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― 平原 ―
[セルウィンが逝ったあと、アイツと一緒にいた兵たちが武器を構えた。
アイツに殉じるつもりなのか、意地を見せるつもりなのか、戦うつもりらしい。
帰って、セルウィンがどんなふうに戦って死んだのかみんなに伝えるのが役割じゃないのかと思ったけれど、アイツと一緒にいた兵だ。きっとアイツに似てるんだろう。
その戦いに加わる気もせずアイツの横に近寄った。
最期になにを考えていたのかなんてわからないけれど、死に顔は意外と安らかだった。
多分同じくらいの年の王国の将。
一人取り残されたオレへの攻撃を止めさせたのは何だったんだろう。
エールを送り合ったみたいな会話を思い出す。
こいつがゼファーに生まれていたら、なんだかんだつるんでたかもしれないな。
なんて、ちょっと思った。]
[兵が来て、亡骸を運ぶと言ったから手伝った。
アイツの盾は小さいからゼファー流に盾に乗せて運ぶのはできなかったけれど、できるだけ丁寧に。
隊長がそう指示したらしい。
一騎打ちで隊長とあれだけやり合ったんだ。
やっぱりすごいやつだったなあ、なんて思い返して。
戦場から外れたところに寝かせて、マントをかけてやった。]
一度、おまえとやり合ってみたかったなぁ。
結構いい勝負になったと思うぜ?
[話しかけて、短い祈りの言葉を投げる。
あとは、振り返らずに駆け出した。
オレも、そろそろ戦場に戻らないと。*]
― 平原 ―
[北側の戦線を離れて、置いてきた部下たちがいる西側に戻る。
北側は一進一退というところだったけれど、こっちは膠着状態というのが近いだろうか。]
おーい。大丈夫?
[仲間に声を掛ければ、みなが駆け寄ってくる。
「たいちょー!」「ゼノンがやられた!」と報告してくる声に眉を下げたが、重傷だが命は無事だと知れば頷いた。]
そっか。
ゼノンのためにも手柄を立てないとな。
[気合を入れ直して槍を握る。*]
ゼファー軍小隊長 ミヒャエルは、ゼファー軍小隊長 ミヒャエル を投票先に選びました。
― 平原 ―
そういえば、相手の拠点ってもうすぐだよな?
[唐突に聞けば、「馬で走れば意外とすぐー」とか「まさかたいちょー?」とかいう声が返る。]
まさかだよ。そのまさか。
暗くなってきたし、こっそり行けば相手の野営地まで偵察できるんじゃね?
[「「「マジかー」」」と声が上がるが、止めるものはいなかった。]
よし。じゃあ行こうぜ。
フェリクス隊長来たら、ちょっと偵察に行ってるって言っておいてよ。
[周りの兵に伝言を頼んでから、戦線を離れて夜陰に紛れ、西へと向かって走り出した。
今夜は月が明るいから松明無しでも馬は走れる。
行けるところまで行こう、と、なるべく影の濃いところを選んで進んだ。]
[やがて、敵野営地らしき柵が見えてきたところで隊を止める。]
ここまできたならもう少し近づいてみる。
オマエとオマエ、馬降りてついてきて。
オマエたちは馬連れてあの辺で待機な。
残りの連中は少し離れて待ってて。
いざというときは、真っ直ぐ隊にもどれよ。いいな?
[部下たちの配置を決めて、こっそりと野営地に近づいていく。
「たいちょーがんばってー」とのささやき声に背中で手を振った。
ここに来るまでに既に見張りに見つかっているかどうかは、知らない。*]
/*
自分の動きをシミュレートしてみる。
どこでどう出会っても逃げるな……
どう出会ったら逃げずに戦う羽目になるか、な……?
― プラメージ王国野営地近く ―
[二人の仲間を連れて拠点に近づくこと暫し。
これ以上進めば篝火の明かりに入る、というところまできてそっと様子を窺う。
どこからか柵の中を覗けないかと様子を見ているその時、大勢の足音が聞こえて慌てて身を潜めた。
拠点の入り口から大勢の兵たちが現れる。
千人隊くらいの規模かなと見ていたら、後から指揮官らしき奴が出てきた。]
(あいつ誰だろ)
[顔を見たって名前が分かるわけじゃないけれど、つい覗きこんでいたら後ろから服を引っ張られた。
どうやら覗くのに夢中になっているうちに、身を乗り出しすぎていたらしい。
ヤバい!と思ったときは時すでに遅く、「誰だ!」という鋭い声が飛んできた。]
[見つかった瞬間から逃げ出したけれど、相手の反応もなかなかだった。
数は多いし、ここらの地形は向こうの方が詳しい。
馬を待たせている場所までたどり着けばなんとかなるだろうけれど、みた感じちょっと厳しそうだ。]
オマエらは行けっ!振り返るなっ!
[「たいちょーは?!」「ちょっと待てって」と振り返る仲間たちの間に槍を投げつけた。]
馬鹿!行け!
フェリクス隊長に報告しろ!
新手が来るって!
