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[ よろしい、と諾う声の潔さに酔いしれる。
これからは、この方に国を導いていただける。
思い残すことはない。]
──… いつなりと。
[ 詳細までは判別できなかったが、両手にそれぞれ武器を握っていると見えた。
盾は持たない、か。 懐かしい。]
[ 空気の匂いと肌触りが変化する。
凛と張り詰めた清々しさだ。
王子の声に呼応して、氷の術が行使されたか。
打ち払われた触手が砕かれる音がした。
水の柔軟性を奪われては、すぐに再生させるのは難しい。]
良い策です。
[口にしたのは世辞ではなかった。
この方の10年の努力の実りを見ることができるのは、なんという喜びだろう。]
[ 突破された水妖の代わりに霧の紗幕を浮かび上がらせる。
そこかしこに幻影の兵を映し出した。
これも一打ちで消えてしまうだろうが、構わない。
幻影を薙ぎ払う動きの中で、躊躇なくこの身を斬らせるための布石だ。
行く手を阻むかに見せて、導く。*]
/*
バトルわふわふしつつ、
赤ログバトルはリンク貼れないのがちと難ですな。
では、投票先決定、とりゃ! 1(6x1)
偶数:イェンス 奇数:ヴェルナー
曹珪灰石の
[ 大勢の幻影兵に囲まれても怯むことなく対処する判断力と行動の的確さに見惚れる。
いつまでも幻影相手に踊らされている彼ではなかった。
彼の操る冷気の波がここにも到達して、体の上に薄い氷を生成する。
氷の縛鎖で捕縛するつもりだろうか。 それは困る。
と、呼びかける声の意思表示に、昔のように即答していた。]
── 応。
[ 勝負の一撃に備えて術を編む。
それは攻撃でも防御でもなく、
王子の武器に霧の水気をまとわせて冷気の力を借り、氷の刃を生成するためのものだ。]
[ 二人の術を組み合わせたことは以前にもある。
国王陛下の誕生日の宴に霧を凍らせたダイヤモンドダストを舞わせたのは美しい思い出だ。
靴底を凍らせて、大理石の廊下を水浸しにしながらスケートした夏の日は、後で叱られたことまで含めて楽しかった。
もはや、戻ることも叶わない遠い日。
目を細める。]
[ 王子がこの身に勝負を仕掛けてくるのにあわせ、術の効果を発揮させるつもりだ。
王子に、殺意は一縷もあるまい。
ゆえに、自分が後押しする。
王子の武器に、長さと重さと鋭さを付与することで、彼の意図以上の攻撃力を出させる。
一撃が致命傷になるように。
汚れたこの身、あなたの手にかかって果てる以上の幸せがあろうか。
今一度、剣に手を添えて、抜き打ちの構えだけ取りながら、勝負の一撃を待つ。*]
[ 一直線に、
記憶にあるより洗練された連撃が繰り出される。
けれど、その軌道は途中で変化した。
異変を察した王子は攻撃の勢いを自ら削いだのだった。
金属の響きと同時に、ソードフレーカーめいた粗製の氷の刃が胴を切り裂く。
冷たさのみを覚え、ほとんど痛みは感じなかった。
己が受けるべきダメージを王子が引き受け相殺したのではないかと思えば、血の気が引く。]
[ 取り落とした武器をそのままに、王子は拳を握った。
ぶつけられる真っ直ぐな怒りは、一途さの表明でしかなかろう。
