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御霊の声 シェイ は、天使 エレオノーレ と 魔物? ユーリエ との間に運命の絆を結んだ。
損なわれる 喪われる
天界の回廊に実体化しようとしていたエーテル体は、
濃密に天界を満たさんとした霧に追われ
逃れ
逃れて
怖い、という感情は正確には、存在しない
ただ
漂うばかりだったままならば霧に呑み込まれただろうその存在を
天の門の外へまで逃れさせた
風が吹く
天界には濃密にあったエーテルが、外界では急激に薄く
実体を作れなくなる前に、と
灯った薄緑の燐光は小さな流星へと姿を変えた
それは、つまり制御を失って落下するということ**
―人間界―
泉のほとり
水は冷たく透明だが、そこには湿った土の匂い、獣の息遣い、そして鳥の囀りが満ちていた
地の上
倒れているのは、男とも女ともつかない幼い姿の人
裾の長いトゥニカも、肌の色薄い素足も、森の奥にあるにしては汚れ一つない
ひく、と睫毛が震え、澄んだ蒼の眸が覗く
涙の膜が張ったそれを僅かに動かして
細く息を吐いた
伏した地面の上、僅かに首を持ち上げて
不思議そうに瞬く
体が浮かない
翅は
『……、』
腕の二本で地面に手をついて、体を起こす
掌に感じるリアルな感触
他の腕も動かそうとして、足りないことに気付いた
代わりに、ぎこちなく動いて立ち上がろうとする二本の足
ふらり、ゆらり
どうにか立ち上がった直後にバランスを崩してへたり込んだ
人に似た姿
人と見紛う姿で、
天を仰ぐ
暖かな木漏れ日
──あそこから 落ちて来た
帰らなければ と思う
心などあってなきがごとき御霊の憑代の
初めての明確な意志*
生まれ落ちたばかりの獣の仔のよう
力の入らない脚を震わせて
何度か目、漸く二本の脚できちんと立ち上がれば
高くなった視界 辺りを見回す
躊躇いながら歩き出した
神の気配 天の力の 少しでも強く感じられる方へ
地面を踏みしめるのには躊躇いがあった
無数の生ける者たち
足元を確かめながら そろり、そろり*
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