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フィオンは、船長 ローゼンハイム を投票先に選びました。
[ 主の警護は最優先にしても、悪事を見過ごすことのできない性格の騎士は、女性の悲鳴があがる度に神経をとがらせたが、女性たちは大概、楽しそうだった。いささか困惑する。
中には酔漢に言い寄られて眉をひそめる女性もいたが、すかさずスタッフが間に入っていた。安心だ。]
この宴の主催者は、うまく統括できていますね。
[ 自分たちの容姿がいくつかの場所で引き合いにだされていることには気づいていない。]
[ 名刺を出してきた男に、主は早くも興味を失ったようだった。
それと察した騎士は距離を詰める。
自分の時間は終わったのだとまだ気づかない相手の前で、主は掌を叩き合わせた。
その優雅な響きに周囲は水をうったように静まり返る。
それはなんと心地よい一瞬か。]
[ けれども、自己を肥大化させた男はなおも我を通そうと画策する。 ]
お引き取りください。
[ 騒音を遮るように、主の前へ出て告げた。
だが、それ幸いと男は矛先を変え、彼の抱える若く華麗な団員に加わるよう持ちかけてくる。]
ご遠慮申し上げます。
[ 申し出を吟味するまでもなかった。
この相手は自分が主にどれだけ忠誠を誓っているか、それすらもわからぬのだから。]
退きなさい。
[ 三度目の拒絶は、丁重なれど警告の色を含む。]
[ その声がいいとか捲したてるのを止めない男に、主は薄い笑みを掃く。
頭を冷やすよう手を貸してあげなさい、との言葉に、騎士は顎を引いた。]
この者に安息を。
[ そっと肩に手を置けば、男は不意にへなへなと崩折れて、隣のビーチチェアに倒れこんだ。
それを見届け、 主の前に膝をつく。]
お許しいただけますか。
[ どうか機嫌を直してください、と希う。*]
[ 反語による赦しとともに、指の関節を羽毛のような感触が掠める。
千の言葉よりも雄弁な慈しみに胸を震わせる。
何度示されても、この喜びが色褪せることはない。
そのまま手を取られ、引き寄せられるとみるや、横ざまに抱えあげられた。
決して筋肉質に見えずとも、淑女の装いをしていても、その膂力は揺るぎなかった。]
[ さすがに、二人の関係で、これはめったにある行為ではなかった。
周囲にさざ波がたつ。 ]
大丈夫です。
[ 怪我などはしていない、という意味で告げ、おろしてくれるのを待ったが、主は抱擁を緩めようとはしなかった。
その腕は捕らえたものを離さない狩人のそれである。
このままで、と囁かれれば、主が抱きやすいように余計な力を抜いて身体を預けた。
いざという時にはこの身をもって盾にもなろう。
それまでは──この密接な体験を全身全霊で味わうべきだ。*]
[ 馬に跨るのとも違う、横抱きに運ばれてゆく感覚は新鮮だ。
顔がずっと近くにあるのもまた嬉しい。]
触れてよろしいか。
[ 囁いて指を滑らせ、輪郭に触れる。]
[ やがて辿り着いたのは船の突端。
人いきれから逃れた主は、水平線を独り占めできることの場所が気に入ったようだった。
普段暮らす城からは望めない眺めでもあったからだろう。
抱擁をとかれて身体を離し、歩いてゆく背中を見守る。
そうしているだけで愛しかった。
ごらん、と誘われてその傍らに寄り添う。
手すりから乗り出す主の腰に手を添えて、肩越しに覗き込んだ。]
あなたの目の中にまで、海が満ちておりますね。
[ 大海原を渡ってきた風を一番に受ける場所で、二人は比翼連理の鳥となる。*]
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