ、私に直接寄越せ。王府軍には、知らせる必要はない。
[強調された言葉に、何かを呑み込んだ様子で、隊長は「了解しました」と真顔で頷いた]
港には投石機を出しておけ、街から出た民兵に操作を任せられるか?
[その問いには、訓練済で問題ないという返答が返る。オプティモ市民の街を守る気概は意気軒昂というわけだろう]
投石機は、街を囲む城塞にも配備。弓隊と共に主に敵の騎兵を狙う。ああ、そうだ、客人には港の防衛の方へ、回ってもらえ…私兵を三組つけ、万一があれば、船で逃がす。
[これには「心得ました」と側近の私兵が頷く]
王府からの援軍は、西に回らせろ。西側の砦との連携をとるつもりならその方が都合いいはずだ。諸侯の別荘地域を守ることにも繋がるから、ユレも文句は言うまい。
[5桁にまで膨れ上がった解放軍の進軍は、男の耳にも入っている。もし彼等が陸路を来るなら、先に目にするのは王府軍の旗印になる。王府から援軍が出ている事を知れば、転進も考える事が出来るだろうとの目算がある。
何よりも、アレイゼル領主の主力は恐らく北寄りから攻め寄せてくる。
王府軍とアレイゼル領主軍を直接に対峙させることを、男は良しとしなかった]
王府に仇為す逆臣ソマリ・フル・アレイゼル討伐は、このラウド・レイ・クレメンスにお任せあれ、とでも、伝令しておけ。
[アレイゼル領主は、クレメンス領主と戦する。が、王府軍と本気で事を構えてはならない。
この戦がどのように決着するとしても、それは守るべき一線だ。
ソマリ・フル・アレイゼルが、男の思う通りの男だとすれば、それは彼自身にも判っているはずだった]
/*
つーかもう、私生児とかほんとにねww
何度私の腹筋を崩壊させる気なのだ、カナン殿www(この、芝は、ゆるして!!)
― オプティモ ―
[領主の元へは、領内に飛ばされた伝令により、各地より集められた兵力が報告される。領主直轄のオプティモの守備隊を合わせ、騎兵300、歩兵3000、弓兵1000、他に、遊撃隊として動く私兵団が、50名単位の小隊で5隊、街から集められた非正規兵から成る民兵約1000]
ライフルの方は?
「試作以上のもんはまだ出来てませんから、荷にあった20挺が全部ですね。使えそうな者は10名程度です。後は引き金は引けても、当たりませんな。弾丸の増産も間に合っていませんから、あまり戦力にはならんかもしれません」
では、とりあえずその引き金の引ける程度を10名、ライフルを持たせて、正面城塞上に配置しろ、銃剣は完成していたんだったな?
「はい」
残り10名は、銃剣装備のうえ、私の近衛として出陣。
[本陣はオプティモの街の北正面、街からはあまり離れず、駆け戻れるぎりぎりの位置に置かれた。
本陣前方には弓隊が、正面200、左翼100、右翼100と三隊に別れて配置され、さらにその前方に騎兵100が、20列に並んだ槍装備の歩兵1000を引き連れて厚く護りを固める]
[残る兵のうち、騎兵200と歩兵1000は、最前線から本陣の位置まで斜線を描くようにして、両翼に配置され、弓兵600と歩兵1000、更に民兵1000は、街の城塞と海上の守りに回された]
[領主クレメンスの周囲を守るのは、本職の騎兵では無いながら、騎馬を与えられた私兵団50名と、銃剣装備のライフル隊10名。
ある意味、雑多な印象を拭えない近衛団、ではある]
― オプティモ・クレメンス軍本陣 ―
来たな。
「ははあ、大層な大軍で」
呑気に言うな。
「うちも
煩い。
[側近の言う通り、男の本来の領地の広さから鑑みれば、あと数千の兵は集まっても良い筈だった。
だが、ソマリ・フル・アレイゼルがナミュール全土に飛ばした激は、クレメンスの領地内の小領主や騎士達をも動かした。「義無き戦に参じることを辞す」と、伝えて来た者には、丁重な絶縁の使者を送ってある]
思ったよりも骨のある者が多かったな。
[小さく笑って、男は、最初の命を発した]
正面突破を狙う敵軍を視認しても動くな。引き寄せられるだけ引き寄せろ。
[命の通りに、クレメンス軍は迫るアレイゼル軍に対して動かず、沈黙を守ったまま、その突撃を待ち受ける。
陣に加わらず、城塞の内に籠もったままの遊撃隊となるべき200名の私兵も、未だ姿を現すことはない//]
/*
まあ、ルディは、殺されちゃうと色々微妙な立場になっちゃってるよね。折角の山の民との融和のきっかけが下手するとチャラになる。
[ 大きく翼を広げた猛禽にも似た、アレイゼルの軍が、凪いだ水面のように動かぬクレメンス軍に襲いかかる。熟練の騎兵200と、勇猛果敢な歩兵1500は、さながら獲物を屠る大鷲の爪。>>412
鋭さと、力強さを内に秘め、大地を揺らし、風さえもその唸りの内に巻き込んで、凪の海を嵐の波涛に変えんとする ]
[ しかし、その爪が、水面を揺らすその前に、漸くにして、男は第二の命を発した ]
開け!
