情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
ん……まぁいいか。
船内まではともかく、現地では頼むよ。
[呼び方を最大限に譲歩した形の彼女の言葉に諦めて肩をすくめる。
仕事で来ているのだ。
本当だったら同行するのは会社の人間の方がよかったのだが、適任な者がいなかったし、逆に身近に連れ歩くのに適任すぎる人間がいたのがいけない。
彼女の囁きには眉を潜める前に首を傾げた]
どちらでも君が呼びやすい方で構わないが……それはどこから出てきたんだい?
[彼女の悪戯心がわからない無骨な男である]
そうだったのか。
じゃあ、それを――。
[カサンドラの荷物は大したものではなかったが、それも運ばせ、彼女を連れて手続きを済ませる。
箱入り息子ではあったけれど、自ら外の世界に進んだルートヴィヒは、一通りのことは自分でできる。
妹たちはきっと一人では電車にも乗れないのではないだろうか。
どことなくたどたどしいカサンドラを見かねて、つい口を出してしまったのは主人として失格だっただろう。
しかし、日差しがある中、日に弱い彼女を早く日の当たらない場所に連れて行ってあげたくて仕事を奪ってしまった。
船室に荷物を積み終えたら家の者は帰っていたので、この失態を見せなくて済んでよかった。
そうでなかったら、カサンドラも自分も、使用人たちのご注進を受けて、後で父の叱責を受けていたに違いない。]
―船内―
こちらのようだよ。
カサンドラ、行こう。
[船内案内人の導きに従い、カサンドラを促して乗船口を通っていく。
船旅は久しぶりだな、とフカフカした絨毯地の上を歩いていった。
急ぎならば飛行機の時代、船を使うのは時間をたっぷり使い、豊かさを楽しむ人々だけなのだ。
自分はまだ幼い頃、船を乗ることを主な目的に母親にねだり、船旅を楽しんだ記憶がある。それがとても楽しかったおかげか、船は大好きだ。
特に広い客室の片隅に置かれたトランクスーツ。
自分の日用品より多い仕事の道具に目を細める]
カサンドラ、さっそくだが頼めるかな。
君の力なら運べるだろう?
その赤いテープが貼ってあるトランクスーツは全て隣の部屋に移してほしい。
[かなりの重量がある荷物を彼女にまかせて、自分は仕事用の携帯PCを開きだす。
ベッドがある主な部屋の隣は、控えの間でもある小さな部屋がある。
本来だったらカサンドラはそちらに泊まるべきなのだが、そちらは作業部屋にしたいと思っていた]
自分がどこに泊まるか心配かい?
君はメインルームのベッドを使えばいい。エキストラベッドやソファもあるが、もし俺と一緒の部屋が気になるなら、俺の方があっちに泊まるよ。
[そういえば、彼女の近くに行ってはいけないとも言われていたが。
しかし、それはもってのほかの問題である。
年頃になったあたりから、見目いいメイドをそれとなく父からあてがわれても、なんの問題も起こさず、どうやら男色家であるらしいと内外に噂を立てられたのがルートヴィヒという男である。
一応性的志向は女性であるものの、生来の生真面目さとお堅さと好みの特異さのせいか、信じてもらえていない。
今回も、世間一般の良識に照らし合わせて、主としてではなく、普通に彼女にベッドを譲っていた**]
そのような心配など、しておりません。
それに、言いましたよ? 誠心誠意お仕えしますと……。
離れていれば、それも叶いませんわ。
ルートヴィヒ様……いえ、ルートヴィヒ
[男に後ろから抱き着くと、耳元で囁きかける。
お仕えの中には、別の意味をわざと含ませて……。
今は、これ以上はしない。まだまだ始まったばかりなのだから。]
そうか?
期待しているよ、ありがとう……!?
