情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
10人目、領主 ファミル が参加しました。
領主 ファミルは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
[アンディーヴ領の領主たる
ファミル・アンディーヴが、
祖国ウルケルを裏切り、
シコン港に停泊していたウルケル海軍が、
文字通りに"追い出された"のは、
その艦の多くが海峡西の防衛へと
出払っている間の話だった。]
──シコン港──
[階段上に高さを増す港街の石畳を軍靴が叩く。
かん かん かん と、非常警報の鐘が、階段上に高さを増す港街を急き立て、震わせていた。
本来は上陸しようとする敵軍を迎撃する為に、砦や高台に配備された砲は、停泊中のウルケル艦船を狙い、火薬の破裂音を轟かせて、シコンの港街を揺らす。
そうして、湾内の海上では、運悪く機関室に砲撃を受けたと思しき艦が一隻、傾き沈みながら、なおもごうごうと燃えていた。]
──シコン港砦、指揮官室──
[また、その赤々とした様は、四角く切り取られた砦の窓からもよく見えた。見下ろす先で、水面がゆらゆらと朱に揺れている。]
あれでは、後で引き上げたとして
使い物にはならないな。
[緩やかに沈む、他へ追随する道を塞ぐように最後まで湾内残った艦を見下ろして、ファミル・アンディーヴは、目を眇めた。]
[窓下には、崩れた影が腰のサーベルに手をかけた恰好ののまま、壁に背を持たせていた。]
…… 貴方には不運な役回りと
なってしまいましたね、指揮官殿。
[その、シコン港防衛の指揮官だった男の体に穴を開けた当の本人は、閉じさせた目を見やってから、ひとつ息をついた。
──わずかな沈黙の間に扉向こうの廊下よりの足音が続く。]
[ぎ。と扉が開いて戻り来た伝令は、一瞬、室内の状況に身を固めた後、改まった声で無事軍港内を抑えたとの報を述べた。]
わかった。
ではこの後も高台から、
兵は動かさないように。
街の者らは手筈どおり
山岳方面に誘導をはじめてくれ。
それから、────、。
[はい。と答える兵に頷きを返し、しかし指示の途中で、領主の女はまた窓へ視線を横に移した。]
[「?」と疑問符を浮かべた兵がつられたように見る先には、燃えゆく船のすぐ傍、船から落ちたか落としたか、水の上に立つ複葉機があった。]
────、
[ゴーグルをつけた顔が、一度。砦の、この窓を見上げる。
見えぬ視線が、はたとそこで会ったような錯覚の中、この距離では聞こえぬはずの機関部が唸り声を上げ、滑り出した一機は海に線を引いた。緩やかな加速はやがて勢いを得て、機体は水上から空へと羽ばたき上がっていく。]
[市民らを家の中へ押し込める警報の鐘はまだ、鳴り続いている。知らず胸元に手をやれば、ちゃり。とつけたロケットが微かな音を立てた。]
… 見られたな。
[操縦士らは得てして目がいい。ファミルからでも、ゴーグルまでも見えたなら、視認された可能性は高い筈だった。]
[見送る先、小さくなる姿に零した一言に、どうやら同じものをみたらしき伝令が「追わせますか」と言った。]
…… いや。ほうっておいていい。
私のことがあちらに伝わろうが
どうせさしたる差はない。
[仮にシコン占領後にファミル・アンディーヴが生きていたとして、せいぜい遠慮するフリをしながら攻撃するか、遠慮せず攻撃するかだろう。5年前までここの領主を務めていた兄ならばまだしも、現領主たるファミルは、国そのものを優先する中央と折り合いがよくない。]
それに、…
[追わせるほどの情報ではないというのも、
確かな事実と判断の理由ではあれど、]
私は、
無駄が嫌いだ。
[あの状況下であそこまで生き延びたウルケル海軍の一機を、
そう簡単に落とせるとも、思えない。]
[言いおけば、伝令からは素直に「はい」と返事があった。視線を窓から戻し、机上の黒ずむ赤が張り付いてしまった海図に目をやる。]
手空きの者がいたら、
何人かここの片付けに寄越してくれ。
それと、第一隊には、小型船を
ドッグから出しておくようにと。
