情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
[吸血鬼の常識も「バルシュミーデ」の名も知らない男は、アルビンの話をすんなりと受け止める。]
やっぱし襲ってくる参加者が出よったか。
[顎に手をやって唸ったが。
すぐに朗らかな笑みを取り戻し、アルビンに手を差し出す。]
せめて道理の分かるもんだけでも、力をあわせていきたいもんじゃ。
城から出たらええちゅうことなら、そいまで協力せんか?
[男の掌は大きく、長の旅暮らしのお陰で、吸血鬼であっても固くざらついている。
アルビンの白い手と比べれば、浅黒く見えただろう。]
おいも特別な力は何もなかよ。
役に立つとか立たんとかそげぇなことはどうでんよか。
仲間じゃけえ。
[アルビンの手をしっかと握り返す。
笑顔にほんの少し差した翳りが気になったが、ならばと余計に朗らかに笑った。]
何かあってもそん時はそん時じゃ。
どうするかはおいが決めるけえ、今からそげえな心配はせんでよか。
[もう片方の手で、ぽんぽんと肩を叩く。]
? 恥ずかしがらんでええよ。
[まさか人間であった頃は年上だったなどとは知らないから、何故アルビンが慌てるのか見当もつかず、ニコニコと笑っていた。
ふと、後ろから何かが近付く気配を感じて]
ん?犬?
[臭いや音で気づくより向こうの走ってくる速度の方が速い。
青いもふ毛と四足のシルエットを見て、犬だと感じたのだけれど。
それが、何故か全力で尾を振ってやって来たと思ったら、突然向きを変えてアルビンに飛びかかった。]
なん、
こンの、離れえ!!
[ジェフロイには、それが先ほど別れたばかりのセルウィンが変化したものだとは分からない。
組み付いて、とにかく抉じ開けねば、と青い狼の顎に手をかける。
剥き出した歯が牙鳴りし、腕の筋肉がぐっと盛り上がった。]
[格闘の末に狼を引き剥がすと、アルビンを助け起こそうとする。]
今手当するけえ、しっかりせえ!
[吸血鬼には応急手当よりも血を与えたほうが良いとは、この人間らしさを保ったままの吸血鬼は気付かない。 ]
[思ったよりもアルビンがしっかりしていてひと安心したが、油断はできないと、自分のシャツの袖を裂いてアルビンの喉に巻きつけようとした。]
分かった。取り敢えず、これで押さえとき。
[ふと見ると、狼は少し離れたところでじっとこっちを見ていた。
引き剥がそうと無我夢中だった時には気付かなかったが、身体は意外に小さめだった。
大人しく襲ってこない様子が気になったが、油断はできない。]
そうじゃな。
部屋に入ったほうが安心じゃろな。
[アルビンに肩を貸し、扉へ移動しようと一歩足を前に出したところで]
― 落とし穴の中 ―
[人間(いや吸血鬼だが)驚きすぎると、声も出ない。
ジェフロイはまさにそんな状態に陥っていた。
当然ながら、本人はそんなことを考える余裕すらなかったけれど。
驚愕に顔を強張らせ、落下すること10(10x1)秒。
「ヤバイ」と思考がやっと事態に追いついて6(6x1)秒。まだ落ちる。
「あれっそろそろどっかに落ちるんじゃね?てか長くね?」と不審に思い始めて6(6x1)秒。
「いくら何でも長すぎる」と気付いて、この頃から「なんでじゃあああああ!!」などと悲鳴を上げ始める。
恐る恐る下を覗いてみて、ぼんやり底が見えたのに何となく安堵したのが1(6x1)秒。
「上手く着地しせんと」となどと取り留めもないことを考えていたら、キラッと底に光る金属光沢を見てぎょっとして1(3x1)秒。
床にずらっと杭が並んでいると気が付いて、わたわたともがいて何とか空中で姿勢を入れ替え2(6x1)秒。]
うおおおおおおおおおおおおお!!
どっせえええええええええええい!!!!!
[杭の先端の尖り具合まで視認できるほど接近していた。
壁面に手足を突っ張り、精一杯制動を掛けて。
長い旅だった。]
[直前で体を捻り、何とか刺さらないように避けたつもりだったが。
先端が肉に食い込む嫌な音がする。]
……ッ
[痛みは後から襲ってきた。
脇腹と右肩と左の太腿が灼けつくようだ。
脂汗を流しながらそっと姿勢を変えて、杭と杭の隙間にそろそろと降りた。]
[落とし穴の底の壁には、横穴が開いていた。
何とかそこから這い出ると、小さな石造りの小部屋に出た。
何もない殺風景なところで、出入口と思しい鉄の扉が一つあるきりだった。]
ハ、ハ。
酷い目にあったぜよ……。
[ごろりと寝返りをうち、大の字に横たわった。]
― 落とし穴の小部屋 ―
[――ふっと意識が遠のきかけて、これではいけないと起き上がろうと踏ん張った。
腹筋に力を入れると脇腹に激痛が走る。
それを庇おうとすると、肩と足にも電撃のように苦痛が見舞った。
それでも、さすが吸血鬼の回復力と言うべきか、分厚い筋肉を貫いた傷が急速に塞がり始めていた。
ようよう半身を起こし、ため息をつく。]
チェーザルみたく、壁でん、歩けたら良かったんじゃろうけんどな。
[自嘲気味に呟いた。]
よいせっと。
[気合を入れて立ち上がると、何とか立てた。
まだ少し痛みはあるが、殆ど移動に支障がない程度には回復したようだ。
ふと下を見ると服は破れて血まみれ、床には何かを引き摺ったような血の跡が凄まじい。(実際に血だるまで這っていったのだが)
殺人事件の犯行現場のようだ。
むう、と唸った。
随分と血を流してしまったようだ。]
凄い有り様じゃのう……
[だが旅をしていれば、不測の事態はいくらでもあった。]
まあ生きとりゃあええわ。
[まだ少し足を引きながら、唯一のまともな出口である鉄の扉に向かった。]
― 廊下 ―
[扉の外は当たり前の廊下だった。
地下かも知れないが、窓が見当たらないのでどこの階は分からない。随分と下まで落下した気がしたのだが。]
あ、忘れとった。
[ポケットの中を探ると、ガラスの小瓶はちゃんと割れずにそこにあった。
金属の矢は見当たらなかったが、落とし穴の小部屋には見当たらなかったので、多分犬と格闘した時に落としたのだろう。
武器になるもんを探した方がええかもなと、頭の隅にメモして歩き出した。]
[最初はそろそろと時間を掛けて、壁や床がヘンな動きをしないかいちいち確かめながら移動していたのだけれど、何もない(罠探査など素人にできる筈もない)のでそのうちだんだん飽きて普通にゆっくり歩き始めた。]
そいや、ローズマリーやチェーザルはどうしとるんかのう。
セルウィンやアルビンは無事じゃろか。
[ツェーザルの名を間違えて覚えているのはご愛嬌として。
特に壁の穴に呑まれて消えたセルウィンと、犬に噛まれて怪我をしていたアルビンのことは気になっていた。
落ち着きのないセルウィンが同じような罠で怪我していなければよいのだが。]
アルビンを攻撃したもんがおるちゅうことは、他にも参加者がおるんじゃろうけんど。
そいつもおんなじように罠にはまったり、何かに襲われたりしちゅうがやろか。
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新