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おおっと…!
[ 降下する軌道を塞ぐようにして、白波の壁が迫り上がる。 ]
なかなか器用じゃねえか、ベルティルデ!!
[ 煌、と、一瞬竜の鱗が輝きを増し、その身の全てを二彩の光で覆い尽くす。 ]
うおおおおっ!
[ 貫くように飛び込んだ光が、白波を超えた時、そこに現れたのは、全身を鱗に覆われた二彩の竜。
手にしていた鱗の剣は、長い爪となって海蛇竜を狙う。
ぶんと振り回した腕は、しかし、骨と鱗の剣に受け止められ火花めいた光を散らした ]
ぐおおっ!
[ 光と共に血飛沫が散る。先に受けた棘の傷が、竜の力を削いでいるのは明らかだった。
その傷も、時と共に治癒はしているのだが、今、この瞬間の交差には間に合わない* ]
[ 力だけであれば、深手を負っていても競り合える、そう踏んでのゴリ押しは、しかし、海蛇竜の意志と、水を自在に操る術に押し負ける ]
くあっ!!
[ 振り下ろされる剣を受け止めようとした竜の爪は、ぱきん、と音を立てて折れ、肩から胸にかけて、ざくりと袈裟懸けに切り裂かれた。 ]
は…俺も負けたかなかったけど、な…
『見事…と言うしか、ないか』
[ 身を覆っていた二彩の光が薄れ、青年の姿に戻った竜は、そのまま、仰向けに地に落ちて ]
きっつ…いなあ……
[ まさに、満身創痍……それでも、声音は軽かった** ]
まけ、ちゃった……
[ぽつ、と声が零れ落ちる。
落胆の色はあるものの、強い悔恨などはなく。
呼吸を整えるように長く息を吐き出した]
やっぱり、ぼくは失敗作なのかな。
にせものだから、ほんものには勝てないのかな。
[脳裏に捨てられた時の記憶が甦る*]
無事じゃないのは、お前さんのおかげだってーの。
[ 近づいてきたベルティルデに投げた言葉は皮肉気だが、声は恨む風でもない。
手を貸そうという素ぶりを見れば、少し首を傾げてから素直に手を差し出し、意外に身軽にひょいと立ち上がった。 ]
俺の力は大体借り物だからな。そういう意味では、お前さんの方が本物の強さだ。
[ 返した言葉は謙遜でもなんでもない本音だったが、美しかったと言う賛辞には、照れたように笑った。 ]
そーか?ま、目だけでも楽しめたなら良かったぜ。
[ 言いながらも、視線はもう一組の舞闘を演じた二人の召喚者へと向かう。
メルヒオルと繋がる魔力が一瞬途切れた感覚から、勝負の行く末自体は予測済みだったが、生きている姿を改めて目にすると、小さく安堵の吐息をついた。 ]
…俺の願いは、もう叶ってる。
『それは、汝のおかげでもあるな』
[ ばさりと竜は翼を広げる、二彩の鱗がその動きに従ってバラバラと剝げ落ちるように地に撒かれた。 ]
次は皇玉とやるんだろう?
今度はお前の願いが叶うよう、祈っててやるから、格上だなんて遠慮せず、ぶっ飛ばしてこいよ。
[ 言い残して、竜は中空へと身を運ぶ、向かうのはまだ十分には動けぬ風の、
なんだ、負けてへこんでるのか?
『汝の願いは勝利のみであったか?』
だいたい、勝てば本物だなんて、そんな単純なものでもねーだろ。
[ 自分を偽物と呼ぶ、メルヒオルの真意を知るわけではない。けれど ]
お前が自分をどう思ってようと、俺を呼んだのは、お前だけ。お前が俺の唯一の「主」だ。忘れんなよ。
あーあ、お前もだいぶ無茶やってんなあ。
[ 竜が舞い降りたのは、メルヒオルとヴィンセントの対話が一区切りついた頃だったか。 ]
そら、向こうで休もうぜ。
[ メルヒオルが拒絶しなければ、その身を抱き上げようと手を伸ばす。 ]
あんたの相棒も、綺麗な顔して、相当容赦ねえと思ったけど、似た者同士みたいだな。
[ 去り際、ヴィンセントに視線を投げ、口にするのはやはり、恨み節にも似た言葉だが、どこかあっけらかんとした口調に、やはり、相手を責める色はない。 ]
次は、ゆっくりみせてもらうぜ。
『楽しみなことだ』
[ 言い置いて飛び立つ竜は、紅と碧にきらめく鱗を舞台を彩る飾りのように振り撒いていった* ]
…お前と俺も、結局、似た者同士みたいだけどな。
[ ぽつりと、声はどこか切なげに響いた。* ]
……わかんない。
でも、勝てば、”ぼく”というものの証明になったのかな、って。
[問い返された、願いについては首を横に振ったものの。
己というものについての疑念は以前から残ったまま]
ぼくは、竜を人工的に作ろうとして出来たって、言われてて。
作ったひとにしてみれば、出来損ないの失敗作だったんだ。
それで、捨てられて。
しばらくは継ぎ接ぎの獣の姿のまま彷徨って。
ようやくこの姿になれるようになったんだけど、”ぼく”は何のために生きてるのかが、わからなかった。
それを見つけるためにこの闘いに挑んだってのは、言った通りなんだけど。
[そこまで言って、考えるようにしばらく間が空く]
……ぼくが望んだものは、勝ち負けで得られるものじゃないってことは、何となく、分かってた。
ぼくは、”ぼく”である自信が欲しかったんだと思う。
失敗作と捨てられても、ぼくとして生きていく証明。
─── きみを喚んだことで、それはもう得られてたんだ。
[ツェーザルが、忘れるな、と言ってくれた内容こそが、その証明。
メルヒオルを『
