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―ストンプ港・造船所―
そっか……
そうだよね、誰だって死ぬのは―――…怖いよね。
[>>473 幾多の修羅場を潜り抜けてきた歴戦の猛者ですら、戦いは怖いと。
口元を緩ませるその姿は、いつもウェルシュが見てきた優しい彼のそれだった。]
いつも、……この国を護ってくれてありがとう。
[この広い海を。青い空を。
悠久の歴史を刻んできたこのウルケルの大地を。
影ながらいつも護ってきた彼に対して。海軍に対して。
若葉の領主は、深くお辞儀をした。]
―――……!
分かった、僕は屋敷へ一旦戻るよ。
タクマさんも準備があるなら今のうちに。
[>>474 柔らかい声と共に告げられる、了承の意。
ウェルシュは意外そうな顔を一瞬したのち、強く頷いた。]
もう直ぐで、出航できると思うから。
……またカモメで会おう!
[領主は彼にそう告げると、一旦屋敷へと踵を返した。*]
―10年前・縁談の話―
[あれは花の季節だったか。]
ふぁぁ…… びっくりしたぁ!
[少年と出会ったのは屋敷の何処だっただろうか。庭か、バルコニーか、或いは廊下の端か。
当時16歳だったウェルシュは、息を切らせながらそこまで駆け足で来たのだ。
きっと頬は桜のように紅潮していたことだろう。少年はウェルシュの存在を訝しげに見つめていただろうか。
ウェルシュは、少年の正体を聞くこともなく、勢いのままに、]
まさかあんな小さい子と結婚だなんて……
お父様も冗談が過ぎるよぉ……。
[思いの丈を吐露してしまったのだ。後に彼が、縁談相手の兄だと知って気まずい想いをしたものである。
少年は、からかっただろうか。
相手方の父のように、縁談に乗り気だっただろうか。
それとも、妹が取られると、軽い敵意を見せただろうか。
―――いずれにせよ、ウェルシュがいつものように船の話ばかりする事に呆れるのだが。]
っはは、ごめんね。
さっきも『船以外の話も出来るようにならないと女にもてないぞ』ってお父様に言われたばかりなんだけれどなぁ……。キミもそんな風にならないようにね。
[そう言って頭をかいた。
利発そうな少年だった。
銀髪に薄雲色の双眸。
流石、かのシュヴァール商会を取り仕切る家の息子。
幼いながらも、その表情は聡明さを放っている。
きっと将来は、その手腕を発揮することになるのだろう。
……自分の方が年上なのに、彼よりもずっと子供っぽいなぁ、と少し恥ずかしかったことを覚えている。>>469 自分との縁談よりも、今はこの家に居ない姉の縁談の方が、自ずとメイドの間で出てくるのも、仕方のないことである。]
僕はね、本当は領主じゃなくってさ。
将来は船の設計士になりたいんだ。
……難しいって分かっているんだけれどね。
[>>0:29 幼い頃から思い描いていた夢。姉に度々話していた夢。
姉がストンプの家を出ていって数年。
ウェルシュも、16歳にもなればこの夢が叶わないものだと悟っていた。]
でもさ、夢を持つ権利は誰にだってあるしね。
想うだけタダでしょ?
[そう言って微笑んで、]
僕はね、いつか戦艦だけじゃなくって―――― …… ……
[群青色を見つめる。]
―――ねぇ、キミの将来の夢はなに?
[あの時、夢を語った少年は今頃どうしているだろうか。
自分の夢を叶えたのだろうか。*]
―現在:ストンプ・領主の館―
……なんでこんな事を急に思い出したのかな。
[屋敷に広がる生垣の花が咲いていたからだろうか。
あれから10年経った今でも、未だに自分は子供のままで。]
……何か、変わるのかな。
[ぽつり、と弱気な言葉をひとつ。しかしすぐにかぶりを振って、]
ううん、――――……変わるんだ。
[聞くところによると、敵国の皇帝は自分よりも二つも年下だそうだ。
その若さで皇帝ということにも驚きだが、その上、はるばる遠征してまで自国に攻め入ろうという訳だ。敵ながらその豪胆さは見上げたものである。]
皆、戦っているんだしね。
僕だって………
[そう呟くと、身支度を整えてウェルシュは屋敷を出ようとした。]
じゃ、後は頼んだよ、ルシエルナガ。
[長年付き添ってきた部下に、ストンプの自治を任せる。
彼ならば、常日頃から行政を行っている身だし、自分が居なくても安心して行えるだろう。
ルシエルナガは不安そうな表情と共に、ウェルシュを引きとめようとしたが、]
ごめんね。
[領主の決意は固かった。
そして屋敷の門を出ようとしたとき―――]
手紙?
