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[蛇が盾に噛みつくと、硬い音がして少女達の身の丈ほどの大きさをした盾の表面に一本の亀裂が生じた。
蛇の鋭い牙に後三度も噛みつかれれば、この魔法は消滅してしまうだろう、と少女は判断する。]
――レオ、先刻オヴニルを足止めした技はもう一度出来そうですか?
[また牙に晒され、水晶の盾に罅が入る。
レオにもこの魔法が制限付きのものであると分かるだろうか。
少女は蛇の動向を窺いながら背にした相棒に問う。**]
流水の守護者 ベルティルデは、疾風の御魂 九神 星司 シュテルン を投票先に選びました。
――そうですか。
[>>206レオの返事に少女は少し安堵する。
少女は短い間にオヴニルの再生能力に対応する方法を纏めようとしていた。それは荒削りなものではあるが。
砕け散ったあの時に撃破したように思えたが、こうしている間にも徐々に己の欠片を取り込んで殆ど戦う前のような身体に戻ってしまっている。
否、見間違えがなければ心なしか体表の一部は凍っており、小ぶりになった気がする。]
――オヴニルはの二つ名は『輪を作るもの』。
不死の能力があるのであれば、其方で知られる筈ですわ。
であれば、あの再生能力には制約がある筈。
現に少しだけ動きが鈍く、小さくなったような気は致しませんか?
ですから――
[核を見つけて、今度こそ粉砕してしまえばいいのではないか、と。
火炎の魔法であれば身体を焼き尽くしてしまえばいいが――少女は流水の力の使い手である。]
今度は、モーインに使った魔法を二つ、続けざまに発動させます。
[ヴァッサー・クーゲルは水球をぶつける魔法。
ライニグング・シュプリューデルは魔物を浄化させる魔法だ。]
レオは、クリスタル・シルトが壊れる瞬間に先程の技をお願いします。
それからいつものポジションに交代致しましょう。
――その後は防備に専念しつつ、発動までの時間を稼いで頂けますか。
そして魔法の発動をする際に、また足止めをお願いします。
[二度の魔法を間隙なく発動させるのに成功した事はない。
それに自分がオヴニルと十分に距離を取れない状態で、レオに守って貰うのは難易度が跳ね上がる。
けれど、少しずつ彼女とは連携が上手く取れるようになっているし、氷ではなく、使い慣れた‘水’であればまだ目はあると思う。]
――今です!
[少女は盾が砕かれる直前に斜め後ろに下がり、レオとポジションを交代する。
>>207棘持つ薊が「輪をつくるもの」を打ち据え始めれば更に数歩下がるが、広さ的にそれ以上は下がれない。
棘が当たって、オヴニルの胴体の一部、凍ったままの表皮が砕け散る音がした。
それを数歩後ろで聞きながら少女は水の気を集め、魔法を発動させ始める。]
清漣なる蒼き魂よ
我の求めに応え給え
疾く――疾く
[領巾をはためかせながら紡ぐのは、発動までの時間を短縮する効果を持つもの。
性格には祝福を授ける精霊に向けてそれを了承して貰えるよう願うもの。
未熟な修行中の身なので、普段は殆ど省略する事はない。
行程を正確にこなした方が精度は高いからだ。]
[けれど追い詰められた状況が、少女に適応させようとしていた。
自分達が力を貸す。
見ているから頑張れ、と。
幼い水精達が応援してくれる声がした。
心の中で有り難うと告げながら、少女は集中力を高める。
――水の気が集まり、少女の纏う領巾が眩く瞬き、
魔法の発動が近い事を感じさせる。]
我に仇なす敵を射抜け!
ヴァッサー・クーゲル!!
[>>290レオが槍を投擲し、オヴニルの身体を縫い止める。
その直後に空色の6(3x3)個の水珠が現れ、唸りを上げならオヴニルに襲い掛かっていった。
圧縮された水珠によって、輪を作るものの身体を穿ち、凍った表皮が砕ける。]
[効果はあるようだ。
けれど、まだ足りない。
オヴニルが躰に走る痛みに尾を激しく揺らしながら暴れるのを視界に収めつつ、少女は次の魔法の準備にかかる。]
レオ、オヴニルから離れて下さい!
[二つ目の魔法を完成直前まで練り上げた少女は再び相棒に聲を飛ばす。]
[深く息を吐き、吸うと、扇を円を描くように動かしながらくるりと回る。
無防備な姿を見せる事になるが、相棒が>>285絶対に触れさせない、と約束してくれたのだから躊躇はない。]
其は清浄なる力。
汝の力を持って、迷える魂を浄化せよ!
ライニグング・シュプリューデル!!
[聲で相棒に蛇から離れるように促した後、扇でオヴニルを真っ直ぐに指し示し、裂帛の気合で紡いだ呪文。
空から降る浄化の泡が、オヴニルの身体を包む。
砕けて散らばっていた欠片はすぐに月白に溶かされ、身体の再生に歯止めをかけた。]
[悶えつつも泡に浄化され、少しずつ小さくなっていくオヴニル。
モーインと比べれば細身の身体、先程は比較的損傷の少なかった腹部に、まるで命を燃やすようにぼうと光る紅い光を見つけた。
火輪の如く激しく回るそれは、恐らくは輪をつくるものの核。]
レオ、腹部ですわ!