[彼女の言葉を額面どおりに受け取ったが、後ろから抱き着かれるとしたらそれは話しが変わってくる。
ばっと彼女に向き直り、警戒露わな目でカサンドラを見据える。
彼女のその言葉が自分への挑戦……ないしは年若い跡継ぎをからかうものだと判断したのだ。
そして、彼女からしてみたら自分の存在というものは、ただの人間で、彼女からしたら食材でしかないという現実を目の当たりにした気がする。
メイドという立場であることが当たり前すぎて、自分がそのような目で見られていることを忘れていた。
自分は彼女を少し、違う目で見ていたから、気づきたくなかったのかもしれない]
……ああ、そうか。ボディガードとしての役割もあったね。
私から離れていれば役目が果たせなかったか。済まない。
[とっさのことに、常日頃使っていた言葉遣いの方が漏れてしまう。
そこに動揺が現れたことに自分でも気づかずにパソコンの蓋を閉じた]
終わったか、ありがとう。
そうだな、コーヒーを頼むよ。
キリマンジャロで……いや、なんでもいい。
[家にいるつもりで当たり前のように銘柄を指定してしまったが、ここでは準備はどうだろうか。
会社にいる時は、泥水のようなアメリカンコーヒーをがぶ飲みしているのだから、人間は環境に順応する生き物でもある]
じゃあ、俺はあっちで作業してくる。
茶の支度が済んだらノックをしてくれ。
[先ほどのことがあって、幾分か警戒してしまう。
彼女に後ろを見せないようにして隣の部屋に入ろうか。
彼女が本気になれば自分の後ろを取ることなど簡単で、自分を殺すことなどできるのだろうけれど。
……それを彼女がしてしまえば最後、彼女は永遠に後悔することになることを自分は知っている]
さて、と。
[船で目的地に向かうのは、時間稼ぎができるからだ。
自分はこの船の中で作業を済ませなければならない。
スーツケースを次々とあけて、中から色々と物を取り出すと床に順序よく番号順に並べていく。
時間があるとはいえ、多すぎるわけではない。不具合が生じた時のことも考えて対処しなければならない。
さっそく作業に取り掛かろうと没頭し始めた*]
[警戒心はあると……。
腐っても、あの一族の子か……それとも女に対しての警戒か。
どちらにしろ、あるのだけは解ったからよしとし、その視線を微笑みで受け流す]
ええ、そうです。
解っていただいたようで、ほっとしました。
[にっこりと笑いかける。
相手があからさまに動揺しているのが見て取れたからである。
ボディーガードと言っても、四六時中張り付いているものではない。
ましてや同じ部屋でなくても、とっさに対応をすればいいのだから。
その対応も、自分には出来るものである。
が、今はそうではない事にしておいたのであった]
[しばらくするとカサンドラに呼ばれる。
どうやら、珈琲はわざわざ彼女が手ずから豆から挽いて淹れてくれたようだ。
インスタントでは嗅げない、かぐわしい匂いが客室の中に広がっていた]
ありがとう。
気が利くね。
[サンドイッチまで用意されていると思わず、先ほどのことも忘れてほほ笑む。
かといって、完全に気を許すわけではないのだけれど。
用意された椅子に座るが、あえて彼女には前の椅子に座るように指示をする。
控えるように椅子の後ろに立たせるのが、使用人の務めなのだが、それだと彼女の姿が見えず自分が安心できない]
座りなさい、カサンドラ。
この旅では君は俺のパートナーとして同伴してもらうから、その練習も兼ねておこう。
君は、あまりそういう扱いを受けるのに慣れてないのではないか?
[自ら椅子を引くではなく、前の座席を指して彼女に着席を促す。
邸宅の中に閉じ込められて、彼女もそれをよしとしていたようだった。
そのせいか、カサンドラは人らしい容姿はしていても、どこか行動がちぐはぐで、あまり人らしさがなく映るのだ。
当たり前といえば当たり前なのだけれど]
ところで、ここにはカジノやプールもあるようだけれど、君はその準備をしてきているのかな?
