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…逢いたかった! ルー──────ぐぇッ
[ゆるゆると潤んだ琥珀が喜色に輝き、足早に歩を進めた男の首は、しかし藪に引かれて思い切り仰け反った。
呻き声を上げて角の下あたりを抑える。痛い。禿げたかと思ったが、どうやら髪はちゃんとくっ付いている。
やや涙目で、再び少し離れた位置に立つ銀髪の男を見詰める。
天辺から爪先まで。そうして、先ほどと全く同じ軌道で頬と目尻が弛んだ。
しかし、髪を囚われたままの足は半歩下がる。]
あ──…、いや、うむ。
矢張り止めよう。教わっていない名を勝手に呼ぶのは狡いな?うん。
[崩れた相好で、およそ相手にすれば不審で仕方ないであろう独り言をもごもごと。それから、ごほん、とひとつ咳払いをした。]
その通り。
ほかの連中も見ただろ?…まあ、状況把握にそこで楽しそうに揉めてる二人は参考にならんかもしれんが。…まず、
[直ぐ近くで繰り広げられる、蒼月と金髪の女性の攻防>>0:194>>0:201にちらりと視線を向けてから。]
助けてくれ、取り敢えず。
[旧知である蒼月すら見たことの無いであろう締まりのない笑顔で、己の赤灼の髪を摘んで揺すって見せた。]*
──…ふ、ふ。
[ぽかん、と一瞬浮かんだ呆気に取られた表情>>11に、ちょっと気持ち悪い感じの笑い声を一人漏らした。]
『 ガァト、ちょっとほんとにきもちわるい 』
『 ガァト、まがおのれんしゅう、いみなかった 』
[足元に蹲った二匹のハイイロオオカミが、ちょっと呆れたような声を出す。
兄弟、そりゃないぜ。声に出さずに唇を尖らした。
だって、仕方が無い。この瞬間を待ち望んでいたのだ。ちょっと格好付けようと思って真顔を保つ練習もした。確かにした。
成果は実らなかったが、別段真顔でなくても格好良い筈だからこの際構わないだろう。
銀髪の青年は、それ以降表情を変えることもせず、請われるがまま手を伸ばして髪を解いてくれている。
初対面には近過ぎるであろう、距離。
目の前の彼は知る筈もない。
向かい合う緋色の獣が、このようにいとも容易く己の懐に他人を招くような
[黙々と作業を続ける銀髪の青年はそのままに。ガートルートは手元の軍帽をくるくる回して、傍の狼に被せる。]
シヴ、目がきんいろだ。
どした。怒ってんのか?
[片手で鼻先やら顎やらを擽ってやると、シヴと呼ばれた狼は心地良さそうに金色の目を細める。
次に開いたその双眸は、氷を閉じ込めたようなアイスブルーだった。]
…ン?ああ…っはは!氷華のか。アレも相変わらずと言うか…
お前は寒い国の獣なのに、酷えよなァ。
[どうやらシヴと呼ばれた一匹は、異界門の前で四君子が一華──柊の氷華に向けられた視線と言葉>>0:155にご立腹らしい。
氷華は生き物の体温を好まない。ゆえに、その嫌悪は詮無いことではあるのだが。]
まァ、な。
俺も寒いのは嫌いじゃない。嫌いじゃない、が──アレの治める一千年は些か寒過ぎる。
[当たるようなら、全力で潰そうか。
喉奥低く嗤って、今一度シヴの顎を撫でやった。]
[沈黙に耐えかねたのか、あの、と躊躇いがちな声が銀髪の青年から掛かる。>>22
ん、と狼たちから視線を戻すと、名を問われた。
それには答えず、機嫌良く頬を弛めたまま目を伏せてすいと顔を寄せる。
男の鼻先が、青年のこめかみ辺り、落ちる銀の髪に触れた。]
…………。
お前はこんな匂いなんだな。
[感慨深げな声は、青年にはどう響いたか。暫しの沈黙の後、角に気を付けながらすりすりと頭を擦り付ける。]
お前はこんな体温で、声はこんなふうに聞こるんだなあ。ふふ、ふへへ。
[凄いな、ほんとに生身だ。
堪え切れない笑い声と意味の不明瞭な呟きを残して、屈めた上体を起こした。]
さて、そろそろ良いか。
これだけ解いてくれれば、残りは多少短くなっても文句は言われまい。
さっきからウルがお前の足の心配をしてる、無理を頼んで悪かった。
[ありがとう、呵々と笑って男は半歩身を引いた。
青年の足元にはもう一匹のハイイロオオカミ──門から青年の傍に付いていた方だ──が、倒れぬようにとその巨体を寄せている。
彼が万一よろけたとしても、その大きな背が椅子代わりをしてくれるだろう。]
訳の分からん場所に喚ばれて、疑問だらけだろ?
