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− 滑走路 −
[魔術師かとアイリに突っ込まれたが、あまり違和感は感じなかった。
何もないところからティーセットを取り出せる世界に呼ばれたのは未来の話になるが、執事を使うのに慣れた身には世界が味方するものらしい。
ともあれ、アイリがリーフと呼ぶ鷹が文書を掴んで羽搏くのを感嘆の眼差しで見送る。]
確かに優秀な子だ。
♪ ──
[鋭く指笛を鳴らせば、滲み出るように出現する腰高の栗毛。
黄金の鬣も尾もパッツリと切りそろえられた優美な馬であった。
馬具も金箔の模様をおした立派なもの。貴族の乗馬に相応しく。
同時に、滑走路には飛び越えるべき
本来なら、服もあわせたいところであるが──仕方ない。
こちらはいつでも出発できるよ。
ああ、レディ・ユーリエ、そう、ハンカチを投げて。
地面に触れた瞬間にスタートだ。
[方式を問うユーリエに身振り込みで説明すると、自らは騎乗してスタートラインに並ぶ。]
− 滑走路 −
[草原の民に育てられた黒鹿毛と、優駿の血統を誇る栗毛がスタートラインに並ぶ。
それぞれに騎手を得て逸るよう。
駆けてゆく先では、次の戦の
「Ready…」 >>509
そして、ユーリエの落としたハンカチが地面に触れると同時に、馬は放たれた矢のように飛び出した。]
[第一の
軽い浮遊感、そして着地の衝撃。
第二、第三の
風に乗る。
第四の飛び越しから勝負をかけた。7(10x1)秒。
最後の跳躍は低く、横木の上ギリギリを抜ける軌道で、ゴールまでの最短距離を疾駆する。4(10x1) 秒。
果たして、決着は──]
− 滑走路 −
[アイリのタイムは22秒、こちらは32秒。
あの小柄な馬のどこにそれほどの脚力があるのか、騎手の力量の差がここまでとは、と目を見張るような伸びの良さだった。]
人馬一体とはこのことか──!
[感嘆の後に、悔しさが込み上げる。
だが、貴族のならいとしてそれを押し伏せ、アイリに一礼した。]
栄冠は君に。
さて、強者よ、 君は何を望む?
− 滑走路 −
[アイリが望みについて思案している間に、ユーリエがシルクのハンカチを返さんと走ってきた。
小さく首を振り、押しとどめる。]
それは、勝負の日までお預けする。
後刻、ビリヤード台のあるサロンで会おう。
これから、ここは戦場になる。
今は、危険のないところへ下がっていることをお勧めするよ。
[同意を求めるように、勝負を見守っていたソマリへと視線を投げた。]
− 滑走路 −
[アイリが告げた「望み」を胸に納める。
今はまだ、鍵のかかった箱。]
ああ、考える時間を作ろう。
──良き風を。
[空の民の祝福の仕草をして、ユーリエとともに安全な場所へ移動するよう促す。]
− 滑走路 −
[アイリらに手出しする様子もなく整然と居並ぶ敵軍の前に立つ
それが将だというのは自ずとわかる。]
馬上より失礼する。
わたしがフェリクス・ヴェンダーヴァルト・フォン・フリーゲンベルクだ。
待たせた上に、目の前で少女に負けたところを見せてしまったが、まだわたしを敵将として遇してくれるかな?
− 滑走路 −
フェストゥング卿、
寛容いたみいる。
[ソマリの承認を得て、馬首を返す。
滑走路の反対側に、忽然と軍兵が現れていた。
先程、ソマリに伝えたとおり、中央に騎兵、左右に弓兵、後隊に歩兵という布陣だ。]
この戦は、どこか拠点をとれば勝ちというわけではなく、敵を潰走させるまで続けなければならないのだね。
[あるいは、指揮官同士の一騎打ちという手もあるのだろうけれど、得点制のフェンシングが通用する相手とも思えなかったので、こちらから申し出ることはまずないだろう。]
− 滑走路 −
[将来は軍を率いることが期待される家系の嫡子であり、その道を望んでもいるけれど、実際、こういった形で中世的な混成軍を動かしたことはない。
どの程度まで敵を引きつけてから弓を射つべきか、そういった勘所も体得できていなかったから、自陣に到着したらまずやることは、準備が整ったと知らせがてらの笛矢斉射で、矢の射程を知ることだ。
麾下の軍がゲームの駒のごとく即応して裏切りもしないことは、新参の指揮官にはありがたいことである。]
[ソマリの陣容は間近に見ていた。
左右翼に機動力のある騎兵を配し、中央は歩兵で固め、弓兵を後隊に置いていた。]
戦術の本で見た基本の用兵であれば、弓でこちらを足止めしつつ、その間に騎馬隊で包囲してくるだろうかな…
[予測はシンプル。
富強の国の御曹司は奇を衒わなかった。]
こちらの序盤は、翼に置いた弓兵のみを前進させての斉射とする。
[その後は、状況に応じてプランに手を加えていくことになるだろう。]
…そう簡単には崩させてもらえそうにないしな。
[自信ありげだったソマリの容貌を思い出し、いまだ戦場を知らぬ未来の戦略家は壁に挑む喜びを感じる。*]
― 滑走路 ―
[突出させた自軍の弓兵が放つ矢の驟雨が敵前衛へと叩きつけられる。
それを待たずして、敵の騎馬隊も半数が進軍していた。
矢はそこへも降り注ぐが、さほど効果的な打撃を与えているようには見えない。]
なるほど、散開陣形。
馬鎧まで装備した重騎兵もいるのかな。
[状況を分析し、打つ手を考える。]
弓兵隊、騎馬隊の進路から外側へ退避。
大外で再び陣形を組み直し、中央への攻撃準備をしておけ。
中央騎馬隊、前進。敵前衛へ突撃をかけよ。
速攻を旨とする。
[散開よりもスピードをもった圧を選んだ。]
歩兵隊は騎馬隊に備え──
[ピアノを奏でるよう、宙に指を舞わす。
その時、遠距離斉射が来襲した。]
歩兵隊、ファランクス!
