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雷華の族長 ガートルートは、聖蓮の花神 マレンマ を投票先に選びました。
[御意に。
短く返る返事と、厳かに響く誓いの言葉。
緋色のは満足げに頷いた。
今はこれでいい。
男は知っている。この青年が持っているのは、見た目通りの静謐さだけではない。
彼が戦場で剣を振るうさまを。その脚で駆け抜けるさまを。
男は知っている。
稲妻のように疾い、牙のように鋭い、その姿はまるで────。]
俺はお前の脚が動かんのを知っている。それでもお前は迷わなかった。
闘争を諦め逃げる選択をしなかった。その
[緋色の獣が高らかに謂う。
一面の赤い花が、風もないのに称賛するように一斉に揺らめいた。
伸ばされた男の人差し指が、青年の左胸に触れる。胸骨の奥に隠された、熱を生む臓器を示すように。
そうして、『ここに』、と。形のいい唇が、音を刻む。]
『お前自身が戦う理由』はあるか?
ここにはお前を妨げる者も、お前が護らねばならんものも、ひとつも無い。
それでもお前の中に、戦う理由は、────"死ねない理由は、あるか?"
[ざわ、と。
空気が嘶く。木々が、大地が、怯えるような気迫。爛と輝く一対の琥珀は、目の前の青銀を捕らえて離さない。
いつの間にか戻った二匹の狼が、二人を囲んで恭しく首を垂れる。
腰に帯びた刀を一尺ほど引き抜いた男は、右手でその刃を握った。
割かれた皮膚と肉から溢れたものが、刀身を伝って地へと吸い込まれる。赤い、雫。]
無いのなら、
[血の玉のを結ぶ手のひらの傷を、突き付けるように眼前へ。
落ちた雫から新たな雷花が咲き乱れる。揺らめく戦火に似た、その花の中で。]
ルートヴィヒ・デンプヴォルフ。
この手を取れ、名を棄てよ。
そうすれば、
[人の身たる青年を、超越者たる者達との戦へと誘う緋色の獣は。
傲岸に、凄絶に笑って見せた。*]
うむ、良い返事だ。
……"
お前には要らぬ名だ。これは
[破顔した男が、傷を合わせた掌を握る。
絡んだ指の間から光が溢れ出し、目映い輝きが向かい合う二人を包んでいく。
男の言葉に呼応したように、手首に伝った赤い雫が浮き上がり、宙に文字を描いた。
"Dempwolff"と綴ったそれを、空いた左手で握り潰して。砕けた文字は地に落ち、新たな花を咲かす。緋色の草原は、今や二人の放つ青銀と琥珀の光に照らされていた。]
我が名、雷華・ガートルート・ミョルニルの元に宣言しよう。
お前は自由だ。
最早お前を繋ぐ軛は無い。その脚で何処にでも行ける。
我が愛しき眷属、
[ちょっとビリっとするぞ?
内緒話をするように密やかに笑って付け加えた。
絡む指に力が篭る。血の盟約。傷口から混じり合う血が、力を、知恵を、戦う術を、そして──その『
青年の中に、細胞に刻みつけていく。
なおも溢れる血液は、黒い塵となって青年の手に纏い付き、いつしか黒い手袋へ姿を変えた。
二匹の狼の遠吠えが、長く長く尾を引いて浮島に木霊する。
やがて、草原に溢れた光が失せた頃。
そこには四君子が一華たる緋色の獣と。雷華の"従華"と成った、銀の髪の青年が立ち尽くしていた。*]
《
それがお前の力か、すごいな。
[その心情が滲むような感謝>>49に酷く満足そうに頷いた男は、その左手に現れた黒い手袋と青年が喚び出した雷獣>>51に目を瞬いて、やがて素直な称賛を贈った。
こちらを見上げる青年の視線>>52に込められるものがこそばゆい。
でれ、と相好を崩しながらも、尤もらしくウンウン頷いておいた。]
従華の力は主によりまちまちらしい。
人間の肉は脆いから、根本的な身体強化はまあ勿論だろうが。
能力は主の劣化版だったり、属性が同じでも顕現の仕方が違ったりな。
[言いながら青年の背を軽く押し、雷神トールの印が織り込まれた織布で仕切られた建物の入り口へと促してやる。]
俺はあんな風に雷獣を生み出したりは出来ん。お前の器用さゆえかもなあ。
誇っていいぞ、ルート。お前は
[我らが父の末児の誕生だ。
言って機嫌良い笑顔で布の下がった入り口を潜──ろうとして、首だけ回して振り返った。
アイスブルーの瞳のシヴが、じっとこちらを見上げている。]
『 "策を巡らす" は、にがてじゃ なかった ? 』
[ちょっと呆れたような声に、男はにんまりと笑みを返えす。
従華となった青年には、ハイイロオオカミの音無き声も聞こえていたかもしれない。しかしその意味を問われたところで、この男にしては珍しくはぐらかしただろうが。]
まあ、そう言うな。
──ルート、色々疑問もあるだろ?
