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ホントは夜陰に乗じて、と言いたいところなんだけど、オクタヴィアスたちはこのまま進軍するつもりだろうし、時間軸に齟齬が出ないように明記しないでおくよ。
きっと長い一日になるねー(経験則
[幸い、転落することなく崖の上まで到達してカークは水筒に残った水を呷る。
距離は短くとも、ひどく集中力と体力を使う移動だった。
なおかつ、この先は整備などされていない場所を抜けてゆくことになる。
前人未到といってもよかったが、かろうじて獣の踏み分け道はあった。
それを辿ってゆく。]
──…、
[見られている、と感じた。
人間ではあるまい。おそらく自分は狼たちのテリトリーに入ったのだ。]
[地面に指をついて泥で顔に一筋のラインを引く。]
邪魔しないでくれな。
俺は地の柱のとこに行く途中だ。
あんたらの生活圏に危害を加える気はないぜ。
ほらこのとおり、敬意を示す。
[仁義を通してから、先へ進む。
カークがまじないを口にするのは伊達や酔狂ではない。
森の、太古の力に接する経験をしていた。
それは、あの晩──]
[ディークが手を伸ばして何か言った──ような気がする。
その姿は、すぐに狼の向こうに隠されて見えなくなった。
煌めく月光。踊る影法師。
あるいはそれも幻影だったのか。
ただ──契約が結ばれたのだという印象だけが鮮やかに残っている。]
[夜明けに憔悴した様子で森から出てきたカークを見やり、おばばは「仕方のない子だ」と言ったが叱りはしなかった。
「おまえはあの子の影となる定めなんだろうよ」とも。]
影、ねえ。
[あるいは、おばばはすべてお見通しだったのかもしれない。]
──いいぜ。
[地の柱──古き力の贄となったディーク。
その枷を思えば。
父親とはまた違う経緯で、カークがディークを運命に戴くと決めた日だった。*]
[見張りに登用されているのは、狩りの腕を誇る森の民だろう。
すでに木立の中のカークの動きにも気づいているかもしれない。
誤射されないようにと、小石を投げて気を引いた後、ハンドサインを送る。]
俺だよ俺。
入りたいから、ロープ投げて寄越してくれ。
[ハンドサインに応えて手を振る姿に破顔する。]
おお、サシャじゃん。
今、そっち行くから歓迎してくれよなっ、と!
[投げてもらったロープを手繰って砦の内側に身を滑り込ませると、パンパンと埃を叩く。]
ありがとさん!
ハグしていい?
[怪我もなく元気だということは言わずと知れるだろう。]
[ハグは遠慮されたけど、そんなやりとりもいつものことで、サシャの健気な反応を楽しんでいたりする。
砦の状況について聞きたいことは、問う前にサシャが教えてくれた。以心伝心。
不明瞭な発音は聞き取りづらくもあるが、慣れればどうってことない。]
ああ、親父がいないのはわかってた。
いたら、門の前に仁王立ちして敵を待ち構えてるに違いないからな。
なるほど、州都か。
[受け応えながら、器用にも同じ内容を手話に通訳してゆく。
あまつさえ手話には私信を混ぜるのだ。
「サシャ、ほっぺにパン屑ついてるぞ。なーんて嘘」]
さてと──
ここは頼む。
俺は大将のとこに一報入れてくる。
ま、今回は影武者いらん気はするがね。
[サシャを揶揄いながらも、お仕事はきっちりとやる性分。]
[手の甲で頬を拭うサシャの仕草に内心でガッツポーズの快哉をしつつ、定番の呪いの言葉に萌え悶えるカークであった。
守りたい日常はこんなところにある。]
ん?
[呼び止められ、告げられたディークからの伝言に、ふむ、と頷いた。
キュベルドンの森に兵を伏せておくという意味か? と一瞬勘ぐったが、自分ならともかくサシャにそんな回りくどい言い方をする男ではあるまい。]
ふっふ、罠猟なら任せろ。
[弓の腕前でおまえらに勝てる気はしないからなと、自慢にもならないことを言って快諾する。
その日が来たら──きっと笑いあえる。
そう決めて。]
[チャールズが武人の答えを返すのを聞く。
武力行使との二段構えとはいえ、提案が本心であることは疑わない。
オクタヴィアスも然り、チャールズも然り。]
そうね、
俺は、博愛精神の温かさより、「力づくでもおまえが欲しい」って情熱的に口説かれる方が好みだな。
[極めて個人的な感想を呟く。]
― クリーク砦 ―
[視点と価値観の相違は埋められることなく、双方から攻撃開始の宣がなされた。
弓弦が鳴る。
オクタヴィアスとの対話を終えたチャールズが狙い撃ちされない遮蔽位置まで下がるのを待ち、その視界に入るよう会釈した。]
戻りました。
[どうやって、は、説明しないが、カークが神出鬼没なのは今に始まったことでもない。]
[敬礼こそしないものの、カークはチャールズの前では礼節を保った言葉遣いで話す。
あるいはそれは、政変がなければチャールズの周囲にたくさん配属されていただろう青年将校の幻影めいて。]
厳しい戦いになりますね。
[それは兵力差のことではなく。
同じ国に生まれた者同士が戦うという内乱の必定。]
けれど、守将があなたで心強いです。
[直接、聞いてはいないが、チャールズの方針>>362>>363はすでに把握している。
砦の守備兵たちは戦いの覚悟は固めつつも、死兵になってはいない。
指揮官が自分たちを生かしてくれると信じている目をしている。
ディークらが砦の防御に固執せず南方に打って出て、挟撃の形を阻止している余勢もあるのだろう。
互いに背を預けている信頼。
悲愴な戦ではない。]
積極的防御で敵兵力を削りながら耐えて、
或いは一度打って相手の目を晦ませてから、こう?
