情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
―回想・駐屯地―
[ぐにゃりとしか表現のしようのない、
背筋を粟立たせるいやな感触が靴を通して伝わった。
その痛みを知ることのないせいか、
悶絶する様子を横目に緩んだ拘束を振り払おうと身を捩る。
今なら逃げられる――そんな希望に縋ろうとして]
…………?
[>32聞こえてきた異国の言葉。
その響きに、呆れのような、安堵のような――…
少なくとも警戒心の緩む雰囲気を滲ませていることに、
近寄ってくる気配に茫然と見上げる事しかできないまま]
マリエッタと呼ぶといいです。
ホントの名前なんか教えてやらねーですよ、ふふん。
[また無駄に胸を張り、背から落ちそうになりながら。
どこかへ連れていかれる最中、
何度も脱走を試みるガッツを披露したのは言うまでもなく。
諦めという言葉を知らない娘は、
とうとう鳥籠にたどり着くまで数秒たりとも、
俘虜らしさのかけらもなく大人しくなどしていなかった]
―天使の鳥籠―
[>>51ぷくーっと膨らんだ頬。
涙目交じりの大きな瞳に映るのは、
この館に連れてきたディタと名乗る男の姿。
両手で数えきれなくなったほどの脱走劇を終え、
とっ捕まっての押し問答中である。
非常に騒がしいのは言うまでもない]
う、うるさいですね!
逃げないなんて、バカのすることじゃねーですか!
[だが、さすがに疲れも重なって。
降ろされた場所で子供がふてくされたように
ぷいっと横を向くのが精々の反抗であり、唇を尖らせている]
じゃ……服をよこすといいです。
この国はレディの扱いがなってないのですよ……ふぁ?
I can't believe it! You're the worst!
[首に巻かれた感触に、
それを確かめて零れた言葉は祖国のもので。
両手があがってどんどんとディタの胸板を叩き抗議の意を示す。
離せ、という意味も含めたそれは段々と力が籠り――]
ば、ばかー!
[最終的には、こんな拙い罵倒となった……けれど]
自由……?
[懐かしい言葉に、
強固だった壁が崩れたかのような素直な響き。
翡翠の大きな瞳を瞬いて、じっと抱かれるまま館を見つめながら]
……ホントーです?
[――問いかけはどんな響きを滲ませていただろうか。
とっても素直な、年相応よりは少し子供らしい――…]
[――と、思いきや。
内面の少女はこの上なく悪い顔をしていた]
(従ったフリをしとけば、逃げ出せるかもしれねーですね。
この男……たぶん、お人好しですぅ!)
[売られるなんて真っ平御免の上、
良い暮らしには惹かれるけれどそれは自国でなくては意味がなく。
自分たちの暮らしを壊した、
唯一だった家族たちを壊したこの国の人間の言うことなど、
聞いてたまるかの心情をありありと映した表情で]
……し、しかたねーですね。
生き延びる為ならなんだってしてやるです。
[ある意味素直な言葉で、ディーターへと応じた]
[>>68開放感と、さらなる解放を目指して、
内なる闘志を密やかに()燃やしかけたその時。
再び抱き寄せられ、零れかけた悲鳴を辛うじて飲み込むと]
……っく……セ、セクハ――…
[そんな文句はやっぱり祖国の言葉で打ち消され。
反芻するかのようにパクパクと唇が音もなく言葉を綴る。
自由に――本当に、自由に……自由に“してもらえる”?]
……なにしやがる、ですか。
[>>69自分なりの低い声に、尖った唇。
首輪へ伸びた指がネクタイを結びつけるのを冷やかに見つめ……
……冷やかと言い張るには、ぷるぷるとした震えてはいたけれど]
そう、何だってやってやるです!
たとえば…………
――――とーう!
[歩きはじめたその瞬間を狙って、
膝をかくんと折るように蹴りの一撃を。
そうしてディタが姿勢を崩せば、
その隙を突いて屋敷の外へと逃げだそうとして。
それでも手放そうとしてなかったらしいネクタイから、
首輪に負荷がかかって床へビターンするまで時間にして数秒。
それが、屋敷到達して初めての、
自由への逃亡チャレンジの結果であった]
―ディーターの部屋―
……お前さ、もーちょっと自分を大事にしような?
[転んだ時にできた擦り傷に、消毒液を塗りこみながら、
ディーターの説教はなおも続いていた……
鳥籠の二階にあるその部屋では、
大きめの窓から差し込む日差しが、
大量の書物や薬瓶の数々を照らし出している。
基本的には物の多過ぎる、雑然とした部屋であったが、
唯一、中央のベッド周囲だけは片付けられていて。
少女は今、その端に座らせられていた]
―ディーターの部屋―
うー。
[鼻の頭がひりひりする。
胸も思いっきり打って、痛いなんて話じゃない。
ついでに言えば足も捻ったか、腫れている気もする。
これが自由への挑戦の代償であり――
転がった身体を肩に担ぎあげられ、
マリーからすれば乱暴に部屋へと連れてこられて。
説教が始まって、もう1時間は経過しただろうか。
腫れていた足首には冷たい湿布が。
胸はどうしようもないので放置されたまま、
今は正面に座ったディタが、鼻の頭を治療している]
大事にしまくってますよ?