頬を殴られ、横様に倒れ込んで膝をつく。
口の中に、血の味がした。
向き合う熱さ、その尊さに触れれば焦がれるけれど、
これ以上は、ダメだと強いて自分に言い聞かせる。]
越えねばならない試練だと、申し上げたはずです。
…どうか、振り向かず、
(── 我が君…)
[祈るように告げて、闇へと意識を手放す。**]
[ 目覚めた時、上には植物の先端に縁取られた空があった。
相変わらず、色のない世界だ。
少し離れたところにクレステッドの姿を認め、息を吐く。]
──…、
[ やはり、その像は歪んで捕らえがたい。
おかしいのは彼ではなく、自分の方だとわかっているけれど。]
[ 彼の手で、ここへ運ばれたのだということもまた明白だった。
空気に残る酒の匂い。だが、彼が酔っている様子はない。
傷の手当てに使ったのだろう。
だとすれば、この身に刻まれた傷跡も見られたに違いない。
気が重かった。]
了見していただけませんでしたか。
[ どのみち彼はその話題に触れるだろうと、突き放す口調で言い置く。
致命傷を引き出せず、死に損ねた自分が悪いことは自覚している。*]
[ 神魔をこそ討つ、と。
王子が口にした判断に息を飲む。>>16
そういうことを、正論として迷いなく選びとる人なのだ、今も昔も。]
お止めください。
[ そんな風に言われたら、泣いてしまうから。]
かりにも神と詠われるもの、
この森に住う存在に、斯様な企みはありますまい。
討ち果たしてほしいと願ったのは、私ひとりの考えです。
──申し訳ございません。
[ 顔をしかめながら上体を起こし、心から詫びる。
傷跡を示し、この身を案じる声に、顔を伏せて唇を噛んだ。]
[ なんと嬉しい言葉をかけてくれるのだろう。
もう何年も何年も乾いてひび割れていた心に、慈雨のように染み込んでくる。
けれども、首元に手を伸ばされれば、反射的に竦んで拒絶してしまうのだ。]
…っ、 ご容赦ください。
[ 痛むかのように装い、身を引く。
触れさせてはならない。]
[ 外されて傍らにあった剣を取り、二人の間に掲げる。
かつて王子から拝借した剣。それを今、返すというように。]
もとより、この身は許されるべきではないのです。
先に申し上げたとおり、私は、簒奪者らがリュゲナーを恣にするのに手を貸しました。
その罪は償わねばなりません。
[ 今すぐ手討ちにしろとは言わぬ。
だが、断罪は必要なのだと、為政者の義務を突きつけた。*]
[ 二人の間だけの呼び方で呼ぶ、その眼差しに抱擁される。>>138
触れられることを拒絶した気持ちをも汲んでもらえたと感じて、再び涙が目を洗った。
以前のように、屈託なく笑いあい、支え合えたらどけだけいいか。
けれど、10年の積み重ねが枷になる。]
──…、 こうしてお目にかかれただけでも望外の幸せです。
[ 声を詰まらせた。]
[ 王子の手が折れた剣を抜く。
最後の戦いのとき、自分は王子の代わりに国王陛下を守るべくそれを振るった。
陛下亡き後、その墓前で剣を折ったのは自分だ。
簒奪者たちは、ヴィンセントが王室への忠義を捨てた証とみなしたが、違う。
彼らの帷幕にあっても、国民を傷つける剣は持たないという意思表示だった。
今、その剣を向けられ、王子の声を聞く。]
── 殿下…!
