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― 宿への道中 ―
[短い時間の中で、
カタリナという名の少女と、いくつか言葉を交わした。
宿の主人とは既知の仲らしく>>134
ひょっこりと現れた
聞けば、村外れで羊飼いをしているそうで>>136
アルビンは目をみはり感嘆の声をもらす。]
たくさんの羊を世話するのは、さぞ大変でしょう
[ロバ一頭すら、こちらの都合で動いてもらうのは一苦労だ。
それが複数頭ともなれば、
体力も根気も、それに愛情も。
並々ならぬものが必要だろう。
動物好きに、なんとやら。
言葉の通り、素直に感嘆せざるを得なかった。]
[戦場で商売をする行商人が、カタリナにとっては珍しくあるようだった。
遠慮がちに投げかけられた疑問に、アルビンは破顔し、ごくごく軽い口調で答えた。]
なんでも、売れますよ。ここに転がっている石ころから、有名な絵画まで
でも、戦場ですから、やはり食べ物や着る物が多いですね
[どこからか、ふわりと漂うパンのにおいをかぎながら]
それから、ケガをした兵隊さんに
薬代わりの薬草をお願いされることもあります
[物資が常に不足する戦場では、需要が絶えることはない。
貴族しか着られないような仕立てのいい布や宝石、
古くから使われる珍しい武器なんかも手に入ることもある。
特殊な場所ゆえ話せるようなことは限られるが、
おもしろい話もないわけでもない。
機会があればまたお話しますね、と言葉を最後に加え、
アルビンは宿前でカタリナに別れを告げる。
再度礼を述べ、時間を割いてくれた彼女に手を振った。]
[宿屋のそばにある横木に手綱をくくりつけ、]
金色とは、神秘的であたたかい光の色
なんですねえ
――ね、ルーナ
[異国の単語をなぞらえた彼女の名前。
それをつけてくれたのは、誰だったか。
尻尾を絶え間なく揺らすロバに声をかけてから
受付を済ますべく中へと入って行った。
想像していたよりずっと大きな宿に、
閑古鳥が鳴いてると知るのは、このすぐ後のことだ。**]
[カタリナが案内してくれた宿は、
思わず懐の中身を確認しようと思ったほど立派で、
しっかりとした造りであった。
何やら思案にふけっていた女主人>>61と、
宿泊のための交渉を買って出てくれた>>150カタリナのそばで、
広々とした受付を見渡す。
非常時にも問題なく使えるような汎用性を兼ね備えていそうなのに、
人の気配を感じ取れないことが気になりはした。
食堂兼談話室の中をのぞいてみたが、客の面影は見つけられなかった。
この村に来たのが昼過ぎ。まだ夕方までにはたいそう時間がある。
受付に来るには少々早すぎたのかもしれない。
そこまで考えて、村外で伝え聞いた話を思い出した。]
[温暖で豊かな村、豊穣の村。
雪どころか冬の気配すら感じさせないほど穏やかな村。
それとは全く反対の、不穏で不吉な噂話。
厳しい冬の気候を逃れられるだけで訪れる価値はあるというのに、
二の足を踏みたくなるような、そんな話も、あるとかないとか。
それに関して、
関心があるかと言えば、アルビンは複雑な心境だった。]
[薪を積んでいるらしい荷車を一人で押している。
おせっかいだろうと思いつつも、思わず寄って行った。]
お疲れ様です。
ご迷惑でないなら、お手伝いさせてください。
[パメラがお手伝いで薪を運んでいたことは知らず、
業者に対してするような挨拶で、荷車を押す手伝いを申し出る。
宿に入用ならその後は自分が請け負おう。
店を切り盛りしているレジーナへの手助けにもなるだろうか。
カタリナと彼女が言葉を交わしているのは見えていなかったが、
同じように、“ようこそ”>>179と声をかけられたなら、
照れたように笑みを浮かべるだろう。
カタリナに対してもそうしたように。**]
おや?
