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大体、参加時間でなかのひとがわかってしまう件。
まあ約一名、まったく隠す気無いのはともかくとして(自分もです
[ 妖術師は西側から討って出た者達に気を取られていると見えて、東から煙に紛れて近付くカスパル達には気付いていない。
イェンスが、その煙に閉口しているとは露知らず(知ったとしても行動に変わりはないが)カスパルは、無言のまま騎士達に合図を送る。
狙うのは側面から急襲して、クレステッドの周囲にいる魔物達を蹴散らして、彼を助け出すことだ ]
[ カスパルの父も守護騎士だった。聖殿の守護騎士は、通常領地は持たず、聖殿からの些少の手当と自給自足で暮らす、庶民と大して変わらぬ生活の者がほとんどで、カスパルの一家もそうだった ]
[ 父母はカスパルが成人する前に相次いで病で亡くなった。しかし、すでに騎士見習いとなっていたカスパルは、そのまま騎士となることを目指し...そこでイェンスとも出会ったのだ ]
お前には負けないぞ。
[ 貴族の子弟であると噂に聞いた、しかし剣の技量は、誰よりも抜きん出ていたひとつ年上の同輩に、そう告げたのは幾度あったか。
最初は負けん気も露わに、途中からは笑みを浮かべ楽しげに、時には少しふざけた調子で...きっとそんな風に様々な表情を見せたのは、彼くらいのものだったろう... ]
[ イェンスの手助けに向かうべきか?と、騎士の1人が尋ねる視線を向けて来たが、カスパルは首を横に振った ]
[ そして、クレステッドに手が届こうかというその時 ]
『隊長...姫が!』
[ 西の跳ね橋を渡り、魔物を見事な腕で斬り伏せながら駆けるチャールズの後ろに守られながら、ローズマリーが妖術師の元へと足を進めるのを、騎士の1人が慌てて指差す ]
......行くぞ!
[ 噛んでいた布を吐き出し、カスパルは鋭く声を上げ、先頭切って走り出した。
色々と思う事はあれど、イェンスが前に立ち、チャールズが姫を連れて来た事で、妖術師の気は完全にクレステッドからは逸れている。
救出に、これ以上の好機はない ]
高潔なる騎士の命、貴様等如きにやるわけにはいかんっ!
[ レイピアで、前を阻む魔物を突き倒し、カスパルは、身軽に積み上げられた薪を駆け上る。慌てて火をつけようとした魔物は後続の騎士に斬り伏せられた ]
エンバー殿っ!!
[ 騎士達と協力して柱を傾かせ、クレステッドを戒める鎖を解こうとしながら、その名を呼ぶ ]
[ クレステッドが目を覚ましたなら、彼を支えて退路を開こうとする ]
『おのれえっ!』
[ さすがに気付いた妖術師が、炎の塊を放ってまだ足元にある薪を燃え上がらせた ]
くっ...!
怯むな!駆け抜けるぞ!
[ 騎士達を鼓舞しながら、走る。幸い、燃え上がる火は周囲の魔物の数をも減らし、熱さに耐えれば撤退はむしろ容易だった。
そして、それ以上の追撃が絶えたのは、ベルガマスコと直接対峙したイェンスとチャールズ、そして恐らくは、決然と妖術師を糾弾したローズマリー姫の力、であったろう** ]
― 前日 ―
礼は要りません、
[強靭な意志の力で、妖術の縛めを振りほどき、顔を上げたクレステッドに>>141カスパルは煤で幾分か汚れた顔を向けて笑う。
やがて炎から逃れ、しっかりと地に足をつけて立ち上がった騎士の元へ、忠実な芦毛の馬が駆けつけたのを見て、カスパルも、再び馬上へと身を運んだ。
クレステッドの吟ずる、誇り高き騎士の誓いを耳にすれば>>142煙と炎に燻されて疲れを隠せずに居た守護騎士達の表情が引き締まり、皆、一様に背筋を伸ばす。轡を並べたカスパルも例外ではなく、仰ぎ見るようにクレステッドの横顔を見つめ、敬意の印に黙礼をひとつ贈る]
マイルズ、ラス、レッグ、お前達はローズマリー殿の護りに加われ。
[名指したのは騎士隊の中でも率先して炎に突っ込み道を切り開いた者達。火傷も負い、煙も多く吸い込んだ彼等を護衛という名目で街へと先に戻らせるのが目的だ。
