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[微睡みと目覚めの繰り返し。
幾度重ねたかわからぬそれ。
それでも、微睡む時の方が圧倒的に多いのは已む無しか。
微睡みの中で見るのは、遠い刻の断片、というのが常──だったのだが]
……ん?
[不意に感じたのは、不自然な揺らぎ。
ゆるく開いた目に映るのは、薄い霧に包まれた空間。
見知った場所も霧に覆われているが、明らかにそことは違う]
ここは……。
[小さく呟いた直後、右の手にぴり、と痺れのようなものが走る。
その感触に、数度瞬いて]
……こいつは。
安定を失した空間に、寄せられでもした……か?
[不自然な状況と感覚に、そんな予想が口を突く。
ともあれ、彼はぐるりと周囲を見回して]
とりあえず、歩いてみる、か。
[呟き、霧の中を歩き出す。
その姿は、垣間見た者に果たして何を思わせるやら。**]
……ま、いきなり出てきたところからしても、物理的な空間じゃない、とは思っちゃいたが。
[霧の向こうに映った己が姿が思わせている事など、当然の如く知る由もなく。
右手で霧を掻き回すような仕種をしながら、零すのはこんな呟き]
……竜の気配もするが……随分と、また、独特の力の波動がするな……。
[伝わる気配は翡翠の内に眠るものも感じているらしく、るぅ、という声が小さく響く]
っかし……。
どうにも動き難いのは、こりゃ、属があわんせいか?
[今のこの場では、恐らく全力を発揮する事はできない。
その事実だけは、はっきりとわかる。
まあ、現状は全力使うなんてあったらヤバイどころではないので構わないのだが]
ひとの気配もちらほらあるようだが、どうなってんのかねぇ……。
[霧を掻き回していた手を止めて、頭を掻きつつ。
もらす声には、ぼやきの響き。*]
……ん?
[薄い霧の中、当て所なく彷徨っていた歩みが、止まる。
右手が無言のまま横に伸び、何かを掴むように指が折り曲げられた。
応じて現れるのは、黒の柄と銀の穂先を持つ槍一振り]
どうやら、害意あるものもいる、と。
[呟きつつ、ゆっくりと槍を構えるのに応じるように、霧の中から巨大な飛蝗を思わせるものが飛び出してくる。
前脚が蟷螂よろしく鎌状になっているそれを飛蝗と認めていいかどうかは判断に苦しむところ──というのは、ちょっと置いといて]
[正面に向け、突き一閃。
繰り出された一撃は、違わず飛蝗の頭を捉え、その身を貫いた。
淡い翡翠色の光の粒子が零れ、銀の穂先が突き抜ける]
動くのは久々だが、鈍っちゃいねぇぜ?
[く、と口の端浮かべるのは楽し気な笑み。
銀の穂先に貫かれた飛蝗は力なく鎌を振り上げた後、霧に散り果てるように消え失せた。
完全に気配が消えた、と確かめてから、ゆっくり、槍を下ろす]
やぁれやれ。
動けるのはいいんだが、どうにも勝手がわからんな。
まともに話せそうなのがいりゃいいんだが……。
[槍を肩に担いで零す呟きはため息混じり。
とにかく、幾つか感じる気配に接触するべきか、と。
そんな事を考えつつ、ぐるり、周囲を見回した。*]
……ん?
[霧の中を緩く進んでいた歩みが、止まる。
目に入ったのは、淡く揺らめく灯のようなものが放つ煌き。
それと、対峙しているらしき人影が、二つ]
行ってみる、か?
[小さく呟き、歩みをそちらに向ける。
途中、届いた声が紡ぐ名>>*40には覚えがあったから、ほんの少し、表情が険しさを帯びた。*]
[ある程度距離を詰めた所で一度、歩みを止める。
何やら、ややこしい事になっている──というのは、辛うじて見て取れたものの、口を挟む事も手を出す事もなく]
やっぱり……『南』の、か。
[覚えある名で呼ばれていた方に視線を向けて、ぽつり、と呟いて]
……もしかしなくてもこれ、時間軸も狂ってんのか、ここ?
厄介だな、おい……。
[彼らが認識している自分と、ここにいる自分の相違から、こんな言葉が口をつくが。
このまま、突っ立っているわけにも、という思いからそれは飲み込んで]
おーい、そこのお二人さん。
取り込み中らしいとこに悪いんだが……ちょっと、いいかい?
[槍を抱え込むように右肩に担ぎつつ、呼びかける声の調子はごく軽いもの。*]
(……あー……やっぱり、なぁ)
[ユウレン王、という呼びかけ>>*50は予想通りで苦笑が滲む。
けれど、それは刹那で押し込んだ。
最後にそう呼ばれたのはいつだっけ、なんて感傷も過ったが、それもまとめて飲み込んで]
『南』の、カナン王子……か。
まさか、こんな所で会う事になるとはなぁ……。
[あらゆる意味を込めてそう言った後、は、と短く息を吐き]
その言い方だと、お前さんはここがどういう場所か知っている……って事でいいのかね。
いきなり迷い込んで正直、どうしたもんか、と思ってたんだが……わかる事があるなら、すまんが教えてもらいたい。
このままじゃ、身動きも取れんからな。
[一先ず、自分に徹底的に欠けているもの──即ち、現状の情報を得る事を優先する。
生きる時間軸の相違については、ややこしくなるので割愛した。
彼が自分から見て過去である場合、色々と面倒な事になる可能性があるからだ]
ああ、それと。
この場では、王と呼ぶ必要はないぜ。
……見ての通り、今はそっちの業務からは離れてる。
[問いを投げた後、ふと思いついて付け加えたのはこんな事。
一応、嘘はついていない。
いろんな意味で]
だから、呼ぶ時は嵐激の騎竜師カーク、で頼むわ。
そちらさんも、な。
[カナンとこちらを交互に見る青年>>*52にも、ごく軽い口調でそう呼びかけていた。*]
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