[昔、教わった剣の型>>0:288を真似つつ、この戦闘に応用できないか考えていると目線を交わす。]
そうそう、あちらに潜入してきたんで、報告を。
[指揮官の貴重な時間をとらせるわけにはいかないと思い出したように、不意に本題に飛ぶ。
相変わらず、どういった手段でかの説明はない。]
先遣隊を任されていたのは、マルコ・クロイツ。
元ウエストマールの正規兵で、除隊後はオクタヴィアスの参謀か教官といった立ち位置に収まっています。
兵からも評判はよいようで。
[ただウケを狙って戯れ歌を歌ったわけではない。
返って来たのは親近感のこもった笑いだった。あれは愛されている証拠だ。]
俺で勝てる自信ははっきり言ってないですけど、
勝負をつけないでいいというなら、それなりに踏ん張ってみせます。
[撤退時に時間稼ぎする者が必要なら自分を使ってくれていいと示しておく。
現在、この砦には白兵戦のできる隊長クラスの人間が足りないのは明らかだ。
放っといたら、チャールズが後詰めすることになってしまう。
──最初から、そのつもりかもしれないけど、という憶測は胸のうちに収めて出さず。]
俺は騎士の名誉なんてものは抱えてないから、
後がなくなったら、降参してでも生きますよ。ご安心を。
[
その男に任されるなら喜んで槍も振るおうと、軽薄な言葉とは裏腹に滾るのだ。]
…えーと、そん時は親父をヨロシク。
[いろんな意味で黙っちゃいないと思うし。]
装備の面で言えば、幸い、攻城兵器の類はないようです。
少なくとも、すぐ使える状態では確認していません。
[これから組み立てる可能性は否定できないが、荷駄の規模からしてそこまで大掛かりな攻城兵器は運んできていないと思う、と報告をあげた。*]
[オクタヴィアスへの宣戦布告を終えたチャールズの顔に苦悩はないように見えた。
かけられた短い労いの言葉に己の仕事が役に立っていることを知り、報われた気持ちだ。>>548
報告と提案も胸に納めてくれたらしい。
戦いの推移がどうなるかわからないが、選択肢が他にあることは悪くなかろうと思う。
戦いの先を語る声に、カークは頷いた。>>553]
いい見本を見せてくれる大人には事欠かないかと。
[チャールズが各所に送る手紙、取り寄せる書籍の類は余裕がある限り内容を盗み見ていた。>>532
政変を巡る事情には普通以上に精通しているつもりである。
ある日、封をされてない書状を渡されて、盗み読んでいることをチャールズが気づいていることに気づかされたんだっけ。]
[そんなことを思い出していたら、チャールズから「預かりもの」を手渡された。
容器の蓋を開けてみると、生薬の香りが練り込まれた軟膏だった。
大地の恵みと人の知恵が融合したものだ。]
エディのですね。
さっきから、ちょっと匂いがしてるな、と思ってたんです。
ありがたいな。
これ、手荒れにも効くんだそうで。
使わずに済んだら母さんにプレゼントしよう。
[これで安心して怪我ができると言うのは本末転倒だろうからと、素直でないようで素直な嬉しさを顔に出してポケットに納めた。]
[手紙といえばもうひとつ──
街の人間の養子になったエディから手紙が来ないと、サシャが拗ねていた時期があった。
当人はそんなことないと否定してるみたいだけれど、いやどう見てもご機嫌斜めだったでしょ。>>1:493
カークが折りに触れてサシャのことを見ていたから気づいたのかもしれない。そこは否定しない。
元気だと手紙が来れば安心するのだろうかと考え、なら、筆蹟を真似た偽の手紙を書いてサシャに届けてやろうかと筆をとった。
「故郷のことを、なかんずく君のことをよく思い出します」とか「サシャが笑っててくれたら僕も元気になります」とか書いてみたら、なんか妙に落ち着かなくて、貴重な高級紙を丸めて捨てたのだった。
後ろめたさとは違う燻り。]
(元気づけてやりてーだけじゃないのかもねえ。)
[結局、彼女の誕生日に、贈り主の書かれていない四葉のクローバーのカードを渡した思い出。]
[そんな思い出が蘇る今、サシャはこの最前線で戦っている。]
ご用命があれば呼んでください。
[そうでなければ勝手に動いているとチャールズに告げて、影に退く。]
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