[“薪”という単語に、屈強な若い男。
そして少女とも見える女性。
見比べてみて、
薪との関係性は、男の方が強い。
自分はどうやら思い違いをしていたのではと、
なんとなく察したアルビンだった。]
[戸惑いながら問いかけてくる男>>239へ、癖のように
いつも客へと向ける愛想のいい笑みを向ける。]
ええ、
こちらの宿に、しばらく泊めていただく事になりました
行商をしております、アルビンと申します
[カタリナに会った時と同じように帽子を取り、
挨拶をと思ったが、ふと違和感。
金色の髪をした彼は、どこか急いでいるようで……
仕事が繁盛しているならなによりだと、
検討違いに解釈してみ、ひとり納得する。
薪を運ぶのにちょうどよいと、
ロバの貸し出しを提案してみようかと思ってもいたが、
急ぎならば引き留めず、薪を受け取るだけとしよう。*]
ええ、ええ、実は
その商人たちから聞いてやってきたんです
普段私は特定の場所でしか商売はしないものなのですが、
村の者は村外に出る必要もくらい、豊なところだと
[しかし、この宿がいわゆる“穴場”とされているならば、
経営する側としてはどうだろうか。
一人と一匹、心置きなく過ごせるくらい良心的な値段で、
(その時は知らなかったが)効能ある湯もあるとくれば
限られた者だけで使うにはもったいない。
アルビンの商人魂は黙っていられない。
村を出たら早速触れて回ろう。
同じく戦場を売り場とする仲間達も、喜んでくれるだろう。
そう決めたのだった。*]
なるほど、カタリナさんとはお友達でしたか
彼女がこの宿を教えてくれたんです
道案内までしていただいて
まだまだ遊びたい頃でもあるでしょうに、
しっかりされていますね
[ここに来る前は何村かあたってみたが、
戦場に近い土地柄か、よそ者への風当たりは厳しいものだった。]
[聞きたいことと言えば。
この村に流れる妙な噂とか。
人を襲うという“人狼”という魔物の存在とか。
村で育ってきた彼女ならなにかしら知っているだろうか。
気になりはしたが、短くない滞在だ。
また聞く機会もあるだろう。
そう思って口にはしなかった。*]
[幸か不幸か、シモンから死の宣告を受けることなく>>320
アルビンの胸中といえばのん気なものだった。
珍しいものも>>323、斧の砥石も>>324
一週間ほど前なら豊富に積みこんでいたものだが。]
申しわけない、今はこの通り、
空の荷車とロバと、わずかな金貨があるばかりで
[にこにこと笑いかけてくれるパメラにも>>329
横木につないだロバの方を指さし、
眉を八の字にして頭を下げ、詫びる。]
普段の売り場は主に戦場でして、
この村には仕入れに参ったのですよ
ですから、まあ、ちょっとした土産話や、
この村の名物や処理に困った雑多なものは、
買い付けて回るつもりだったのですが
え? え……広報部長? ディーターさん?
あっ、どうも、行商人のアルビンと申します
[戸惑いながらも、問われて挨拶を重ねる。
彼とパメラが兄妹だという事実にも後々驚くことになるが、
戸惑いを抜けてアルビンは興奮したように声を上げていた。]
素晴らしい!!
一瞬で概要を説明しつつ魅力を最大限に伝える、その売り込み話術!!
私もね、ここの宿屋の広々しい様子を憂いていたんですよ
もっともっとお客さんが来れば、
この村も宿もさらににぎやかになるのではと思いましてね!
私も含め湯に浸かったことのない者達をたくさん知っております
繁栄にひとつ、お力添えさせていただければ!!
[ぐっと拳を突き上げ力説する。
燃える情熱を共有できるような仲間と出会えたかのように、
アルビンの笑顔はことさらに輝いていた。*]
[薪運びの手伝いも終え、自身の荷物も置いて身軽になれば、
いまさらのように腹がぐるぐる鳴りだした。]
そういえば、なにも食べさせてあげられないままでした
[観光の前に、荷車を懸命に引き続けてくれた相棒の世話が先だ。
手綱を繋いだ宿の裏手へと、急いで駆けていく。**]
― 少し前・ディーターと ―
[広報部長という肩書に負けず劣らず、
ディーターは村の魅力を存分に語ってくれた。
アルビンはついにはメモを出し、
なにやらまじめに書きとりだす。]
[――【村の名物】
・香物と加工品、農夫ヤコブさん
・パン、天使 オットーさん
……云々かんぬん
【滞在時】
・宿 温泉の調査取材……等々
さてさてどう売り込もうかと算段をたて始め、
もはや仕事の頭になっている。
ありがとうございます、と頭を下げ、
荷物を置くためにその場を後にした。
また機会があれば、
仕事のやりがいなんかを聞いてみたいと思いつつ。]
[広々とした宿を自分ひとりで優雅に使うのも悪くない。
そう思いつつも、
同じ宿泊客がいれば、つかの間の休息もより楽しいものとなる。
そんな思いで、挨拶だけでも交わそうと。
彼のそばに同伴者もいただろうか。
いたならば、にっこりと笑顔を向けていたものだが。*]
― 宿 裏手 ―
[草を食んでいた相棒・ロバへの水くみも終わり、たわしで体をみがいてやった。
いつもならそれで上機嫌になるはずなのに。]
……いたっ、……あいたたっ!
[近づいたそばから、尻尾で体を叩かれる。なにか訴えたいことがあるらしい。]
ああ、天気のことでしょうか
そういえばすっかり様変わりですねぇ
ぬれない場所へ移りましょうか
[そういってヒサシのそばまで連れて行ったけれど、機嫌は直らない。
高いいななきと共い苛立たし気に後ろ足を打ち付ける。
手綱をいやがるように何度も首を振った。]
うーーーん、なんでしょうか
[首をひねり考えこむが答えは見えず、腕を組んで立ち尽くすばかりだった。**]
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