[父がカサンドラをどのように扱っているのか、扱ってきたのか知らない。
メイドとして働いているのだから給金は出ているのだろうけれど、それがいくらなのか、雇用条件すら自分は知らない。
自分がなんの説明もしていなかったのだから、それらの設備があることすら彼女は知らずにいて、その準備をしてきていないはずだ。
知っていたとしても、自分には必要ないと思っていたかもしれない。
こう言い出したのはもちろん訳がある]
カジノに行くなら正装が必要だ。
そのためのドレスと、プールのための自分用の水着を買ってきなさい。
客室につけておいてくれれば、後で俺が支払う。
……大丈夫だよ。俺は船室から出ないから、君のボディガードは必要ないさ。
[自分の方は荷造りを執事に頼んでいたのでフォーマルも水着も入っているはずだ。使用する使用しないに関わらず準備されるからこその大荷物なわけで。
あからさまに彼女を遠ざける命令だが、彼女にしても文句は言えないだろう。
とって食べようと思っていないと言われても、その言葉を額面通りに受け止めるようなお人よしはここにいない。
サンドイッチを口に運びながら、どことなく彼女から視線をそらしている]
水着だけでなくそれに伴う日傘とかパレオとか、必要そうなものも全部、店の者にきいてそろえておいで。
ドレスもそれに合うアクセサリーも買うように。
君がたとえ散財したとしても、この船にある程度ではたかが知れているしな。
ただ、あまり悪目立ちするようなことは控えてくれよ。
[そう念を押すのは忘れなかった*]
慣れているかどうかなんて知らない。
俺は君のことをほとんど知らないから。
同じように君も俺のことを知らないだろう?
[>>163自分はどうやらどうやら彼女の地雷を踏んだようだ。
しかし、そんなことは知ったことではない。
カサンドラと我が一族の因縁を聞いてはいるが、それの真相など誰からもきいたことないし、彼女とまともに口をきいたのもこれが最初だ。
大体、最初にからかおうとしてきた者の機嫌を取るつもりも必要もない。
それが使用人であろうと、自分より目上の者だとしても、同じである]
出来るものがない……?
それではどのように暮らしているのだ。
[その言葉から、彼女が最低限のものしか与えられていないだろうということがわかる。
それならば、彼女が持ち込んでいたトランクスーツの中には何が入っているのだろうか。
現物支給であるというなら、彼女自身の楽しみはなんだというのだろうか。
いや、人間くさい俗物の物事に興味がないのかもしれないが]
どんなものでも構わないさ。
俺のパートナーのセンスが良かろうが悪かろうが、俺は考慮しない。
店の者に見繕ってくれ、と言って体を委ねれば、サイズに合うものを出してくれるよ。
こういうところに入っているブティックだ。
何を選んだとしても、大して変わりはないだろうよ。
[うんざりした顔を隠しもせず、手を振って雑にそう答える。
そこにはオシャレにうるさい妹がいる兄の顔が見えていた。
服の見立てにつきあわされて、あれがいいこれがいいとなる拷問を思い出して頭が痛くなる。
もっとも普通の店に足を運ぶのではなく、外商を家に呼びそこで持ってこさせた物の中から気に入ったものを購入するというスタイルなのだが。
それでも、「お兄様、どれがわたくしにお似合いだと思って?」と延々とファッションショーを見させられるのは男には苦痛でしかない]
大丈夫。カサンドラは綺麗だからね。
何を着ても似合うよ。
それに、こんなところで騒ぎを起こすほど、バカじゃないだろう?
[カサンドラが血の衝動に囚われて騒ぎを犯さないことを暗に仄めかし、一人でいさせても不安ではないことをアピールする。
実際、カサンドラの傍に一番いてはいけないのは、一族……特に当主である父を除けば直系男子で秘匿に近い跡継ぎである自分の方である。
自分たち一族がカサンドラを生かしている理由。
カサンドラが自分一族を死なせない理由。
それは過去の奪った力を失いたくないという同じ理由に起因していて、危うい均衡を保ってきている]
君がどうしても一人で行きたくないというのなら、仕方ないから諦めるだけだけどね。
[カサンドラと二人で行くというのなら、ドレスや水着を買わせないと言外に匂わせて。
そういえば、と気になった]
カサンドラは欲しいものはないのかい?
うちの父には言いにくいだろうし、もし必要なものがあったら言いなさい。
人に危害を与えるものはダメだけどな。
[もっとも金を渡した方がいいのだろうけれど、彼女と行動できるのはきっとこの旅の間だけ。
彼女に金を渡したとしても、きっと本邸に戻れば彼女が物を買うチャンスは失われるだろう。
彼女がわがまま言えるとしたら、今しかないだろう*]
俺が君について知っていることは、君の能力のこと、君を警戒すること。
どういうものを食べ、どのように過ごさせるか、くらいなものだ。
そんなの、知った内に入らないだろう?