[叫んだが、それでも、いくつもの穴が穿たれる。
まだ歩兵は動かせない。//]
そういや、描写忘れたけど、最初から敵の弓射程内に布陣したりはしないはずなので、両軍ともじわじわ前進し、射程に入る辺りで一気に動いたという認識でよいのだよね?
− 滑走路 −
[森が動くように、兵たちが動く。
自軍の中央から、敵へと楔のように突撃する騎馬隊。
敵の遠距離斉射により、騎兵隊の後ろは削られ列を乱していた。
騎馬隊を受け止める敵歩兵隊の前列が撓む。
それは突撃の力を受け流すべくとられた陣形であったのだが、フェリクスの経験ではそれと察することはできなかった。
ゆえに、そのままの力押しを試みる。]
騎馬隊、押し込め、 敵歩兵隊戦列を崩せ!
[そうは言ってみたものの、乱戦になった場合、騎兵と歩兵とではどちらが強いのか、見て判断するしかないと思った。
少なくとも、騎兵の機動力が活かせないことはわかる。
そして、敵の矢攻撃が止まった。]
乱戦に持ち込んだせいか…?
[思案する。
見守る前で、騎馬隊の中央突破に巻き込まれないようにとの意図だろうか、敵弓兵隊が左右に開いた。]
…シリーの人間として、制空権を取られるは恥辱。
弓部隊、大外より敵弓部隊へ攻撃可能な距離まで進攻せよ。
[そんな意地を持ち込むべきではないのかもしれないが、そうでなくては自分が指揮をとる意味がないと拳を握る。]
こちらの騎馬隊が押している。中央突破して各個撃破を──
[その目論みが敵わぬと気づいたのは、分断されたかに見えた敵歩兵隊が騎馬隊を包囲せんと動く様子を見た時点。
さすがに、先程の引きは作戦だったのだと察する。]
くっ…、 騎馬隊の足を止めさせるな。
突破させるしかないっ
[斉射を受けて穴のあいていた部隊後方は元より、騎馬隊全体に大きく犠牲が出そうだったが、他に手はないように思えた。]
[その間に、敵の騎兵は後続の部隊までも戦線に投入し、横隊の味方歩兵へと波状攻撃を繰り出す。
鎚で打たれるかのような衝撃が伝わってきた。
揺さぶられる。削られる。]
歩兵、槍襖の円陣を組み、微速前進!
[歩兵には堅忍を命じ、じりじりと敵歩兵隊との距離を詰めさせる。
白皙の額に滲んだ汗を、手の甲で拭った。//]
− 滑走路 −
やるからには勝たねば。
[自分の未来を遮る
今は、戦うことに喜びよりも焦燥や責任感を感じる。
それでも、引けぬ矜持はある。
「オレも昔は、死ぬかと思いながらやっとったもん」
そんな言葉で寄り添ってくれる同胞もいる。]
[指揮官の気合いを反映するかのように、騎馬隊は力押しで敵軍の後方へ抜けた。
そこへ待機していた弓兵が射かけてくる。]
くう…っ
[敵弓部隊へ攻撃を開始した味方弓兵の援護もあって、いくたりかの騎馬は勢いを殺さぬままに後方へ離脱したが、もはや隊を編成できるほどではない。
脱したというより、放置されたというべきか。
これではもう戦力にならぬと騎馬隊の指揮を止めれば、騎兵たちの姿は霧散する。]
[敵騎馬隊はといえば、味方歩兵隊を撫でるように削っていった後、馬首を返して大外回りに弓兵の背後を突かんとしていた。
移動しながら陣形を整列しての速攻。]
…疾い。
[元より防御力のない弓部隊がその馬蹄の前に蹴散らされる。
個々に応射はできても、戦術レベルでの運用は難しい混乱ぶりだった。]
こちらの手持ちは、ほぼ歩兵のみとなってしまったか。
[苦い現実を確認する。
敵はその歩兵部隊に斉射を加えていた。
とはいえ、盾を亀の甲羅のように重ねた堅牢な円陣を組む歩兵隊は、初手のような大穴を開けられることなくじわりと距離を詰め手ゆく。
その進路には、潰滅に追い込まれた味方騎馬隊の包囲を解いて反転した敵歩兵隊。
数ならば、こちらの方がまだ有利とみる。]
円陣解除、
敵騎兵が戻る前に乱戦に持ち込み、圧せよ!
[他に切る手はないと、号令した。//]
− 滑走路 −
[兵が削られる。集中力がふっと途切れそうになる。
望んだとおりの乱戦。
自分がその最中にいるような気すらした。]
応戦、 …戦え! たたかえ!
[発するのはもはや指揮といえるほどのものでもなくなってきていた。]
[敵が騎馬隊をひとつに再編するのを見て、散った兵を参集させることを学ぶ。]
…弓兵部隊は使えるか。
[だが、既に乱戦になっている中央への射撃は躊躇われた。
それは甘さ。]
騎兵への狙撃を。
[せめてもと命じたが、高速で動く騎馬相手に効率はなかなかあがらない。]
[歩兵もまた、指揮官の疲労を共有するように動きを鈍らせていた。
鱗が剥がれてゆくように盾が落ち、視界を遮るものが減ってゆく。]
──ここまで、 か。
白旗を。
[指揮卓に両手を突き、項垂れた。//]
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