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[人狼が人間に、人狼に注意しろ、だなんて、
滑稽なのもいい所だ。
内心ではそんな風に思うものの、顔には出さない。
いつもこうして、人間のふりをして生きてきたのだから。
今までも、これからも。]
……アルビンは良い仕事してくれるから、
殺されてほしくないのは本心さ。
[こっそりと、独り言。]
あれー。
二番目に神父さんの名前出てくんの?
[鼻を突つかれながら、耳ざとく問いかけて。]
ふくく。
僕も、いい商人さんに死んでほしくはないしねえ。
ふうん…?
教会のお金でたくさん買い物してるんじゃないだろうね。
[などと茶化しながらも。
アルビンのもう一つの仕事も、なんとなく耳に挟んだことはある。あまりお金に余裕はないので、買おうとしたことはないが。
と、アルビンの顔が近づいてきて。避けることはなく。]
こら、いたずらオオカミ。
僕の唇は高いんだからな?
[くっくと笑って。アルビンの額を指で押した。
男にこういうことをされても気にしてない辺り、偏見がないのはわかるだろう。]
はいはい、気をつけますぅ。
じゃーね?
[ひらひらと片手を振って。
アルビンが部屋を出ていった後、袋から羽ペンを取り出し、羊皮紙で書き味を試していた。
うん、良い感じ。**]
―自室―
[部屋でしばらく書き味を試していたら、だんだんと眠気が晴れてきて。]
温泉でも入ろうかなー。
[超がつくのんびり具合。
立ち上がり、廊下へ出た。]
―廊下―
!?
[しかし、そんなのんびり気分をぶっ飛ばしたのは、廊下で出会ったモーリッツの存在だった。目があった途端、ぎろりと光った気がした。]
ひ、ヒイイ……
[『こらお前はまた!ええ若いもんが働きもせんと、昼間から温泉など!』と説教を受け始める。]
あーはい……ええっ、そんなことが……
はあ、はあ。
大変でしたよねー…
[ねむいなあ、寝てていい?
なんてとてもじゃないが言える雰囲気じゃあ、ない。
モーリッツの話に適当に相槌を打ちながら。
終わる頃には夕方になっていた。]
夕陽!?もうそんな時間なんだ!
え、ええ。
ありがとうございました!
参考にさせていただきます!
[びしっと綺麗な45度でお辞儀をし、モーリッツも時間と気を逸らされたのもあり、お説教をここで止めてくれる気になったようで。]
た、助かった〜……
ヨアヒム、ありがと、ありがと!
ひいい、しびれたあ。
[モーリッツが去ってしまえば、すぐに立ち上がった。が、正座していた足が痺れて、よろめきながらヨアヒムに取りすがった。]
……あっはははははは!
[何が楽しいのか、ヨアヒムを押し倒して笑っている。ぎゅ、っとヨアヒムにしがみついて、ヨアヒムの頭を撫でた。]
いやいや、ごめんごめん。
僕も足が痺れてるって自覚してなかったね。
[そうして、ぴたっとくっついてから、ヨアヒムの上から退いた。]
[心を寄せすぎてはいけない。
自分は、人間ではないのだから。
情を移してはいけない。
自分は、やがて離れて流れていく存在なのだから。
だから、人との間には壁を置く。
置かなければいけないのだ。
けれど本当は、彼と、もっと―――……]
―――!?
[さすがに、これには驚いた。
子供だと思っていたヨアヒムからの、柔らかい、口づけ。キャラメル味のキスかあ――等と一瞬思考が現実から飛びかけて。]
………ちょ、
[手を伸ばすものの、ヨアヒムは駆けていってしまった。驚いたせいで、追いかけられずにいて。ゆるりと伸ばした手を下げた。]
……僕のキスはキャラメル一粒と同価値か?
[口元に手をやりながら、不満を言う。
きっと今の自分は、耳まで赤いんだろう。]
どうしようねえ……
どうすんだ、これ……
[酒飲みの約束が、気まずいじゃあないか。]
ばかヨアヒム……
ばーかばーか。
[居ない者にぼそりと毒づいて、
散らばったお菓子を拾い始めた。
…嬉しいなんて、認めるものか。]
[ああ、もう行かなくちゃ。
これ以上、心通わせてしまう前に。
彼の存在が、自分の中でもっともっと大きくなってしまう前に。
もともと、村を出るつもりではあったけど。
急がなきゃ、いけなくなった。]
いや、身体は大丈夫なんだけどねー…
ちょっとさ、ヨアヒムと……
あー、ケンカじゃないけど、気まずいことになっちゃってね?
[さすがに、ちゅーされました、とは言えない。]
ケンカとは違うから、謝られるのも何か違うしねえ。
どうしようかなあって。
[思わずヤコブに相談してしまった。]
[別れるならば、最後に皆と飲んでおきたい。
そう思う程には、この村に馴染んでいた自分を自覚する。
ここに来た二年間は楽しかった。とても。
本当は、そんなことしている場合じゃないと、わかっていても。]
あ、そうだねー……
うん、いいかも。また皆で騒ごうか。
[無理矢理スルーするのも、何事もなかったかのように振る舞うのも、不自然すぎて。]
……よし、じゃあ食堂で、みんなで飲もうかー。
今度は朝まではやめとくよ、レジーナに怒られたら大変。
[ね。とくすくす笑って。]
うん、なるべくたくさん、ね。
呼ぼうねー。
怒られない程度に騒ごう。
[かくして、最初の想定以上の飲み会が、
また開催されることになったのだった。]
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