ぼちぼち他の連中も帰ったみてえだし、俺たちも行こうか。
[説明は道すがらしよう。
言いながら、男は後手にまだ多少藪に絡んだままの長い髪を纏める。片手で押さえ、空いた手が腰の太刀を引き抜き────、]
闘争の民《雷華》が長、ガートルート・ミョルニルだ。この世界でのお前の主となる者さ。
[ばつん。
声とともに、充てがわれた太刀が小さな稲妻を散らしながら赤灼の髪を切り落とした。]*
─ 遠い記憶・鎹沼と蓮の花 ─
[譲葉の南東の果て。
古より闘争の民《雷華》の治めるその地に、
コの字型をしたその大きな沼は、通年靄が立ち込めコポコポと泡を立て気味悪がられていたが。その実態は、なんのことはない、所謂温泉であった。
コの字の片側から熱湯に近い源泉が。もう片側からは水が流れ込み、程よい温度に保たれたそこは、いつしか雷華の民が湯治に集う憩いの場所となっていった。
氷華の治める『長き冬の時代』にも、水門を閉ざすことで耐えた鎹沼は、雷華に属する魔人や獣を癒すのに重宝された。
当時は未だ長ではなかったガートルートも、兄弟達を連れてよく湯浴みに行ったものだった。
そんな折。]
[一層冷え込む長い冬のある日。
どこから迷い込んだのか、雷華の地に一人の花精が現れた。
ちょうど、ガートルートが獣達を鎹沼のある湿地へ誘導している最中のこと。
獣の体温に惹かれたのか。弱り切ったその精は、獣の精気を、温度を、吸い上げていった。
雷華の地では、魔も神も獣も、死すべき者は死ぬ
だが次代の長として、見た以上は止めぬ訳にもいかず──しかし、声を掛ける前にその精は霞のように姿を消した。]
あ。おい────、
[引き留めようにも、最早その姿も形も失せて。仄かに残る、清々しい甘い香り。]
──……。
『なんだありゃ。余所者か?』
おそらく。
寒かったんだろ。…俺の精気で良けりゃくれてやるのに、逃げてしまったな。
[悪いことをした。
呟きに兄弟達は不思議そうにする。
領地に入られた事を咎めも罰しもする気が無いのは、幸い、かの精が取り憑いた獣は元気に沐浴を始めていた。]
だって、花は愛でるもんだろ。
どこの誰か知らんが、頑張んな。生きて会えたら、まあ酒でも飲もう。
[果たされる予定も相手も分からぬ約束を凍えた外気に溶かし、変わり者の次代の長は、琥珀色の目を細めて笑う。
以降、『長き冬の時代』がとうに終わった今でも、鎹沼はどこの誰が近付こうとも、咎めず罰せず争わず、それが雷華における暗黙のルールとなったのは、また別の話。]*
んん?人間?
めずら…しくは無いな。ここに住んじゃあいないが、外ではよく見る。
[譲葉には人間として存在している人間などは居もしないが。
青年の問い>>151へはざっくりと答る。もとより、小難しい説明は得意ではない。
太刀を鞘へ戻して、切り落とした髪を地面へ放り出した。小さな稲妻が幾つも舞って、落ちた土から
ルートヴィヒ。青年が口にしたその名>>153を、刻むように舌の上で転がした。
なんの味もない只の音の筈のそれは、不思議と懐かしい何かを思い出させる。甘ったるい、柔らかい、子供が好むような味の。]
では、ルート。
この浮島の外に、俺の領域がある。
あんまり使わんから他の連中のように立派な居城はないが、まあ休むのには問題無い。
距離は少しあるが──この、
[言いながら、ルートヴィヒと名乗った青年が差し出した手に>>153鼻先を寄せるハイイロオオカミをちょいと指差す。
狼のエメラルド色の聡い瞳が、じっとルートヴィヒを見上げた。]
ウル、が、ルートの足代わりだ。
兄弟達、ちょっと背を貸してくれ。御褒美はソレで足りるかい?