[「わ、分かったよ」「たいちょー。死ぬなー」
そんな声が遠ざかるのを聞きながら投げた槍を引き抜き、身体を回転させた勢いで王国兵を狙って投擲する。
先頭を走っていた王国兵が盾を翳したけれど、投げ槍は盾を貫いて胸に突き立ち、沈黙させた。]
[間髪入れずに、仲間たちとは違う方向へ駆け出す。
相手の部隊を横切る形で駆けたから、向こうからよく見えたはずだ。
逃げきれない。分かっている。
起死回生の一手を求めて、追ってくる兵の中に、さっき見た偉そうなやつを探した。*]
[暗がりの向こうに矢が放たれるのが見え、遠くで声が上がる。
無事でいてくれと、今は祈るばかりだ。
点々と置いてきた仲間たちすべてがやられることは無いと思うけれど。
それ以上は仲間のことを思う余裕もなく、追ってくる兵の刃を躱しながら走り続ける。避けきれないものがいくつも身体に傷を作ったが、構っている暇もなかった。
敵の大将を探す目より先に、耳に声が飛び込んでくる。>>71]
ゼファーのミヒャエルだ!
オマエの首、もらい受ける!
[反射的に叫び返していた。
同時に、直角に向きを変えて敵兵士の中に飛び込んでいく。
人間、急な動きの変化には対応できないもんだ、とフェリクス隊長も言っていた。
驚かせれば勝ち、だったかな。
ともかく向こうの大将をとっ捕まえて、首に刃突きつけて脅すのが、唯一生きて陣に戻る道だと思っている。
二本目の投げ槍に手を掛けて、がむしゃらに駆けた。
ちなみに、これが最後の投げ槍だ。*]
― プラメージ王国野営地 ―
[大将首を取るという相手を阻もうと、兵が押し寄せてくる。
最初の驚かしも効果は短い。
壁ができそうと見るや、繰り出される槍を皮一枚で躱して跳び、兵士の盾と肩を順番に蹴ってさらに高く飛んだ。
馬よりも高い位置から大将首めがけて投げ槍を放ち、捕まえようとして来た兵の顔を蹴って前転、短槍を掴みながら疾走する。
調練でだってやったことのない動きができるのは、たぶん自分が今、冥王の門の前に立っているからだ。]
いいからその首置いて行けえーっ!
[正面に、斧を構えた相手が見えた。>>85
落ちる投げ槍に続けて、相手の胸板を貫こうと槍を突き出して走る。。
自分自身までが一本の槍になったようだった。*]
― プラメージ王国野営地 ―
[渾身の力を込めて突き出した槍は相手の腕を掠めただけで届かず、振り下ろされる斧を躱すには身体の勢いがつきすぎていた。
それでも辛うじて捻った胸のあたりを、重い斧の刃が通り抜けていく。
あ、ヤバい。
これはダメな傷だ。分かってしまう。
けれど、まだ死んでない。]
格なんて、知るか!
オレは、オレだ!
[たたらを踏みながらも倒れることを拒否して踏みとどまり、槍を手元で回して穂先を相手に向け、横殴りに振るう。
狙いなんてつける余裕もない。相手の胴に届けばいい。]
オマエの首を取って、生きて帰るん…
[叫ぼうとした口から血の泡が零れ、視界が暗くなるのを感じた。*]
― プラメージ王国野営地 ―
[体の真ん中に受けた衝撃も、どこか遠い世界のことのようだった。
踏みしめた地面もふわふわとして頼りない。
槍だけはずっと離すまいと思っていたから、握っていた。
倒れないように槍を地面に突きさす。胸を張れ。]
大将首、とれば、いくさも、早く終わる…
手柄、立てて、 オヤジ 喜ばせて、
[相手の言葉の半分も聞こえなかったし、理解しようとする端から頭の中身がどこかへ消えていくようだった。
相手の顔も、もう見えない。]
へへ…
セルウィン、も、 おなじ気持ち、だったのかな …
[死んでいったあいつの顔が、浮かんで消えて]
みんな、フェリクスたいちょ、ごめ …
[言葉が音になったかどうか、自分ではもうわからないまま、全てがぷつりと消えた。*]
― 回想 ―
よろしくお願いします!
[軍務に就いてすぐに配属されたのは、父のつてがあるとかいう部隊だった。
隊長は有名な軍人家系の出だというけれども、正直、最近あんまりいい話は聞かない。なんでそんなところに、と思っていた印象が、一週間後にはもうがらりと変わっていた。
鍛錬の時に掛けられる言葉は、ちゃんと理解して実践すれば驚くくらいに動きが変わったし、稽古をつけてください!と押しかければ面倒くさがらずに相手をしてくれた。
その分稽古は容赦なかったけれど、認められるのが嬉しくて、もっと認められたくて、相手が暇だとみるやすぐに稽古をつけてくれと頼みこんでいた。
『教練時代に槍の稽古つけてた連中』が誰だか知らないけれど、熱心さならオレの勝ちだろ、なんてことも思っていた。]
[その時に幾度も繰り返し聞かされたのが、限度を見切るのは忘れるなという言葉だった。
繰り返し聞いて、自分の心にも言い聞かせて、忘れないようにといつも頭に入れていた。
つもりだったのだけれども、やっぱりときどき先走っては叱られることもあった。
早く手柄を立ててみなに認められたい。
小ミヒャエル、だなんて呼ばれないようにしたい。
隊長の思いなんて知らず、役に立てると思ったら頭より先に足が動いてしまうのだった。]
― 平原/仲間たち ―
[出かけた時には13騎だった小隊は、8騎にまで減っていた。
他の者は死んだのかはぐれたのかもわからない。
彼らの隊長も同様だった。]
「馬鹿たいちょー、一人で敵に向かっていって」
「オレたちに、行けって言って」
「かっこつけすぎなんスよたいちょーは」
[報告する若者たちの目元は、何度も擦ったように赤くなっていた。]
「敵の拠点からデカい隊が出てくるの見たっス」
「千人隊…くらい?」
「矢も射られたっス」
[報告をしなければ、全てが無駄になる。
断片的な情報を、必死で伝えた。**]
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