[ 彼のために死ぬことを認められる以上の赦しがあろうか。]
御意。
[ 短くも、揺るぎない声で答える。
この言葉を最後に口にしてから、10年が過ぎていた。]
── 我が主。 私のすべては御身のものです。
[ 涙の滴が折れた剣に滴る。
指をかざし、滑らせれば、クレステッドの天命石にも似た透き通る水刃が形を作る。
余人には折れた剣と見えても、互いの目には元の鋭利さを取り戻したことを伝えるよう。]
[ 涙を拭った後、改めて王子を見る。
色調は戻らないものの、視界の歪みとハレーションはなくなっていた。
呪いがとけたような──不思議な気分だ。
捻れがただされたのだろうか。]
よくお戻りになられました。
[ 記憶にある少年から青年へと成長した姿に、変わらない額の古傷に、ようやく追いつく。
彼の方はこの10年、どんな縁を授かり、暮らしてきたのだろう。
直截に聞くのは失礼と思いながらも、気にはかかっている。*]
勿体ないお言葉です。
[ "私の半身"と言われて、肌が火照る。
この体はいつ捨てても惜しくないけれど、魂は彼の傍らに従う者に相応しくあろうと心に刻んだ。
柄頭に結ばれた手作りの細工物に目を瞬かせる。
素朴で親しみやすい中にも、精悍さが感じられる狼。
彼に通じるところがあって可愛い、と言ったら僭越だろうか。]
ありがとうございます。
我が君の御印として、頼りにいたします。
[ 敬愛をこめて、そっと指先でつつく。]
[ そうして、クレステッドが簡潔に語る過去と未来を、息を詰めるようにして聞いた。
迷いの森の主というのは、おそらく仙魔の類であろう。
王子の消息が杳として知れなかったのも道理だ。
世の穢土から離れたところで守り育まれ、機が熟すのを待って地に戻された──
帰還する英雄には、そういった逸話が相応しい。
畏みて頷く。]
では、神魔を訪ねて参りましょう。
…その前に、手当てをさせていただけますか?
[ 交戦した際にはなかった、彼の手首の布を指して提案する。
乳兄弟を殺すまいとして、武器を取り落とすほどのダメージを受けたのは間違いない。]
私が乗ってきた馬には多少の着替えや食糧、薬が積んであります。
遠くへ行っていなければ、呼べるでしょう。
[ 短く口笛を吹く。
ほどなく、枯れ草を踏み分けて芦毛の馬がやって来た。*]
[ 用意がいい、と言われて控えめに頷いておく。>>162
神魔の領域に侵入しようというのは、自分の考えではない。
別な者が計画して、自分は同伴させられただけだが、結局、森に入れたのは自分だけだった。
それこそ、神魔の計らいであろう。
馬の首筋を撫でてやっているクレステッドを見守る。
馬も寛いでいるようだ。]
賢い馬です。
これも縁と思し召せ。
[ この先は、クレステッドが乗ってゆくようにと勧めた。]
[ 鞍袋から荷物を取り出し、軟膏と包帯で手当てを施す。
そうこうしているところに、菫青石の風が声を運んできた。>>5 ]
対なる花──、
[ 天から降臨したそれを取り出してみれば、あの時は溶けて残骸になったものが、
クレステッドと邂逅したことによって、彼の天命石部分が再結晶して本来の姿を取り戻している。
見事なまでに、ふたつでひとつ。
花を見て心慰められるのも久しぶりだ。*]
狼に乗っていたのですか?!
[ クレステッドが平然と語る経験に驚く。>>177
随分と野性味のある暮らしだったらしい。
とはいえ、彼の着ているものは上質だったし、獣臭さは感じないから、実態は狼の姿をまとった半妖などかもしれない。
それはそれで問題がある気もしたが、彼の伸びやかな素直さを目の当たりにすれば、悪いことではないと感じられた。
人の世の穢れを帯びることのない御子だ。]
[ 次なる試練を告げる声に、ふと考え込む。
あと幾たび、戦いがあるのか。
どんな願いをもつ者が、神魔の領域へ踏み入れることを認められたのだろう?
すでに願いは半分叶ったようなもの、とクレステッドは告げた。
過分だと畏れ入るものの、彼が喜んでくれるのは何より嬉しい。]
私の当初の願いはと言えば、半分でも叶ってしまったら危ないものでした。
主上に救われて、私の願いは根底から覆りました。
[ 今は、新しい主を支えることこそが生きるすべてだ。]
[ 脱がされていた服に腕を通しがてら、晒しを巻いて、腕と脇腹の傷が広がらないようにしておく。
クレステッドの処置の甲斐あって、出血はもう止まっていた。]
はい、何処までも共に参ります。
[ 颯爽と馬に跨ったクレステッドの露払いをするように、馬の先を歩む。
風に舞う蝶にそれとなく導かれ、また遠く立ち上る炊事の煙を目にして、湖畔へと近づいてゆく。*]
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