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[端的に言った言葉は、女領主にはどう聞こえただろうか。
裏切った彼女としては、もしかしたら皮肉のようにも聞こえたかもしれない。]
……僕は、皆さんのように戦略とかも知らないし。
政治に関しても、腹の探り合いとか。
……よく分からないんですよね。
[はは、と軽く笑みを浮かべて、そしてヘーゼルの瞳を向けた。]
だから、貴女が裏切った理由も。
そして、此処に単身で乗り込んだ理由も。
そこまで果たしたい目的も。
……推し測りかねているんです。
良かったら、全て教えてくれませんか?++
― ヴァイスメーヴェ/来客室 ―
[>>178 ウェルシュの促しに、再び女領主は口を開いた。
流石に船を造れという不躾な注文をしに、遠路はるばる来た訳はないようだ。
ウェルシュは、カルボナードに靡くほど積極的な愛国家でもないけれども。
かと言って、ウルケルに不満もない。
―――単に政治に詳しく無いとも言えるけれども。
だから、反旗を翻すという発想は、ウェルシュにはなかった。
もっとも、ゲオルグらが戦っている海を想うと、裏切る気なんて毛頭起きないというのが、正直なところである。
アンディーヴが、そんなウェルシュの性質を知っているかどうかは知らないが。続く交渉は、先程の注文よりは、現実的なものでった。]
停戦か……
タクマさん、どうする―――……
[>>183 そんな風に意見を仰ごうとしたけれども、一旦言葉を止める。
タクマさんは慣れ親しんだ第二のおじさんのような存在だけれども、親ではないのだ。
そして自分は子供じゃない。
なんでもかんでも、意見を仰ぐものではなかろう。]
……。
[少し長めの、ヘーゼルの髪を耳にかける。
領主にしては些か節くれだった指で、己の顎をなぞり、思案の色を浮かべる。]
そうだね、僕も停戦は賛成です。
……早く戦争が終われば良いなって思っているよ。
[やがて静かに領主は口を開く。
口調はいつものように穏やかなままで。
平和を願うという女領主の意見には賛同しつつも。
しかし、と言葉を区切る。]
しかし、……例え僕が説得するとしても。
カルボナード側に、なにかメリットはあるのでしょうか。
……カルボナードは、シコンの背信を許していません。
戦争という形ではなかったにせよ、そう少なくない命が失われたと聞いています。
それなのにただ、無償で海峡を開くという訳にはいかないと思いますよ。
だから、それ相応の交渉材料となるものが必要だと思います。
例えば、帝国側の賠償金。
例えば、モルトガット皇帝の束縛。
例えば、……貴女の処刑など。
[>>1:669 シコンの背信により直接死んだ者、また逃れられずに死んだものまで含めれば、その数1000は優に下らない。>>1:506 未だに懐に眠るカルボナードからの手紙は、厳しい制裁を与えるものであった。]
そういうのが…… ありますか?
[ここまで言い切ったあとで、ふ、と扉の傍に立つタクマを見上げた。
少しだけ弱気そうな色を浮かべつつも、口調は真面目なままで、]
……。僕はこのように考えますが。
海軍からは何かご提案はありますか、大佐。
[彼に問うた。//]
― ヴァイスメーヴェ/来客室 ―
[アンディーヴの向こう、入り口の傍で静かに立つタクマ。
身動ぎひとつせず、此方の話を伺っていた彼の表情が、ふと、和らぐ。
緩まれた口唇は、誰かに向けて紡がれた言葉なのだろうか。
>>203 見えない相手との会話は、ウェルシュには知る由もなく、]
――……そうですか、失礼しました。
要らない話題でしたか。
[あくまで海軍は軍事に関することだけ。
政のことは、ウェルシュに任せるという、言外の指示だろう。
また、「帝国が勝った後の」の部分だけやたら強調されているのは、帝国軍に対する皮肉だろうか。
負ける訳がないので、そもそもこのような交渉ごと自体不要という意味なのかもしれない。
>>204 続くファミルへの言葉は、軍事のそれであるので。
特段、ウェルシュは口を出すことなく、アンディーヴの返答を待ったか。**]
