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― サロン ―
ああは言っていますが、城主は、しばらく戻らないかも知れません。
逗留中の居室として西の塔を空けてあります。
ご案内は──
[ジークムントへと会釈をして、依願という形の退却理由を差し出す。
自身は、ギィの後を追うつもりでいた。]
― バルコニー ―
[ジークムントに賓客の案内を任せれば、ワインボトルを取り上げてバルコニーへ向かう。
宴席を移したというだけのごとく、静かにギィの傍らに立った。
結界は幕のようなものなのか。
どこか空気が重たく、絡みついてくるようだ。
アレクシスの飄然を装う声と疑惑に弁明の労はとらず。]
[「遊ばせていただく」というアレクシスの宣言に、チラと視線を投げる。
好んで前線に立つ人物とは思っていなかった。]
死を 邪魔する …?
[“変わり者”の言い分を反芻した時、城門を打ち貫く轟音が響いた。]
礼儀を知らない連中のようですね。
[そこは兄と意見があった。
幸いまだ凍化していなかったワインを、催促されて饗する。
敵は7名、二手に分かれているという警告に肯首ひとつ。]
[庭に駆け込んだ強襲者のひとりが、剣を投擲する。
人の膂力を凌駕しているのは瞬間に把握できた。
驚愕は色に現さず、
手の中のボトルを傾け零したワインを氷の盾に変えて刃を弾かんとする。**]
― バルコニー ―
[即席の氷の盾を砕いて剣が城主に襲いかかる。
迎えるようにかざしたギィの掌に強引な接吻をして、それはようやく床に落ちた。
剣に続いてバルコニーを訪問したのはマントをたなびかせた騎士姿だった。
剣を投げた男とは違う。
ギィが操る茨に阻まれて舌打ちする様はまだ人間らしい、と思った。]
確かに──
[もったいない、と投げられた声に返すは恬淡とした同意。
もっとも、その対象はワインではなかったが。
熱烈な逢瀬を邪魔したことを斟酌するような色は滲む。
ギィはきっと、愉しんでいたろうから。
それでも介入するのもまた自分ならば当然のこと。
膝を屈めて手を伸ばせば、氷の砕片は散らされた紅を触媒に寄り集まって剣の形に再編される。
ギザギザといくつもの断面を煌めかせるソードブレーカーにも似た刃。
それを手に立ち上がるも、ギィの”子”がその場に姿を現せば入れ替わるように城内へ。**]
[軽く締め上げるような抱擁の気配に喉を鳴らす。]
あなたも、
私に仕置きできる程度には、ご自身を気遣っていただけるのでしょうね?
[返す念は、首筋に唇の気配を触れさせるごとく。]
[忍び入る囁きは、その人の体を傍らに感じるよう。
呻きにも似た歓喜の言葉は、弾む息そのものだ。
幾度となく血を情を通わせた兄弟の絆は、官能とは別種の鈍い熱も伝えていた。
ギィが聖属性の攻撃を受けている──
あの騎士は、不死者の砦に至ることのできる技量の持ち主らしい。
ギィはさぞかし嬉しいだろう。
人の血だけでなく、自らの血にも酔うかのごとく、危地を歩むことを好むギィの性格は知っていた。
彼にとっては、痛みもまた
…妬ける、
早々にケリをつけてしまおう。
[そしてあなたを取り戻すと、素直な想いを素直ではない口調で送った。]
[轟音の方へ方向転換はしなかった。
そのまま廊下を進めば、白く光を発するごとき少女の姿を見出す。
無垢な幼さすら伺わせるその顔に影を落とすのは恐怖か疲労か。
もしここが森の中であれば、恰好の餌になるような少女だった。
が、状況はそれと異なる。]
──…。
[ことさら気配を消すことなく、近づいた。]
[ツ、と指先に伝わる焦熱が、こちらの心を見透かしているようで、ざわめく。]
時間は我らの味方とはいえ──心は急くものだ。
[石床に座り込んだ少女が誰かと間違え──気づいて、誰何の声を発する。]
私はヴィンセント。
人がここにいるのは望ましくない。
──こちらへ。
[短く名乗って手を差し伸べたが、それはユーリエに触れるためではなく、招く仕草としてのものだった。]
私は、直に抱き合っている方がいい。
[離れているからこそ、そんなことも言えるのだと薄々わかっているのだけど。]
[吸血鬼の聴覚は少女の動悸と祈りの声を聞く。
その繊手に握りしめられたる聖印。
拒絶の意志とともに突きつけられたのは服従を命じる言葉だった。
彼女は神に縋る者ではなく、その威を担う者だと知れる。]
ここは
命令する立場にあるのは君ではない。
[命令する先を正しく変えた「聖女」に、静かな笑みを向ける。]
その威光を示せなかった場合、力が足りないのは彼か、君か── 神ではなかろう。
そんな証明に付き合う気はないが、
君の剣技は人としては稀に見る能力だと思うけれど──それでは届かない。
[事実の宣告に見せかけた挑発。
そして、その場に留まったまま、「騎士」の次の攻撃を待った。
誘い込もうとするごとく。
実際、ここよりは有利な戦場へ移動したいのだ。]
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