[緋色の獣に答えるように、二匹が遠吠えをする。地の上に撒かれた赤い髪が、稲妻となって狼達に纏い付き──、光が消えた頃、そこには人の身の丈を優に超えるであろう二頭の銀狼が、瞳を金色に輝かせていた。]
─ 異界門→雷華の領域へ ─
[ルートヴィヒの反応はどうだったか。
それには構わず、ガートルートは青年の身体を事も無げに抱え上げる。
身伏せてくれる狼の背へひょいと乗せると、もう一頭の方へ顔を向け。少し考えるような間の後、ルートヴィヒを乗せたウルの背へ自らも飛び乗った。]
『 ガァト、おもい、シヴにのったらいいのに 』
[迷惑そうな声に豪快に笑って、まあそう言うなと背を撫でてやる。
青年の背後に座り、背凭れ代わりにでもしたらいいとその銀髪を柔く梳いた。]
ルートは理解が早くて助かるな。
俺は小難しい説明は苦手だ。回りくどいのも面倒くさくて敵わん。
[己の為すべきことを、と請うた相手に>>154、はてどう説明したものかと頭を巡らし、三秒と持たずそれを放棄する。
従華として招かれた人間が、抵抗や逃避を試みるというのはよく聞く話だ。
それを四君子が力尽くなり謀略なりで従わせるのも。
しかし、ルートヴィヒはその気配すら見せない。人の反応としてはおよそらしくは無いそれを、しかし緋色の獣は折り込み済みとでも言わんばかりに気にした素振りは無かった。]
まあ、簡単に言えば代理戦争だ。
俺たち四人が直に争うには、世界の構造が脆くてな。
力を分け与えた人間を、互いに挑ませ勝敗を決める。勿論、受けて立つ以上人間達だけに任せる訳じゃ無いが。
[んで、殴り合いっこで勝ったやつが王様。
矢のように疾走する銀狼の背で、落ちないようにとルートヴィヒの胴を支えながら実にシンプルな説明をする。
傲岸な笑みを浮かべたまま、男は青年の銀髪を湛えた後頭部に顎を乗せた。]
…実はさ。
俺、コレに出るの初めてだから伝聞でしか知らんのだよ、ルールもなんもかんも。
まあ、知り合いもいるしなるようになるだろーくらいのつもりだったんだが…
[結構分からんままだな?
カラカラ立てた笑い声にルートヴィヒが反応する頃には、すぐ前方に道続きの浮島──雷華の領域が、見えつつあった。*]
/*
闇桜さんとこのソフトタッチいちゃいちゃが眼福です
しかし柊さんちのリリちゃんがどストライクです可愛いほんとかわいい
柊さんは良いドSですね、今後絆されるんです??(超期待の眼差し
/*
脳筋タイプがはじめてでして、口調やらロルが安定しなくて申し訳ない
長考タイプがバトル村は浅はかだったでしょうか…みなさまに大変たいへん申し訳…土下座…
っはは!