中で少し休んで、それから戦舞台へ行ってみよう。
あと数刻もしたら、気の早い連中が戦を始めてしまうかもしれんしな。
[青年の背を押す形で、二人と二匹の影は円形の建物の中へ消えた。
そうして再び同じ入り口から一同が姿を見せるたのは、ちょうど蒼月とナネッテが戦舞台の上空に現れた頃>>16>>29──氷華と蓮魔の戦いが幕を開けた頃だった。**]
─ 少し前・雷華の領域/浮島の邸宅 ─
あ"ーーーー疲れた。
もはや息するだけでも疲弊するわー…
[入り口に下げられた織布を潜ったガートルートが、こきこきと首を鳴らしながら長い溜息を吐いた。
大して働いてもいないのに不平を漏らすのは、いつもの事だと従華たる青年も直ぐに慣れるだろう。
入って最初の部屋からふたつ奥まで青年を案内する。
石造りの円形の建物は中に入ると思いの外広く、隣合う建物同士は様々な模様の入った織布で仕切られ、繋がっている。
扉が据え付けられた部屋が見当たらないのは、獣の身であっても行き来が可能なようにとの配慮であった。]
ルート、適当に座っててくれ…あっ、違う、適当じゃなくここだ、ルートの席はここ!
[茶でも飲もうかと隣室(どうやら廚らしい)に半身を突っ込んでいた男は、碗をふたつ引っ掴んで慌てて戻ってきた。
この部屋の足元には、床材の石の温度が伝わらないよう厚めの絨毯が敷き詰められ、ラグやクッションらしきものが並んでいる。
中央に蜂巣を模した形の硝子の卓があり、上には茶器と、小さな壺と、陶器が幾つか。壁に埋め込まれた暖炉が据え付けられており、向かい側の壁際は調度品が置かれている。
男が示したのは、暖炉側の床。
ふわふわと毛足の長い、灰味がかった白いラグが幾つも折り重なって敷かれている。その上に、質の違うファー素材のクッションが三つ、転がっていた。
たしたしとラグの上を叩いて、見るからにわくわくした顔で青年の着席を待つ。座ったら座ったで、目を輝かせて。]
どうだ?
座り心地は悪くないか?
これな、ヤクの毛皮で作ったんだ。今日の為に前以て準備しておいたんだぞ?
ルートは椅子のが慣れてるだろうから、足とか尻とか痛くなったらかわいそうだからな!
[言って床の上にどっかりと腰を下ろした男の顔には、これから戦に赴く緊張感など露ほどもない。
椀を卓に据えて、鼻歌交じりに芳ばしい香りの茶を椀へ注いでいた。*]
─ 戦舞台 ─
[男と青年が中央の浮島に現れた頃には、既に氷華と蓮魔の戦いが始まっていた。
氷雪と水と陽光舞う戦場に、未だ幼さの残る声の怒号。琥珀の双眸をすうと細め注視すれば、主を王にせんと舞い踊るのは、年端もいかぬ少年と少女だった。]
どっちも子供じゃねえか。
趣味の悪い。
[多少苛立たし気に呟くと、あちらは、と傍らの青年から声。>>59
彼の視線を追えば、戦う四人のみならず、遥か上空、桜花に支えられ宙に浮く二人の姿。]
ああ。
今、彼処で仕合っているのが氷華と蓮魔。
氷華は見ての通り氷雪を操る。当代は初参戦らしいが、ひとつ前の女帝は王になった事もある。
蓮魔…は、然程面識無えんだが、前回の選にも出てるからな。蓮と水を操ると聞く。
賑々しい花神サマだと思ってたんだがな、なかなかどうして、苛烈なようだ。
[くっくっと低く喉を鳴らして。
笑う獣の瞳には、抑えきれぬ衝動が浮かぶ。争う者達の意志が、その熱が高ければ高いほど、戦の申し子たるこの獣の本能はあっさりと煽られていく。]
そして────、
[そう続けた男の視線が、遥か高みから此方を見下ろすその瞳>>65を射抜いた。
傍らに座す旧知の魔神は、果たして気付いただろうか。
頭が高ぇな。小さく漏れる声。長い犬歯を、惜しげも無く晒して。]
あそこで高みの見物してんのが、闇桜の魔。
俺たちの相手さ。
[獰猛に笑ったのだった。*]
─ 戦舞台・戦闘領域の外 ─
[不意に、傍の青年の気配に僅かな変化。
ちらりと目だけで盗み見ると、変化の乏しい口元に刷いたのは、確かに笑み。>>60
その表情に、眼差しに。
自然、男の笑みが深くなる。ああ、これだから堪らない。]
ンン?