― ヴァイスメーヴェ/来客室 ―
[>>246 白魚のような華奢な指が、その細い首元を指し示す。
―――やはり彼女は自らの生存を、諦めているのだろうか。
丸腰でここまで来て、そして己に停戦を持ちかける姿は。
儚げながらも、強い覚悟を持っているように、ウェルシュの瞳には映った。]
………分かりました。
然るべき時がくれば、考えておきます。
[覚悟には、覚悟で答えてやらねばならない。
>>264 タクマはまた、その覚悟に対し、別の思惑があったようだけれども。
自分は軍人ではない。アンディーヴと同じ、領主だ。
歩んだ道は違えど、気持ちは分からないでもない。
彼女の薄紫色の瞳を真っ直ぐ見つめて、頷いた。]
[>>254 暫しの沈黙ののち、彼女は自分が背信した理由を語る。]
確かに―――……
シコンは時に、花の要塞と呼ばれることもあります。
それだけ防戦に適した立地であり、……花に恵まれた美しい町と云われています。
――……青いチコリの華が街一面に咲き乱れる姿は、綺麗だったな。
[仕事の都合上、度々シコンに行くこともあったけれども。
花の季節は、それはそれは美しい街並みであったと記憶している。
ウェルシュは懐かしむように目を細め、その青い花々を思い出した。]
だからこそ、シコンには軍港という番犬が置かれ。
そして狙われた…… そうなのだと思います。
―――その番犬が、本来の役目を果たしてくれたならば、
戦況はウルケル側が有利だったと思うのですが。
[穏やかな口調を努めたつもりだが、どうしても棘が混じってしまう。
そんなこと、アンディーヴは耳に痛いのは承知の上だけれども。
どうしても、恨み言を言ってしまうのだった。]
しかし、例えば僕が貴女の立場だったら……
[例えばウルケルの東側から攻められていたとしたら。
目を閉じ、唇を舐める。そして少し眉尻を下げて、]
どうなるか分かりませんが……。
同じ選択をとっていたかもしれない、とは。
[もしかしたら、アンディーヴと自分の立場が全く逆転していても可笑しくはない。最終的には国全体の利益よりも、自分の領土の利益を優先してしまうだろう。
それが――領主というものだ。]
[>>258 最後の問いには、]
僕の願いは、
―――……あの頃から変わりませんよ。
[そう言って、アンディーヴと語らった時を思い出す。*]
―シコンの領主との思い出―
[ストンプ先代領主―――父はシコンのことをライバル視していたように思う。
プライドの高い父だったからこそ、彼の代でストンプは一気に栄えたのだろうし。その力量は、シコンの領主も一目置いていたように思う。
シコンとストンプは、場所も真反対だし、街の性質も異なっているが、ことある事に張り合っていた。
シコンに負けるな。
>>1:740 先代シコン領主に対抗するように、父もよくそう呟いていたけれども。彼等に自慢の船を紹介する父は、きらきらと子供のように輝いていた。
双子星――カストルとポルックスは、そんな父の想いが詰まっているように思える。]
そりゃ僕も強くなりたいけれど……
戦いは怖いし……痛そうだなぁ……
[>>1:741シコン領主は、「男は強いのが一番だぞ」と英雄譚を語ったあとに、必ずウェルシュに言う。
弱気なウェルシュは口をもごもごとさせながら、シコン領主にそう言うと。
「気合いが足りん!」と言って、投げ飛ばされたこともあった。
父もそんな自分を見て、笑っていた気がする。
ファミルはそんな自分を見て、どんな風に思っていただろう。
―――そう言えば、父とシコン領主は仲が良かったにも関わらず、一回もファミルとの縁談がなかったのは。
>>1:746「アンディーヴ商会に強い男を連れてくること」を命とされていたファミルの相手には相応しくないと。
つまりはそういうことなのだろう。]
『…ウェルシュはどんな船が好きなんだ。』
[>>1:746 いつだか、ストンプの造船所に訪れた際、父親同士が話し込み、子供同士が放り出された場で、そう尋ねられたことがある。まだ少年だったウェルシュは目をきらきらとさせて、彼女に語った。]
えー!どの船も大好きだよっ!
