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― 中庭 ―
[剣を一度取り落した様子に疑問を抱いたものの、そこを深く追及することはなかった。
拾い直し、構えた彼の気配が凛と変わる。
間違いない。戦いを知るものの気配だ。]
……。
[疾り来る姿を視線でとらえる。
並の人間では反応し切れないだろう速度。
だが自分の目にはその一挙手一投足がありありと映る。
剣が振り下ろされる軌跡も。]
[間合いに入り、剣が振られた時にこちらも動いた。
ただ一歩、速度とタイミングを合わせて前へ踏み出し、打ちおろされる剣にこちらから合わせていく。
剣の腹どうしが擦れて甲高い声を上げた。
かつりと刀身が鍔に触れた瞬間、手首を返して相手の剣を巻き込んでいく。
力を込めて払えば、相手の剣は宙を舞った。]
良いぞ。
もう一度だ。
[流れるままに彼の脇腹を軽く刀身で打ってから、一歩を下がる。
再び構えの形をとった。]
[剣を拾い上げ、再び向かってくる姿に瞳がわらう。
相手の気が研がれていく。その気配に。
振り下ろされた剣は、先ほどよりも明らかに重く、速かった。
こちらも全く同じように受け、返す。
その先で剣が不意に支えを失った。]
[ディークの体が沈む。バランスが変わる。
足払いへと移る体重の移動。
それを捉えて、自身の足に力を込めた。
支えを失い、崩れかけた体勢をそのまま利と変じて前へ跳ぶ。
相手の頭上を飛び越してその背後へ抜け、地に着いた片手だけを支点にぐるりと体を回して蹴りを放つ。
人間では考えられない挙動を難なく見せて、両足から再び地に立った。]
まだだ。
もう一度。
[三度剣を構える。
彼がもつ精悍な体躯と挙動。それに反してどこかぼやけた言動。
それが戦いのさなかに何らかの変化を起こしていると感じていた。
研ぎ澄まされた先にどこへ行くのか。
確かめてみたい、とも思う。]
[立ち上がる仔の姿に眉根を寄せる。
なにかが、尋常ではない。
夜風に乗って、幽かな声が届く。
それに応えるより先に、戦気が吹き寄せた。]
―――!
[前の二回を明らかに凌駕する速度。
なんらかの枷がひとつ外れたと思わせる膂力。
打ち合った剣が上げた悲鳴を耳に捉え、自ら柄を離した。]
[折れた剣の先が飛んでいくよりも早く相手の懐へ沈み、肩からぶちかます。
吹き飛ばぬよう加減した一撃から、流れるように相手の腕を掴んだ。
そのまま、背中の側へひねりあげる。]
ここまでだ。
[無理に暴れれば腕が折れかねない形に肘を極めて、相手の反応を見定める。]
─── 俺の子が裏切ったならば、俺の手で滅ぼす。
それが親の責任で、覚悟だ。
[低く答えた言葉に、一切の躊躇いはない。]
[腕の下で、仔の動きが鈍くなる。
鬼気が減じた、と感じたのは一瞬のことだった。
肉体の損傷を厭わぬ動きで彼の顔がこちらを向き、煮え滾る銅のような目と視線が合う。
不意に捉えていたはずの感触が失せ、燃えたつ陽炎が目の前で揺らいで形を変えた。]
は、ッ……!
[凶暴な肉食獣の爪が肩口を捉え、血が飛び散る。
それ以上を許さずに上体を逸らして、鋭い牙に空を噛ませた。]
[そのまま後ろへ一回転、身体を宙に跳ね上げる。
軌道の頂点で人の形を崩し、芝を踏み散らして降り立ったのは四足の姿だった。
鬣と同じ金を宿した瞳で戦いの獣をひとにらみし、喉を逸らして鼻先を天に向ける。]
ガアアァァァ ォォォ−−−ン
[迸るのは心を砕き恐怖に染め変える獣の雄叫び。
響き渡った城館の中で使用人たちが震えあがりへたり込むだろうが、この際気にしなかった。
残響が漂う中、再び相手へ視線を向ける。
鬣を逆立たせて威圧する姿には、群れの長としての気迫が漂った。]
[四足の姿のまま、倒れ伏した仔へ歩みよる。
首を下げ、汚れた頬を幾度か舐めてやってから、人の姿に戻った。]
立てるか? ───無理そうだな。
[ちらと笑って、従者を呼ぶ。]
[横たわるディークの隣に胡坐をかいて、懐からコンラート宛の書状を取り出した。
やってきた従者からペンを受け取りながら、ディークに視線をやる。]
血親は選べなくとも、その血と永生はおまえのものだ。
生きる意味を考えろ。
おまえの意思で、先を選べ。
[戦いの熱が抜けた静かな声で、言葉を投げる。]
[受け取ったペンで自分の指先をつつき、血を含ませた。
それで、書状>>608の下に文言を書き加える。
『貴殿の養い子には大いに見込みがある。
この先を行く力を十分に持っていると認める。』
その言葉と血文字のサインだけでなにが起きたかは察するだろう。
書状をディークの懐に差して立ち上がる。
心得た従者が2人、ディークを担架に乗せた。]
己の力を己のものとしろ。
それがおまえとおまえの大事なものを守る。
[祝福がわり、そんな言葉を送った。]**
― 中庭 ―
[ディークが零した囁きが、耳朶をかすめていく。>>723
笑み浮かべるのみで、否定も肯定もせず。]
[運ばれゆく姿が屋内に消えるまでを見送ってから、自身も踵を返した]
上出来だったようだな。
[聞こえてきた声の調子に、首尾を悟る。]
俺ももう戻る。
直接報告を聞こう。
[あとは会ってから。
なにを得たのか知りたいと、期待が滲んだ。]
― 自室前 ―
[足早に城館の廊下を抜け、自身の部屋に向かう。
もうレトは戻っているだろうか。
扉の前で髪を振り、草の名残を振り落してから扉を押した。]**
[まさしくその当人から届いた声に、得体の知れない震えが掻き消えた。]
ん? ん! 報告する!
