情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
流離の勝負師 ディークは、落胤 を希望しました(他の人には見えません)。
Misce stultitiam consiliis brevem, dulce est desipere in loco.
(僅かの愚かさを思慮に混ぜよ、時に理性を失うことも好ましい)
― セミヨン川北岸 ―
[橋の南はディークが後にしたレオヴィル王国だ。
もっとも、その情勢は、ディークがユーリエ姫を連れて出た時とは大きく違っている。]
──風前の灯火。
[そう評するのがふさわしいだろう。
大地を覆うような魔物の群れが、今にも侵略を開始しようとしている。]
だが、消えかかっていても、火は火だ。
[ぽつり、ひとりごつ。
人間たちの最後の拠り所たる王国軍の指揮を執るのは皇太子のロー・シェン。
かつての学友である。]
…そっちは消えかかってるどころじゃないかもだが。
[と、そこに作戦内容が伝えられた。>>14>>15]
死体回収?
[弔うためなんかじゃないことは鴉が黒いよりも明らかだった。
極めて偏った知識欲を示す魔将シメオンの顔が脳裏を過る。
その卓越した能力に対する感銘と比例する嫌悪を呼び覚ます相手だ。
そして、彼の傍らに侍るアイリにも、また別の意味で不気味さを感じていた。
歪んでなまくらな刃物ともいうべきか。扱い注意なシロモノ。]
[なんで親分さんは、あんな男にひっかかったかなあ、とボヤきたくなる瞬間もあるが、マーティンが人間に喧嘩を売りたい気持ちはわかる。というか、その経緯の一部は一緒に経験した。
モンテリー王国の地下牢で。
もっとも、マーティンはディークと違って無実の罪というわけではないようだったが。]
承りましたよ、っと。
[そんな任務では暴れ足りなそうなマーティンを宥めて受諾の旨を伝える。
意気がってみせて突撃隊でも任されたら、生きて帰れる確率は0に近い。
魔物にしてみれば、どちらを向いていようと人間を殴殺することにたいした違いは感じないのだ。
誇りなどカケラもない役目だが、今のディークの心の温度は冬の朝の灰に等しい。]
ああ、面倒くさいな。
[すっかり口癖になったそれを呟いて、”搬送用”の名目で、長い丸材を傭兵チームの各員に配るのだった。**]
魔将軍殿は、死体をご所望だ。
死人が身につけている宝飾品には関心がない。
だから、それは俺たちのものってことだ。
取り残しのないよういただくとしよう。
[余録の存在を教えて、傭兵たちの士気を底上げしておく。
ついでに作業効率の低下も起きるだろうが、それは知ったことではない。]
[赤紅の戦装束の裾を翻して前線へかけてゆくアイリを憐れむように見送る。>>26
シメオンに従順な戦乙女。
ちょっかいをかけようとした傭兵を容易く薙ぎ倒したという。
ディーク自身は手は出さずに幾度か言葉を交わしてみたが、どこか食い違うような違和感を感じたのだった。
少しばかり、額が疼く。]
[それから、ディークは傭兵たちの陣地にある幌馬車に向かった。
シメオンが気前よく前払いを提示したとき、ディークは金や宝飾品ではなく、この馬車一式と奴隷にされた子供たちをもらったのだ。
子供たちは働き手としてはまだ非力であるから余っていた。引き取り手がいなければどうなるかは想像に難くなかったから後先考えずに手に入れた。]
……、
[奴隷小屋代わりの馬車につながれた子供たちは縄をなったり布を繕ったりする軽作業をしていたが、どういうわけか朝よりも人数が増えていた。
逃げ出して減るならまだしも、逆とは。
何人かは繋がれてるふりだけしている子供がいそうだ。
どのみち、解く気があれば解ける枷である。]
[馬を撫でながら、あえて何も言わずに観察する。
この馬は戦場で拾った。主は死んだのだろう。
近くで魔法が爆発したか、片耳が聞こえていないようで、鬣も焼けていたが、聞き分けのいい軍馬であった。
馬車をひかせても苛立ったりはしない。
名前は、まだ決めかねている。]
[程なくディークは、3人の子供を選んだ。
羊皮紙とインクを出して、字の書ける子供に代書させる。
内容は極めて簡潔だ。
「無条件降伏せよ」
それを王国軍に届けるよう言いつけて、子供に堅焼きパンと水筒を渡す。]