[指示を伝えて、窓辺傍の影から離れる。──下げたままだったリボルバー式の拳銃は、腰のホルダーに収めてドアへと向かう。]
[帝国の艦が此処へ来るまでの間に、
あの燃えた艦の火は消えるだろうか。]
出迎えにいく。
[いずれにせよ、リオレ島にシコンが落ちた報が入るまでに
そうは時間もかからないことだろう*。]
/*
さて。情報を各々に渡して、シコン港を明け渡せる状態にして。
ルートヴィヒが交渉に向かってくれているようなので、
ひとまずはそこだな。縁故的にも。
まあざっくりと昔話を交えつつ迎え入れようか。
──シコン港、湾内──
[連絡用の小型艇で進むシコン港の囲まれた湾は、
ごく静かに凪いでいた。もとより山岳に囲まれた地形ゆえに、風雨で荒れることも滅多にはないが、その日は、それでもとりわけに静かに思えた。]
(──或いは、昨日の騒々しさとの差に、
そう感じられるだけか)
[湾内を進む船の甲板に立っていれば、髪を風が撫でていく。後背に置く軍港からは未だ名残を示すように黒煙が立ち昇る。視線をずらせば、燃えた艦が沈み、もはや見えなくなった場所が視界に入る。]
──シコン港、湾内──
[そのまま視線は、昨日の幻影をなぞる。空を行った軌跡を辿り、リオレの方角に暫し視線が留まった。]
…あれは、確信されていたな。
[シュテファン・シエル。沈んだ艦に乗っていた筈の、発見されない飛行機乗りの名前を脳内で辿る。視察に降りたときに、整備技師が荒い操縦に腹を立てながら、同時に射撃の腕を褒めていた名だった。]
[睨むようにも真っ直ぐに見上げてきた表情を思えば、状況を看破されたことは窺えた>>62。
状況から類推できる材料なら多く揃ってもいる。
なにせ、先ずファミルが狙ったのは、
指揮官が駐在していたシコンの砦だった。
まず撤退とも交戦とも伝達のない状況下で、同胞の土地を攻撃する僅かな躊躇でもつかねば、いくら高地の利があるとはいえど、ウルケルの海軍を港から追い払うような真似、易くは成功しない。
そして、その混乱の起点となった砦に、捕らえられたでもないファミルの姿があるなら、私兵らの独断での裏切りでないこと、勘がよいものなら理解するだろう。]
[それから、緩やかにああ。と納得したかの頷きを経て、甲板から相対する相手へと、手を挙げての敬礼を返す。]
誰が寄越されるだろうかと思っていたが、
君か。
[そうしてから鉄面皮と噂される女領主は、艦の甲板に立つ青年の声に、わかりにくくも微笑った。]
[ルートヴィヒ・アルトハーフェン。シュヴァール商会を営む商家の長男であり、当代の皇帝の唯一無二の補佐。ファミルにとっては、商会とのかかわりを通じて、幼少時から見知った顔でもあった。]
皇帝陛下の翼にこうして、
先んじてお会いできて光栄だ。
[呼びかけに応じる声は、一般からすればささやかにであれど和らいだ音をもつ。]
ようこそ。ルートヴィヒ・アルトハーフェン扶翼官殿
扶翼殿とお呼びした方がいいだろうか。
[音に聞く当代限りの官職で呼ばい、首を傾げた。]
[幾分。他所で会うときより形式ばった応答を挟み、甲板の上にて女領主は一歩を後ろへ引いた。知己に会ったが故に浮かべられた笑みは、されと後方にやる視線に常の表情へと覆われる。]
掃除はあらかた済んでいる。
[ウルケルの──アンディーヴ領の港へ、帝国の船が着く準備は整っていると、そう出迎えた相手に声を投げる。]
昔に想像していたのとは違う形だが、
我が領内へご案内しよう。
自慢の花の季節でないのが、
少しばかり残念だが。
[操舵室に手旗で旋回を指示を出せば、小型艇は緩やかに港の方へと向きを変えた。]
[先導するように速度を落とした小型艇は巡洋艦の前を進む。途中、最初に出会ったときから伸び、とおに抜かれた背を見上げるように、振りかえった視線は長くルートヴィヒの上に留まった。]
我が領の花をにじらず、
──街を、土地を燃やさずいてくれる
その限りにおいて
我が領は貴方らを容れる用意がある。
[確かな声で告げ進む先には、階段状の街並がある。
燃えればいっそ映えるだろう白を基調とした家々に、ファミル・アンディーヴは黙して目を眇めた。]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新