やっぱり花型は戦艦だよね。
強力な火力と装甲を活かしての突撃はかっこいいよねー。
魚雷を詰め込んだ、駆逐艦もすごいよね。
高速だし汎用性は高いし、今は人気だよね。登場初期は大型が主流だけれど、最近は小型の駆逐艦というのもあって………
あとは航空機も海戦で採り入られて久しいよね。だから、もっと航空機の離着陸が簡単に出来るよう、水上機母艦もかなり改良されていてさ……
[エトセトラ。エトセトラ。
ファミルは止まらぬ船語りに、飽き飽きしていたかもしれない。
それでもウェルシュの熱弁は止まらなくて。
(ウェルシュに船の話を振ってしまった、ファミルの不幸である。)
ひとしきりウェルシュが話し、ファミルの耳にたこができそうな頃。
でもね、と言葉を区切り、]
―――……大きな豪華客船を造りたいんだ。
世界一周しても平気なくらい、とても、とても大きな。
[>>1:747 だから客船が好きという彼女の言葉には、花のような笑顔で、]
僕も好きだよ、客船。
青い空に浮かぶ、無数の帆。
潮風を目一杯受けて、海を切り裂いて優雅に泳ぐ姿。
――――とても、綺麗なんだ。
[ストンプがまだ今ほど栄えていなかった頃。そのような帆船も作っていたという。
海洋軍需が高まり、ストンプが専ら軍艦を造る場所として栄えた今では、帆船を造ることもなくなってしまったが。]
いつかこの海峡内だけじゃなくってさ。
海を越えて、世界中の海に僕の船が浮かんでいたらさ、凄く素敵じゃないか。
そして僕もその船に乗って、色んな国を眺めたいんだよね。
[人々が立ち働く活気に、その願いは静かに溶けゆく。*]
― 現在:ヴァイスメーヴェ/来客室 ―
僕の願いは、
―――……あの頃から変わりませんよ。
[遠い過去を思い返すように、ヘーゼルの双眸は細められていた。
そして意識は再び、目の前の女性へと戻る。
幼き頃の他愛もない会話なんて、彼女が覚えているかどうかは分からないが。
時を越えて、再びウェルシュは語る。]
ストンプの船を世界中に広めたいですね。
僕らの造船技術を、この海峡だけでなく広い海でも試してみたい。
あらゆる海に乗って、様々な国に技術を提供できたら、と思う。
……だから、実は僕も、
海峡を開くこと自体は、賛成なのですけれどね。
だからこそ、停戦の呼びかけというのは分かる話だ。
[最後に付け足された本音は、タクマの手前、小さめな声になった。
>>0:76 海峡の解放に対し、ウルケルが帝国に出した要求は、あまりにも無理難題。己の軍事力を過信しているのかどうか、ウェルシュには測りかねるけれども。
ただそれとは別に、ストンプの造船知識をこの狭い海峡内だけで留めるのは、少し勿体無いと考えていた。]
帝国の方が憎いという訳でもありません。
海峡を開く方が、双方の利になるなら……そうするべきでしょう。
[しかし、と言葉は区切る。]
僕は、ひとつだけ。
帝国の考えに、頷けないことがあります。
……。
先程も言った通り、いずれは海峡の外に出たいというのが僕の願いなのですが、
[>>0:55>>1:8 帝国によって今は地図にない国がある。
>>1:544 その鐘の音よ永遠に。
―――自由な魂を謳った、雄大な国は、もはやその自由はない。]
陽の沈まない国を造る、というのが現皇帝の意志と伺いました。
それは立派な信念ですが―――…
然し、その為に、悠久の歴史を刻んできた国が地図から消えるのは居た堪れないことです。
ウルケルも、そんな帝国の踏んだ無数の小石のひとつにならぬよう。
……今、重大な選択を、ウルケルは迫られていると思いますが、
[随分と長く語り過ぎてしまった。
一旦話していた口を止め、小さく深呼吸をして、続ける。]
海峡を開くとしても、
最後までウルケルの誇りをもって挑みたいですね。
[ただ、無償で海峡を開くならば、帝国はそれを契機に侵攻してしまうかもしれない。
そうならぬよう、ある程度の威信を持って挑むべきだ、と。
>>258 花の都の領主の問いには、そう言って締めくくった。*]
― ヴァイスメーヴェ ―
[>>262 自分の話がひと段落した時を見計らって、次はタクマが話しだす。
彼の養い子が居た船が沈められたという事は、ウェルシュにとっては初耳だった。驚き、思わず口を挟みそうになったが、堪え、黙る。
どうやら生きているらしいと聞き、内心胸を撫で下ろした。
タルワールを軽く叩きながらそう言う、彼の表情を真剣な顔をしたまま、見詰める。]
………。
[彼の養い子と自分は面識があっただろうか。>>265 彼の養い子を襲ったファミルを、タクマが許すことが出来ないというのは、当然の怒りであった。ここで、そのタルワールを引き抜かないのは、彼の強い理性に依るものなのだろう。
軍人の覚悟の話、家族の話を聞けば、自然と思い浮かぶのは、