ああ、ルートは来た時に会ってるのか。
…そうだな。どういう術かは分からんが。とうやら
[青年が口にした異変に>>61同意で答え、眉間に皺を刻む。
ああいうのは、あんまり好きじゃねえなァ。詰まらなそうな呟きを聞いてか聞かずか。己は幸いであったと、同じようにその薄い唇が漏らした音>>62に、隣の獣は少し眉を上げ。
それから、大きな手が彼の顎を掬い上げた。近付けた顔は、鼻先が、吐息が触れ合う程の距離。買い被りさ。低い声が囁く。]
…ルート。ルートヴィヒ。
お前はこの譲葉でいちばんタチの悪い男に拾われたんだ。──忘れるなよ?
[とん、と。
指先が胸骨を叩く。心臓の上を。
青年の返事を待たず身体を離した緋色の獣は、上空の二人を見遣り。
気丈にも睨み返してくるナネッテ>>68に喜色を隠さず、あの暇人、オネエちゃん連れて降りてこねえかなーなどと独り言に興じるのであった。*]
─ 少し前・雷華の領域/浮島の邸宅 ─
[主の零す、気だるげな声に、密かに笑みを零す。
百獣の王たる獣とて、腹がいっぱいであれば日がな一日眠って過ごしたりもするらしい。
この主も、飢えにあてられてない時はそんな調子なのだろうか。
まだ主の事を良く知らぬ男は、そんなことを推測してみたりする。
連れて行かれるまま、主の示す部屋へとたどり着くと、ぐるりと辺りを見回した。
男にとっては、やや珍しい光景がそこには広がる。]
…は。
[示された場所は、他と比べて随分と居心地がよくしつらえてあるようだ。
本来は誰が座る場所なのだろう、と内心で若干不安に思いつつも、誘われるままそちらへと腰を下ろす。
ふと振り返れば、何やら子供のような表情をした主の眼差しと出会った。]
え…あぁ。
私の…為に。
[予想外の言葉に、やや戸惑いつつ。
どれだけ甘やかされているのか、と眩暈がしそうになる。
…ダメだ。
眩暈なんぞしたら、この主はもっと騒ぎそうだ、と若干何かを学習しつつ。]
とても…心地の良い場所です。
[ありがとうございます、と、素直に礼を述べた。]
こういった建物は、新鮮に感じられます。
[二頭の狼が、後からついてきて部屋へと顔を出すと、仕切りの意味もおのずと知れる。
本当に、獣と共に生きるのが常らしい。
建物自体はもちろん、調度品も材質に至るまで物珍しく感じられる男は、どうにもそわそわしていた。
居心地が悪いのではない。
元々、探究心が強い方なのである。
知らぬ文化に触れ、やや高揚しているらしかった。
そんなことをしている間に、辺りに良い香りが漂えば、主の手ずから淹れらえた茶に気付く。]
あぁ、申し訳ありません…
[恐縮しながらも、差し出されたそれを受け取って。
その瞬間、鼻孔をくすぐった香りに、表情が緩んだことには気づかれただろう。*]
来たか、桜の。
[抑えた声が魔神の動向を告げる。>>81
一段と深くなった笑みで、緋色の獣は振り向いた。
上空の足場から降りてきた馴染みの男>>83は、ひらり花弁を撒いて地へ降り立つ。
いつも通り、軽い調子の声。
しかし太刀のように鋭さの紺青が、真直ぐ琥珀を射抜いてくる。]
ふむ。
少しはマシなツラになったな、暇人。
[にんまりと笑うその口元には犬歯。
傍に立つ女性へ視線を移すと、少しだけ表情から獰猛さが消えた。]
調子はどうだ?
退屈は拭えそうかね、その様子だと。
[揶揄する調子で言ってやると、果たして桜の魔神は如何に答えたか。*]
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