人との交流に問題があったが故に抱いていた願いは、全てを受け入れるように接してくれていたツェーザルが既に叶えてくれていたのだ]
[ メルヒオルを抱き上げた竜は、ゆっくりと低空飛行で月の舞台の外へと向かう。観戦していたディーターとアデルの側を掠めるように飛んで、ニッと笑みを浮かべたのは、拍手への返礼のようなものだ。
そうして、どちらも傷だらけの身を休めようと、一度個別領域の草原へと向かう。動ける程に傷が癒えたなら、当然、最後の戦いを観戦するつもりだった。* ]
ふうん、だから「竜」の偽物か。
[ メルヒオルが問わず語りに口にした出自を、変わらぬ軽い口調で受け止め、竜は目を細める。 ]
その竜を作ろうとした奴は失敗したのかもしれねえけどさ、お前自身が竜として生まれようとして失敗したわけじゃないんだろ?だったら失敗したのはお前じゃないし、お前は最初から竜の出来損ないじゃなくて、別の生き物だ。
偽物なんかじゃねえよ。
[ ある意味とんでも理論だが、竜は大真面目だ。 ]
出来損ないっていうなら、俺の方がそうかもな。
[ ぼろりと、紅と碧の鱗が、竜の腕から剥げ落ちる。剥げた部分の鱗は再生せず、青白い肌が見えるようになっていた。 ]
さっき、闘ってるうちに、全部思い出したんだ。
俺には、同じ卵から生まれた片割れがいた。
竜としての力はほとんど全部、俺の片割れに備わって、俺はただ、竜郷の片隅で生きてるだけ…
きっと、そう遠くないうちに、力尽きて消えるはずだった。
ある日…いつだったかは、もう思い出せねえくらい前、片割れは舞闘会に召喚され、消滅寸前まで魔力を使い切って、小さな宝石になって戻ってきた。
片割れの記憶と、残った力を封じ込めたそれを俺は取り込んで、それからずっと眠ったまま、消えるはずだった命を繋いでいた。
……お前に呼ばれるまで、一度も目覚めることなく。
メルヒオル…俺は、ずっと、竜郷を出て、自由に空を駆ける事を願ってた。
お前がその願いを叶えてくれたんだ。**
[「竜」の偽物。
その言葉に対して頷きを返す。
出自が原因で竜に劣等感を持つ、と言うことはないのだが、憧れに似たものは抱いていた。
ただそれも、ツェーザルの言葉で「竜」の偽物という意識から、個としての自信に転化されていく]
…うん。
ぼくは、ぼくだ。
ありがと、ツェーザル。
[とんでも理論だったとしても、救いとなる言葉]
ツェーザルが、出来損ない?
[俺の方が、と語り始めるツェーザル。
再生せずに鱗が剥げたままの肌が痛々しい。
その場所を労わるように、そっと手を伸ばす]
……そ、なんだ…。
そんなことがあったんだね。
……そっか、だからもう一人、竜の姿が見えたんだ。
今もツェーザルと一緒にいるから。
[もう一人の声も聞こえたことがある。
今もツェーザルの片割れはツェーザルの中で生きている、そんな気がした]
[初めて聞く、ツェーザルの願い。
自分のことで手一杯で、彼の話を聞けずにここまで来た。
その願いが、叶えられていたと知り、メルヒオルは目を円くする]
ぼくが、きみを召喚したから……。
ぼくが起こして、喚んだから。
ツェーザルは自由に飛べたんだ。
そっか……そうなんだぁ。
[ツェーザルの願いを叶えたのは自分。
その事実が心を温める。
ふわふわしたこの感覚が『嬉しい』という感情であるとは、今は気付かぬまま]
……ね、ツェーザル。
このままこっちに残る気、ある?
ぼくは、”ぼく”であることについては自信を持てた、けど。
生きる意味をまだ見つけてない。
一緒に、探して欲しい。
[舞闘会が終わった後も一緒にいて欲しい、と。
目線だけで見上げるようにして願う*]
見えたのか。ほんとに?
[ もう一人の竜の姿が、と言われて、竜はぱちりと瞬く。 ]
長い間に、もう俺とあいつは殆ど一つに溶け合ってるんだけどな、時々、あいつの記憶に俺が引っ張られたりもするんだ。
[ 口調が変わるのはそんな時なのだと、それも、先刻思い出したばかりだったが ]
姿まで見えたっていうなら、あいつの記憶以外の魂みたいなものも、ちっとは残ってるのかもしれないな。
なんか、ややこしいけどよ。
[ ぼやくように言いながら、竜の紅い瞳には嬉しげな光が灯る。 ]
俺とあいつは、もともと一つだったから、意志も好みも同じなんだ。
あいつもお前を気に入って、姿を見せたいと思っのかもしれねーな。
[ やがてメルヒオルの口にした問いと願い。 ]
いいぜ。
[ それに返る答えは、常のようにあっさりと軽い。 ]
俺たちはほんとに似た者同士だ。
竜郷の隅っこしか知らない俺と、生まれて間もないお前…きっと、世界の事も殆ど何も知らねえ。
― 個別領域 ―
[ 体の方は元気に見える竜だったが、剥がれ落ちた鱗が、ほとんど再生しないのは、やはりそれだけ、力を使ったということだろう ]
大丈夫だよ。
[ それでも傷を案じるメルヒオルに>>+21竜はそう答えて笑う ]
あー、でもお前の血は魅力的だな。
いや刺すなよ?
[ 自分に血を与えようとメルヒオルがランスの切っ先を指に向けると、慌てて止める ]
時間はあるんだから、今はいい。
それより、舞闘会のフィナーレ、見に行こうぜ。
[ ある程度回復すると、決戦の様子を見に行こうとメルヒオルを誘った* ]
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