[拗ねて横を向くのができない上に、逃げ足は封じられている。
(※主に自分のせいで)
その上、部屋に担ぎ込まれての説教で、
頭の中が慣れない言語との戦いで疲弊しきってもいた。
(※主に自分のせいで)]
ところで、そんなことはどうでもいいです!
大事にするから服を寄越せ−なのです。
[埃にまみれた軍服はともかくとして、
下着がわりのさらしが切り裂かれたままだ。
抑えつけていないと動き難いみたいなそんな表情で、
逃げる気満々を隠しもせず]
風邪ひきたくねーですから!
[大事にしてるだろう、とドヤ顔で胸を張ってみせた]
……良いか?
お前は雛鳥。身体が資本だ。
無茶だけはしてくれるなよ?
[はい終了と、消毒液を染み込ませた脱脂綿を仕舞い込み、
おもむろに立ち上がる。
ネクタイこそは取り外したが、
革の首輪は未だ、マリーの喉を黒く縁取っていて。
内側から鍵をかけられるこの部屋の構造とともに、
ゆるやかに、しかし確実に彼女を拘束していた]
[>>76しかし、自分も多少は膝を擦り剥いたが、
何故この子はこんなにも満身創痍になっているのだろう……
全力過ぎるだろうおいというツッコミを心の中に仕舞い込み]
……ん? いや……
[服を寄越せと言うマリーの言葉に、首を振る。
胸を張る度に、ジャケットの奥に垣間見える胸元が、
魅力的に弾むことにこの子は気付いているのだろうか。
ベッドの端に腰を掛ける彼女へと手を伸ばし。
そのジャケットの後襟を、まるで猫の子をつまむ様に持ち上げた]
――――むしろ、脱ごうか。
身体検査するっつたろ?
ま、安心しろ。測るもの測ったら、新しいさらしを用意してやるから。
[笑顔で告げるディーターの手には、
彼女を測る為のメジャーが握られていた……]
なんでディタに身体検査されなきゃいけないですか。
[ひょいっと摘まれた後襟に引きずられるように、
するりと脱げかけた上着の前身をぐわしっと掴みそれを阻止。
唐突な攻防に勝利して不審げに首を傾げると、
バンバンと膝を叩いて抗議の一言を放ちつつ――]
つーか、なんでさらしだけ?
服をくれやがれですよ!
服!
かわいいふーくー!!
あとおなかすいたです!
[さり気なく注文を付け足して、
まるで幼い子供のようにジタバタし始めた]
そりゃ、自分が育てる雛鳥の体調その他諸々くらい、
ちゃんと管理しとかないとな?
[ベッドの上からジャケットごと摘み上げ。
目の高さに持ち上げると、ぷらんぷらんとマリーを揺らし]
さらしとタンクトップは新しいのを用意しよう。
ワイシャツはさっき拾っておいたから、それを着といてくれ。
マリーは…、――――可愛い服が着たいのか?
[まるで子どものように暴れる彼女の意外に乙女な一面に、笑みを零す。
とはいえ、己は庭師で彼女は雛鳥。
ここにいる間、その関係は維持しなくてはならない]
色々出来るようになったら、だな。
……身体検査が終わったら、飯にしよう。
[それは逆に言えば、終わるまでは断食という意味で。
ぱっと、手を離し。
二人分はゆうに眠れるサイズのベッドの上に、
少女を取り落とした]
さ、服を脱いで、両手をバンザイ、な?
[果たして何処を測るつもりなのか。
手にしたメジャーが弄びつつ、庭師は雛鳥に笑みを向け]
だいたいですね、
管理される気がねーですよ?
[抵抗虚しく持ち上げられてぷらぷらしながら。
その力に吃驚した表情を押し隠すべく、
無理矢理に虚勢を張るようにして頬を膨らませる。
そして、不意の問いかけには]
でぃたが言ったですよ?
軍服で逃げると目立つって――…
[逃げる気満々の返答を、何故かドヤ顔で]
それに僕らしくない方が、
おまえも油断するだろーなのです!
[えへんと胸を張る。
何もかも間違っている主張に恐らく気づいてない様子で、
尚も言葉を重ねようと――…]
えっ――ごは……んぎゃっ!
[レディ扱いがなってないだの、
可愛い服だの、そんな主張はどこへいったやら。
ベッドに落とされ思わず零れた悲鳴は、
レディを投げっぱなしジャーマンしたもので。
捻った足首を庇うようにして、猫のように丸まりながら]
くっ……
ごはんとか……釣られるわけねーですし。
あっ、でも当然、デザートがつくわけですか?
[それでいて、噛みつく寸前の犬のような、
そんな眼差しだったのが思い付きの言葉に緩んで消える。
身を起こして確認するようにディタを見上げて]
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新