情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
───ヤコブは!!
[陣に帰りつくなり、目に付いた従者に怒鳴りつける。
あちらですとの応えに、礼も言わずにそちらへと駆けた。
シェットラントの姿も服が所々焼かれ乱れたひどいものだ。
けど、それに構っている余裕はなかった。
術は、想いの強さが効果を分ける>>2:448
とはいえ、間に合わなければそれまでなのだから]
……ヤコブ!?
[ゆく手を遮るものあらば斬り倒しかねない勢いで駆け寄った。
彼の顔は既に青白く、呼吸は荒い。
胸の怪我は致命傷のように思われた>>126]
そんなもの、お前しかいないだろうが?大馬鹿野郎!
[低い声>>=10に即座に叩き返した。
会話が意思を繋いでいるなら。まだ、望みはあるから]
[───変更されてしまった、ひとつの未来で。
フランツは、シェットラント少年を殺していた>>41
キアラは死んでいなかった。
ガートルードはいなかった。
シェットラントが力を篭め、魔女が血を注いだ紅玉を、
ヤコブは受け取ることがなかった。
故に。彼はなにも成し遂げることなく死んだ。
けれど今ここにシェットラントが存在している。
ガートルードは想いを託して散っていった。
魔王の知らぬ未来、知らぬ歯車>>47]
[地面にヤコブの身体が横たえられる>>157
そのすぐ傍らに膝をついた。
喘ぐ彼の胸元に手を置けば、波打つような脈動を感じた。
手に馴染みのある、魔術の波動だ]
…よし。
このざまのどこが馬鹿じゃないというんだ、阿呆。
…黙れ。殺すぞ?
[思いきり冷たい目で睨み下ろしながらの声である。
言いながらも、手は彼を助けんとして動くのだが]
[本来シェットラントに癒しの術は扱えない。
それは主に、神聖魔法の領域だから。
けれど今、ただ一つだけ扱える術があった。
…魔女が命散らして遺してくれた
それに水晶の指輪翳して、自らの心を重ね合わせる]
万物の根源、万能の力なるマナよ、
その源たる力をここに現せ。
ひとつは一にして全てもまたひとつなり。
此れなる者に、我に与えられし
其は虚、其は彼の身に非ず。
───
[預け置いた石に篭められた魔力を開放する]
[ ]
[音ならぬ音を立て、石は彼の運命>>93を受け静かに砕け散った。
ぐらりとシェットラントの体が傾く]
― 回想 ―
[かつて自分には、手に入らないものなど何もなかった。
家柄も容姿も能力も。全て人並み外れた御曹司。
羨望も受けたが、やっかみもまた多かった。
構うだけ疲れるほどだ。
能力くらい磨けば手に入るものだろう。
他者を妬み羨む暇があったら、帰って腕でも磨けばいいのだ。
「学友」たちは、遠巻きに離れてあるばかり。
氷人形との揶揄も聞こえはしたが、気にならなかった。
気にするだけ無駄だと思った。
……下らない]
[キアラと話をするようになった切欠は、たまたまだ。
偶然共に同じ課題をこなすように割り当てられ、彼女と組んだ。
触媒の違いによる術の違いや個性を確かめていく、地道な作業。
その作業を進めていたある時、一つの術が暴発した。
二人で慌てて呪を収めてことなきを得たのだけど、
顔を見合わせてみれば、互いの様子は髪も乱れて散々だった。
互いに無事、更には学舎も無事だった。
シェットラントがほっと安堵の息をつくと、キアラは笑った]
『ふふふっ、意外。もっと気難しい人かと思ってた』
[そういう問題ではないと思うし、
大体無事に済めばほっとした顔のひとつやふたつもするだろう。
そう言い返しても、彼女はころころと良く笑った。
不快な笑われ方ではなかった。何だか変なやつだと思った]
[それから、彼女は度々声を掛けて来るようになった。
追従ではなくやっかみでもなく、当たり前の学友の顔で。
それがどれ程貴重で、どれ程嬉しいことだったか、
彼女は気付いていただろうか。
冷静さを装ったいつもの顔で、彼女と親しく話をする。
課題が分からないのだと言われれば、教えることもままあった。
真摯に課題に取り組む様子が好ましかった。
何より、そうして二人で過ごす時間が楽しかった]
キアラ、君も騎士団へ一緒に来ないか?
[魔術の道へ進まず、騎士団へと帰る。
そう決めた時、迷うことなく彼女を己の道へと誘った。
戸惑う様子の彼女の目を覗きこんで、微笑み告げた]
俺と共に来て欲しい。
…君に一緒に、居て欲しいんだ。
[好きだとか、そんなことを口にしたこともされたこともない。
…手に入らないものなど、これまでなかった。
だから頬を染めて俯いた彼女はきっと来るだろうと思っていたし、そうすればきっと大事に守ってやろうと、望む未来を当たり前のように考えていた。
──── 失うことなど、思いもしないで]
[意識が遠い過去を漂い、想いが幾重にもこだまする。
思い出したくもないほどに、幸せで幸せで…苦い思い出。
”彼”は笑っただろうか。
キアラを殺し屍鬼に仕立て上げ、まんまと逃げおおせたあの男は。
知っていれば、最初から彼女を共に連れて行ったものを。
知っていれば、あの男を野放しにして学舎をあとになどしなかったものを。
知っていれば、…先に殺してだってやったものを]
― 戦場・後方 ―
[目覚めた時、一瞬どこにいるのか分からなかった。
硬い感触を不思議に思い、続いて傍らにヤコブの顔を見出す>>232
どうやら、連続で術を使いすぎた無茶が祟ったのだろう。
軽い頭痛を覚えながら、傍らを流し見る]
……やっぱり、頑丈だな。
[無事生きている様子に、唇の端を上げて軽い憎まれ口を叩く]
[”声”に本音を零しおいて、すぐにふいと視線を逸らす。
こんな風に気兼ねなく、
誰かと友のような顔をするのは久しぶりだと思った。
懐かしい心地に心が穏かになる。……悪くないと、*思った*]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新