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[雪を蹴立てて止まる車が見えた。>>2]
[どうやらホストより先に来てしまったらしい。
これではまるで、ディルドレがいそいそ飛んで来たようじゃないか。
羞恥で赤くなるが、そこは流石の都人。ベルガマスコは気を回して歓待してくれた。田舎者には出来ない対応だと、ディルドレは内心で評価する]
御機嫌よう。お招き頂いて感謝しますわ。
ホホホ。
相変わらず、少将はお上手ですことね。
[褒められ、口元に手を当てて上品に笑う。ただし、その手には大きすぎる宝石が嵌った指輪が多すぎる]
[会食の場所へ行き、ひとまずは温めたワインを所望した。
今夜は実に冷える……]
― 晩餐会 ―
[趣向を凝らした食事、中央風の屋敷。顔ぶれは村の知識階級、
その雰囲気とそこに呼ばれる一人であるという事に、ディルドレは満足する]
このお料理と何と云うのかね?
そう、コアプロレッサとグラフィックボードのキャッシングメモリ添え。
そうだと思ったわ。
ではそれを頂こうかしら。
[久しぶりに着る赤いドレスは、腰のあたりが少しきつい。コルセットを新調すべきかしらと気にした。
そこへ、少将がやって来て>>12]
まあ、少将。
お招き頂いて、お礼を言うのはこちらの方ですわ。
[ディルドレは色っぽいと信じている流し目をする]
ええ、その時が来れば。
[少将の遠回しな申し出には、やはり遠回しに答える。
こういうものはすぐにハッキリした返事をせず、駆け引きそのものを楽しむものだ。
若い頃は、幾人もそうやって手玉に取って来た]
あら、何かしら?
[グラスを手に取る。
すわ酔わせる算段かと思ったが、傾ければ、中で何か液体ではない物が動いた振動があった]
……まあ!
[ワインを飲み、やがて中身が現れると、思わず感嘆の声があがった。
凝ったプレゼント方法に、うきうきとするのが止められない]
[シルクのハンカチを取り出し、残った指輪をそこへ転がり落とした。
残ったわずかなワインが、真っ赤な色を移した]
嬉しい。
頂いてよろしいの?
[ハンカチから指輪を摘みあげ、光に透かしてざっと金銭価値を目測した。
これはきっと、「本命」に違いない。
村の有力者たちは、今も変わらずディルドレ奥様は美しい、と口先では云う物の、村長が代替わりしてからめっきりと捧げ物がなくなったり渋くなったりした。
ところがどうだろう。ベルガマスコ少将はこれだけの価値をディルドレに感じている]
大事にしますわ。
[ゴテゴテに飾られた指から、一番安い指輪を一つ抜いてハンドバッグに仕舞い、代わりにサファイアの指輪を差し込む。
シャンデリアの光に、それぞれの指輪がそれぞれに光り、実に美しい]
>>40
>コアプロレッサとグラフィックボードのキャッシングメモリ添え
最初は、いかにもありそうだけどでも実は適当な言葉の料理名にしてたけど、こっちの方が面白い。うん。
どんな料理なのか全く想像つかないけどw
……でも困りましたわ。
こんなにいい物を頂いて、あたくし、どんなお礼をすればいいか分かりませんの。
何かあたくしに出来る事があればいいのだけど。
[上目遣いで見上げつつ、きつくなった腰回りの代わりに隙間が多くなった胸元を寄せる。
さっきまではもう少し駆け引きを……とは思っていたけれど、そろそろいい頃合いかもしれない。
今日は寒いし……帰り道は雪が降っているし。
しかし]
[それにしても、今夜は随分寒くはないだろうか。
まさか少将ともあろう方が、暖房費をケチっているということはなかろうが。
窓ガラスが不穏に鳴り、一瞬、電灯が瞬いた]
(……酷い雪だね。
離れが凍ってしまう)
[急に、コレクションを収めた倉庫の様子が心配になってきた。
今夜は帰りたくないの、と云うはずが、一度気に成り始めたら止まらなくなってソワソワし出した]
……でも、今夜は都合が悪いようですね。
残念だけど、帰らなければならないわ。
[ちらりと時計を確認する。まだぎりぎり執事は待機しているだろう。
居なければ屋敷の電話を借りるしかないか。携帯電話は、使ってなくても基本料金とかがかかるとかが気に入らなくて解除してしまった]
今夜はこれにて退席させて貰いますわ。
無礼をお許しになって下さいまし。
この埋め合わせは、後日必ず致しますわね。
[重ねて詫び、玄関へ向かった]**
― ディルドレの屋敷 ―
[執事の運転する車が、白いカーテンをかき分けるようにして前庭に止まる。
しかし、屋敷が見えた瞬間、ディルドレは金切り声をあげた]
ああ! あたくしの宝石が! コレクションが!!!