いうなれば、猫の種族名と飼い方を知っていても、飼おうとしているその猫の性格や好みや癖を知らないのと一緒。
俺と君はそのような関係ということ。
それと、俺が君のことを知っているとしてもそれは全て伝聞。
本当の君とは限らない。
教えられていることを全て信じ込むほど、俺は素直じゃないんだよ。
[言ってることがわかるかい?とほほ笑む。
最低限の扱いは知っていても、最高の扱いは知らない。経験がないから。>>173
カサンドラと相対していないから、最低しかカサンドラが経験がないということの理解が薄かったのかもしれない]
……つまらなくないか?それ。
確かにあまり君を外に出させるのも危ないと思うのかもしれないが……。
[>>174屋敷にいて毎日仕事をこなす。というカサンドラに思わず沈黙してしまう。
君の力なら、別にそんな命令をきかなくても大丈夫じゃないのか?と眉根を寄せて彼女を見つめる。
人に擬態して生きること自体が、彼女には無理のある生活。
ただ息を潜めている方が楽なのかもしれないが……]
つまみ食い、だけで済むならいいんだがそうならないだろうから、それを許可できないな。
俺が行かない?
さぁ、どうだろうな。船を降りた先でパーティーがあるかもしれないぞ。
船の中でしか買うチャンスがないだけだ。
[そうなったらそうなった時だが。
ちらっとカサンドラを見る。彼女はやはり気づいていないようだ。
父が自分にカサンドラを預けた理由を。預けられた理由を。
自分の中で一番危険な存在であるカサンドラだが、彼女の目的のためならば全力でこの自分を守らなければならない矛盾。
それ自体を彼女は知らない]
君が欲しいものは知ってる。そしてそれを与えられないことを君は知っている。
だからそれ以外であるのはわかっているだろう?
叶えるとはどういうものだ?
買うことができるもので、この船の中で手に入るものならという条件でなら、君の希望をかなえたいと思う。
無理なものは無理だ。
[なぜか言い渋るカサンドラに、言わなければわからない、と先を促す。
珈琲をすすり、旨いと呟く。
これだけのものを作れる仕事をしている相手に報いることをしない歴代カサンドラの主人に少し腹が立っているのかもしれない。
間接的に自分の一族に幸をもたらしている相手。
命を狙われているのは当然であるけれど、それを恨みで塗りつぶすのはわからない。
そう思うのは自分が生まれながらにして恵まれて育っていたせいだろうか*]
外?
それならこれからすぐでも出ればいいだろうに。
俺が当主になるのを待つまでもない。
[>>190儚げな笑顔で呟く彼女に、理解不能と首を振る。
帰ったら父に進言してみようかと意気込むのは若さゆえだろうか。
もしダメだとすれば、カサンドラが外出したい時に自分がカサンドラに付き添えばいいだけの話。
彼女の能力を知っていても、カサンドラを縛る理由が思いつかなくて。
それに思いつかないのは、彼の父を始めとするルードヴィヒに対する誤った思い込みが理由だったのかもしれない]
外?
それならこれからすぐでも出ればいいだろうに。
俺が当主になるのを待つまでもない。
[>>190儚げな笑顔で呟く彼女に、理解不能と首を振る。
帰ったら父に進言してみようかと意気込むのは若さゆえだろうか。
もしダメだとすれば、カサンドラが外出したい時に自分がカサンドラに付き添えばいいだけの話。
彼女の能力を知っていても、カサンドラを縛る理由が思いつかなくて。
それに思いつかないのは、彼の父を始めとするルードヴィヒに対する誤った思い込みが理由だったのかもしれない]
色?
君の亜麻色がかった鳶色の髪と瞳に似合うものならいいんじゃないか?
強いてあげれば……そうだな……深い闇に似合う黒から紫の色合いのもので。
指輪は左の薬指に合うものを準備できたらしてきてほしい。
ブティックに行って俺に言われたことを話せば、下着から宝飾品から、全部紹介してもらえるだろうから、言われたままに買ってこい。
他に買い物?
