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[深い地下から汲み上げられた水が灼ける体を包み、傷に滲みいって、
それでも、痛みは散らずに神経を苛んだ。
意識を失えば、好き放題される。多分。]
か… は、
[かろうじて上体を起こし、水場の縁に立った影に視線を投げる。]
[そこに認めるのは城主の姿。
彼もまた血を流し、満身創痍だ。 それでも――]
来て…、 くれた、
[身体の芯に力が戻る。]
[ユーリエがこちらを見ている。
その戸惑いが伝わってくる。]
君を――
[今は無理でも、その聖なる枷を壊したいと、願う。**]
[ギィの口元に浮かぶ微笑に顔を撫でられた──あるいは舐められたような錯覚を受ける。
伸ばされた手に指を絡めれば、重く濡れた身体は抱き寄せられて腕の中へ。
筋の通った鼻梁が首筋に触れていったかと思うと、赤い髪が傷ついた肩を覆った。
顔を伏せたギィの唇が糜爛した裂け目に押し当てられる。]
や… 、 ダメ だ
──… よせ。
[上ずった制止の声は喘ぎ震える。]
[聖女の血を吸い出してくれと口にしたのは自分だったが。]
“分身”なら… と、
[それでいて、本心ではギィ本人が来てくれることを渇望していたのだ。
ならば、求めていたのは──]
[わずかの間に毒素を取り除かれてゆけば身体が楽になる。
その過程はただ爽快なだけでなく──]
ん、は …ぅ
[ギィの背を掴んだ指に力が籠る。]
[毒を吸い出された後は、滋養の糧を与えられた。
傷を癒すのにどうにかして調達しなければ、と思っていたもの。
しかもヴィンセントにごく近い血のそれは素晴らしく馴染み、そのまま身体を巡りはじめた。]
あなたも、 無事ではないのに──
[熱に潤む眼差しで城主を見上げる。
この救い主は、自らの身を犠牲にして、縋る者を救った。]
――― ああ。それも楽しみだ。
なんなら、今すぐにでも?
[氷の龍、だなんて言葉に、体を震わせて
直接の声を耳元に吹きかける。]
ならば、 責任をとらねばな。
[言いがかりに因縁をつけるレベルで応え、またひとつ絆を結ぶ。]
[騎士と聖女がギィに対して名乗り、戦闘の続行の意図を明らかにする。
抱擁を解いたギィもまた、応じる姿勢。]
かの「騎士」の右手は風をまとう。
油断はするな。
[聖女の血については、自身の身で味わったろうから忠告を省いた。]
[そうこうするうちにも、騒ぎを聞きつけたか、クルースニクの増援らしき者が駆けつけてくる気配。]
──ここが戦場だったのは、彼らにとって神の加護が足りなかったとみえる。
[源泉掛け流しのこの水浴場は、自分にとっては常に新しい氷の材料が届けられる場所であるということ。]
私が、あなたの糧になる者を狩り、捧げよう。
[新たな侵入者は、バルコニーで対戦したのとはまた別の顔ぶれで、ギィがいう「他は…放り投げてきた」が事実ならば、賊徒はほとんど減っていないことになる。
が──]
──ああ、
[ギィが気づいて名を告げると同時、ヴィンセントも成長した相手を
おまえの方から、 ここへ?
[さざ波立つ水は、どちらの陣営に対しても不穏な動きを加速する。
常と同じく城主の傍らに控える
[闇の力が脈動する最中、聖女の力を集めてソマリが奈落への落とし穴を穿ち、
癒す者の弾丸もまた驟雨となって降り注ぐ。]
…──!
[予想外の展開ではあったが、凍てつく力を操れば、空気中の水分が
不都合な真実を覆い隠すよう。
そして自らは茨の
[茨の柔らかな蔓がアデルを引き寄せ、籠の中へ運ぶ。
それを抱きとめて、衝撃をころした。]
怖がることはないよ。 君も知っているはずだ。
[籠がどこかに落ち着けば、少年の身体を横抱きにしたまま立ち上がり、兄の手に託す。]
[頼む、との一言ですべてを了承して、ヴィンセントは一礼した。]
アデル、 兄を頼むよ。
[アデルはギィの下にあればよい。
そして、ギィには回復が必要だ。
自分はギィのために”糧”を得る所存である。
ギィが、助けを呼ばれて放り出してきたというバルコニー組、そのいずれかを標的としようと考えていた。]
アデル、君ならわかってくれると信じている。
Iure suo uti nemo cogitur.
(何人も、自己の権利を行使することを強制されない。)
[囁き告げたのは、教会の公用語であると同時に法曹界でも用いられる慣習の古語。]
― 廊下 ―
[秩序の回復、そして、血を吸えそうな相手を探して城内を歩む。
途中、自分の恰好に気づき、影に命じて替えの服と、幅広の剣を持ってこさせた。
そろそろこちらの手の内も知られている頃。
無手にこだわる必要もあるまい。]
― 廊下 ―
[秩序の回復のため、そして、血を吸えそうな相手を探して城内を歩む。
途中、自分の恰好に気づき、影に命じて替えの服と、幅広の剣を持ってこさせ、装備した。
そろそろこちらの手の内も知られている頃。
無手にこだわる必要もあるまい。]
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