[最初に動いたのは防御陣の最後尾に在った、弓隊。両翼に四列ずつとなって別れていた二隊が、二列となって横に広がり、更には中央を守っていたはずの一隊までも、左右に別れて背後に入り、両翼に四列の配置と変化する。
列が整うと同時に、襲い来る猛禽に向けて一斉に放たれる矢の雨]
[その雨が、一時でも敵の行軍の足を緩めたなら、騎兵と槍持ちの歩兵も動く、ただし、敵軍を迎え撃つためではなく、弓兵と同じく、大きく横に開いて、中央を開ける為だ。
誘い込むためにしても、明らかに異常な陣の動きを、アレイゼル卿はどう見たか。
今や素通しとも言える、本陣正面、片膝をつき、銃剣を取り付けたライフルを構えた10人の兵が、斉射の号を待つ//]
/*
いや、アレクシス、砦に戻れじゃなくて、砦に近い方がいいだろうからオプティモの西側に配備...なんだけど、まあいいや。
[全力で疾駆する騎馬は、そう簡単には後退できない。いかな熟練の騎兵であろうとも、無理に馬首をかえそうとすれば落馬するのがオチだ。集団となって進む歩兵も然り]
[男の腕が、一度天を差して伸ばされ、真っすぐに、前方へと降ろされる]
撃てーっ!
― クレメンス軍・本陣 ―
[一斉に放たれたライフルの弾丸は10発、同時に、合図を待っていた城塞の上でも、10のライフルが火を噴いた。盾に守られた歩兵の盾を貫き、鎧に守られた騎兵の鎧を貫き、最も勇敢であったアレイゼル卿の兵達を10名、一瞬にして地に墜とす。
城塞から放たれたライフルは、誰にも当たらなかったが、その轟音は、上空から地上の音と呼応して、まるで天から雷撃が襲い来たようにも聞こえたろう//]
― クレメンス軍・本陣 ―
[すでに後退を始めていた、アレイゼルの突撃隊に、左右に別れていた槍持ち歩兵と、騎兵の一団が襲いかかる。
轟音に怯みながらも、背を向けて逃げ出す兵は一人も無く、アレイゼル軍は、中央を下げつつ、両翼が援護を放つ形で、横列陣を維持している]
さすが、と言うしかないな。
[一度開けられた中央には、最後尾に居た騎兵50と歩兵200が詰めて再び防御を固め、その間にライフル隊は第二射の為の弾丸込めを急ぐ。
つまりこの陣は数度しか使えない。使い捨ての陣形ということだ]
もう少し、混乱してくれねば困るな。
[ 勝手な事を言いながら、男はちらりと背後を見やる。
オプティモの街の東と西の門からほぼ同時に飛び出した、50名から成る遊撃2隊が、早駆けに駆けて、戦場を迂回しアレイゼル軍の背後を目指している事に、気付いた者はあるか// ]
― オプティモ・遊撃隊 ―
[ 突然に降ってきた弓の雨に>>499、50騎の私兵団は、動きを乱す。数人は、落馬し、若しくは、馬に矢を受けて動けなくなったが、妨害は予想の範疇だったから、すぐに剣を抜き矢を打ち祓いながら、敵の位置を確かめようと馬首を返した ]
「隊長、あれ...」
[ 一人が、狼狽えたように、隊長を仰ぎ見る ]
「古の民だな、こりゃ不味い」
[ これが正規兵であれば、違ったろう。だが、クレメンスの私兵団は、特異だ。実を言えばここに居ない兵の中には、古の民の出身者までいる。
そして彼等は、軍としては有り得ない程の自由裁量を持たされていた ]
「逃げるぞ!」
[ 号令一下、落ちた仲間を拾い上げて、くるりと反転して元来た道を駆け戻っていく// ]
― クレメンス軍・本陣 ―
...?動きが変わったな。
[ 警戒を強め、動きあぐねていた様子だったアレイゼル軍が、ほぼ横一線から両翼を前に進め、鶴翼の陣を張る ]
防御陣?いや...