その体力が君に残っていればだが……。
必要なものはないが、そうだな、君のドレスと合うようなネクタイとチーフがあったら準備しておいてくれ。
[彼女が諦めたような態度をとれば、ここぞとばかりに畳み込む。
彼女が部屋を出れば先回りして電話をして、ブティックにカサンドラのことをよろしくと頼むつもりだ。
これで数時間は時間を稼げるだろう。
カサンドラが想定している買い物>>192と、ルートヴィヒが想定している買い物に差があることにお互い気づいていない]
……?
そんな無理な願いを俺にするつもりだったのかい?君は。
願いを叶えてないのに、慈悲の心をなんていうなよ。
嫌味を言われているようだよ。
[困ったように首を竦めて。
まあ、自分と彼女の関係では、できることとできないことがあるのは当然であるのだから]
じゃあ、行ってきてくれ。
[彼女を追い立てるように部屋から出すと、内線電話を取り上げる。
船内リストを見てブティックの番号を探し電話をかけ、事情を話す。
不慣れな娘が一人いくのでよろしく、と。物慣れていないので何かがあったらよろしく、とも伝えて。
足早に部屋に入ると、コーヒーブレイクの前に続けていたことを始めようと集中して作業に入っていった*]
―2時間後―
[カチャカチャと金属が触れ合う無機質な音のみが船室に響く。
カサンドラが出て行って、休憩することなく作業を続ける。
集中力と持続力。常人以上のそれが彼の才能の基盤だった。
もちろん豊かな発想力や成したいものを成し得る達成力なども才能の片鱗ではあったけれど。
きっと彼のそんなところを家族は誰も知らないだろう。知る必要がないからだ。
ルートヴィヒがどんなに社会に必要とされていても、カサンドラから奪った能力を持つ一族にとっては、そんなものに頼る必要がなかったからだ。
あらかたの作業を終え、後は細かい調整などだけだ、とようやく手にしていた工具を置く。
こんな短時間でこの作業が終えられたのは入念なシミュレーションと下準備もあったが、何より彼だったからである]
[集中しすぎて目の奥が痛む。
首の後ろを揉みながらも、先に作業をしていたブツにカバーをかけて隠し、カサンドラの目に触れないようにした。
たとえ目にしたとしてもカサンドラはなんの関心も持たないだろうけれど。
それでもその形状を見れば、眉をひそめるかもしれないから。
散らばった細かい物を片付けて、空いたトランクスーツの中に詰めていれば、ノックの音がした。
どうやらカサンドラが戻ってきたタイミングだったらしい]
ああ、ありがとう。
こちらもちょうど一息つこうかとしていたところだよ。
[ドアを開けると、見慣れたメイド姿のカサンドラがいた。
いつも屋敷で見かける時は、制服であるその格好をしているから、少しばかり家の雰囲気を感じ落ち着く気がする。
それと同時に、疑問もわいた]
そういえば、普段の服は買わなかったのか?
[ドレスと水着は買っただろうけれど、カサンドラはその他の私服はどうしているのだろう。
地味な黒のワンピースを見て、もしかしたらこれしかないのでは、と思い至る。
今までの口ぶりからして>>220、きっと祖父や父はカサンドラに余剰と思われるような服は与えていないに違いない。
カサンドラが何を自分に求めていたかはわからない>>220。
しかし求めることもせずに諦めるようなカサンドラに、本当はしてはいけないのだろうけれど、少しばかり同情心がわいていたのも事実だ]
疲れただろう?
君も休みたまえ。
もし元気になったら、後で買いに行くとするか。
[メイド服姿で給仕をしてくれる彼女を、先ほどのように前に座らせて。
自分のお代わり分の珈琲を譲って飲ませるが、果たして彼女は口にするのだろうか。
温かい湯気に珈琲のかぐわしい香り。躰の緊張がほぐされていく。
ソファに体を沈め、ゆったりとしていたらチャイムが鳴った。
どうやら荷物が届いたらしい>>224]
君が買ったものか。
広げて見せてくれ。
[カサンドラはどのようなものを買ったのだろうか。
女性の服など、全部同じに見えるような自分だ。
先ほどもせめて色をと言われたが、彼女を見て思いついた色を言っただけだった。
具体的に言われた方が選びやすいだろうと思い口にしたが、特別な知識があるわけでもなく、なんとなくである。
しかし、買い物など、まともにしたこともなかったようなカサンドラが選んだもの……最後はおまかせになっていたのは知らないから……にはなぜか興味がわいていた*]
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