先陣を切ったのは他ならぬカスパルだったが、その隊長をも守ろうとした若い騎士達にこれ以上の無理をさせることを良しとは出来なかったのだ]
………エンバー殿、隙があれば、ベルガマスコを討ちます。後詰めを願いたい。
[チャールズとイェンスが、何より、ローズマリーを無事に下がらせる為に、ベルガマスコと真っ向から対峙し続けているのは分かっている。彼等に気を取られた妖術師を狙う機会があれば、という目論見は、しかし、捨て台詞と共に黒い霧に包まれて、その姿が消え失せた事によって潰えた>>147]
全く、逃げ足だけは一流か。
[憮然として呟いたが、こうなってしまえば、今は追う術も無い。ともあれ聖地と姫君を、当面は守れたことで無念を抑え、防衛に携わった者達の街への引き上げを助ける事に気持ちを切り替えた]
チャールズ殿の鍛える武具は、斬れ味も丈夫さも折り紙付きです。私のレイピアも、彼に特注したものですよ。
[その途中、チャールズの腕に感嘆の声を漏らしたクレステッドには>>154見本のように、自分の手にするレイピアのしなやかさと、強靭さを示して見せる]
チャールズ殿だけではなく、騎士以外の住人も皆、聖地を守る為には身を呈して闘う勇気と誇りに満ちた民です。守護騎士とは言いながら、我等も支えられ、助けられ続けています。
[どこかしみじみと落とした言葉は、クレステッドにはどう響いたか]
[ ちなみに、聖殿に戻った直後、ローズマリーに面会を申し入れたカスパルが ]
姫君、貴女の勇気と気概は尊いものですが、あのように敵手の前に身を曝されれば御身を守るために、命を賭す者も出るかもしれません。
そもそも、ベルガマスコの如き下司に貴女が直接手を降す価値は無い。
どうか、害虫の退治は、我等にお任せ下さい。
[ 等々...懇々と説教じみた言葉を並べた事は、秘密...のはずだったが、姫君を気の毒がった若い騎士達の噂話として、外に漏れ出るのは避けられなかったかもしれない* ]
― セーファ ―
[ 人々が食堂やそれぞれの家で、疲れを癒し、或いは先の戦いに備えて話し合っている頃、巡回に出る、という名目でカスパルは、人通りも少なくなった街を歩いていた。
彼が1人で巡回に出る時は、他には邪魔されたくない考え事や、気分の切り替えを必要としている時だと承知している騎士隊の部下は、途中で行き会っても目礼だけで放置しておいてくれるのが有り難かった ]
[ どうしよう、と、考える間も置かず、カスパルは物見の塔へと足を向け、壁の上へと向かう。
『隊長?!何かありましたか?』と慌てる当直の騎士に ]
ちょっと風に当たりに来ただけだ。気にするな。
[ そう返して、とても微妙な表情をされたのは、さっくりとスルーした ]
[ もう少しで正規の守護騎士に任ぜられる、というその時に、突然出奔したイェンスが、どうやら家出の果てに、何でも屋のような事を始めて、各地を渡り歩いているらしい、という噂は、カスパルの耳にも入っていた。
セーファでも時々噂を聞くことがあったにも関わらず、今まで全く姿を見る事が無かったのは、恐らく避けられているのだろうということも、承知の上...で、あったから ]
イェンス・エーンデクロース殿。
[ 逃がすものか、という、気合は、視線と決然と近付く足音に顕われていただろう。しかし、呼んだ名は、かつてとは違い、見知らぬ旅人に対するもの ]
昼間の御助力、感謝する。見事な腕前だった。
[ けれど口調は、普段の旅人に対する丁重さとは離れて、硬く強い ]
......ぜひ、一手、御相手頂きたい。
[ 声も表情も硬いまま、一歩踏み出し、カスパルはレイピアを抜き放つ。
以前、夜中に抜け出しては、足場の狭いこの壁の上で、訓練を兼ねた仕合を繰り返した事は、イェンスの記憶にも残っている筈だった* ]
― 外壁上 ―
快諾、感謝する。
[ 相手が驚いた顔をするのは、予想の内だった。だが、その顔を見て溜飲を下げる程、単純な気分ではない。
投げ返された軽い口調に、懐かしさが滲むのはやむを得ないが、イェンスの予想通り、カスパルに引く気はさらさら無かった ]
はっ...!
