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― 王都アマンド付近 ―
[ 早く降伏すれば良かったなどという言は、勝ちを得た者の勝手な言い分で、戦場では軽口の類に近い。
けれど、それをまともに受け取って、兵の命が失われた事を悔やむメレディスの様子に、苦笑が柔らかい笑みに変わる ]
貴国の兵は幸運ですね。王自らに、命惜しみ、本気で悲しんでもらえるのですから。
[ リンデマンス王は、元々王族として暮らした人ではない、とは噂に聞いていた。
農家出身とまでは知らなかったが、家臣や領民への情の厚さは、出自ならではなのではないかと想像できる。 ]
戦で命が失われるのは互いに避けられぬ事です。貴方ならば、失われた命も無駄にせず、国の未来へと生かされましょう。
[ ナイジェルが言うまでもなく、そのためにこそ、彼は捕虜となっても生きるという道を選んだのだろうけれど。
それでも口にせずにいられなかったのは、決して戦向きではないと今なら判る、この王が、戦場に立ち、堂々と大義を宣したその勇気と誠実に好感を覚えていたからだった。 ]
[ 程なく、予備の軍馬が二頭引かれて来て、ナイジェルは再び馬上の人となる。応急手当を施し、形ばかりの縄をかけたメレディスを隣の馬に乗せようとして、乗馬が苦手だという話に、本気で気の毒そうな顔になった。
結局、少々体裁は悪いが、縄を外し、騎馬兵が一人後ろに乗る形でメレディスを支え、両脇にも兵を添わせることにする。 ]
お辛いかもしれませんが、手綱をしっかり握って落馬せぬようにお気をつけください。陣まで戻れば馬車も御用意できますから。
[ 声をかけた時には、ほとんど子供を心配する親の心境だった。多分顔にもそんな表情が浮かんでいただろう。 ]
リンデマンス国王、メレディス・ソラーニー・リンデマンス殿の身柄は、マルール王国軍団長ナイジェル・ソン・ベルクがお預かりした!
陛下は、お怪我をされているため、これより後、我が方の後陣にて、ご休息頂く。
これ以上のご負担をかけぬためにも、無用の争いは避けられるよう衷心より勧告する。
[ やがて、援軍の騎馬隊が駆けつければ、メレディスを隣にして、撤退を促すナイジェルの声が響き渡る。
彼らがやむを得ず撤退の道を選んだならば、大きな勝鬨と、勝利を謳う角笛の音が、戦場の空気を揺らし、その声は王都アマンダの閉ざされた門の内にも届いただろう。 ]
狼煙を上げよ!
[ 王都の前から上がる狼煙は、局地戦の勝利をタイガへと伝えるためのもの。
今、本隊が押し込めば、それと相前後してメレディスの捕縛がクリフの元へと伝令される筈だ。** ]
― 王都アマンド付近 ―
[ メレディスの身柄の護送にはナイジェル直属の騎兵10騎と弓騎兵10騎を、守りにつけ、後陣まで戻らせるよう手配した。
主戦場はすでに王都の前から離れ、囮の役も、その効果を半ば以上失っている。 ]
動いたな。
[ 吹き鳴らされた角笛の音は、時は満ちたとの報せだ。
平原の空に高く掲げられるマルールの旗>>28の姿は見えずとも、空気と大地が、唸るように揺れるのを感じる。 ]
《七月》及び《将棋》第二隊、《八月》第二隊、前進!
[ 弓騎兵500と、投石器二基、工兵100余りのみを王都の前に残し、残る1000近くの騎兵、工兵、弓騎兵が縦列を組んで街道沿いに駒を進める。
狙うは、北側で猛将ナネッテに翻弄されつつ、善戦していたチャールズ軍への援護と合流だが、工兵を連れた進軍は、足が遅い。
到達前に敵軍に見つかり、交戦となる恐れも高いが、それは覚悟の上だった。* ]
/*
うん、ナネッテ嫂は、すでに引いていたか、まあ矛盾というほどではない、かな?
んーと、あれは、もしやノーラとやりあう動きですか?