赤く光っているところです!
[少女は震える膝を叱咤しながら、相棒に急所は尾だと告げる。
自身は魔力は粗方使い切っていて、肩で呼吸している状態だった。
少し休めば回復するだろうが、すぐに魔法を使う事は出来ない。]
――これを。
[レオに自分の扇を託す。
閉じられたそれは、棒のように振るう事が出来る。
加護の力で先程よりも強度が高められ、少し短いロングソード程の長さになっている。]
…止めを、刺して頂けますか。
[自分の武器を託すのは信を置いているから。
気力で声を振り絞り、レオに願った。]
わかった――後はお願い!!
[デッドライン寸前、裡へと飛ばされたベルティルデの聲に
此方も聲を飛ばした]
―回想:精霊節まで・風組と―
[大魔法使いの息子のウェルシュカーディの事は伝え聞いていたが、顔を合わせた回数はアイリルートよりも少なく。
風の二人、否三人は相性がいいようで、共に鍛練を積む姿は何度も目にする事があっただろう。
少女とレオは得意とする分野が違うので、修練を積む上では彼らにもお世話になった。]
ウェルシュカーディ様、セイジ様、セイン様。
お疲れ様です。
――これ、差し入れです。
宜しかったらどうぞ。
[水筒に入れた、一族に伝わる回復効果のある飲み物を差し出し、少女は微笑む。
二度味見をしたので上手く出来ている筈だ。
時折そうした差し入れを修行で汗を流す他の勇者候補にもしていた。]
貴方方はとても息が合っていらっしゃいますのね。
羨ましいですわ。
――私も、上手くレオと連携が取れたらいいのですけれど…。
[有事の際には勿論彼女と組む心算だ。
レオは戦う事を意識してはいないようだし、
少女はレオよりも修練は積んでいるものの実戦経験がないのでどうなるかは蓋を開けてみなければ分からない。
息を合わせるにはどんな事に気を付けたらいいだろうかと、他にも聞いて回っていたが彼らはどう答えたか。*]
―ミリアムとの出会い―
[水の守護者の集落は閉鎖的である。
誇り高き水の精霊の血を受け継いだ守護家はそれを矜持としており、
清らかな水が豊富に使える事は集落に住まう者達に豊かな生活を齎した。
それはいつしか自分達のみでも十分に生活出来ると思わせ、
集落には招かれた客人か、決まった者以外はあまり人が訪れないようになっていた。
勇者に力を貸した精霊の特徴を色濃く受け継いだ似た女子は、
片手を超えるまでは病気や大怪我などをしないように、輪をかけて過保護に育てられた。]
[7歳の時、招かれた客人は淡い金色の髪をしていた。
同性で、かつと同じ守護者という事で、是非少女の友人にと求められたのだ。
事前に告げられていたものの、アイルリートの性別を間違えた一件から、また何か失敗しないだろうかと少女はかなり緊張していた。]
ほんじつはわざわざおこしくださり、どうもありがとうございます。
あなたがミリアムさまですか?
はじめまして。
わたくし、ベルティルデともうします。
[スカートの裾を摘まみ、挨拶をした少女は自分より一つ幼いミリアムに頭を垂れる。
先生に習った通りに出来て、少女はほっと安堵の息をつく。]
――あの。
さしつかえなければ、そとのことをおしえていただけませんか?
わたくし、そとにあまりでたことがないのです。
[はにかんだように笑う顔の、薄藤色の瞳は好奇心に輝いていた。
それから彼女と友誼を交わし、父母に連れられて彼女の住まう集落にも足を運んだ事もあった。
成長するにつれて修行の時間が増えると、会う機会は随分と少なくなってしまったが。*]
[剣の百合を持ってオヴニルに向かおうとしたレオに扇を渡したのは、
これが終われば疾風や火炎の勇者候補達と同じように試練が言い渡されるのではないか――という漠然とした予感があったから。
もしそうなら、彼女と最後まで心を合わせて戦いたかったのだ。]
――…、よかっ、た
[扇を振りかざし、火輪を打ち砕くレオの姿を見て少女はその場に座り込みかける。
何とか踏みとどまるとそっと安堵の息をついた。]
[核がなくなればオヴニルはその存在を保てなくなり、討伐は終了する。]
お疲れ様でした、レオ。
[>>343少女は歩み寄って来た相棒に向かって笑いかける。
けれど対する相手は苦しげな表情を浮かべていた。
頭を下げる彼女の言葉を聞いて、ゆるりと首を横に振り]
レオ…。
少し休めば大丈夫ですわ。
私も先のモーイン戦が成功した事で油断しておりましたもの。
[左肩に触れようとそっと右手を伸ばす。]
[届いたなら、そっと撫でて。]
上手く出来なかった事は次に生かせばよいのです。
同じ間違いをしないように気を付ければ、私達、もっと強くなれますわ。
[そう言って、微笑む。*]
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