―――姉さん。
士官学校に行き、そして家を出ていった姉。
彼女は今頃、何をしているのだろうか。
もしウルケルの海軍に居れば、ゲオルグやタクマ辺りから自分の耳へ、自ずと報せは入ってくるはずだ。
然し、そのような報せは一度たりとして聞いたことがない。
―――彼女は、今、何処に居るのだろうか。]
[会談が終わると、タクマは再びファミルを彼女の乗ってきたランチまで送り届けた。若しかして、帰り際に撃つのではないかと思ったが、そのようなことは海軍はしなかった。
その様子を見て、少し唇の端を歪めながら、]
……父が造った、
双子星を沈めることにならなくて良かった。
[そんな風に呟いた言葉は、潮風とともに消えていく。*]
― ヴァイスメーヴェ ―
[>>328 自分の呟きを聞いたタクマは、僅かに表情を歪めた。
あの双子の船を見逃すのは、ファミルが彼の忠告通りに反転するならという条件付き。
もし、船に戻ったあと、直ぐにこちらに砲台を向けるというならば。
―――同じ港で生まれた船が、このウルケルの海の上で沈め合わなければならない。]
………。
[女領主はどちらの船に戻っていっただろうか。
ウェルシュは全く同じに見える双つの船のうち、片方を指差して、]
タクマさん、
―――あちらがポルックス。
隔壁を増やし、砲撃からの攻撃に強いんだ。
その分、動きはカストルには劣るけれど。
[そして指を、す、と横にやり。
一見して、あまり洋装が変わらない船を指差して、]
カストルは快速だ。
隔壁は少ないが、その分軽い造りになっている。
瞬発的な速さならヴァイスメーヴェのほうが速いけれど……
一度、加速してしまえばカストルの方が上なんだ。
[だから、と。言葉を区切り、]
……もしあの船を攻めるとすれば、
あの双子星の性質の違いを―――掴むんだ。
防戦に適したポルックスを叩くよりも。
カストルに距離を置かれる前に、詰める方が良いと、…思う。
[本当はそのようなことに為らないのが一番だけれど。
その本音は、口に出さずに。]
― 巡洋艦ヴァイスメーヴェ ―
―――……。
[>>366 自分がいつものように、船の知識を愛と熱を持って語っている訳ではない。
それはタクマには当然、察せられることだった。
タクマの指示が静かな甲板に響き、海兵たちが機敏に動く。
ガチャン、と鉄の音がして。主砲が、双子星の兄に向けられる。
領主たちが立つ甲板が、僅かに縦に揺れる。
ボイラー室に石炭が投げ込まれ、振動が伝わっているのだろう。]
…ん?
[なにかあったのだろうか。
>>367「謝らなければならない」と言う理由は分からなくて。
軽く小首を傾げてみせるけれども。追及はせず。
ただ、―――ヴァイスメーヴェが二つの星を落とさぬよう、祈るばかりで。]
― 巡洋艦ヴァイスメーヴェ ―
あれは……
[>>499 タクマが「不味い」と呟き、信号弾が上がったのは、まだ双子星が海を走る前。
白い二つの煙が、短い音と共に青空へと飛んでいき、雲のなかに溶けていく。
やがて、ウェルシュの肉眼でもその艦影を捕えることができた。
どちらも馴染みのある戦艦―――ウルケル海軍の船だった。]
………。
[>>509 「民間の避難船」と仲間に伝える様子を見て、安堵の息を軽く吐いた。
もし正直にシコンの船と伝えれば、即座に撃ち落とされる可能性があるからだ。
タクマの配慮に感嘆しながらも、しかし、>>512 カモメの嘴は、その星に狙いを定めたまま。++]
[痛い位の静寂のなかで、祈りの声だけが己のなかに響いていた。
やがて双子星がその青を切り裂き、動き出した―――]
……っな!!
[排煙の煙が立ち上る。
一歩下がる斜めの位置に相似の姿を置きながら、二隻は東へ向けて、速度を増していく。
丁度、此方側の脇をすり抜けるように、東側へとその尖頭を突っ込ませてきた。
>>514 下士官の声が鋭く上がり、タクマの指示は迅速だった。
その右手が、す、と上がり、今まさに振り下ろされんとしていた。]
――――……ッ、
[轟音が響き渡る瞬間、ウェルシュは目を閉じてしまった。
撃たれた鉄の塊が、水上に落ちることを期待していたが、耳に入る音は、何かの悲鳴のようなつんざく音。
瞼を開くと、砲火が兄星の側部を抉り、横倒しに傾いていた。
>>518 それでもなお、その快速を活かして逃げ切ろうと試みていた。]
アンディーヴさん、
どうして―――……!
[足元の振動が強くなった気がした。
>>366 石炭を大量に食んだボイラー室がその火を噴こうとしていた。
>>341そう、「距離を置かれる前に叩け」と言ったのは、他ならぬ自分だった。]
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