この先は自分たちの力で切り抜けるしかないぞ。
[激励をして、主戦場から外れた、王国軍の斥候が来ているだろうあたりへと子供たちを向わせた。
これまでにも幾度となく”降伏勧告の使者”を出し、王国側から色よい返事があったためしはないが、そこは期待していなかったから、懲りずに続ける気だ。*]
[命じられた任務を果たすべく、戦場に身をおく。
革の胸当てをつけ、革張り木製の安価な丸盾を背負っただけの軽装だ。
その盾に描かれる紋章などない。
死体を漁る仲間に混じって、身許のわかりそうな品だけいただいておく。]
…疾く還れ。
[昔とった杵柄とやらで、短く祈祷文を唱えて死者の目を閉じさせた。]
[ディークは赤児の頃にレオヴィルの教会の門前に捨てられて12歳になるまでそこで育った。
額に青い目の形をした痣が浮かび上がるに及んで修道士には不向きと俗世間に出された身だから、祈祷にどれだけの力があるかはわからないが、死者にとって害になるものでもあるまい。
身ぐるみ剥がれた死体は、傭兵が二人一組で担ぐ丸材に刈り取られた小麦よろしくかけられて、後方集積場へ向うことになる。
傭兵隊の後ろから、死者の軍勢が、うぞりうぞりとやってきていた。>>63
その光景と匂いとに怯む傭兵も少なくない。
敵味方を問わず、生理的な嫌悪と恐怖を呼び覚ます群れなのだった。]
「魔将軍様の御用だ!」と威張っていけよ。
命令どおりの荷を運んでいるんだ、 戦線離脱とは言わせないぜ。
[死体運びに早くも飽きたらしく、マーティン親分が斬り込みにいってしまうのを見て、ディークも後を追った。]
西側から王国軍を挟撃させてくれと、親分さんを通じて、上に”献策”するか。
[より一層、王国側を追い詰めることになるかもしれないが、消耗戦で増え続ける死体運びに甘んじているのはこれきりにしたい。]
ま、それをするにも、今日を生き延びる必要があるんだけども。
[戦場のただ中に身をおいていると、とるべき道は直感的に”見える”。
あの軍は押してくるだろう、ここらは危険だ、相手の弱点はあのあたりだな、そういった状況判断は軍学校にいた頃から抜群だった。]
親分さん、それ以上、橋には近づくな。
[マーティンに声をかけ、そのまま傍らに留まって助言という名の指揮をとる。]
[戦場の”声”に新たな不協和音が加わる。
コボルトらが前線に達していた。>>100
それを率いるヒトガタの魔将が、戦場を散策でもするかのように血路を切り拓いてやってくる。>>103>>106
ほのかに漂う死の香り。それはどこか冷たい風にも似て膚を撫でた。
そして、その顔は──]
……、
[確かに血の繋がりを感じさせるものだった。
王国軍の総大将であるロー・シェン皇子、そして、ディークがレオヴィル王国を去ることになった理由であるユーリエ姫と。
それもそのはず、この姿は、彼らの兄だった亡きクレステッド皇子から作られたという噂だ。]
[軍学校の催しに幾度か来賓として来たことがあるから、生前のクレステッド皇子とは面識がある。
かつての凛々しい挙止すらそのまま残すトヒガタから投げかけられた質問に、ディークは上官を探す素振りで視線を反らしたが、周りの幾人かは素直に禿頭を指差して教えた。]
──…、
[魔王の側近たるヒトガタが何をしに来たかと警戒して、ディークはすぐにマーティンを護れるよう身構える。]
[荒くれ者のマーティンとは、シラーの檻の中で知り合った。
ディークを罪に問うているのはレオヴィル王国だったから、モンテリー王国では尋問されないはずだったが、被害者に王族がかかわっているとあって無関心というわけにもいかなかったようだ。
注目は集める一方で、縁故も余罪もないディークの牢内序列は低いものとなる。
早世した弟に似てると言って、マーティンが世話をやいてくれなかったら、ディーンの牢での生活はもっと辛いものになっていただろう。
シラーの陥落の際に、ディークはその才覚を遺憾なく発揮してマーティンを扶け、脱獄した。
その先どこに行くという当てもないディークに、マーティンはオレを家族と思えと肩を叩いてくれた。
乱暴で短慮だが、懐の広い親分だった。
彼の罪状には同情しかねる部分も多かったが、”家族”であれば常に彼の側に立つべきと決めてここにいる。]
