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[荒れ狂う火炎の渦の中央へと、双頭の龍は真っ向飛び込んでいく。
十分な速度と力があれば、炎の竜巻を突っ切って、術者に届くはずだった。
だが、現実は想像もしていなかった結末を迎える。
龍とともに竜巻に飛び込んだ直後、世界は真っ白に染まった。]
[耳を聾する轟音。全身を打つ衝撃。
遠望していたものがあれば、なにが起きたか理解しただろう。
大量の水と巨大な炎が出会った瞬間、水蒸気が爆発的に吹き上がったのだ。]
……つ、ぅ…?
[気づいたときには、湖畔に倒れていた。
何があったか、わからない。
けれども、全身が痛んで、動けそうもない。]
[目を開けども、意識は茫として定まらず。
此岸に魂が戻ってきたのは、ふたいろの暖かな風>>14>>16の為せる業か。
ゆるく動いた瞳が、傍らの乳兄弟を認め、
――― 不意に、理解した。]
… 私は、 負けたのか。
[色のない声が唇から零れ落ち、]
私では届かぬのか!
力が足りぬのか!
希いが本物ではなかったということか!
所詮は口先だけの人間であったのか!
[叫ぶたびに全身が痛む。
けれども叫ばずにはいられなかった。
悲嘆と無念が体の痛みを凌駕する。
それは現実を突きつけられた痛みだった。]
[叫ぶだけ叫んだあと、ゆっくりと落ち着きが戻ってくる
あるいは、虚脱と呼ぶべきものかもしれない。]
……そうだな。
今の私は、策なく炎に飛び込む無謀な羽虫か。
かつての私は無力な子供だった。
今の私は、何かをできるような気になっていただけの、無謀な人間だ。
力が欲しい。
本物の。
[囁くほどの声音には、血を吐くような痛みと、なおもあがく意地が乗る。
人生で二度目の挫折は、悲嘆に底があることと、立ち上がる足がまだあることを、改めて教えてくれる。
傍で、手を貸してくれるものがいるならば、なおさらに。]
そなたの、力を貸してくれ。
私は、もっと強くならねばならぬのだ。
[乳兄弟を視線にとらえ、震える手を伸ばした。*]
本物の、愛と誠をもって──私もあなたを欲します。
[ そのまま距離を無にして抱きしめよう。*]
そなたのまなざしは、私の支えだ。
思えばずっとそうだった。
成功も失敗も、そなたと分かち合ってきたな。
[彼に預けた手から震えが消えていく。
荒れた心が静まっていく。
幼いころから彼はいつも傍にいてくれた。
彼という鏡があればこそ、自分は自分を保てたのだ。
彼こそ、欠くべからざる己の一部なのだ。]
そうだ。
そなたを取り戻した時点で、私の願いは半ば叶ったようなもの。
残りは私自身の手で実現せねばならぬ。
そういうことなのだな。
私たちがここに導かれたのも、ここで敗れたことも、
すべては意味のあることであった。
貴重な機会を与えてくれたすべてに、感謝を。
[そなたにも、と視線に思いを込める。*]
[語る距離はどんどん近くなり、不意に零となる。
回される腕の圧に、胸郭の奥で鼓動が高く響いた。]
そなたの愛と誠とは、貴重なものだな。
無論、そなたが私のものならば、逆もしかりだ。
[示された誠愛を受け入れ、ゆるく腕を回す。]
[いくばくかの後、ローランドとリュカがやってくる。>>*20>>*22
二人とも服は汚れて傷も負っているようだが、大きな怪我はなさそうだ。]
二人とも見事な技だった。
私たちの完敗だったな。
そなたたちの戦い方には、大いに学ぶべきものがあった。
試練という形ではあったが、戦う機会を得たことに感謝しよう。
そして、二度の機会は来ないことを願っている。
そなたらとの対戦は骨が折れるからな。
私にとってもこの戦いは忘れ得ぬものであったし、こたびの出会いをこれきりのものとするのは惜しいと思っている。
次は是非、もっと穏やかな場所で会いたいものだ。
[二人の言葉に、晴れやかな笑顔で応じる。]
翡翠の巫女より祝福を頂けるとは、望外の幸運だ。
感謝する。
そなたらの願いが叶うことを、微力ながら私も祈ろう。
[巫女の祝福は、神妙に首を垂れて受ける。
しかしながら、二人からの薬は丁重に辞退した。]
私たちの試練はここで終わりだ。
幸いなことに私も彼も重篤な損傷はないから、少し休めば動ける程度にはなるだろう。
そなたらは、あと何度戦うかもわからぬのだ。
それは、そなたら自身のために使ってほしい。
[そうして、彼らが湖畔で他の対戦者を待つつもりと察すれば、退避させた馬を呼び戻し、その場を離れるようにゆっくりと移動を開始した。**]
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