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[どのくらい歩いただろうか?景色は一向に変わらず、時間だけが過ぎていた。]
結構歩きましたね。ですが、出会ったのはブランが話したというシルヴェストリスさんという方だけですね。他の方々は何処にいらっしゃるのでしょうか?特に私達の前に敗退した方々もいらっしゃるはずなんですがね。
(そうだな。それなら、いっその事戻ってみるか?また新しく誰か来ているかもしれねぇし、シルヴェストリスにも会えるかもしれねぇ。)
そうですね。戻ってそのまま事の行く末を見守りましょうか。
そう思っていらっしゃる方もいるかもしれませんからね。
[一人と一匹は来た道を戻った。しかし、縦横無尽に広がるこの空間をちゃんと戻れているかは不明だった。]
恐らくこの辺だと思うんですけどね。本当に何処が何処だかさっぱりですよ。
(もうこの辺でいいんじゃないか?誰かと会えたらその時話せばいいと思うぜ。)
そうですね。それではここで休みましょうか。
そういえば、ブランは何故あの本に閉じ込められていたのですか?
(あー、それはだな、昔悪さをしてたからだ。町を滅ぼしたりもした。)
そうだったんですね。それなのに、今はこうして丸くなられたのは何か理由があるんですか?
(単に一人の寂しさを本の中で知っただけだ。一人ぼっちはつまんねぇからよ。契約者になったのはどうしてだろうな。あの本にそういう風になる魔法でも仕込まれてたんだろう。)
そうですか。何はともあれ私はブランに出会えて本当に良かったです。
(俺様もだぜ。斎に出会えて本当に良かったぜ。)
[一人と一匹は腰をおろし、談笑をし始めるのだった。**]
ブラン、今一度私の過去を聞いてもらえますか?
(急にどうしたんだ?言いたいなら聞いてやるぜ?)
ありがとうございます。それでは、自分語りにはなりますが語らせて頂きます。
[斎は自らの過去を語り始めた。]
ー3年程前の春の日の我が家ー
[以前にもお話しましたが、我が家は4人家族でした。父は教師で母はパートと在り来たりですが、毎日を楽しく過ごしていました。今考えても当日まで何の異変もなかったと思います。数日前の朝もこんな感じでした。]
兄さん、俺、来週からテストなんだけど、また勉強見てよ。
[弟は教師志望の私に勉強を教わる為にテストの前になるとはこうやって頼みにきていました。普段からすればいいじゃないですか。と言うと部活が忙しくて、そんな暇はないと毎回断るのでした。そして、私が毎回折れて勉強を教えるのです。]
ありがとう、兄さん。今度何かお礼するからね!
[この時にそんな事はいいから普段から勉強をしなさいと言っておけば、弟とあの女は出会わなかったのかもしれません。]
[何故1週間前になって弟が強請ってくるのかと言うとテスト1週間前は部活が禁止されるからです。私は大学生でしたが、もう就職先の学校も決まっていました。なので、必要な単位を取る為に大学へは行くものの、家で独学をする事もあったのです。]
兄さん、ただいま。早速勉強を教えてよ。
[弟は学校が終わると真っ直ぐ家に帰ってきていました。こういう所は本当に律儀というか真面目というかですね。手洗いうがいを済まさせると勉強を教え始めます。]
兄さん、ここはどうやるの?
[弟はテスト勉強は熱心にしてくれました。ですので、私も教えていて嫌な気持ちになった事はありません。まぁ、それでも人間ですから息抜きは勿論しましたよ。息抜きの時の話題と言えば、そうですね。]
兄さん、俺、この前の試合で2回もゴールを決めたんだよ!
[弟はサッカーをしていたのですが、こうして休憩の際に私に話してくれました。私は笑顔でいつも聞いていました。弟もいきいきと話してくれましたからね。実に懐かしいです。]
[と、こんな日々が続いてました。ですが、テスト初日です。いつも通りの朝でした。]
兄さん、今日からテストだから頑張ってくるね!
[これが普通だった弟を見た最後でした。弟はテスト期間中という事で昼間は大学の図書館に通っている私より早く帰宅していました。私がただいま。と声をかけるといつもならばテストの出来を話してくるのですが、その日はありませんでした。]
……おかえり。
[元気のない返事でした。私はテストで疲れているのかな?と思いながらも違和感を感じていました。弟を問い質せば良かったのかもしれません。ですが、私はしませんでした。弟に弟の生活があるのだからと。]
[その日からだったでしょうか?弟は次第に元気を無くして行ったのは。それでも、学校にはしっかりと通っているとの事だったので、両親は気づかなかった様な気がします。私も違和感を感じながらも疲れてるのかな?という程度にしか思っていませんでした。そんなテスト期間中の中頃です。]
俺、彼女が出来たんだ。今度の土曜日に紹介したいから連れてきてもいい?
[両親は昼からなら大丈夫だと承諾したのです。ご存知の通り私は昼間は大学の図書館で勉強をしていたので帰れば会えるだろう程度に思っていました。まさか、それで私だけが助かるとは思いもよらずに。]
[その日が来ました。私は朝から大学へ向かいました。弟も午前中は彼女とデートをするとの事で出掛けました。]
……行ってきます。
[私が弟の声を聞いた最後でした。ここからは以前お話しした通りです。私はこの時玄関で弟の彼女に会っていました。とても異様に感じました。そして、帰ってくると家の前に警察がいました。近所の方もいました。ここからは就職するまでアルバイトで生計を立てて一人暮らしをしていました。]
以上です。その女が今し方ブランによって倒されたのです。
とても感謝しています。その上、体も返して頂けました。
本当にありがとうございます、ブラン。
(ふん、感謝される程でもねぇよ。それよりもよ、お前はもしここから戻れたらどうするんだ?)
そうですね、まずは両親の墓前に報告をしたいですね。
弟は無実だったと。
(そうか。そうだよな。ちなみによ、俺と別れるってなったらどうするよ?俺様達は負けたんだ。その可能性もあるだろ?)
そうですね。そしたら、寂しくなりますね。
貴方は私と別れたらどうなるのですか?
それによっては貴方を祝わなければなりません。
(どうなるんだろうな?俺様はその辺の話を真面目に聞いてなかったから知らねぇんだよ。)
そうですか。それならやはり寂しいです。
出来る事なら別れたくありません。
ブランは私にとってかけがえのない友ですからね。
(ふん、その言葉聞けりゃ十分だ。もし、別れても元気でいろよ?)
わかってますよ。それでは、別れる事になっても寂しくならない様にまた話してましょうか。
(よくネタが尽きねぇな。まぁ、いいや。付き合ってやるよ。)
[一人と一匹は終わりの時まで話し続けた。**
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