[離れは無残にも、雪に押しつぶされていた。
築年数的に耐久が心配だ、改築した方が良いと進められていたものを、ケチって放置していた当然の結果だった]
[車から飛び出し、雪の小山を素手で掘り起こそうとするが、一回で断念した]
ああぁぁ、
あおぉぉぁぁぁ!
[人目も憚らず泣きわめく。いや、この雪では見て居る者が居たとしても、細部は見えないだろうが。
執事が、奥様と何度も呼びかけ、ついには強引に腕を引いて、屋敷に連れ戻す。
ホールでは数少ない召使たちが、不安そうに身を寄せ合っていた]
[暖炉の前で茫然としていると、庭師のローゼンハイムが得意げにやって来た。
崩れた離れから、なんとか掘り出した物があると云う。
大きな布で包まれた何か]
お見せ!
[これだけ大きな包みなら、さぞたくさんの宝石が助かったろう!
生気を取り戻し、食いつくようにしてそう云うと、ローゼンハイムは布を解いた。
出て来たのは……、亡夫の肖像画だった]
こんな、一銭にもならない物なんかどうでも良い!
こんな物を持ちだす暇があったら、どうしてあたくしの宝石を持ちださなかったの!
この、この、大莫迦者め!!
[手にしていたバッグで、庭師を何度もぶつ。
執事が慌てて止めに入った]
お前など顔も見たくない!!
出て行け!!
何処かへ行っちまえ!!
[外は大雪で、と流石に執事が止めるが、ディルドレは髪を振り乱し、唾を飛ばして地団太踏んだ]
今すぐだ!!
あと一秒でも此処に居て見ろ!
……こいつでその顔を滅茶苦茶にしてやる!!
[暖炉の火かき棒を手にしたディルドレを見て、肖像画を投げ捨てローゼンハイムは慌てて逃げ出した。
玄関までその姿を追いかけ、白の中に消えて行ってやっと落ちついた]
扉を締めて鍵をおかけ!
戻って来ても絶対に入れるんじゃないよ!
[フーフーと肩で息をしながら、ドサリとソファに座った]
― ディルドレの屋敷 ―
[哀れなローゼンハイムの辿った結末>>83も知らぬまま、まんじりともしない夜を過ごした。
今にも誰かコソドロが、崩れた離れから大事な宝石を盗みだすのではないかと思うと、気が気でならなかった。
吹雪が止み次第、村長を叩き起こして人手を借り、離れを掘り起こさねば]
……おのれ、忌々しい雪め。
こんな筈ではなかったのに。
[こんな吹雪にならなければ、今夜は楽しく過ごせる筈だった。
それにしても寒い。毛皮のコートを3枚も重ね、暖炉では煌々と炎が燃えて居るのに、骨が軋むようだ]
扉を全部お閉め!
召使たちに回す薪も持って来て温めるんだよ!
[執事がやんわりと、それでは空気が悪くなってしまいますと嗜めた]
[しかし、どうした事だろう。
時計を見るとすでに夜は明けて居る筈なのに、全く明るくならない。
風は激しさを増し、窓は張りついた雪で白く固まっている]
こんなに酷くなるなんて聞いてないよ。
気象予報の先生は何をしてるんだい?
スピーカーでの放送も誰かちょっとでも聞いたかい? 給料分も仕事も出来ないなんてふざけた先生だよ!