[「もう戻る」というからには出かけていたのだろうけど、自分の帰りを歓迎しているらしい気配の前には些事。]
― 自室 ― >>778
[扉を開けると同時、飛びつくような勢いで声が飛んでくる。
レトの後ろに大きく振られている尻尾が見えたのは、たぶん気のせいだ。]
、 戻った。
機嫌がいいな。聞こうか。
[早速とばかり、試験の報告を求める。
視線がレトの手にある包みに向いて、ごく僅かばかり首が傾いた。]
ー ロー・シェンの部屋 − >>803
[ずっと待ってたと言わんばかりの喜びを隠しはしない。
引っ張り込むようにロー・シェンを扉の内側に招じ入れたところで──すん、と鼻を鳴らした。
血の匂いがする。
ロー・シェンと別の誰か。]
怪我した?
[負傷箇所を見つけたら、先に風呂場でされたことをなぞろうと考えている。
癒しの効果はなかったかもしれないけれど、気持ちよかったから。]
[レトの様子は、勢い込んでいるといっていいもので、はしゃぐ仔犬を連想させる。
引っ張り込まれるままに部屋に入ったところで、血の匂いに気づかれた。]
猫に引っかかれた。
[返答が多少おどけたものになったのは、自身も機嫌がいいから。
傷はほとんど痕になっているが、服の肩口が破れていることでそれと知れよう。
レトが見つけて舐めようとするなら、ぴしりと額を指で弾いてやった。]
猫〜? …あう。
[まんまと弾かれた額を覆いながらロー・シェンを見上げ、いつかその熟練猫との勝負を! とか、わかりやすい闘志を燃やしたりしつつ、再度、促される前に、頼まれ事の首尾を報告する。]
マスター・ステファン=リッシュのところへ行って、ちゃんと渡して、読んでもらった。
オレへのレッスン依頼だったんだね。
吸血鬼同士でそういうこともするんだ?
飴玉飛ばす術を見せてもらって、魔術の基本を教えてもらった。
「このように“在る”と意識すること そのように“在れ”と意識すること」
あと、稽古は保護者が見ているところでやれって。
[そこで、じ、とロー・シェンを見つめる。]
あのさ…
マスター・ステファン=リッシュは、「自分を変えるのは一番大変」って言ったけど、
彼は孤独なのかな。
[わかりやすく闘志を燃やすレトを楽しく眺める。
今のレトと本気でやり合ったら、怪我の一つ二つはもらうだろうかと考えつつ。]
そうか。
上等だ。よくやった。
[報告に頷いて、レトの頭を撫でる。]
術だのなんだのは俺も詳しくないからな。
機会を逃す手はない。
[教授を依頼して素直に教えてくれるかという懸念はあったが、要らぬ心配だったようだ。
もっとも依頼に対してどんな反応が返ってきても、なんらかのものをレトが掴んでくるように、という意図で送り出したのだ。]
[魔術の基本については頷くにとどめた。
自身が扱う力は、それこそ理論から入ったものではない。
赤子が立つことを覚えるように、経験と時間によって身につけたもの。
レトには経験を積ませる意味で話を聞かせにやったが、正直に言えば理論は理解が難しい。]
ステファン=リッシュが?
[見つめられ、問われて小さく鼻を鳴らした。]
あれは、眷属の中でも特異な一族だ。
孤独、というならばそうかもしれんな。
他と交わろうとしない変わり者だ。
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