[ 騎士の礼に則ってレイピアを目前に翳し、その次の瞬間、気合を込めて、切っ先を相手の右肩に向かって突き出す* ]
― 外壁上 ―
[ 真剣を使っての仕合だから、切っ先が掠めただけでも互いに傷はつく。
自ら承知で始めた事だが、相手の肩をレイピアが掠めれば、僅かに眉が寄った。
しかし、手を緩める事は無く、更に一歩踏み込もうとして、イェンスの振り上げた大剣の動きに、足を止めた ]
...っ!
[ 大振りに見えても、大剣の重さを乗せた一撃は意外に動きが速い、とは、経験則で知っている。しかし、足場は横に避けるには足りず、半端に身を捻った結果、刀身は腰を打つ ]
こ、の...!
[ 痛みよりもバランスを崩された影響の方が大きい。なんとか、足を踏ん張る事に精一杯で、レイピアを相手に向ける余裕は無かった。
それでも、追撃を喰らうわけにはいかない、と、腰から左手でダガーを抜いて、咄嗟にイェンスの方へと投げる。
狙いをきちんと付ける事は出来なかったから、牽制か足止めがせいぜいといったところか* ]
― 外壁上 ―
[ 最初から、イェンスとは環境も生活も性格も、揮う剣の型さえも、悉くが違っていた。重なり合う事の無い、けれど、だからこそ、視線を離すことの出来ない存在...それが彼だった ]
っ、無茶をっ...!
[ 左手でレイピアの軌道を遮ろうとする動きに、思い切り顔を顰めながら、しかし、一度ついた勢いは止まらず、辛うじて、真っすぐに貫く動きを下方へ斬り降ろすような動きに変えて、相手の手の甲に裂傷を残すに留める ]
くあっ!
[ だが、同時に、下方から振り上げられた大剣が、斬り下ろしたレイピアを持つ右手を跳ね上げ、思わず緩んだ手からレイピアが宙に飛んだ ]
くそっ!
[ しかし、これで終わりにはしない、とばかりに、カスパルは無手のまま、イェンスに体当たりをして組み付いた ]
お前、には...!
[ 負けない、と、言う前に、声を呑み込む、その苦しげな表情は、イェンスも始めて見るものだったろう* ]
ハ...
[ カスパルも無茶な動きばかりを重ねていた。既に息も切れ、組み付いて胸ぐらを掴みはしたものの、そこで動きは止まる ]
...お前を、殴りたいのは、私の方だ...
だが...聖地を守った恩人を、ただ殴るわけにはいかん...
[ カスパルの騎士としての規範の中では、そうなる。だから、「合法的に殴るために」仕合を申し込んだのだ、とは、伝わるだろう ]
イェン......
[ 不景気な面、と言われた顔が、どこか泣き笑いのように歪み、今まで直接には呼ばなかった愛称を音にする ]
なんで、何も言わずに行った?
[ 続けて落とされた声は、妙に静かに闇を揺らす ]
お前が決めた事なら、私は止めない。邪魔もしない...後も追いはしない。だが、何故、一言も言わなかった?
[ 別れの言葉すら、何一つ ]
ずっと、それだけを...お前に聞きたかった。
[ 言い切ってから、掴んでいた手を離す ]
そうだな...聞きたかっただけだ。
[ 殴りたかったのではなく、と、小さく笑う。それでも、こうして、もう一度剣を交わした事を、悔いはしていなかった* ]
― 外壁上 ―
馬鹿は余計だ。
[ 馬鹿真面目という評に、いちいちそう言い返すのも儀式めいた懐かしい「いつもの会話」だ。見つめるイェンスの表情も、かつて剣を交える度に見たのと同じ...そこから紡がれる理由に、カスパルは黙って耳を傾けた>>272]
貴族社会の柵、か。
[ イェンスが、貴族の長子だったが故の葛藤を抱えていた事そのものはなんとなく知っていた。だが、敢えてそこを突っ込んで尋ねた事は無い。
カスパルにとって、イェンスはいつしか、貴族であろうと何であろうと関わり無い、無二の存在となっていたからだ ]
不器用はお前の方だろう。
[ すまなかったと、と口にした相手に、笑みを浮かべてみせる ]
まあ、私が器用だとも言わないが。
そう見くびったものでもないぞ。これでも、聖殿に干渉してこようという貴族や、他国の王のあしらいは守護騎士の仕事でもあるんだ。
だから...
[ 言いかけて、口をつぐみ、目を伏せる ]
いや、この話の続きは...あの妖術師を片付けた後にしよう。
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