[ いかに、ライフルに驚かされたとしても、攻め手にありながらの防御陣を選ぶとは、ソマリ・フル・アレイゼルとも思えない。
そもそも、膠着状態に近い状態から更に防御を固めるなど、と、思うも束の間 ]
...っ!?投石機をここで使うか?!
[ 攻城の要となる投石機を、城塞に手が届く前に前線に出してくるとは、さすがに予想だにせず、男は、慌てて前線に向けて指示を飛ばす ]
両翼!騎兵は散開しろ!弓隊前へ、援護しろ!
[ 投石機のような射程が長く、重い武器を相手にする時、密集隊形は命取りになる。騎兵の独自判断と機動力を信じて、散開させ、弓での投石機の破壊を狙って陣を動かす ]
[ だが弓隊を前に出すという事は、男の前の防御は薄くなるということ ]
「
[ 側近の声に、男は正面の戦場から、その端で行われている追いかけっこに視線を向けた ]
― クレメンス軍・本陣 ―
(抜かった...!)
[ 男は心底悔いていた。まさか、彼等がこれほど早く、戦に参戦してくるとは、予想していなかった]
言い訳にもならんな。
[ 呟いて馬に鞭を当てる、その後を無言で三騎の私兵が着いてきた ]
― クレメンス軍・本陣 ―
[ 銃声と同時に、アレイゼル領主の兵達は、距離を取っていた。
事態に気付いた遊撃隊が立ち戻って取り囲み、怪我人を中心に庇う森の民との間で、睨み合いが続いている ]
君達は、太古の森の民だな?
[ 男は、私兵達の前に出て声をかけた。こちらの身分に気付いたのかどうか、森の戦士達は強い視線で睨みつけてくる ]
この戦は、私とアレイゼル卿との私闘に近い。君達が関わって命を賭ける事を私は望まない。
「今更何を言う!」
[ 鋭い糾弾の声に、男は目を伏せた ]
― クレメンス軍・本陣 ―
[ 前線では、ソマリの全軍突撃命令による総攻撃が始まり、激しい戦闘が繰り広げられている 投石機を犠牲にしての、捨て身とも言える攻勢に、徐々にクレメンス軍は後退を余儀なくされつつあった]
許せとは言わん、だが、その者はまだ生きているんだろう?
すぐに手当をすれば助かるかもしれん。だが、遠くまで動かせば恐らく保たん。
どうか、オプティモの街で、手当をさせてもらえないか。
頼む。
[ 深々と頭を下げた男の姿に、森の民達の戸惑う気配が伝わる ]
決して、これ以上の危害は加えない。無事に命を取り留めたなら、間違い無く君達の元へ帰すと誓おう。
このラウド・レイ・クレメンスの、王国貴族としての名誉と誇り、そして同じ地に住まう人としての信義にかけて。
― クレメンス軍・本陣 ―
「本当に...助けてくれるのか?」
[ 必死の目で確認してきた相手に、頷き返す。その間にも娘の身体は冷え、命の証は零れ落ちていく ]
「判った...だが、もし彼女が命を落とせば」
その時は私の命で購おう。この年寄りの命くらいでは足りないかもしれないがな。
[ 瞬時の間も置かず、そう宣言すれば、漸く本気で言っている事が伝わったようで、森の戦士達は、武器を向けたままながら、娘を囲む位置から身を退いた ]
感謝する。出来れば君達も、この戦場からは撤退して欲しい。
それが無理なのであれば、街中に攻め入ることだけは避けてくれ。
[ 彼女を運ぶ医院も、街にあるから、とそう伝え、遊撃隊の数人が、そっと娘の傷ついた身体を運んで行くのを見送った ]
― クレメンス軍・本陣 ―
[ 森の民と別れた後 ]
「
[ 男は、呼ばれた声に、振り返り、ひとつ頷く ]
我々も撤退する。
全軍、オプティモ城塞内に退却!
[ ソマリの降した突撃命令とは、真逆の号令一下、クレメンス軍は、オプティモの街を囲む城塞内に順次撤退を始めた** ]
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