[丁度、伝令がウェルシュに手紙を届ける。
それは、首都カルボナードからのものであった。
内容はシコン港領主が裏切って帝国に下ったことの報せ。
それにより、シコン領主が所有する財産及び領土の奪回を命じるもの。奪回に当たり、領主の生死は問わないということ。
この手紙はストンプ領主だけでなく、リオレやフリカデルなど、各地の諸侯にも送られたこと。
―――つまりは、シコンを奪い返せ。制裁を与えよ。
首都が各諸侯に下した命令はそういうことであった。きっと、その命を達することが出来た暁には、それ相応の褒賞がカルボナードから与えられるのだろう。]
……。難しいことは分かんないや。
[手紙を流し読みすると、一先ずそれを懐に仕舞い、]
行ってきます――――!
[ヴァイスメーヴェへと向かった。*]
船を愛する領主 ウェルシュは、栞を挟んだ。
― ストンプ港 ―
おまたせっ!
[タクマは既に乗船していただろうか。ウェルシュが軽い足取りでタラップを踏んで乗り込むと、間もなく船の碇が引き上げられる。
ストンプの港町は濃い藍色に染まっていて、黄色い月が浮かんでいる。カモメも今は寝床に帰っているのか、その白い身体は空に舞っていない。淡いランプの灯りが、港町を幻想的に照らしている。
派手な汽笛も、眩い満艦飾もない。
けれども、共に船を造り上げた仲間たちが静かに敬礼をウルケル軍に贈っている。]
―――さぁ、出航だ。
[二羽の大きなカモメが、藍色の海を切り裂いて羽ばたいていく。]
っはは、ゲオルグおじさんは喜んでくれるかな。
[>>515 楽しそうに新しい船の舵を取るタクマに頷いて。
どんどん離れていく故郷を窓から見送った。*]
― 西方海域へ ―
[水平線の向こうから黄金色の太陽が覗かせたころ、ウェルシュは甲板に出た。夕べは色々動き回った所為か、溶けるようにして眠りについてしまったものだ。
眠い眼を擦り、ヘーゼルの瞳を開くと、>>522 タクマの姿が見える。]
おはよう、タクマさん。
早起きなんだね。
……なにか、良いことでもあったのかな。
[どこか嬉しそうにも見える彼の表情を穏やかに見つめる。
ウェルシュは向こうから話さない限りは特に詮索もせず。
瞳と同じ、ヘーゼルの髪を海風に靡かせながら、朝日が昇る様子を黙って見ていたことだろう。]
一旦、僕たちはリオレに向かう……で良いんだよね。
それで改めて陣を整える、という具合なのかな。
それとも、直接……?
[朝日が昇り、海を濃藍から鮮やかなコバルトブルーに染め上げたとき、領主は大佐に尋ねた。
彼に無理を言って連れてもらうようお願いしたものの、自分出来ることは大してないかもしれない。
でもなにか整備や交渉以外でも役に立てることがあるなら、と。様子を伺った。もし特にないようなら、せめて彼等の足は引っ張らないよう、配慮するつもりだ。]
―――…… 帝国軍は、どんな人たちなんだろうね。
どうやってウルケルに仕掛けてくるんだろう……
[ウェルシュは戦闘には詳しくない。
まだ見ぬ敵に対し浮かぶのは、そんな初心者めいた疑問。]
― 巡洋艦ヴァイスメーヴェ ―
[>>630 自分の幼稚な質問にもタクマは厭な顔ひとつせず、丁寧に答えてくれる。
彼は昔から優しかった。
領主の記憶のなかでは、ゲオルグおじさんの隣に立ち始めてからずっと、その穏やかな表情を保っていたように思う。
戦場の彼を知らないだけなのかもしれないが、しかし、いつも彼はそうだった。
ウェルシュとしては、おじさんが二人に増えたような感覚である。
―――今も、その柔らかな笑みを浮かべている。]
うん、分かった。
ウェルシュは真面目な顔をして、うんうん、と彼の言葉を噛みしめるように聞いた。
続く要請は、もしかしたら自分にもなにか役割を与えようと、タクマが配慮しただけのものかもしれないが。
それでも、]
……そ、そうかなぁ。
[ウェルシュを少し緊張させた。軍人ですら見落としてしまうかもしれないものを、自分なんかで見抜けるだろうか。
自ずと、ヘーゼルの双眸は水平線を睨みつける。]
うーーん
[一先ず、今は何も見えない。
数隻の漁船が、戦艦を避けるように浮かんでいる程度だ。]
むむ…… むむ……!
[その漁船も、ごくごく平凡な船に見える。
いやいや。もしかしたら帝国の諜報船なのか?!
ウェルシュは漁船を瞬きもせず、更に睨みつける。]
・ ・ ・ ・ ・ ぃ、いじょうなしで、あります!!
[暫しのち、タクマに報告したウェルシュの目は血走っている。]
・ ・ ・ ・ ・ ぃ、いじょうなしで、あります!!
[暫しのち、タクマに報告したウェルシュの目は血走っている。//]
え……?!