[かつて見知った男の怜悧な、だがそれだけではない視線が向けられる。>>150
認識されたことを意識して、首筋がチリリと灼けるようだ。
戦場に似つかわしくないほどの穏やかな声は、得体のしれない圧をもって人間の上に注がれる。]
…っ
[献策しようとしていたことを向こうから言われて、一瞬、息を詰めた。]
[暴れ甲斐のありそうな任務に、マーティンは「おうよ」と張りのある声で応える。
「マーティン・ドットが引き受けたぜ」
彼が乗り気なら、問題はない。
デュークは黙って同意の肯首をした。]
隊の者に伝えます。
[と、そこへ魔法によるロー・シェンの声が響き渡った。>>145*]
[空を猛禽の群れが飛んでくる。
それを見た瞬間、ロー・シェンの策だとわかった。
軍学校にいた時分に、魔軍に有効な戦術は何かというのが議題になった際に、ロー・シェンが火計に鷹を使うのはどうかと提案したのだ。>>143>>144
もう8年以上も昔の話だ。
真面目に鷹を訓練して準備していたとは、実に彼らしい、と感嘆した後で、さて、自分はあの時、なんて言ったのだったかと思い出す。]
「その日の戦場次第でやること決める」だったか。
──うん、まあ、それで。
[かつて、為すべきことを論じていた立場とは所属する陣営が逆な現状は驚きだが、
天候や敵によって臨機応変に作戦を変える、というのがモットーなのは今も変わらず。]
親分さん、急ぎ、撹乱作戦に取りかかりましょう。
[つまりこの場を離れろと急き立てる。]
[その背に、ヒトガタの声が届いた。>>161
マーティンに敬意をはらうかのような「殿」づけの語り掛けと、こちらに選択の余地があるかのような言い方には、危険な予感がひしひしするが、それにも増して、死んだはずの者が、その顔で、その声で、ロー・シェンのことを「あの子」と呼ぶのを聞いて、無性に苛立ちを覚える。]
──…、
[挑発されている気分だ。
クレステッド皇子とさして親しくなかった自分でさえこうなのだから、彼の異母弟であるロー・シェンには、より強い揺さぶりになるに違いないと思う。]
面倒くさいな…
[きっぱりと憎めたらいいのに。
それができないせいで、こんな場所にいるんだろうけど。
マーティンが野太い声で呼びかけると、傭兵たちは、特に事情も聞かずについてくる。
瞬時の判断で、子供たちは置いてゆくことにした。
引かれる後ろ髪などない素振りで、マーティンの背中を追う。*]
[マーティンのもとに再集結した傭兵隊の後ろからは、ヒトガタの率いる亜人の一団がついてきていた。
今はこちらに攻撃してくるようなことはないが、場合によってはすぐさま督戦隊に成り代わることは明らかだ。
「川か? 山か?」
マーティンが進路を聞いてきたので、ディークは川を示した。
今から山越えをしていたら夜になる。
川は死者と死者だったものを巻き込んで渦巻いていた。
橋から落されたゴーレムが頭だけ出して立っているのも見受けられる。
それらを橋桁代わりに、先程まで死体搬送に利用していた丸材を随所に架け渡して即席の丸木橋を作り、渡るよう伝える。
川の北岸で上がった炎と煙に両軍の目が惹きつけられている隙を狙うのだ。]
/*
>>194>>197
ようやく自分の位置を確定したと思ったら、渡ろうとしている川が大惨事になったことに気づくww
ならいっそいきなりドンブラコッコしてみたい誘惑にかられたんですがどうでしょう (←
[油を注がれた火勢と魔物たちの狂乱を甘く見ていたようだ。
程なく水面に災厄が雪崩れ込む。>>197
折しも、ディークは橋桁代わりのゴーレムの肩の上にいた。]
止まるな、渡れ!
[その方がまだ活路があると、傭兵たちに指示を飛ばす。
戻れば亜人たちと衝突するのだから。
実際には、亜人たちがヒトガタの指揮下で協力的なのを目撃して、ちょっと驚いた。]
[と、何か大きな塊がぶつかってきてゴーレムが傾ぎ、ズル…、と足が滑る。 視界が空を映す。]
あ 、
[落ちるのか、ヤバいな、と他人事のように思った。**]
/*
選択肢>>206
・見送られる→どんぶらこ、たぶん王国軍に回収される
・助けられる→親密度UP、まだ魔軍に留まる
とか丸投げして、寝るぞ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新