そうだな!随分生きたつもりだったが、まだハジメテがあるのは喜ばしい事だ、うん。
[ルートはやさしいなあ。
満点のフォローに、ひとしきり声を上げて笑い。顎を乗せていた後頭部に、満足げに角をゴリゴリと擦り寄せた。多少痛いかもしれないが、その辺の配慮はすっぽりと抜け落ちている。
そうして機嫌良くしているところへ飛んできた物騒な質問>>187に、男の喉が低く鳴った。]
否、それは無い。
四君子になるような連中は、簡単に殺すのなんのが出来るような
従華になった人間に関しても、命を奪うような事態にはならん筈。──まあ、万が一、
[くっ、ともう一度喉元低い笑い声。
背後の気配に常と違うものが混じるのに、青年は気付いたろうか。]
万が一、彼奴らがお前の命を脅かすというなら。
案ずるな。俺はこの世界ごと、灰にしてでもお前を守ろう。
[もし彼が振り向いたとしても、なんら変わらぬ傲岸な笑みがそこにあるだけで。
しかし緋色の獣の琥珀の瞳は、爛々と妖しく輝いていた。]
─ 雷華の領域 ─
[そんなガートルートの心中を知ってか知らずか。
もう浮島を繋ぐ道を渡り切った辺りで青年が漏らした、質問の形をした小さな疑問。>>188
耳に届いたそれに、男はきょとりと目を瞬いた。]
なぜお前かって。ああ、
[言いながら、ふわりと狼の背から飛び降りる。
二頭が足を止めたのは、島へ渡って初めの森を抜けた向こう、一面の雷花が咲く野原。
そこに、小さめの家ほどの円形の建物が、幾つか連なっている。
先に地へ足を着けたガートルートは、未だ狼の背の上のルートヴィヒに両手を差し出す。
彼が飛び降りるにはやや高い。従者であると理解した青年が拒もうとも、あっさりと抱き上げて。]
言っていなかったな、すまん。
好きだからだよ。
[片腕の上に座らせ、その背を支え。
上背のある己よりも今は高い位置にある青年の顔を仰ぎ見る。]
お前が好きだからだよ、ルートヴィヒ・デンプヴォルフ。
お前に逢いたかったから、俺はこの馬鹿げた戦に名乗りを挙げたんだ。
[ひと欠片の迷いも無い語調で。
緋色の獣、ガートルート・ミョルニルは言い放ったのだった。]**
おお?
その反応は予想して無かったぞ。
分かり切ったことだったかそうかそうか!
[好きだと言ったその言葉を冗談と捉えたらしい青年>>273に、呵々と笑う。
その『はぁ』は、『今更何を言っているのか』の意味では無かった筈だが、ガートルートの生涯通してあまり活躍する機会の無い脳味噌は、実に都合良くポジティブにその二文字を解釈した。
主を見下ろさせるな、と困ったような言>>274にもでれでれと目尻を下げるばかりで、当の本人はその噛み合わなさを全く意には介していなかった。]
はは、
気を遣わんでもいい、お前はそのへんの獅子より重くは無いし、これは俺がしたくてやっている。
[その辺の獅子、がどの辺の獅子なのかは人間である青年には全く伝わらなかったかもしれない。
抱き上げた身体を、自分に押し付けるように抱き締める。おとがいや頬に銀の髪が触れると、また鼻先を擦り寄せた。
そのまま、青年の希望などお構い無しに建物の方へと足を向ける。]
馬鹿げているさ。
戦は争う理由がある者が代理を立てれば立てるほど、面倒臭くややこしく、悲惨になっていく。
俺は自分の手で殴り合って得るものでは無い王座には、然程興味は無いんだ。
[僅かばかり不満げに動いた表情に、男の瞳が喜色に染まった。
覗き込めば、青年と言葉を交わすこと自体が嬉しくて仕方が無い、というのが容易く読み取れたであろう。
首だけで振り返ると、二匹のハイイロオオカミはすっかり元のサイズで、どこかへ連れ立って行った。]
縄張り警備だ、そのうち戻る。
[二匹の動向に触れてから、雷花の群れの中に青年を降ろしてやる。
見下ろす位置に戻った彼の銀を帯びた青い双眸を見詰めて。]
それでも、代理として喚ぶ以外に、生身のお前に逢う方法が見付からなかった。
王座に興味は無いが、──そうだな、
[指先で、ちょい、と額にかかる銀糸を掬い上げて。]
そんなに言うなら、ルートヴィヒ。
お前が俺を王にしろ。俺の従華として敵を薙ぎ払え。
[なにせお前に会えて、俺のヤル気ゲージはもうゼロだ。
冗談めかして言って、傲岸に笑う男の琥珀には、けれど確かに闘争の悦びが灯っていた。]*
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