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何を言っているのかよく聞こえないけれど
積極的に情愛の表現をしているようだ
初めて見た。
産めよ増えよ地に満ちよ?
振り返り、天使長の袖をくい、引く
神は愛なり
あそこに地上の愛のかたちがあるのならば、
見に行きたい と
地上に降りてから、この天使の情緒は萌芽を見せていた
おそらくは 朧な実体が肉体という核を得た為に
―草原―
近付けば、怒っているような声
では情愛の表現ではないのかと 期待は萎んでしまう
そのうち、手を引く天使長の掌に興味は移って
ゆらゆら揺らしてみたり
きゅうとにぎってみたり
一方は知っている顔
檻の中で見た
ここにいるのは では 彼の責から解かれたのだろうか
少し、二人の顔を見上げ
それから足元を這う小さな蜥蜴に気を取られ
そっちを眺めていた
名を呼ばれて天使長を見る
忘れられた名を呼ばわれるのは 喜び
首を傾ぐ
話は終わった?
片腕で天を示す
帰らなければ
シェットラント
わからない、というように一度首を振った
心配をされるような相手がいただろうか
伸ばした手は 宙に浮いたまま
淡く薄れた 思念を送る
狭く閉ざされた牢のヴィジョン
鉄格子
それが開く フェリクスを捕える檻の扉が開く
世界が彼の前に開ける
罪と咎から放たれたことを祝う思念は、 余韻を置いた
問うように
一面の花畑に立つ 花冠を戴いた白い魔物の姿を描く
──彼女は?
誰だか理解できなくとも
この身を案じる者があったということに、喜びは灯る
そしてそれを伝えようとしてくれる者にも
不思議な感覚だった
嬉しい、という気持ちのまま、それを表して
笑顔になる
それはこんな天使だったか、と
指の先に白い光を灯してみた
守護の白い羽 ウェルシュからもらったもの
魔物のもたらす害から護らんとする光は、指先から散って姿を隠した
では彼の天使なのかもしれないと頷いて
ゆるく首を傾ぐ
花冠の魔物はここにはいないのだろうか
あれほど、大切に思っているようだったのに
もう1人の方へ視線をめぐらし、見つめた
たぶんあまり あの子とは似ていない
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