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10人目、曹珪灰石の
曹珪灰石の
― 『神魔の領域』 ―
[ 「おまえを森の奥へ連れていく夢を見たのだ」という。
夢であれ酔狂であれ、大した違いはなかった。
笑みも拒絶もなく、従うまで。
王都を離れることにも、躊躇いは感じなかった。
以前であれば、自分が留守にしている間に王子が戻ってくるのではないかと、気を揉んでいたろう。
けれど、王が斃れ、王子が逐われてから10年が過ぎ、
それでも存続している街を見るのは、むしろ気鬱になってきていた。]
( …滅びてしまえ )
[ 音にならない願いは、胸の中に滴る。]
[ そして、導かれた森は、一面の菫青色だった。
あの日以来、色を失った視界に痛いほど訴えてくる。
なるほど、格別の場所だというのはよくわかった。
とはいえ、灰色だった世界が青の濃淡に変わったのみとも言える。
一筋に伸びていく淡い道へと馬を進めた。]
[ 背後から呼ばれた気がする──アラン、と。
それは、執政を名乗る男が10年前に与えた名だ。
振り返る気にもならない。
と、風を切る音がして、左腕に鋭い痛みが走る。
矢を射掛けられたのだ。
血が滲んだが、馬の足を止めることはしなかった。
ただ、道をそれて森の木を盾として進む。
森の奥へと誘う力の方が、呼ぶ声よりよほど強かった。
あの男は追いかけて来ない。
この神域に阻まれたのだろうと思う。]
[ 自由…?
ふと、そんな言葉が浮かんだが、すぐに否定する。
何かの意思、あるいは運命が自分を縛っているのを感じていた。**]
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