[ディルドレの屋敷の地下にある避難所に移動しようかと思ったところで、大変な事に気づく]
地下への入り口は離れじゃないか!
どうしてくれるんだい!
誰か行って、さっさと離れを掘り起こすんだよ!!
[……誰も動かなかった。
カッとなって火かき棒を手にした所で、執事が進み出た]
なんだって?
アルトベッカーの避難所?
あれは、一般庶民にも開放してる場所じゃないか。
あたくしが庶民と一緒に避難?!
……そんな屈辱、耐えられる訳がないだろう!!
[散々文句を垂れたが、背に腹は変えられない。
旅行鞄に、大事な物を詰め始めた。
ミンクのコート。シルクのガウン。ネックレスに腕環……あっという間に鞄は3つになり4つになった]
― 道中 ―
[鞄をもう一つだけ置いて行ってと召使が泣いた。
そうしたらもう2人、いや、3人乗れるからと。
その召使たちの声を振り切って、ディルドレは執事と2人、車を走らせた]
おお、おお、なんという寒さだ……。
こんな雪になるなんて、聞いてないよ。
誰の責任なんだ。誰の!
[喚き声に、執事は答えなかった。
状態の悪い路面に、車は荒波に揉まれる船の様に揺れた。
舌を噛みかけて、やっとディルドレは黙った]
[雪の塊に乗り上げ、車がついに止まった]
何をしてるんだい?!
早く動かさないか!
車がなきゃトランクが運べないよ。
[執事は一度外に出てから、すぐに戻って来て首を振った]
……まさか。
嫌だ、嫌だ!
この中にはブランド物の服やドレスや下着だって入ってるんだよ。
このトランクを1つでも置いて行くくらいなら、あたくしもここに残った方がマシだよ!
[執事は冷たい目をして、ゆっくりと外へ出た]
……ま、待ちな。
本当において行く気じゃないだろうね?
こんな冷たい車の中に、あたくし一人だけ……。
お、お待ち。待ちなさい。
待って!
[一番大事なアクセサリーを入れたハンドバッグだけを持って、ついにディルドレも外に出た。
瞬間、風が壁の様に打ちつけてくる]
[悲痛な悲鳴を上げた。
やみくもに伸ばした手が握られた。
何度も転びかけ、あちこちぶつけて、ディルドレは身も世もなく泣きわめいた。
どこをどう歩いたかは分からない。
執事に手を引かれ、ついに避難所に辿りついていた]
― 避難所 ―
[ディルドレと執事はほうほうの体で逃げ込んだ。
何か暖かい物を貰って来ると云う執事を見送り、ディルドレはブランド物の毛皮のコートから必死で雪をこそげおとす。
そこへ、少女が話しかけてきた。
歯をガタガタ鳴らしながら、空気の読めない少女を睨みつける]
あたくしは今忙しいんだよ!
え? 薬?
[ビタミンなどの美容や健康の薬はよく貰っている。
少女の薬ならたぶん聞くだろう。
ディルドレと執事と、合わせて2つ]
……分かった、貰っておいてやるよ。
[2つともを、ハンドバッグに仕舞いこんだ。執事にやるつもりなど毛頭なかった]
[執事が戻って来た。
素知らぬ顔で礼を言う。
執事が驚いた顔をしたが、流石にこの状況なら感謝のひとつもされるかと納得したらしい]
ちょっと通しておくれ。
おお、寒い、寒い。
もっと火を焚いたらどうなのかね?
避難所なんだから、燃料くらいたくさん用意してあるだろう。
[思ったより多くの庶民が居るようだ。
貧乏くさくてならない。
そんな中、知った顔を見つけた]
少将!
少将じゃありませんの!
偶然ですわね。貴方も此処に?
[しまった。風になぶられて髪はぐしゃぐしゃ、服も見た目より機能優先だ。
己を恥ずかしく思った]
[風が直接打ちつけないと云うことがこんなに有難いなんて。
ふと見回して、教会の子が居る事に気づく]
あら、あの子だけ?
牧師さんはどうしたのかしら。
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