― 平原北側 ―
[ 北側の戦場は、王都から撤退してきた騎兵と、チャールズ率いる部隊との混戦模様となっていた。>>46
それでも途中敵影に出くわさなかったのは、友軍の奮闘の成果であろう。 ]
角笛鳴らせ!
《将棋》は、この場にて待機、敵援軍の姿が見えれば牽制に回れ。
[ 先に、一度は見逃した形の騎兵隊相手だが、今度は遠慮をするつもりもない。それは相手も同じだろう。
援軍の存在を敵味方に知らせる角笛の音と共に、ナイジェルの腕が天を指した。 ]
《八月》前へ!次に敵が南下して来たところを狙って斉射の後遊撃に移れ。
《七月》は、敵左翼に回り込み突撃!
[ まっすぐ前に振り下ろされた腕の示す先に、再び蜜蜂の針が襲い掛かる。
ティルカンの騎兵もまともに矢を受け、突撃に崩される程の間抜けではなかろうが、少なくとも敵を引きつけ、チャールズ軍団長の動きを>>72助けることは出来ようか。** ]
王国軍軍団長 ナイジェルは、王国軍弓騎士 ノーラ を投票先に選びました。
― 平原北側 ―
[ ティルカン軍騎兵の動きは素早く、弓騎兵の斉射の矢は、その殆どが虚しく空を切った。>>85
左翼からの突撃にも、臆する事なく果敢に応戦する兵の気合は、恐らく先刻目前で、自軍の要人を捕縛された事への返礼の意味も含んでいるのだろう。 ]
さすがですね。
[ 援軍が加わった事で、戦力差は明らかなはずなのに、一歩も引かず、むしろ押し返さんとする意思を一兵残らず維持する精強さは、騎士団領の騎兵ならではの矜持であろうか ]
(さすが、です。クリフ殿)
[ もう一度、胸の内で呟いたナイジェルの唇に、微かな笑みが過ぎる。 ]
《一月》《二月》、後衛に入れ!
陣を整え次第、《七月》に続き突撃!
[ 未だ約束の再会はできぬままの、清廉なる騎士の面影を脳裏に描きながら、その人に恥じぬ戦いを見せようと、気を引き締める。
チャールズ軍団長が、乱戦を抜け出したと確かめた直後に放った号令は、掻き乱されたチャールズ旗下の騎馬隊を立て直し、東へ引いた敵騎兵隊に、波状の突撃を、途切れる事なく仕掛けようとするもの。
先に突撃した《七月》も、二割程はすでに落とされ、 《一月》《二月》には疲弊の色が濃い。
数の差と、気合の差が拮抗する形ではあったが、引く気が無いのは、どちらも同じだ*]
― 平原北側 ―
[ ティルカン騎兵の動きはまさに縦横無尽、鋭い楔が蛇行しながら襲ってきたと思えば、次の瞬間には、二股に分かれて挟み撃ちを仕掛けてくる。 ]
慌てるな、右翼に寄り殲滅せよ!
[ 対するマルールの騎兵は、武器の持ち手である右翼側の敵に集中し、左翼の敵は極力躱すという戦法に出た。
ある意味セオリー通りの動きだが、数の差があればこその、確実に敵戦力を減らせる法でもある。 ]
[ そんな中、ナイジェルは、チャールズが突撃して行った敵本陣の方向を見据えていた。
少数精鋭の一団が、そこへ到達する時間を計り、暫しの黙考の後、徐々に、騎馬隊全体を南へと後退させていく。 ]
《将棋》に伝令。合図と共に、敵騎兵団中央を狙い撃ち、矢が尽きると同時に離脱、撤退せよ。
[ この時まで、敵に撤退の動きがないということは、チャールズは、その目標を逃したのだろうという予測のもと、思考を、単なる援護から切り替える。
バリスタの矢は、騎手を射抜くというよりは、馬脚を乱し、落馬を誘う為のもの。
敵兵をただ倒すのでは無く、機動力を少しでも奪う策は、この一戦の、終局を、見据えてのものだった。** ]
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