[>>653 タクマの反応はウェルシュを困惑させた。
噴きだす理由が分からず、ただただ頬を赤く染めるばかり。
渇いた目が痛い。]
あ、ぇ、 ……ああ、そ、そうなんだ。
は、早く言ってよ……!
[続く言葉で漸く意味が分かり、顔を逸らす。
小さく呟いた文句は照れ隠しのそれ。]
― 巡洋艦ヴァイスメーヴェ ―
え……?!
[>>653 タクマの反応はウェルシュを困惑させた。
噴きだす理由が分からず、ただただ頬を赤く染めるばかり。
渇いた目が痛い。]
あ、ぇ、 ……ああ、そ、そうなんだ。
は、早く言ってよ……!
[続く言葉で漸く意味が分かり、顔を逸らす。
小さく呟いた文句は照れ隠しのそれ。]
確かにそうだね。
帝国軍も見慣れないこの船は気になるんじゃないかな。
……ヴァイスメーヴェの特徴は、瞬発力だ。
だから、例えばギリギリまでその俊足を隠して敵に近付き。
そして一気に相手に詰め寄る……とか。
そういう戦い方が出来るんじゃないかな。
[そして、はた、と何かに気が付いたように視線を戻して。]
……いや、例えばの話だけどね。
勿論、そういうのは海軍の方が慣れていると思うけれど……
差し出がましいことを言って、ごめん。
[船の特徴を述べたつもりが、つい差し出がましいことを言ってしまった。//]
― 巡洋艦ヴァイスメーヴェ ―
え、そう、……そうなのか。
[>>668 タクマは優しい男だ。然し、嘘や諂いをあまり言う男ではない。だからこそ、その真摯な言葉にはウェルシュは面食らったし、それ以上に嬉しくも恥ずかしくもあった。]
あ、有難う…… うん、分かった。
僕も皆の力になれるよう、色々考えてみるよ。
[鮮やかなコバルトブルーの海を切り裂くようにして、巨船は突き進む。
白い水飛沫を散らし、船が通ったあとは帯状の白い泡を生んでいく。
遠くの海で、小さめの鯨が顔を覗かせている。
明け方の日差しは柔らかく、少し肌寒い海風が二人を撫ぜている。]
僕は朝食を貰いに中に入るよ。
その後は、船の様子を見に回ろうかな。
タクマさんはどうする?
[そう言って、ウェルシュは少し冷えた己の肩を抱いた。
もし彼がまだ甲板に残るようなら、一人で船内に戻っただろうし。勿論、まだ此処で彼と会話を続けても構わない。**]
―巡洋艦ヴァイスメーヴェ―
分かった、じゃあ僕は戻るよ。
[>>697 まるで親が子供に言うような口調で呼びかける姿は昔と変わらなくて。思わず、ウェルシュは苦笑を浮かべつつも、頷いた。]
タクマさんも身体には気を付けてね。
[艦長室に残るというタクマにはそう告げて。
ウェルシュは船内へと戻った。*]
―巡洋艦ヴァイスメーヴェ:船内―
[船内と言えど、ダイニングは案外しっかりとしている。
狭いながらも、木目調の床にテーブルがずらりと並べられており、白いクロスが掛けられている。
朝食の時間でもあったので、ダイニング内はそこそこ賑わっている。
そこでウェルシュはキッチンの人に、一言声を掛ける。
マーガリンを乗せたトーストと、ハムエッグ。―――それに葡萄。
>>0:84 そう、ゲオルグおじさんからのお土産だった。
なんだかんだ言って、食べる機会を失っており、つい此処まで持ってきてしまっていたのだ。]
いただきます。
[厚い皮を剥くことなく、そのまま口のなかに入れる。
芳醇な葡萄の香りとともに、瑞々しい果汁が口内へと広がる。
上品な甘さが喉もとへと通っていく。]
―――……っはは、甘い。
[なんだかいつもの葡萄よりも甘味が増している気がする。
顔を綻ばせ、窓の外を見やる。
水平線の遥か彼方、薄らと島が見える。
あれはカリコル島だろうか。それとももうアーレント島だろうか。
もしアーレントに差し掛かったならば、暗礁地帯に気を付けねばならない。]
おじさんは大丈夫かなぁ……
[今頃何しているのだろう。
もう、戦いの火のなかに飛び込んでいるのだろうか。]
葡萄、……多いよ。
[それは昔からの癖でそうしたのだろうか。
葡萄は二房もあり、ウェルシュは少し困った。
>>313 いつもゲオルグおじさんは手土産を二人分持ってくる。
ひとつは自分の分。そしてもうひとつは姉の分。
『おじさんから渡せばいいのに。』
そう言ったにも関わらず、おじさんは悲しそうな顔を少し浮かべるだけだった。]
――――いつか、…
[>>316 姉を迎えるための船を造れば良い。
そんな風におじさんは言って、目を細めた。
然し、その為の船はまだ、]
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